(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
車両や電動工具などには、駆動用の電源として複数の二次電池を直列に接続して構成された組電池が搭載されている。ハイブリッド自動車や電池自動車に搭載されて駆動用の電源として用いられる組電池は大容量のものが要求されるため、数十個から数百個の二次電池で構成されるものも存在する。二次電池としては、リチウムイオン電池やリチウムイオンポリマー二次電池、ニッケル・水素電池が例示できる。なお、以下、本明細書では、二次電池を一次電池などの他の電池と区別して説明する必要がない場合には、単に「電池」と称する。
【0003】
ところで、一般的に、駆動用の電源として用いられる組電池を構成する複数の電池の各々には、各々対応する電池の電圧値を監視する複数の電圧監視装置が接続されている。これらの電圧監視装置は直列に接続されており、各々の動作を把握すると共に制御する基幹装置を含んで電圧監視システムを構成している。
【0004】
図7には、従来の電圧監視システムの構成の一例が示されている。同図に示されるように、電圧監視システム100は、直列に接続された複数の電圧監視装置102及び電圧監視システム100の全体を制御する基幹装置104を含んで構成されている。電圧監視装置102は、通信用端子106,108を備えており、通信用端子106には基幹装置104が接続されている。また、通信用端子108は、後段の電圧監視装置102の通信用端子106に接続されている。従って、基幹装置104は、直接の接続先の電圧監視装置102を介して全ての電圧監視装置102との間で情報の授受を行うことができる。
【0005】
電圧監視装置102は、制御回路110、電圧測定回路112、及びクロック生成回路114を含んで構成されており、各々は互いに接続されている。また、通信用端子106及び108の各々は制御回路110に個別に接続されている。制御回路110は、CPU(Central Processing Unit;中央処理装置)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び装置の電源スイッチが切られても保持しなければならない各種情報を記憶する例えばNVM(Non Volatile Memory)などの不揮発性の記憶媒体を含んで構成されており、電圧監視装置102の全体の動作を制御する。
【0006】
電圧測定回路112は、制御回路110の指示に従って電源の電圧を測定するものであり、直列に接続されることによって組電池116を構成している複数の電池118のうちの1つに接続されている。具体的には、対応する電池118の正極端子に正極接続端子120を介して接続され、対応する電池118の負極端子に負極接続端子122を介して接続されており、対応する電池118の電圧を測定する。
【0007】
クロック生成回路114は、制御回路110及び電圧測定回路112の動作タイミングを規定するクロック信号を生成し、生成したクロック信号を制御回路110及び電圧測定回路112に対して供給するものである。
【0008】
また、電圧監視装置102は、外部から自身を特定する特定情報(以下、「ID信号」という。)の入力を受け付けるID入力端子124を備えている。ID入力端子124は、制御回路110に接続されており、外部からID入力端子124を介して入力されたIDは制御回路110に入力され、NVMに記憶される。これによって、電圧監視装置102毎に固有のID信号が設定される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の一例について詳細に説明する。なお、本実施形態において、
図7に示す電圧監視システム100及び組電池116と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0037】
図1は、本第1の実施形態に係る電圧監視システム10の構成の一例を示す構成図である。
【0038】
同図に示すように、電圧監視システム10は、各々電池の電圧を監視する複数の電圧監視装置12、及び直列に接続されたこれらの電圧監視装置12のうちの始端(最前段)に接続されている電圧監視装置12の前段に位置するように最前段の電圧監視装置12に直列に接続され、かつ複数の電圧監視装置12の各々から電圧を示す電圧情報(ここでは、一例として電圧値)を収集すると共に、各電圧監視装置の動作を制御する基幹装置14を含んで構成されている。組電池116における複数の電池118の各々には、各々対応する電池118の電圧値を監視する複数の電圧監視装置12が接続されている。複数の電圧監視装置12は各々隣接する電圧監視装置12との間で通信が可能となるように直列に接続されている。
【0039】
なお、電圧監視システム10を構成している電圧監視装置12の全ての構成は略同一であるので、以下では、基幹装置14に直接接続されている電圧監視装置12を例に挙げて電圧監視装置12の構成を説明する。
【0040】
電圧監視装置12は、通信用端子20H,28Dを備えており、通信用端子20Hには基幹装置14の通信用端子14Aが接続されている。また、通信用端子28Dは、後段の電圧監視装置12に接続されている。従って、基幹装置14は、直接の接続先の電圧監視装置12を介して全ての電圧監視装置12との間で情報の授受を行うことができる。
【0041】
電圧監視装置12は、制御回路20、電圧測定回路22、クロック生成回路24、ID設定回路26、及び選択回路28を含んで構成されている。制御回路20は、第1〜第3入力端子20A〜20C、第1〜第4出力端子20D〜20G、及び通信用端子20Hを備えている。また、電圧測定回路22は、第1入力端子22A、第2入力端子22B、出力端子22C、正極接続端子22D、及び負極接続端子22Eを備えている。また、クロック生成回路24は、出力端子24Aを備えている。また、ID設定回路26は、第1〜第3入力端子26A〜26C、及び第1〜第3出力端子26D〜26Fを備えている。更に、選択回路28は、第1〜第3入力端子28A〜28C及び通信用端子28Dを備えている。
【0042】
制御回路20は、CPU(Central Processing Unit;中央処理装置)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び装置の電源スイッチが切られても保持しなければならない各種情報を記憶する例えばNVM(Non Volatile Memory)などの不揮発性の記憶媒体を含んで構成されており、電圧監視装置12の全体の動作を制御するものである。制御回路20は、第2入力端子20Bが電圧測定回路22の出力端子22Cに、第1出力端子20Dが電圧測定回路22の第1入力端子22Aに、第4出力端子20Gが選択回路28の第1入力端子28Aに、通信用端子20Hが基幹装置14の通信用端子14Aに各々接続されている。従って、制御回路20は、電圧測定回路22の動作の制御、電圧測定回路22からの情報の取得、選択回路28に対しての情報の出力、及び基幹装置14との間での情報の授受の各々を行うことができる。
【0043】
電圧測定回路22は、制御回路20の指示に従って電源の電圧を測定するものであり、複数の電池118のうちの1つに接続されている。具体的には、正極接続端子22Dが対応する電池118の正極端子に接続され、負極接続端子22Eが対応する電池118の負極端子に接続されており、対応する電池118の電圧を測定する。
【0044】
クロック生成回路24は、電圧監視装置12を構成している回路の動作タイミングを規定するクロック信号(CLK信号)を生成するものである。クロック生成回路は、出力端子24Aが制御回路20の第1入力端子20A、電圧測定回路22Bの第2入力端子22B、及びID設定回路26の第1入力端子26Aに接続されており、制御回路20、電圧測定回路12、及びID設定回路26の動作タイミングを規定するクロック信号を生成し、生成したクロック信号を制御回路20、電圧測定回路12、及びID設定回路26に対して供給する。
【0045】
ID設定回路26は、第2入力端子26Bが制御回路20の第3出力端子20Fに、第3入力端子26Cが制御回路20の第2出力端子20Eに、第1出力端子26Dが制御回路20の第3入力端子20Cに、第2出力端子26Eが選択回路28の第2入力端子28Bに、第3出力端子26Fが選択回路28の第3入力端子28Cに各々接続されており、制御回路20の指示に従って自身の電圧監視装置12のID信号を設定すると共に選択回路28を制御する。
【0046】
選択回路28は、通信用端子28Dが自身の電圧監視装置12の接続先の電圧監視装置12の通信用端子20Hに接続されており、ID設定回路26からの指示に従って、制御回路20から入力された情報及びID設定回路26から入力された情報の何れかを選択して接続先の電圧監視装置12に送信すると共に、自身の電圧監視装置12と接続先の電圧監視装置12との間で情報の授受を可能とする。
【0047】
図2は、本第1の実施形態に係るID設定回路26及び選択回路28の構成の一例を示す構成図である。同図に示すように、ID設定ブロック26は、分周回路40、第1保持回路42、第2保持回路44、第3保持回路46、第4保持回路48、第5保持回路50、カウンタ回路52、比較回路54、AND回路56、シフトレジスタ58、反転回路60、マルチプレクサ回路62、インクイメント回路64、及びバス結合回路66を含んで構成されている。
【0048】
分周回路40は、クロック信号入力端子、信号が入力される信号入力端子を示すD端子、信号を出力する出力端子を示すQ端子、Q端子から出力される信号を反転させた信号を出力する反転信号出力端子を示すQB端子、及びイネーブル端子を示すEN端子を備えている。また、第1保持回路42は、クロック信号入力端子、セット入力端子を示すS端子、リセット入力端子を示すR端子、及びデータ出力端子を示すQ端子を備えている。また、第2保持回路44、第3保持回路46及び第4保持回路48の各々は、クロック信号入力端子、D端子、及びQ端子を備えている。また、第5保持回路50は、クロック信号入力端子、D端子、Q端子、及びEN端子を備えている。また、カウンタ回路52は、クロック信号入力端子、Q端子、EN端子、及びR端子を備えている。また、比較回路54は、Q端子、並びに各々信号が入力される信号入力端子を示すA端子及びB端子を備えている。また、AND回路56は第1入力端子、第2入力端子、及び出力端子を備えている。また、シフトレジスタ58は、シフト動作イネーブル端子を示すSEN端子、EN端子、D端子、クロック信号入力端子、及びQ端子を備えている。また、反転回路60及びインクリメント回路64の各々は、入力端子及び出力端子を備えている。また、マルチプレクサ回路62は、出力端子及び第1〜第3入力端子を備えている。また、バス結合回路66は、出力端子及び第1〜第3の入力端子を備えている。
【0049】
分周回路40は、クロック信号入力端子が第1入力端子26Aに、Q端子が第2出力端子26E及びAND回路56の第1入力端子に、EN端子がAND回路56の第2入力端子及び反転回路60の入力端子に、QB端子が自身のD端子に各々接続されており、クロック生成回路24から第1入力端子26Aを介してクロック信号入力端子に入力されたクロック信号を所定周波数のシリアルクロック信号(SCLK信号)に変換してQ端子から出力する。
【0050】
第1保持回路42は、クロック信号入力端子が第1入力端子26Aに(結線の図示省略)、S端子が第2入力端子26Bに、Q端子が第2保持回路44のD端子及びカウンタ回路52のEN端子に、R端子が比較回路54のQ端子に各々接続されており、制御回路20から第2入力端子26Bを介してS端子にID設定回路26を起動させるための起動信号としてのハイレベル信号が入力されると、Q端子からハイレベル信号を出力する。
【0051】
第2保持回路44は、クロック信号入力端子が第1入力端子26Aに(結線の図示省略)、Q端子が第3保持回路46のD端子に各々接続されており、第1保持回路42から入力されたハイレベル信号に応答してQ端子からハイレベル信号を出力する。
【0052】
第3保持回路46は、クロック信号入力端子が第1入力端子26Aに(結線の図示省略)、Q端子がAND回路56の第2入力端子、マルチプレクサ回路62の第1入力端子、及び第3出力端子26Fに各々接続されており、第2保持回路44から入力されたハイレベル信号に応じてQ端子から選択信号としてのハイレベル信号を出力し、第2保持回路44と共に遅延回路を構成する。
【0053】
第4保持回路48は、クロック信号入力端子が第1入力端子26Aに(結線の図示省略)、D端子が第2入力端子26Bに、Q端子がシフトレジスタ58のEN端子に各々接続されており、制御回路20から第2入力端子26Bを介してD端子に入力された起動信号としてのハイレベル信号に応答してQ端子からハイレベル信号を出力する。
【0054】
第5保持回路50は、クロック信号入力端子が第1入力端子26Aに(結線の図示省略)、D端子が第3入力端子26Cに、EN端子が第2入力端子26Bに、Q端子がインクリメント回路64の入力端子及び第1出力端子26Dに各々接続されており、制御回路20から第3入力端子26Cを介してD端子に電圧監視装置12に対して設定される情報(ここでは、一例としてID信号)を示す8ビットのライトデータ信号が入力され、Q端子からライトデータ信号を出力する。
【0055】
カウンタ回路52は、クロック信号入力端子が第1入力端子26Aに(結線の図示省略)、R端子が自身のEN端子に、Q端子が比較回路54のA端子に各々接続されており、第1保持回路42のQ端子からハイレベル信号が出力されたことに応答してカウントアップ動作を開始する。
【0056】
比較回路54は、B端子に6ビットの予め定められた値(ここでは、一例として10進数で47を示すデータ)が入力されるように構成されており、カウンタ回路52のカウント値が予め定められた値になった場合にその旨を示すカウント終了信号としてのハイレベル信号をQ端子から出力する。
【0057】
AND回路56は、出力端子がシフトレジスタ58のSEN端子に接続されており、分周回路40からハイレベル信号が入力され、かつ第3保持回路46からハイレベル信号が入力されたことに応答して出力端子からハイレベル信号を出力する。
【0058】
シフトレジスタ58は、クロック信号入力端子が第1入力端子26Aに(結線の図示省略)、D端子がバス結合回路66の出力端子に、Q端子がマルチプレクサ回路62の第2入力端子に各々接続されており、バス結合器66から入力された信号を1ビットずつQ端子から出力する。
【0059】
反転回路60は、出力端子が第2出力端子26Eに接続されており、分周回路40から入力された信号を反転させて出力端子からチップセレクト信号(CS信号)を出力する。
【0060】
マルチプレクサ回路62は、第3入力端子に1ビットの予め定められた値(例えば、2進数で1を示すデータ)が入力され、出力端子が第2出力端子26Eに接続されており、入力された複数の信号を1つのシリアルデータ入力信号(SDI信号)にして出力する。
【0061】
インクリメント回路64は、出力端子がバス結合器66の第1入力端子に接続されており、第5保持回路50から入力されたライトデータ信号により示される値に1を加算して更新データ信号(新たなライトデータ信号)として出力端子から出力する。
【0062】
バス結合回路66は、第2入力端子にID設定回路26の作動内容を命令する8ビットのコマンド信号(ここでは、一例としてライトアクセスを示す信号)が入力され、第3入力端子にID設定回路26のアドレスを示す8ビットのアドレス信号(ここでは、一例として電圧監視装置12内の任意回路に割り当てられたアドレス)が入力されるように構成されており、アドレス信号、コマンド信号、及び更新データ信号を結合して得られたシフトデータ信号を出力端子から出力する。
【0063】
選択回路28は、ID設定回路26から第2出力端子26Eを介して第2入力端子28Bに入力された3ビットの信号、制御回路20から第4出力端子20Gを介して第1入力端子28Aに入力された3ビットの信号、及び第3保持回路46から第3出力端子26Fを介して第3入力端子28Cに入力された選択信号に基づいて、シリアルデータ出力信号(SDO信号)を通信用端子28Dから後段の電圧監視装置12に出力する。
【0064】
このように、本第1の実施形態に係る電圧監視システム10では、電圧監視装置12間、及び電圧監視装置12と基幹装置14との間で行われる通信の方式としてSPI(Serial Peripheral Interface)通信を適用しており、SPIは、CS信号、SCLK信号、SDI信号、及びSDO信号によって実現される。
【0065】
図3は、本第1の実施形態に係る電圧監視システム10の要部構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、電圧監視装置12は、受信部62、格納部64、生成部66、送信部68、接続端子70、及び通信用端子72,74を備えている。受信部62は制御回路20に、格納部64及び生成部66はID設定回路26に、送信部68は選択回路28に、通信用端子72は通信用端子20Hに、通信用端子74は通信用端子28Dに、接続端子70は正極接続端子22D及び負極接続端子22Eに各々相当している。受信部62の出力端子は格納部64の入力端子及び生成部66の入力端子に、生成部66の出力端子は送信部68の入力端子に、送信部68の出力端子としての通信用端子74は後段の電圧監視装置12の通信用端子72に各々接続されている。
【0066】
基幹装置14は、出力端子が通信用端子72を介して受信部62の入力端子に接続されており、直接の接続先の電圧監視装置12に対して、その電圧監視装置12のID信号を送信する。
【0067】
電圧監視装置12は、接続端子70を介して対応する電池118に電圧値が測定可能となるように接続されており、対応する電池118の電圧値を所定時間(例えば、0.1秒)間隔で測定して内部メモリ(図示省略)に上書き保存すると共に基幹装置14からの指示に従って通信用端子72を介して基幹装置14に出力する。従って、基幹装置14は、電圧監視装置12で取得した情報(一例として電池118の電圧値)を把握することができる。
【0068】
受信部62は、基幹装置14から送信されたID信号を受信し、受信したID信号を格納部64に出力すると共に、生成部66に出力する。
【0069】
格納部64は、受信部62から入力されたID信号を自身の電圧監視装置12が特定される特定情報(以下、「自身のID信号」という。)として予め定められた記憶領域に格納する。これによって、電圧監視装置12に固有のID信号が設定される。
【0070】
一方、生成部66は、受信部62から入力されたID信号に対して予め定められた情報を付加することにより、自身の電圧監視装置12の後段の電圧監視装置12に対して設定されるID信号(以下、「後段のID信号」という。)を生成し、送信部68に出力する。
【0071】
送信部68は、生成部66から入力された後段のID信号を通信用端子74を介して後段の電圧監視装置12に送信する。
【0072】
以降の直列に接続された電圧監視装置12の各々でも同様に自身のID信号の設定、ID信号が未設定の接続先の電圧監視装置12のID信号としての後段のID信号の生成、及び生成した後段のID信号の送信が行われる。
【0073】
次に、本第1の実施形態に係る電圧監視システム10の作用を説明する。
【0074】
先ず、本第1の実施形態に係る電圧監視システム10に適用されているSPI通信の動作を
図4を参照しながら説明する。なお、
図4は、本第1の実施形態に係る電圧監視システム10のSPI通信の動作タイミングを示すタイムチャートである。なお、ここでは、錯綜を回避するために、電圧監視装置12の各々に固有のID信号が設定されている場合であり、かつ基幹装置14が通信用端子14AからCS信号、SCLK信号、及びSDI信号を出力すると共に、ID信号を含むコマンド信号、及びアドレス信号を出力する場合を例に挙げて説明する。
【0075】
同図に示すように、電圧監視装置12に対して情報を書き込むためのライトアクセスが基幹装置14によって実行されると、先ず、基幹装置14の直接の接続先の電圧監視装置12の制御回路20、電圧測定回路22及びID設定回路26は、基幹装置14から入力されたCS信号、SCLK信号、及びSDI信号を取得する。制御回路20は、基幹装置14から入力されたCS信号がローレベルのときにSCLK信号の立ち上がりエッジでSDI信号を取得することによって、アドレス信号、コマンド信号、及びライトデータ信号を取得する。その後、電圧監視装置12の制御回路20は、コマンド信号に含まれるID信号と一致する電圧監視装置12の予め定められた記憶領域に対してのみ情報の書き込み処理を実行する。
【0076】
一方、電圧監視装置12から情報を読み出すためのリードアクセスの際には、制御回路20は、基幹装置14から入力されたCS信号がローレベルのときにSCLK信号の立ち上がりエッジでSDI信号を取得することによって、アドレス信号及びコマンド信号を取得する。そして、基幹装置14が指定したアドレス信号及びコマンド信号に応じて、コマンド信号に含まれるID信号が一致する電圧監視装置12の制御回路20が予め定められた記憶領域から情報の読み出し処理を実行し、その読み出し処理によって読み出されたリードデータ信号をSDO信号として基幹装置14に対して出力する。
【0077】
次に、本第1の実施形態に係る電圧監視システム10の各電圧監視装置12に対してID信号を設定する動作を
図5を参照しながら説明する。なお、
図5は、本第1の実施形態に係る電圧監視装置12のID設定回路26の動作タイミングを示すタイムチャートである。なお、ここでは、錯綜を回避するために、電圧監視装置12の各々にID信号が設定されていない場合を例に挙げて説明する。
【0078】
同図に示すように、基幹装置14が電圧監視装置12内でのID設定回路26を特定するアドレスにライトアクセスを実行し、ID信号を各電圧監視装置12に対して設定するためのトリガー信号としても機能する“0”の値を示すライトデータ信号を出力する。このライトアクセスを電圧監視装置12の制御回路20が検出すると、制御回路20は、起動信号をローレベル信号からハイレベル信号に遷移させることによりID設定回路26を起動させると共に、基幹装置14から入力された“0”の値を示すライトデータ信号をID設定回路26に出力する。これに応じて、ID設定回路26の第3入力端子26Cのライトデータ信号が“0”に変化する(時刻T1)。
【0079】
このように起動信号がハイレベル信号になると、第1保持回路42がQ端子からハイレベル信号を出力する一方で、第4保持回路48及び第5保持回路50が起動信号としてのハイレベル信号を取得する。これに応じて、第4保持回路48はQ端子からハイレベル信号を出力し、第5保持回路50は“0”の値を示すライトデータ信号を取り込むことにより自身の電圧監視装置12のID信号として設定すると共に、そのライトデータ信号をインクリメント回路64に出力する。インクメント回路64は、第5保持回路50から入力されたライトデータ信号により示される値としての“0”に1を加算してバス結合回路66に出力する。バス結合回路66は、アドレス信号、コマンド信号、及びインクリメント回路64から入力された“1”の値を示すライトデータ信号を結合して24ビットのシフトデータ信号としてシフトレジスタ58のD端子に出力する(時刻T2)。
【0080】
一方、カウンタ回路52は、第1保持回路42のQ端子からハイレベル信号が入力されると、カウントアップ動作を開始する(時刻T3)。
【0081】
カウンタ回路52のカウントアップ値が“1”から“2”に変化するタイミングで第3保持回路46は、Q端子から選択信号としてハイレベル信号を出力すると共に、反転回路60は、第3保持回路46のQ端子から入力されたハイレベル信号をローレベル信号に遷移させてCS信号として出力する(時刻T4)。
【0082】
カウンタ回路52は、予め定められた値(ここでは、一例として“47”)までカウントアップすると、比較回路54のQ端子からハイレベル信号を出力させるように比較回路54を制御し、現時点で第1保持回路42のQ端子から出力されているハイレベル信号をローレベル信号に遷移させる(時刻T5)。これに応じて、第3保持回路46は、現時点でQ端子から出力しているハイレベル信号をローレベル信号に遷移させるので、これに伴って反転回路60も出力端子から出力しているローレベル信号をハイレベル信号に遷移させる(時刻T6)。
【0083】
そして、選択信号がハイレベル信号になった時点からローレベル信号に戻る時点までの期間、すなわち、時刻T4から時刻T6までの期間に、現時点でID信号が後段の電圧監視装置12、すなわち、未設定の接続先の電圧監視装置12にCS信号、SCLK信号、並びにその接続先の電圧監視装置12内におけるID設定回路26のアドレスを示すアドレス信号、ライトアクセスを示すコマンド信号、及び“1”の値を示すライトデータ信号を含むSDI信号を出力する。
【0084】
このSDI信号は、シフトレジスタ58のEN端子に第4保持回路48からハイレベル信号が入力されたときに、シフトレジスタ58がD端子を介してバス結合回路66からシフトデータ信号を取り込み、SEN端子にAND回路56からハイレベル信号が入力されたときに取り込んだシフトデータ信号をアドレス信号から順に1ビットずつ生成されて出力される。
【0085】
以上のように、本第1の実施形態に係る電圧監視装置12は、自身に設定されたID信号を後段の電圧監視装置12に対して、自身のID信号により示される値に“1”をインクリメントした信号をID信号が後段の電圧監視装置12に設定されるべき後段のID信号として送信する。これによって、基幹装置14に直接接続されている電圧監視装置12を最前段の電圧監視装置12とすると、直列に接続されている電圧監視装置12の各々に対して、最前段の電圧監視装置12から最後段の電圧監視装置12にかけて接続順に電圧監視装置12の各々にとって固有のID信号が設定される。
【0086】
このように、本第1の実施形態に係る電圧監視システム10では、従来のように各電圧監視装置12にID信号を設定するためにのみ用いられるID設定専用端子を設ける必要がなく、例えば基幹装置14などの外部装置との間で通信を行うための通信用端子20H及び28DがID設定専用端子の機能も兼ね備えているため、例えば、より大容量な組電池(バッテリー)を監視する従来の電圧監視システムでは、端子数の制限によって様々な機能を追加するための外部インタフェースを設けることが困難だったが、本第1の実施形態に係る電圧監視システム10では、ID設定専用端子を設ける必要がないため端子使用の自由度が向上し、様々な機能を追加するための外部インタフェースを設けることが可能となる。例えば、ID設定回路26の第5保持回路50の入出力信号のビット数を8ビットとした場合には、256個の電圧監視装置12を直列に多段接続することが可能となり、これらの全ての電圧監視装置12の各々に対して外部インタフェースを設けることが可能となる。
【0087】
以上詳細に説明したように、本第1の実施形態に係る電圧監視システム10では、各々、直列に接続された複数の電池118の各々の電圧を監視する複数の電圧監視装置12が直列に接続され、制御回路20が前段から送信されたID信号を受信し、受信したID信号を自身のID信号として第5保持回路50に格納することにより設定し、受信したID信号に対してインクリメント回路64が予め定められた情報として“1”を付加して後段のID信号として後段の電圧監視装置12に送信するので、複数の電圧監視装置12の各々が特定されるID信号を設定するための専用端子を各電圧監視装置12に設けることなく各電圧監視装置12に対してID信号を設定することができる。
【0088】
また、本第1の実施形態に係る電圧監視システム10では、後段のID信号を生成するために自身のID信号に付加する予め定められた情報を“1”とすることにより、最小のビット数で各電圧監視装置12に対して固有のID信号を割り当てることができるので、より多くの電圧監視装置12の各々に対してID信号を設定することができる。また、ID信号を送受信するために必要とされる信号線の本数も最小にすることができる。
【0089】
また、本第1の実施形態に係る電圧監視システム10では、直列に接続されている電圧監視装置12のうちの最前段の電圧監視装置12の前段に位置するように最前段の電圧監視装置12に基幹装置14が直列に接続され、基幹装置14が通信用端子20H及び28Dを介して各電圧監視装置12との間で情報の授受を行うので、簡素な構成で、各電圧監視装置12によって収集された情報の把握、及び各電圧監視装置12の制御を行うことができる。
【0090】
また、本第1の実施形態に係る電圧監視システム10では、基幹装置14が電圧監視装置12の各々から、監視された電圧を示す電圧情報を収集するので、電池間の相対的な残容量を容易に把握することができる。
【0092】
上記第1の実施形態では、電圧監視装置12が外部から入力されたID信号を自身のID信号として設定し、後段の電圧監視装置12のID信号を生成して後段の電圧監視装置12に提供することにより各々の電圧監視装置12に対して固有のID信号を設定する場合の形態例を挙げて説明したが、本第2の実施形態では、別の方法で各々の電圧監視装置12に対して固有のID信号を設定する場合の形態例について説明する。なお、本第2の実施形態において、第1の実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。また、本第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を説明する。
【0093】
図6は、本第2の実施形態に係る電圧監視システム10Aの要部構成を示す機能ブロック図を示す。同図に示すように、本第2の実施形態に係る電圧監視システム10Aは、上記第1の実施形態で説明した電圧監視システム10に比べ、電圧監視装置12に代えて電圧監視装置12Aを適用した点のみが異なっている。
【0094】
電圧監視装置12Aは、上記第1の実施形態で説明した電圧監視装置12に比べ、受信部62に代えて受信部62Aを適用した点、格納部64に代えて格納部64Aを適用した点、生成部66に代えて生成部66Aを適用した点、送信部68に代えて送信部68Aを適用した点のみが異なっている。
【0095】
受信部62Aの出力端子は生成部66Aの入力端子に、生成部66Aの一方の出力端子は送信部68Aの入力端子に、生成部66Aの他方の出力端子は格納部64Aの入力端子に、送信部68Aの出力端子としての通信用端子74は後段の電圧監視装置12Aの通信用端子72に各々接続されている。
【0096】
基幹装置14は、出力端子が通信用端子72を介して受信部62Aの入力端子に接続されており、直接の接続先の電圧監視装置12Aに対して、その電圧監視装置12のID信号を生成する際に用いられる生成用信号(ここでは、一例として“0”の値を示す信号)を送信する。
【0097】
受信部62Aは、基幹装置14から入力された生成用信号を受信し、受信した生成用信号を生成部66Aに出力する。
【0098】
生成部66Aは、受信部62Aから入力された生成用信号に対して予め定められた情報(ここでは、一例として“1”の値を示す信号)を付加(加算)することにより、自身のID信号を生成し、格納部64Aに出力すると共に、このID信号を、後段の電圧監視装置12が自身に対して設定されるID信号を生成する際に用いる生成用信号として送信部68Aに出力する。
【0099】
格納部64Aは、生成部66Aから入力されたID信号を自身の電圧監視装置12が特定される特定情報として予め定められた記憶領域に保存することにより設定する。
【0100】
一方、送信部68Aは、生成部66Aから入力された後段の電圧監視装置12で用いられる生成用信号を通信用端子74を介して後段の電圧監視装置12に送信する。
【0101】
以降の直列に接続された電圧監視装置12Aの各々でも同様に自身のID信号として機能すると共に後段の接続先の電圧監視装置12で用いられる生成用信号の生成、自身のID信号の設定、及び生成用信号の送信が行われる。
【0102】
従って、本第2の実施形態に係る電圧監視装置12Aは、前段から送信された生成用信号を受信し、受信した生成用信号に対して例えば“1”を加算して得られた値を示す信号を自身のID信号として格納部64Aに格納し、自身のID信号を後段の電圧監視装置12が自身のID信号を生成するために用いられる生成用信号として後段の電圧監視装置12に送信する。これによって、基幹装置14に直接接続されている電圧監視装置12を最前段の電圧監視装置12とすると、直列に接続されている電圧監視装置12Aの各々に対して、最前段の電圧監視装置12Aから最後段の電圧監視装置12Aにかけて接続順に電圧監視装置12Aの各々にとって固有のID信号が設定される。
【0103】
以上詳細に説明したように、本第2の実施形態に係る電圧監視システム10Aでは、各々、直列に接続された複数の電池118の各々の電圧を監視する複数の電圧監視装置12が直列に接続され、前段から送信されたID信号を受信し、受信したID信号に対して予め定められた情報を付加して自身のID信号を生成し、生成した自身のID信号を予め定められた格納領域に格納することにより設定し、生成した自身のID信号を後段の電圧監視装置12に送信するので、複数の電圧監視装置12の各々が特定されるID信号を設定するための専用端子を各電圧監視装置12に設けることなく各電圧監視装置12に対してID信号を設定することができる。
【0104】
なお、上記各実施形態では、電池118の電圧値を個別に監視する電圧監視装置12(12A)を例に挙げて説明したが、これに限らず、組電池116における電池を例えば2個または3個などの予め定められた個数単位で区切って得られた電池ユニット毎に電圧を監視するようにしてもよい。
【0105】
また、上記各実施形態では、電池118として二次電池を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば一次電池などの直列に接続して組電池として機能する電池であれば如何なるものであってもよい。
【0106】
また、上記各実施形態では、ID信号に対して“1”を加算することにより新たなID信号を生成する場合の形態例を挙げて説明したが、これに限らず、例えばID信号に対して“2”などの1以外の値を加算することにより新たなID信号を生成してもよい。