(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、2色干渉法を用いて大気揺らぎを自己補償でき大気揺らぎの影響(以下「大気揺らぎの問題」という)を受け難くできるとしても、2色干渉法を用いて距離(長さ)や角度(ヨーイング、ピッチング)を計測する計測装置を具現化するには以下の問題点(課題)を解決する必要がある。
【0007】
(1)2色干渉法は、大気揺らぎを自己補償できる反面、2つの測定光の測定光路長誤差が大きくなり易いという問題がある。即ち、計測したい距離Dは、2つのレーザの光学的距離L2及びL1と、空気や温度や気圧に殆ど依存しない定数であるAとにより、D=L2−A(L2−L1)で表される。これにより、2色干渉法では(L2−L1)測定の誤差がA倍となり、この係数Aが数十〜数百となる。したがって、測定光路長(L2−L1)誤差を如何に小さくするかが2色干渉法を用いた計測装置を具現化する上で重要となる。この対応策の1つとして、2色法のレーザ光源として、周波数安定度が安定した2つのレーザ光源が必要になる。これまでは2つのレーザ光源として、周波数安定度の高い光コムを第1の光源とし、第1光源の2倍の周波数を生成する第二高調波発生器(SHG)を第2の光源とする組み合わせ、又はYAGレーザを第1の光源とし、SHGを第2の光源とする組み合わせが用いられてきた。しかし、これらの組み合わせは、装置が高価であるという問題や、波長(周波数)の選択性が低く、このために、特に光コムとSHGとの組み合わせでは係数Aが大きいという問題がある(以下「周波数安定度の良い2種類のレーザ光源の問題」という)。
【0008】
(2)また、従来の2色干渉法ではダイクロイックミラーを使用して、2つの光源から出た2つのレーザ光を同軸で伝播させることで同一の光学系を経由し、これにより測定誤差が小さくなるように試みている。しかし、ダイクロイックミラーで2つの測定光を同軸上にアライメントすることは極めて難しく、アライメント誤差が光路長測長の誤差になるという問題がある。更にはダイクロイックミラーが温度ドリフト等により変形・変位すると光軸が変わってしまうので、ダイクロイックミラーを透過するレーザと、反射するレーザとを同軸上にアライメントすることは難しいという問題がある(以下、「光軸アライメントの問題」という)。
【0009】
(3)また、距離や角度を計測する計測装置を構成するには、測定対象物に取り付けられる移動反射体の移動量を精度良く測定することが必要になる。しかし、単純な位相計測では空気揺らぎにより、数周期分位相がずれてしまい、数周期のずれを読み取ることが実質的に困難である。更には、単純な位相計測では、干渉縞の山や谷の付近では移動反射体の移動方向や、大気の揺らぎによる光路長の伸縮方向が分からない。これにより、L2とL1が正確に分からないので、D=L2−A(L2−L1)の式で大きな誤差を生じる。したがって、距離や角度を計測する計測装置を構成するには、移動反射体の移動量を単に正確に計測できる以外に、移動反射体の移動方向や大気の揺らぎによる光路長の伸縮をどのように具体化するかが重要になる(以下「計測方法の具体化の問題」という)。
【0010】
以上述べた背景から、従来、2色干渉法は屈折率の補正のみに使用されており、2色干渉法を用いて距離(長さ)や角度を計測するための計測装置は未だに商品化されていないのが実状である。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、2色干渉法を用いて高精度に距離や角度を計測することができ、しかも価格的にも安価であるので、実装置として好適な2色干渉計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の2色干渉計測装置は、前記目的を達成するために、
第1波長を有する第1のレーザ光を出射する第1のレーザ光源と、
前記第1波長よりも長い第2波長を有する第2のレーザ光を出射する第2のレーザ光源と、前記第1のレーザ光源から出射された第1のレーザ光を、第1の参照光及び第1の測定光に分割し、固定反射体で反射された前記第1の参照光と測定対象物に取り付けられた移動反射体で反射された前記第1の測定光とを第1の干渉位置で合成して第1の干渉光を生成し、かつ前記第2のレーザ光源から出射された前記第2のレーザ光を、第2の参照光及び第2の測定光に分割し、前記第2の参照光を前記第1の参照光の光路を逆進させるとともに、前記第2の測定光を前記第1の測定光の光路を逆進させ、前記固定反射体で反射された前記第2の参照光と前記移動反射体で反射された前記第2の測定光とを第2の干渉位置で合成して第2の干渉光を生成する光分割合成手段と、前記第1の参照光と前記第2の参照光の光路
、及び前記第1の測定光と前記第2の測定光の光路
のいずれか一方の光路のみに配設されたウェッジプリズムと、前記第1の干渉光を受光して第1の干渉信号を検出する第1の光検出手段と、前記第2の干渉光を受光して第2の干渉信号を検出する第2の光検出手段と、を備え
、前記ウェッジプリズムから前記第1の干渉位置までの光路長
よりも、前記ウェッジプリズムから前記第2の干渉位置までの光路長
が長いことを特徴とする。
【0013】
本発明の2色干渉計測装置は、前記第1及び第2の干渉信号から前記移動反射体の移動量、移動方向及び大気揺らぎによる光路長の伸縮方向を算出して前記測定対象物の距離を演算する信号処理装置を備えたことが好ましい。
【0014】
本発明の2色干渉計測装置は、前記第1及び第2の光検出手段は、前記第1及び第2の干渉光の光軸に直交し且つ干渉縞の形成方向に所定間隔に配置された複数のフォトディテクタを有し、所定角度ずつ位相のずれた複数相からなる干渉信号を検出することが好ましい。
【0015】
以下述べる「近接」とは、2つのレーザ光がほぼ同一の大気環境を通過可能な距離を意味する。
【0016】
本発明の2色干渉計測装置によれば、2色干渉法の自己補償によって大気の揺らぎの影響を受け難くできるだけでなく、周波数安定度が10
−8より高精度で波長の異なるレーザ光を出射する2種類のレーザ光源(第1のレーザ光源、第2のレーザ光源)を用いて2光軸系の光干渉機構として構成するようにした。これにより、レーザ光源に起因する計測誤差及び光軸アライメントに起因する計測誤差を小さくできる。また、2つのレーザ光をウェッジプリズムに通過させてわずかに波面を傾け(例えば波面を1波長分以上傾け)、光軸に直交し且つ干渉縞の形成方向に所定間隔に配置された複数のフォトディテクタを有する光検出手段(第1の光検出手段、第2の光検出手段)で検出するようにしたので、移動反射体の移動方向や揺らぎ方向を把握できる。これにより、2色干渉法を用いた計測装置の計測方法を具体的に構築することができる。
【0017】
したがって、本発明の2色干渉計測装置は、従来の問題点であった「大気揺らぎの問題」、「周波数安定度の良い2種類のレーザ光源の問題」、「光軸アライメントの問題」、及び「計測方法の具体化の問題」を解決することができる。これにより、2色干渉法を用いて高精度に距離や角度を計測することができ、しかも価格的にも安価であるので、実装置として好適な2色干渉計測装置を提供することができる。
【0018】
本発明の2色干渉計測装置は、前記2光軸系の光干渉機構が少なくとも2系統の平行な光軸を形成するように設けられた光学系と、前記光学系のそれぞれの系統ごとに設けられ、垂直方向及び/又は水平方向に配列された前記移動反射体と、前記信号処理装置で計算されたそれぞれの系統ごとの前記移動反射体の移動量から前記測定対象物の傾き角度を演算する角度演算装置と、を備えた態様を取ることができる。
【0019】
これにより、測定対象物の傾き角度(ヨーイング、ピッチング)を高精度に計測する2色干渉計測装置を低価格で構築することができる。
【0020】
本発明の2色干渉計測装置は、前記2つのレーザ光源は、波長が633nmのHeNeレーザ光源と波長が1550nm帯の半導体レーザ光源であることが好ましい。
【0021】
波長が633nmのHeNeレーザ光源と波長が1550nm帯の半導体レーザ光源との組み合わせは下記a)〜f)の理由で好適である。a)波長が離れているためA係数を小さくでき、周波数安定度が10
−8より高精度でかつ容易に波長を校正できる(500nm未満の波長又は1684nmを超える波長のレーザは校正が困難である。)。b)波長633nmと1550nm帯はそれぞれ、シリコンとインジウムガリウムヒ素の光検出器に感度を持つが、その逆には感度を持たないため、波長633nm用の光検出器が波長1550nm帯の光を検出することもなく、また、波長1550nm帯用の光検出器が波長633nmの光を検出することもないため、光検出器のクロストークによる誤差を回避できる。c)1550nm帯の波長はアイセーフであるため、目に入ったときの危険が少ない。d)安価に過干渉距離が長い光源を用意できる(例えば10m以上)。e)1550nm帯は光学部品が充実しているため干渉計を安価に組むことができる。f)1550nm帯の波長は〔式1〕のコーシーの分散公式を見ると分かるように、波長変動による屈折率変化や屈折率の揺らぎに対してロバストであり、一方の波長による計測を揺らぎに対してロバストにできる。
【0022】
〔式1〕
n−1=k1(1+k2/λ2)…式1
ここで、n:屈折率
k1:定数
k2:定数
λ:波長
本発明の2色干渉計測装置は、前記半導体レーザ光源にはレーザ光の温度を制御する温度制御装置が設けられることが好ましい。これにより、周波数安定度の良い半導体レーザ光源を安価に構成することができる。
【0023】
本発明の2色干渉計測装置は、前記ウェッジプリズムに対して同一の光路で前記第1の参照光と前記第2の参照光とが逆進し、前記ウェッジプリズムから前記第1の干渉位置までの前記第1の参照光の光路長よりも、前記ウェッジプリズムから前記第2の干渉位置までの前記第2の参照光の光路長が長いことが好ましい。
【0024】
このように、2つの参照光を共通のウェッジプリズムに逆向きの光路で逆進させることによって、2つの参照光についてウェッジプリズムから第1及び第2の光検出手段までの光路長が異なるようにできるので、ウェッジプリズムでの屈折による位置ずれを2つの参照光で合わせることができる。これにより計測精度を向上できる。
【0025】
本発明の2色干渉計測装置は、前記第1及び第2の測定光は、前記移動反射体の一方のコーナ部に入射し、直角な反射面で反射されて他方のコーナ部から出射するように構成され、前記第1及び第2の参照光は、前記固定反射体の一方のコーナ部に入射し、直角な反射面で反射されて他方のコーナ部から出射するように構成されていることが好ましい。
【0026】
1光軸系のように移動反射体(例えばCCP)や固定反射体(例えばCCP)の中央部にレーザ光を入射させる場合には、中央部からの僅かなずれによって光検出手段に対して模様(例えば3本のスジ)ができてしまい、理想的な検出信号(正弦波)が得られ難い。これが計測誤差の要因になる。
【0027】
しかし、本発明のように、2光軸系の光干渉機構とすることで、移動反射体(例えばCCP)や固定反射体(例えばCCP)の中央部にレーザ光を入射させる必要がないので、理想的な検出信号(正弦波)を得ることができる。
【0028】
本発明の2色干渉計測装置は、前記光分割合成手段は、移動反射体側と固定反射体側で光路長が非対称に構成され、前記ウェッジプリズム及びその他空気以外のレーザ光路の2波長の屈折率の温度係数の違いによる温度変化による誤差を補正することが好ましい。
【0029】
本発明の2色干渉計測装置は、前記光分割合成手段は、前記ウェッジプリズムと熱膨張係数が同一の材料で構成され、前記光分割合成手段のうち前記第1及び第2の測定光が通過する部分の光軸方向の厚さが、前記第1及び第2の参照光が通過する部分の光軸方向の厚さよりも、前記ウェッジプリズムの光軸方向の厚さの半分だけ厚くされていることが好ましい。
【0030】
本発明の2色干渉計測装置は、前記第1のレーザ光源と前記光分割合成手段との間に第1の強度分布成型素子が配置され、前記第1のレーザ光のガウシアンビームが、前記第1の強度分布成型素子によってフラットトップの出力ビームに変換され、前記第2のレーザ光源と前記光分割合成手段との間に第2の強度分布成型素子が配置され、前記第2のレーザ光のガウシアンビームが、前記第2の強度分布成型素子によってフラットトップの出力ビームに変換されることが好ましい。
【0031】
本発明の2色干渉計測装置は、前記2つのレーザ光のレーザ進行方向の垂直断面のレーザ強度分布を、トップフラット形状のレーザ強度分布に変換する強度分布成型素子を備えたことが好ましい。
【0032】
本発明の2色干渉計測装置は、前記第1及び第2のレーザ光が逆向きの共通光路を通るレーザ光を可視化するレーザ光可視化手段を備え、前記レーザ光可視化手段の一方の面からレーザ光を観察することにより、第1及び第2のレーザ光のアライメントの位置ずれを確認することが好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明の2色干渉法を用いた計測装置によれば、高精度に距離や角度を計測することができると共に価格的にも安価であり、実装置として十分な性能を有する計測装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面に従って本発明に係る2色干渉計測装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0036】
[距離(長さ)を計測する2色干渉計測装置]
図1は、2色干渉法を用いて距離(長さ)を計測する2色干渉計測装置10の構成図である。
【0037】
図1に示すように、2色干渉計測装置10は、主として、波長の異なる2種類のレーザ光源(第1のレーザ光源、第2のレーザ光源)12、14と、光分割合成手段16と、測定対象物(図示せず)に取り付けられ測定光(第1の測定光、第2の測定光)X1、Y1を反射する移動反射体18と、参照光(第1の参照光、第2の参照光)X2、Y2を反射する固定反射体20と、参照光X2、Y2が同一光路において互いに逆進して通過するウェッジプリズム22と、レーザ光源12、14からの2つのレーザ光(第1の干渉光X3、第2の干渉光Y3)を検出する第1及び第2の光検出手段24、26と、信号処理装置28と、で構成される。
【0038】
レーザ光源12、14は、互いに波長が異なるレーザ光(第1のレーザ光、第2のレーザ光)を出射する装置であり、レーザ光源12、14は周波数安定度が10
−8より高精度であることが好ましい。また、レーザ光源12、14は、波長(周波数)の選択性が高く、波長差を400nm以上とれることが好ましい。
【0039】
このような条件を満足するレーザ光源12、14としては、例えば波長が633nmのHeNeレーザ光源12と、波長が1550nm帯の半導体レーザ光源14との組み合わせを好適に使用することができる。この場合、半導体レーザ光源14には、半導体レーザの温度を制御して一定温度に維持する温度制御装置30を設けることが上記の周波数安定度を得る上で好ましい。これにより、2色干渉法を用いた計測装置の2種類のレーザ光源12、14を、周波数安定性が高く且つ低価格で構成することができる。
【0040】
以下の説明ではHeNeレーザ光源12と半導体レーザ光源14との例で説明すると共に、HeNeレーザ光源12から出射されるレーザ光をレーザ光Xと称し、半導体レーザ光源14から出射されるレーザ光をレーザ光Yと称する。
【0041】
図1に示すように、HeNeレーザ光源12から出射されたレーザ光X(実線)は、光ファイバ32を伝播して第1のコリメータレンズ34に入射し、第1のコリメータレンズ34によって平行光に変換されて光分割合成手段16に入射する。一方、半導体レーザ光源14から出射されたレーザ光Y(点線)は、光ファイバ36を伝播して第2のコリメータレンズ38に入射し、第2のコリメータレンズ38によって平行光に変換された後、2つのミラー40、42で反射して光分割合成手段16に入射する。
【0042】
光ファイバ32、36は、光の伝送路であり、機器間で光を送受する機能を備える。光ファイバ32、36は透過率の高い石英ガラス又はプラスチック製であり、外側よりも芯の屈折率を高くすることで光を芯にだけ伝搬させることができる。
【0043】
光分割合成手段16は、レーザ光X、Yを測定光X1、Y1と参照光X2、Y2とに分割する光学素子であり、ビームスプリッタ、ハーフミラー、又はそれと同等の機能を有する手段を好適に使用することができる。
【0044】
なお、ミラー40、42は、HeNeレーザ光源12から出射されたレーザ光Xと、半導体レーザ光源14から出射されたレーザ光Yとを、平行で近接した2光軸系の光干渉機構を形成し、光軸方向を調整するためのものである。したがって、HeNeレーザ光源12と半導体レーザ光源14との配置から、ミラー40、42を用いずに平行で近接した2光軸系の光干渉機構を形成できる場合には使用しなくてもよい。
【0045】
光分割合成手段16に入射したレーザ光Xは、移動反射体18へ進む測定光X1と、固定反射体20へ進む参照光X2とに分割される。そして、移動反射体18で反射された測定光X1と固定反射体20で反射された参照光X2とが再び光分割合成手段16に入射して重ね合わされ(合成され)干渉光X3として生成される。
【0046】
同様に、光分割合成手段16に入射したレーザ光Yは、移動反射体18へ進む測定光Y1と、固定反射体20へ進む参照光Y2とに分割される。そして、移動反射体18で反射された測定光Y1と固定反射体20で反射された参照光Y2とが再び光分割合成手段に入射し重ね合わされて干渉光Y3として生成される。
【0047】
図1から分かるように、レーザ光Xとレーザ光Yとは、平行で近接する2光軸系の光干渉機構を形成すると共に、光分割合成手段16と移動反射体18との間を進む測定光X1と測定光Y1とは同一の光路で互いに逆進する。また同様に、光分割合成手段16と固定反射体20との間を進む参照光X2と参照光Y2とは同一の光路で互いに逆進する。レーザ光Xとレーザ光Yを近接させる理由は、同じ大気環境(温度、気圧、湿度等)を通過した方が大気揺らぎの位置変化分布の影響を小さくするからである。
【0048】
固定反射体20の出射側には、ウェッジプリズム22が配設される。これにより、ウェッジプリズム22を通過する参照光X2、Y2の波面が通過前の光軸に対してわずかに傾けられる。なお、ウェッジプリズム22は固定反射体20の出射側に限定されず、固定反射体20又は移動反射体18の入射側又は出射側の光路中の何れかに配設されればよい。
【0049】
図2は、
図1に示した2色干渉計測装置10において、HeNeレーザ光源12から出射されたレーザ光Xの光路を実線の矢印で示した説明図である。また、
図3は、半導体レーザ光源14から出射されたレーザ光Yの光路を破線の矢印で示した説明図である。なお、
図2、
図3においては、図面の煩雑さを避けるため、光ファイバ32、36、コリメータレンズ34、38、及びミラー40、42の図示を省略している。
【0050】
図2、
図3の如く、HeNeレーザ光源12の参照光X2と半導体レーザ光源14の参照光Y2とは、ウェッジプリズム22を同一の光路で逆進している。
【0051】
そして、ウェッジプリズム22の参照光X2の出射端22aから、光分割合成手段16の干渉位置(測定光X1と参照光X2との干渉位置:第1の干渉位置)16aまでの参照光X2の光路長が光路長Qに設定されている。また、ウェッジプリズム22の参照光Y2の出射端22bから、光分割合成手段16の干渉位置(測定光Y1と参照光Y2との干渉位置:第1の干渉位置)16bまでの参照光Y2の光路長がR(R=R1+R2+R3)に設定されている。つまり、光路長Qよりも光路長Rが長く設定されている。なお、R1は、出射端22bから固定反射体20までの光路長であり、R2は固定反射体20内での光路長であり、R3は、固定反射体20から干渉位置16bまでの光路長である。
【0052】
ウェッジプリズム22を通過した参照光X2の屈折角は、周波数の違いから、ウェッジプリズム22を通過した参照光Y2の屈折角度よりも大きい。このため、ウェッジプリズム22から干渉位置16bまでの参照光Y2の光路長Rを、ウェッジプリズム22から干渉位置16aまでの参照光X2の光路長Qよりも長くする。
【0053】
好ましくは、干渉位置16aに対する参照光X2の位置ずれと、干渉位置16bでの参照光Y2の位置ずれとが、同程度となるように、ウェッジプリズム22の位置を調整して参照光Y2の光路長Rを長くする。これにより、第1及び第2の光検出手段24、26のアライメントが容易になる。
【0054】
また、2色干渉計測装置10は、1つのウェッジプリズム22に対し、同一の光路で参照光X2と参照光Y2とを逆進させた構成なので、1つのウェッジプリズム22によって、光路長Q、Rの調整が可能となる。
【0055】
光分割合成手段16で生成された干渉光X3は、第1のレンズ(例えば、シリンドリカルレンズ)44を介して第1の光検出手段24で受光され、電気信号(アナログ)である干渉信号(第1の干渉信号)に変換されて信号処理装置28に出力される。同様に、光分割合成手段16で生成された干渉光Y3は、第2のレンズ(例えば、シリンドリカルレンズ)46を介して第2の光検出手段26で受光され、電気信号(アナログ)である干渉信号(第2の干渉信号)に変換されて信号処理装置28に出力される。
【0056】
第1及び第2のレンズ44、46は、光分割合成手段16で生成された干渉光X3、Y3を、光軸に直交し且つ干渉縞の形成方向に所定間隔に配置された複数のフォトディテクタa、b、c、d(
図6参照)で受光できるように、光検出手段24、26のサイズにレーザ光X、Yを拡げる。
【0057】
信号処理装置28としては、例えば、信号処理回路とカウンタとコンピュータとを組み合わせることで構成することができる。
【0058】
第1及び第2の光検出手段24、26は、光軸に直交し且つ干渉縞の形成方向に所定間隔に配置された複数のフォトディテクタa、b、c、d(
図6参照)を有し、所定角度ずつ位相のずれた複数相の信号を検出する。そして、信号処理装置28では、光検出手段24、26で得られた干渉信号から移動反射体18の移動量及び移動反射体18の移動方向を求め、大気揺らぎによる光路長の伸縮を加味して測定対象物に取り付けられた移動反射体18の移動量を演算する。これにより、測定対象物の移動距離(長さ)を計測することができる。
【0059】
図4に示すように、移動反射体18は移動装置48に搭載される。移動装置48は、移動反射体18、直動ステージ50等から構成される。移動反射体18としては、再帰性反射可能なCCP(コーナキューブプリズム)又は直角プリズムミラー等が用いられる。これにより、移動反射体18は、光分割合成手段16から出射された測定光X1、Y1を直角に組み合わされた面に入射させ、入射方向と平行な逆方向に反射する。この場合、移動反射体18から戻される測定光X1、Y1は2光軸系を維持していることが必要になる。したがって、測定光X1、Y1は移動反射体18の中央部に入射させるのではなく、
図1及び
図4から分かるように、移動反射体18の一方のコーナ部に入射させ、直角な2つの反射面で反射させて他方のコーナ部から出射させることにより、入射方向と平行で且つ逆方向に出射させる。
【0060】
直動ステージ50は、測定光X1、Y1の進行方向又は逆方向にスライド可能な移動体であり、移動させることで、測定光X1、Y1の光路長を変化させることができる。直動ステージ50の移動は、光検出手段24、26からの干渉信号に基づいて信号処理装置28が移動制御信号を生成し、直動ステージ50上の移動反射体18の移動量を求める。
【0061】
また、参照光X2、Y2が反射する固定反射体20は、移動反射体18と同様に再帰性反射可能なCCP(コーナキューブプリズム)又は直角プリズムミラー等が用いられる。固定反射体20の場合も、移動反射体18と同様に、固定反射体20の中央に入射させるのではなく、
図1及び
図4から分かるように、固定反射体20の一方のコーナ部に入射させ、直角な2つの反射面で反射させて他方のコーナ部から出射させることにより、入射方向と平行で且つ逆方向に出射させる。
【0062】
次に、上記のごとく構成された2色干渉計測装置10で測定対象物の移動距離(長さ)を計測する計測方法について説明する。
【0063】
計測装置10で測定対象物の移動距離(長さ)を計測する場合、操作者は、移動反射体18を測定対象物に取り付け、測定光X1、Y1が移動反射体18(例えばCCP)のコーナ部に正確に入射するように、計測装置10を位置決めして固定する。準備が終了したら測定対象物を移動させて計測を開始する。
【0064】
計測が開始されると、
図1に示すようにHeNeレーザ光源12から出射されたレーザ光Xは、光分割合成手段16で2つのレーザ光である測定光X1と参照光X2に分割される。
【0065】
次に、測定光X1は移動反射体18に入射し、そこで逆方向に反射されて再び光分割合成手段16に入射する。参照光X2は固定反射体20に入射し、そこで逆方向に反射された後、ウェッジプリズム22を介して再び光分割合成手段16に入射する。移動反射体18から光分割合成手段16に入射した測定光X1と、固定反射体20から光分割合成手段16に入射した参照光X2は、光分割合成手段16で重なり合って干渉光X3を生成した後、第1のレンズ(例えば、シリンドリカルレンズ)44を介して第1の光検出手段24に入射する。
【0066】
同様に、半導体レーザ光源14から出射されたレーザ光Yは、光分割合成手段16で2つのレーザ光である測定光Y1と参照光Y2に分割される。
【0067】
次に、測定光Y1は移動反射体18に入射し、そこで逆方向に反射されて再び光分割合成手段16に入射する。参照光Y2はウェッジプリズム22を介して固定反射体20に入射し、そこで逆方向に反射された後、再び光分割合成手段16に入射する。移動反射体18から光分割合成手段16に入射した測定光Y1と、固定反射体20から光分割合成手段16に入射した参照光Y2は、光分割合成手段16で重なり合って干渉光Y3を生成した後、第2のレンズ(例えば、シリンドリカルレンズ)46を介して第2の光検出手段26に入射する。
【0068】
上記レーザ光X、Yは、光分割合成手段16から光検出手段24、26まで、それぞれの光軸を有すると共に平行で近接した2光軸系の光干渉機構として構成される。また、前記した2光軸系において、レーザ光Xとレーザ光Yとは、同一の光路において逆進する。
【0069】
測定光X1、Y1は、それぞれ参照光X2、Y2と干渉して干渉光X3、Y3を生成し、干渉縞(干渉信号)を生じる。干渉信号の強度は、測定光X1と参照光X2との光路差と、測定光Y1と参照光Y2との光路差が、それぞれレーザ光X、Yの波長の整数倍の時にもっとも大きくなり、光路差が波長の整数倍と1/2異なる時にもっとも小さくなる。
【0070】
そして、信号処理装置28は、第1及び第2の光検出手段24、26で検出された干渉光X3、Y3の干渉信号から測定対象物の移動距離(長さ)を以下のように演算する。
【0071】
信号処理装置28は、それぞれの光検出手段24、26で受光された2つの干渉信号X(波長633nm)、Y(波長1550nm帯)を用いて、次式2で示される干渉信号強度関数に当てはめる。
【0072】
[式2]
干渉信号強度=B×Sin(2×2π/λ×L+φ)…式2
ここで、B:信号強度振幅
λ:計測に使用する波長(633nm、1550nm帯)
L:測定対象物の移動距離
φ:計測における位相のずれ
これにより、例えば
図5に示すように、2つの干渉信号X(波長633nm)、Y(波長1550nm帯)について、移動反射体18の移動量と、干渉信号強度との関係を示す干渉信号の正弦波が得られる。
【0073】
次に、2つの干渉信号X(波長633nm)、Y3(波長1550nm帯)について、カウンタでカウントされる干渉信号の波の数と位相とから、移動反射体18の光学的距離であるL1(波長633nm)とL2(波長1550nm帯)を求める。
【0074】
そして、下記の式3から幾何学的距離Dを求めることによって、測定対象物が取り付けられた移動反射体18の移動量を求めることができる。
【0075】
[式3]
幾何学的距離D=L2−A(L2−L1)…式3
しかし、移動反射体18の移動方向、大気揺らぎによる光路長の伸縮方向が分からないと、(L2−L1)を求めることができない。そこで、
図6に示すように、固定反射体20と光分割合成手段16との間にウェッジプリズム22を設けて、ウェッジプリズム22を通過する参照光X2、Y2の波面を、ウェッジプリズム22に入射する直前の光軸に対してわずかに傾きをもたせるようにする。例えば、波面を1波長分以上傾ける。この場合、2つの参照光X2、Y2に対して共通のウェッジプリズム22に通過させると共に、進路を逆向きにすることが好ましい。
図1に示す実施の形態では、参照光Y2がウェッジプリズム22の通過後に固定反射体20から光分割合成手段16の側へ進み、参照光X2は光分割合成手段16から固定反射体20を介してウェッジプリズム22の通過後に光分割合成手段16の側に進む。
【0076】
このように、2つの参照光X2、Y2を共通のウェッジプリズム22に対して逆向きに通過させることで、ウェッジプリズム22から2つの光検出手段24、26までの光路長が異なるので、ウェッジプリズム22での屈折による位置ずれを2つのレーザ光で合わせることができる。また、参照光X2、Y2に対して共通のウェッジプリズム22を使用することで部品点数を削減できる。
【0077】
ちなみに、参照光X2の光路と参照光Y2の光路とにそれぞれウェッジプリズム22を配置すると、屈折角のズレが顕著に大きくなり、計測誤差要因になる。
【0078】
また、光検出手段24、26は、光分割合成手段16で干渉し、干渉光X3、Y3の光軸に直交し且つ干渉縞の形成方向に所定間隔に配置された複数のフォトディテクタa、b、c、d(例えば4つ)を有し、所定角度(例えば90°)ずつ位相のずれた複数相(例えば4相)の信号を検出できるように構成されている。
【0079】
これにより、ウェッジプリズム22を通過した参照光X2、Y2による干渉光X3、Y3は明暗がa、b、c、dのディテクタで段々とずれて、4つのフォトディテクタa、b、c、dは順次90°の位相が異なるA
+相、B
+相、A
−相、B
−相の4相からなる正弦波信号を検出することができる。
【0080】
そして、
図7に示すように、検出した正弦波信号を信号処理して矩形波に変換する。これにより、矩形波に変換されたA相とB相の立ち上がりの位相ずれ方向を検出することで移動反射体18の移動方向を把握することができ、A相とB相の膨らみ方向を検出することで大気揺らぎによる光路長の伸縮方向を把握することができる。
【0081】
図7(A)は移動反射体18が正方向に移動したときのA相とB相との矩形波の関係を示す図であり、
図7(B)は移動反射体18が逆方向に移動したときのA相とB相との関係を示す矩形波の図である。
【0082】
このように、2つの光検出手段24、26で検出された2つの干渉信号X(波長633nm)、Y(波長1550nm帯)について、4分割の光検出手段24、26でそれぞれ検出し、信号処理装置28で上記の信号処理を行うことによって、L1とL2との正負関係が分かる。
【0083】
したがって、得られた干渉信号を距離(長さ)情報に演算して移動反射体18の移動量を求めることができるので、測定対象物の移動距離を計測することができる。即ち、2色干渉法を用いた計測装置の計測方法を上記の如く構成することで、従来の問題点であった「計測方法の具体化の問題」を解決することができる。
【0084】
また、上記の如く構成された2色干渉法を用いた計測装置10は、以下の構成を取ることによって、実装置として十分に使用可能な高さまで計測精度を向上させることができる。
【0085】
2色干渉法によって測定対象物の移動距離を計測するには、測定対象物に取り付けられる移動反射体18の移動量である幾何学的距離Dを精度良く求めることが重要になる。
【0086】
そして、幾何学的距離Dは上記したように次式3で表される。
【0087】
[式3]
D=L2−A(L2−L1)…式3
ここでA=(n1−1)/(n2−n1)で表され、温度や気圧等にほとんど依存しない定数であり、この係数Aが数十〜数百となる。
【0088】
L1=n1*D(レーザ光Xでの測定光路長又はレーザ光Yでの測定光路長)
L2=n2*D(レーザ光Xでの測定光路長又はレーザ光Yでの測定光路長)
n1=f1(T、P、h、c、λ
1)…レーザ光Xの大気の屈折率
n2=f2(T、P、h、c、λ
2)…レーザ光Yの大気の屈折率
T:温度、P:気圧、h:湿度、c:CO
2濃度、λ
1:レーザ光Xの波長、λ
2:レーザ光Yの波長
上記式3から分かるように、式3の測定光路差(L2−L1)を小さくすることが計測装置として使用可能な計測精度まで上げる上で不可欠である。
【0089】
そこで、本発明の実施の形態では、式3の測定光路差(L2−L1)を小さくするために、主として次の点を改良した。
【0090】
〈1〉本実施の形態では、周波数安定度が10
−8より高精度であって、波長が異なるレーザ光を出射する2種類のレーザ光源として、波長が633nmのHeNeレーザ光源12と、波長が1550nm帯の半導体レーザ光源14とを設けるようにした。
【0091】
図8は、2種類のレーザ光源のうち、一方のレーザ光源を波長λ
1が633nmのHeNeレーザ光源12とした場合、他方のレーザ光源の波長λ
2と係数Aとの関係を示した図である。そして、点線がHeNeレーザ光源12の633nmの波長位置である。
【0092】
図8から分かるように、他方のレーザ光源の波長がHeNeレーザ光源の633nmの波長位置から離れるにしたがって係数Aが小さくなる。他方のレーザ光源の波長としては、500nm以下の場合と、1000nm以上(
図8では最大2000nmまで示す)の場合において、係数Aが約100以下となる。即ち、一方のレーザ光源として、従来から周波数安定度の良いレーザ光源として知られていたHeNeレーザ光源12を使用した場合には、他方のレーザ光源としては、HeNeレーザ光源の波長の633nmよりも100nm以上小さい波長のものか、もしくは400nm以上大きい波長のものを使用することで係数Aを100以下に小さくできる。
【0093】
具体的には、波長が633nmのHeNeレーザ光源12と波長が1550nm帯の半導体レーザ光源14との2種類のレーザ光源を設けることで、係数Aを100以下にすることができる。
【0094】
また、半導体レーザ光源14に温度制御装置30を設けて周波数安定度を上げるようにしたので、価格的にも低価格で周波数安定度の高い半導体レーザ光源14を構築することができる。
【0095】
これにより、従来の課題であった「周波数安定度の良い2種類のレーザ光源の問題」を解決することができる。
【0096】
〈2〉本実施の形態では、レーザ光が自己補償するという2色法の特徴を利用して2つのレーザ光X、Yを2光軸系として構成した。即ち、本発明は2色干渉法による干渉光学系を、1光軸系(同軸系)ではなく2光軸系にしたことによって、計測精度を向上させたことに大きな特徴がある。
【0097】
図9は、従来から2色干渉法で使用されていたダイクロイックミラーを用いて1光軸系の計測装置100を構成した場合である。
図1と同じ部材には同符号を付して説明する。
【0098】
2つのレーザ光源12、14から出射したレーザ光X、Yは、第1のダイクロイックミラー56によって同じ光軸上にアライメントされた後、光分割合成手段16に入射する。光分割合成手段16に入射したレーザ光X+Yは、光分割合成手段16で移動反射体18への測定光X1+Y1と固定反射体20との参照光X2+Y2とに分割される。
【0099】
移動反射体18の中央部に入射した測定光X1+Y1は、入射方向とは逆方向に反射されて光分割合成手段16に入射すると共に、固定反射体20の中央部に入射した参照光X2+Y2は、入射方向とは逆方向に反射されて光分割合成手段16に入射する。
【0100】
そして、測定光X1+Y1と参照光X2+Y2とが光分割合成手段16で重ね合わされて干渉光X3+Y3を形成する。干渉光X3+Y3は、第2のダイクロイックミラー58によって、レーザ光Xとレーザ光Yとに分離されて第1の検出器52と第2の検出器54とに受光された後、信号処理装置28に出力される。
【0101】
図9の構成で2色干渉法を用いた計測装置100を構成する場合、ダイクロイックミラー56で2つのレーザ光X、Yを同軸上にアライメントすることは極めて難しく、アライメント誤差が測定光路長の誤差になる。更にはダイクロイックミラー56が温度ドリフト等により変形・変位すると光軸が変わってしまうので、ダイクロイックミラー56を透過するレーザと、反射するレーザとを同軸上にアライメントすることは難しい。
【0102】
これに対して、本発明の実施の形態のように、光分割合成手段16から光検出手段24、26までを2光軸系とすることによってレーザ光Xとレーザ光Yとをそれぞれの光軸に個別にアライメントすることができ、精度よくアライメントできる。したがって、ダイクロイックミラー56を使用して1光軸系(同軸系)とする場合に比べて2つのレーザ光X、Yの測定光路差(L2−L1)を顕著に小さくできる。これにより、従来の課題であった「光軸アライメントの問題」を解決することができる。
【0103】
この場合、2光軸系を近接した平行な光軸とすることで同じ大気環境を通過させることができ、しかも2色干渉法は光軸系独自で自己補償することができるので、干渉計周囲の大気揺らぎの影響は極めて小さくすることができる。
【0104】
更には2光軸系とすることによって、上記したように、光分割合成手段16と、移動反射体18及び固定反射体20との間を進むレーザ光Xとレーザ光Yとは同一の光路で逆進するので、往路と復路の相対評価として現れ、互いに打ち消しあうようにすることもでき、計測精度が向上する。
【0105】
また、移動反射体18及び固定反射体20としてCCPを使用した例で説明すると、1光軸系の場合には、同軸上に光を戻すためにCCPの中心に光を当てる必要がある。そして、CCPの中心からずれると、ミラーの突き合わせ部分(直角部分)で光が戻ってこないところができてしまう。これにより、第1の検出器52及び第2の検出器54に対して模様(例えば3本のスジ)ができてしまい、理想的な正弦波が得られなくなり、計測誤差になる。
【0106】
これに対して、2光軸系の場合には、
図1及び
図4から分かるようにCCPのコーナ部分の左右の2つの辺を使用して光を戻すことができるので、理想的な正弦波を得ることができる。これにより、1光軸系におけるような上記問題を解消でき、高い計測精度を得ることができる。
【0107】
距離計測のシミュレーションの一例として、気温20±0.5℃、気圧101250±50Paの大気(空気)条件で、1mの空間距離を以下の2つの計測方法で計測した場合である。
【0108】
1つ計測方法は、周波数安定度に優れたHeNeレーザ光源(周波数安定度10
−9)の1色干渉法で計測装置を構築した場合であり、その計測精度は6.106×10
−7となった。
【0109】
これに対して、
図1で示した本発明の実施の形態のようにHeNeレーザ光源12と半導体レーザ光源14の2色干渉法で計測装置を構築した場合の計測精度は±4.332×10
−8(係数A=84.145)となった。
【0110】
一方、
図1に示した光分割合成手段16は、
図10に示すような形態でもよい。
【0111】
すなわち、
図1に示した光分割合成手段16は、
図10に示すようにレーザ光を透過する光透過材料80Lと光透過材料80Rとレーザ光を分割する光分割材料80Mとを構成要素として含む光分割合成手段でもよい。
図10の光分割合成手段16は、固定反射体20と光分割合成手段16の間の挿入されているウェッジプリズム22のレーザ光X(参照光X2)とレーザ光Y(参照光Y2)の屈折率の温度係数の異なることでの温度変化による誤差を補正するため、移動反射体18の方向に光透過材料80Rの厚さをウェッジプリズム22の厚さ(t)の、例えば半分(t/2)だけ厚くしている。
【0112】
この方法はウェッジプリズム22だけでなく、ガラス材料等の空気以外のレーザ光路の温度による屈折率変化やレーザ光Xとレーザ光Yに対する屈折率の温度係数の違いによる誤差を補正するのに有効である。
【0113】
すなわち、ウェッジプリズム22の温度変化に起因する参照光X2、Y2の屈折率変化を、光分割合成手段16の温度変化に起因する測定光の屈折率変化によって相殺できる。よって、温度変化に起因する測定誤差の発生を防止できる。
【0114】
なお、光透過材料80Rを固定反射体20の方へ厚くしたり、大きくしたりするのではなく、光透過材料80Lと光透過材料80Rの向かい合う面をスライドさせたり、光透過材料80Lを小さくしたりして、レーザ光が移動反射体18へ向かう側とレーザ光が固定反射体20へ向かう側への透過材料を通過する長さを調整する方法でもよい。これに対して、ウェッジプリズム22に使用している光透過材料とほぼ同等の光透過材料を別途設置して補正することも考えられるが、この場合は、光分割合成手段16と前記光透過材料との間で多重反射が起こり、誤差となるので好ましくない。
【0115】
つまり、ウェッジプリズム22と熱膨張係数が同一(同一材料:石英、硼珪酸ガラス(BK7))の透過型の光学部材であって、ウェッジプリズム22の厚さの半分の厚さの光学部材を、光分割合成手段16の測定光出射面(入射面)に取り付ける方法もある。しかしながら、この相殺方法の場合には、前記光学部材によって測定光に迷光、散乱光が発生し、測定誤差が大きくなるという問題がある。これに対して、本態様は、光分割合成手段16の厚さで対応したので、測定光に迷光、散乱光は発生せず、ウェッジプリズム22の温度変化に起因する参照光の屈折率変化を合理的に相殺できる。
【0116】
一方、
図1に示した2色干渉計測装置10は、
図11に示すように、強度分布成型素子(第1の強度分布成型素子、及び第2の強度分布成型素子)83、83を含めた構成が好ましい。これは、レーザ光X、Yは光ファイバ32、36やコリメータレンズ34、38からの出力後、レーザ光進行方向に対する垂直断面において、強度の分布がガウシアン分布になり(
図12参照)、光検出手段24、26において干渉光X3、Y3の干渉縞の強度が理想的な正弦波からずれてしまうために、誤差となる。ところが、強度分布成型素子83により、レーザ光進行方向に対する垂直断面において、トップフラットな強度分布にすることにより、光検出手段24、26において干渉光X3、Y3の干渉縞の強度がほぼ理想的な正弦波となり、誤差を低減できる(
図13参照)。
【0117】
また、ガウシアン分布では、光検出手段24、26の置く位置をガウシアンのピーク位置で何とか調整しなければいけないのに対し、強度分布成型素子83により、トップフラットな強度分布にすることにより光検出手段24、26の置く位置に余裕ができるためアライメントが極めて容易になる。
【0118】
光分割合成手段16と移動反射体18との間及び、光分割合成手段16と固定反射体20との間のレーザ光Xとレーザ光Yのアライメントは前記レーザ光可視化装置にてレーザ光を可視化しながら、調整するので、レーザ光の中心が判別しやすいガウシアン分布で観察できるよう強度分布成型素子83は取り外し可能なことが望ましい。
【0119】
次に、本発明の応用例として、角度を計測する2色干渉計測装置200について説明する。
【0120】
[角度を計測する2色干渉計測装置]
図14は、2色干渉法を用いて角度(ヨーイング、ピッチング)を計測する計測装置200を構成した実施の形態である。
【0121】
角度を計測する2色干渉計測装置200は、
図1で示した2光軸系の光干渉機構を少なくとも2系統設け、それぞれの系統ごとに設けられた移動反射体を、垂直方向及び/又は水平方向に配列させて測定対象物に設け、信号処理装置で計算された移動反射体の移動量から、角度演算装置によって測定対象物の傾き角度を演算するように構成したものである。なお、
図1で示したものと同じ部材には、同じ符号を付して説明するが、第1系統は数字の後にAを付し、第2系統は数字の後にBを付して区別する。
【0122】
図15は、移動装置48の直動ステージ50に垂直方向に間隔を置いて2つの移動反射体18A、18B(例えばCCP)を並設し、測定対象物(図示せず)の垂直方向の傾き角度を計測するようにした例である。
【0123】
なお、直動ステージ50に垂直方向に2つの移動反射体18A、18Bを設け、水平方向に1つの移動反射体(図示せず)を設ければ、測定対象物の垂直方向及び水平方向の傾き角度を計測することができる。
【0124】
図15に示すように、HeNeレーザ光源12から出射されたレーザ光Xは、光ファイバ32及び第1のコリメータレンズ34を介して進み、第1光分割合成手段60で第1系統Aと第2系統Bとに分割される。同様に、半導体レーザ光源14から出射されたレーザ光Yは、光ファイバ36及び第2のコリメータレンズ38を介して進み、第2光分割合成手段62で第1系統Aと第2系統Bに分割される。
【0125】
なお、レーザ光Xのうち第1系統Aをレーザ光X
Aと言い、第2系統Bをレーザ光X
Bと言う。同様に、レーザ光Yのうち第1系統Aをレーザ光Y
Aと言い、第2系統Bをレーザ光Y
Bと言う。そして、第1系統Aのレーザ光X
A、Y
Aと第2系統Bのレーザ光X
B、Y
Bとは、平行な2系統の光学系を形成する。
【0126】
(第1系統の構成)
第1系統Aにおけるレーザ光X
Aは、ミラー64で反射した後、光分割合成手段16Aに入射し、光分割合成手段16Aで2つのレーザ光である測定光X
A1と参照光X
A2に分けられる。
【0127】
次に、測定光X
A1は移動反射体18Aに入射し、そこで逆方向に反射されて再び光分割合成手段16Aに入射する。参照光X
A2は固定反射体20Aに入射し、そこで逆方向に反射されて後、ウェッジプリズム22Aを介して再び光分割合成手段16Aに入射する。移動反射体18Aから光分割合成手段16Aに入射した測定光X
A1と、固定反射体20Aから光分割合成手段16Aに入射した参照光X
A2は、光分割合成手段16Aで重なり合って干渉光X
A3を生成した後、レンズ(例えば、シリンドリカルレンズ)44Aを介して第1の光検出手段24Aに入射する。
【0128】
同様に、第1系統Aにおけるレーザ光Y
Aは、ミラー66で反射した後、光分割合成手段16Aに入射し、光分割合成手段16Aで2つのレーザ光である測定光Y
A1と参照光Y
A2に分けられる。
【0129】
次に、測定光Y
A1は移動反射体18Aに入射し、そこで逆方向に反射されて再び光分割合成手段16Aに入射する。参照光Y
A2は、ウェッジプリズム22Aを介して固定反射体20Aに入射し、そこで逆方向に反射された後、再び光分割合成手段16Aに入射する。移動反射体18Aから光分割合成手段16Aに入射した測定光Y
A1と、固定反射体20Aから光分割合成手段16Aに入射した参照光Y
A2は、光分割合成手段16Aで重なり合って干渉光Y
A3を生成した後、レンズ(例えば、シリンドリカルレンズ)46Aを介して第2の光検出手段26Aに入射する。
【0130】
上記2つのレーザ光X
A、Y
Aは、光分割合成手段16Aから2つの光検出手段24A、26Aまで、それぞれの光軸を有すると共に平行で近接した2光軸系の光干渉機構として構成される。また、前記した2光軸系の光干渉機構において、レーザ光X
Aとレーザ光Y
Aとは、逆向きの光路を形成する。
【0131】
そして、第1系統Aの信号処理装置28Aは、第1及び第2の光検出手段24A、26Aで検出された干渉光X
A3、Y
A3の干渉縞から測定対象物の移動距離(長さ)を演算する。演算する方法は、
図1の移動距離(長さ)計測する計測装置10の場合と同様であるので説明は省略する。
【0132】
(第2系統の構成)
第2系統におけるレーザ光X
Bは、光学系光分割合成手段16Bで2つのレーザ光である測定光X
B1と参照光X
B2に分けられる。
【0133】
次に、測定光X
B1は移動反射体18Bに入射し、そこで逆方向に反射されて再び光分割合成手段16Bに入射する。参照光X
B2は固定反射体20Bに入射し、そこで逆方向に反射されて後、ウェッジプリズム22Bを介して再び光分割合成手段16Bに入射する。移動反射体18Bから光分割合成手段16Bに入射した測定光X
B1と、固定反射体20Bから光分割合成手段16Bに入射した参照光X
B2は、光分割合成手段16Bで重なり合って干渉光X
B3を生成した後、レンズ(例えば、シリンドリカルレンズ)44Bを介して第1の光検出手段24Bに入射する。
【0134】
同様に、第2系統におけるレーザ光Y
Bは、2つのミラー68、70を介して光分割合成手段16Bで2つのレーザ光である測定光Y
B1と参照光Y
B2に分けられる。
【0135】
次に、測定光Y
B1は移動反射体18Bに入射し、そこで逆方向に反射されて再び光分割合成手段16Bに入射する。参照光Y
B2は、ウェッジプリズム22Bを介して固定反射体20Bに入射し、そこで逆方向に反射された後、再び光分割合成手段16Bに入射する。移動反射体18Bから光分割合成手段16Bに入射した測定光Y
B1と、固定反射体20Bから光分割合成手段16Bに入射した参照光Y
B2は、光分割合成手段16Bで重なり合って干渉光Y
B3を生成した後、レンズ(例えば、シリンドリカルレンズ)46Bを介して第2の光検出手段26Bに入射する。
【0136】
上記2つのレーザ光X
B、Y
Bは、光分割合成手段16Bから光検出手段24B、26Bまで、それぞれの光軸を有すると共に平行で近接した2光軸系の光干渉機構として構成される。また、前記した2光軸系の光干渉機構において、レーザ光X
Bとレーザ光Y
Bとは、逆向きの光路を形成する。
【0137】
そして、第2系統Bの信号処理装置28Bは、第1及び第2の光検出手段24B、26Bで検出された干渉光X
B3、Y
B3の干渉縞から測定対象物の移動距離(長さ)を演算する。演算する方法は、
図1の移動距離(長さ)計測する計測装置10の場合と同様であるので説明は省略する。
【0138】
次に、角度演算装置72は、第1系統Aの信号処理装置28Aで得られた移動反射体18Aの移動量と、第2系統Bの信号処理装置28Bで得られた移動反射体18Bの移動量とから、以下の式3を用いて測定対象物の傾き角度を演算する。
【0139】
図16は、測定対象物に取り付けられた移動反射体18A、18Bの面と垂直軸との間で角度θ傾いている場合であり、式4に、D
A、D
B、D
Mを代入することによって、測定対象物の傾き角度θを演算できる。
【0140】
[式4]
θ=tan
−1×[(D
A−D
B)/D
M]…式4
ここで、θ:傾き角度
D
A:第1系統Aの移動反射体18Aの移動量
D
B:第2系統Bの移動反射体18Bの移動量
D
M:平行な光軸を形成する第1系統Aのレーザ光と第2系統Bのレーザ光の中心軸間の距離
このように、本実施の形態のように構成された角度を計測する2色干渉計測装置200によれば、測定対象物の傾き角度(ヨーイング、ピッチング)を高精度に計測することができる。また、2色干渉法では大気の揺らぎの影響を補償できるので、第1系統Aのレーザ光と第2系統Bのレーザ光の中心軸間の距離(移動反射体Aと移動反射体Bの間隔)を拡げて、角度分解能を上げることも可能である。ちなみに、1色(1つのレーザ光)の距離計測装置を2台並べた角度計測装置の場合や、1色で移動反射体18Aに光分割合成手段で2つに分岐した一方のレーザ光を、移動反射体18Bにもう一方のレーザ光を当てるような角度計測装置などの場合には、移動反射体Aと移動反射体Bの間隔を広げると移動反射体Aの側と移動反射体Bの側で、レーザ光の大気に対する揺らぎ方が異なってくるため計測誤差が大きくなる。
【0141】
角度計測のシミュレーションとして、気温20±0.5℃、気圧101250±50Paの大気(空気)条件で且つ2つのレーザ光の中心軸間の距離を30mm、第1系統の光分割合成手段16Aから固定反射体20Aまでの空間距離と、移動反射体18Aまでの空間距離の差が1mで、第2系統の光分割合成手段16Bから固定反射体20Bまでの空間距離と、移動反射体18Bとの空間距離の差が1mとした条件で、上記した1色(1つのレーザ光)の距離計測装置を2台並べた従来の角度計測装置と、
図15の本実施の形態の2色干渉計測装置の場合とで、角度計測の精度がどのように異なるかを比較した。
【0142】
その結果、角度計測装置は、距離精度が±6.106×10
−7、角度精度が±2.33×10
−3°となった。
【0143】
これに対して、本発明の実施の形態の2色干渉計測装置の場合には、距離精度が±4.332×10
−8、角度精度が±1.65×10
−4°(係数A=84.145)となった。
【0144】
以上説明したように、2色干渉法を用いて距離(長さ)や角度計測する本実施の形態の計測装置によれば、従来の問題点(課題)であった「大気揺らぎの問題」、「波長の選択性及び高価格の問題」、「光軸アライメントの問題」、及び「計測方法の具体化の問題」の全て解決することができる。
【0145】
これにより、低コストで高い計測精度を得ることができ、実装置として十分に満足する2色干渉法を用いた計測装置を提供することができる。
【0146】
また、本実施の形態の計測装置によれば、大気揺らぎ(温度、気圧、湿度等)の影響を補償できるので、野外のような環境外乱の大きい場所でも高精度な計測が可能である。
【0147】
また、
図15のように構成された計測装置であれば、距離、角度、真直度を計測することができる。