【文献】
長尾 友美,ICTソリューションの環境負荷削減効果推定手法(2),電子情報通信学会2013年総合大会講演論文集 基礎・境界,2013年 3月 5日,p.152
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
企業の各事業組織が提供するソリューションごとに、予め規定された各産業分類のうち当該ソリューションが属する産業分類と、当該ソリューションの活動規模を示す規模量と、当該ソリューションを予め環境負荷評価して得られた評価結果とを記憶するソリューションDBと、
前記事業組織を区分けして得られた管理区分ごとに、前記産業分類のうち当該管理区分に含まれる管理区分別産業分類の構成比と、当該管理区分の事業組織が提供するすべてのソリューションの活動規模を示す規模量とを記憶する管理区分DBと、
前記各ソリューションを、前記ソリューションDBから取得した、これらソリューションの前記評価結果に含まれるそれぞれの環境負荷排出量から得られた値に基づきクラスター分類手法により分析し、得られた分類結果のうち、同じ産業分類に属するソリューションが同一クラスターに分類されている分類結果に基づいて、前記ソリューションを複数のグループに分類するソリューション分類部と、
前記グループごとに、前記ソリューションDBから取得した、当該グループに分類されたソリューションの前記評価結果に含まれる環境負荷排出量および規模量から、当該グループに関する単位規模量当たりの環境負荷削減量を示す個別原単位を計算する個別原単位計算部と、
前記管理区分DBから取得した、前記管理区分に関する前記構成比および前記規模量に基づいて、当該管理区分に含まれる管理区分別産業分類ごとに個別規模量を計算する個別規模量計算部と、
前記ソリューション分類部で得られた前記分類結果に基づいて、前記管理区分別産業分類ごとに当該管理区分別産業分類と対応するグループを特定し、これら管理区分別産業分類の前記個別規模量とこれら管理区分別産業分類と対応するグループの前記個別原単位とから、これら管理区分別産業分類に関する環境負荷削減量を示す個別環境負荷削減量をそれぞれ計算し、これら個別環境負荷削減量を集計することにより、企業全体の環境負荷削減量を計算する環境負荷削減量計算部と
を備えることを特徴とする環境負荷削減量算出装置。
ソリューションDBが、企業の各事業組織が提供するソリューションごとに、予め規定された各産業分類のうち当該ソリューションが属する産業分類と、当該ソリューションの活動規模を示す規模量と、当該ソリューションを予め環境負荷評価して得られた評価結果とを記憶するステップと、
管理区分DBが、前記事業組織を区分けして得られた管理区分ごとに、前記産業分類のうち当該管理区分に含まれる管理区分別産業分類の構成比と、当該管理区分の事業組織が提供するすべてのソリューションの活動規模を示す規模量とを記憶するステップと、
ソリューション分類部が、前記各ソリューションを、前記ソリューションDBから取得した、これらソリューションの前記評価結果に含まれるそれぞれの環境負荷排出量から得られた値に基づきクラスター分類手法により分析し、得られた分類結果のうち、同じ産業分類に属するソリューションが同一クラスターに分類されている分類結果に基づいて、前記ソリューションを複数のグループに分類するソリューション分類ステップと、
個別原単位計算部が、前記グループごとに、前記ソリューションDBから取得した、当該グループに分類されたソリューションの前記評価結果に含まれる環境負荷排出量および規模量から、当該グループに関する単位規模量当たりの環境負荷削減量を示す個別原単位を計算する個別原単位計算ステップと、
個別規模量計算部が、前記管理区分DBから取得した、前記管理区分に関する前記構成比および前記規模量に基づいて、当該管理区分に含まれる管理区分別産業分類ごとに個別規模量を計算する個別規模量計算ステップと、
環境負荷削減量計算部が、前記ソリューション分類部で得られた前記分類結果に基づいて、前記管理区分別産業分類ごとに当該管理区分別産業分類と対応するグループを特定し、これら管理区分別産業分類の前記個別規模量とこれら管理区分別産業分類と対応するグループの前記個別原単位とから、これら管理区分別産業分類に関する環境負荷削減量を示す個別環境負荷削減量をそれぞれ計算し、これら個別環境負荷削減量を集計することにより、企業全体の環境負荷削減量を計算する環境負荷削減量計算ステップと
を備えることを特徴とする環境負荷削減量算出方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる環境負荷削減量算出装置10について説明する。
図1は、環境負荷削減量算出装置の構成を示すブロック図である。
【0017】
この環境負荷削減量算出装置10は、全体としてサーバ装置やパーソナルコンピュータなどの情報処理装置からなり、企業が提供するICTを用いたソリューションをグループ化し、これらグループに関する個別原単位と個別規模量を乗算することにより、グループごとの個別環境負荷削減量を計算し、これら個別環境負荷削減量を集計することにより、企業が提供するソリューション全体の環境負荷削減量を算出する機能を有している。
【0018】
本発明は、企業の各事業組織が提供する個々のソリューションを産業分野別に分類できることに着目し、ソリューションをグループ化する際、同じ産業分類に属するソリューションが同一のグループとなるようグループ化し、この産業分野を仲立ちとして、企業において事業組織を単位として管理区分ごとに集計された規模量を、当該管理区分内に含まれる産業分類、すなわち管理区分別産業分類の構成比に基づいて振り分けることにより、グループと管理区分の両方に整合する管理区分別産業分類ごとに規模量を特定するようにしたものである。これにより、企業において事業組織を単位として集計される規模量と、グループごとに得られる個別原単位とから、企業全体の環境負荷削減量を、精度よく算出することができる。
【0019】
次に、
図1を参照して、本実施の形態にかかる環境負荷削減量算出装置10の構成について詳細に説明する。
図1に示すように、環境負荷削減量算出装置10には、主な機能として、通信I/F部11、操作入力部12、画面表示部13、記憶部14、ソリューションDB15、管理区分DB16、および演算処理部17が設けられている。
【0020】
通信I/F部11は、通信回線を介して外部装置とデータ通信を行うことにより、各種データを送受信する機能を有している。
操作入力部12は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの操作入力装置からなり、オペレータ操作を検出して演算処理部17へ出力する機能を有している。
画面表示部13は、LCDなどの画面表示装置からなり、演算処理部17から出力された、メニュー画面、データ入力画面、環境負荷削減量などの算出結果を示す出力画面などの各種情報を画面表示する機能を有している。
【0021】
記憶部14は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、演算処理部17での環境負荷削減量算出処理に用いる各種処理情報14Aやプログラム14Pを記憶する機能を有している。プログラム14Pは、通信回線を介して外部装置や記録媒体から読み出されて、予め記憶部14に格納されている。
【0022】
ソリューションDB15は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置を用いて構築したデータベースからなり、企業の各事業組織が提供するソリューションごとに、当該ソリューションに関する各種データを記憶する機能を有している。
【0023】
図2は、ソリューションDBの構成例である。ここでは、ソリューションごとに、予め規定された各産業分類のうち当該ソリューションが属する産業分類、当該ソリューションの活動規模を示す規模量、および、当該ソリューションを予め環境負荷評価して得られた評価結果が登録されている。この
図2の例では、管理区分Xの事業組織が提供するソリューションS1は、産業分類aに属しており、規模量がP(S1)であり、環境負荷削減量がL(S1)であることが登録されている。
【0024】
ソリューションの産業分類としては、例えば、総務省統計局の「日本標準産業分類」など、公知の産業分類を用いればよい。この「日本標準産業分類」では、「A 農業」、「B 林業」、「C 漁業」、「D 鉱業」、「E 建設業」、「F 製造業」、「G 電気・ガス・熱供給・水道業」、「H 情報通信業」、「I 運輸業」、「J 卸売・小売業」、「K 金融・保険業」、「L 不動産業」、「M 飲食店,宿泊業」、「N 医療,福祉」、「O 教育,学習支援業」、「P 複合サービス事業」、「Q サービス業(他に分類されないもの)」、「R 公務(他に分類されないもの)」、および、「S 分類不能の産業」 がある。特に、顧客に提供するソリューションの産業分類は、提供先となる顧客が属する産業分野となる。
【0025】
図3は、ソリューションに関する環境負荷評価の評価結果例である。ここでは、個々のソリューションに関する8つの活動項目とこれら項目の合計からなる、合わせて9項目について、当該ソリューションの導入前後における環境負荷排出量が示されている。これら環境負荷排出量は、公知の評価技術(例えば、非特許文献1など参照)に基づき求めることができる。
【0026】
一般に、ICTを用いたソリューションに関する環境負荷を評価する場合、当該ソリューションに関する8つの活動項目について、当該ソリューションの導入前後における環境負荷排出量を算出し、これらの差を環境負荷削減量とするものとなっている(例えば、非特許文献1など参照)。具体的な活動項目としては、「材料・エネルギー消費」、「ICT機器利用」、「ネットワークインフラ利用」、「ソフトウェア利用」、「物移動」、「人移動」、「物保管」、および、「人執務」がある。また、「合計」は、これら8つ活動項目導入前後における環境負荷排出量を合計したものである。
【0027】
管理区分DB16は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置を用いて構築したデータベースからなり、事業組織を区分けして得られた管理区分ごとに、当該管理区分に関する各種データを記憶する機能を有している。
【0028】
図4は、管理区分DBの構成例である。ここでは、管理区分ごとに、当該管理区分に属する事業組織の事業組織名、当該管理区分の事業組織が提供するすべてのソリューションの活動規模を示す規模量、および、産業分類のうち当該管理区分に含まれる産業分類、すなわち管理区分別産業分類の構成比が登録されている。この
図4の例では、管理区分Xに属する事業組織が「第一事業部」であり、規模量がP(X)であることが登録されている。
【0029】
管理区分とは、売上高などの規模量について、企業が通常の事業を行う上で把握している区分である。情報取得が容易であるという点から、企業の公開情報から得られる区分に応じたものが望ましいが、社内でのみ把握している区分であってもよい。各社の組織形態によって区分は異なるが、一般的に、事業部単位になると想定される。
各管理区分の規模量については、企業の財務情報から、当該管理区分に属する事業組織から提供するソリューションに関する規模量を抽出すればよい。
【0030】
各管理区分の構成比は、当該管理区分の事業組織が提供するソリューションが属する産業分類ごとに、当該管理区分別産業分類に関する規模量が、当該管理区分の規模量のうちに占める割合を、百分率で示した値である。
図4の例では、管理区分Xの規模量P(X)のうち、産業分類a〜fの構成比がそれぞれW(X,a)〜W(X,f)であることが登録されている。
【0031】
これらソリューションDB15では、各ソリューションに関する各種データを一括して管理する場合を例として説明したが、これに限定するものではなく、複数のデータベースに分割して管理するようにしてもよい。
また、管理区分DB16では、各管理区分に関する各種データを一括して管理する場合を例として説明したが、これに限定するものではなく、複数のデータベースに分割して管理するようにしてもよい。
【0032】
演算処理部17は、CPUおよびその周辺回路を有し、記憶部14のプログラム14Pを読み込んで実行することにより、環境負荷削減量算出処理を実行するための各種処理部を実現する機能を有している。
演算処理部17で実現される主な処理部として、ソリューション分類部17A、個別原単位計算部17B、個別規模量計算部17C、および、環境負荷削減量計算部17Dがある。
【0033】
ソリューション分類部17Aは、各ソリューションを、ソリューションDB15から取得した、これらソリューションの評価結果に含まれるそれぞれの環境負荷排出量から得られた値に基づきクラスター分類手法により分析する機能と、このクラスター分析で得られた分類結果のうち、同じ産業分類に属するソリューションが同一クラスターに分類されている分類結果に基づいて、ソリューションを複数のグループに分類する機能とを有している。
【0034】
この際、環境負荷排出量から得られた値としては、当該ソリューションの環境負荷排出量の値そのものに加えて、当該ソリューションの導入前後における環境負荷排出量の差分を示す環境負荷削減量や、当該ソリューションの導入前における環境負荷排出量を基準として導入後における環境負荷排出量を百分率で示した環境負荷削減率や、環境負荷削減量を基準として、各活動の削減量を百分率で示した環境負荷削減率が利用できる。
また、クラスター分類手法としては、クラスター分析、主成分分析、有限体積法(FVM)、ニューラルネットワークアルゴリズム、K−平均法などが適用可能である。
さらに、クラスター分析の手法については、最短距離法、最長距離法、群平均法、重心法、メディアン法、ウォード法、可変法など、公知の階層クラスター分析法を用いればよく、k−means法や最小平均分散法など、公知の非階層クラスター分析法を用いてもよい。
【0035】
個別原単位計算部17Bは、グループごとに、ソリューションDB15から取得した、当該グループに分類されたソリューションに関する環境負荷削減量および規模量から、当該グループに関する単位規模量当たりの環境負荷削減量を示す個別原単位を計算する機能を有している。
【0036】
個別規模量計算部17Cは、管理区分DB16から取得した、管理区分に関する構成比および規模量に基づいて、当該管理区分に含まれる管理区分別産業分類ごとに、当該管理区分別産業分類に分類されたソリューション全体の規模量を示す個別規模量を計算する機能を有している。
【0037】
環境負荷削減量計算部17Dは、ソリューション分類部17Aで得られた分類結果に基づいて、管理区分別産業分類ごとに当該管理区分別産業分類と対応するグループを特定する機能と、これら管理区分別産業分類の個別規模量とこれら管理区分別産業分類と対応するグループの個別原単位とから、これら管理区分別産業分類に関する環境負荷削減量を示す個別環境負荷削減量をそれぞれ計算する機能と、これら個別環境負荷削減量を集計することにより、企業全体の環境負荷削減量を計算する機能とを有している。
【0038】
[第1の実施の形態の動作]
次に、
図5を参照して、本実施の形態にかかる環境負荷削減量算出装置10の動作について説明する。
図5は、環境負荷削減量算出処理を示すフローチャートである。
演算処理部17は、操作入力部12で検出されたオペレータ操作に応じて、
図5の環境負荷削減量算出処理を実行する。
【0039】
まず、ソリューション分類部17Aは、ソリューションDB15から、各ソリューションに関する環境負荷削減量を取得し、これら環境負荷削減量から求めた環境負荷削減率に基づいてクラスター分析を実行することにより、各ソリューションをグループ化する(ステップ100)。
【0040】
図6は、クラスター分析の分析結果を示す説明図である。ここでは、
図2に示した各ソリューションS1〜S12を、それぞれの環境負荷削減率に基づいて階層クラスター分析し、得られた分類結果が、横軸を非類似度とするデンドログラム(dendorogram)により示されている。
図6に示すように、非類似度が小さいほどクラスター数が多く、非類似度が大きいほどクラスター数が小さい。したがって、着目する非類似度によって、異なる分類結果を得ることができる。
【0041】
本発明では、これら分類結果のうち、同じ産業分類に属するソリューションが同一クラスターに分類される分類結果を選択する。これにより、クラスターをグループと見なせば、同一の産業分類のクラスターが異なるグループに属することなく、産業分類を単位として各クラスターをグループ化することができる。
【0042】
図6の例において、非類似度Hの階層における分類結果を選択した場合、ソリューション群S1,S2,S7−S10が産業分類aまたは産業分類bに属し、ソリューション群S3,S4が産業分類cに属し、ソリューション群S5,S6が産業分類dまたは産業分類eに属し、ソリューション群S11,S12が産業分類fに属することになり、同じ産業分類に属するソリューションが同一のグループに属するようグループ化されていることがわかる。
【0043】
なお、グループ化は、同じ産業分類に属するソリューションが、同じグループに含まれるように行う。ここで、同じグループに複数の産業分類が含まれてもよい。
非類似度H1の階層では、グループAがさらに2つの小グループに分割されるが、産業分類a,bのソリューションがこれら小グループの両方に属することになるため、非類似度Hや非類似度H2の階層のほうが望ましい。また、非類似度H2の階層では、非類似度Hの階層に比べ、グループDとグループFが1つのグループに結合されているが、環境負荷削減量と規模量でグループごとの回帰直線を求めたときに、統計的有意性が得られれば、非類似度Hや非類似度H2のどちらをグループ分けに用いてもよい。
【0044】
図7は、クラスター分析によるグループ分類結果を示す説明図である。ここでは、
図6の非類似度Hの階層における分類結果に基づいて、各ソリューションS1〜S12を4つのグループに分類した結果が示されている。具体的には、グループAに、産業分類a,bに属する管理区分XのS1,S2と、同じく産業分類a,bに属する管理区分YのS7−S10とが分類されている。また、グループCに、産業分類cに属する管理区分XのS3,S4が分類されており、グループDに、産業分類d,eに属する管理区分XのS5,S6が分類されており、グループFに、産業分類fに属する管理区分YのS11,S12が分類されている。
【0045】
次に、個別原単位計算部17Bは、ソリューションDB15から、各グループに分類されたソリューションに関する環境負荷削減量および規模量をそれぞれ取得し、グループごとに、当該グループに分類されたソリューションに関する環境負荷削減量および規模量から、当該グループに関する単位規模量当たりの環境負荷削減量を示す個別原単位を計算する(ステップ101)。
【0046】
図8は、各ソリューションのプロット例である。ここでは、横軸がソリューションの規模量Pで、縦軸がソリューションの環境負荷削減量Lからなる二次元平面上に、各ソリューションがプロットされている。
ICTソリューションの環境負荷量、環境負荷削減量は、規模量の増大とともに、大きくなる傾向があることから(例えば非特許文献2など参照)、クラスター分析でグループ化したソリューションは、
図8の二次元平面において、右上がりの線形線に沿ったまとまりを構成する。
【0047】
この後、これらグループごとに、グループに属するソリューションを回帰直線で近似すれば、その回帰直線の傾きから、単位規模量当たりの環境負荷削減量、すなわち原単位を求めることができる。
図9は、各グループの原単位を示す説明図である。
図8において、グループA,C,D,Fの回帰直線の傾きがU(A),U(C),U(D),U(F)であった場合、これらU(A),U(C),U(D),U(F)が各グループA,C,D,Fに関する個別原単位となる。
【0048】
続いて、個別規模量計算部17Cは、管理区分DB16から各管理区分に関する構成比および規模量を取得し、これら管理区分に関する構成比および規模量に基づいて、当該管理区分に含まれる管理区分別産業分類ごとに、当該管理区分別産業分類に分類されたソリューション全体の規模量を示す個別規模量を計算する(ステップ102)。
【0049】
環境負荷削減量計算部17Dは、ソリューション分類部17Aで得られた分類結果に基づいて、管理区分別産業分類ごとに当該管理区分別産業分類と対応するグループを特定する。例えば、前述した
図7に示されている分類結果によれば、管理区分Xの管理区分別産業分類a,bおよび管理区分Yの管理区分別産業分類a,bがグループAと対応し、管理区分Xの管理区分別産業分類cがグループCと対応し、管理区分Xの管理区分別産業分類d,eがグループDと対応し、管理区分Yの管理区分別産業分類fがグループFと対応している。
【0050】
環境負荷削減量計算部17Dは、これら管理区分別産業分類の個別規模量とこれら管理区分別産業分類と対応するグループの個別原単位とから、これら管理区分別産業分類に関する環境負荷削減量を示す個別環境負荷削減量をそれぞれ計算する(ステップ103)。この後、環境負荷削減量計算部17Dは、これら個別環境負荷削減量を集計することにより、企業全体の環境負荷削減量を計算し(ステップ104)、一連の環境負荷削減量算出処理を終了する。これにより、企業全体のソリューションに関する環境負荷削減量が求められ、画面表示部13に画面表示される。
【0051】
図10は、企業全体の環境負荷削減量に関する算出方法を示す説明図である。ここでは、前述した
図7と
図4の例に基づいて、環境負荷削減量計算部17Dが、管理区分別産業分類ごとに求めた個別規模量を、管理区分に属するグループごと、すなわち管理区分別グループごとに集計してグループ規模量を求めた後、原単位を乗算することにより、管理区分別グループの環境負荷削減量を算出する場合を例として説明する。
【0052】
図10において、企業全体の規模量Pは、管理区分Xの規模量P(X)と管理区分Yの規模量P(Y)からなり、これらP(X)およびP(Y)は、企業の財務情報に含まれる、管理区分X,Yにそれぞれ属する事業組織の規模量に基づき求められる。
しかしながら、環境負荷排出量が類似するソリューションのグループA,C,D,Fと、企業が売上高や利用者数などの規模量を管理している事業組織などの経理上の管理区分X,Yとは異なるのが通常である。このため、P(X),P(Y)からグループ規模量P(X,A),P(X,C),P(X,D),P(Y,A),P(Y,F)を直接的に求めることはできない。
【0053】
本発明は、各ソリューションがそれぞれ1つの産業分類に属すること、各管理区分の規模量が産業分類ごとの規模量に分解できることに着目し、産業分類を単位として各ソリューションをグループ化することにより、グループと管理区分の両方に整合する管理区分別産業分類ごとに個別規模量を計算するようにしたものである。
【0054】
具体的には、前述の
図7に示したように、管理区域Xの規模量P(X)のうち、産業分類a,b,c,d,eの規模量P(X,a),P(X,b),P(X,c),P(X,d),P(X,e)が占める割合、すなわち構成比をW(X,a),W(X,b),W(X,c),W(X,d),W(X,e)であったとする。これにより、例えば管理区域Xにおける産業分類aの規模量P(X,a)は、P(X)×W(X,a)で求められる。
【0055】
同様に、管理区域Yの規模量P(Y)のうち、産業分類a,b,fの規模量P(Y,a),P(Y,b),P(Y,f)が占める割合、すなわち構成比をW(Y,a),W(Y,b),W(Y,f)であったとする。これにより、例えば管理区域Yにおける産業分類aの規模量P(Y,a)は、P(Y)×W(Y,a)で求められる。
【0056】
したがって、管理区域XのグループAは、管理区域Xの産業分野a,bに属するソリューションからなるため、このグループAの個別規模量P(X,A)は、管理区域Xの産業分野a,bの規模量P(X,a),P(X,b)の合計で求められる。
また、管理区域YのグループAは、管理区域Yの産業分野a,bに属するソリューションからなるため、このグループAの個別規模量P(Y,A)は、管理区域Yの産業分野a,bの規模量P(Y,a),P(Y,b)の合計で求められる。
【0057】
同様に、管理区域XのグループCは、管理区域Xの産業分野cに属するソリューションからなるため、このグループCの個別規模量P(X,C)は、管理区域Xの産業分野cの規模量P(X,c)で求められる。
また、管理区域XのグループDは、管理区域Xの産業分野d,eに属するソリューションからなるため、このグループDの個別規模量P(X,D)は、管理区域Xの産業分野d,eの規模量P(X,d),P(X,e)の合計で求められる。
また、管理区域YのグループFは、管理区域Yの産業分野fに属するソリューションからなるため、このグループFの個別規模量P(Y,F)は、管理区域Yの産業分野fの規模量P(Y,f)で求められる。
【0058】
これにより、管理区分別グループごとに、当該グループの個別原単位および個別規模量に基づいて、当該グループに関する環境負荷削減量を示す個別環境負荷削減量が計算される。
【0059】
ここでは、まず管理区分Xにおいて、グループAの個別規模量P(X,A)にグループAの個別原単位U(A)を乗算することにより、グループAの個別環境負荷削減量L(X,A)が求められ、グループCの個別規模量P(X,C)にグループCの個別原単位U(C)を乗算することにより、グループCの個別環境負荷削減量L(X,C)が求められ、グループDの個別規模量P(X,D)にグループDの個別原単位U(D)を乗算することにより、グループDの個別環境負荷削減量L(X,D)が求められる。
【0060】
また、管理区分Yにおいて、グループAの個別規模量P(Y,A)にグループAの個別原単位U(A)を乗算することにより、グループAの個別環境負荷削減量L(Y,A)が求められ、グループFの個別規模量P(Y,F)にグループFの個別原単位U(F)を乗算することにより、グループFの個別環境負荷削減量L(Y,F)が求められる。
【0061】
この後、管理区分X,Yごとに、これら個別環境負荷削減量を集計することにより、管理区分X,Yの環境負荷削減量L(X),L(Y)を計算し、これらを合計することにより企業全体の環境負荷削減量を計算される。
【0062】
ここでは、管理区分Xについて、管理区分Xに含まれるグループA,C,Dの個別環境負荷削減量L(X,A),L(X,C),L(X,D)が集計されて、管理区分Xの環境負荷削減量L(X)が求められるとともに、管理区分Yに含まれるグループA,Fの個別環境負荷削減量L(Y,A),L(Y,F)が集計されて、管理区分Yの環境負荷削減量L(Y)が求められ、これらL(X),L(Y)が集計されて、企業全体のソリューションに関する環境負荷削減量Lが求められ、画面表示部13に画面表示される。
【0063】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、企業の各事業組織が提供する個々のソリューションを産業分野別に分類できることに着目し、ソリューションをグループ化する際、ソリューション分類部17Aにより、同じ産業分類に属するソリューションが同一のグループとなるようグループ化し、この産業分野を仲立ちとして、個別規模量計算部17Cにより、当該管理区分内に含まれる産業分類、すなわち管理区分別産業分類の構成比に基づいて、当該管理区分の規模量を振り分けることにより、グループと管理区分の両方に整合する管理区分別産業分類ごとに個別規模量を特定するようにしたものである。
【0064】
これにより、ソリューションの各グループが、企業内における経理上の管理区分とは異なる場合であっても、企業において事業組織を単位として集計される規模量と、グループごとに得られる個別原単位とから、企業全体の環境負荷削減量を、精度よく算出することができる。また、企業の組織編成等に応じて規模量の管理区分が変更された場合でも、環境負荷削減率が類似するソリューションのグループや環境負荷削減率自体を修正する必要はなく、当該グループと規模量の管理区分とを整合させる按分数値を修正するだけでよく、作業負担を大幅に削減することが可能となる。
【0065】
なお、
図10では、管理区分別産業分類に求めた個別規模量を管理区分別グループごとに集計してグループ規模量を計算した後、当該グループの原単位と乗算する場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、グループ規模量を計算せずに、管理区分別産業分類の個別規模量と当該グループの原単位とを乗算することにより、管理区分別産業分類の環境負荷削減量を計算するようにしてもよい。したがって、基本的には、
図10の計算方法の過程にも、管理区分別産業分類の環境負荷削減量を計算するステップが含まれていることになる。
【0066】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる環境負荷削減量算出装置10について説明する。
第1の実施の形態では、
図6に示したような、クラスター分類手法の1つであるクラスター分析で得られた分析結果を用いて、各ソリューションを複数のグループに分類する場合を例として説明した。しかしながら、このようなクラスター分析により、各ソリューションを複数のクラスターに分類できたからといって、必ずしも、これらクラスターからなるグループにおいて、総計的に有意な回帰直線が得られるとは限らない。
【0067】
図11は、各ソリューションの他のプロット例である。すなわち、クラスター分類された各ソリューションを、
図8と同様に、横軸がソリューションの規模量Pで、縦軸がソリューションの環境負荷削減量Lからなる二次元平面上に、各ソリューションをプロットした場合、
図11に示したクラスターGのように、得られた回帰直線に対する各ソリューションの相関値が低く、回帰直線が総計的に有意となるとは限らない場合もある。
したがって、このような場合には、ソリューション分類部17Aにおいて、クラスターGを複数のクラスターH,Iにさらに細分化してグループ化するようにしてもよい。
【0068】
クラスターを細分化する方法としては、各ソリューションが属する産業分類に基づいて細分化する方法がある。前述した「日本標準産業分類」では、各産業分類が、大分類、中分類、小分類、および細分類の順に、階層的に分類されている。
図12は、クラスターの細分化を示す説明図である。ここでは、
図6のグループAのクラスターに関する細分類が示されており、例えば、大分類である産業分類aがその中分類である産業分類a−1,a−2に細分化され、大分類である産業分類bがその中分類である産業分類b−1,b−2に細分化されている。
【0069】
これにより、元々同じ産業分類aに属していたソリューションS1とソリューションS7,S8が、それぞれ異なる産業分類a−1,a−2に属することになり、元々同じ産業分類bに属していたソリューションS2とソリューションS9,S10が、それぞれ異なる産業分類b−1,b−2に属することになる。
したがって、S1とS7,S8とを別のクラスターとして分離でき、S2とS9,S10とを別のクラスターとして分離できる。このため、元のグループAは、非類似度H1の階層で、S1,S2からなるグループA1と、S7−S10からなるグループA2に細分化され、結果として、これらA1,A2ごとに、総計的に有意となる回帰直線を得ることができる。
【0070】
また、クラスター分析の結果、各ソリューションを一定のクラスターに分類できているものの、同じ産業分類に属するソリューションが複数のクラスターにわたって含まれており、前述のようにしてクラスターを細分化した場合でも、一方のクラスターから当該ソリューションを除外できない場合がある。このような場合には、ソリューション分類部17Aにおいて、特定のソリューションをクラスター間で移動させるようにしてもよい。
【0071】
図13は、ソリューションのクラスター間移動を示す説明図である。ここでは、一方のクラスターGにソリューションS13−S17が属しており、他方のクラスターHにソリューションS18−S20が属している。また、S14−S17が産業分類aに属しており、S13,S18−S20が産業分類属bに属している。したがって、クラスターG,Hの両方に、産業分類bのS13が属していることなる。
【0072】
このように、産業分類aのソリューションが大半を占める一方のクラスターGに、他方のクラスターHの産業分類bに属するソリューションS13が、一定の割合以下で僅かに含まれている場合、当該ソリューションS13をクラスターGから除外して、クラスターHに追加する。
この際、ソリューションのグループ間移動により、新たに得られるグループG,Hについて回帰直線を求め、これら回帰直線の統計的有意性を確認した上で、これらグループG,Hを正式なグループとして採用すればよい。
【0073】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。