(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5783209
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物、その硬化物、光半導体封止用樹脂組成物、及び光半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08G 59/20 20060101AFI20150907BHJP
H01L 33/56 20100101ALI20150907BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20150907BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
C08G59/20
H01L33/00 424
H01L23/30 F
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-131626(P2013-131626)
(22)【出願日】2013年6月24日
(62)【分割の表示】特願2010-37234(P2010-37234)の分割
【原出願日】2010年2月23日
(65)【公開番号】特開2013-213220(P2013-213220A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2013年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】小林 厚子
(72)【発明者】
【氏名】小椋 一郎
【審査官】
繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−215312(JP,A)
【文献】
特開平04−209648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59
C08L 63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ当量150〜1000g/eq.のビスフェノール型エポキシ樹脂(A)、エポキシ基含有ビニル系単量体とその他の重合可能なビニル系単量体との共重合体であって、製造時におけるモノマーの質量比[前記エポキシ基含有ビニル系単量体/その他のビニル系単量体]が20/80〜60/40となる割合であるエポキシ基含有オレフィン重合体(B)、及び酸無水物エポキシ樹脂用硬化剤(C)を必須成分とすることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)〜(C)の各成分の配合割合が、エポキシ樹脂(A)とエポキシ基含有オレフィン重合体(B)との質量比[(A)/(B)]が55/45〜95/5となる割合であって、かつ、前記エポキシ樹脂(A)及びエポキシ基含有オレフィン重合体(B)のエポキシ基に対する、前記酸無水物エポキシ樹脂用硬化剤(C)中の酸無水物基の当量比[酸無水物基/エポキシ基]が0.7/1.0〜1.1/1.0となる割合である請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のエポキシ樹脂組成物からなることを特徴とする光半導体封止用樹脂組成物。
【請求項4】
高輝度LED素子封止用材料である請求項3記載の組成物。
【請求項5】
光半導体を請求項1又は2記載のエポキシ樹脂組成物で封止してなることを特徴とする光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光半導体封止用樹脂組成物に適したエポキシ樹脂組成物、その硬化物、光半導体封止用樹脂組成物、及び光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED、フォトカプラー、光センサ、半導体レーザー、イメージセンサー等の光半導体デバイスは発光素子或いは光伝送装置として近年広く用いられており、光半導体素子を封止する樹脂材料として、芳香族系エポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤とを組み合わせた2液型硬化剤が、成型加工性や透明性などに優れる点から用いられている。
【0003】
しかしながら、前記した芳香族系エポキシ樹脂を主剤として用いる封止材料は、該樹脂中の芳香環の吸光により硬化物の黄変を招き易く、とりわけLEDの分野では、LED素子の高出力化及び短波長化が進んでいるところ、前記芳香族系エポキシ樹脂はこの短波長の光を吸収し易く、光半導体素子の黄変や光取り出し効率の低下を招いていた。
【0004】
そこで、硬化物の黄変が少なく、かつ、強度や耐熱性に優れる光半導体封止材料として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどの脂肪族環状エポキシ化合物を主剤として用い、かつ、酸無水物を主たる硬化剤として用いる技術が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、前記脂肪族環状エポキシ化合物を主剤とし、かつ、酸無水物を硬化剤とする封止材料は、硬化物が硬く脆いため適度な強度が得られない、という欠点を有していた。また、この固脆い性質を改善する手段としては、柔軟性の樹脂成分を配合する方法もあるが、この場合、硬化物の耐熱性の低下は避けらず、通常、耐熱性と強度とを兼備させることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−114390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、硬化物の透明性、耐熱性、及び強度に著しく優れるエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果
、低分子量ビスフェノール型エポキシ樹脂と酸無水
物硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物に、エポキシ基含有オレフィン重合体を配合することにより、その硬化物において優れた透明性と耐熱性とを保持しつつ、強度が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、
エポキシ当量150〜1000g/eq.のビスフェノール型エポキシ樹脂(A)、エポキシ基含有オレフィン重合体(B)、及び酸無水
物エポキシ樹脂用硬化剤(C)を必須成分とすることを特徴とするエポキシ樹脂組成物に関する。
【0010】
本発明は、更に、上記エポキシ樹脂組成物からなることを特徴とする光半導体封止用樹脂組成物に関する。
【0011】
本発明は、更に、前記エポキシ樹脂組成物を賦型した後、加熱又は活性エネルギー線照射により硬化させてなることを特徴とする硬化物に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、硬化物の透明性、耐熱性、及び強度に著しく優れるエポキシ樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明で用いるエポキシ樹脂(A)は
、エポキシ当量150〜1000g/eq.のビスフェノール型エポキシ樹脂である。
【0015】
本発明で用いる本発明で用いる
エポキシ当量150〜1000g/eq.のビスフェノール型エポキシ樹脂(A)は
、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのなかでも特に硬化物の剛性、耐湿熱性などのバランスに優れる点からビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。また、該ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は、組成物の流動性に優れる点から、なかでも150〜500g/eq.の範囲であることが好ましい。
【0016】
次に、本発明で用いるエポキシ基含有オレフィン重合体(B)は、例えば、エポキシ基含有ビニル系単量体とその他の重合可能なビニル系単量体との共重合体が挙げられる。本発明では、かかるエポキシ基含有オレフィン重合体(B)を用いることにより、硬化物の耐熱性を低下させることなく強度を向上させることができる。ここで用いられるエポキシ基含有ビニル系単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、またはβ−メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の各種のグリシジルエステル類、(メタ)アリルグリシジルエーテル、(メタ)アリルメチルグリシジルエーテル等の各種のアリルグリシジルエーテル類、3,4−シクロヘキシルアクリレート、3,4−シクロヘキシルメタクリレート等の各種の脂環式エポキシ基含有ビニル系単量体などが挙げられる。
【0017】
これらのエポキシ基含有単量体類と共重合可能なその他のビニル系単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等の各種のアクリル酸エステル類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルアクリレート等の各種メタクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンクグリコールモノ(メタ)アクリレート等の各種の水酸基含有(メタ)アクリレート類;またはこれらの各種(メタ)アクリレートと、ε−カプロラクトンの付加反応主成分等;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸もしくはフマル酸等各種のカルボキシル基含有単量体類、さらにイタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の各種の多価カルボキシル基含有単量体と、炭素数1〜18のモノアルキルアルコールとのモノ−ないしはジエステル類;またはN−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の各種のアミノ基含有アミド系不飽和単量体類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の各種のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレ−ト類;ターシャリ−(tert−)ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピロジニルエチル(メタ)アクリレート、ピペリジニルエチル(メタ)アクリレート等の各種アミノ基含有単量体、エチレン、プロピレン、ブテン1等の各種α−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のフルオロオレフィンを除く、各種ハロゲン化オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の各種の芳香族ビニル化合物;γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等の各種加水分解性シリル基含有単量体;ふっ化ビニル、ふっ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン等の各種ふっ素含有−α−オレフィン類;トリフルオロメチルトリフルオロビニルエ−テル、ペンタフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル、ヘプタフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル等の各種のパーフルオロビニルエーテル、(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(アルキル基の炭素数が1〜18)等の含フッ素ビニル単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、炭素数9〜11の分岐状脂肪族カルボン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の各種脂肪族カルボン酸ビニル類;シクロヘキサンカルボン酸ビニル、メチルシクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、p−tert−ブチル安息香酸ビニル等の環状構造を有するカルボン酸の各種ビニルエステル類等が挙げられ、単独でも2種以上の混合物としても使用できる。
【0018】
前記エポキシ基含有ビニル系単量体と、前記したその他のビニル系単量体との重合割合は、製造時におけるモノマーの質量比[前記エポキシ基含有ビニル系単量体/その他のビニル系単量体]が20/80〜60/40となる割合であることが硬化物の強度の向上効果に優れる点から好ましい。
【0019】
また、エポキシ基含有オレフィン重合体(B)は、組成物の溶融時の流動性と硬化物の強度とのバランスに優れる点から、環球法(5℃/分昇温法)による軟化点が80〜120℃の範囲にあるものが好ましい。更に、強度の点から該エポキシ基含有オレフィン重合体(C)のエポキシ当量は300〜600g/eq.の範囲にあることが好ましい。
【0020】
本発明で用いる酸無水
物エポキシ樹脂用硬化剤(C)は、例えば、無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドエチレンテトラヒドロフタル酸、無水トリアルキルテトラヒドロフタル酸、無水メチルナジック酸等の環状脂肪族酸無水物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の芳香族酸無水物;無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物等が挙げられる。これらのなかでも特に硬化物の透明性に優れる点から環状脂肪族酸無水物が好ましく、更に、組成物の溶融時の流動性に優れる点から25℃における粘度が500mPa・s以下の酸無水物であることが好ましい。
【0021】
以上詳述したエポキシ樹脂(A)、エポキシ基含有オレフィン重合体(B)、及び酸無水
物エポキシ樹脂用硬化剤(C)の各成分の配合割合は、エポキシ樹脂(A)とエポキシ基含有オレフィン重合体(B)との質量比[(A)/(B)]が55/45〜95/5となる割合であって、かつ、前記エポキシ樹脂(A)及びエポキシ基含有オレフィン重合体(B)のエポキシ基に対する、前記酸無水
物エポキシ樹脂用硬化剤(C)中の酸無水物基の当量比[酸無水物基/エポキシ基]が0.7/1.0〜1.1/1.0となる割合であることが硬化性、及び硬化物の強度に優れる点から好ましい。
【0022】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、更に、その他の硬化剤や硬化促進剤を適宜併用することもできる。
【0023】
その他の硬化剤としては、例えば、アミンのBF3錯体化合物;脂肪族スルホニウム塩、芳香族スルホニウム塩、ヨードニウム塩、及びホスホニウム塩等のブレンステッド酸塩類;アジピン酸;セバシン酸;テレフタル酸;トリメリット酸;カルボキシル基含有ポリエステル等のポリカルボン酸類等が挙げられる。その他の硬化剤の使用量は、前記酸無水物系エポキシ樹脂用硬化剤(C)100重量部に対して、1〜10重量部の範囲であることが硬化性の点から好ましい。
【0024】
また、前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に光半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルフォスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。
【0025】
前記硬化促進剤の使用量としては、本発明に係るエポキシ樹脂組成物中の前記エポキシ樹脂(A)及びエポキシ基含有オレフィン重合体(B)の合計質量100重量部に対して、0.1〜5重量部の範囲、なかでも0.2〜2重量部の範囲となる割合であることが硬化性の点から好ましい。
【0026】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、上記各成分の他、目的に応じ着色剤、カップリング剤、レベリング剤、離型剤、滑剤等を適宜添加することが出来る。
【0027】
着色剤としては特に制限はなく、例えばフタロシアニン、アゾ、ジスアゾ、キナクリドン、アントラキノン、フラバントロン、ペリノン、ペリレン、ジオキサジン、縮合アゾ、アゾメチン系の各種有機系色素、酸化チタン、硫酸鉛、クロムエロー、ジンクエロー、クロムバーミリオン、弁殻、コバルト紫、紺青、群青、カーボンブラック、クロムグリーン、酸化クロム、コバルトグリーン等の無機顔料が挙げられる。
【0028】
レベリング剤としては、例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリレート類からなる分子量4000〜12000のオリゴマー類、エポキシ化大豆脂肪酸、エポキシ化アビエチルアルコール、水添ひまし油、チタン系カップリング剤等が挙げられる。滑剤としては、例えばパラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素系滑剤、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の高級脂肪酸系滑剤、ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレイルアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の高級脂肪酸アミド系滑剤、硬化ひまし油、ブチルステアレート、エチレングリコールモノステアレート、ペンタエリスリトール(モノ−,ジ−,トリ−,又はテトラ−)ステアレート等の高級脂肪酸エステル系滑剤、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロール等のアルコール系滑剤、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リシノール酸、ナフテン酸等のマグネシウム、カルシウム、カドニウム、バリウム、亜鉛、鉛等の金属塩である金属石鹸類、カルナウバロウ、カンデリラロウ、密ロウ、モンタンロウ等の天然ワックス類が挙げられる。
【0029】
カップリング剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピル(N−エチルアミノエチルアミノ)チタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、チタニュウムジ(ジオクチルピロフォスフェート)オキシアセテート、テトライソプロピルジ(ジオクチルフォスファイト)チタネート、ネオアルコキシトリ(p−N−(β−アミノエチル)アミノフェニル)チタネート等のチタン系カップリング剤、Zr−アセチルアセトネート、Zr−メタクリレート、Zr−プロピオネート、ネオアルコキシジルコネート、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデカノイル)ベンゼンスルフォニルジルコネート、ネオアルコキシトリス(エチレンジアミノエチル)ジルコネート、ネオアルコキシトリス(m−アミノフェニル)ジルコネート、アンモニウムジルコニュウムカーボネート、Al−アセチルアセトネート、Al−メタクリレート、Al−プロピオネート等のジルコニウム、或いはアルミニウム系カップリング剤が挙げられるが好ましくはシリコン系カップリング剤である。カップリング剤を使用する事により耐湿信頼性が優れ、吸湿後の接着強度の低下が少ない硬化物が得られる。
【0030】
離型剤としては、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素系滑剤、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の高級脂肪酸系滑剤、ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレイルアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の高級脂肪酸アミド系滑剤、硬化ひまし油、ブチルステアレート、エチレングリコールモノステアレート、ペンタエリスリトール(モノ−,ジ−,トリ−,又はテトラ−)ステアレート等の高級脂肪酸エステル系滑剤、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロール等のアルコール系滑剤、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リシノール酸、ナフテン酸等のマグネシュウム、カルシュウム、カドニュウム、バリュウム、亜鉛、鉛等の金属塩である金属石鹸類、カルナウバロウ、カンデリラロウ、密ロウ、モンタンロウ等の天然ワックス類が挙げられ、好ましくは、高級脂肪酸エステル類、高級脂肪酸アミド類、高級脂肪酸、金属石鹸、炭化水素系滑剤であり、更に好ましくはステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ペンタエリスリトール(モノ−,ジ−,トリ−,又はテトラ−)ステアレートである。
【0031】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記した各成分を、均一に撹拌することにより、液状の組成物として容易に得ることができる。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化反応は、例えば、100〜170℃の温度範囲であることが好ましい。
【0033】
以上、詳述した本発明の組成物は、流動性に優れると共に、その硬化物の透明性、強度に優れるため、LED、フォトトランジスタ、フォトダイオード、フォトカプラー、CCD、EPROM、フォトセンサーなどの様々な光半導体装置用の封止材料として有用であり、特に、発光時の発熱が著しい高輝度LED素子用封止材料として有用である。ここで高輝度LED素子とは100ルーメン(1m)以上の光束を持つものをいう。
【0034】
上記高輝度LEDとしては、波長350〜550nmに主発光ピークを有する青色乃至白色のLED、及び、アルミニウム、ガリウム、インジウム、リンの四つの元素から成る化合物半導体を使用し、元素組成を調整することで赤色,オレンジ色,黄色,黄緑色の発色を可能とする4元系LEDが挙げられる。
【0035】
前者の波長350〜550nmに主発光ピークを有する青色乃至白色のLEDの用途としては、携帯型DVDプレーヤーやカーナビなどに使用される液晶パネル用バックライト光源、ラップトップ・パソコンなどに使用される10〜17型の液晶パネル用バックライト光源、自動車のヘッドランプの光源などが挙げられる。
一方、4元系LEDの用途としては、屋外ディスプレイ、自動車のリアランプや車内照明、薄型テレビやパソコンの液晶ディスプレイのバックライト等が挙げられる。
【0036】
本発明の光半導体装置は、例えば充分に脱泡した上記エポキシ樹脂組成物を、例えば、リード線などの電極を取り付けた光半導体に、本発明のエポキシ樹脂組成物でトランスファー成形、注型などのモールド方法によって封止し、硬化する方法や、予め光半導体を回路基板に実装し、それを本発明のエポキシ樹脂組成物で封止し、硬化する方法等が挙げられる。具体的には、光半導体素子をセットした型枠に流し込んだのち、上記温度条件で加熱硬化することにより得ることができる。
【0037】
本発明の光半導体装置は、前記したエポキシ樹脂組成物の用途として列挙した各種の光半導体装置、具体的にはLED、フォトトランジスタ、フォトダイオード、フォトカプラー、CCD、EPROM、フォトセンサーなどの受光素子や発光素子等を封止した光半導体装置が挙げられる。これらのなかでもとりわけLED装置、特に高輝度LED装置がとりわけ好ましく、特に波長350〜550nmに主発光ピークを有する青色乃至白色のLED装置、及び、4元系LED装置であることが特に好ましい。
【実施例】
【0038】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り重量基準である。尚、各物性評価は以下の条件にて測定した。
1)ワニス粘度:25℃にてE型粘度計(東機産業(株)製「TV−20形」コーンプレートタイプを使用して測定した。
2)ガラス転移温度:粘弾性測定装置(レオメトリック社製 固体粘弾性測定装置「RSAII」、二重カレンチレバー法;周波数1Hz、昇温速度3℃/分)を用いて測定した。
3)初期透過率:分光光度計「UV−3150」(島津製作所(株)製)を用いて測定した。
4)耐熱性試験後透過率:150℃で72時間加熱後のエポキシ樹脂の硬化物の400nmにおける波長の光線透過率を測定した。
5)曲げ強度、曲げ弾性率、ひずみ:JIS6911に準拠した。
【0039】
実施例1、2、比較例1
下記の表1に示す配合に従い、各成分を配合してエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物を用いてワニス粘度、貯蔵安定性を評価した。
また、このエポキシ樹脂組成物を、厚さ3mmのスペーサー(シリコーンチューブ)をガラス板で挟んだ型の間隙に流し込み、120℃で1時間硬化させ、更に、160℃に昇温し、160℃に到達した後、該温度で2時間保持し硬化物を得、これを試験片として用い、各種の評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
なお、上記表1に示す各成分は、以下の通りである。
BPA型エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC(株)製「エピクロン850S」エポキシ当量188g/eq.)
エポキシ基含有オレフィン重合体(A):グリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体(エポキシ当量430g/eq.)
エポキシ基含有オレフィン重合体(B):グリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体(エポキシ当量500g/eq.)
酸無水物:メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(日立化成工業(株)製「HN−5500E」)
BHT:ジブチルヒドロキシトルエン
HCA:9,10−ジヒドロー9−オキサー10−ホスファフェナントレン−10−オキシド
JP−202:亜リン酸ジエチル 城北化学工業(株)製
硬化促進剤 : メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート(商品名「ヒシコーリンPX−4MP」日本化学工業(株)製))