特許第5785250号(P5785250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5785250
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】粉体の分級方法
(51)【国際特許分類】
   B03B 1/04 20060101AFI20150907BHJP
   B07B 7/08 20060101ALI20150907BHJP
   B03B 1/02 20060101ALI20150907BHJP
   B07B 11/02 20060101ALI20150907BHJP
   C01G 23/00 20060101ALI20150907BHJP
   H01G 4/12 20060101ALI20150907BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   B03B1/04
   B07B7/08
   B03B1/02
   B07B11/02
   C01G23/00 C
   H01G4/12 364
   H01G4/30 311Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-504630(P2013-504630)
(86)(22)【出願日】2012年2月24日
(86)【国際出願番号】JP2012054558
(87)【国際公開番号】WO2012124453
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2014年7月14日
(31)【優先権主張番号】特願2011-58274(P2011-58274)
(32)【優先日】2011年3月16日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】小澤 和三
(72)【発明者】
【氏名】安藤 康輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大助
【審査官】 仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/047175(WO,A1)
【文献】 特開平01−180285(JP,A)
【文献】 特開昭64−085149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03B 1/04
B03B 1/02
B07B 7/08
B07B 11/02
C01G 23/00
H01G 4/12
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体の分級方法において、
粉体とジエチレングリコールモノメチルエーテルとを混合する混合工程と、
前記混合工程において混合された前記粉体を乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥工程において乾燥された前記粉体を旋回気流式分級機に投入する投入工程と、
気体を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程において加熱された前記気体を前記旋回気流式分級機に供給する供給工程と、
前記旋回気流式分級機において、前記粉体を粒径に基づいて分級する分級工程と
を含むことを特徴とする粉体の分級方法。
【請求項2】
粉体の分級方法において、
粉体とジエチレングリコールモノメチルエーテルとを混合する混合工程と、
前記混合工程において混合された前記粉体を乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥工程において乾燥された前記粉体を旋回気流式分級機に投入する投入工程と、
前記旋回気流式分級機に気体を供給する供給工程と、
前記旋回気流式分級機において、前記粉体を粒径に基づいて分級する分級工程と
を含むことを特徴とする粉体の分級方法。
【請求項3】
前記乾燥工程における乾燥温度及び乾燥時間は、前記ジエチレングリコールモノメチルエーテルの引火点に応じた乾燥温度及び乾燥時間であることを特徴とする請求項1または2記載の粉体の分級方法。
【請求項4】
前記加熱工程は、前記旋回気流式分級機内における温度が前記ジエチレングリコールモノメチルエーテルの引火点以上かつ200℃以下となるように前記気体を加熱することを特徴とする請求項1記載の粉体の分級方法。
【請求項5】
前記供給工程において供給される前記気体は、高圧気体であることを特徴とする請求項1〜4記載の何れか一項に記載の粉体の分級方法。
【請求項6】
前記分級工程において、前記旋回気流式分級機内に発生させた旋回気流によって前記粉体を分級することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の粉体の分級方法。
【請求項7】
前記粉体は、チタン酸バリウムの粉体であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の粉体の分級方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒度分布を持つ粉体を所望の分級点(粒径)において効果的に分級する粉体の分級方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス質高炉スラグなどの粉体を微粉と粗粉とに分級する際に、アルコール類などの流体の助剤を予め添加する分級方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この分級方法においては、極性分子が含まれる助剤を粉体に添加して粉体粒子の極性を電気的に中和することにより、粒子同士が吸着、凝集して粒径の大きい凝集粒子が形成されることを防止し、分級効率の低下を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64−85149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、今日においては、例えば、セラミック積層コンデンサの誘電体として用いられるセラミックは、平均粒径が0.7μmと極めて小さいチタン酸バリウム(BaTiO)の微粉体を焼結することによって製造されている。高品質なセラミックを得るためには、平均粒径が極めて小さいだけでなく、粒度分布の幅が極めて狭い、即ち、より均質な微粉体が必要とされている。このような微粉体は、原料としての粉体を例えば遠心分離によって分級することによって得ることができるが、従来の分級方法では、原料の粉体が分級機内の各部に付着して原料の投入口や高圧気体の噴出口が閉塞するため、分級性能の悪化を招き、長時間運転を困難にしていた。
【0005】
本発明の課題は、粒径が1μm未満の粉体の分級を行った場合でも、分級機内に粉体を付着させることなく、効率良く分級を行うことができる粉体の分級方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の粉体の分級方法は、粉体の分級方法において、粉体とジエチレングリコールモノメチルエーテルとを混合する混合工程と、前記混合工程において混合された前記粉体を乾燥する乾燥工程と、前記乾燥工程において乾燥された前記粉体を旋回気流式分級機に投入する投入工程と、気体を加熱する加熱工程と、前記加熱工程において加熱された前記気体を前記旋回気流式分級機に供給する供給工程と、前記旋回気流式分級機において、前記粉体を粒径に基づいて分級する分級工程とを含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の粉体の分級方法は、粉体の分級方法において、粉体とジエチレングリコールモノメチルエーテルとを混合する混合工程と、前記混合工程において混合された前記粉体を乾燥する乾燥工程と、前記乾燥工程において乾燥された前記粉体を旋回気流式分級機に投入する投入工程と、前記旋回気流式分級機に気体を供給する供給工程と、前記旋回気流式分級機において、前記粉体を粒径に基づいて分級する分級工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の粉体の分級方法は、前記乾燥工程における乾燥温度及び乾燥時間が、前記ジエチレングリコールモノメチルエーテルの引火点に応じた乾燥温度及び乾燥時間であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の粉体の分級方法は、前記加熱工程において、前記旋回気流式分級機内における温度が前記ジエチレングリコールモノメチルエーテルの引火点以上かつ200℃以下となるように前記気体を加熱することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の粉体の分級方法は、前記供給工程において供給される前記気体が高圧気体であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の粉体の分級方法は、前記分級工程において、前記旋回気流式分級機内に発生させた旋回気流によって前記粉体を分級することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の粉体の分級方法は、前記粉体がチタン酸バリウムの粉体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の粉体の分級方法によれば、粒径が1μm未満の粉体の分級を行った場合でも、流体分級機内に粉体を付着させることなく、効率良く分級を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施の形態に係る分級装置の構成を示す概略構成図である。
図2】第1の実施の形態に係る分級機の内部の構成を示す縦断面図である。
図3】第1の実施の形態に係る分級機の内部の構成を示す横断面図である。
図4】第1の実施の形態に係る粉体の分級方法を説明するフローチャートである。
図5】第2の実施の形態に係る粉体の分級方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態に係る粉体の分級方法について説明する。図1は、この実施の形態に係る粉体の分級方法によって使用される流体分級機である分級装置の構成を示す概略構成図である。
【0017】
図1に示すように、分級装置2は、内部に発生させた旋回気流によって原料として投入された粉体を分級する分級機(流体分級機)4、分級機4に粉体を投入するフィーダ6、分級機4に高圧気体を供給するコンプレッサー8、供給される高圧気体を所定の温度まで加熱する第1のヒータ10を備えている。また、分級装置2は、所望の分級点以下にまで分離された微粉を、分級機4内の気体と共に吸入して回収する吸入ブロア12、分級機4内に発生する負圧によって吸入される大気(常圧気体)を加熱する第2のヒータ14、遠心分離された粒径の大きい粗粉を回収する回収容器16を有している。
【0018】
略円錐形状を有する分級機4は、円錐の頂点が下方を向くようにして設置されており、分級機4の上部には、詳細は後述する遠心分離室20(図2参照)が形成されている。この遠心分離室20内には、分級機4の外部に存在する常圧気体としての大気と、コンプレッサー8からの高圧気体が供給されると共に、分級対象としての粉体がフィーダ6から投入される。
【0019】
フィーダ6は、内部に図示しないスクリューを有し、当該スクリューを回転させることによって、内部に収容されている粉体を定量的に送出することができる。送出された粉体は、分級機4の上面に設けられた投入口26(図2参照)から分級機4内に投入される。なお、フィーダ6内に収容されている粉体は、詳細は後述する液体助剤と予め混合されている。
【0020】
コンプレッサー8は、大気を圧縮して高圧気体を生成し、第1のヒータ10を介して分級機4内へ供給する。第1のヒータ10は、高圧気体が通過する配管を内部に有し、当該配管内にはフィラメントやエロフィン等からなる加熱手段が設置されている。この加熱手段は、当該配管内を通過する高圧気体を所定の温度まで加熱する。なお、コンプレッサー8と分級機4との間に、高圧気体の含有水分を除去する他の脱水手段を別途設けてもよいし、埃等を除去するフィルタを適宜設けてもよい。
【0021】
吸入ブロア12は、分級機4によって分離された微粉を、分級機4の上面の中央に設けられた吸入口32(図2参照)から分級機4内に存在する気体と共に吸入することによって回収する。なお、吸入口32と吸入ブロア12との間にバグフィルタ等のフィルタを適宜設けてもよい。ここで、吸入ブロア12により気体を吸入すると、分級機4内には負圧が発生するため、分級機4の外部に存在する常圧気体である大気が分級機4内へと吸入される。このようにして常圧気体が吸入されることにより、分級機4の遠心分離室20内には、高速旋回する旋回気流が形成される。なお、この実施の形態に係る分級装置2は、吸入される常圧気体を加熱する第2のヒータ14を備えているため、遠心分離室20内の旋回気流の温度を所定の温度まで加熱することができる。この第2のヒータ14は、第1のヒータ10と同様に、常圧気体が通過する配管を内部に有しており、この配管内にはフィラメントやエロフィン等の加熱手段が設置されている。
【0022】
回収容器16は、分級機4の最下部に設置されており、遠心分離室20内において遠心分離された後に分級機4の円錐形状部の斜面に沿って降下した粗粉を回収する。
【0023】
次に、図2及び図3を参照して、この実施の形態に係る分級機4について説明する。なお、図2は、分級機4の中心軸を含む面による縦断面図であり、図3は、当該中心軸に垂直な平面による遠心分離室20の位置における横断面図である。なお、他の構成要素(特に、後述する噴出ノズル30及びガイドベーン40)との相対的な位置関係を明確にするために、本来は図3においては示されない投入口26及び噴出ノズル30を、それぞれ仮想線及び点線で示している。また、噴出ノズル30は、説明のために2個のみ図示している。
【0024】
図2に示すように、分級機4内の上部には、扁平な円盤形状を有する上部円盤状部材22と、内部が中空の円盤形状を有する下部円盤状部材24とが所定の間隔を保って配置されており、両円盤状部材間には円柱形状の遠心分離室20が形成されている。この遠心分離室20の上方には、上述のフィーダ6から投入される粉体が通過する投入口26が形成されている。また、図3に示すように、遠心分離室20の外周には、複数のガイドベーン40が等間隔に配置されており、遠心分離室20の下方には、下部円盤状部材24の外周壁に沿って、遠心分離された後に遠心分離室20から降下した粉体を、再度遠心分離室20内へ噴き戻す再分級ゾーン28が形成されている。
【0025】
再分級ゾーン28の外周壁の上端部近傍には、上述のコンプレッサー8から供給される高圧気体を噴出する噴出ノズル30が、噴出方向が当該外周壁の接線方向と略同一になるようにして配置されている。この噴出ノズル30は、高圧気体を噴出して投入口26から投入された粉体を分散させると共に、遠心分離室20内に補助的に気体を供給する。また、再分級ゾーン28内に存在する微粉を遠心分離室20内へ噴き戻す。なお、この実施の形態においては、再分級ゾーン28の外周壁上に複数の噴出ノズル30を配置しているが、これは一例であり、噴出ノズル30の配置位置や個数には自由度がある。
【0026】
遠心分離室20の上部の中央には、遠心分離されることによって粗粉と分離された微粉を吸入回収する吸入口32が設置されている。なお、遠心分離された粗粉は、再分級ゾーン28から分級機4の円錐形状部の斜面を降下し、分級機4の最下部に設置された排出口34から排出されて上述の回収容器16内に収容される。
【0027】
図3に示すように、遠心分離室20の外周部には、この遠心分離室20内に旋回気流を形成すると共に、この旋回気流の旋回速度を調整することのできるガイドベーン40が配置されている。なお、この実施の形態においては、一例として、16枚のガイドベーン40を配置している。このガイドベーン40は、回動軸40aにより上部円盤状部材22と下部円盤状部材24との間で回動可能に軸支されると共に、ピン40bにより図示されていない回動板(回動手段)に対して係止されており、この回動板を回動させることにより全てのガイドベーン40を同時に、所定角度回動させるように構成されている。このようにしてガイドベーン40を所定角度回動させて各ガイドベーン40の間隔を調整することにより、当該間隔を図2に示す白抜き矢印の方向に通過する常圧気体の流速を変化させ、ひいては遠心分離室20内の旋回気流の流速を変化させることができる。このようにして旋回気流の流速を変化させることにより、この実施の形態に係る分級機4の分級性能(具体的には、分級点)を変更することができる。なお、上述のように、各ガイドベーン40の間隔を通過する常圧気体は、第2のヒータ14によって予め所定の温度まで加熱された常圧気体である。
【0028】
次に、図4のフローチャートを用いて、この実施の形態に係る粉体の分級方法について説明する。まず、分級対象の粉体と液体助剤との混合を行う(ステップS10)。次に、粉体と液体助剤との混合物を乾燥させることにより液体助剤を気化させる(ステップS12)。
【0029】
ここで分級対象の粉体としては、チタン酸バリウム、ニッケルなどが挙げられる。液体助剤としては、例えば、エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類が挙げられる。混合比率としては、通常質量比で粉体1に対して液体助剤を0.01〜0.15、好ましくは粉体1に対して液体助剤を0.03〜0.1添加して混合する。この範囲を満たさない場合には、液体助剤の効果が発現しなかったり、粉体の流動性が著しく低下したりするという問題が生じる。
【0030】
混合方法としては、攪拌子及びマグネティックスターラを使用した攪拌、遊星攪拌機、二軸攪拌機、三本ロールを用いた攪拌等が挙げられる。本実施の形態においては、混合機(「ハイエックス」:日清エンジニアリング社製)を用いている。
【0031】
乾燥方法としては、室温における自然乾燥、恒温槽を用いた乾燥等が挙げられる。また、乾燥条件としては、粉体と液体助剤との組み合わせ、特に液体助剤の引火点によって適宜選択することができる。
【0032】
例えば、粉体がチタン酸バリウムであり、液体助剤がジエチレングリコールモノメチルエーテル(引火点93℃)である場合には、作業効率の観点から、恒温槽を用いて乾燥温度を通常93℃〜200℃、好ましくは120℃〜200℃とし、また、乾燥時間を通常2時間以下、好ましくは30分〜2時間とする。液体助剤がエタノール(引火点16℃)である場合には、作業効率の観点から、恒温槽を用いて乾燥温度を通常16℃〜200℃、好ましくは120℃〜200℃とし、また、乾燥時間を通常2時間以下、好ましくは30分〜2時間とする。
【0033】
分級装置2を稼動させると、吸入ブロア12によって気体の吸入が開始される(ステップS14)。遠心分離室20内の気体は、遠心分離室20の上部中央に設けられた吸入口32から吸入されるため、遠心分離室20の中央部の気圧が相対的に低くなる。このようにして遠心分離室20内に発生した負圧によって、遠心分離室20の外周に沿って配置された各ガイドベーン40の間から常圧気体である大気が吸入され、遠心分離室20内に供給される(ステップS18)。なお、遠心分離室20内へ吸入される常圧気体は、第2のヒータ14内に設けられた配管内を通過することにより、所定の温度まで予め加熱されている(ステップS16)。このようにして常圧気体がガイドベーン40間から吸入されることにより、ガイドベーン40の回動角度に応じて定まる流速を有する旋回気流が形成される。なお、この実施の形態に係る粉体の分級方法においては、遠心分離室20内の旋回気流の温度が所望の温度となるように、吸入される常圧気体を加熱している。
【0034】
次に、コンプレッサー8を用いて分級機4の遠心分離室20内へ向けて高圧気体の供給を開始する。コンプレッサー8から噴射された高圧気体は、第1のヒータ10によって所定の温度まで加熱される(ステップS20)。なお、第1のヒータ10は、第2のヒータ14と同様に、遠心分離室20内の旋回気流の温度が所望の温度となるように、当該高圧気体を加熱する。所定の温度まで加熱された高圧気体は、遠心分離室20の外周壁に設けられた複数の噴出ノズル30から噴出され、遠心分離室20内に供給される(ステップS22)。
【0035】
以上のようにして、加熱された高速旋回気流が遠心分離室20内を定常的に旋回する状態が形成されると、フィーダ6から定量的に送出される混合粉体が、投入口26から遠心分離室20内へと投入される(ステップS24)。なお、投入口26から投入される混合粉体には上述のステップS12に示す乾燥工程において気化しなかった液体助剤が含まれている。
【0036】
図2に示すように、投入口26は、遠心分離室20の外周部の上方に設置されているため、投入口26から投入された混合粉体は、遠心分離室20の外周部を高速で旋回する旋回気流に衝突し急激に分散される。このとき、粉体の微粒子間に混在している液体助剤が急速に気化することにより粉体の分散が促進される。このようにして微粒子単位で分散された粉体は、遠心分離室20を構成する上部円盤状部材22や下部円盤状部材24等の表面に付着することなく遠心分離室20内を幾度となく旋回し、粉体の粒径に基づいて分級される(ステップS26)。
【0037】
遠心分離室20における遠心分離作用の結果、所望の分級点以下の粒径を有する微粉は、遠心分離室20の中央部に集約され、上部円盤状部材22及び下部円盤状部材24のそれぞれの中央部に設けられたリング状の凸部の効果により、吸入ブロア12によって吸入される気体と共に吸入口32から回収される(ステップS28)。なお、分級点を越える粒径を有する粗粉は、遠心分離室20における遠心分離作用によって遠心分離室20の外周部に集約された後に、再分級ゾーン28から分級機4の円錐形状部を降下し、排出口34から排出されて回収容器16に収容される。
【0038】
以上のように、遠心分離室20内を旋回する高温の旋回気流と液体助剤の効果によって効果的に分散された粉体は、遠心分離室20を構成する部品等の表面に付着することなく遠心分離室20内を旋回し、所望の分級点以下の微粉と残りの粗粉とに効率よく分級される。なお、粉体と共に分級機4に供給された助剤はすべて気化するため、回収された粉体に含まれることはない。
【0039】
また、この実施の形態においては、分級機4内の旋回気流が所望の温度となるように供給される気体を加熱しているが、例えば、分級機4内の旋回気流の温度が、粉体と混合された液体助剤の引火点以上かつ200℃以下となるように供給される気体を加熱することにより効率よく分級を行うことができる。
【0040】
次に、図面を参照して本発明の第2の実施の形態に係る粉体の分級方法について説明する。なお、この第2の実施の形態に係る粉体の分級方法の構成は、第1の実施の形態に係る粉体の分級方法における常圧気体及び高圧気体の加熱工程を削除したものである。従って、上述の分級装置2と同一の構成についての詳細な説明は省略し、異なる部分のみについて詳細に説明する。また、上述の分級装置2の構成と同一の構成には同一の符号を付して説明する。
【0041】
図5は、第2の実施の形態に係る粉体の分級方法を説明するフローチャートである。まず、分級対象の粉体と液体助剤との混合を行う(ステップS30)。次に、粉体と液体助剤との混合物を乾燥させることにより液体助剤を気化させる(ステップS32)。なお、ステップS30及びS32に示す処理は、図4のフローチャートのステップS10及びS12に示す処理とそれぞれ同様であるため詳細な説明は省略する。
【0042】
分級装置2を稼動させると、吸入ブロア12によって気体の吸入が開始され(ステップS34)、常圧気体である大気が遠心分離室20内に供給される(ステップS36)。このようにして常圧気体がガイドベーン40間から吸入されることにより、ガイドベーン40の回動角度に応じて定まる流速を有する旋回気流が形成される。次に、コンプレッサー8を用いて分級機4の遠心分離室20内へ向けて高圧気体の供給を開始する(ステップS38)。ここで、高圧気体は、遠心分離室20の外周壁に設けられた複数の噴出ノズル30から噴出され、遠心分離室20内に供給される。なお、本実施の形態においては、常圧気体及び高圧気体の加熱は行わない。
【0043】
以上のようにして、高速旋回気流が遠心分離室20内を定常的に旋回する状態が形成されると、フィーダ6から定量的に送出される混合粉体が、投入口26から遠心分離室20内へと投入される(ステップS40)。投入された混合粉体は、粉体の粒径に基づいて分級され(ステップS42)、吸入ブロア12によって吸入される気体と共に吸入口32から回収される(ステップS44)。また、分級点を越える粒径を有する粗粉は、第1の実施の形態と同様に、排出口34から排出されて回収容器16に収容される。
【0044】
なお、ステップS34、S36、S38、S40、S42及びS44に示す処理は、図4のフローチャートのステップS14、S18、S22、S24、S26及びS28に示す処理とそれぞれ同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0045】
上述の各実施の形態に係る粉体の分級方法によれば、分級対象である粉体を、液体助剤と混合し、乾燥させた上で、分級機内の遠心分離室に投入すると共に、当該遠心分離室内に吸入される気体によって高速旋回気流が形成されるので、粉体と液体助剤が均一に分散し粒径が1μm以下の粉体の分級を効率よく行うことができる。
【実施例】
【0046】
次に本実施の形態に係る粉体の分級方法ついて、実施例を用いてより具体的に説明を行う。
【0047】
(実施例1)
分級対象の粉体として、チタン酸バリウム(中位径0.683μm、最大粒子径7.778μm)の微粉末を用いた。液体助剤としてジエチレングリコールモノメチルエーテルを用いた。混合工程においては、混合機(「ハイエックス」:日清エンジニアリング社製)を用いて、チタン酸バリウムの微粉末にジエチレングリコールモノメチルエーテルを添加し、混合した。ジエチレングリコールモノメチルエーテルの添加量は、質量比でチタン酸バリウム1に対して0.05とした。
【0048】
乾燥工程においては、チタン酸バリウムとジエチレングリコールモノメチルエーテルとの混合物を恒温槽内において130℃で2時間静置乾燥させた。乾燥させた混合物を分級機に投入した。
【0049】
分級機としては、断熱装備を施した分級機を用い、吸入ブロアで吸引する気体量を2m/分、コンプレッサーが生成する高圧気体の圧力を0.6MPaとして分級を行った。なお、分級機への粉体の投入量は1kg/時間に設定し、常圧気体及び高圧気体の加熱を行い分級機内の温度は100℃に設定した。なお、分級機内の温度は、分級装置の吸入ブロアによって分級機内の吸入口から吸入された直後の気体の温度を測定することにより求めている。
【0050】
(実施例2)
常圧気体及び高圧気体の加熱を行わず分級機内の温度を18℃とした以外は、実施例1と同様の条件により分級を行った。
【0051】
(比較例1)
乾燥工程における乾燥を行わなかった以外は、実施例1と同様の条件により分級を行った。
【0052】
(比較例2)
液体助剤の添加・混合を行わずにチタン酸バリウム(中位径0.683μm、最大粒子径7.778μm)の微粉末を分級機に投入した。分級機における分級の条件として、常圧気体及び高圧気体の加熱を行わず分級機内の温度を16℃とした以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0053】
(評価方法)
実施例及び比較例におけるチタン酸バリウムの投入量(乾粉ベース)、製品(微粉)回収量を測定し、製品収率を求めた。また、回収された微粉の製品粒度(中位径及び最大粒子径)を測定した。なお、粒子径の測定は、粒子径測定装置(「マイクロトラックMT−3300EX」:日機装社製)を用いて行った。これらの測定結果を表1に示す。
【表1】
【0054】
表1に示すように、チタン酸バリウムとジエチレングリコールモノメチルエーテルとを混合した後に乾燥させ、かつ分級時に加熱を行った場合(実施例1)には、分級前の乾燥を行わない場合(比較例1)と比べて製品回収率が同等以上になることが分かった。
【0055】
また、チタン酸バリウムとジエチレングリコールモノメチルエーテルとを混合した後に乾燥させ、かつ分級時に加熱を行わなかった場合(実施例2)には、液体助剤を加えず分級前の乾燥を行わない場合(比較例2)と比べて製品回収率が高くなることが分かった。
【0056】
従って、乾燥を行うことによりチタン酸バリウムの製品回収率を上げることができた。
【0057】
なお、上述の実施例1及び2の何れの場合においても、遠心分離を30分間継続したが、閉塞によって運転が停止することはなかった。また、何れの実験結果においても、回収された微粉の粒度分布は同等であり、液体助剤を添加しても、分級性能自体に何ら影響を及ぼさないことが確認された。
【符号の説明】
【0058】
2…分級装置、4…分級機、6…フィーダ、8…コンプレッサー、10…第1のヒータ、12…吸入ブロア、14…第2のヒータ、20…遠心分離室、22…上部円盤状部材、24…下部円盤状部材、26…投入口、30…噴出ノズル、32…吸入口、40…ガイドベーン
図1
図2
図3
図4
図5