特許第5786256号(P5786256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5786256熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物及びそれを含む成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786256
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物及びそれを含む成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20150910BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20150910BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20150910BHJP
   C08K 5/18 20060101ALI20150910BHJP
   C08K 5/3435 20060101ALI20150910BHJP
   C08G 63/16 20060101ALI20150910BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   C08L67/00
   C08L67/02
   C08K5/13
   C08K5/18
   C08K5/3435
   C08G63/16
   C08L63/00 A
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-512780(P2014-512780)
(86)(22)【出願日】2013年4月2日
(65)【公表番号】特表2014-516105(P2014-516105A)
(43)【公表日】2014年7月7日
(86)【国際出願番号】KR2013002696
(87)【国際公開番号】WO2013162184
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2013年11月7日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0042634
(32)【優先日】2012年4月24日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0034992
(32)【優先日】2013年4月1日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】サン・ウォク・ナ
(72)【発明者】
【氏名】ホ・ドン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミ・アー・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジ・デ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ソン・キム
【審査官】 井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−196899(JP,A)
【文献】 特開平10−060241(JP,A)
【文献】 特開平04−275371(JP,A)
【文献】 特開平09−183430(JP,A)
【文献】 特開平11−012449(JP,A)
【文献】 特開2004−285198(JP,A)
【文献】 特開2001−049095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 − 13/08
C08L 1/00 − 101/14
C08G 63/00 − 64/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コポリエーテルエステルエラストマー樹脂、ポリアルキレンジカルボキシレート系樹脂、及びグリシジル基変性エチレン−オクテン系共重合体(EOR−GMA)を含んで構成され、前記グリシジル基変性エチレン−オクテン系共重合体(EOR−GMA)は、組成物中、1〜10重量%含量で含まれたことを特徴とする、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
【請求項2】
前記コポリエーテルエステルエラストマー樹脂は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体、低級脂肪族ジオール、及びポリアルキレンオキシドを溶融重合した後、生成物を固相重合させて収得された樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
【請求項3】
前記コポリエーテルエステルエラストマー樹脂は、組成物中、60〜88wt%であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
【請求項4】
前記コポリエーテルエステルエラストマー樹脂は、メルトフローインデックス(MFI)が1〜10g/10min(230℃、2.16kg)であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
【請求項5】
前記コポリエーテルエステルエラストマー樹脂は、ショア(shore)硬度が35〜50Dである樹脂であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
【請求項6】
前記コポリエーテルエステルエラストマー樹脂は、数平均分子量(Mn)が600〜3,000g/molであるポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールを使用して収得されたことを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
【請求項7】
前記コポリエーテルエステルエラストマー樹脂は、数平均分子量(Mn)が2,000〜3,000g/molであり、末端がエチレンオキシドでキャッピング(capping)されたポリプロピレングリコールを使用して収得されたことを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリアルキレンジカルボキシレート系樹脂は、芳香族ジカルボン酸と脂肪族低級ジオールを溶融重合した後、生成物を固相重合させて収得された樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリアルキレンジカルボキシレート系樹脂は、組成物中、10〜30wt%であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
【請求項10】
前記ポリアルキレンジカルボキシレート系樹脂は、メルトフローインデックス(MFI)が1〜5g/10min(250℃、2.16kg)であることを特徴とする、請求項1、8又は9のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリアルキレンジカルボキシレート系樹脂は、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、及びポリトリメチレンテレフタレートの中から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1、8又は9のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
【請求項12】
前記グリシジル基変性エチレン−オクテン系共重合体(EOR−GMA)は、組成物中、2〜10wt%であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
【請求項13】
前記グリシジル基変性エチレン−オクテン系共重合体(EOR−GMA)は、グリシジルメタクリレートでグラフトさせて変性させたエチレン−オクテン系共重合体であることを特徴とする、請求項1又は12に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
【請求項14】
前記グリシジルメタクリレートは、グラフト含量が8〜20wt%であることを特徴とする、請求項13に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
【請求項15】
前記熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物は、熱老化防止剤を、組成物中、1〜5wt%の範囲内で含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
【請求項16】
前記熱老化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ジフェニルアミン系酸化防止剤、金属錯化合物、酸化防止剤及びヒンダードアミン系光安定剤からなる群から1種以上選択されたことを特徴とする、請求項15に記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物。
【請求項17】
請求項1による熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物を用いて製造された成形品。
【請求項18】
前記成形品は、ブロー成形または押出成形によって収得されたことを特徴とする、請求項17に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物及びそれを含む成形品に係り、より詳細には、グリシジル基変性エチレン−オクテン系共重合体(EOR−GMA)を鎖延長/耐加水分解兼用剤として含めることによって、柔軟性と弾性、耐熱性、耐熱老化性、耐加水分解性、及び耐疲労特性に優れ、特に、ブロー(blow)成形性が向上し、ゲル化物がなく、成形作業時に臭いを誘発する物質を著しく減少させて、自動車、電気、工業分野の押出、ブロー成形に適用することができる熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物及びそれを含む成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性ポリエステルエラストマー(thermoplastic polyetherester elastomer、以下、‘TPEE’という)は、耐熱、耐薬品、寸法安定性、柔軟性などに優れて、電気、電子、自動車、産業、及び各種精密部品などに使われてきた。近年、自動車分野では軽量化などによりプラスチック化が進行しており、TPEEが、ブローイング(blowing)成形品としてエアダクト(air duct)、等速ジョイントブーツ、ラックアンドピニオンブーツ(rack&pinion boots)及びベローズ(bellows)などに採択されて使われている。
【0003】
TPEEは、低温衝撃特性に優れ、耐油性、耐化学性、機械的特性に優れて、電気、電子、自動車、産業分野で広く使われており、熱可塑性ウレタンエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマーと共にエンジニアリング系統の部品に使用される弾性体である。前記TPEEは、ポリエーテルエステル系のブロック共重合体樹脂組成物が代表的であり、主に溶融縮重合工程によって製造される。
【0004】
特に、自動車用エアダクト、等速ジョイントブーツ、各種ベローズ(bellows)などのような部品の場合、TPEEの溶融状態でブローイングを通じて生産されるので、溶融状態で最適の溶融粘度(melt viscosity)と溶融張力(melt tension)を有しなければならず、ブローイングされる間に、成形品の厚さ分布が一定であるパリソン(parison)性を有しなければならないので、通常、溶融重合で得られたTPEEベース樹脂の反応押出を通じて製造されることが一般的に知られている。
【0005】
一般のTPEEは、溶融状態で低い溶融粘度、溶融張力のため、ブローイングを行うことができないため、溶融重縮合で製造時に、十分に高い溶融粘度を有する重合体を得るのに限界がある。また、時間をかけて溶融重縮合法で製造するとしても、重合物の物性が劣化する場合が多かった。そこで、TPEEの溶融粘度を高めるための多くの試みが従来からなされてきた。特許文献1には、溶融重合によって得られたTPEEに対して、固相重合によって高重合度化する固相重縮合方法について開示されている。得られた樹脂は溶融粘度の滞留時間依存性が大きく、成形後に再び成形をする場合、成形条件が大幅に変わるため、調整を必要とするという問題があった。
【0006】
また、架橋剤や鎖延長剤を配合することによって、ブロー成形が可能な溶融粘度まで引き上げる試みもなされた。鎖伝達剤として、イソシアネート系を使用する場合、イソシアネートと水分との反応性が速すぎるため、反応押出時に反応制御が容易でなく、液状であるため、取り扱い及び保管が容易でなく、水分と反応して反応性が低下することがあり、反応押出時、ロット別物性のばらつきを調節するのが容易でない(特許文献2〜5参照)。
【0007】
また、カルボジイミド化合物(分子内にN=C=N−の構造を2つ以上有するポリカルボジイミド化合物を称する)を使用する場合、高い溶融粘度とパリソン(parison)安定性を提供するためには、高価のポリカルボジイミド化合物を多量に使用しなければならず、特に、ポリエステル樹脂とイミドグループ間の反応押出による鎖延長時、揮発性有機化合物の含量が高いため、成形作業時、特有の臭いによって作業環境の面において適していない(特許文献6参照)。
【0008】
また、エポキシ樹脂を使用する場合、エポキシ当量及び官能基の数によって反応性の程度の差が大きく、樹脂内にエポキシ樹脂の分散の問題、保管による水分の影響など、反応性及び取り扱いが容易でない(特許文献7〜10参照)。
【0009】
さらに、オキサゾリン化合物を使用する場合、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂、カルボジイミド化合物に比べて反応性が劣るため、分子量の向上に寄与する効果が低下することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】日本公開特許昭49−13297号公報
【特許文献2】日本公開特許昭52−121699号
【特許文献3】日本公開特許昭57−78413号
【特許文献4】日本公開特許第2005−325220号
【特許文献5】米国特許第5,733,986号
【特許文献6】日本公開特許第2011−94000号
【特許文献7】日本公開特許平11−323110号
【特許文献8】日本公開特許第2000−239354号
【特許文献9】日本公開特許第2000−355650号
【特許文献10】日本公開特許第2001−247752号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明者らが鋭意研究を続けた結果、本発明は、優れた機械的物性、耐熱老化性、耐久性を有し、最適のブロー成形性を有するための溶融粘度の向上、パリソン安定性、及びゲル化物がなく、成形作業中に樹脂組成物の臭い誘発物質を低減した熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、コポリエーテルエステルエラストマー樹脂、ポリアルキレンジカルボキシレート系樹脂、及びグリシジル基変性エチレン−オクテン系共重合体(EOR−GMA)を含んで構成され、前記グリシジル基変性エチレン−オクテン系共重合体(EOR−GMA)は、組成物中、1重量%を超える含量で含まれたことを特徴とする熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物を提供する。
【0013】
また、本発明によれば、上述した熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物を用いて製造された成形品を提供する。
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明では、特定の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂に特定の鎖伝達/耐加水分解兼用剤の結合を提供することに技術的特徴を有する。参考に、本発明で使用する用語、「鎖延長/耐加水分解兼用剤」は、特に特定しない限り、鎖延長の役割と耐加水分解の役割を共に提供することができる添加剤のことをいう。
【0016】
具体例として、本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物は、コポリエーテルエステルエラストマー樹脂、ポリアルキレンジカルボキシレート系樹脂、及び鎖伝達/耐加水分解兼用剤としてグリシジル基変性エチレン−オクテン系共重合体(EOR−GMA)を含んで構成されたものであってもよい。
【0017】
前記コポリエーテルエステルエラストマー樹脂は、一例として、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体、低級脂肪族ジオール、及びポリアルキレンオキシドを溶融重合した後、生成物を固相重合させて収得することができる。具体例として、前記樹脂は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体と脂肪族ジオール(diol)から形成される硬質分画とポリアルキレンオキシドを主成分とする軟質分画のランダム共重合体である。
【0018】
このように収得されたコポリエーテルエステルエラストマー樹脂を、組成物中、60〜88wt%、65〜88wt%、或いは65〜85wt%含む。前記範囲内で、自動車のブロー用途に適した物性、長期耐久信頼性、及び成形性を具現することができる。
【0019】
前記芳香族ジカルボン酸は、一例として、テレフタル酸(terephthalic acid、TPA)、イソフタル酸(isophthalic acid、IPA)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(2,6−naphthalene dicarboxylic acid、2,6−NDCA)、1,5−ナフタレンジカルボン酸(1,5−naphthalene dicarboxylic acid、1,5−NDCA)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(1,4−cyclohexane dicarboxylic acid、1,4−CHDA)とジアシッドがジメチル基で置換された芳香族ジカルボキシレート(aromatic dicarboxylate)であるジメチルテレフタレート(dimethyl terephthalate、DMT)、ジメチルイソフタレート(dimethyl isophthalate、DMI)、2,6−ジメチルナフタレンジカルボキシレート(2,6−dimethyl naphthalene dicarboxylate、2,6−NDC)、ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート(dimethyl 1,4−cyclohexanedicarboxylate、DMCD)、又はこれらの混合物を使用することができ、具体例として、DMTを使用することができる。
【0020】
前記芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体は、一例として、コポリエーテルエステルエラストマー樹脂総100重量%に対して40〜70wt%、45〜70wt%、或いは45〜65wt%の範囲内であることが、反応バランスを考慮する時に好ましい。
【0021】
また、前記脂肪族ジオールは、一例として、数平均分子量(Mn)300g/mol以下のジオール、すなわち、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール(1,4−butanediol、1,4−BG)、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,4−Cyclohexanedimethanol、1,4−CHDM)の中から1種以上を使用することができ、具体例として、1,4−ブタンジオールを使用することができる。
【0022】
前記脂肪族ジオールは、20〜40wt%、25〜40wt%、或いは25〜35wt%を使用することが、反応バランスを考慮する時に好ましい。
【0023】
前記ポリアルキレンオキシドは、軟質分画を構成する単位であって、脂肪族ポリエーテルを構成成分とすることができる。
【0024】
一例として、ポリオキシエチレングリコール(polyoxyethylene glycol)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol)、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(poly(tetramethylene ether)glycol、PTMEG)、ポリオキシヘキサメチレングリコール(polyoxyhexamethylene glycol)、エチレンオキシド(ethylene oxide)とプロピレンオキシド(propylene oxide)の共重合体、ポリプロピレンオキシドグリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)の共重合体の中から1種以上を使用することができ、具体例として、PTMEGを使用することができ、特に、数平均分子量(Mn)が600〜3,000g/mol、1,000〜2,500g/mol、或いは1,500〜2,200g/molであるPTMEGを使用することができる。
【0025】
前記ポリアルキレンオキシドは、樹脂中、40〜70wt%、45〜70wt%、或いは45〜65wt%で使用することが、反応バランスを考慮する時に好ましい。
【0026】
前記コポリエーテルエステルエラストマー樹脂には添加剤が含まれてもよく、一例として、分岐剤を使用することによってエラストマー樹脂の溶融粘度及び溶融張力を高めることができる。
【0027】
前記分岐剤は、これに限定するものではないが、グリセロール(glycerol)、ペンタエリスリトール(pentaerythritol)、無水トリメリット酸(trimellitic anhydride)、トリメリット酸(trimellitic acid)、トリメチロールプロパン(trimethylol propane)、ネオペンチルグリコール(neopentyl glycol)の中から1種以上を使用することができ、具体例としては、無水トリメリット酸を使用することができる。
【0028】
前記分岐剤は、エラストマー樹脂中、0.05〜0.1wt%、0.05〜0.09wt%、或いは0.06〜0.09wt%含量であることが、溶融粘度を上昇させることによって、エラストマー樹脂の溶融粘度を調節して、結果的に溶融重合時に固有粘度を調節するのに容易である。
【0029】
本発明の前記コポリエーテルエステルエラストマー樹脂は、一例として、溶融縮重合した後、固相重合して収得することができる。
【0030】
具体例として、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、ポリアルキレンオキシドを、チタニウムブトキシド(titaniumbutoxide、TBT)触媒下に、140〜215℃で、約120分間、エステル交換反応によってBHBT(bis(4−hydroxy)butyl terephthalate)オリゴマーを生成した後、TBT触媒を再投入し、溶融重縮合反応を、215〜245℃で、120分間、760torrから0.3torrまで段階的に減圧しながら実施することができる。
【0031】
前記溶融重縮合反応は、ASTM D−1238法にしたがって、230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローインデックス(MFI)が20g/10minとなるまで行うことができる。反応終結後、窒素圧で反応器内から吐出して、ストランドのペレタイジングを通じてペレット(pellet)化することができる。
【0032】
その後、前記ペレットを、固相重合反応器、或いは回転可能な真空乾燥機で140〜200℃の温度範囲で、約10〜24時間にわたって、高真空下、窒素などの不活性気流下に固相重合を行うことができる。
【0033】
前記固相重合は、ASTM D−1238法にしたがって、230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローインデックス(MFI)が10g/10min以下、1〜10g/10min(230℃、2.16kg)、或いは3〜8g/10min(230℃、2.16kg)となるまで高粘度化することができる。参考に、前記メルトフローインデックスが10g/10minを超える場合には、後述する鎖伝達/耐加水分解兼用剤が過量に必要となることがあり、これによって、反応押出中、グリシジル基が残留しうるため、品質の不均一及び成形時に問題点を引き起こすことがある。
【0034】
前記コポリエーテルエステルエラストマー樹脂は、具体例として、数平均分子量(Mn)が600〜3,000g/molであるポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールを使用して収得されたものであってもよい。
【0035】
他の具体例として、前記コポリエーテルエステルエラストマー樹脂は、数平均分子量(Mn)が2,000〜3,000g/molであり、末端がエチレンオキシドでキャッピング(capping)されたポリプロピレングリコールを使用して収得されたものであってもよい。
【0036】
前記コポリエーテルエステルエラストマー樹脂の硬度は、ショア硬度−D(shore D)で表し、ポリアルキレンオキシドの含量によって硬度が決定され得る。ショア(shore)硬度が35〜50D、或いは40〜50Dとなるように、ポリアルキレンオキシドを10〜50wt%、15〜50wt%、或いは15〜45wt%を使用することができる。前記範囲内で、コポリエーテルエステルエラストマー樹脂の硬度が低いので、柔軟性が良く、樹脂自体の耐熱性及び相溶性にも優れる。
【0037】
また、前記ポリアルキレンジカルボキシレート系樹脂は、一例として、芳香族ジカルボン酸と脂肪族低級ジオールを溶融重合した後、固相重合したものであってもよい。
【0038】
具体例として、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、及びポリトリメチレンテレフタレートの中から選択された1種以上であってもよい。
【0039】
前記ポリアルキレンジカルボキシレート系樹脂は、溶融重合を通じて得られた低分子量のペレットを固相重合反応器に入れ、190〜210℃で、前記コポリエーテルエステルエラストマー樹脂の固相重合で提示したように、高真空、不活性状態下で反応させて、高分子量の樹脂を収得することができる。
【0040】
前記ポリアルキレンジカルボキシレート系樹脂は、ASTM D−1238法にしたがって、250℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローインデックス(MFI)が1〜5g/10min、或いは3〜5g/10minとなるまで高粘度化する。前記メルトフローインデックスが5g/10minを超えると、後述する鎖伝達/耐加水分解兼用剤が過量に必要となることがあり、これによって、反応押出中、グリシジル基が残留しうるため、品質の不均一、成形時における問題点、及び反応押出に長時間を必要とするなどの問題が生じうる。参考に、3g/10min未満であると、鎖伝達/耐加水分解兼用剤と反応するポリアルキレンジカルボキシレート系樹脂の末端カルボキシル基とヒドロキシル基が足りなくて、反応押出中、グリシジル基が残留することがあり、ブロー成形時に一定の生産品質を得ることができない。
【0041】
このように収得されたポリアルキレンジカルボキシレート系樹脂を、組成物中、10〜30wt%、12〜30wt%、或いは12〜28wt%含むことができる。前記範囲内で、最終樹脂の屈曲特性をはじめとして耐熱性、長期耐久信頼性などに優れた効果を有する。
【0042】
前記グリシジル基変性エチレン−オクテン系共重合体(EOR−GMA)は、溶融粘度と溶融張力を増大させ、反応押出時に鎖を延長(分子量を増加)させ、臭いの誘発を改善する役割を果たすもので、一例として、グリシジルメタクリレートでグラフトさせて変性させたエチレン−オクテン系共重合体であってもよい。前記エチレン−オクテン系共重合体のグラフト率、すなわち、グリシジルメタクリレートのグラフト含量は、8〜20wt%、8〜15wt%、或いは8〜10wt%であってもよい。
【0043】
前記グリシジル基変性エチレン−オクテン系共重合体は、組成物中、1wt%超過、2〜10wt%、2〜8wt%、或いは2〜5wt%であってもよい。前記範囲内で、高い溶融粘度でブロー、押出に適した最適のメルトフローインデックスを提供することができ、適切な溶融粘度によりメルトフラクチャー(melt fracture)などのような成形問題が発生せず、残存グリシジル基によるロット(lot)別ばらつきがなく、滞留時、成形が均一であり、長期耐久信頼性、中空成形品の外観、及びダイスウェル(dies well)、熱安定性に優れる。
【0044】
また、前記グリシジル基変性エチレン−オクテン系共重合体(EOR−GMA)は、メルトフローインデックス(MFI)が1〜5g/10min(190℃、2.16kg)である樹脂、その誘導体、またはこれらの混合物であってもよい。
【0045】
本発明による熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物は、自動車、電気、電子、産業用ブロー、押出用途を考慮する時、樹脂自体の長期耐熱老化性だけでなく、様々な熱安定剤、酸化防止剤などによる長期高温耐熱老化性を付与する目的で、熱老化防止剤を、組成物中、1〜5wt%、1〜4wt%、或いは2〜4wt%の範囲内でさらに含むことができる。
【0046】
前記熱老化防止剤は、一例として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ジフェニルアミン系酸化防止剤、金属錯化合物、酸化防止剤及びヒンダードアミン系光安定剤からなる群から1種以上選択されたものであってもよい。
【0047】
具体例として、前記熱老化防止剤は、1次酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系の一種であるN,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド))(N,N’−hexane−1,6−diylbis(3−(3、5−di−tert−butyl−4−hydroxyphenylpropionamide))を使用することができ、2次酸化防止剤兼長期耐熱老化安定剤として、ジフェニルアミン系安定剤の一種である4,4'−ビス(α、α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(4,4'−bis(α、α−dimethylbenzyl)diphenylamine)を使用することができる。
【0048】
また、長時間耐熱老化安定補助剤として、高分子量のヒンダードアミン系光安定剤の一種であるポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]−1,6−ヘキサンジイル[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ](poly[[6−(1,1,3,3−tetramethylbutyl)amino]−1,3,5−triazine−2,4−diyl][(2,2,6,6−tetramethyl−4−piperidinyl)imino]−1,6−hexanediyl[(2,2,6,6−tetramethyl−4−piperidinyl)imino])、またはニッケルN,N−ジブチルジチオカルバメートを使用することができる。
【0049】
上述した添加剤は、単独で使用する時よりも併用して使用する時に、シナジー効果により素材の長期耐熱老化性、耐久性向上に寄与することができ、その他の用途に応じて、難燃剤、潤滑剤、加水分解安定剤、金属不活性剤、滑剤、顔料、着色剤、帯電防止剤、伝導性付与剤、EMI遮蔽剤、磁性付与剤、架橋剤、抗菌剤、加工助剤、耐摩擦摩耗剤、カーボンブラックマスターバッチのうち一つ以上の添加剤を、物性に悪影響を及ぼさない範囲内で使用することができる。
【0050】
また、本発明では、上述した熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物を用いて製造された成形品を提供することができる。前記成形品は、ブロー成形、または押出成形によって収得されたものであってもよい。
【0051】
前記成形品は、自動車、電気、電子、産業用ブロー、押出用途であって、具体例として、自動車等速ジョイントブーツ、エアダクト、ラックアンドピニオン及びベローズなどのようなブロー成形品であってもよく、或いは、ケーブル被覆材、ワイヤー被覆材、チューブ、シート、ホース及びフィルムなどのような押出成形品であってもよい。
【0052】
前記熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物を用いた成形品の製造方法の一例は、次の通りである。
【0053】
上述した方式でコポリエーテルエステルエラストマー樹脂とポリアルキレンジカルボキシレート系樹脂をそれぞれ準備した後、二軸押出機に投入し、鎖伝達/耐加水分解兼用剤としてグリシジル基変性エチレン−オクテン系共重合体(EOR−GMA)、及び必要に応じて、熱老化安定剤を共に投入し、押出させる。結果物は、成形性、物性及び外観に優れ、ゲル(gel)化物がなく、作業時に臭いを誘発する物質が低減する。
【発明の効果】
【0054】
本発明による熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物は、高い溶融粘度、パリソン安定性、長期耐熱老化性、耐加水分解性、外観に優れ、ゲル化物がなく、作業時に臭いを誘発する物質を著しく減少させることによって、自動車アンダフードのエアダクト、等速ジョイントブーツ、ベローズなどのブロー部品、及び電気、電子、産業用フィルム、シート、チューブ、ホース、ワイヤーハーネスなどの押出部品に使用するのに適した効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であるということは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然なものである。
【0056】
[実施例]
【0057】
[樹脂の製造例]
【0058】
1.TPEE−A、TPEE−B樹脂の製造
【0059】
DMT 25〜50wt%、1,4−ブタンジオール15〜30wt%、数平均分子量が1,000〜2,000g/molであるPTMEG 25〜50wt%をエステル交換(ester interchange)反応器に入れ、TBT触媒を0.03wt%加えた。140℃から215℃に120分間昇温させ、215℃を維持しながら60分間さらに反応させ、反応率(反応流出物であるメタノールの量を反応率に換算した値)が90%以上である時点に反応を終結させてオリゴマーを収得した。
【0060】
その後、製造されたオリゴマーを重縮合(polycondensation)反応器に移し、TBT触媒0.08wt%、鎖延長剤であるTMA 0.03〜0.04wt%、及びヒンダードフェノール系酸化防止剤を0.14〜0.15wt%、芳香族アミン系酸化防止剤または硫黄系安定剤を0.15〜0.2wt%投入し、215℃から245℃に120分間昇温させながら、760torrから0.3torrまで1時間間減圧しながら溶融重縮合反応を行った後、0.3torr以下の高真空条件で1時間間さらに溶融重縮合を行った。
【0061】
撹拌機にかかるトルク(torque)が所望のトルクに到達した時に反応を終結し、窒素圧を用いて吐出し、ストランド化、冷却後にペレット(pellet)化した。得られた樹脂TPEE−BのASTM D−1238法にしたがって測定したメルトフローインデックス(MFI)は、230℃、2.16kg荷重で15g/10minであった。
【0062】
溶融縮重合によって収得されたペレットを回転反応器に投入し、圧力を0.3torrに減圧した後、170〜180℃の温度で約15〜20時間加熱、回転させながら固相重合を実施した。
【0063】
固相重合を通じて得られたTPEE−Aの融点は205℃、ショア硬度は40D、ASTM D−1238法にしがたって測定したメルトフローインデックス(MFI)は、230℃、2.16kg荷重で5g/10minであった。
【0064】
2.PBT−A樹脂の製造
【0065】
DMT 60wt%、1,4−ブタンジオール40wt%をエステル交換(ester interchange)反応器に入れ、TBT触媒0.02wt%を加えた。140℃から215℃に120分間昇温させ、215℃を維持しながら60分間さらに反応させ、反応率(反応流出物であるメタノールの量を反応率に換算する時)が90%以上である時点に反応を終結させてオリゴマーを得た。
【0066】
その後、製造されたオリゴマーを重縮合(polycondensation)反応器に移し、TBT触媒0.03wt%、少量の酢酸マグネシウム、ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.02wt%、硫黄系安定剤0.03wt%を投入して、215℃から250℃に60分間昇温させながら、760torrから0.3torrまで1時間間減圧しながら溶融重縮合し、追加的に1時間間0.3torr以下の高真空条件下で溶融重縮合反応を行った。
【0067】
撹拌機にかかるトルク(torque)が所望のトルク値に到達する時に反応を終結し、窒素圧を用いて吐出してストランド化し、冷却後にペレット(pellet)化した。このように得られたペレットを回転可能な反応容器に投入し、反応器内の圧力を0.3torrに減圧した後、200〜215℃の温度で約8〜12時間加熱、回転させながら固相重合を実施した。
【0068】
固相重合を通じて得られたPBT樹脂の融点は225℃、ASTM D−1238法にしたがって測定したメルトフローインデックス(MFI)は250℃、2.16kg荷重で3g/10minであった(以下、PBT−Aという)。
【0069】
[コンパウンディング]
【0070】
本発明による熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物は、上述したTPEEとPBTに鎖延長/耐加水分解兼用剤(または鎖延長剤)、酸化防止剤、光安定剤、カーボンブラックマスターバッチなどの添加剤を混合した後、二軸押出機を用いて溶融、混合させながら反応押出した。ペレタイザー(pelletizer)でペレット(pellet)を得た後、除湿乾燥機または熱風乾燥機で十分に乾燥した後、射出加工して物性を測定した。
【0071】
[実施例及び比較例]
【0072】
下記の表1にそれぞれ記載された樹脂及び添加剤を、その記載された含量によって混合した後、口径40mm、L/D=40の二軸押出機を用いて、230〜260℃で、投入量40kg/h及びスクリュー速度250rpmで反応押出し、押出された溶融物を冷却槽を通過させて冷却させた後、ペレット化して熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物をペレット状に製造した。
【0073】
製造されたペレット状の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物を、射出機を用いて試験片として製造し、物性を下記の方法で測定した後、下記の表1に示した。
【0074】
*表面硬度:ASTM D2240の方法によりショアDタイプで硬度を測定した。
【0075】
*メルトインデックス:ASTM D1238に準拠して、230℃、5kg荷重で4分滞留後に測定した。
【0076】
*引張強度及び伸び率:DIN 53504−85 STAB 2に準拠して射出成形した試片を常温で測定し、破断点で引張強度(kg/cm2)と引張伸び率(%)を測定した。
【0077】
*長期耐熱老化性:空気循環及び回転が行われる150℃のギアオーブンに、DIN 53504−85 STAB 2に準拠して射出成形した試片を入れた後、300時間経過した後に取り出して、約24時間常温で放置した後、引張強度、伸び率を測定した。
【0078】
*ブロー成形性:ブロー成形を実施しながら、パリソンのドローダウン(垂れ下り)及び厚さ均一性などを肉眼で観察した後、総合的に判断して、◎(非常に優れ)、○(良い)、△(ドローダウン現象があるが成形可能)、×(ドローダウンまたは機械過負荷で成形不可)と判定した。
【0079】
*揮発性有機化合物(TVOC)の含量:樹脂組成物サンプルをGC/MS機器に入れ、240℃、10分間揮発性有機化合物を蒸発させて定量分析を行った。
【0080】
*ゲル(gel)化物の発生有無:230〜250℃で、Tダイ押出を通じた溶融樹脂を約50〜100μmの厚さのフィルム状に成形し、フィルム表面のゲル化物の発生程度を、○(ゲル化物が全く無い)、△(ゲル化物が少し発生)、×(ゲル化物が多い)を基準にして判定した。
【0081】
【表1】
【0082】
(1)TPEE−A:溶融重合/固相重合を経たポリエーテルエステルエラストマー、硬度40D、融点205℃、メルトインデックス5g/10min(230℃、2.16kg)、製造社:LG化学
【0083】
(2)PBT−A:溶融重合/固相重合を経たポリブチレンテレフタレート樹脂、メルトインデックス3g/10min(250℃、2.16kg)、製造社:LG化学
【0084】
(3)EOR−GMA:グリシジルメタクリレート(GMA:8〜10wt%)グラフトされたエチレン−オクテン共重合体樹脂、製造社:Shenyang Ketong Plastics Co.,Ltd.
【0085】
(4)E/VA/GMA:エチレン−ビニルアセテート−グリシジルメタクリレート(GMA含量:12%)共重合体樹脂、製造社:住友化学
【0086】
(5)CE−1:鎖延長剤(スチレン−アクリレートコポリマー)、製造社:BASF
【0087】
(6)CE−2:鎖延長剤(ポリカルボジイミド化合物)、製造社:日清紡ケミカル
【0088】
(7)CE−3:鎖延長剤(パラ−フェニレンジイソシアネート)、製造社:デュポン
【0089】
(8)その他の添加剤:
−熱安定剤、酸化防止剤(1wt%):N,N−へキサン−1,6−ジイルビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)(製造社:BASF)、4,4'−ビス(α、α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(製造社:Crompton)、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ)]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]−1,6−ヘキサンジイル−[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ](製造社:BASF)
−金属系長期耐熱老化安定剤(1wt%):ニッケルN,N−ジブチルジチオカルバメート(製造社:Ouchi Shinko Chemical Industrial)
−カーボンブラックマスターバッチ(1wt%):KEYFLEX BT M−40C(製造社:LG化学)
【0090】
上記の表1から分かるように、実施例1ないし2の熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー樹脂組成物は、ブロー成形特性(溶融粘度及びパリソン安定性)に優れ、揮発性有機化合物の含量が少なく、成形時にゲル(gel)が発生しない特性を確認することができた。
【0091】
一方、比較例1及び7は、ブロー成形のための溶融粘度が低く、パリソン安定性が大きく低下するため、ブロー成形用に適していない。特に、E/VA/GMA 5%を含んだ比較例1の場合、実施例1ないし2に比べて長期耐熱性(引張強度及び伸び率)が劣化して、自動車の耐久品質において問題となる虞がある。
【0092】
また、E/VA/GMAを含み、別途の鎖延長剤を使用していない比較例2は、長期耐熱性(引張伸び率)、ブロー成形性などが不良であった。
【0093】
また、別途の鎖延長剤を使用せずに、スチレンアクリレートコポリマーを鎖延長剤として使用した比較例3は、ゲル化物の発生によって均一な外観品質を確保できなかった。
【0094】
また、パラ−フェニレンジイソシアネートを鎖延長剤として使用した比較例5は、他の鎖延長剤に比べて反応性が劣化して十分な溶融粘度を確保しにくい。
【0095】
ポリカルボジイミド化合物を鎖延長剤として使用した比較例4及び6の場合、特に、揮発性有機化合物(TVOC)の含量が高いため、成形作業時、臭いが発生して作業環境の面において問題となることを確認することができる。
【0096】
参考に、コポリエーテルエステルエラストマー樹脂の重合方式別結果を追加実験した。
【0097】
<追加実験例1>
【0098】
実施例1において、TPEE−A 74wt%の代わりにTPEE−B 76wt%とし、EOR−GMA 3wt%の代わりに1wt%としたことを除いては、実施例1と同一の実験を繰り返した。
【0099】
参考に、前記TPEE−Bとして、溶融重合を通じて製造されたポリエーテルエステルエラストマー、硬度40D、融点195℃、メルトインデックス15g/10min(230℃、2.16kg)、製造社:LG化学である製品を使用した。
【0100】
その結果、ショア硬度は47.5Dで、メルトインデックスは11.3g/10minであった。引張強度は335kg/cm2、引張伸び率は720%、そして、ブロー成形性は×と判定された。揮発性有機化合物の含量は44ppmで、ゲル化(gel)は発生していないことと観察された。