(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリエチレン層と、紙基材と、ポリエチレン層と、アルミニウム薄膜層と、ポリエチレン層とを順次積層させた積層体からなり、複数の折り曲げ部を有するブランクを折り曲げて形成された紙容器の前記折り曲げ部の少なくとも一部に発生するクラックを防止するクラック発生防止方法であって、
環境の温湿度と前記紙基材の平衡水分の関係をあらかじめ求め、得られた該環境の温湿度と前記紙基材の平衡水分の関係を利用して、前記紙容器の形成前に、前記ブランクを所定の温湿度の環境下に一日以上曝すことにより、前記紙基材の水分値を6%以上に調整することを特徴とするクラック発生防止方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、以下の説明において、同一の構成要素については同一の番号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0015】
本発明は、ポリエチレン層/紙基材/ポリエチレン層/アルミニウム薄膜層/ポリエチレン層を順次積層させた積層体からなり、複数の折り曲げ部を有するブランクを用いて形成される紙容器に関する技術である。先ず、ブランクについて説明する。
【0016】
<ブランク>
ブランクは、ポリエチレン層/紙基材/ポリエチレン層/アルミニウム薄膜層/ポリエチレン層を順次積層させた積層体からなること及び複数の折り曲げ部を有することが特徴である。ブランクについて、積層体の積層構成、複数の折り曲げ部の順で説明する。
【0017】
[積層体の積層構成]
図1は、ブランクの積層構成の一例を示す断面図である。ブランク10は、ポリエチレン最外層11、紙基材12、ポリエチレン中間層13、アルミニウム薄膜層14、ポリエチレン最内層15が順次積層してなる。
【0018】
[ポリエチレン最外層11]
ポリエチレン最外層11は、紙容器の表面となる層である。ポリエチレン最外層11は、紙基材12を外部の衝撃等から保護するための層である。ポリエチレン最外層11の厚みは特に限定されないが、10〜30μmのものでクラックの問題が生じやすく、本発明の方法を用いれば、クラックの発生を効果的に抑えることができる。
【0019】
ポリエチレン最外層11は、一般的なポリエチレンからなる層であり、使用できるポリエチレンの種類は特に限定されない。使用可能なポリエチレン材料としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。また、本明細書において、ポリエチレンには、エチレンとエチレン以外のモノマーとの共重合体も含まれる。エチレン以外のモノマーとしては、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン等が挙げられる。
【0020】
ポリエチレン最外層11に含まれるポリエチレンは、本発明の効果を害さない範囲で、他の樹脂、酸化防止剤、顔料等の添加剤を添加したものであってもよい。また、異なる種類のポリエチレンからなる複数の層を備えるものであってもよい。
【0021】
ポリエチレン最外層11の形成方法は、特に限定されず従来公知の方法を用いることができる。従来公知の方法として、例えば、紙基材12の一方の面に押出コートすることにより形成する方法が挙げられる。二層以上からなるポリエチレン最外層11の場合には、例えば、共押出コートすることにより形成することができる。
【0022】
[紙基材12]
紙基材12は、ポリエチレン最外層11に隣接し、ポリエチレン最外層11よりも内側に位置する層である。紙基材12は、紙容器の形状を安定させるための層である。紙基材12の厚みは特に限定されないが、50〜100μmのものでクラックの問題が生じやすく、本発明の方法を用いれば、クラックの発生を効果的に抑えることができる。
【0023】
紙基材12において、使用する紙の種類は特に限定されないが、紙基材12は紙容器の形状を安定させる役割を果たすため、耐屈曲性、剛性、腰、強度を有する紙基材であることが好ましい。
【0024】
使用可能な紙基材としては、純白ロール紙、クラフト紙、板紙、加工紙、ミルク原紙等の各種の紙基材を使用することができる。紙基材12は、これらの紙基材を複数層重ねたものであってもよい。
【0025】
[ポリエチレン中間層13]
ポリエチレン中間層13は、紙基材12とアルミニウム薄膜層14との間に位置する層である。ポリエチレン中間層13は、紙基材12とアルミニウム薄膜層14とを強固に密着させるための層である。ポリエチレン中間層13の厚みは特に限定されないが、10〜30μmのものでクラックの問題が生じやすく、本発明の方法を用いれば、クラックの発生を効果的に抑えることができる。
【0026】
ポリエチレン中間層13は、一般的なポリエチレンからなる層であり、使用可能なポリエチレンとしては、ポリエチレン最外層11と同様のものを挙げることができる。上記のとおり、ポリエチレン中間層13は、紙基材12とアルミニウム薄膜層14とを強固に密着させる層であるため、使用するポリエチレンとしては、紙基材12、アルミニウム薄膜層14に対する密着性の高いものが好ましい。
【0027】
また、紙基材12、アルミニウム薄膜層14の両層に対して高い密着性を有するポリエチレンを選択できない場合には、ポリエチレン中間層13は、紙基材12に密着しやすいポリエチレン層とアルミニウム薄膜層14に密着しやすいポリエチレン層との二層構造を有するものであってもよい。
【0028】
ポリエチレン中間層13の形成方法は、特に限定されず従来公知の方法を用いることができる。例えば、紙基材12のポリエチレン最外層11を有さない側の面に押出コートすることにより形成することができる。二層以上からなる場合には、例えば、共押出コートすることにより形成することができる。
【0029】
[アルミニウム薄膜層14]
アルミニウム薄膜層14は、ポリエチレン中間層13とポリエチレン最内層15との間に位置する層である。アルミニウム薄膜層14は、気体、液体等の透過を防止する層である。気体、液体の透過を抑えることで内容物の風味等の品質を維持することができる。アルミニウム薄膜層14の厚みは、特に限定されないが、5〜10μmのものでクラックの問題が生じやすく、本発明の方法を用いれば、クラックの発生を効果的に抑えることができる。
【0030】
[ポリエチレン最内層15]
ポリエチレン最内層15は、紙容器の内容物と接する層である。ポリエチレン最外層15の厚みは特に限定されないが、10〜30μmのものでクラックの問題が生じやすく、本発明の方法を用いれば、クラックの発生を効果的に抑えることができる。
【0031】
ポリエチレン最内層15は、一般的なポリエチレンからなる層であり、使用可能なポリエチレンとしては、ポリエチレン最外層11と同様のものを挙げることができる。上記のとおり、ポリエチレン最内層15は、内容物に接する層であるため、使用するポリエチレンは、内容物の香料等の成分を吸着し難いものであることが要求される。また、ポリエチレン中間層13と同様にアルミニウム薄膜層14との密着性が高いことも要求される。
【0032】
ポリエチレン最内層15の形成方法は、特に限定されず従来公知の方法を用いることができる。例えば、アルミニウム薄膜層14のポリエチレン中間層13を有さない側の面に押出コートすることにより形成することができる。二層以上からなる場合には、例えば、共押出コートすることにより形成することができる。
【0033】
[複数の折り曲げ部]
図2には、折り曲げ部の一例を示す。
図2には、折り曲げ線α(
図2(a)、(b)中の破線)を介して面X1と面Y1が連結された積層体を示す。折り曲げ線αが折り曲げ部である。積層構成については図示していないが、z方向に各層が積層されている。
図2(a)に示すように、紙容器形成前には同じ側の面にある面X1と面Y1が、紙容器形成後には破線αで折り曲げられ、
図2(b)に示すような状態になる。
図2(b)の状態になると折り曲げ線αの部分には大きな応力がかかりクラックが発生する。本発明の方法を用いれば、紙容器形成中、及び/又は、紙容器形成後に、このような折り曲げ線の部分にクラックが発生することを効果的に抑えることができる。
【0034】
実際の紙容器を形成するためのブランクにおいては、平面のブランクを立体的な形状にするために複数の折り曲げ部を有する必要がある。この複数の折り曲げ部の中に折り返し部があると、より大きなクラックが発生しやすい。本発明の方法を用いれば、折り返し部に発生するようなクラックも効果的に抑えることができる。
【0035】
上記のとおり、複数の折り曲げ部の少なくとも一部に折り返し部を備える場合には、上記クラックが非常に発生しやすくなる。折り返し部の一例を
図2(c)、(d)に示す。
図2(c)、(d)中の折り返し線βの部分が折り返し部に当たる。折り返し部では、
図2(c)に示すように、紙容器形成前には同じ側の面にある面X2と面Y2が破線βで折り曲げられ、紙容器形成後に
図2(d)に示すように面X2と面Y2とが略接する。この紙容器を形成する際の折り返しにより、折り返し線βには大きな応力がかかり、上記クラックが生じやすくなる。本発明の方法を用いれば、折り返し部に発生するようなクラックも効果的に抑えることができる。
【0036】
<紙容器>
本発明において、紙容器とは、ポリエチレン層と、紙基材と、ポリエチレン層と、アルミニウム薄膜層と、ポリエチレン層とを順次積層させた積層体からなり、複数の折り曲げ部を有するブランクを折り曲げて形成された紙容器である。
【0037】
紙容器の形状については、特に限定されず、用途・目的等に応じて適宜決定すればよい。紙容器の形状として、例えばゲーベルトップタイプ、ブリックタイプ、フラットタイプ等が挙げられ、また、角形容器、丸形等の円筒状の紙缶等が挙げられる。この紙容器の注出口には、たとえばポリエチレン製のキャップ、プルタブ型の開封機構等を適宜に設けてもよい。
【0038】
クラックの問題が生じやすい紙容器としては、
図3に示されるようなブランク20を用いて形成される紙容器が挙げられる。ブランク20は、紙容器の側面を構成する側面パネル21、22、23、24、糊代25、紙容器の底面を形成するための底部パネル26、27、28、29、紙容器の上部を形成するための上部パネル30、31、32、33を備える。
【0039】
側面パネル21、22、23、24は、ここでは同じ大きさの長方形である。側面パネル21、22、23、24は、
図3に示すように、折り曲げ線a、b、cを介して長方形の短手方向に、それぞれの長方形の長辺の両端を一致させるように連結される。
【0040】
底部パネル26、27、28、29は、ここでは同じ大きさの長方形である。底部パネル26、27、28、29の長辺の長さは、側面パネル21、22、23、24の長方形の短辺の長さと等しい。底部パネル26、27、28、29は、
図3に示すように、折り曲げ線a、b、cを介して連結している。
【0041】
底部パネル26は、
図3に示すように、折り曲げ線h1を介して連結する長方形パネル261、262に分割されている。また、長方形パネル262は、折り曲げ線f1を介して側面パネル21と、側面パネル21の短手方向に連結される。折り曲げ線f1の両端は、連結部における長方形パネル262の長方形の短辺の両端、側面パネル21の長方形の短辺の両端と一致する。
【0042】
底部パネル27は、
図3に示すように、折り曲げ線h2を介して連結する長方形パネル271、272に分割されている。折り曲げ線h2は、折り曲げ線h1と同じ直線上に存在する。
長方形パネル271は、長方形の一方の長辺の中央から他方の長辺の中央まで延びる折り曲げ線j1を有する。
長方形パネル272は、
図3に示すように、三角パネル272A、272B、272Cに分割される。三角パネル272A、272B、272Cは、ここでは直角二等辺三角形である。また、三角パネル272A、272B、272Cは、
図3に示されるように、折り曲げ線g1、g2を介して連結される。
三角パネル272Bは、
図3に示すように、折り曲げ線f2を介して側面パネル22と、側面パネル22の短手方向に連結される。折り曲げ線f2の両端は、連結部における三角パネル272Bの底辺の両端、側面パネル22の長方形の短辺の両端と一致する。
【0043】
底部パネル28は、
図3に示すように、底部パネル26と同様に分割される。具体的には、底部パネル28は、折り曲げ線h3を介して連結する長方形パネル281、282に分割される。折り曲げ線h3は、折り曲げ線h1、h2と同一直線上にある。
【0044】
底部パネル29は、
図3に示すように、底部パネル27と同様に分割される。具体的には、底部パネル29は、折り曲げ線h4を介して連結する長方形パネル291、292に分割される。折り曲げ線h4は、折り曲げ線h1、h2、h3と同一直線上にある。長方形パネル291は、
図3に示すように、折り曲げ線j2を有する。長方形パネル292は、さらに三角パネル292A、292B、292Cに分割される。三角パネル292A、292B、292Cは、折り曲げ線g3、g4を介して連結される。
【0045】
糊代25は、
図3に示すように、長方形であり、側面パネル24、底部パネル29、上部パネル33と折り曲げ線dを介して連結している。
【0046】
上部パネル30、31、32、33と底部パネル21、22、23、24とは、
図3に示すように、側面パネル21を短手方向に二分割する直線に対して線対称である。このため、説明を省略する。
【0047】
後述するとおり、長方形パネル262と三角パネル272Aとの間の折り曲げ線α1、長方形パネル282と三角形パネル272Cとの間の折り曲げ線α2、長方形パネル282と三角形パネル292Aとの間の折り曲げ線α3、糊代25と三角パネル292Cとの間の折り曲げ線α4は、折り返し部に当たる。
図3に示すように、折り曲げ線α1は折り曲げ線aの一部であり、折り曲げ線α2は折り曲げ線bの一部であり、折り曲げ線α3は折り曲げ線cの一部であり、折り曲げ線α4は折り曲げ線dの一部である。
【0048】
図4(a)は、紙容器の形成途中を示す図である。具体的には、折り曲げ線a、b、c、dで折り曲げ、糊代25を介して側面パネル21、側面パネル24を結合しブランク20を筒状にした後、折り曲げ線j1、j2で折り曲げ、長方形パネル261、271、281、291を合掌シールし、折り曲げ線g1、g2、g3、g4で折られ、紙容器の底部が平坦に折り畳まれた状態を示す。折り畳まれた状態においては、折り曲げ線α1と折り曲げ線α2が折り曲げ線f2と重なり、折り曲げ線α3と折り曲げ線α4が折り曲げ線f4と重なる。
【0049】
図4(b)は、紙容器の底面部の完成図を示す。具体的には、
図4(a)に示す状態から、外側に張り出す2つの三角形を、折り曲げ線f2、折り曲げ線f4に沿って、紙容器の底面の中央に向けて折り畳むことで
図4(b)に示す状態になる。f2と重なる位置にある折り曲げ線α1、折り曲げ線α2、f4と重なる折り曲げ線α3、折り曲げ線α4が折り返し部になる。
【0050】
紙容器の底部が
図4(b)に示すような形状になる場合には、上記クラックの問題が生じやすいが、本発明のクラック発生防止方法を用いることで、問題となる大きなクラックの発生を抑えることができる。
【0051】
紙容器の上部についても
図4(a)に示すような状態に折り畳むまでは、紙容器の底部と同様である。紙容器の上部においては、外側に張り出した2つの三角形を、折り曲げ線f2、折り曲げ線f4に沿って、底部とは逆方向に折り曲げる。したがって、紙容器の上部は
図4(c)に示すようになる。
【0052】
本発明は、上記のような紙容器を形成する際に、紙基材の水分値が6%以上になるように調整しておくことに特徴がある。形成の際に紙基材の水分値が6%以上であれば、紙容器の形成途中、及び/又は、形成後に大きなクラックが生じることが殆どなくなる。より好ましい水分値の範囲は6〜12%である。
【0053】
ところで、紙基材の水分値は、紙容器形成前のブランクの保管時に低下しやすい。例えば、複数のブランクが連結したシートは、
図5(a)に示すようなロール状、又は
図5(c)に示すように積み重ねて保管される。
図5(a)に示すようなロールの場合には、円柱状のロールの外周から中心に向けて各層が積層されている(図中の矢印方向)。
図5(c)に示すような保管の場合には、z方向に各層が積層されている。
【0054】
本発明者が調査したところ、紙基材が外気に曝される部分から水分が抜けやすく、紙基材の水分値が低下しやすいことが分かった。ロール状で保管する場合、外気に曝される部分とは、
図5(a)に示すように、面Aである。
図5(b)に、使用途中のロール状積層体を示すが、この場合には面A’、面B’が外気に曝される部分である。このような保管方法では、面A、面A’、面B’に現れる紙基材から水分が抜けていき、紙基材の水分値が低下し、その結果、水分値が6%未満になるとクラックが発生しやすくなることが判明した。
【0055】
また、
図5(c)に示すような状態で保管する場合に、外気に曝される部分とは、面Cである。この保管方法では、面Cに現れる紙基材から水分が抜けていき、紙基材の水分値が低下し、その結果、水分値が6%未満になるとクラックが発生しやすくなることが判明した。
【0056】
紙基材の水分値は、紙容器の形成時に6%以上であればよい。したがって、紙基材の水分値を6%以上に調整する方法としては、ブランクの保管から温度、湿度管理を行い常に紙基材の水分値が6%以上に保たれるように調整する方法、紙容器の形成前に紙基材の水分値が6%以上になるように、所定の温度、湿度環境下にブランクを曝す方法が挙げられる。クラックの発生には紙基材の内部の水分値も問題となるため、紙基材の内部の水分値も6%以上になるよう調整する必要がある。このため、温度、湿度管理を行う前者の方法が好ましく、また、紙容器の形成前に所定の温度、湿度下に曝す方法においては、一日以上所定の温度、湿度に曝す方法が好ましい。
【0057】
温度、湿度の高い地域では紙基材の水分値が6%を下回ることがない。このため、温暖な地域でブランクの保管、紙容器の形成を行うことで、容易に紙基材の水分値を6%以上に保つことができる。
【0058】
なお、紙容器の内容物は、特に限定されず、各種の飲食品、接着剤、粘着剤等の化学品、化粧品、医薬品等の雑貨品、その他の種々の物品を内容物とすることができる。また、紙容器は、特に、例えば、酒、果汁飲料等のジュース、ミネラルウォーター、醤油、ソース、スープ等の液体調味料、あるいは、カレー、シチュー、スープ、その他等の種々の液体飲食物を充填包装する包装用紙容器として有用なものである。
【実施例】
【0059】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0060】
<使用材料>
以下の実施例において、ポリエチレン最外層/紙基材/ポリエチレン中間層/アルミニウム薄膜層/ポリエチレン最内層の積層体を用いた。各層に使用した材料は以下のとおりである。
ポリエチレン最外層:ポリエチレン
紙基材1、紙基材2、紙基材3、紙基材4
ポリエチレン中間層:ポリエチレン
アルミニウム薄膜層:アルミニウム箔
ポリエチレン最内層:ポリエチレン
紙基材1、2は同じ木を原料とした紙基材であり、厚みが異なる。紙基材3、4は、紙基材1、2とは異なる木を原料として作製された紙基材である。紙基材3、4は同じ木を原料として作製された紙基材であるが、両基材とも表面コートが施されており、コートの種類が異なる。
温度が一定条件下(23℃)で、紙基材1〜4の水分値と湿度との関係を求めた。具体的には、23℃×16%RH、23℃×30%RH、23℃×40%RH、23℃×52%RHの各条件で各紙基材の平衡水分値を求め、この平衡水分値を紙基材の水分値とした。各点を
図6に示すように結び、折れ線グラフから特定の水分値に調整するための湿度を求めた。
【0061】
<実施例1−1>
20μmのポリエチレン最外層A、70μmの紙基材1、20μmのポリエチレン中間層、6.3μmのアルミニウム箔、20μmのポリエチレン最内層Bを順次積層してなる積層体の紙基材の水分値を5.5%に調整するための温度、湿度調整を行った。一日間放置した後、
図3に記載するブランクから
図4に示すような形状の紙容器を形成し、折り返し部に生じるクラックの発生率について評価を行った。なお、水分値の調整は、温度23℃、湿度17%RHにすることで行った。
【0062】
[クラックの評価]
クラックの形状は三角形に近似できるため、三角形の面積の大きさからクラックを以下の4つに分けた。本発明で発生を抑えようとするクラックは、大クラック及び特大クラックである。
特大クラック:面積が1.0mm
2以上
大クラック :面積が0.6mm
2以上1.0mm
2未満
中クラック :面積が0.3mm
2以上0.6mm
2未満
小クラック :面積が0.3mm
2未満
【0063】
実施例1−1において、クラック30個中の特大クラックの発生率は93.3%であり、大クラックの発生率は6.7%であった。そして、クラック30個の全てが特大クラック又は大クラックであった。
【0064】
<実施例1−2>
紙基材の水分値を5.5%から5.6%に変更した以外は実施例1−1と同様の方法で評価を行った。なお、水分値の調整のために、温度23℃、湿度20%RHに調整した。
【0065】
実施例1−2において、クラック30個中の特大クラックの発生率は86.7%であり、大クラックの発生率は10.0%であった。そして、クラック30個中の96.7%が特大クラック又は大クラックであった。
【0066】
<実施例1−3>
紙基材の水分値を5.5%から6.2%に変更した以外は実施例1−1と同様の方法で評価を行った。なお、水分値の調整のために、温度23℃、湿度30%RHに調整した。
【0067】
実施例1−3において、クラック30個中の特大クラックの発生率は43.3%であり、大クラックの発生率は36.7%であった。そして、クラック30個中の80.0%が特大クラック又は大クラックであった。
【0068】
<実施例1−4>
紙基材の水分値を5.5%から6.5%に変更した以外は実施例1−1と同様の方法で評価を行った。なお、水分値の調整のために、温度23℃、湿度40%RHに調整した。
【0069】
実施例1−4において、クラック30個中の特大クラックの発生率は10.0%であり、大クラックの発生率は36.7%であった。そして、クラック30個中の46.7%が特大クラック又は大クラックであった。
【0070】
<実施例1−5>
紙基材の水分値を5.5%から8.4%に変更した以外は実施例1−1と同様の方法で評価を行った。なお、水分値の調整のために、温度23℃、湿度52%RHに調整した。
【0071】
実施例1−5において、クラック30個中の特大クラックの発生率は0.0%であり、大クラックの発生率は26.7%であった。そして、クラック30個中の26.7%が特大クラック又は大クラックであった。
【0072】
<実施例1−6>
紙基材の水分値を5.5%から12.6%に変更した以外は実施例1−1と同様の方法で評価を行った。なお、水分値の調整のために、温度23℃、湿度65%に調整した。
【0073】
実施例1−6において、クラック30個中の特大クラックの発生率は0.0%であり、大クラックの発生率は0.0%であった。そして、クラック30個中の0.0%が特大クラック又は大クラックであった。
【0074】
実施例1−1〜1−6の結果について表1にまとめた。具体的には、実施例毎の紙基材の水分値、特定の水分値を保つための温度・湿度管理の条件、クラック30個中の大クラックの発生率、特大クラックの発生率、大クラック+特大クラックの発生率についてまとめた。
【表1】
【0075】
<実施例2−1〜2−5>
紙基材1を紙基材2に変更した以外は実施例1−1と同じ積層体を用いて、実施例1−1と同様の形状の紙容器を形成した。実施例2−1〜2−5においては、表2に示す水分値毎のクラック発生率、温度・湿度管理について表1と同様にまとめた。
【表2】
【0076】
<実施例3−1〜3−6>
紙基材1を紙基材3に変更した以外は実施例1−1と同じ積層体を用いて、実施例1−1と同様の形状の紙容器を形成した。実施例3−1〜3−6において、表3に示す水分値毎のクラック発生率、温度・湿度管理について表1と同様にまとめた。
【表3】
【0077】
<実施例4−1〜4−5>
紙基材1を紙基材4に変更した以外は実施例1−1と同じ積層体を用いて、実施例1−1と同様の形状の紙容器を形成した。実施例4−1〜4−5において、表4に示す水分値毎のクラック発生率、温度・湿度管理について表1と同様にまとめた。
【表4】
【0078】
図7には、実施例1〜4毎の水分値とクラック発生率との関係を示した。
図7(a)には、水分値と大クラック以上のクラック発生率との関係を示し、
図7(b)には、水分値と特大クラック発生率との関係を示す。
【0079】
図7から明らかなように、紙基材の種類にかかわらず水分値が6%を下回ると大クラック、特大クラックの発生率が急激に増加することが確認された。