特許第5783449号(P5783449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5783449セメントクリンカの製造方法及びセメントクリンカの製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5783449
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】セメントクリンカの製造方法及びセメントクリンカの製造装置
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/38 20060101AFI20150907BHJP
【FI】
   C04B7/38
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-156766(P2011-156766)
(22)【出願日】2011年7月15日
(65)【公開番号】特開2013-23393(P2013-23393A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】二反田 英人
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−300355(JP,A)
【文献】 特開2001−239132(JP,A)
【文献】 特開平10−330855(JP,A)
【文献】 特開2003−10896(JP,A)
【文献】 特開2004−331473(JP,A)
【文献】 特開2005−111374(JP,A)
【文献】 特開2007−326752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を仮焼炉及び/またはサイクロンで加熱する工程と、
前記原料をキルンで焼成する工程と、
枚葉状の被処理物を投入する工程とを備え、
前記投入する工程では、前記キルンと接続されかつ前記キルンの延在方向の上流側に配置された窯尻前記仮焼炉またはサイクロンとを接続するライジングダクトにおいて、前記仮焼炉またはサイクロンと接続された第1の部分の内径よりも大きい内径を有し、かつ前記第1の部分及び前記窯尻と接続された第2の部分の前記キルンと反対側の位置に形成された投入部に前記被処理物を投入することを特徴とする、セメントクリンカの製造方法。
【請求項2】
前記投入する工程では、前記キルンで排出される排ガスの流れる方向に対して45度以下になるように前記被処理物を投入する、請求項1に記載のセメントクリンカの製造方法。
【請求項3】
前記投入する工程では、リチウムを含有する前記被処理物を投入する、請求項1または2に記載のセメントクリンカの製造方法。
【請求項4】
原料を加熱する仮焼炉及び/またはサイクロンと、
前記原料を焼成するキルンと、
前記キルンと接続され、かつ前記キルンの上流側に配置された窯尻と、
前記仮焼炉またはサイクロンと接続された第1の部分と、前記第1の部分と前記窯尻とを接続し、かつ前記第1の部分の内径よりも大きい内径を有する第2の部分とを含むライジングダクトと、
前記窯尻と前記仮焼炉またはサイクロンとを接続する原料ダクトと、
前記ライジングダクトの前記第2の部分に形成され、かつ枚葉状の被処理物を内部に投入可能であって、前記キルンと反対側の位置に形成された投入部とを備えた、セメントクリンカの製造装置。
【請求項5】
前記投入部は、前記キルンで排出される排ガスの流れる方向に対して45度以下の角度で前記被処理物が投入されるように構成されている、請求項に記載のセメントクリンカの製造装置。
【請求項6】
前記投入部は、リチウムを含有する前記被処理物が投入される、請求項4または5に記載のセメントクリンカの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントクリンカの製造方法及びセメントクリンカの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントクリンカは、原料を仮焼炉で仮焼し、仮焼した原料をキルンで焼成することで製造される。このようなセメントクリンカの製造において、近年では、廃棄物を原料の一部として用いたり、焼成のための燃料に用いることで、廃棄物によるリサイクルが推進されている(例えば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−57495号公報
【特許文献2】特開2009−242146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
廃プラ、廃タイヤなどの廃棄物は、従来から原料化または燃料化が実施されていたが、リチウムイオン電池などの枚葉状の廃棄物をセメントクリンカの製造に用いた場合に、廃プラ、廃タイヤなどの廃棄物を用いた場合には生じない、特有の問題があることを本発明者は見出した。
【0005】
具体的には、セメントクリンカの製造装置において仮焼炉直下のダクトに枚葉状の廃棄物を投入すると、この廃棄物が、仮焼炉に移動し、さらに仮焼炉と接続されているサイクロンに移動することで、サイクロンが損傷する場合があることを本発明者は初めて明らかにした。このため、枚葉状の廃棄物をセメントクリンカの製造装置で処理することが困難であるという特有の問題を本発明者は見出した。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、枚葉状の被処理物の処理が可能なセメントクリンカの製造方法及びセメントクリンカの製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、枚葉状の被処理物を処理することに着目して鋭意研究した結果、枚葉状の被処理物を仮焼炉直下のダクトに投入したときにサイクロンが損傷する場合があるという問題は、枚葉状の被処理物が軽く、かつ仮焼炉直下のダクトは排ガスの速度が速いため、枚葉状の被処理物が排ガスの流れに沿って仮焼炉を介してサイクロンに移動することに起因していることを見出した。
【0008】
そこで、本発明のクリンカの製造方法は、原料を仮焼炉及び/またはサイクロンで加熱する工程と、前記原料をキルンで焼成する工程と、枚葉状の被処理物を投入する工程とを備え、前記投入する工程では、前記キルンと接続されかつ前記キルンの延在方向の上流側に配置された窯尻前記仮焼炉またはサイクロンとを接続するライジングダクトにおいて、前記仮焼炉またはサイクロンと接続された第1の部分の内径よりも大きい内径を有し、かつ前記第1の部分及び前記窯尻と接続された第2の部分の前記キルンと反対側の位置に形成された投入部に前記被処理物を投入することを特徴とする。
【0009】
本発明のクリンカの製造装置は、原料を加熱する仮焼炉及び/またはサイクロンと、原料を焼成するキルンと、キルンと接続され、かつキルンの上流側に配置された窯尻と、仮焼炉またはサイクロンと接続された第1の部分と、第1の部分と窯尻とを接続し、かつ第1の部分の内径よりも大きい内径を有する第2の部分とを含むライジングダクトと、窯尻と仮焼炉またはサイクロンとを接続する原料ダクトと、前記ライジングダクトの前記第2の部分に形成され、かつ枚葉状の被処理物を内部に投入可能であって、前記キルンと反対側の位置に形成された投入部とを備える。

【0010】
本発明のクリンカの製造方法及びクリンカの製造装置によれば、ライジングダクトの第2の部分形成された投入部に枚葉状の被処理物を投入している。ライジングダクトの第2の部分排ガスの速度が遅く、仮焼炉及び/またはサイクロンで加熱した原料に被処理物を容易に混合することができる。このため、枚葉状の被処理物が軽くても、仮焼炉及び/またはサイクロンまで舞い上がることを抑制できるので、仮焼炉及び/またはサイクロンの損傷を抑制することができる。よって、枚葉状の被処理物の処理が可能なクリンカの製造装置及びクリンカの製造方法を提供することができる。
【0011】
上記クリンカの製造方法において、投入する工程では、第2の部分おいて、キルンと反対側の位置に形成された投入部に被処理物を投入する。
【0012】
上記クリンカの製造装置において、投入部は、第2の部分おいて、キルンと反対側の位置に形成されている。
【0013】
加熱した原料はキルンに向けて流動するので、キルンと反対側からキルンに向けて枚葉状の被処理物を投入することで、処理物を原料により混合しやすくなる。このため、枚葉状の被処理物が仮焼炉及び/またはサイクロンに移動することをより抑制することができる。したがって、枚葉式の被処理物の処理を容易に実現することができる。
【0014】
上記クリンカの製造方法において好ましくは、投入する工程では、キルンで排出される排ガスの流れる方向に対して45度以下になるように被処理物を投入する。
【0015】
上記クリンカの製造装置において好ましくは、投入部は、キルンで排出される排ガスの流れる方向に対して45度以下の角度で被処理物が投入されるように構成されている。
【0016】
これにより、枚葉状の被処理物を加熱した原料により混合しやすくなる。このため、枚葉状の被処理物が仮焼炉及び/またはサイクロンに移動することをより抑制することができる。したがって、枚葉式の被処理物の処理を容易に実現することができる。
【0017】
上記クリンカの製造方法において好ましくは、投入する工程では、リチウムを含有する被処理物を投入する。
【0018】
上記クリンカの製造装置において好ましくは、投入部は、リチウムを含有する被処理物が投入される。
【0019】
これにより、製造するセメントクリンカにリチウムを含有させることができる。本発明者はリチウムを含有するセメントクリンカは強度を増すという知見を得ている。このため、リチウムを含有する被処理物を原料に混合することで、製造するセメントクリンカの強度を向上することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、枚葉状の被処理物の処理が可能なセメントクリンカの製造方法及びセメントクリンカの製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態におけるセメントクリンカの製造装置を示す模式図である。
図2】本発明の実施の形態における窯尻近傍を示し、図1における領域IIの拡大模式図である。
図3】本発明の実施の形態におけるキルンで排出される排ガスの流れる方向と被処理物を投入する方向との関係を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0023】
まず、図1図3を参照して、本発明の一実施の形態であるセメントクリンカの製造装置について説明する。本実施の形態のセメントクリンカの製造装置10は、図1に示すように、原料供給部11と、原料供給部11と接続され、かつサイクロン12a〜12dを有するプレヒータ12と、プレヒータ12と接続された仮焼炉13と、仮焼炉13と接続されたライジングダクト14と、プレヒータ12の最下段のサイクロン12dと接続された原料ダクト15と、ライジングダクト14及び原料ダクト15と接続された窯尻16と、窯尻16と接続されたキルン17と、キルン17と接続された冷却部18とを備えている。
【0024】
原料供給部11は、セメントクリンカの原料Mを貯留可能であり、プレヒータ12及び仮焼炉13を介して、キルン17に原料Mを供給する。
【0025】
この原料供給部11は、プレヒータ12に(本実施の形態では移動部PMを介して)接続されている。プレヒータ12は、複数のサイクロンを多段に接続したニューサスペンションプレヒータであり、図1に示すように、サイクロン12a〜12dと、移動部PM、PGとを含んでいる。
【0026】
移動部PMは、サイクロン12a〜12d及び仮焼炉13に主に原料Mを移動させるものであり、原料供給部11及びサイクロン12aと、サイクロン12a及びサイクロン12bと、サイクロン12b及びサイクロン12cと、サイクロン12c及び仮焼炉13と、仮焼炉13及びサイクロン12dとを接続している。
【0027】
移動部PGは、サイクロン12d〜12aに仮焼炉13から排出される排ガスGを移動させるものであり、仮焼炉13及びサイクロン12dと、サイクロン12d及びサイクロン12cと、サイクロン12c及びサイクロン12bと、サイクロン12b及びサイクロン12aとを接続している。なお、仮焼炉13及びサイクロン12dを接続する排ガスGの移動部PGは、仮焼炉13及びサイクロン12dを接続する原料Mの移動部PMでもある。
【0028】
サイクロン12a〜12cは、移動部PGにより移動され、かつ仮焼炉13及びキルン17から排出された排ガスGと、移動部PMにより移動される原料Mとを熱交換する。最下段のサイクロン12dは、仮焼炉13で排出された排ガスGと、仮焼炉13で仮焼した原料Mとを分離する。
【0029】
仮焼炉13は、上段のサイクロン12a〜12cにより加熱された原料Mを所定の温度で仮焼する。所定の温度とは、例えば800℃以上1000℃以下である。
【0030】
また、仮焼炉13には、キルン17から排出される排ガスGが、窯尻16及びライジングダクト14を介して供給される。なお、仮焼炉13から排出される排ガスGは、移動部PGを介して最下段のサイクロン12dに供給される。
【0031】
図1に示すように、ライジングダクト14は、仮焼炉13と窯尻16とを接続する。ライジングダクト14は、仮焼炉13と接続された第1の部分14aと、第1の部分14aと窯尻16とを接続する第2の部分14bとを含んでいる。図2に示すように、第2の部分14bの内径D14bは、第1の部分14aの内径D14aよりも大きい。第1の部分14aと第2の部分14bとの境界は、仮焼炉13と直接接続された位置から、内径が最初に大きくなる位置である。本実施の形態では、図2に示すように、仮焼炉13と直接接続された位置から、略同一の内径の第1の部分14aが下方に延び、内径が最初に増加する位置Pから、下方に向けて内径が単調増加するテーパ状の第2の部分14bが下方に延びている。つまり、図2における位置Pが第1の部分14aと第2の部分14bとの境界である。
【0032】
ライジングダクト14の内部には、原料M及びキルン17から排出される排ガスGが通過する。ライジングダクト14において、第2の部分14bの内径D14bは第1の部分14aの内径D14aよりも大きいので、第2の部分14bを通過する排ガスGの速度は、第1の部分14aを通過する排ガスGの速度よりも遅い。
【0033】
原料ダクト15は、最下段のサイクロン12dと窯尻16とを接続する。本実施の形態では、サイクロン12dと、窯尻16及びライジングダクト14の第2の部分14bとを接続する。原料ダクト15の内部には、サイクロン12dで分離された原料Mが通過する。
【0034】
窯尻16は、ライジングダクト14の第2の部分14b及び原料ダクト15と、キルン17とを接続している。図2に示すように、窯尻16は、キルン17の入口に位置し、キルン17の延在方向の上流側に配置されている。窯尻16の内部は、原料ダクト15から流れ込む原料Mと、キルン17から排出される排ガスGとが通過する。
【0035】
ここで、原料ダクト15及び窯尻16と、ライジングダクト14とは、キルン17の(横)軸方向と並行な外周の上縁線(稜線)を延長させた仮想線(図2における点線X)によって区画されている。また、ライジングダクト14と原料ダクト15とは、ライジングダクトの(縦)軸方向と並行な外周縁を延長させた仮想線(図2における点線Y)によって区画されている。
【0036】
キルン17は、窯尻16から供給される、最下段のサイクロン12dで分離された原料Mを焼成する。このキルン17内には、燃料を噴出させるためのバーナ17aが配置されている。キルン17では、例えば1300℃以上1500℃以下に加熱することが可能である。キルン17で原料Mを焼成することにより、セメントクリンカCを製造する。
【0037】
冷却部18は、キルン17で焼成されたセメントクリンカCを冷却する。冷却部18は、例えばキルン17で用いられる燃焼用空気と、焼成されたセメントクリンカとを熱交換するクリンカクーラである。
【0038】
投入部19は、ライジングダクト14の第2の部分14b、原料ダクト15、及び窯尻16の少なくともいずれか1つに形成されている。本実施の形態では、投入部19は、ライジングダクト14の第2の部分14bに形成されている。なお、参考形態の投入部19の位置は、第2の部分14bに限定されず、原料ダクト15または窯尻16に形成されていてもよい。また、投入部19は、複数の箇所に形成されていてもよく、同じ構成部材(例えば窯尻16)において複数箇所形成されていてもよく、異なる構成部材(例えば第2の部分14b及び窯尻16)において複数箇所形成されていてもよい。
【0039】
投入部19は、例えば、ライジングダクト14の第2の部分14b、原料ダクト15、及び窯尻16の少なくともいずれか1つと内部が連通している部材であってもよく、ライジングダクト14の第2の部分14b、原料ダクト15、及び窯尻16の少なくともいずれか1つに形成された開閉可能な開口部であってもよい。
【0040】
投入部19は、枚葉状の被処理物Sを内部に投入可能であり、枚葉状の被処理物Sが複数枚積層された状態でも内部に投入可能であることが好ましい。ここで、枚葉状とは、板状などの平らな形状であることを意味する。枚葉状の被処理物の具体的寸法の一例を挙げると、厚みは例えば3mm以上10mm以下程度であり、短辺は例えば50mm以上300mm以下程度であり、長辺は例えば100mm以上500mm以下程度である。
【0041】
被処理物Sは、枚葉状であれば特に限定されないが、リチウムを含有することが好ましい。リチウムを含有する被処理物は、例えばリチウムイオン電池であり、リチウムイオン電池パックであってもよく、パックを分解したモジュールであってもよく、モジュールをさらに分解したセルであってもよい。本実施の形態では、被処理物として、自動車解体工場または自動車修理工場から排出されるリチウム電池パックのモジュールまたはセルを用いることが好ましい。
【0042】
図2及び図3に示すように、投入部19は、キルン17で排出される排ガスGの流れる方向に対して45度以下の角度θで被処理物Sが投入されるように構成されていることが好ましい。投入角度θが45度以下の場合、枚葉状の被処理物Sを加熱した原料Mにより混合しやすくなるため、枚葉状の被処理物Sがサイクロン12dに移動することをより抑制することができる。
【0043】
ここで、上記「排ガスGの流れる方向」とは、排ガスGが通るダクトの延在方向である。つまり、上記「角度θ」は、投入部19から被処理物Sを投入する方向と、投入部19と接続されている部分(本実施の形態ではライジングダクト14の第2の部分14b)の延在方向とのなす角度である。
【0044】
投入部19は、ライジングダクト14の第2の部分14bにおいて、キルン17と反対側の位置に形成されている。具体的には、投入部19がライジングダクト14の第2の部分14bに形成されている場合には、第2の部分14bの水平方向の中心(第2の部分14bの断面形状の中心)に対してキルン17が位置する側と反対側に、投入部19は形成されている。
【0045】
なお、参考形態の投入部19は、ライジングダクト14の第2の部分14bにおいて、キルン17と同じ側の位置に形成されていてもよい(図示せず)。この場合、より高温領域に枚葉状の被処理物Sを投入(落下)することができるので、コーチング(被処理物の加熱物の付着)を抑制する効果がある。
【0046】
続いて、本実施の形態におけるセメントクリンカCの製造方法について説明する。本実施の形態における排ガスの冷却方法は、図1及び図2に示すセメントクリンカの製造装置10を用いて、セメントクリンカCを製造する。
【0047】
詳細には、図1に示すように、原料供給部11から供給するセメントクリンカの原料Mを、移動部PMを介してサイクロン12a、12b、12cのそれぞれに通過させる。このとき、サイクロン12a、12b、12cにおいて、キルン17及び仮焼炉13から排出される排ガスGと熱交換することで、原料Mを加熱する。
【0048】
加熱した原料Mを移動部PMを介して仮焼炉13に供給し、仮焼炉13において原料Mを仮焼する。このとき、仮焼炉13に、キルン17から排出された排ガスGを、窯尻16及びライジングダクト14を介して供給する。仮焼炉13において、例えば800℃以上1000℃以下で原料Mを加熱する。
【0049】
仮焼炉13で仮焼した原料Mを、移動部PM(図示せず)を介して最下段のサイクロン12dに供給する。また、仮焼炉13から排出される排ガスGを、移動部PGを介してサイクロン12dに供給する。サイクロン12dでは、仮焼炉13で仮焼した原料Mと、仮焼炉13から排出された排ガスGとを分離する。
【0050】
窯尻16、ライジングダクト14の第2の部分14b及び原料ダクト15の少なくとも一部に形成された投入部19から、枚葉状の被処理物Sを投入する。投入する被処理物Sは、単数枚であっても複数枚であってもよい。これにより、ライジングダクト14の第2の部分14b及び原料ダクト15の少なくとも一部に、枚葉状の被処理物Sを投入できる。このため、加熱した原料Mに被処理物Sを混ぜることができると共に、被処理物Sがライジングダクトの第1の部分14aに舞い上がることを抑制できる。
【0051】
この工程では、キルン17で排出される排ガスGの流れる方向に対して45度以下になるように投入部19に被処理物Sを投入することが好ましい。
【0052】
また、この工程では、ライジングダクト14の第2の部分14bにおいて、キルン17と反対側の位置に形成された投入部19に被処理物Sを投入することが好ましい。
【0053】
また、この工程では、リチウムを含有する被処理物Sを投入することが好ましい。この場合、被処理物Sとして、上述したように、リチウムイオン電池を投入することが好ましい。
【0054】
サイクロン12dで分離した原料Mを、原料ダクト15、ライジングダクト14の第2の部分14b及び窯尻16を介して、キルン17に供給する。このとき、枚葉状の被処理物Sもキルン17に供給できる。キルン17において、バーナ17aを用いて、例えば1300℃以上1500℃以下で、分離された原料M及び被処理物Sを焼成する。キルン17で分離された原料M及び被処理物Sを焼成することで、被処理物Sを処理できると共に、この被処理物Sは、焼成するための燃料にもなる。被処理物がリチウムを含有する場合には、セメントクリンカCの原料の一部にもなり得る。原料Mを焼成することにより、セメントクリンカCを形成できる。このセメントクリンカCを冷却部18にて冷却する。
【0055】
以上の工程を実施することにより、セメントクリンカCを製造することができる。被処理物Sがリチウムを含有している場合には、製造するセメントクリンカCもリチウムを含有する。
【0056】
以上説明したように、本発明の実施の形態におけるセメントクリンカCの製造方法は、原料Mを仮焼炉13で仮焼する工程と、仮焼炉13で仮焼された原料Mと、仮焼炉13から排出される排ガスGとを、サイクロン12dで分離する工程と、サイクロン12dで分離された原料Mを、キルン17で焼成する工程と、枚葉状の被処理物Sを投入する工程とを備え、投入する工程では、キルン17と接続され、かつキルン17の延在方向の上流側に配置された窯尻16、仮焼炉13と窯尻16とを接続するライジングダクト14において、仮焼炉13と接続された第1の部分14aの内径D14aよりも大きい内径D14bを有し、かつ第1の部分14a及び窯尻16と接続された第2の部分14b、及び窯尻16とサイクロン12dとを接続する原料ダクト15の少なくとも1つに形成された投入部19に、被処理物Sを投入することを特徴とする。
【0057】
また、本発明の実施の形態におけるセメントクリンカCの製造装置10は、原料Mを仮焼する仮焼炉13と、仮焼炉13で仮焼された原料Mと、仮焼炉13から排出される排ガスGとを分離するサイクロン12dと、サイクロン12dで分離された原料Mを焼成するキルン17と、キルン17と接続され、かつキルン17の延在方向の上流側に配置された窯尻16と、仮焼炉13と接続された第1の部分14aと、第1の部分14aと窯尻16とを接続し、かつ第1の部分14aの内径D14aよりも大きい内径D14bを有する第2の部分14bとを含むライジングダクト14と、窯尻16とサイクロン12dとを接続する原料ダクト15と、ライジングダクト14の第2の部分14b、原料ダクト15、及び窯尻16の少なくともいずれか1つに形成され、かつ枚葉状の被処理物Sを内部に投入可能な投入部19とを備えている。
【0058】
本発明の実施の形態におけるセメントクリンカCの製造方法及び製造装置10によれば、ライジングダクト14の第2の部分14b、原料ダクト15、及び窯尻16の少なくともいずれか1つに形成された投入部19に枚葉状の被処理物Sを投入している。ライジングダクトの第2の部分14b、原料ダクト15、及び窯尻16は排ガスGの速度が遅いため、仮焼炉13で加熱した原料Mに被処理物を混合することができる。加熱した原料Mはキルン17へ向かう流体であるので、枚葉状の被処理物Sが軽くても、被処理物Sは加熱した原料Mとともにキルン17へ移動するため、被処理物Sが仮焼炉13まで舞い上がることを抑制できる。したがって、仮焼炉13と接続されたサイクロン12dに被処理物Sが移動することを抑制できるので、サイクロン12dが損傷することを抑制できる。よって、枚葉状の被処理物Sの処理が可能なクリンカの製造方法及びクリンカの製造装置10を提供することができる。
【0059】
本実施の形態におけるセメントクリンカCの製造方法及び製造装置10において好ましくは、リチウムを含有する被処理物を窯尻16に形成された投入部19から投入する。窯尻16は、加熱した原料Mがキルン17に向けて最も流速及び流量が速い領域である。窯尻16にリチウムを含有する被処理物を投入することで、リチウムの揮発を抑制できるので、製造するセメントクリンカに確実性を高めてリチウムを含有させることができる。リチウムを含有するセメントクリンカは強度を向上できるので、本実施の形態によれば、強度を向上したセメントクリンカCを製造することができる。
【0060】
本実施の形態におけるセメントクリンカCの製造方法及び製造装置10において好ましくは、被処理物Sとしてリチウムイオン電池を用いる。本実施の形態によれば、加熱した原料Mにリチウムイオン電池を混合できるので、前処理を省略してリチウムイオン電池を投入することができる。このため、工業的に優れたセメントクリンカCの製造方法及び製造装置10を実現することができる。
【0061】
ここで、本実施の形態では、ライジングダクト14は仮焼炉13と接続された態様について説明したが、ライジングダクト14はプレヒータ12のサイクロンと接続されていてもよい。また、本実施の形態では、原料ダクト15は窯尻16とサイクロン12dと接続された態様について説明したが、原料ダクト15は仮焼炉13と接続されていてもよい。
【実施例】
【0062】
本実施例では、窯尻、ライジングダクトの第2の部分、及び原料ダクトの少なくとも1つに形成された投入部に、枚葉状の被処理物を投入することの効果について調べた。
【0063】
(実施例1)
実施例1は、図1及び図2に示す実施の形態のセメントクリンカの製造装置10及び製造方法により、セメントクリンカCを製造した。
【0064】
具体的には、図1及び図2に示すセメントクリンカの製造装置10において、投入部19は、リサイクルシュートに形成されていた。詳細には、投入部19は、仮焼炉13と窯尻16とを接続するライジングダクト14において、仮焼炉13と接続された第1の部分14aの内径D14aよりも大きい内径D14bを有し、かつ第1の部分14a及び窯尻16と接続された第2の部分14bであって、釜尻16と直接接続された内径D14bが最大の領域(テーパ状の部分の下)に形成されていた。
【0065】
また、投入部19は、キルン17で排出される排ガスGの流れる方向に対して45度の角度θ(図3参照)で被処理物が投入されるように構成されていた。
【0066】
また、実施例1のセメントクリンカの製造方法は以下のように行った。
原料Mを仮焼炉13で仮焼した。
仮焼炉13で仮焼した原料Mと、仮焼炉13から排出される排ガスGとを、最下段のサイクロン12dで分離した。サイクロン12dで分離した原料Mを、キルン17で焼成した。枚葉状の被処理物として、4枚のリチウムイオン二次電池をガムテープでひとまとめにして、キルン17で排出される排ガスGの流れる方向に対して45度になるように、ライジングダクト14の第2の部分14bに間欠的に投入した。なお、被処理物を投入する度に、投入部19の開閉を実施した。
【0067】
上記の製造装置及び製造方法により、セメントクリンカCを製造した。
【0068】
(評価結果)
実施例1のセメントクリンカの製造方法及び製造装置を用いた場合、投入した被処理物が噴き上がることによる、投入部19からの被処理物の逆流がなく、投入した被処理物が噴き上がることによる、仮焼炉13入口のライジングダクト14での詰まりもなく、セメントクリンカCの製造における品質管理上の異常値も発生しなかった。この評価結果から、実施例1のセメントクリンカの製造方法及び製造装置は、被処理物Sを加熱した原料Mに混ぜることができたので、被処理物が仮焼炉13に移動することを抑制できた。
【0069】
以上より、本実施例によれば、仮焼炉13と窯尻16とを接続するライジングダクト14において、仮焼炉13と接続された第1の部分14aの内径D14aよりも大きい内径D14bを有し、かつ第1の部分14a及び窯尻16と接続された第2の部分14bに、枚葉状の被処理物Sを投入するための投入部19が形成されることにより、枚葉状の被処理物Sが可能であることを確認した。
【0070】
ここで、上述した実施例では、枚葉状の被処理物としてのリチウムイオン二次電池を4枚セットにして投入した場合の効果について説明したが、リチウムイオン二次電池を1枚で投入した場合にも同様の効果を示すという知見を本発明者は得ている。
【0071】
また、上述した実施例では、ライジングダクト14の第2の部分14bに投入部19を設けた効果について説明したが、本発明者は、キルン17と接続され、かつキルン17の延在方向の上流側に配置された窯尻16、及び、窯尻16とサイクロン12dとを接続する原料ダクト15に投入部19を設けた場合にも、第2の部分14bに投入部19を設けた場合と同様の効果を示すという知見を本発明者は得ている。
【0072】
さらに、上述した実施例では、ライジングダクト14は仮焼炉13と接続された場合の効果について説明したが、ライジングダクト14がプレヒータ12のサイクロン12dと接続されている場合にも同様の効果を示すという知見を本発明者は得ている。
【0073】
以上のように本発明の実施の形態及び実施例について説明を行なったが、各実施の形態及び実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
10 製造装置、11 原料供給部、12 プレヒータ、12a〜12d サイクロン、13 仮焼炉、14 ライジングダクト、14a 第1の部分、14b 第2の部分、15 原料ダクト、16 窯尻、17 キルン、17a バーナ、18 冷却部、19 投入部、C セメントクリンカ、D14a,D14b 内径、G 排ガス、M 原料、P 位置、PG,PM 移動部、S 被処理物、θ 角度。
図1
図2
図3