特許第5783079号(P5783079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5783079
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】気液接触装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 5/00 20060101AFI20150907BHJP
   B01J 10/00 20060101ALI20150907BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20150907BHJP
   B01F 7/16 20060101ALI20150907BHJP
   B01F 7/32 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   B01F5/00 G
   B01J10/00 Z
   B01F3/04 C
   B01F3/04 Z
   B01F7/16 G
   B01F7/32 A
   B01J10/00 B
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-28176(P2012-28176)
(22)【出願日】2012年2月13日
(65)【公開番号】特開2013-163165(P2013-163165A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2014年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089222
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 康伸
(72)【発明者】
【氏名】渡部 陽一
【審査官】 関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−168025(JP,U)
【文献】 特開2008−296126(JP,A)
【文献】 特開2008−194663(JP,A)
【文献】 特開平01−266898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 5/00
B01F 3/04
B01F 7/16
B01F 7/32
B01J 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が開口され、該先端の開口を通じて外部と連通する先端側空間を有し、該先端側空間が基端と気密に遮断された中空な筒状部材と、
該筒状部材の内部に配設された回転軸と、
該回転軸における前記筒状部材の先端部側の端部に取り付けられた回転部材と、
前記筒状部材の先端側空間に連通され、該先端側空間内に気体を導入する吸気通路と、を備えており、
前記筒状部材は、
その先端部が液体によって満たされた状態では、前記先端側空間が前記吸気通路を通してのみ外部と連通されるようになっており、
前記筒状部材の先端部には、該筒状部材において前記吸気通路が連通されている部分よりも内径が大きい円筒状の膨径部が形成されており、
前記回転部材は、
前記膨径部の先端部外面に、その表面が前記回転軸の軸方向と交差するように配設されたフランジ状の微細化プレートと、
前記膨径部の開口および前記微細化プレートと対向するように配設され、前記微細化プレートとの間に前記膨径部の先端部から排出された被処理液体のみを通過させ、同時に周辺の液体の混入を防止しうる盲板であるベースプレートと、
前記ベースプレートと前記微細化プレートとの間に設けられた攪拌翼とからなり、
前記攪拌翼は、
前記回転軸が回転したときに、前記筒状部材の先端側空間内部に該筒状部材の基端から先端に向かう前記液体の旋回流を形成し得る形状に形成されており、かつ前記膨径部から排出された液体によって前記微細化プレートに衝突する流れが形成されるような形状に形成されている
ことを特徴とする気液接触装置。
【請求項2】
前記吸気通路は、
その断面積が、前記筒状部材の先端側空間内部に前記液体の旋回流が形成されたときに該先端側空間内部に発生する負圧によって前記膨径部まで連続する気体層が発生する大きさに形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の気液接触装置。
【請求項3】
前記吸気通路から導入された気体と接触させる液体を前記筒状部材の先端側空間内部に供給する液体供給部が設けられており、
該液体供給部は、
液体が収容された液体収容部を備えており、
該液体収容部と前記膨径部とが液体供給流路によって連通されており、
前記回転軸を回転させた際に発生する前記膨径部内の負圧によって前記液体収容部から前記膨径部に液体が供給されるように構成されている
ことを特徴とする請求項1または2記載の気液接触装置
【請求項4】
前記撹拌翼の基端部には、
前記回転軸側における前記膨径部側の端縁を凹ませ切欠き部が形成されており、
該切欠き部は、
その内端から前記回転軸の中心軸までの距離が、該回転軸の中心軸から前記膨径部の開口内端縁までの距離と同等となるように形成されている
ことを特徴とする請求項1、2または記載の気液接触装置。
【請求項5】
記微細化プレートと前記撹拌翼との間に形成される隙間の前記回転軸の軸方向における間隔が、10〜50mmである
ことを特徴とする請求項1,2,3または記載の気液接触装置。
【請求項6】
前記微細化プレートには、
該微細化プレートを貫通する貫通孔が複数形成されている
ことを特徴とする請求項1,2,3,4または記載の気液接触装置。
【請求項7】
前記微細化プレートの貫通孔は、
前記攪拌翼の先端部付近に該当する位置に形成されている
ことを特徴とする請求項記載の気液接触装置。
【請求項8】
前記回転部材の攪拌翼は、
前記回転軸の回転方向の前方に位置する面が、前記微細化プレートに向いた状態となるように配設されている
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載に記載の気液接触装置。
【請求項9】
前記吸気通路は、
その断面積が、前記液体の密度が前記液体にせん断力が加わったときに該液体中の気体もせん断される程度の密度することができる量の気体を前記筒状部材の内部に供給する大きさに形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の気液接触装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液接触装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体と気体を反応させたり、液体等を浄化したりするために、液体に対して気体を供給することが行われている。例えば、液体等を浄化する場合には、液体に対して気体(酸素、空気等)を供給して、液体中の有害物質や不純物(以下、まとめて不純物という)を酸化して、無害化したり沈殿させて除去したりすることが行われている。また、液中に内在するガス成分を曝気して除去することも行われている。
【0003】
上記のごとく、液体と気体とを効率よく反応させたり不純物を効率よく酸化させたりす
る上では、気体と液体または、気体と液体中の不純物の接触効率を高めることが必要である。かかる接触効率を高くする方法として、気体を微細化して液体中に供給する方法が採用されている(例えば、特許文献1、2)。
【0004】
特許文献1には、気液微細混合装置が開示されている。この気液微細混合装置は、上部側面に吸液口と吸気口とを有する固定筒と、この固定筒の内側にモータにより回転する回転筒とを備えている。固定筒の下部には、固定筒の外部と連通された連通室が形成されており、この連通室内にモータにより回転する送出手段が設けられている。このため、送出手段が回転すると、連通室内の液体を外部に送出することにより連通室内と固定筒内が負圧となって液体および気体が吸液口および吸気口よりそれぞれ固定筒内に導入されるようになっている。
【0005】
また、この気液微細混合装置では、固定筒の内周面と回転筒の外周面とにそれぞれ三日月形状台形型の突起部を固定筒ないし回転筒の長さ方向に複数本形成して、これら各突起物間を三日月形状の溝としている。
このため、固定筒の内周面と回転筒の外周面との間には波形状の気液体の流通路が形成され、しかも、気液体の流通路の幅は内側の回転筒が回転することにより広幅部と狭幅部を激しく交互におこなわれるので、気液体流通路を通過する気液体中の気泡は超微細になり、浄化すべき液体中に素早く溶け込み滞留するとの記載がある。
つまり、特許文献1の技術は、筒状の気液体流通路の一端から同時に気体と液体を通路内に流入させて他端から排出する構造であって、気液体流通路を通過する間に、撹拌手段を多数設けて、強制的に気体を大量に液体に懸濁させることを目的とした技術である。
【0006】
例えば、撹拌手段として、固定筒における吸液口及び吸気口の近傍(気液体流通路の一端近傍)に、モータにより回転する攪拌用渦巻形状型コイルや微細気泡にする為の渦巻形状型コイル、羽部に孔を形成されたスクリュウ形状型プロペラなどを設けている。
【0007】
また、特許文献2には、液液混合処理装置が開示されている。この液液混合処理装置は、被処理液が収容された処理槽に、回転駆動機構を備えた回転軸にインペラを設けて成る回転翼機構を設置しており、回転領域に添加液を供給する添加液供給機構を有するものである。添加液供給機構は、インペラの回転領域を部分的に覆う導入空間と、添加液の供給源と導入空間を連通する供給路を備えている。かかる構成であるので、導入空間に供給された添加液は、インペラの回転によって生じる負圧により回転領域に引き込まれ、インペラの剪断力によって素早く均一に分散され、添加液と被処理液とを効率よく攪拌、混合、反応する旨が記載されている。
【0008】
また、特許文献2には、回転領域に気体を供給する気体供給機構を備えた構成も開示されている。この気体供給機構は、回転軸を中空な軸として、この回転軸においてインペラの取付けられた下部の外周に多数の通孔を形成した構成となっている。そして、このような構成を採用しているので、回転軸が回転すると、気体は回転軸上部通孔より回転軸の内部を通って回転軸下端外周の通孔から放出され、添加液を被処理液に混合するに当たってこの吐出された気体の液体分散力によって添加液と被処理液とが撹拌、混合される旨が記載されている。
【0009】
しかるに、特許文献1には、回転軸などの回転によって液体に対して気体を供給しかつ供給された気体と液体と強制的に大量に懸濁させることはできるが、液体に対する気体の懸濁量を適切に調整することは難しく、かかる調整をするための構成は開示されていない。
【0010】
また、特許文献2には、回転領域に気体を供給する構成は開示されているが、あくまでも、この気体は、添加液と被処理液との撹拌、混合を促進することを目的とするものであり、気体と液体との接触効率を高める技術ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−194663号公報
【特許文献2】特開2008−296126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記事情に鑑み、液体と気体との接触効率を高くすることができる気液接触装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明の気液接触装置は、先端が開口され、該先端の開口を通じて外部と連通する先端側空間を有し、該先端側空間が基端と気密に遮断された中空な筒状部材と、該筒状部材の内部に配設された回転軸と、該回転軸における前記筒状部材の先端部側の端部に取り付けられた回転部材と、前記筒状部材の先端側空間に連通され、該先端側空間内に気体を導入する吸気通路と、を備えており、前記筒状部材は、その先端部が液体によって満たされた状態では、前記先端側空間が前記吸気通路を通してのみ外部と連通されるようになっており、前記筒状部材の先端部には、該筒状部材において前記吸気通路が連通されている部分よりも内径が大きい円筒状の膨径部が形成されており、前記回転部材は、前記膨径部の先端部外面に、その表面が前記回転軸の軸方向と交差するように配設されたフランジ状の微細化プレートと、前記膨径部の開口および前記微細化プレートと対向するように配設され、前記微細化プレートとの間に前記膨径部の先端部から排出された被処理液体のみを通過させ、同時に周辺の液体の混入を防止しうる盲板であるベースプレートと、前記ベースプレートと前記微細化プレートとの間に設けられた攪拌翼とからなり、前記攪拌翼は、前記回転軸が回転したときに、前記筒状部材の先端側空間内部に該筒状部材の基端から先端に向かう前記液体の旋回流を形成し得る形状に形成されており、かつ前記膨径部から排出された液体によって前記微細化プレートに衝突する流れが形成されるような形状に形成されていることを特徴とする。
第2発明の気液接触装置は、第1発明において、前記吸気通路は、その断面積が、前記筒状部材の先端側空間内部に前記液体の旋回流が形成されたときに該先端側空間内部に発生する負圧によって前記膨径部まで連続する気体層が発生する大きさに形成されていることを特徴とする。
第3発明の気液接触装置は、第1または第2発明において、前記吸気通路から導入された気体と接触させる液体を前記筒状部材の先端側空間内部に供給する液体供給部が設けられており、該液体供給部は、液体が収容された液体収容部を備えており、該液体収容部と前記膨径部とが液体供給流路によって連通されており、前記回転軸を回転させた際に発生する前記膨径部内の負圧によって前記液体収容部から前記膨径部に液体が供給されるように構成されていることを特徴とする
第4発明の気液接触装置は、第、第または第発明において、前記撹拌翼の基端部には、前記回転軸側における前記膨径部側の端縁を凹ませ切欠き部が形成されており、
該切欠き部は、その内端から前記回転軸の中心軸までの距離が、該回転軸の中心軸から前記膨径部の開口内端縁までの距離と同等となるように形成されていることを特徴とする。
発明の気液接触装置は、第1、第2、第3または第発明において、前記微細化プレートと前記撹拌翼との間に形成される隙間の前記回転軸の軸方向における間隔が、10〜50mmであることを特徴とする。
発明の気液接触装置は、第1、第2、第3、第4または第発明において、前記微細化プレートには、該微細化プレートを貫通する貫通孔が複数形成されていることを特徴とする。
発明の気液接触装置は、第発明において、前記微細化プレートの貫通孔は、前記攪拌翼の先端部付近に該当する位置に形成されていることを特徴とする。
発明の気液接触装置は、第1ないし発明のいずれかにおいて、前記回転部材の攪拌翼は、前記回転軸の回転方向の前方に位置する面が、前記微細化プレートに向いた状態となるように配設されていることを特徴とする。
発明の気液接触装置は、第1ないし発明のいずれかにおいて、前記吸気通路は、その断面積が、前記液体の密度が前記液体にせん断力が加わったときに該液体中の気体もせん断される程度の密度することができる量の気体を前記筒状部材の内部に供給する大きさに形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1発明によれば、つぎの効果を奏する。
a)気液接触装置の先端を液体に浸漬した状態で回転軸を回転させると、筒状部材の先端側空間の内部に筒状部材の基端から先端に向かう旋回流を形成しながら、筒状部材の先端側空間内の液体が筒状部材の先端、つまり、膨径部の先端から外部に排出される。このため、筒状部材の内部の圧力が低下し、吸気通路を通って筒状部材の内部に気体が導入される。すると、筒状部材の先端側空間は、筒状部材の先端、つまり、膨径部の先端でのみ外部と連通されており、吸気通路を通してしか気体が先端側空間内に供給されないので、吸気通路の大きさを適切に調整すれば、回転軸を回転させたときに筒状部材の先端側空間に発生する負圧を調整することができる。言い換えれば、筒状部材の先端側膨径部まで気体層を連続して形成するよう調整することが可能となる。そして、強制送気ではなく、回転軸の回転、つまり、回転部材の撹拌力に応じた適切な量の気体が筒状部材の先端側空間に供給されるので、撹拌力に応じた適切な量の気体を液体に懸濁させることができる。
b)膨径部の開口から排出された液体には、撹拌翼との干渉によるせん断力が加わるので、気体に懸濁している気泡を効果的に微細化することができる。しかも、ベースプレートが盲板であるので、膨径部の開口から排出された液体のみが微細化プレートとベースプレートとの間の流路に供給される。したがって、微細化プレートとベースプレートとの間の流路でも、気体が処理前液とのみ接触した状態に維持でき、しかも、微細化した気泡と接触するので、気液接触による処理効率を向上させることができる。
c)さらに、膨径部の開口から排出された液体は撹拌翼によって微細化プレートに衝突するように流れるから、液体には撹拌翼との干渉によるせん断力に加えて微細化プレートとの衝突によるせん断力も加わる。しかも、衝突板として機能する微細化プレートが、撹拌翼をベースプレートとの間に挟むように配置されているので、撹拌翼の周囲に衝突板が配置される場合に比べて、撹拌翼から微細化プレートまでの距離も短くなる。したがって、微細化プレートと液体の衝突によるせん断力を大きくできるから、液体中の気泡のせん断が促進され、気泡を効果的に微細化することができる。
第2発明によれば、吸気通路を通って筒状部材の内部に導入された気体によって膨径部まで連続する気体層が発生するので、筒状部材下部に位置する膨径部内部において液体と気体とが効率よく混合される。すると、効果的に気泡を液体に懸濁させることができるので、より多くの量の気体を液体に懸濁でき、かつ気体と液体を効率よく接触させることができる。また、吸気通路断面積を小さくして吸気量を制限し、攪拌翼の回転作用を調整することによって膨径部の負圧を効果的に構成することができるので、処理前液を導入する膨径部の水深が一定の深さにある場合でも、前記膨径部まで連続する気体層を構成することが可能となる、
第3発明によれば、液体供給通路を通して、気体と接触させたい液体(処理前液)を筒状部材下部膨径部内に直接供給することができるので、処理前液と気体とを効果的に接触させることができる。しかも、強制的に膨径部内に液体を供給するのではなく、回転軸を回転させた際に発生する膨径部内の負圧によって液体収容部から膨径部に液体を供給するように構成されている。これにより膨径部の負圧が安定化し、処理前液供給量及び吸気量が安定するため、液密度が適度に安定化する。したがって、せん断力が効果的に作用し、処理前液と気体との接触効率を高くすることができ、気液接触による処理効率も向上させることができる
第4発明によれば、撹拌翼の基端部には切欠き部が形成されているので、膨径部の開口から微細化プレートとベースプレートとの間の流路にスムースに液体を排出させることができる。したがって、膨径部の開口から液体が排出されたときに、筒状部材の内部に大きな負圧を発生させることができる。
発明によれば、攪拌翼と微細化プレートとの間において液体に適切なせん断力を加えることができるので、液体中の気泡のせん断が促進され、気泡を効果的に微細化することができる。
発明によれば、液体は微細化プレートの貫通孔を通過する際にもせん断されるので、液体中の気泡もせん断されて気泡はさらに微細化することができる。すると、微細化された気泡を外部に供給できるので、外部の液体(処理後液)と微細化された気泡とを接触させることができる。
発明によれば、液体が微細化プレートの貫通孔を通過するときに撹拌翼の先端と干渉するので、気体の微細化をさらに進行させることができる。しかも、撹拌翼において最も移動速度が速い先端において、上方に移動する移動する気泡にその移動方向と直交する方向からせん断力を付与することができるので、気泡の微細化をさらに促進することができる。
発明によれば、液体を微細化プレートに衝突させる際の液体の衝突流速をさらに高くすることができるので、気体の微細化をさらに進行させることができる。
発明によれば、液体に懸濁している気泡の量が適切な量となっているので、液体中に存在する気泡が効果的にせん断され微細化するから、液体と気体の接触効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の気液接触装置10の単体概略説明図である。
図2】(A)は図1のIIA-IIA線断面矢視図であり、(B)は回転部材15の要部拡大図である。
図3】本実施形態の気液接触装置10を適用した酸化装置1の概略説明図である。
図4】本実施形態の気液接触装置10を適用した酸化装置1の要部拡大説明図である。
図5】他の攪拌翼16の要部拡大説明図である
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の気液接触装置は、液体に対して気体を接触させる装置であって、処理すべき液体において新規に供給される液体に効果的に接触させることができ、液体に混合された気泡を微細化できる構造としたことに特徴を有している。
【0017】
(本実施形態の気液接触装置10について)
【0018】
図1において、符号10が本実施形態の気液接触装置(以下、気液接触装置10という)を示している。
図1に示すように、本実施形態の気液接触装置10は、筒状部材11と、回転軸12と、回転部材15とを備えており、回転部材15および筒状部材11の先端部を液体に浸漬して使用するものである。
以下、気液接触装置10の各部材について説明する。
【0019】
(筒状部材11および回転軸12の説明)
図1に示すように、筒状部材11は、軸方向に沿って延びた中空な管状の部材である。この筒状部材11の内部には回転軸12が配設されている。この回転軸12は、その軸方向の長さが筒状部材11の軸方向の長さよりも長い軸であり、その基端部(図1では上端)が筒状部材11の基端(図1では上端)から突出し、かつ、その先端部(図1では下端)が筒状部材11の先端開口(図1の膨径部11eの開口)から突出するように配設されている。
【0020】
筒状部材11は、その基端と中間に設けられたベアリングを介して、回転軸12を保持している。具体的には、筒状部材11は、回転軸12を、筒状部材11の軸方向には移動できないが筒状部材11の中心軸周りの回転は可能となるように保持している。
【0021】
また、筒状部材11は、その内部が中間部に設けられたベアリングによって、基端筒11aと先端筒11bとに気密に分割されている。つまり、先端筒11bは、先端の開口を通じて外部と連通するようになっている。この先端筒11bには吸気通路11cが設けられている。この吸気通路11cは、中空な管状部材であり、外気を筒状部材11の先端筒11b内に導入し得るように設けられている。このため、筒状部材11の先端が液体などに浸漬されると、先端筒11b内は、吸気通路11cを通してのみ外部と連通されるようになるが、その理由は後述する。
【0022】
この筒状部材11の先端筒11bの先端には、筒状部材11の先端筒11bにおいて、吸気通路11cが連通された部分よりも内径が大きい膨径部11eが設けられている。この膨径部11eには、その側面に配管21pが連通されており、この配管21pを通して、液体供給部21から膨径部11e内に液体(後述する処理前液PL)を供給できるようになっている。
液体供給部21は、図示しないが、液体(後述する処理前液PL)が収容された貯留槽などの液体収容部を備えており、この液体収容部が配管21pによって膨径部11eと連通されている。この液体収容部は、配管21p内が液体に満たされた状態において、重力などによって強制的に膨径部11eに液体が流れないように配設されている。例えば、後述するように気液接触装置10を酸化槽2内の液体に浸漬して使用する場合には、液体収容部の液面が、気液接触装置10が作動していない状態における気液接触装置10が浸漬された酸化槽2内の液体の液面と同じになるように調整されていれば、上記の状態とすることができる。
【0023】
なお、筒状部材11において、中間部に設けられたベアリングから先端(膨径部11eの開口端)までの空間が、特許請求の範囲にいう先端側空間に相当する。
【0024】
また、図1および図2に示すように、膨径部11eの開口端には、板状の微細化プレート11dが設けられている。この微細化プレート11dは、その表面(図1および図2では下側の面)が、筒状部材11の軸方向と直交するように設けられている。言い換えれば、筒状部材11の内に配置されている回転軸12の中心軸の軸方向と交差するように設けられている。この微細化プレート11dは、その外径が筒状部材11の膨径部11eの外径よりも大きくなるように、また、通常、後述する攪拌翼16の外径より大きく、またプレート上の膨径部より外側に後述する貫通孔を設置できるように形成されている。つまり、微細化プレート11dが取り付けられたことによって筒状部材11がその先端にフランジを有する形状となるように、微細化プレート11dは設けられているのである。
【0025】
図2に示すように、微細化プレート11dは、環状(ドーナッツ状)に形成された板状の部材であり、その中心が筒状部材11の中心軸上に位置するように設けられている。具体的には、微細化プレート11dは、その内径が膨径部11eの内径と同等または小さくかつ回転軸12の軸径よりも大きい挿通孔11gを備えており、回転軸12はこの挿通孔11gを通して、筒状部材11から外部に突出している。
そして、微細化プレート11dには、その外周縁に沿って複数の貫通孔11fが形成されているが、その理由は後述する。
なお、微細化プレート11dは、液体を透過しない素材によって形成されており、複数の貫通孔11fを除き、気体も液体も透過できない構造となっているが、その理由は後述する。
【0026】
(回転部材15)
図1および図2に示すように、回転軸12において、膨径部11eの開口端から突出している端部(図1では下端、以下、回転軸12の下端という)には、回転部材15が設けられている。
【0027】
回転部材15は、略平板状の部材であるベースプレート17と、複数枚の撹拌翼16とを備えている。
【0028】
まず、ベースプレート17は、平面視で円形であって、その中心が回転軸12の中心軸上に位置するように取り付けられている。
このベースプレート17は、回転軸12が筒状部材11内部に配置された状態において、膨径部11eの開口と対向するように配設されている。しかも、このベースプレート17は、その直径が膨径部11eの開口径(つまり内径)よりも大きくなるように形成されている。そして、ベースプレート17は、その半径が、回転軸12の中心軸から攪拌翼16の外端までの距離と同等以上となるように形成されている。
なお、ベースプレート17も、上述した微細化プレート11dと同様に、液体を透過しない素材によって形成されており、気体も液体も透過できない構造となっている。言い換えれば、ベースプレート17は盲板によって形成されているが、その理由は後述する。
【0029】
ベースプレート17の上面には、複数枚の撹拌翼16が設けられている。この複数枚の撹拌翼16は、ベースプレート17上面に立設された板状の部材であり、ベースプレート17上に円周方向に沿って間隔を空けて取り付けられている。具体的には、撹拌翼16は、回転部材15を液体に浸漬して回転軸12を回転させると、液体中に回転軸12周りの旋回流が形成されるような形状および配置に設けられている。
また、図2(B)に示すように、この撹拌翼16には、その基端部に膨径部11e側から凹んだ切欠き部16gが形成されているが、その理由は後述する。
【0030】
なお、回転部材15は上記のごとき形状に限定されず、回転軸12周りに上記のごとき旋回流が形成される形状であればよい。例えば、液体を撹拌する際に使用される一般的な回転部材(例えば、インペラ等)のような形状でもよく、とくに限定されない。
また、上記例では、ベースプレート17を回転部材15の一構成要素とした場合を説明したが、ベースプレート17は必ずしも回転部材15の一構成要素としなくてもよい。つまり、ベースプレート17は、上記のごとき位置関係となるように配置されていればよく、必ずしも回転軸12の先端に固定されている必要はない。例えば、軸材などを利用して、微細化プレート11dの外周端縁とベースプレート17の外周端縁とを連結して、ベースプレート17を所定の位置に保持してもよい。かかる構成とした場合には、複数枚の撹拌翼16は、ベースプレート17に固定せず、回転軸12に固定すればよい。
【0031】
(本実施形態の気液接触装置10の作用効果)
上述した構造を有する本実施形態の気液接触装置10が適用される装置としては、例えば、COD(化学的酸素要求量)値を上昇させる成分を含有する液体(処理液体)において、かかる成分を酸化して、処理液体のCOD値を減少させるために、処理液体に気体を懸濁させる装置(酸化装置)を挙げることができる。
他にも、液体と気体の効率的な接触が要求される反応装置にも適用することができる。
【0032】
そこで、以下では、本実施形態の気液接触装置10を、上述したような処理液体の成分を酸化する酸化装置として使用した場合を例として、本実施形態の気液接触装置10の作用効果を説明する。
【0033】
(酸化装置1の説明)
図3には、本実施形態の気液接触装置10を適用した酸化装置1を示している。
図3に示すように、酸化装置1は、処理液体などの液体を収容することができる酸化槽2を備えており、この酸化槽2内に本実施形態の気液接触装置10が配設される。
なお、酸化槽2は、内部に液体を収容するための中空な収容空間2hを有する容器であり、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)や重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)などをも含む液体に対する耐性が高い素材によって形成されている。
【0034】
本実施形態の気液接触装置10は、上述した酸化槽2の収容空間2h内にその先端が収容されるように配設される。具体的には、回転部材15および筒状部材11の先端部が、酸化槽2の収容空間2h内に収容された液体(図3および図4では処理後液AL)中に位置するように、気液接触装置10は配設される。
なお、この際に、筒状部材11の膨径部11eは完全に酸化槽2内の液体中に浸漬されるが、筒状部材11の先端筒11bにおいて、吸気通路11cから気体が供給される部分(吸気通路11cと筒状部材11の先端筒11bとの連通孔)よりも液面が低くなるように配置する。
また、図3では、酸化槽2内の液体として処理後液ALとなっているが、本実施形態の気液接触装置10による酸化処理が開始される前であれば、酸化槽2内の液体は単なる水でもよい。また、酸化槽2内の液体を循環させながら酸化処理を行う場合であれば、酸化処理する液体(処理前液PL)を酸化槽2内に収容していてもよい。例えば、酸化槽2内の液体をポンプなど追加設置することによって配管21pよりも上流側(例えば液体供給部21の液体収容部)に供給すれば、酸化槽2内の液体を循環させながら処理することができる。
【0035】
また、回転軸12の基端部(図3では上端部)には、回転軸12を中心軸周りに回転させる軸回転機構が連結される。軸回転機構はとくに限定されないが、例えば、回転軸12の基端部に設けられた従動側プーリ12pを設け、この従動側プーリ12pをモータの主軸に取り付けられた駆動側プーリとベルトによって連結した構成としてもよい。かかる構成とすれば、モータを作動させれば、駆動側プーリ→ベルト→従動側プーリ12pの順で駆動力が伝達され、回転軸12を回転させることができる。
なお、回転軸12を回転させる駆動機構は、回転軸12を回転させることができる構造であればとくに限定されない。例えば、回転軸12の基端を、モータの主軸に直接連結してもよい。
【0036】
上記のごとき状態となるように気液接触装置10が酸化槽2に配置され、気液接触装置10の回転軸12の基端が軸回転機構と連結されると、軸回転機構を作動させて回転軸12を回転させる。すると、酸化槽2内には、攪拌翼16の回転によって回転軸12から酸化槽2の内側面に向かう流れを伴った回転軸12周りの旋回流が形成される。
【0037】
酸化槽2内に上記のごとき処理液体Lの流動が形成されると、この流動に伴って、膨径部11eに供給された処理前液PLは、回転軸12の中心軸の周囲を旋回しながら、筒状部材11の先端に向かって流動する。つまり、回転軸12が回転すると、筒状部材11の内部にも、筒状部材11の基端から先端に向かう旋回流が形成され、筒状部材11の内部の処理前液PLが筒状部材11の膨径部11eの先端開口から流出する。
【0038】
ここで、筒状部材11の中間に設けられたベアリングによって、筒状部材11の先端筒11b内部が筒状部材11の基端筒11aから気密に分離されている。
このため、処理前液PLの流出によって、筒状部材11の先端筒11b内部を確実に大気圧に比べて負圧にすることができる。
しかも、撹拌翼16の基端部に膨径部11e側から凹んだ切欠き部16gが形成されているので、処理前液PLは膨径部11eから効率よく排出される。つまり、切り欠き部16gが設けられているので、攪拌翼16が膨径部11eの開口から処理前液PLを排出する抵抗とならない。このため、膨径部11eから処理前液PLを効率よく排出することができるので、筒状部材11の内部を効果的に減圧化することができる。
【0039】
上記のように、筒状部材11の先端筒11b内部が大気圧に比べて負圧になると、吸気通路11cを通って気体が筒状部材11の先端筒11b内に流入する。
同様に、先端筒11b内部、つまり、膨径部11e内から処理液体Lが排出されると、液体収容部よりも膨径部11eの圧力が低くなるので、液体収容部と膨径部11eとの圧力差、言い換えれば、膨径部11e内の負圧によって液体収容部からは膨径部11eに処理前液PLが供給される。
つまり、処理前液PLおよび気体ともに、回転軸12の回転速度(言い換えれば、攪拌翼16による先端筒11b内からの液体排出能力)に応じた量が先端筒11b内部(つまり、膨径部11e内)に供給されることになる。このため強制送気の場合のように、過剰な気体が液体中に懸濁して液密度が小さくなるリスクは回避され、しかも処理前液PLと気体がバランスよく混合されかつ充分な気体が供給されるため、気体を懸濁した液体の密度が大きく低下することはなく、せん断力が充分伝わる状態で効率よくせん断することが可能となる。
【0040】
膨径部11eに流入した処理前液PLは膨径部11e内で旋回流を形成しながら膨径部11eの先端開口に流れ、吸気通路11cから流入した気体は、この旋回流の影響により、膨径部11e内において処理前液PLと混合する。しかも、旋回流の影響により、筒状部材11と回転軸12との間にはすり鉢状に下方に凹んだ空間(気体層)が形成される。
吸気通路11cは、その断面積が適切な大きさに形成されていれば、筒状部材11の内部に発生する負圧は適切な大きさになり、適切な大きさの気体層を先端筒11b内部に発生させことができる。例えば、吸気通路11cにおける気体流路の断面積が筒状部材11と回転軸12との間の空間の断面積よりも小さくしておけば、筒状部材11の内部に発生する負圧によって膨径部11eまで連続する気体層を発生させることができる。
膨径部11eまで連続する気体層が形成されると、処理前液PLと気体との界面が非常に大きくなって多くの気体が処理前液PLと接触するとともに、膨径部11e内では効果的な気液混合が図られ、気体は処理前液PL中に効率的に取り込まれる。すると、処理前液PL中に取り込まれた気体は気泡となり、この気泡が処理前液PL中に懸濁する。
【0041】
また、気泡が懸濁した処理前液PLは、膨径部11eの先端開口から微細化プレート11dとベースプレート17の間の空間に排出されるが、その際に、処理前液PLは撹拌翼16と干渉する。すると、撹拌翼16の先端によって、処理前液PLがせん断され、同時に処理前液PLに懸濁している気泡がせん断されるので、気泡の微細化がさらに進行する。
【0042】
さらに、微細化プレート11dの下面と撹拌翼16の上端との間には隙間が形成されている。処理前液PLは攪拌翼16の間やこの隙間を通過しながら、外方に向かって移動する。このとき、微細化プレート11dの下面と撹拌翼16の上端との間の隙間が狭くしかも撹拌翼16が回転しているので、この隙間を通過する際にも、処理前液PLが微細化プレート11dの下面および撹拌翼16の上端と干渉して処理前液PLがせん断される。すると、この際にも、処理前液PLとともに処理前液PLに懸濁している気泡がせん断されるので、気泡の微細化がさらに進行する。
【0043】
さらに、膨径部11eの開口から排出された処理前液PLを撹拌翼16によって微細化プレート11dに衝突するように流すことから、処理前液PLには微細化プレート11dとの衝突によるせん断力も加わる。しかも、衝突板として機能する微細化プレート11dが、撹拌翼16をベースプレート17との間に挟むように配置されているので、撹拌翼16の周囲に衝突板が垂直に配置される場合に比べて、撹拌翼16から微細化プレート11dまでの距離も短くなり、微細化プレート11dと処理前液PLの衝突によるせん断力を大きくできるから、処理前液PL中の気泡のせん断が促進され、気泡の微細化がさらに進行する。
【0044】
とくに、処理前液PLは、微細化プレート11dの貫通孔11fの位置まで達すると、大部分処理前液PLは微細化プレート11dとベースプレート17との間から酸化槽2の収容空間2hに処理後液ALとして排出される。一方、一部の処理前液PLは、微細化プレート11dの貫通孔11fを通って上方に流れようとする。すると、その際にも、処理前液PLは撹拌翼16によってせん断され、処理前液PLがせん断されるとともに処理前液PLに懸濁している気泡が撹拌翼16によってせん断されるので、気泡の微細化が促進される。すると、微細化プレート11dの貫通孔11fを通った処理前液PLは、その貫通孔11fを通過する際にも微細化された気泡との接触が促進されるので、さらに気液接触が進行した処理後液ALとして収容空間2hに排出される。
【0045】
以上のように、本実施形態の気液接触装置10では、筒状部材11内および膨径部11e内で、気体と処理前液PLとの接触面積を大きくでき処理前液PLに気体を気泡として懸濁させることができる。しかも、撹拌翼16の回転によって処理前液PL中の気泡を微細化(約1〜3μm程度)することができるので、処理前液PLと気体との接触界面が大幅に増大する。したがって、処理前液PLと気体との接触効率を高くできるので、処理前液PL中の処理対象物、例えば、亜硫酸ナトリウムや重亜硫酸ナトリウムを酸素と効率よく接触させることができ、効率よく酸化させることができる。
【0046】
しかも、本実施形態の気液接触装置10から排出される処理後液ALは、微細化された気泡を含んでいるので、処理後液ALが酸化槽2の収容空間2hに排出されれば、この処理後液ALに含まれる気泡を、酸化槽2の収容空間2h内の処理後液ALと接触させることができる。すると、気液接触装置10から排出された処理後液ALを再度微細化された気泡と接触させることができるので、処理後液ALに含まれている処理対象物を更に酸化することができる。
【0047】
なお、処理前液PLが膨径部11eに供給された際に、配管21pから流入する処理前液PLによって先端筒11b内における旋回流の形成が阻害される可能性があるが、膨径部11eは筒状部材11の先端筒11bよりも容積が大きいので、かかる問題の発生を防ぐことができる。
【0048】
(気体の懸濁量の適正化)
上記のごとく、本実施形態の気液接触装置10では、膨径部11eにおいて気体を処理前液PLに懸濁させているが、気体が過剰に処理前液PLに懸濁した場合には、処理前液PLの密度が小さくなる。その場合、処理前液PLが撹拌翼16と干渉したときに十分なせん断力が発生せず、気泡が微細化されない場合がある。例えば、膨径部11eに強制送気を行った場合には、両方から供給される気体および液体の量を適切に調整する制御を行わなければ、そのような問題が生じる可能性がある。また逆に膨径部11eに強制給液した場合には、液量に対して十分な気体量の懸濁ができない場合があり、気液接触効率は低下する可能性がある。
【0049】
しかし、本実施形態の気液接触装置10では、強制的に膨径部11e内に処理前液PLを供給するのではなく、回転軸12を回転させた際に発生する膨径部11e内の負圧によって液体収容部から膨径部11eに処理前液PLを供給するように構成されている。これにより膨径部11eの負圧が安定化し、処理前液PLの供給量及び吸気量が安定するため、液密度が適度に安定化する。したがって、せん断力が効果的に作用し、処理前液PLと気体との接触効率を高くすることができ、気液接触による処理効率も向上させることができる。
【0050】
さらに、本実施形態の気液接触装置10では、強制的に膨径部11e内に処理前液PLを供給するのではなく、処理前液PLは膨径部11eから排出されたことによって発生する膨径部11e内の負圧によって液体収容部から膨径部に処理前液PLが供給される。これにより膨径部11eの負圧が安定化し、処理前液PLの供給量及び吸気量が安定するため、液密度が適度に安定化する。したがって、せん断力が効果的に作用し、気泡の微細化が促進され、処理前液PLと気体との接触効率を高くすることができ、気液接触による処理効率も向上させることができる。
すなわち、筒状部材11の先端に処理前液PLが存在していれば、吸気通路11cを通してしか気体が先端筒11b内に供給されないので、筒状部材11の先端側空間内に導入される気体の量を適切に調整することができ、筒状部材11の先端側空間内の負圧を安定して確保でき、膨径部11eにいたる連続した空気層を維持することができる。つまり、本実施形態の気液接触装置10では、強制送気や強制給液ではなく、処理前液PLおよび気体のいずれも、回転軸12の回転速度に応じた量が先端筒11b内部に供給されることになる。
したがって、攪拌翼16の撹拌力、言い換えれば、気液接触装置10による処理前液PLの処理量と膨径部11eに供給される気体の量の割合が自然に適切な割合となるので、特別な制御をしなくても、処理前液PLへの気体の懸濁状態を適切な状態とすることができる。
【0051】
しかも、本実施形態の気液接触装置10では、吸気通路11cの吸気通路の断面積を調整すれば、先端筒11b内部に発生する負圧、つまり、先端筒11b内部の圧力と大気圧との差を調整できる。すると、筒状部材11の先端側空間内及び膨径部11eにおける気液界面状況が変わり、処理前液PLに懸濁させる気体の量をある程度自由かつ簡単に調整することができる。
【0052】
例えば、上述したような気体の懸濁した処理前液PLの密度が処理前液PLがせん断されたときに処理前液PL中の気体もせん断される程度の密度となるように、吸気通路11cにおける気体通路の断面積を調整しておくことが好ましい。つまり、筒状部材11内が負圧になったときに吸気通路11cから吸引される気体の量が、膨径部11eにおいて気体を懸濁させた後の処理前液PLの密度が上述したような密度となるように、吸気通路11cにおける気体通路の断面積を調整しておくことが好ましい。すると、処理前液PLに懸濁している気泡の量が適切な量となっているので、処理前液PL中に存在する気泡が効果的にせん断され微細化するから、処理前液PLと気体の接触効率を向上させることができる。
【0053】
さらに、本実施形態の気液接触装置10の場合、吸気通路11cの吸気通路の断面積を調整することで先端筒11b内部に発生する負圧を調整できるので、気液接触装置10を使用する対象の自由度を高くすることができる。
本実施形態の気液接触装置10を使用する際に、先端筒11bの先端を酸化槽2に浸漬する深さが深くなると、気体層を膨径部11eまで形成するためには、先端筒11b内部に発生させる負圧を大きくすることが必要になる。回転軸12の回転速度を大きくすれば、負圧を大きくすることができるが、その場合には回転軸12を回転させるために大きな駆動力が必要となる。
一方、本実施形態の気液接触装置10の場合、吸気通路11cの吸気通路の断面積を小さくすれば、先端筒11b内部に発生する負圧が大きくなり、先端筒11bの先端の浸漬深さが深くなっても膨径部11eまで連続する気体層を形成することができる。
つまり、本実施形態の気液接触装置10の場合には、吸気通路11cの吸気通路の断面積を調整するだけで、浸漬深さに応じた負圧を与えることができるので、気液接触装置10の設置条件に応じて、膨径部11eに連続する気体層を確実に確保することができる。
【0054】
(微細化プレート11dおよびベースプレート17の効果)
上述したように、本実施形態の気液接触装置10では、微細化プレート11dおよびベースプレート17が、いずれも液体を透過しない素材によって形成されており、気体も液体も透過できない構造となっている。そして、ベースプレート17は、膨径部11eの開口と対向するように配設されており、その直径が膨径部11eの開口径(つまり内径)よりも大きくなるように形成されている。すると、攪拌翼16の回転に起因して膨径部11eの開口から外方に向かう流れが形成された場合でも、酸化槽2の収容空間2h内の処理後液ALが膨径部11eの開口内や攪拌翼16の部分に侵入することを防ぐことができる。すると、ベースプレート17と微細化プレート11dとの間から排出されるまでの間は、処理前液PLのみを気体と接触させることができるので、処理前液PLと気体との接触効率を高く維持することができ、気液接触による処理効率も向上させることができる。
【0055】
(微細化プレート11dと撹拌翼16の関係について)
回転部材15の撹拌翼16の大きさはとくに限定されないが、相対的には、その先端から回転軸12の中心軸までの距離が、微細化プレート11dの外端縁から回転軸12の中心軸までの距離よりも短く形成されていることが好ましい。とくに、攪拌翼16の先端から回転軸12の中心軸までの距離が、複数の貫通孔11fの中心軸から回転軸12の中心軸までの距離とほぼ同じ距離となるようにしておけば、微細化プレート11dの貫通孔11fを通過するときに撹拌翼16の先端と干渉させることができ、ここで攪拌翼による最大のせん断力を活用できる。
すると、処理前液PLが微細化プレート11dの貫通孔11fを通過するときに撹拌翼16の先端と干渉させることができるので、処理前液PLに懸濁している気泡をさらに微細化することができる。しかも、撹拌翼16において最も移動速度が速い先端において、処理前液PLとともに上方に移動する気泡にその移動方向と直交する方向からせん断力を付与することができる。すると、処理後液ALとともに酸化槽2の収容空間2h内の液体に微細化された気泡を供給することができる。
【0056】
(微細化プレート11dの貫通孔11fについて)
微細化プレート11dに設けられる複数の貫通孔11fの孔径は、貫通孔11fを通過する処理前液PLが撹拌翼16によってせん断されたときに処理前液PLとともに気泡がせん断されて、その気泡の気泡径を1〜3μm程度とできる大きさであればよいが、20〜30mm程度を好ましく用いることができる。この場合、撹拌翼16によって処理前液PLがせん断された際に、上記径の気泡を効率よく形成できる。
【0057】
また、貫通孔11fは、周方向に沿って並んで設けられるが、貫通孔11fの列は一列だけ設けてもよいし、複数列設けてもよい。一列だけ設けた場合には、貫通孔11fを通過した処理前液PLに懸濁している気泡の径をある程度均一にできるという利点が得られる。
【0058】
また、回転軸12の軸方向において、微細化プレート11dと撹拌翼16との間に形成される隙間はとくに限定されないが、10〜50mm程度が好ましく、20〜30mm程度がより好ましい。かかる隙間とすれば、微細化プレート11dと撹拌翼16との間が適切な間隔になっているので、微細化プレート11dと撹拌翼16との干渉によって、処理前液PLに適切なせん断力を加えることができるので、処理前液PLに懸濁している気泡をより確実に微細化することができる。
【0059】
微細化プレート11dの挿通孔11gの内径はとくに限定されず、膨径部11eから攪拌翼16部分への処理前PLの排出が十分であればよく、筒状部材11の膨径部11eの内径と同程度が好ましい。
【0060】
なお、微細化プレート11dは必ずしも設けなくてもよいが、微細化プレート11dを設ければ、上述したように気泡の微細化を促進できるという利点が得られる。
【0061】
(撹拌翼16の他の形状)
回転部材15の攪拌翼16は、その翼面がベースプレート17の表面(図1では上面)と直交するものでもよいが、図5に示すように、攪拌翼16の回転方向前方に位置する面16aが微細化プレート11d側に向いたものでもよい。攪拌翼16の回転方向前方に位置する面16aが微細化プレート11d側に向いた状態となっていると、攪拌翼16が回転したときに、ベースプレート17と交差しかつベースプレート17から微細化プレート11dに向う処理前液PLの流れが形成される。すると、処理前液PLを微細化プレート11dの下面に衝突させることができるので、この衝突の際に気泡の微細化をさらに進行させることも可能となる。攪拌翼16の回転方向前方に位置する面16aがベースプレート17の表面(または微細化プレート11dの下面)となす角度θはとくに限定されないが、60〜90度程度であれば、処理前液PLが微細化プレート11dと衝突の際に効果的に気泡の微細化を促進できるので、好ましい。
【0062】
なお、上述したように、撹拌翼16として、その基端部に膨径部11e側から凹んだ切欠き部16gが形成されたものを採用する場合には、切欠き部16gの内端から回転軸の中心軸までの距離が微細化プレート11dの挿通孔11gの半径と概ね同等となるように形成されていることが好ましい。
【0063】
(その他の構成について)
(膨径部11eについて)
膨径部11eの形状および大きさはとくに限定されないが、膨径部11eをその下端開口に行くに従って広がるような形状(つまり、ラッパ状)に形成してもよい。
【0064】
(筒状部材11と回転軸12との間の隙間について)
筒状部材11と回転軸12との間に形成される隙間G(図1参照)はとくに限定されないが、例えば2〜10mm程度が好ましい。かかる間隔とすると、筒状部材11の内部に旋回流が形成された際に流動抵抗を抑えつつ、液面を深いすり鉢状とすることができる。すると、吸気通路11cを通して筒状部材11内に気体を吸引する吸引力を強くすることができる。
【0065】
(処理前液PLを供給する構成)
本実施形態の気液接触装置10を用いて処理前液PLを処理する場合において、酸化槽2に収容された処理前液PLに気液接触装置10を浸漬して気液接触装置10を作動させるだけでも、気液接触装置10によって処理前液PLと気体とを接触させることができる。しかし、上述したように、膨径部11eに対して、液体供給部21から直接処理前液PLを供給する方が、処理前液、処理後液の混合を回避できるため、処理前液PLの処理効率を高くすることができるので好ましい。
【0066】
また、膨径部11eに対して、液体供給部21から直接処理前液PLを供給する方法としては、酸化槽2内の酸化槽2に収容された処理前液PLを、ポンプの追加設置などにより、循環させて膨径部11eに直接処理前液PLを供給する方法もあるが、外部から新規に供給される処理前液PLを膨径部11eに供給するようにしてもよい。この場合には、酸化槽2から処理後液ALを排出する排出通路22(図3参照)を設ける。そして、排出通路22における酸化槽2側の開口(処理液体排出口)は、酸化槽2(同一の槽でもよいし、複数の酸化槽を有する場合は別の酸化槽でもよい)内の計画した液面とほぼ同じ又は少し上の高さに設ける。具体的には、処理液体排出口を、液体供給部21から処理前液Lを酸化槽2に供給しておらずしかも気液接触装置10を作動させていない状態における液面(以下、基準液面という)とほぼ同じ高さよりも若干高い位置(例えば、50〜100mm程度上方)に配設する。すると、酸化槽2に液体供給部21から処理前液Lを供給すれば、液体供給部21から供給される量に相当する量の処理後液ALを、処理液体排出口から排出通路22に流出させることができるので、酸化槽2の容量を有効に活用して処理前液Lを連続処理することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の気液接触装置は、吸収塔などから排出されるCOD(化学的酸素要求量)値を上昇させる成分を含む液体を酸化処理する装置などに適している。
【符号の説明】
【0068】
1 酸化装置
2 酸化槽
10 気液接触装置
11 筒状部材
11c 吸気通路
12 回転軸
15 回転部材
16 攪拌翼
17 ベースプレート
21 液体供給部
22 排出通路
PL 処理前液
AL 処理後液
図1
図2
図3
図4
図5