【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、コポリエーテルエステルエラストマー樹脂、ポリアルキレンジカルボキシレート系樹脂、及びグリシジル基変性エチレン−オクテン系共重合体(EOR−GMA)を含んで構成され、前記グリシジル基変性エチレン−オクテン系共重合体(EOR−GMA)は、組成物中、1重量%を超える含量で含まれたことを特徴とする熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物を提供する。
【0013】
また、本発明によれば、上述した熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物を用いて製造された成形品を提供する。
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明では、特定の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂に特定の鎖伝達/耐加水分解兼用剤の結合を提供することに技術的特徴を有する。参考に、本発明で使用する用語、「鎖延長/耐加水分解兼用剤」は、特に特定しない限り、鎖延長の役割と耐加水分解の役割を共に提供することができる添加剤のことをいう。
【0016】
具体例として、本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物は、コポリエーテルエステルエラストマー樹脂、ポリアルキレンジカルボキシレート系樹脂、及び鎖伝達/耐加水分解兼用剤としてグリシジル基変性エチレン−オクテン系共重合体(EOR−GMA)を含んで構成されたものであってもよい。
【0017】
前記コポリエーテルエステルエラストマー樹脂は、一例として、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体、低級脂肪族ジオール、及びポリアルキレンオキシドを溶融重合した後、生成物を固相重合させて収得することができる。具体例として、前記樹脂は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体と脂肪族ジオール(diol)から形成される硬質分画とポリアルキレンオキシドを主成分とする軟質分画のランダム共重合体である。
【0018】
このように収得されたコポリエーテルエステルエラストマー樹脂を、組成物中、60〜88wt%、65〜88wt%、或いは65〜85wt%含む。前記範囲内で、自動車のブロー用途に適した物性、長期耐久信頼性、及び成形性を具現することができる。
【0019】
前記芳香族ジカルボン酸は、一例として、テレフタル酸(terephthalic acid、TPA)、イソフタル酸(isophthalic acid、IPA)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(2,6−naphthalene dicarboxylic acid、2,6−NDCA)、1,5−ナフタレンジカルボン酸(1,5−naphthalene dicarboxylic acid、1,5−NDCA)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(1,4−cyclohexane dicarboxylic acid、1,4−CHDA)とジアシッドがジメチル基で置換された芳香族ジカルボキシレート(aromatic dicarboxylate)であるジメチルテレフタレート(dimethyl terephthalate、DMT)、ジメチルイソフタレート(dimethyl isophthalate、DMI)、2,6−ジメチルナフタレンジカルボキシレート(2,6−dimethyl naphthalene dicarboxylate、2,6−NDC)、ジメチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート(dimethyl 1,4−cyclohexanedicarboxylate、DMCD)、又はこれらの混合物を使用することができ、具体例として、DMTを使用することができる。
【0020】
前記芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体は、一例として、コポリエーテルエステルエラストマー樹脂総100重量%に対して40〜70wt%、45〜70wt%、或いは45〜65wt%の範囲内であることが、反応バランスを考慮する時に好ましい。
【0021】
また、前記脂肪族ジオールは、一例として、数平均分子量(Mn)300g/mol以下のジオール、すなわち、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール(1,4−butanediol、1,4−BG)、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,4−Cyclohexanedimethanol、1,4−CHDM)の中から1種以上を使用することができ、具体例として、1,4−ブタンジオールを使用することができる。
【0022】
前記脂肪族ジオールは、20〜40wt%、25〜40wt%、或いは25〜35wt%を使用することが、反応バランスを考慮する時に好ましい。
【0023】
前記ポリアルキレンオキシドは、軟質分画を構成する単位であって、脂肪族ポリエーテルを構成成分とすることができる。
【0024】
一例として、ポリオキシエチレングリコール(polyoxyethylene glycol)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol)、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(poly(tetramethylene ether)glycol、PTMEG)、ポリオキシヘキサメチレングリコール(polyoxyhexamethylene glycol)、エチレンオキシド(ethylene oxide)とプロピレンオキシド(propylene oxide)の共重合体、ポリプロピレンオキシドグリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)の共重合体の中から1種以上を使用することができ、具体例として、PTMEGを使用することができ、特に、数平均分子量(Mn)が600〜3,000g/mol、1,000〜2,500g/mol、或いは1,500〜2,200g/molであるPTMEGを使用することができる。
【0025】
前記ポリアルキレンオキシドは、樹脂中、40〜70wt%、45〜70wt%、或いは45〜65wt%で使用することが、反応バランスを考慮する時に好ましい。
【0026】
前記コポリエーテルエステルエラストマー樹脂には添加剤が含まれてもよく、一例として、分岐剤を使用することによってエラストマー樹脂の溶融粘度及び溶融張力を高めることができる。
【0027】
前記分岐剤は、これに限定するものではないが、グリセロール(glycerol)、ペンタエリスリトール(pentaerythritol)、無水トリメリット酸(trimellitic anhydride)、トリメリット酸(trimellitic acid)、トリメチロールプロパン(trimethylol propane)、ネオペンチルグリコール(neopentyl glycol)の中から1種以上を使用することができ、具体例としては、無水トリメリット酸を使用することができる。
【0028】
前記分岐剤は、エラストマー樹脂中、0.05〜0.1wt%、0.05〜0.09wt%、或いは0.06〜0.09wt%含量であることが、溶融粘度を上昇させることによって、エラストマー樹脂の溶融粘度を調節して、結果的に溶融重合時に固有粘度を調節するのに容易である。
【0029】
本発明の前記コポリエーテルエステルエラストマー樹脂は、一例として、溶融縮重合した後、固相重合して収得することができる。
【0030】
具体例として、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、ポリアルキレンオキシドを、チタニウムブトキシド(titaniumbutoxide、TBT)触媒下に、140〜215℃で、約120分間、エステル交換反応によってBHBT(bis(4−hydroxy)butyl terephthalate)オリゴマーを生成した後、TBT触媒を再投入し、溶融重縮合反応を、215〜245℃で、120分間、760torrから0.3torrまで段階的に減圧しながら実施することができる。
【0031】
前記溶融重縮合反応は、ASTM D−1238法にしたがって、230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローインデックス(MFI)が20g/10minとなるまで行うことができる。反応終結後、窒素圧で反応器内から吐出して、ストランドのペレタイジングを通じてペレット(pellet)化することができる。
【0032】
その後、前記ペレットを、固相重合反応器、或いは回転可能な真空乾燥機で140〜200℃の温度範囲で、約10〜24時間にわたって、高真空下、窒素などの不活性気流下に固相重合を行うことができる。
【0033】
前記固相重合は、ASTM D−1238法にしたがって、230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローインデックス(MFI)が10g/10min以下、1〜10g/10min(230℃、2.16kg)、或いは3〜8g/10min(230℃、2.16kg)となるまで高粘度化することができる。参考に、前記メルトフローインデックスが10g/10minを超える場合には、後述する鎖伝達/耐加水分解兼用剤が過量に必要となることがあり、これによって、反応押出中、グリシジル基が残留しうるため、品質の不均一及び成形時に問題点を引き起こすことがある。
【0034】
前記コポリエーテルエステルエラストマー樹脂は、具体例として、数平均分子量(Mn)が600〜3,000g/molであるポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールを使用して収得されたものであってもよい。
【0035】
他の具体例として、前記コポリエーテルエステルエラストマー樹脂は、数平均分子量(Mn)が2,000〜3,000g/molであり、末端がエチレンオキシドでキャッピング(capping)されたポリプロピレングリコールを使用して収得されたものであってもよい。
【0036】
前記コポリエーテルエステルエラストマー樹脂の硬度は、ショア硬度−D(shore D)で表し、ポリアルキレンオキシドの含量によって硬度が決定され得る。ショア(shore)硬度が35〜50D、或いは40〜50Dとなるように、ポリアルキレンオキシドを10〜50wt%、15〜50wt%、或いは15〜45wt%を使用することができる。前記範囲内で、コポリエーテルエステルエラストマー樹脂の硬度が低いので、柔軟性が良く、樹脂自体の耐熱性及び相溶性にも優れる。
【0037】
また、前記ポリアルキレンジカルボキシレート系樹脂は、一例として、芳香族ジカルボン酸と脂肪族低級ジオールを溶融重合した後、固相重合したものであってもよい。
【0038】
具体例として、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、及びポリトリメチレンテレフタレートの中から選択された1種以上であってもよい。
【0039】
前記ポリアルキレンジカルボキシレート系樹脂は、溶融重合を通じて得られた低分子量のペレットを固相重合反応器に入れ、190〜210℃で、前記コポリエーテルエステルエラストマー樹脂の固相重合で提示したように、高真空、不活性状態下で反応させて、高分子量の樹脂を収得することができる。
【0040】
前記ポリアルキレンジカルボキシレート系樹脂は、ASTM D−1238法にしたがって、250℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローインデックス(MFI)が1〜5g/10min、或いは3〜5g/10minとなるまで高粘度化する。前記メルトフローインデックスが5g/10minを超えると、後述する鎖伝達/耐加水分解兼用剤が過量に必要となることがあり、これによって、反応押出中、グリシジル基が残留しうるため、品質の不均一、成形時における問題点、及び反応押出に長時間を必要とするなどの問題が生じうる。参考に、3g/10min未満であると、鎖伝達/耐加水分解兼用剤と反応するポリアルキレンジカルボキシレート系樹脂の末端カルボキシル基とヒドロキシル基が足りなくて、反応押出中、グリシジル基が残留することがあり、ブロー成形時に一定の生産品質を得ることができない。
【0041】
このように収得されたポリアルキレンジカルボキシレート系樹脂を、組成物中、10〜30wt%、12〜30wt%、或いは12〜28wt%含むことができる。前記範囲内で、最終樹脂の屈曲特性をはじめとして耐熱性、長期耐久信頼性などに優れた効果を有する。
【0042】
前記グリシジル基変性エチレン−オクテン系共重合体(EOR−GMA)は、溶融粘度と溶融張力を増大させ、反応押出時に鎖を延長(分子量を増加)させ、臭いの誘発を改善する役割を果たすもので、一例として、グリシジルメタクリレートでグラフトさせて変性させたエチレン−オクテン系共重合体であってもよい。前記エチレン−オクテン系共重合体のグラフト率、すなわち、グリシジルメタクリレートのグラフト含量は、8〜20wt%、8〜15wt%、或いは8〜10wt%であってもよい。
【0043】
前記グリシジル基変性エチレン−オクテン系共重合体は、組成物中、1wt%超過、2〜10wt%、2〜8wt%、或いは2〜5wt%であってもよい。前記範囲内で、高い溶融粘度でブロー、押出に適した最適のメルトフローインデックスを提供することができ、適切な溶融粘度によりメルトフラクチャー(melt fracture)などのような成形問題が発生せず、残存グリシジル基によるロット(lot)別ばらつきがなく、滞留時、成形が均一であり、長期耐久信頼性、中空成形品の外観、及びダイスウェル(dies well)、熱安定性に優れる。
【0044】
また、前記グリシジル基変性エチレン−オクテン系共重合体(EOR−GMA)は、メルトフローインデックス(MFI)が1〜5g/10min(190℃、2.16kg)である樹脂、その誘導体、またはこれらの混合物であってもよい。
【0045】
本発明による熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物は、自動車、電気、電子、産業用ブロー、押出用途を考慮する時、樹脂自体の長期耐熱老化性だけでなく、様々な熱安定剤、酸化防止剤などによる長期高温耐熱老化性を付与する目的で、熱老化防止剤を、組成物中、1〜5wt%、1〜4wt%、或いは2〜4wt%の範囲内でさらに含むことができる。
【0046】
前記熱老化防止剤は、一例として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ジフェニルアミン系酸化防止剤、金属錯化合物、酸化防止剤及びヒンダードアミン系光安定剤からなる群から1種以上選択されたものであってもよい。
【0047】
具体例として、前記熱老化防止剤は、1次酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系の一種であるN,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド))(N,N’−hexane−1,6−diylbis(3−(3、5−di−tert−butyl−4−hydroxyphenylpropionamide))を使用することができ、2次酸化防止剤兼長期耐熱老化安定剤として、ジフェニルアミン系安定剤の一種である4,4'−ビス(α、α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(4,4'−bis(α、α−dimethylbenzyl)diphenylamine)を使用することができる。
【0048】
また、長時間耐熱老化安定補助剤として、高分子量のヒンダードアミン系光安定剤の一種であるポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]−1,6−ヘキサンジイル[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ](poly[[6−(1,1,3,3−tetramethylbutyl)amino]−1,3,5−triazine−2,4−diyl][(2,2,6,6−tetramethyl−4−piperidinyl)imino]−1,6−hexanediyl[(2,2,6,6−tetramethyl−4−piperidinyl)imino])、またはニッケルN,N−ジブチルジチオカルバメートを使用することができる。
【0049】
上述した添加剤は、単独で使用する時よりも併用して使用する時に、シナジー効果により素材の長期耐熱老化性、耐久性向上に寄与することができ、その他の用途に応じて、難燃剤、潤滑剤、加水分解安定剤、金属不活性剤、滑剤、顔料、着色剤、帯電防止剤、伝導性付与剤、EMI遮蔽剤、磁性付与剤、架橋剤、抗菌剤、加工助剤、耐摩擦摩耗剤、カーボンブラックマスターバッチのうち一つ以上の添加剤を、物性に悪影響を及ぼさない範囲内で使用することができる。
【0050】
また、本発明では、上述した熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物を用いて製造された成形品を提供することができる。前記成形品は、ブロー成形、または押出成形によって収得されたものであってもよい。
【0051】
前記成形品は、自動車、電気、電子、産業用ブロー、押出用途であって、具体例として、自動車等速ジョイントブーツ、エアダクト、ラックアンドピニオン及びベローズなどのようなブロー成形品であってもよく、或いは、ケーブル被覆材、ワイヤー被覆材、チューブ、シート、ホース及びフィルムなどのような押出成形品であってもよい。
【0052】
前記熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物を用いた成形品の製造方法の一例は、次の通りである。
【0053】
上述した方式でコポリエーテルエステルエラストマー樹脂とポリアルキレンジカルボキシレート系樹脂をそれぞれ準備した後、二軸押出機に投入し、鎖伝達/耐加水分解兼用剤としてグリシジル基変性エチレン−オクテン系共重合体(EOR−GMA)、及び必要に応じて、熱老化安定剤を共に投入し、押出させる。結果物は、成形性、物性及び外観に優れ、ゲル(gel)化物がなく、作業時に臭いを誘発する物質が低減する。