(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786404
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】イオン交換樹脂パッケージ
(51)【国際特許分類】
B01J 47/00 20060101AFI20150910BHJP
C02F 1/42 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
B01J47/00
C02F1/42 A
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-72520(P2011-72520)
(22)【出願日】2011年3月29日
(65)【公開番号】特開2012-205995(P2012-205995A)
(43)【公開日】2012年10月25日
【審査請求日】2014年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 邦博
(72)【発明者】
【氏名】永田 千文
【審査官】
片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05445192(US,A)
【文献】
米国特許第04009102(US,A)
【文献】
特開平11−090427(JP,A)
【文献】
特開2009−061377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/42
B01J 39/00−49/02
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂を収容したバッグがアウタケース内に格納されてなるイオン交換樹脂パッケージであって、
該バッグの上下の一方に設けられた樹脂出入口及び他方に設けられた注水口と、
該注水口に着脱可能に装着されたキャップと、
該樹脂出入口に設けられたシールと、
を備えており、
前記樹脂出入口をイオン交換装置のカラムに接続し、注水口から水を供給して、イオン交換樹脂をカラムに充填する形態にて使用されることを特徴とするイオン交換樹脂パッケージ。
【請求項2】
請求項1において、前記樹脂出入口は、出入口本体と、該出入口本体を囲む鞘管とを有した二重管構造となっており、
前記シールは該鞘管の先端面に接着され、該出入口本体の先端面には非接着となっていることを特徴とするイオン交換樹脂パッケージ。
【請求項3】
請求項2において、該シールにはティアラインが設けられていることを特徴とするイオン交換樹脂パッケージ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記注水口にイオン交換樹脂の流出を防止するためのメッシュが設けられていることを特徴とするイオン交換樹脂パッケージ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記アウタケースの上面及び下面には、前記樹脂出入口又は注水口に臨む位置に開放口を形成するための開放口形成手段が設けられていることを特徴とするイオン交換樹脂パッケージ。
【請求項6】
請求項5において、開放口形成手段はミシン目であることを特徴とするイオン交換樹脂パッケージ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記アウタケース内に、バッグの前記樹脂出入口側に被さる漏斗形サポータが配置されていることを特徴とするイオン交換樹脂パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換装置のカラム等にイオン交換樹脂を充填してイオン交換装置を製作する方法に用いられるイオン交換樹脂パッケージに係り、特に該パッケージ内からイオン交換樹脂がカラム等に供給されるイオン交換樹脂パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換装置として、カラムにイオン交換樹脂を充填したものが広く用いられている。従来、イオン交換装置のカラム内に粒状(例えば平均粒径約0.5mm程度)のイオン交換樹脂を充填する場合、イオン交換樹脂が入ったビニール袋を開封し、容器に移し替え、この容器に水を注入してイオン交換樹脂のスラリーを作成し、このスラリーをカラム内に供給するようにしている。
【0003】
この作業は、大気中で行われるため、大気中の埃などの不純物がイオン交換樹脂に混入してしまう。このような不純物の混入が超純水製造装置のポリッシャーで生じると、超純水の水質低下を招くことになる。
【0004】
特許文献1には、このような空気中の埃によるイオン交換樹脂の汚染が防止されるイオン交換装置の製作方法として、イオン交換樹脂の充填工程をクリーンルーム内で行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−11120
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようにイオン交換樹脂の充填をクリーンルームで行えば、不純物混入は防止されるが、クリーンルームの無い現場等では採用することができない。
【0007】
本発明は、イオン交換装置のカラムにイオン交換樹脂を簡単に、また不純物を混入させることなく充填することができるイオン交換樹脂パッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1のイオン交換樹脂パッケージは、イオン交換樹脂を収容したバッグがアウタケース内に格納されてなるイオン交換樹脂パッケージであって、該バッグの上下の一方に設けられた樹脂出入口及び他方に設けられた注水口と、該注水口に着脱可能に装着されたキャップと、該樹脂出入口に設けられたシールと、を備え
ており、前記樹脂出入口をイオン交換装置のカラムに接続し、注水口から水を供給して、イオン交換樹脂をカラムに充填する形態にて使用されることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2のイオン交換樹脂パッケージは、請求項1において、前記樹脂出入口は、出入口本体と、該出入口本体を囲む鞘管とを有した二重管構造となっており、前記シールは該鞘管の先端面に接着され、該出入口本体の先端面には非接着となっていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3のイオン交換樹脂パッケージは、請求項2において、該シールにはティアラインが設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4のイオン交換樹脂パッケージは、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記注水口にイオン交換樹脂の流出を防止するためのメッシュが設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5のイオン交換樹脂パッケージは、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記アウタケースの上面及び下面には、前記樹脂出入口又は注水口に臨む位置に開放口を形成するための開放口形成手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6のイオン交換樹脂パッケージは、請求項5において、開放口形成手段はミシン目であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項7のイオン交換樹脂パッケージは、請求項1ないし6のいずれか1項において、前記アウタケース内に、バッグの前記樹脂出入口側に被さる漏斗形サポータが配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のイオン交換樹脂パッケージは、バッグをアウタケース内に配置したまま、該樹脂出入口をイオン交換装置のカラムに接続し、イオン交換樹脂をカラムに充填することができる。この際、注水口から超純水を供給することにより、イオン交換樹脂をスムーズにカラムに充填することができる。
【0016】
樹脂出入口を出入口本体及び鞘管の二重管構造とし、シールを鞘管の先端面にのみ接着させておくと、カラム側に設けられた受入管を該出入口本体に外嵌させるようにして樹脂出入口に接続し、イオン交換樹脂をカラムに充填することができる。
【0017】
シールにティアラインを設けておくと、シールを規定形状に開裂させることができる。
【0018】
注水口にメッシュを設けておくと、樹脂出入口からイオン交換樹脂のスラリーをバッグ内に供給し、注水口から水を流出させることにより、バッグ内にイオン交換樹脂を充填することができる。
【0019】
アウタケースの上面及び下面にミシン目等の開放口形成手段を設けておくと、アウタケースの上下両面に開放口を開けて容器へのイオン交換樹脂充填作業を行うことができる。この場合、アウタケースの下面全体を開放させないように開放口大きさを小さく設定しておくことにより、アウタケースからバッグが抜け落ちることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施の形態に係るイオン交換樹脂パッケージの分解斜視図である。
【
図7】カラムへのイオン交換樹脂充填方法を説明する斜視図である。
【
図8】カラムへのイオン交換樹脂充填方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0022】
図1はイオン交換樹脂パッケージの分解斜視図である。
図1の通り、このイオン交換樹脂パッケージ1は、箱形のアウタケース2と、該アウタケース2内に収容されたバッグ3及び漏斗形サポータ4とを備えている。アウタケース2は、フラップ2aを有した段ボール箱などよりなる。サポータ4は、テーパ部4aと、該テーパ部4aの小径側に連なる円筒部4bとを有している。
【0023】
バッグ3は、イオン交換樹脂(以下、単に樹脂ということがある。)を収容したものであり、ビニールなど非透水性合成樹脂製の袋よりなる。このバッグ3の上部にイオン交換樹脂出入口5が設けられ、該樹脂出入口5がシール6で封じられている。バッグ3の下部に注水口7が設けられ、着脱可能にキャップ8が装着されている。なお、
図1では樹脂出入口5がバッグ3の上側に存在しているが、イオン交換樹脂をカラム等に充填するときには上下逆とされる。
【0024】
図2〜4に示す通り、樹脂出入口5は、円筒状の出入口本体10と、該出入口本体10を取り巻く大径円筒状の鞘管11とを有した二重管構造となっている。出入口本体10と鞘管11との間にはスペースが存在する。
【0025】
シール6は、合成樹脂シートよりなる円形のものであり、鞘管11の先端面に接着剤Sによって水密的に接着されている。シール6は出入口本体10の先端面には接着されていない。シール6には、直径方向(放射方向)に延在するティアライン6aが複数条設けられている。このティアライン6aは浅い溝よりなるものである。シール6は、後述のカラムのイオン交換樹脂受入管31で押されたときにティアライン6aに沿って規定形状(この実施の形態では8枚の三角形の舌片状)に開裂する。
【0026】
図2,5に示すように、注水口7は、バッグ3に連なる円筒状の注水口本体13と、該注水口本体13の先端面に重なるメッシュ14と、該メッシュ14を押える円筒状のホルダ15と、該ホルダ15に螺着されたキャップ8とを備えている。注水口本体13の外周面に雄ネジが設けられ、ホルダ15の内周面に設けられた雌ネジを螺合させることによりホルダ15が注水口本体13に固着される。
【0027】
ホルダ15の先端面には内向き鍔部15a(
図5)が設けられており、該内向き鍔部15aによってメッシュ14を押えるよう構成されている。メッシュ14は、バッグ3内の粒状イオン交換樹脂の流出を防ぐためのものであり、注水口本体13の開口面の全体を覆っている。キャップ8は、ホルダ15の先端側外周面の雄ネジに螺着されている。
【0028】
バッグ3内にイオン交換樹脂を充填するときは、クリーンルーム内で行い、注水口7からキャップ8を外し、注水口7を下側にし、樹脂出入口5を上向きにしてバッグ3を設置する。シール6はまだ樹脂出入口5に貼ってない。
【0029】
この状態で、イオン交換樹脂のスラリーを樹脂出入口5からバッグ3内に導入し、水を注水口7から流出させる。この作業を継続することにより、バッグ3内がイオン交換樹脂R(
図8)で満たされる。その後、注水口7にキャップ8を装着する。また、樹脂出入口5にシール6を接着し、密閉する。
【0030】
このイオン交換樹脂を収容したバッグ3を
図1の通りアウタケース2内に上方から納め込む。なお、アウタケース2の底面のフラップ2aは予め閉じて封止しておく。アウタケース2内にバッグ3を納め込んだ後、サポータ4を
図1の通り円筒部4bを上側にしてバッグ3に被せる。この際、サポータ4の円筒部4bを樹脂出入口5に外嵌させる。その後、上面側のフラップ2aを閉じ、接着剤や粘着テープなどによってフラップ2aを封止する。
【0031】
これによって、
図6に示すイオン交換樹脂パッケージ1となる。
図6では、サポータ4がアウタケース2内の上側に位置している。イオン交換樹脂パッケージ1の運搬、保管もこの姿勢にて行う。
【0032】
図6に示すように、アウタケース2の上面及び底面の中央部には、それぞれ囲枠状にミシン目20が設けられている。このミシン目に沿って開裂させることにより、アウタケース2の上面及び底面に、樹脂出入口5又は注水口7に臨むように所定大きさの開放口21(
図7,8)を形成することが可能である。この開放口21を通してイオン交換樹脂のカラムへの供給や、注水口7への超純水配管の接続などを行う。
【0033】
このイオン交換樹脂パッケージ1を用いてイオン交換装置のカラム30にイオン交換樹脂を充填する作業方法について
図7,8を参照して説明する。
【0034】
このイオン交換樹脂の充填を行う場合、イオン交換樹脂パッケージ1を
図1〜6とは上下逆にする。また、イオン交換樹脂パッケージ1の上下両面をミシン目20に沿って破り、開放口21を設ける。開放口21の開口面積は、アウタケース21の下面よりも十分に小さいので、イオン交換樹脂パッケージ1を持ち上げてもバッグ3やサポータ4はアウタケース2から脱落しない。
【0035】
カラム30の上端からは、上方にイオン交換樹脂受入管31が突設されており、この受入管31にバルブ32が設けられている。
【0036】
受入管31の内径は、出入口本体10の外径よりも若干大きくなっており、受入管31の外径は、鞘管11の内径よりも小さいものとなっている。
【0037】
カラム30の上方に配置したイオン交換樹脂パッケージ1を徐々に下降させ、樹脂出入口5と受入管31とを同軸状としてさらにイオン交換樹脂パッケージ1を下降させ、出入口本体10を受入管31内に差し込む。この際、シール6は受入管31に押されてティアライン6aに沿って複数の舌片状に断裂し、舌片状となったシール6は
図8のように出入口本体10と鞘管11との間に押し込まれる。
【0038】
また、イオン交換樹脂パッケージ1の注水口7のキャップ8を取り外し、注水口7に対しカプラ40を介して超純水配管41を接続する。なお、超純水配管41の接続はイオン交換樹脂パッケージ1と受入管31との連結前に行ってもよく、連結後に行ってもよい。
【0039】
図8のように樹脂出入口5を受入管31に接続し、超純水配管41を注水口7に接続した後、バルブ32を開け、バッグ3内に超純水を導入する。これにより、バッグ3内のイオン交換樹脂Rがカラム30内に供給される。イオン交換樹脂と共にカラム30内に導入された超純水は、カラム30の液取出部から流出する。イオン交換樹脂の充填終了後は、バルブ32を閉め、イオン交換樹脂パッケージ1を引き上げる。また、注水口7と超純水配管41との接続を解除する。
【0040】
このようにして、イオン交換樹脂を外気に晒すことなくバッグ3内に充填し、またバッグ3内のイオン交換樹脂Rを外気に晒すことなくカラム30に充填することができる。また、このイオン交換樹脂の充填に際し、イオン交換樹脂がこぼれ落ちたりすることもない。
【0041】
この実施の形態では、漏斗形サポータ4をバッグ3に被せており、
図8のようにカラム30へのイオン交換樹脂の充填に際しテーパ部4aが上開状となるので、バッグ3内のイオン交換樹脂Rをバッグ3内に残留させることなくスムーズにカラム30に移動させることができる。
【0042】
なお、超純水配管41から超純水をバッグ3内に注入しなくても、バッグ3内のイオン交換樹脂をカラム31に移動させることは可能である。
【0043】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本発明のイオン交換樹脂パッケージは、カラム以外の容器に対してもイオン交換樹脂を充填することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 イオン交換樹脂パッケージ
2 アウタケース
3 バッグ
4 サポータ
5 樹脂出入口
6 シール
6a ティアライン
7 注水口
8 キャップ
10 出入口本体
11 鞘管
31 イオン交換樹脂受入管