(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項3において示した式IIで表される化合物の全体としての媒体中の合計濃度が25%またはそれ以上から45%またはそれ以下までであることを特徴とする、請求項3に記載の媒体。
液晶媒体の調製方法であって、請求項1に記載の式Iで表される化合物を、請求項1に記載の式IIで表される1種または2種以上の化合物および式III−1〜III−4で表される化合物の群から選択された1種または2種以上の化合物と混合することを特徴とする、前記方法。
【背景技術】
【0002】
電気的に制御された複屈折、すなわちECB(電気的に制御された複屈折)効果またはDAP(整列相の変形)効果の原理は、1971年に初めて記載された(M.F. SchieckeおよびK. Fahrenschon, "Deformation of nematic liquid crystals with vertical orientation in electrical fields", Appl. Phys. Lett. 19 (1971), 3912)。J.F. Kahn (Appl. Phys. Lett. 20 (1972), 1193)ならびにG. LabrunieおよびJ. Robert (J. Appl. Phys. 44 (1973), 4869)による学術論文が、続いた。
【0003】
J. RobertおよびF. Clerc (SID 80 Digest Techn. Papers (1980), 30)、J. Duchene (Displays 7 (1986), 3)ならびにH. Schad (SID 82 Digest Techn. Papers (1982), 244)による学術論文によって、液晶相が弾性定数K
3/K
1の間の比率についての高い値、光学異方性Δnについての高い値および≦−0.5の誘電異方性Δεについての値を有して、ECB効果に基づく高度情報表示素子のための使用に適していなければならないことが示された。ECB効果に基づく電気光学的ディスプレイ素子は、ホメオトロピックな端部整列(VA技術=垂直整列)を有する。誘電的に負の液晶媒体をまた、いわゆるIPS効果を使用するディスプレイにおいて使用することができる。
【0004】
電気光学的ディスプレイ素子におけるこの効果の産業的適用は、多様な要件を満たさなければならないLC相を必要とする。ここで特に重要なのは、水分、空気および物理的影響、例えば熱、赤外線、可視および紫外線領域における放射線、ならびに直流および交流電場に対する耐化学性である。
【0005】
さらに、産業的に使用することができるLC相は、好適な温度範囲における液晶中間相および低い粘度を有することが要求される。
【0006】
現在まで開示されている液晶中間相を有する一連の化合物のいずれも、すべてのこれらの要件を満たす単一の化合物を含まない。2〜25種、好ましくは3〜18種の化合物の混合物を、したがって一般的に調製して、LC相として使用することができる物質を得る。
【0007】
マトリックス液晶ディスプレイ(MLCディスプレイ)は、知られている。個々のピクセルの個々の切換のために使用することができる非線形素子は、例えば能動素子(すなわちトランジスタ)である。用語「アクティブマトリックス」を、次に使用し、ここで一般的に薄膜トランジスタ(TFT)を使用し、それは一般的に基板としてのガラス板上に配置される。
【0008】
2種の技術の間で区別がなされる:化合物半導体、例えばCdSeを含むTFT、または多結晶およびとりわけ非結晶質ケイ素に基づくTFT。後者の技術は、現在世界的に最も大きな商業的重要性を有する。
【0009】
TFTマトリックスは、ディスプレイの一方のガラス板の内側に適用され、一方他方のガラス板は、透明な対電極をその内側上に担持する。ピクセル電極の大きさと比較して、TFTは極めて小さく、画像に対する悪影響を事実上有しない。この技術をまた、全色対応ディスプレイに拡張することができ、ここで赤色、緑色および青色フィルターのモザイクは、フィルター素子が各切換可能なピクセルと相対して位置するように配置される。
【0010】
現在まで最も多大に使用されているTFTディスプレイは、通常透過における交差した偏光子で動作し、背面照射される。テレビ用途のために、IPSセルまたはECB(もしくはVAN)セルを使用し、一方モニターは、通常IPSセルまたはTNセルを使用し、ノートパソコン、ラップトップおよびモバイル用途は、通常TNセルを使用する。
【0011】
MLCディスプレイの用語は、ここで集積非線形素子を有する、すなわちアクティブマトリックスに加えてまた受動素子、例えばバリスターまたはダイオード(MIM=金属−絶縁体−金属)を有するディスプレイを有するあらゆるマトリックスディスプレイを包含する。
【0012】
このタイプのMLCディスプレイは、特にテレビ用途、モニターおよびノートパソコン、または例えば自動車製造もしくは航空機構築における高い情報密度を有するディスプレイに適している。コントラストの角度依存性および応答時間に関する問題に加えて、困難がまた、液晶混合物の十分な高さを欠く比抵抗のために、MLCディスプレイにおいて発生する[TOGASHI, S., SEKIGUCHI, K., TANABE, H., YAMAMOTO, E., SORIMACHI, K., TAJIMA, E., WATANABE, H., SHIMIZU, H., Proc. Eurodisplay 84, Sept. 1984: A 210-288 Matrix LCD Controlled by Double Stage Diode Rings, pp. 141 ff., Paris;STROMER, M., Proc. Eurodisplay 84, Sept. 1984: Design of Thin Film Transistors for Matrix Addressing of Television Liquid Crystal Displays, pp. 145 ff., Paris]。
【0013】
低下する抵抗に伴って、MLCディスプレイのコントラストは悪化する。液晶混合物の比抵抗が一般的に、ディスプレイの内側表面との相互作用に起因してMLCディスプレイの耐用期間にわたって低下するので、高い(初期)抵抗が、長い動作期間にわたって許容し得る抵抗値を有しなければならないディスプレイについて極めて重要である。
【0014】
ECB効果を使用するディスプレイは、IPS(面内切換)ディスプレイ(例えば:Yeo, S.D., Paper 15.3: “An LC Display for the TV Application“, SID 2004 International Symposium, Digest of Technical Papers, XXXV, Book II, pp. 758 & 759)および長期間知られているTN(ねじれネマチック)ディスプレイに加えて、いわゆるVAN(垂直整列ネマチック)ディスプレイとして、特にテレビ用途のために現在最も重要である3種のより最近のタイプの液晶ディスプレイの1種として確立されるようになった。
【0015】
述べるべき最も重要な設計は、以下のものである:MVA(マルチドメイン垂直整列、例えば:Yoshide, H. et al., Paper 3.1: “MVA LCD for Notebook or Mobile PCs ...“, SID 2004 International Symposium, Digest of Technical Papers, XXXV, Book I, pp. 6 to 9、およびLiu, C.T. et al., Paper 15.1: “A 46-inch TFT-LCD HDTV Technology ...“, SID 2004 International Symposium, Digest of Technical Papers, XXXV, Book II, pp. 750 to 753)、PVA(パターン化垂直整列、例えば:Kim, Sang Soo, Paper 15.4: “Super PVA Sets New State-of-the-Art for LCD-TV“, SID 2004 International Symposium, Digest of Technical Papers, XXXV, Book II, pp. 760 to 763)およびASV( アドバンストスーパービュー、例えば:Shigeta, MitzuhiroおよびFukuoka, Hirofumi, Paper 15.2: “Development of High Quality LCDTV“, SID 2004 International Symposium, Digest of Technical Papers, XXXV, Book II, pp. 754 to 757)。
【0016】
一般的形態において、技術は、例えばSouk, Jun, SID Seminar 2004, Seminar M-6: “Recent Advances in LCD Technology“, Seminar Lecture Notes, M-6/1 to M-6/26およびMiller, Ian, SID Seminar 2004, Seminar M-7: “LCD-Television“, Seminar Lecture Notes, M-7/1 to M-7/32において比較される。現代のECBディスプレイの応答時間は、オーバードライブを伴うアドレッシング方法によって既に著しく改善されているが、例えば:Kim, Hyeon Kyeong et al., Paper 9.1: “A 57-in. Wide UXGA TFT-LCD for HDTV Application“, SID 2004 International Symposium, Digest of Technical Papers, XXXV, Book I, pp. 106 to 109、特にグレーシェードの切換におけるビデオ適合性(video-compatible)応答時間の達成は、尚未だ満足な程度まで解決されていない問題である。
【0017】
ECBディスプレイ、例えばASVディスプレイは、負の誘電異方性(Δε)を有する液晶媒体を使用し、一方TNおよび現在までのすべての慣用のIPSディスプレイは、正の誘電異方性を有する液晶媒体を使用する。
このタイプの液晶ディスプレイにおいて、液晶を誘電体として使用し、その光学的特性は、電圧を印加した際に可逆的に変化する。
【0018】
一般的にディスプレイにおいて、すなわちまたこれらの述べた効果に従うディスプレイにおいて、動作電圧が可能な限り低くなければならないので、一般的に主に、すべてが同一の符号の誘電異方性を有し、誘電異方性の可能な限り高い値を有する液晶化合物から構成される液晶媒体を、使用する。一般的に、多くとも比較的小さい比率の中性の化合物を使用し、可能である場合には媒体のものと反対の誘電異方性の符号を有する化合物は、使用しない。したがって、ECBディスプレイのための負の誘電異方性を有する液晶媒体の場合において、主に負の誘電異方性を有する化合物を使用する。使用する液晶媒体は、一般的に主に負の誘電異方性を有する液晶化合物からなり、通常さらに本質的にそれからなる。
【0019】
本出願に従って使用する媒体において、一般的に液晶ディスプレイが可能な限り低いアドレッシング電圧を有することを意図するので、典型的に多くとも著しい量の誘電的に中性の液晶化合物および一般的に極めて少量のみの誘電的に正の化合物を使用するか、またはさらに完全に使用しない。
【0020】
以下の式:
【化1】
で表される化合物TEMPOLは、知られており、例えばMieville, P. et al., Angew. Chem. 2010, 122、6318〜6321頁において述べられている。それは、様々な製造者から商業的に入手可能であり、例えばポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアミド、コーティングおよびPVCの前駆体のための配合物中での重合阻害剤として、ならびに光またはUV安定剤として、特にUV吸収剤と組み合わせて使用される。
【0021】
少量のTINUVIN(登録商標)770、すなわち式
【化2】
で表される化合物を安定剤として含む、負の誘電異方性を有するネマチック液晶混合物は、例えばWO 2009/129911 A1において提案されている。しかしながら、対応する液晶混合物は、多くの実際的適用について不適切な特性を有する。とりわけ、それらは、典型的なCCFL背面照射を使用する照射に対して十分に安定ではない。
【0022】
同様の液晶混合物はまた、例えばEP 2 182 046 A1、WO 2008/009417 A1、WO 2009/021671 A1およびWO 2009/115186 A1から知られている。しかしながら、安定剤の使用は、そこには示されていない。
【0023】
その中の開示において、これらの媒体は、任意にまた、様々なタイプの安定剤、例えばフェノールおよび立体障害化された(sterically hindered)アミン(障害化されたアミン光安定剤、略してHALS)を含んでもよい。しかしながら、これらの媒体は、比較的高いしきい値電圧および最良でも中程度の安定性によって特徴づけられる。特に、それらの電圧保持比は、曝露の後に低下する。さらに、帯黄変色が、しばしば発生する。
【0024】
様々な安定剤の液晶媒体における使用は、例えばJP (S)55-023169 (A)、JP (H)05-117324 (A)、WO 02/18515 A1およびJP (H) 09-291282 (A)に記載されている。
【0025】
ハロゲン(F)によって軸方向に置換されているシクロヘキシレン環を含む化合物は、とりわけDE 197 14 231、DE 187 23 275、DE 198 31 712およびDE 199 45 890から知られている。Kirsch, P., Reiffenrath, V.およびBremer, M., Molecular Design and Synthesis, Synlett 1999(4), 389 ff.、Kirsch, P.およびTarumi, K., Angew. Chem. Int. Ed., 1997(37), 484 ff.ならびにKirsch, P., Heckmeier, M.およびTarumi, K., Liquid Crystals, 1999(26), 449 ff.にはまた、対応する化合物が述べられている。しかしながら、このタイプの化合物を含む液晶媒体は、特に多くの厳しい用途のためには十分に安定でない。特に、分解が、高められた温度で生じ得る。しかしながら、問題が、しばしばまたUV露光の際に生じる。特に、電圧保持比(略してVHRまたはHR)の所望されない相当な低下が、ここで観察される。
【0026】
対応する化合物を含む液晶混合物のピリジン−5−イル単位を含む化合物の添加による安定化は、DE 100 50 880に提案されている。しかしながら、これによっては、しばしば、以下により詳細に述べるように、適切な安定性が得られない。
【0027】
相応して低いアドレッシング電圧を有する従来技術の液晶媒体は、比較的低い電気抵抗値または低いVHRを有し、しばしばディスプレイにおける所望されないフリッカーおよび/または不適切な透過をもたらす。さらに、それらは、少なくとも低いアドレッシング電圧に必要なようにそれらが相応して高い極性を有する場合には、加熱またはUV露光に対して十分に安定でない。
【0028】
さらに、従来技術のディスプレイのアドレッシング電圧は、特に電源ネットワークに直接または連続的でなく接続されないディスプレイ、例えばモバイル適用のためのディスプレイについては、しばしば過度に高い。
さらに、相範囲は、意図した用途のために十分広くなければならない。
【0029】
ディスプレイにおける液晶媒体の応答時間は、改善される、すなわち低減されなければならない。これは、テレビまたはマルチメディア用途のためのディスプレイのために特に重要である。応答時間を改善するために、過去に、液晶媒体の回転粘度(γ
1)を最適化する、すなわち可能な限り低い回転粘度を有する媒体を達成することが、繰り返し提案された。しかしながら、ここで達成された結果は、多くの用途について不適切であり、したがってさらなる最適化アプローチを見出すことが所望されると思われる。
【0030】
極度の負荷に対する、特にUV露光および加熱に対する媒体の適切な安定性は、極めて特に重要である。特にモバイル装置、例えば携帯電話におけるディスプレイにおける適用の場合において、これは重大であり得る。
【0031】
従来開示されているMLCディスプレイの欠点は、それらの比較的低いコントラスト、比較的高い視野角依存性およびこれらのディスプレイにおいてグレーシェードを生じるにあたっての困難さ、ならびにそれらの不適切なVHRおよびそれらの不適切な寿命による。
【0032】
したがって、極めて高い比抵抗、同時に大きい動作温度範囲、短い応答時間および低いしきい値電圧を有し、その補助によって様々なグレーシェードを生じることができ、特に良好であり、かつ安定なVHRを有するMLCディスプレイについての多大な需要が、継続してある。
【発明の概要】
【0033】
本発明は、モニターおよびテレビ用途のためのみならず、しかしまた携帯電話およびナビゲーションシステムのためのMLCディスプレイであって、ECBまたはIPS効果に基づき、上に示した欠点を有しないか、またはより低い程度に有するに過ぎず、かつ同時に極めて高い比抵抗値を有する、前記MLCディスプレイを提供する目的を有する。特に、携帯電話およびナビゲーションシステムについて、それらがまた極度に高い温度および極度に低い温度で動作することが確実でなければならない。
【0034】
驚くべきことに、特にECBディスプレイにおいて低いしきい値電圧を有し、短い応答時間および同時に十分に広いネマチック相、好ましく低い複屈折(Δn)、熱分解に対する良好な安定性および安定な高いVHRを有する液晶ディスプレイを、これらのディスプレイ素子において、式Iで表される少なくとも1種の化合物および各場合において式IIで表される少なくとも1種の化合物および式III−1〜III−4で表される化合物の群から選択された少なくとも1種の化合物を含むネマチック液晶混合物を使用する場合に達成することが可能であることが見出された。
【0035】
このタイプの媒体を、特にECB効果に基づくアクティブマトリックスアドレッシングを有する電気光学的ディスプレイおよびIPS(面内切換)ディスプレイのために使用することができる。
【0036】
したがって、本発明は、式Iで表される少なくとも1種の化合物および従属式IIの群を含む少なくとも1種の化合物を含む、極性化合物の混合物に基づく液晶媒体に関する。
【0037】
本発明の混合物は、≧70℃の透明点を有する極めて広いネマチック相範囲、容量性しきい値についての極めて好ましい値、保持比についての比較的高い値ならびに同時に−20℃および−30℃での良好な低温安定性、ならびに極めて低い回転粘度を示す。本発明の混合物は、さらに透明点および回転粘度の良好な比率によって、ならびに高い負の誘電異方性によって識別される。
【0038】
驚くべきことに、ここで好適に高いΔε、好適な相範囲およびΔnを有し、従来技術の材料の欠点を有していないか、または少なくとも相当に低下した程度に有するに過ぎない液晶媒体を達成することが可能であることが、見出された。
【0039】
驚くべきことに、ここで、式Iで表される化合物によって、加熱に対してさえも、相当に、多くの場合において適切な液晶混合物の安定化がもたらされることが、見出された。これは、ほとんどの場合において、使用する式Iで表される化合物中のパラメーターX
1がO
・を示す場合である。
【0040】
しかしながら、これはまた、特に1種または2種以上のさらなる化合物、好ましくはフェノール系安定剤が存在する場合である。これらのさらなる化合物は、熱安定剤として好適である。この態様は、使用する式Iで表される化合物中のパラメーターX
1がHを示す場合には、特に好ましい。
【0041】
本発明は、したがってネマチック相および負の誘電異方性を有する液晶媒体であって、以下のものを含む、前記液晶媒体に関する。
a)好ましくは、1ppm〜1000ppmの範囲内、好ましくは50ppm〜500ppmの範囲内、特に好ましくは150ppm〜400ppmの範囲内の濃度における、1種または2種以上の式Iで表される化合物、
【化3】
【0042】
式中、
R
11〜R
14は、各々、互いに独立して1〜4個のC原子を有するアルキルを示し、好ましくはすべての4つは、CH
3を示し、
X
1は、HまたはO
・(すなわちフリーラジカル電子を有する1価のO原子)、好ましくはO
・を示し、
Z
1は、−O−、−(CO)−O−、−O−(CO)−、−O−(CO)−O−、−NH−、−NY
01−または−NH−(CO)−を示し、
【0043】
Y
1およびY
01は、各々、互いに独立して、1〜10個のC原子を有する、好ましくは1〜7個のC原子を有する、および特に好ましくは1〜5個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、またシクロアルキル、シクロアルキルアルキルまたはアルキルシクロアルキルを示し、ここですべてのこれらの基中の1つまたは2つ以上の−CH
2−基は、−O−によって、分子中の2個のO原子が互いに直接結合しないように置き換えられていてもよく、
ならびに、Z
1が−O−(CO)−O−を示す場合においては、
Y
1はまた、
【化4】
を示してもよい、
【0044】
b)式II
【化5】
式中、
R
21は、1〜7個のC原子を有する非置換のアルキルラジカルまたは2〜7個のC原子を有する非置換のアルケニルラジカル、好ましくは、特に好ましくは3、4または5個のC原子を有するn−アルキルラジカルを示し、および
R
22は、2〜7個のC原子を有する、好ましくは2、3または4個のC原子を有する非置換のアルケニルラジカル、より好ましくはビニルラジカルまたは1−プロペニルラジカル、特にビニルラジカルを示す、
で表される1種または2種以上の化合物
ならびに
【0045】
c)式III−1〜III−4
【化6】
式中、
R
31は、1〜7個のC原子を有する非置換のアルキルラジカル、好ましくは、特に好ましくは2〜5個のC原子を有するn−アルキルラジカルを示し、
R
32は、1〜7個のC原子を有する、好ましくは2〜5個のC原子を有する非置換のアルキルラジカル、または1〜6個のC原子を有する、好ましくは2、3もしくは4個のC原子を有する非置換のアルコキシラジカルを示し、ならびに
m、nおよびoは、各々、互いに独立して0または1を示す、
の群から選択された1種または2種以上の化合物。
【0046】
本出願において、
アルキルは、特に好ましくは直鎖状アルキル、特にCH
3−、C
2H
5−、n−C
3H
7−、n−C
4H
9−またはn−C
5H
11−を示し、および
アルケニルは、特に好ましくはCH
2=CH−、E−CH
3−CH=CH−、CH
2=CH−CH
2−CH
2−、E−CH
3−CH=CH−CH
2−CH
2−またはE−(n−C
3H
7)−CH=CH−を示す。
【0047】
本出願の液晶媒体は、好ましくは合計で1ppm〜1000ppm、好ましくは50ppm〜500ppmおよび極めて特に好ましくは150ppm〜400ppmの式Iで表される化合物を含む。
【0048】
式Iで表される化合物の本発明の媒体中の濃度は、好ましくは300ppmまたはそれ以下、特に好ましくは200ppmまたはそれ以下である。式Iで表される化合物の本発明の媒体中の濃度は、極めて特に好ましくは50ppmまたはそれ以上から100ppmまたはそれ以下である。
【0049】
これらの化合物は、液晶混合物中の安定剤として高度に好適である。特に、それらは、UV露光後の混合物の「電圧保持比」(略してVHRまたは単にHR)を安定化する。
【0050】
本発明の好ましい態様において、各場合における本発明の媒体は、式I−1〜I−7で表される、好ましくは式I−1および/またはI−2で表される化合物の群から選択された式Iで表される1種または2種以上の化合物を含む:
【化7】
【0051】
【化8】
式中、パラメーターは、式Iの下で上に示した意味を有する。
【0052】
本発明のより好ましい態様において、各場合における本発明の媒体は、以下の化合物の群から選択された式Iで表される1種または2種以上の化合物を含む:
【化9】
【0055】
式中、対応するパラメーターは、式Iの下で上に示した意味を有し、ならびに
RおよびR’は、各々、互いに独立してY
1について上に示した意味を有し、好ましくはアルキル、特に好ましくはn−アルキルを示す。
【0056】
本発明の尚より好ましい態様において、各場合における本発明の媒体は、式I−1a−1、I−1a−2、I−1b−1〜I−1b−4、I−5a−1、I−5a−2、I−6a−1およびI−6a−2で表される以下の化合物の群から選択された、極めて特に好ましくは化合物I−1a−1、I−1a−2、I−1b−1、I−1b−2、I−6a−1およびI−6a−2の群から選択された、ならびに最も好ましくは式I−1a−2、I−1b−2およびI−6a−2で表される化合物の群から選択された、式Iで表される1種または2種以上の化合物を含む:
【化12】
【0057】
式Iまたはその好ましい従属式で表される化合物に加えて、本発明の媒体は、好ましくは5%またはそれ以上から90%またはそれ以下まで、好ましくは10%またはそれ以上から80%またはそれ以下まで、特に好ましくは20%またはそれ以上から70%またはそれ以下までの範囲内の合計濃度における、式IIで表される1種または2種以上の誘電的に負の化合物を含む。
【0058】
本発明の媒体は、好ましくは10%またはそれ以上から80%またはそれ以下まで、好ましくは15%またはそれ以上から70%またはそれ以下まで、特に好ましくは20%またはそれ以上から60%またはそれ以下までの範囲内の合計濃度における、式III−1〜III−4の群から選択された1種または2種以上の化合物を含む。
【0059】
本発明の媒体は、特に好ましくは以下のものを含む。
5%またはそれ以上から30%またはそれ以下までの範囲内の合計濃度における式III−1で表される1種または2種以上の化合物、
3%またはそれ以上から30%またはそれ以下までの範囲内の合計濃度における式III−2で表される1種または2種以上の化合物、
5%またはそれ以上から30%またはそれ以下までの範囲内の合計濃度における式III−3で表される1種または2種以上の化合物、
1%またはそれ以上から30%またはそれ以下までの範囲内の合計濃度における式III−4で表される1種または2種以上の化合物。
【0060】
式IIで表される好ましい化合物は、式II−1およびII−2で表される化合物の群から選択された、好ましくは式II−1で表される化合物から選択された化合物である、
【化13】
【0061】
式中、
Alkylは、1〜7個のC原子を有する、好ましくは2〜5個のC原子を有するアルキルラジカルを示し、
Alkenylは、2〜5個のC原子を有する、好ましくは2〜4個のC原子、特に好ましくは2個のC原子を有するアルケニルラジカルを示し、
Alkenyl’は、2〜5個のC原子を有する、好ましくは2〜4個のC原子を有する、特に好ましくは2〜3個のC原子を有するアルケニルラジカルを示す。
【0062】
本発明の媒体は、好ましくは、式III−1で表される1種または2種以上の化合物、好ましくは式III−1−1およびIII−1−2で表される化合物の群から選択された1種または2種以上の化合物を含む。
【化14】
【0063】
式中、パラメーターは、式III−1について上に示した意味を有し、および好ましくは
R
31は、2〜5個のC原子を有する、好ましくは3〜5個のC原子を有するアルキルラジカルを示し、および
R
32は、2〜5個のC原子を有するアルキルもしくはアルコキシラジカル、好ましくは2〜4個のC原子を有するアルコキシラジカル、または2〜4個のC原子を有するアルケニルオキシラジカルを示す。
【0064】
本発明の媒体は、好ましくは、式III−2で表される1種または2種以上の化合物、好ましくは式III−2−1およびIII−2−2で表される化合物の群から選択された1種または2種以上の化合物を含む。
【化15】
【0065】
式中、パラメーターは、式III−2について上に示した意味を有し、および好ましくは
R
31は、2〜5個のC原子を有する、好ましくは3〜5個のC原子を有するアルキルラジカルを示し、および
R
32は、2〜5個のC原子を有するアルキルもしくはアルコキシラジカル、好ましくは2〜4個のC原子を有するアルコキシラジカル、または2〜4個のC原子を有するアルケニルオキシラジカルを示す。
【0066】
本発明の媒体は、好ましくは、式III−3で表される1種または2種以上の化合物、好ましくは式III−3−1およびIII−3−2で表される化合物の群から選択された1種または2種以上の化合物を含む。
【化16】
【0067】
式中、パラメーターは、式III−3について上に示した意味を有し、および好ましくは
R
31は、2〜5個のC原子を有する、好ましくは3〜5個のC原子を有するアルキルラジカルを示し、および
R
32は、2〜5個のC原子を有するアルキルもしくはアルコキシラジカル、好ましくは2〜4個のC原子を有するアルコキシラジカル、または2〜4個のC原子を有するアルケニルオキシラジカルを示す。
【0068】
本発明の媒体は、極めて好ましくは、式II−1a、II−1b、II−2aおよびII−2b、II−3a〜II−3c、II−5a、II−5b、II−6a、II−6b、II−7aおよびII−7bで表される化合物の群から選択された、好ましくは式II−3a、II−3bおよびII−3cで表される、ならびに極めて特に好ましくは式II−3aで表される化合物の群から選択された、式IIで表される1種または2種以上の化合物、
ならびに任意に
1種または2種以上のキラルな化合物
を含む。
【0069】
本発明の媒体は、好ましくは述べた合計濃度における以下の化合物を含む:
10〜60重量%の式IIIで表される1種もしくは2種以上の化合物ならびに/または
30〜80重量%の式IVおよび/もしくはVで表される1種もしくは2種以上の化合物、
ここですべての化合物の媒体中の合計含量は、100%である。
【0070】
本発明の媒体は、特に好ましくは式OH−1〜OH−6で表される化合物の群から選択された1種または2種以上の化合物を含む、
【化17】
これらの化合物は、媒体の熱安定化に高度に適している。
【0071】
本発明はまた、本発明の液晶媒体を含む電気光学的ディスプレイまたは電気光学部品に関する。好ましいのは、VAまたはECB効果に基づく電気光学的ディスプレイ、および特にアクティブマトリックスアドレッシングデバイスによってアドレスされるものである。
【0072】
したがって、本発明は同様に、本発明の液晶媒体の電気光学的ディスプレイにおける、または電気光学部品における使用、ならびに本発明の液晶媒体の調製方法であって、式Iで表される1種または2種以上の化合物を、従属式IIで表される1または2以上の群を含む1種または2種以上の化合物と、好ましくは式IIで表される1種または2種以上の化合物と、好ましくは式IIIおよびIVおよび/またはVで表される化合物の群から選択された1種または2種以上のさらなる化合物と混合することを特徴とする、前記方法に関する。
【0073】
さらに、本発明は、式IIで表される1種または2種以上の化合物および式III−1〜III−4で表される化合物の群から選択された1種または2種以上の化合物を含む液晶媒体の安定化のための方法であって、式Iで表される1種または2種以上の化合物を媒体に加えることを特徴とする、前記方法に関する。
【0074】
さらなる好ましい態様において、媒体は、式IVで表される1種または2種以上の化合物を含む。
【化18】
式中、
R
41は、1〜7個のC原子を有する、好ましくは2〜5個のC原子を有するアルキルを示し、および
R
42は、1〜7個のC原子を有するアルキルまたは1〜6個のC原子を有する、好ましくは2〜5個のC原子を有するアルコキシを示す。
【0075】
さらなる好ましい態様において、媒体は、式IV−1およびIV−2で表される化合物の群から選択された式IVで表される1種または2種以上の化合物を含む、
【化19】
式中、
AlkylおよびAlkyl’は、互いに独立して1〜7個のC原子を有する、好ましくは2〜5個のC原子を有するアルキルを示し、
Alkoxyは、1〜5個のC原子を有する、好ましくは2〜4個のC原子を有するアルコキシを示し、ならびに
【0076】
さらなる好ましい態様において、媒体は、式Vで表される1種または2種以上の化合物を含む。
【化20】
式中、
R
51およびR
52は、互いに独立してR
21およびR
22について示した意味の1つを有し、好ましくは1〜7個のC原子を有するアルキル、好ましくはn−アルキル、特に好ましくは1〜5個のC原子を有するn−アルキル、
1〜7個のC原子を有するアルコキシ、好ましくはn−アルコキシ、特に好ましくは2〜5個のC原子を有するn−アルコキシ、
2〜7個のC原子を有する、好ましくは2〜4個のC原子を有するアルコキシアルキル、アルケニルまたはアルケニルオキシ、好ましくはアルケニルオキシを示し、
【0077】
【化21】
は、存在する場合には、各々、互いに独立して
【化22】
好ましくは
【化23】
を示し、
【0078】
好ましくは
【化24】
は、
【化25】
を示し、
ならびに存在する場合には、
【化26】
は、好ましくは
【化27】
を示し、
【0079】
Z
51〜Z
53は、各々、互いに独立して−CH
2−CH
2−、−CH
2−O−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−または単結合、好ましくは−CH
2−CH
2−、−CH
2−O−または単結合および特に好ましくは単結合を示し、
pおよびqは、各々、互いに独立して0または1を示し、
(p+q)は、好ましくは0または1を示す。
【0080】
さらなる好ましい態様において、媒体は、式V−1〜V−10で表される化合物の群から選択された、好ましくは式V−1〜V−5で表される化合物の群から選択された式Vで表される1種または2種以上の化合物を含む。
【化28】
【0082】
式中、パラメーターは、式Vの下で上に示した意味を有し、ならびに
Y
5は、HまたはFを示し、および好ましくは
R
51は、1〜7個のC原子を有するアルキルまたは2〜7個のC原子を有するアルケニルを示し、および
R
52は、1〜7個のC原子を有するアルキル、2〜7個のC原子を有するアルケニルまたは1〜6個のC原子を有するアルコキシ、好ましくはアルキルまたはアルケニル、特に好ましくはアルケニルを示す。
【0083】
さらなる好ましい態様において、媒体は、式V−1aおよびV−1b、好ましくは式V−1bで表される化合物の群から選択された、式V−1で表される1種または2種以上の化合物を含む。
【化30】
【0084】
式中、
AlkylおよびAlkyl’は、互いに独立して、1〜7個のC原子を有する、好ましくは2〜5個のC原子を有するアルキルを示し、
Alkoxyは、1〜5個のC原子を有する、好ましくは2〜4個のC原子を有するアルコキシを示す。
【0085】
さらなる好ましい態様において、媒体は、式V−3aおよびV−3bで表される化合物の群から選択された、式V−3で表される1種または2種以上の化合物を含む。
【化31】
【0086】
式中、
AlkylおよびAlkyl’は、互いに独立して1〜7個のC原子を有する、好ましくは2〜5個のC原子を有するアルキルを示し、
Alkoxyは、1〜5個のC原子を有する、好ましくは2〜4個のC原子を有するアルコキシを示し、および
Alkenylは、2〜7個のC原子を有する、好ましくは2〜5個のC原子を有するアルケニルを示す。
【0087】
さらなる好ましい態様において、媒体は、式V−4aおよびV−4bで表される化合物の群から選択された、式V−4で表される1種または2種以上の化合物を含む。
【化32】
【0088】
式中、
AlkylおよびAlkyl’は、互いに独立して1〜7個のC原子を有する、好ましくは2〜5個のC原子を有するアルキルを示し、
Alkoxyは、1〜5個のC原子を有する、好ましくは2〜4個のC原子を有するアルコキシを示し、および
【0089】
さらなる好ましい態様において、媒体は、式III−4で表される、好ましくは式III−4−aで表される1種または2種以上の化合物を含む、
【化33】
【0090】
式中、
AlkylおよびAlkyl’は、互いに独立して1〜7個のC原子を有する、好ましくは2〜5個のC原子を有するアルキルを示す。
【0091】
本発明の液晶媒体は、1種または2種以上のキラルな化合物を含んでもよい。
【0092】
本発明の特に好ましい態様は、以下の条件の1つまたは2つ以上を満たし、
ここで頭字語(略語)を表A〜Cにおいて説明し、例によって表D中に例示する。
i.液晶媒体は、0.060またはそれ以上、特に好ましくは0.070またはそれ以上の複屈折を有する。
ii.液晶媒体は、0.130またはそれ以下、特に好ましくは0.120またはそれ以下の複屈折を有する。
iii.液晶媒体は、0.090またはそれ以上から0.120またはそれ以下までの範囲内の複屈折を有する。
【0093】
iv.液晶媒体は、2.0またはそれ以上、特に好ましくは3.0またはそれ以上の値を有する負の誘電異方性を有する。
v.液晶媒体は、5.5またはそれ以下、特に好ましくは4.0またはそれ以下の値を有する負の誘電異方性を有する。
vi.液晶媒体は、2.5またはそれ以上から3.8またはそれ以下までの範囲内の値を有する負の誘電異方性を有する。
【0094】
vii.液晶媒体は、以下に示す従属式から選択された式IIで表される1種または2種以上の特に好ましい化合物を含む:
【化34】
【0096】
式中、Alkylは、上に示した意味を有し、好ましくは各場合において互いに独立して1〜6個、好ましくは2〜5個のC原子を有するアルキルおよび特に好ましくはn−アルキルを示す。
【0097】
viii.式IIで表される化合物の全体としての混合物中での合計濃度は、25%またはそれ以上、好ましくは30%またはそれ以上であり、好ましくは25%またはそれ以上から49%またはそれ以下までの範囲内、特に好ましくは29%またはそれ以上から47%またはそれ以下までの範囲内、および極めて特に好ましくは37%またはそれ以上から44%またはそれ以下までの範囲内にある。
【0098】
ix.液晶媒体は、以下の式で表される化合物の群から選択された式IIで表される1種または2種以上の化合物を含む:好ましくは50%までまたはそれ以下、特に好ましくは42%までまたはそれ以下の濃度でのCC−n−Vおよび/またはCC−n−Vm、特に好ましくはCC−3−V、および任意にさらに、好ましくは15%までまたはそれ以下の濃度でのCC−3−V1、および/または好ましくは20%までまたはそれ以下の濃度での、特に好ましくは10%までまたはそれ以下の濃度でのCC−4−V。
【0099】
x.式CC−3−Vで表される化合物の全体としての混合物中での合計濃度は、20%またはそれ以上、好ましくは25%またはそれ以上である。
xi.式III−1〜III−4で表される化合物の全体としての混合物中での比率は、50%またはそれ以上および好ましくは75%またはそれ以下である。
【0100】
xii.液晶媒体は、本質的に式I、II、III−1〜III−4、IVおよびVで表される化合物、好ましくは式I、IIおよびIII−1〜III−4で表される化合物からなる。
xiii.液晶媒体は、式IVで表される1種または2種以上の化合物を、好ましくは5%またはそれ以上、特に10%またはそれ以上、および極めて特に好ましくは15%またはそれ以上〜40%またはそれ以下の合計濃度で含む。
【0101】
本発明はさらに、VAまたはECB効果に基づくアクティブマトリックスアドレッシングを有する電気光学的ディスプレイであって、誘電体として本発明の液晶媒体を含むことを特徴とする、前記電気光学的ディスプレイに関する。
液晶混合物は、好ましくは少なくとも80度の幅を有するネマチック相範囲および20℃で多くとも30mm
2・s
−1の流動粘度ν
20を有する。
【0102】
本発明の液晶混合物は、−0.5〜−8.0、特に−1.5〜−6.0および極めて特に好ましくは−2.0〜−5.0のΔεを有し、ここでΔεは、誘電異方性を示す。
回転粘度γ
1は、好ましくは120mPa・sまたはそれ以下、特に100mPa・sまたはそれ以下である。
【0103】
本発明の混合物は、すべてのVA−TFT用途、例えばVAN、MVA、(S)−PVAおよびASVに適している。それらはさらに、負のΔεを有するIPS(面内切換)、FFS(フリンジ領域切換)およびPALC用途に適している。
本発明のディスプレイにおけるネマチック液晶混合物は、一般的に2種の構成成分AおよびBを含み、それら自体は、1種または2種以上の個々の化合物からなる。
【0104】
本発明の液晶媒体は、好ましくは4〜15種、特に5〜12種および特に好ましくは10種またはそれ以下の化合物を含む。これらは、好ましくは式I、IIおよびIII−1〜III−4および/またはIVおよび/またはVで表される化合物の群から選択される。
本発明の液晶媒体は、任意にまた18種より多い化合物を含んでもよい。この場合において、それらは、好ましくは18〜25種の化合物を含む。
【0105】
式I〜Vで表される化合物に加えて、他の構成要素がまた、例えば全体としての混合物の45%まで、しかし好ましくは35%まで、特に10%までの量において存在してもよい。
本発明の媒体は、任意にまた誘電的に正の構成成分を含んでいてもよく、その合計濃度は、好ましくは全媒体を基準として10%またはそれ以下である。
【0106】
好ましい態様において、本発明の液晶媒体は、合計で全体としての混合物を基準として以下のものを含む、
10ppmまたはそれ以上〜1000ppmまたはそれ以下、好ましくは50ppmまたはそれ以上〜500ppmまたはそれ以下、特に好ましくは100ppmまたはそれ以上〜400ppmまたはそれ以下および極めて特に好ましくは150ppmまたはそれ以上〜300ppmまたはそれ以下の式Iで表される化合物、
20%またはそれ以上〜60%またはそれ以下、好ましくは25%またはそれ以上〜50%またはそれ以下、特に好ましくは30%またはそれ以上〜45%またはそれ以下の式IIで表される化合物、ならびに
50%またはそれ以上〜70%またはそれ以下の式III−1〜III−4で表される化合物。
【0107】
好ましい態様において、本発明の液晶媒体は、式I、II、III−1〜III−4、IVおよびVで表される化合物の群から選択された、好ましくは式I、IIおよびIII−1〜III−4で表される化合物の群から選択された化合物を含む;それらは、好ましくは前記式で表される化合物から主になり、特に好ましくは本質的にそれからなり、極めて特に好ましくは事実上完全にそれからなる。
【0108】
本発明の液晶媒体は、好ましくは、各場合において少なくとも−20℃またはそれ以下から70℃またはそれ以上までの、特に好ましくは−30℃またはそれ以下から80℃またはそれ以上までの、極めて特に好ましくは−40℃またはそれ以下から85℃またはそれ以上までの、および最も好ましくは−40℃またはそれ以下から90℃またはそれ以上までのネマチック相を有する。
【0109】
表現「ネマチック相を有する」は、本明細書中で、一方で、スメクチック相および結晶が低温で対応する温度で観察されず、他方で透明化がネマチック相から加熱した際に生じないことを意味する。低温での調査を、流動粘度計中で対応する温度で行い、電気光学的適用に対応するセルの厚さを有する試験セル中での貯蔵によって少なくとも100時間チェックする。対応する試験セル中での−20℃の温度での貯蔵安定性が1000hまたはそれ以上である場合には、媒体を、この温度で安定であると見なす。−30℃および−40℃の温度で、対応する時間は、それぞれ500hおよび250hである。高温で、透明点を、毛細管中で慣用の方法によって測定する。
【0110】
好ましい態様において、本発明の液晶媒体は、中程度ないし低い範囲内の光学異方性値によって特徴づけられる。複屈折値は、好ましくは0.065またはそれ以上から0.130またはそれ以下までの範囲内に、特に好ましくは0.080またはそれ以上から0.120またはそれ以下までの範囲内に、および極めて特に好ましくは0.085またはそれ以上から0.110またはそれ以下までの範囲内にある。
【0111】
この態様において、本発明の液晶媒体は、負の誘電異方性ならびに好ましくは2.7またはそれ以上から5.3またはそれ以下まで、好ましくは4.5またはそれ以下まで、好ましくは2.9またはそれ以上から4.5またはそれ以下まで、特に好ましくは3.0またはそれ以上から4.0またはそれ以下まで、および極めて特に好ましくは3.5またはそれ以上から3.9またはそれ以下までの範囲内にある誘電異方性の比較的高い絶対値(|Δε|)を有する。
【0112】
本発明の液晶媒体は、1.7Vまたはそれ以上から2.5Vまたはそれ以下まで、好ましくは1.8Vまたはそれ以上から2.4Vまたはそれ以下まで、特に好ましくは1.9Vまたはそれ以上から2.3Vまたはそれ以下まで、および極めて特に好ましくは1.95Vまたはそれ以上から2.1Vまたはそれ以下までの範囲内のしきい値電圧(V
0)についての比較的低い値を有する。
【0113】
さらなる好ましい態様において、本発明の液晶媒体は、好ましくは5.0またはそれ以上から7.0またはそれ以下まで、好ましくは5.5またはそれ以上から6.5またはそれ以下まで、尚より好ましくは5.7またはそれ以上から6.4またはそれ以下まで、特に好ましくは5.8またはそれ以上から6.2またはそれ以下まで、および極めて特に好ましくは5.9またはそれ以上から6.1またはそれ以下までの範囲内にある平均誘電異方性(ε
av.≡ε
‖+2ε
⊥)/3)の比較的低い値を好ましくは有する。
【0114】
さらに、本発明の液晶媒体は、液晶セルにおけるVHRについての高い値を有する。
20℃でセル中に新鮮に満たしたセルにおいて、これらは、95%より大きいかまたはそれに等しく、好ましくは97%より大きいかまたはそれに等しく、特に好ましくは98%より大きいかまたはそれに等しく、および極めて特に好ましくは99%より大きいかまたはそれに等しく、オーブン中で100℃でセル中で5分後、これらは、90%より大きいかまたはそれに等しく、好ましくは93%より大きいかまたはそれに等しく、特に好ましくは96%より大きいかまたはそれに等しく、および極めて特に好ましくは98%より大きいかまたはそれに等しい。
【0115】
一般的に、低いアドレッシング電圧またはしきい値電圧を有する液晶媒体は、ここでより高いアドレッシング電圧またはしきい値電圧を有するものよりも低いVHRを有し、逆もまた同様である。
個々の物理的特性についてのこれらの好ましい値は、好ましくはまた各場合において本発明の媒体によって互いと組み合わせて維持される。
【0116】
本出願において、また「化合物(単数または複数)」として記載した用語「化合物」は、他に明確に示さない限り、1種の、およびまた複数種の化合物の両方を意味する。
他に示さない限り、個々の化合物を、一般的に、混合物中で、各場合において1%またはそれ以上から30%またはそれ以下まで、好ましくは2%またはそれ以上から30%またはそれ以下まで、および特に好ましくは3%またはそれ以上から16%またはそれ以下までの濃度において使用する。
【0117】
好ましい態様において、本発明の液晶媒体は、以下のものを含む。
式Iで表される化合物、
好ましくは式CC−n−VおよびCC−n−Vm、好ましくはCC−3−V、CC−3−V1、CC−4−VおよびCC−5−Vで表される化合物の群から選択された、特に好ましくは化合物CC−3−V、CC−3−V1およびCC−4−V、極めて特に好ましくは化合物CC−3−V、ならびに任意にさらに化合物(単数または複数)CC−4−Vおよび/またはCC−3−V1の群から選択された、式IIで表される1種または2種以上の化合物、
【0118】
式CY−3−O2、CY−3−O4、CY−5−O2およびCY−5−O4で表される化合物の群から選択された、式III−1−1で表される、好ましくは式CY−n−Omで表される1種または2種以上の化合物、
好ましくは式CCY−n−mおよびCCY−n−Omで表される、好ましくは式CCY−n−Omで表される化合物の群から選択された、好ましくは式CCY−3−O2、CCY−2−O2、CCY−3−O1、CCY−3−O3、CCY−4−O2、CCY−3−O2およびCCY−5−O2で表される化合物の群から選択された、式III−1−2で表される1種または2種以上の化合物、
【0119】
任意に、好ましくは義務的に、好ましくは式CLY−2−O4、CLY−3−O2、CLY−3−O3で表される化合物の群から選択された、式III−2−2で表される、好ましくは式CLY−n−Omで表される1種または2種以上の化合物、
好ましくは式CPY−2−O2およびCPY−3−O2、CPY−4−O2およびCPY−5−O2で表される化合物の群から選択された、式III−3−2で表される、好ましくは式CPY−n−Omで表される1種または2種以上の化合物、
好ましくは式PYP−2−3およびPYP−2−4で表される化合物の群から選択された、式III−4で表される、好ましくは式PYP−n−mで表される1種または2種以上の化合物。
【0120】
本発明について、以下の定義が、個々の場合において他に示さない限り、組成物の構成要素の詳述に関して該当する:
− 「含む」:問題の構成要素の組成物中の濃度は、好ましくは5%またはそれ以上、特に好ましくは10%またはそれ以上、極めて特に好ましくは20%またはそれ以上である、
− 「主に〜からなる」:問題の構成要素の組成物中の濃度は、好ましくは50%またはそれ以上、特に好ましくは55%またはそれ以上および極めて特に好ましくは60%またはそれ以上である、
【0121】
− 「本質的に〜からなる」:問題の構成要素の組成物中の濃度は、好ましくは80%またはそれ以上、特に好ましくは90%またはそれ以上および極めて特に好ましくは95%またはそれ以上である、ならびに
− 「事実上完全に〜からなる」:問題の構成要素の組成物中の濃度は、好ましくは98%またはそれ以上、特に好ましくは99%またはそれ以上および極めて特に好ましくは100.0%である。
【0122】
これは、構成成分および化合物であり得るそれらの構成要素を有する組成物としての媒体、およびまたそれらの構成要素、化合物を有する構成成分の両方に該当する。個々の化合物の全体としての媒体に相対する濃度に関してのみ、含むの用語は、以下のことを意味する:問題の化合物の濃度は、好ましくは1%またはそれ以上、特に好ましくは2%またはそれ以上、極めて特に好ましくは4%またはそれ以上である。
【0123】
本発明について、「≦」は、より小さいかまたは等しい、好ましくはより小さいを意味し、「≧」は、より大きいかまたは等しい、好ましくはより大きいを意味する。
本発明について、
【化36】
は、トランス−1,4−シクロヘキシレンを示し、ならびに
【化37】
は、1,4−フェニレンを示す。
【0124】
本発明について、表現「誘電的に正の化合物」は、>1.5のΔεを有する化合物を意味し、表現「誘電的に中性の化合物」は、−1.5≦Δε≦1.5であるものを意味し、表現「誘電的に負の化合物」は、Δε<−1.5であるものを意味する。化合物の誘電異方性を、ここで、10%の化合物を液晶ホストに溶解し、得られた混合物のキャパシタンスを各場合において20μmのセル厚さを有し、ホメオトロピックな、および均一な表面整列を有する少なくとも1つの試験セル中で、1kHzで決定することにより決定する。測定電圧は、典型的に0.5V〜1.0Vであるが、調査したそれぞれの液晶混合物の容量性しきい値よりも常に低い。
【0125】
誘電的に正の、および誘電的に中性の化合物のために使用したホスト混合物は、ZLI−4792であり、誘電的に負の化合物のために使用したものは、ZLI 2857であり、共にMerck KGaA、ドイツ国からである。調査するべきそれぞれの化合物についての値を、調査するべき化合物の添加の後のホスト混合物の絶縁定数の変化および使用した化合物の100%への外挿から得る。調査するべき化合物を、ホスト混合物に10%の量において溶解する。当該物質の可溶性がこの目的のために過度に低い場合には、濃度を、調査を所望の温度で行うことができるまで段階的に半減させる。
【0126】
本発明の液晶媒体は、所要に応じて、またさらなる添加剤、例えば安定剤および/または多色性染料および/またはキラルなドーパントを通常の量において含んでいてもよい。使用するこれらの添加剤の量は、好ましくは、全体の混合物の量を基準として合計で0%またはそれ以上から10%またはそれ以下まで、特に好ましくは0.1%またはそれ以上から6%またはそれ以下までである。使用する個々の化合物の濃度は、好ましくは0.1%またはそれ以上から3%またはそれ以下である。これらのおよび同様の添加剤の濃度は、液晶化合物の液晶媒体中での濃度および濃度範囲を特定する場合には、一般的に考慮しない。
【0127】
好ましい態様において、本発明の液晶媒体は、1種または2種以上の反応性化合物、好ましくは反応性メソゲン、ならびに所要に応じてまたさらなる添加剤、例えば重合開始剤および/または重合減速材を通常の量において含むポリマー前駆体を含む。使用するこれらの添加剤の量は、好ましくは、全体の混合物の量を基準として合計で0%またはそれ以上から10%またはそれ以下まで、好ましくは0.1%またはそれ以上から2%またはそれ以下までである。これらのおよび同様の添加剤の濃度は、液晶化合物の液晶媒体中での濃度および濃度範囲を特定する場合には考慮しない。
【0128】
組成物は、複数種の化合物、好ましくは3種またはそれ以上〜30種またはそれより少数、特に好ましくは6種またはそれ以上〜20種またはそれより少数および極めて特に好ましくは10種またはそれ以上〜16種またはそれより少数の化合物からなり、それを慣用の方式で混合する。一般的に、少ない方の量において使用する所望の量の構成成分を、混合物の主要な構成要素を構成する構成成分に溶解する。これを、有利には高い温度で行う。選択した温度が主要な構成要素の透明点よりも高い場合には、溶解操作の完了は、観察するのが特に容易である。しかしながら、液晶混合物を、他の慣用の方法で、例えばプレミックスを使用して、またはいわゆる「マルチボトル(multibottle)系」から調製することもまた、可能である。
【0129】
本発明の混合物は、65℃またはそれ以上の透明点を有する極めて広いネマチック相範囲、容量性しきい値についての極めて好ましい値、保持比についての比較的高い値ならびに同時に−30℃および−40℃における極めて良好な低温安定性を示す。さらに、本発明の混合物は、低い回転粘度γ
1によって識別される。
【0130】
当業者には、VA、IPS、FFSまたはPALCディスプレイにおいて使用するための本発明の媒体はまた、例えばH、N、O、Cl、Fが対応する同位体によって置き換えられている化合物を含んでいてもよいことは、言うまでもない。
本発明の液晶ディスプレイの構造は、例えばEP-A 0 240 379に記載されているように通常の配置に相当する。
【0131】
本発明の液晶相を、好適な添加剤によって、それらを現在まで開示されているあらゆるタイプの、例えばECB、VAN、IPS、GHまたはASM−VA LCDディスプレイにおいて使用することができるように修正することができる。
以下の表Eは、本発明の混合物に加えることができる可能なドーパントを示す。混合物が1種または2種以上のドーパントを含む場合には、それ(ら)を、0.01〜4%、好ましくは0.1〜1.0%の量において使用する。
【0132】
例えば本発明の混合物に好ましくは0.01〜6%、特に0.1〜3%の量において加えることができる安定剤を、以下の表F中に示す。
本発明の目的のために、すべての濃度を、他に明確に注記しない限り重量パーセントにおいて示し、他に明確に示さない限り対応する混合物または混合物構成成分に関する。
【0133】
他に明確に示さない限り、本出願において示したすべての温度値、例えば融点T(C,N)、スメクチック(S)からネマチック(N)への相転移T(S,N)および透明点T(N,I)を、摂氏度(℃)において示し、すべての温度差を、相応して差異の度(°または度)において示す。
【0134】
本発明のために、用語「しきい値電圧」は、他に明確に示さない限りFreedericksしきい値としても知られている容量性しきい値(V
0)に関する。
【0135】
すべての物理的性質を、"Merck Liquid Crystals, Physical Properties of Liquid Crystals"、1997年11月の状況、Merck KgaA、ドイツ国に従って決定し、決定しており、20℃の温度について該当し、各場合において他に明確に示さない限り、Δnを589nmで決定し、Δεを1kHzで決定する。
【0136】
電気光学的特性、例えばしきい値電圧(V
0)(容量性測定)を、切換挙動と同様に、Merck Japan
Ltd.で生産された試験セル中で決定する。測定セルは、ソーダ石灰ガラス基材を有し、互いに垂直にラビングしており、液晶のホメオトロピック配向をもたらすポリイミド整列層(希釈剤**26を有するSE−1211(混合比1:1)、共に日産化学、日本国から)を備えたECBまたはVA配置中に構築される。透明であり、事実上正方形のITO電極の表面積は、1cm
2である。
【0137】
他に示さない限り、キラルなドーパントを、使用する液晶混合物に加えないが、後者はまた、このタイプのドーピングが必要である用途に特に適している。
【0138】
VHRを、Merck Japan
Ltd.で生産された試験セル中で決定する。測定セルは、ソーダ石灰ガラス基材を有し、50nmの層の厚さを有し、互いに垂直にラビングしたポリイミド整列層(AL−3046、日本合成ゴム、日本国から)で構築する。層の厚さは、均一な6.0μmである。透明なITO電極の表面積は、1cm
2である。
【0139】
VHRを、20℃で(VHR
20)、および5分後に100℃のオーブン中で(VHR
100)、Autronic Melchers、ドイツ国からの商業的に入手できる機器中で決定する。使用する電圧は、60Hzの周波数を有する。
【0140】
VHR測定値の精度は、VHRのそれぞれの値に依存する。精度は、低下する値に伴って低下する。様々な大きさ範囲における値の場合において一般的に観察された偏差を、それらの指標において以下の表中にまとめる。
【0142】
UV照射に対する安定性を、"Suntest CPS"、Heraeus、ドイツ国からの商業的機器において調査する。密封した試験セルを、追加的な加熱を伴わずに2.0時間照射する。300nm〜800nmの波長範囲における照射電力は、765W/m
2Vである。310nmの端波長を有するUV「遮断」フィルターを使用して、いわゆる窓ガラスモードを模擬する。各々の一連の実験において、少なくとも4つの試験セルを、各条件について調査し、それぞれの結果を、対応する個々の測定の平均として示す。
【0143】
通常例えばLCD背面照射によるUV照射による曝露によって生じた電圧保持比の低下(ΔVHR)を、以下の方程式(1)に従って決定する:
ΔVHR(t)=VHR(t)−VHR(t=0) (1)。
【0144】
LC混合物の時間tにわたる負荷に対する相対的安定性(S
rel)を、以下の方程式、方程式(2)に従って決定する:
【数1】
式中、「ref」は、対応する安定化されていない混合物を表す。
【0145】
VHRに加えて、液晶混合物の伝導性を特徴づけすることができるさらなる特徴的な量は、イオン密度である。イオン密度の高い値によって、しばしばディスプレイ欠陥、例えば画像固着およびフリッカリングの発生がもたらされる。イオン密度を、好ましくはMerck Japan Ltdで生産された試験セル中で決定する。試験セルは、ソーダ石灰ガラスから作製した基板を有し、ポリイミド層の厚さが40nmであるポリイミド整列層(AL−3046、日本合成ゴム、日本国から)で設計されている。液晶混合物の層の厚さは、均一な5.8μmである。さらにガードリングを取り付けた円形の透明なITO電極の面積は、1cm
2である。測定法の精度は、約±15%ある。セルを、オーブン中で120℃で一晩乾燥し、その後関連性のある液晶混合物で充填する。
【0146】
イオン密度を、TOYO、日本国からの商業的に入手できる機器を使用して測定する。測定法は、本質的に、M. Inoue, "Recent Measurement of Liquid Crystal Material Characteristics", Proceedings IDW 2006, LCT-7-1,647に記載されているようにサイクリック・ボルタンメトリーと同様である測定法である。この方法において、印加した直接の電圧を、あらかじめ指定した三角形のプロフィールに従って正の極大値と負の極大値との間で変化させる。プロフィールを通じての完全な試行は、したがって1つの測定サイクルを形成する。印加した電圧が、電界中のイオンがそれぞれの電極に移動することができるのに十分に大きい場合には、イオン電流は、イオンの放電により生じる。
【0147】
ここで移送される電荷の量は、典型的には数pC〜数nCの範囲内にある。これによって、高度に感受性の検出が必要になり、それは、前述の機器によって確実にされる。結果を、電流/電圧曲線中に示す。ここでのイオン電流は、液晶混合物のしきい値電圧より小さい電圧でのピークの発生から明らかである。ピーク面積の積分によって、調査した混合物のイオン密度についての値が得られる。4つの試験セルを、混合物あたり測定する。三角形電圧の繰り返し周波数は0.033Hzであり、測定温度は60℃であり、極大電圧は、関連性のある混合物の誘電異方性の規模に依存して±3V〜±10Vである。
【0148】
回転粘度を、回転永久磁石方法を使用して決定し、流動粘度を、修正したUbbelohde粘度計において決定する。すべてMerck KGaA, Darmstadt、ドイツ国からの製品である液晶混合物ZLI−2293、ZLI−4792およびMLC−6608について、20℃で決定した回転粘度値は、それぞれ161mPa・s、133mPa・sおよび186mPa・sであり、流動粘度値(ν)は、それぞれ21mm
2・s
−1、14mm
2・s
−1および27mm
2・s
−1である。
【0149】
他に明確に示さない限り、以下の記号を使用する:
V
0 20℃でのしきい値電圧、容量性[V]、
n
e 20℃および589nmで測定した異常屈折率、
n
o 20℃および589nmで測定した通常屈折率、
Δn 20℃および589nmで測定した光学異方性、
ε
⊥ 20℃および1kHzでのダイレクターに垂直な電気感受率、
ε
‖ 20℃および1kHzでのダイレクターに平行な電気感受率、
Δε 20℃および1kHzでの誘電異方性、
【0150】
cl.p.またはT(N,I) 透明点[℃]、
ν 20℃で測定した流動粘度[mm
2・s
−1]、
γ
1 20℃で測定した回転粘度[mPa・s]、
K
1 20℃での弾性定数、「広がり」変形[pN]、
K
2 20℃での弾性定数、「ねじれ」変形[pN]、
K
3 20℃での弾性定数、「曲がり」変形[pN]、および
LTS 試験セル中で決定した相の低温安定性、
VHR 電圧保持比、
ΔVHR 電圧保持比の低下、
S
rel VHRの相対的安定性。
【0151】
以下の例は、本発明を、それを限定せずに説明する。しかしながら、それらは、当業者に、好ましくは使用するべき化合物およびそのそれぞれの濃度ならびに互いとのその組み合わせについての好ましい混合物概念を示す。さらに、例は、アクセス可能な特性および特性の組み合わせを例示する。
【0152】
本発明について、および以下の例において、液晶化合物の構造を頭字語によって示し、化学式への変換を以下の表A〜Cに従って行う。すべてのラジカルC
nH
2n+1、C
mH
2m+1およびC
lH
2l+1またはC
nH
2n、C
mH
2mおよびC
lH
2lは、各場合においてそれぞれn個、m個およびl個のC原子を有する直鎖状アルキルラジカルまたはアルキレンラジカルである。表Aは、化合物の核の環要素についてのコードを示し、表Bは、架橋単位を列挙し、表Cは、分子の左側および右側末端基についての記号の意味を列挙する。頭字語は、任意の結合基を有する環要素についてのコード、続いて第1のハイフンおよび左側末端基についてのコード、および第2のハイフンおよび右側末端基についてのコードから構成されている。表Dは、化合物の例示的な構造をそれらのそれぞれの略語と一緒に示す。
【0158】
【化43】
式中、nおよびmは、各々整数であり、3つの点「...」は、この表からの他の略語のためのプレースホルダーである。
【0159】
式Iで表される化合物に加えて、本発明の混合物は、好ましくは以下に述べる化合物の1種または2種以上の化合物を含む。
以下の略語を使用する:
(n、mおよびzは、互いに独立して、各々整数、好ましくは1〜6である)
【0167】
表Eは、本発明の混合物中で好ましく使用するキラルなドーパントを示す。
表E
【化51】
【0170】
本発明の好ましい態様において、本発明の媒体は、表Eからの化合物の群から選択された1種または2種以上の化合物を含む。
【0171】
表Fは、式Iで表される化合物に加えて本発明の混合物中で好ましく使用することができる安定剤を示す。パラメーターnは、ここで1〜12の範囲内の整数を示す。特に、示したフェノール誘導体を、それらが酸化防止剤として作用するので付加的な安定剤として使用することができる。
【0177】
本発明の好ましい態様において、本発明の媒体は、表Fからの化合物の群から選択された1種または2種以上の化合物、特に2つの式で表される化合物の群から選択された1種または2種以上の化合物を含む。
【化59】
【0178】
例
以下の例は、本発明を、いかなる方法においてもそれを限定せずに説明する。しかしながら、物理的特性は、当業者に対して、いかなる特性を達成することができるか、およびいかなる範囲においてそれらを修正することができるかを明らかにする。特に、好ましく達成することができる様々な特性の組み合わせは、したがって当業者のために十分に定義される。
【0179】
物質例
以下の物質は、本出願における式Iで表される好ましい物質である。
【化60】
【0182】
以下の表中に示す組成および特性を有する液晶混合物を、調製する。
【0183】
例1および比較例1.0〜1.5
以下の混合物(M−1)を調製し、調査する。
【表2】
注:n.d.:決定されず
【0184】
360ppmの式I−1a−2で表される化合物(TEMPOL)を、混合物M−1に加える。得られた混合物(M−1−1)を、混合物M−1自体と同様に、冷陰極(CCFL)LCD背面照射による照明に対するその安定性に関して、ホメオトロピック配向のための整列材料および平坦なITO電極を有する試験セル中で調査する。このために、試験セルを、1000時間より長く照明に対して露光する。電圧保持比を、各場合において5分後の固定した時間の後に100℃の温度で決定する。
【0185】
様々な一連の測定における電圧保持比値の再現性は、約3〜4%の範囲内にある。
通常負荷によって生じた電圧保持比の低下(ΔVHR)を、以下の方程式(1)に従って決定する:
ΔVHR(t)=VHR(t)−VHR(t=0) (1)。
【0186】
LC混合物のLCD背面照射に対する時間tの後の相対的安定性(S
rel)が以下の方程式、方程式(2):
【数2】
式中、「ref」は、対応する安定化されていない混合物(ここではM−1)を表す、
に従って決定される場合には、S
rel(1000h)=2.8の相対的な安定化が、この例(例1)について、基準混合物(比較例1.0)と比較して得られる。この結果は、360ppmのTEMPOLの使用によって調査した混合物の安定性の有効な倍加に事実上相当する。
【0187】
比較例1.1〜1.5
あるいはまた、600ppmのTINUVIN(登録商標)770(T770)、770ppmのTINUVIN(登録商標)123(T123)、820ppmのTINUVIN(登録商標)622 LD(T622)または580ppmのCyasorb UV-3853S(C3853)を、混合物M−1に加える。得られた混合物(CM−1−1〜CM−1−4)を、上に記載したように調査する。
【0188】
使用した物質または化合物は、以下の構造を有する。
【化63】
TINUVIN(登録商標)770(略してT770)
【化64】
TINUVIN(登録商標)123(略してT123)
【化65】
(M
average=3100〜4000g/mol)
TINUVIN(登録商標)622 LD(略してT622)
【化66】
【0189】
Cyasorb UV-3853S(ここで略してC3853)は、Cytec, West Paterson, USAからの商業的に入手できる製品であり、それは、光安定剤として、例えば自動車産業および庭園家具のための、ポリプロピレンから製造されたプラスチック部分のための配合物中で使用される。
【0190】
製造者のデータにおいて、それは、50%の一般式
【化67】
で表される様々なHALSの混合物をLDPE樹脂中に含み、ここでCyasorb UV-3853S中のアルキルラジカル「R」は、本質的に「C
11〜C
20」アルキルを示し、主に「C
16〜C
18」アルキルを示す。NA/867, 09.01.2001, NICAS, Government of Australiaにおいて、「CyasorbUV-3853S」は、50%のポリエチレンを含み、「CyasorbUV-3853S」のHALS構成成分は、以下の酸のエステルを含む:
【0192】
表1
【表4】
注:*):適用可能でない
【0193】
例2:
以下の混合物(M−2)を調製し、調査する。
【表5】
【0194】
混合物M−2を、例1に記載したように調査する。このために、200ppmの式I−1a−2で表される化合物を、この混合物に加える。得られた混合物(M−2−1)を、混合物M−2自体と同様に、試験セル中でLCD背面照射による照明に対するその安定性に関して調査する。このために、試験セルを、照明に対して1000時間にわたって露光する。電圧保持比を、次に5分後に100℃の温度で決定する。ここでの電圧保持比における相対的な改善は、S
rel(1000h)=1.8である。
【0195】
例3および比較例3.0〜3.2:
500ppmの式I−1a−2で表される化合物を、例1の混合物M−1に加える。得られた混合物(M−1−2)を、混合物M−1自体と同様に、試験セル中でLCD背面照射による照明に対するその安定性に関して調査する。このために、試験セルを、照明に対して1000時間にわたって露光する。電圧保持比を、次に5分後に100℃の温度で決定する。ここでの電圧保持比における相対的な改善は、S
rel(1000h)=2.8である。
【0196】
例4.1〜4.3:
例4.1:
500ppmの式I−1a−2で表される化合物を、例1の混合物M−1に加え(M−1−3)、混合物を、150℃の温度に4時間、密閉したガラスビン中でさらす。VHRを、その後決定し、加熱前の360ppmの式I−1a−2で表される化合物を含む混合物の初期値と比較する。VHRは、加熱前に99%および加熱後に98%である。
【0197】
例4.2:
360ppmの式I−1a−2で表される化合物およびまた200ppmの化合物OH−1
【化68】
の両方を、次に混合物M−1に加える(M−1−4)。この混合物(M−1−4)をまた、150℃の温度に4時間さらした。360ppmの式I−1a−2で表される化合物のみを含み、しかしOH−1を含まない混合物とは対照的に、ここでの電圧保持比は、加熱後に、加熱試験の前と同一のレベルにある。VHRは、加熱前に96%および加熱後に95%である。
【0198】
2種の混合物を、LCD背面照射による照射に対するそれらの安定性に関して調査する。結果は、両方の混合物について同等に良好である。したがって、フェノール系酸化防止剤の添加が安定剤I−1a−2の使用の際には不必要であることが、明らかである。
【0199】
例4.3:
200ppmの式I−1a−1で表される化合物(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)を、例1の混合物M−1に加え(M−1−5)、混合物を、150℃の温度に4時間、密閉したガラスビン中でさらす。VHRを、その後決定し、加熱前の200ppmの4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを含む混合物の初期値と比較する。VHRは、加熱前に98%および加熱後に81%である。ここでまた、比較的好ましい特性が、安定性に関して得られる。しかしながら、これらは、2つの前の例(例4.1および4.2)の場合におけるよりもいくらか好ましくない。この理由のために、この態様は、より好ましくない。しかしながら、フェノール化合物を式I−1a−1で表される化合物に加えて付加的な、または補足的な熱安定剤として使用する場合には、より良好な結果をまた、ここで達成することができる。
【0200】
例5:
200ppmの式I−1b−2で表される化合物を、例1の混合物M−1に加え(M−1−6)、混合物を、150℃の温度に4時間、密閉したガラスビン中でさらす。VHRを、その後決定し、加熱前の200ppmの式I−1b−2で表される化合物を含む混合物の初期値と比較する。VHRは、加熱前に98%および加熱後に93%である。
【0201】
500ppmの式I−1b−2で表される化合物を、次に例1の混合物M−1に加える。得られた混合物(M−1−7)を、混合物M−1自体と同様に、試験セル中でLCD背面照射による照明に対するその安定性に関して調査する。このために、試験セルを、照明に1000時間露光する。電圧保持比を、次に5分後に100℃の温度で決定する。ここでの電圧保持比における相対的な改善は、S
rel(1000h)=2.4である。
【0202】
例6:
200ppmの式I−6a−2で表される化合物を、例1の混合物M−1に加え(M−1−8)、混合物を、150℃の温度に4時間、密閉したガラスビン中でさらす。VHRを、その後決定し、加熱前の200ppmの式I−6a−2で表される化合物を含む混合物の初期値と比較する。VHRは、加熱前に98%および加熱後に95%である。
【0203】
200ppmの式I−1b−2で表される化合物を、次に例1の混合物M−1に加える。得られた混合物(M−1−9)を、混合物M−3自体と同様に、試験セル中でLCD背面照射による照明に対するその安定性に関して調査する。このために、試験セルを、照明に1000時間露光する。電圧保持比を、次に5分後に100℃の温度で決定する。ここでの電圧保持比における相対的な改善は、S
rel(1000h)=2.2である。
【0204】
例6ならびに比較例6.0および6.1:
40%のアルケニル末端基を含む化合物を含む以下の混合物(M−3)を調製し、調査する。
【表6】
【0205】
混合物M−3を、例1に記載したように3つの部分に分割し、当該個所に記載したようにそれ自体で調査するか、または、あるいはまた物質例11の化合物
【化69】
もしくはTINUVIN(登録商標)770と混合し、対応する混合物を、試験セル中でLCD背面照射による照明に対するそれらの安定性に関して調査する。示した式で表される化合物を含む混合物については、同等に好ましい結果がまた、例1におけるようにここで達成される。これらを、以下の表(表2)にまとめる。
【0206】
表2
【表7】
注:I*:上に示した式(11)で表される化合物
T770 TINUVIN(登録商標)770
【0207】
さらに、イオン密度を、3種の混合物について決定した。結果を、以下の表(表3)にまとめる。
表3
【表8】
注:I*:上に示した式(11)で表される化合物
T770 TINUVIN(登録商標)770
【0208】
ここで、前述の化合物が比較的低い濃度においてさえも著しい安定化特性を示すことが、容易に明らかである。電圧保持比は、出発混合物のものよりも著しく優れており、比較の混合物のものと同等である。さらに、イオン密度は、ドープしていない基準と比較して事実上不変である。TINUVIN(登録商標)770は、対照的に、4倍高いイオン密度を示す。前述の化合物の挙動は、したがって全体的に著しくより好ましいと見られる。
【0209】
例7ならびに比較例7.0および7.1:
例6の混合物M−3を、当該個所に記載したように3つの部分に分割し、当該個所に記載したようにそれ自体で調査するか、または、あるいはまた物質例12の化合物
【化70】
もしくはTINUVIN(登録商標)770と混合し、対応する混合物を、試験セル中でLCD背面照射による照明に対するそれらの安定性に関して調査する。示した化合物を含む混合物については、同等に好ましい結果がまた、例6におけるようにここで達成される。これらを、以下の表(表4および5)にまとめる。
【0210】
表4
【表9】
注:I*:上に示した式(12)で表される化合物
T770 TINUVIN(登録商標)770
【0211】
表5
【表10】
注:I*:上に示した式(12)で表される化合物
T770:TINUVIN(登録商標)770
【0212】
またここで、前述の化合物が比較的低い濃度においてさえも著しい安定化特性を示すことが、明らかである。電圧保持比は、出発混合物のものよりも著しく優れており、少なくとも比較の混合物のものと同等である。さらに、イオン密度は、ドープしていない基準と比較して事実上不変である。TINUVIN(登録商標)770は、対照的に、4倍高いイオン密度を示す。したがって、前述の化合物の挙動はまた、全体的に著しくより好ましいと思われる。