特許第5782642号(P5782642)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5782642タブ−リード結合部の電極間抵抗差を最小化した電極組立体及びこれを有する電気化学セル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5782642
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】タブ−リード結合部の電極間抵抗差を最小化した電極組立体及びこれを有する電気化学セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/26 20060101AFI20150907BHJP
   H01G 11/66 20130101ALI20150907BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   H01M2/26 A
   H01G11/66
   H01M10/04 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-79189(P2011-79189)
(22)【出願日】2011年3月31日
(62)【分割の表示】特願2007-99666(P2007-99666)の分割
【原出願日】2007年4月5日
(65)【公開番号】特開2011-165672(P2011-165672A)
(43)【公開日】2011年8月25日
【審査請求日】2011年3月31日
【審判番号】不服2014-6278(P2014-6278/J1)
【審判請求日】2014年4月4日
(31)【優先権主張番号】10-2006-0068825
(32)【優先日】2006年7月24日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リュー、ジ、ヘオン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ジョン、ヒー
(72)【発明者】
【氏名】ヨー、クワンホ
(72)【発明者】
【氏名】シン、ユンジュン
【合議体】
【審判長】 木村 孔一
【審判官】 河本 充雄
【審判官】 小川 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−252036(JP,A)
【文献】 特開2003−257409(JP,A)
【文献】 特開2006−324093(JP,A)
【文献】 特開2002−305029(JP,A)
【文献】 特開2006−351373(JP,A)
【文献】 特開2007−335150(JP,A)
【文献】 特開2005−149951(JP,A)
【文献】 特開2005−149783(JP,A)
【文献】 特開2003−36823(JP,A)
【文献】 特開2005−142028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/26
H01M10/04-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パウチ形二次電池であって、
正極/分離膜/負極構造のスタック型またはスタック/折り畳み型電極組立体を備えてなり、
前記電極組立体を構成するそれぞれの電極板には、活物質の塗布されていないタブ(電極タブ)が突出しており、
前記電極タブが、一つの電極リードに電気的に連結されており、
前記電極リード−前記電極タブの結合部において、電極リードの上面と下面にそれぞれ複数の電極タブが結合されてなり
前記電極リードを中心に、その上面と下面にそれぞれ結合されてなる電極タブの数は、略同一であり、及
前記電極リードが、金属プレートであり、
前記金属プレートが、アルミニウムプレート、銅プレート、ニッケルプレート、ニッケルコートの銅プレート、及びSUSプレートからなる群から選択されたものであり、
前記電極リードが、溶接によって前記電極タブと結合されてなり、
前記電極リードの前記上面に結合された前記電極タブと前記電極リードの前記下面に結合された前記電極タブとが前記電極リード−前記電極タブの結合部において前記電極リードを中心に対称構造をなし、前記電極リードの前記上面に結合された前記電極タブの長さは、前記電極リードの前記下面に結合された前記電極タブの長さより長く、前記電極リードの前記下面に結合された前記複数の電極タブのうちの最下部の電極タブは、折れ曲がっていない、ことを特徴とする、パウチ形二次電池。
【請求項2】
前記パウチ形二次電池が、金属層と樹脂層を含むラミネートシートからなる電池ケースに、前記電極組立体が密封状態に内蔵されてなることを特徴とする、請求項1に記載のパウチ形二次電池。
【請求項3】
前記パウチ形二次電池が、高出力大容量の電池パックに使用される単位電池であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のパウチ形二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タブ−リード結合部の電極間抵抗差を最小化した電極組立体に関し、より詳細には、正極/分離膜/負極構造のスタック型またはスタック/折り畳み型電極組立体において、電極組立体を構成するそれぞれの電極板には、活物質の塗布されていないタブ(電極タブ)が突出しており、これら電極タブは、一つの電極リードに電気的に連結されており、電極リード−電極タブ結合部での電極間抵抗差が最小限に抑えられるように、結合部において電極リードの上面と下面にそれぞれ複数の電極タブが結合されていることを特徴とする電極組立体及び該電極組立体を有する電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器に対する技術開発と需要が増加するに伴い、エネルギー源としての電池の需要も急増しつつあり、これに伴う種々の要求に応えうる電池への多くの研究が行われてきている。
【0003】
例えば、電池の形状面では、厚さの薄い、携帯電話などのような製品に適用可能な角形二次電池とパウチ形二次電池への需要が多く、材料面では、高いエネルギー密度、放電電圧及び出力安全性を有するリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池などのようなリチウム二次電池への需要が多い。
【0004】
また、二次電池は、正極/分離膜/負極構造の電極組立体の構造によっても分類でき、例えば、長いシート型の正極と負極を分離膜が介在された状態で巻き取った構造のジェリーロール(巻き取り型)電極組立体、所定大きさの単位に切り取った複数の正極と負極を分離膜を介在した状態で順次に積層したスタック型(積層型)電極組立体、所定単位の正極と負極を分離膜を介在した状態で積層したバイセル(Bi-cell)またはフールセル(Full cell)を巻き取った構造のスタック/折り畳み型電極組立体などに分類可能である。
【0005】
図1は、従来の代表的なスタック型電極組立体の一般の構造を模式的に示す側面図である。
図1を参照すると、スタック型電極組立体10は、正極集電体21の両面に正極活物質22が塗布されてなる正極20と、負極集電体31の両面に負極活物質32が塗布されてなる負極30とが、分離膜70を介在した状態で順次に積層されて構成される。
【0006】
正極集電体21及び負極集電体31の一側端部には、電池(図示せず)の電極端子を構成する正極リード60及び負極リード(図示せず)にそれぞれ電気的に接続されるために、活物質の塗布されていない複数の正極タブ41及び負極タブ51が突出している。ここで、正極タブ41と負極タブ51は、密集した形態で結合して正極リード60と負極リードにそれぞれ連結される。この構造は、正極タブと正極リードとの結合部を部分的に拡大して模式的に示す図2A及び図2Bからより容易に確認できる。図2A及び図2Bでは、説明の便宜のために正極タブと正極リードとの結合構造のみを示すが、このような構造は、負極タブと負極リードとの結合部でも同様に適用される。
【0007】
図2A及び図2Bを参照すると、正極タブ群40は、矢印方向に密着して正極リード60に連結される。正極リード60は、通常、溶接によって結合され、図2Aに示すように最上端の正極タブ41の上側面に配置された状態、または、図2Bに示すように最下段の正極タブ42の下側面に配置された状態で結合される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような結合構造の電極組立体は、電極リードに対する各電極の抵抗差を誘発することがある。すなわち、上記の電極組立体では、電極リードから最も近距離に位置する電極タブでの電極抵抗と、最も遠距離に位置する電極タブでの電極抵抗が異なる。したがって、このような構造の電極組立体を有する中大型電池パックでは、大容量の電気が充電及び放電されるので、電極間抵抗差によって電極が不均一に作動する、または、劣化する可能性が極めて高く、結果として電池の寿命が短縮するという問題点があった。
【0009】
また、電極タブと電極リードが上記のような構造で結合される場合、結合のための溶接が一方向からのみ行われ、電極リードに対する電極タブの結合力が低下するという問題点もあった。
【0010】
そこで、電極間抵抗差を最小化しながら、電極タブ−電極リードの結合力を向上させることができる、改善した構造の電極組立体が切実に要求されている実情である。
【0011】
本発明は上記の従来技術の問題点を解決するためのもので、その目的は、電極間の抵抗差を最小化できる電極組立体を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、電極タブ−電極リードの結合力を向上させることによって、高い信頼性を確保できる電極組立体を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、上記の電極組立体を有する電気化学セルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明による電極組立体は、正極/分離膜/負極構造のスタック型またはスタック/折り畳み型電極組立体であって、電極組立体を構成するそれぞれの電極板には、活物質の塗布されていないタブ(電極タブ)が突出しており、これら電極タブは、一つの電極リードに電気的に連結されており、電極リード−電極タブ結合部での電極間抵抗差が最小限に抑えられるように、結合部において電極リードの上面と下面にそれぞれ複数の電極タブが結合されてなる。
【0015】
好ましい一実施形態において、前記電極リードを中心に電極タブが略対称構造に結合されるように、該電極リードの上面と下面にそれぞれ結合される電極タブの数は、略同一である。具体的に、電極リードの上面にA個の電極タブが結合される場合、電極リードの下面にも同様にA個、または、A個に近似するA’個の電極タブが結合される。
【0016】
上記構造をより具体的に説明すると、図3に示すように、電極リード100は、上面110に3個の電極タブ210が配置され、下面120に3個の電極タブ220が配置された構造で、電極タブ群200と結合される。したがって、結合部位Aで電極タブ群200は、電極リード100を中心に上面110と下面120で対称構造をなす。
【0017】
電極リード100と電極タブ群200とは、電極タブ群200に電極リード100を挟み込んだ状態で矢印方向に密着した後に、溶接することによって結合しても良く、電極タブ群200を矢印方向に密着した状態で電極タブ群200に電極リード100を挟み込んだ後に、溶接することによって結合して良い。
【0018】
本発明において、電極リードは、特に制限されるものではなく、電極タブを電気的に連結できる素材はいずれも使用可能であり、好ましくは、金属プレートを使用する。金属プレートの例には、アルミニウムプレート、銅プレート、ニッケルプレート、ニッケルコートの銅プレート、及びSUSプレートなどがある。
【0019】
また、電極リードは、特に制限されず、電極タブと容易に連結される構造はいずれも可能であり、例えば、垂直断面上、直線の形態を持つ構造が好ましい。このような電極リードは、種々の方式で電極タブに連結されることができ、好ましくは、溶接にてより安定的に連結可能である。溶接には、例えば、超音波溶接、レーザー溶接、及び抵抗溶接などがある。
【0020】
なお、本発明は、このような電極組立体を有する電気化学セルを提供する。
前記電気化学セルは、電気化学反応を通じて電気を提供するもので、例えば、電気化学二次電池または電気化学キャパシタであり、特に、リチウム二次電池で好適に適用可能である。
【0021】
前記二次電池は、充放電可能な電極組立体が内蔵されてなる二次電池で、好ましくは、金属層と樹脂層を含むラミネートシートからなる電池ケースに、電極組立体が密封された状態で内蔵されている構造を有し、このような構造の二次電池を、パウチ形二次電池とも呼ぶ。
【0022】
また、前記二次電池は、複数個の電池セルを組み合わせて高出力大容量の電池パックを製造するときに、単位電池として好適に使用されることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る電極組立体によれば、電極間の抵抗差を最小化でき、電極タブ−電極リードの結合力を向上できるため、高い信頼性を確保することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、実施例に挙げて本発明をより具体的に説明する。下記の実施例は、本発明を例示するためのもので、本発明の範囲を限定するためのものではない。
【0025】
実施例1
アルミニウム箔と銅箔の両面に、含リチウム正極活物質と含黒鉛負極活物質をそれぞれ塗布した後、該アルミニウム箔と銅箔を、活物質の塗布されていない電極タブが存在するように切断し、正極板と負極板をそれぞれ製造した。その後、分離膜を挟んで上記正極板と負極板を順次積層した後、図3に示すように、正極タブ群及び負極タブ群にそれぞれ正極リード及び負極リードを挟み込んだ状態で溶接し、電極組立体を完成した。
【0026】
比較例1
図2A及び図2Bに示すように、正極タブ群の下側部及び負極タブ群の下側部に正極リード及び負極リードをそれぞれ配置した状態で溶接した以外は、上記実施例1と同様にして電極組立体を完成した。
【0027】
実験例1
上記実施例1及び比較例1においてそれぞれ製造された20個の電極組立体に対して抵抗測定実験を行い、その結果を、下記の表1に示す。本実験は、それぞれ20個の電極組立体に対して繰り返し行ったし、Agilent milli-ohmmeterを用いて正極タブ−正極リードの結合部での抵抗をそれぞれ測定した。測定した抵抗値を平均して表1に示した。
【0028】
下記表1において、Aグループは、電極組立体の上部に位置する正極タブで、実施例1では、正極リードの上面に位置する正極タブ群を表し、比較例1では、正極リードから遠距離に位置する正極タブ群を表し、Bグループは、電極組立体の下部に位置する正極タブ群で、実施例1では、正極リードの下面に位置する正極タブ群を表し、比較例1では、正極リードから近距離に位置する正極タブ群を表す。
【0029】
【表1】
【0030】
上記表1に示すように、本発明による実施例1の電極組立体では、正極リードを基準に、その上面に位置する正極タブ群の抵抗と下面に位置する正極タブ群の抵抗が略一致した。すなわち、全ての正極において実質的に抵抗差がなかった。これに対し、比較例1の電極組立体では、正極リードを中心に近距離に位置する正極タブ群と遠距離に位置する正極タブ群間の抵抗差が確認された。このような抵抗差は、微小であっても、反復的な充放電時に、または、電流量の多い高出力大容量の電池パックにおいて、電極間に作動不均一を招き、特に、長期間使用時には特定電極の劣化を早め、結果として電池の寿命特性を悪化させる要因となる。
【0031】
以上の内容に基づき、本発明の範囲内で種々の応用及び変形ができるということは、本発明の属する技術分野における通常の知識を持つ者にとっては明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】従来のスタック型電極組立体の一般の構造を示す模式図である。
図2A図1の電極組立体において、正極タブが密集した形態で結合して正極リードに連結されている部分を示す拡大図である。
図2B図1の電極組立体において、正極タブが密集した形態で結合して正極リードに連結されている部分を示す拡大図である。
図3】本発明の一実施形態による電極組立体において、正極タブが密集した形態で結合して正極リードに連結されている部分を示す拡大図である。
【0033】
本願発明の好ましい態様は以下の通りである。
(1)正極/分離膜/負極構造のスタック型またはスタック/折り畳み型電極組立体であって、電極組立体を構成するそれぞれの電極板には、活物質の塗布されていないタブ(電極タブ)が突出しており、これら電極タブは、一つの電極リードに電気的に連結されており、電極リード−電極タブ結合部での電極間抵抗差が最小限に抑えられるように、結合部において電極リードの上面と下面にそれぞれ複数の電極タブが結合されていることを特徴とする、電極組立体。
(2)前記電極リードを中心に、その上面と下面にそれぞれ結合されている電極タブの数は、略同一であることを特徴とする、(1)に記載の電極組立体。
(3)前記電極リードは、金属プレートであることを特徴とする、(1)に記載の電極組立体。
(4)前記金属プレートは、アルミニウムプレート、銅プレート、ニッケルプレート、ニッケルコートの銅プレート、及びSUSプレートより選ばれたいずれかであることを特徴とする、(3)に記載の電極組立体。
(5)前記電極リードは、垂直断面上、直線の形態を有し、溶接によって前記電極タブと結合されることを特徴とする、(1)に記載の電極組立体。
(6)(1)乃至(5)のいずれかに記載の電極組立体を有する、電気化学セル。
(7)前記電気化学セルは、二次電池またはキャパシタであることを特徴とする、(6)に記載の電気化学セル。
(8)前記二次電池は、金属層と樹脂層を含むラミネートシートからなる電池ケースに、電極組立体が密封状態に内蔵されてなることを特徴とする、(7)に記載の電気化学セル。
(9)前記二次電池は、高出力大容量の電池パックに使用される単位電池であることを特徴とする、(8)に記載の電気化学セル。
図1
図2A
図2B
図3