特許第5786494号(P5786494)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5786494モリブデン酸亜鉛微粒子含有スラリー組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786494
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】モリブデン酸亜鉛微粒子含有スラリー組成物
(51)【国際特許分類】
   C01G 39/00 20060101AFI20150910BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20150910BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20150910BHJP
   C08J 3/21 20060101ALI20150910BHJP
   C09K 21/02 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   C01G39/00 Z
   C08K9/04
   C08L101/00
   C08J3/21CFB
   C09K21/02
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-144347(P2011-144347)
(22)【出願日】2011年6月29日
(65)【公開番号】特開2013-10666(P2013-10666A)
(43)【公開日】2013年1月17日
【審査請求日】2014年5月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】上方 康雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佳弘
(72)【発明者】
【氏名】青嶌 真裕
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−109856(JP,A)
【文献】 特開2005−082668(JP,A)
【文献】 特表2009−525245(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0004356(US,A1)
【文献】 特開2002−294037(JP,A)
【文献】 中村知広ほか,グリコサーマル法による亜鉛系複合酸化物の合成,日本化学会第65春季年会 講演予稿集I,社団法人日本化学会,1993年 3月15日,p.23
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G25/00−47/00,49/10−99/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理されたZnMoO(OH)粒子を有機溶媒に分散してなるモリブデン酸亜鉛微粒子含有スラリー組成物であって、
前記ZnMoO(OH)粒子の平均粒径が2μm以下であるモリブデン酸亜鉛微粒子含有スラリー組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モリブデン酸亜鉛微粒子含有スラリー組成物に関し、例えば、樹脂組成物ワニスの製造に使用されるモリブデン酸亜鉛微粒子含有スラリー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識への高まりから電子機器のハロゲンフリー化が進んでおり、半導体パッケージやプリント配線板には、従来のハロゲン化エポキシ樹脂に替わり無機系の難燃剤が使用されている。無機系の難燃材としては水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等が使用されているが、難燃性能が充分ではなく多量に充填することが必要になっている。そこで、難燃性能を向上させるため難燃助剤の併用が検討されている。難燃助剤としてはモリブデン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛等が知られているが中でもモリブデン酸亜鉛が有効であることが知られている。
【0003】
また、近年、電子機器の薄型化、軽量化に対する要求が強まり、半導体パッケージやプリント配線板の薄型化、高密度化が進んでいる。これらに対応して安定な実装を行っていくためには、半導体パッケージやプリント配線板に生じるそりを抑えることが必要になっている。実装時、半導体パッケージに生じるそりの主な原因は、半導体パッケージに使われている積層板とシリコンチップとの熱膨張率差であり、そのために、半導体パッケージ用積層板においては、熱膨張率をシリコンチップに近付ける、すなわち低熱膨張率化する努力が行われている。
【0004】
積層板を低熱膨張率化する方法は種々考えられるが、その中でも樹脂組成物中の無機充填材の充填率を上げる方法が有効である。しかし、無機充填材を高充填化して積層板を作製すると、積層板のドリル加工性が悪化してしまうという問題があった。そこで本発明者らは、この問題を解決すべく無機充填材を高充填化してもドリル加工性の悪化を抑えることのできる添加剤の探索を行い、モリブデン化合物、特にモリブデン酸亜鉛が優れた効果を持つことを見出した。
【0005】
このようにモリブデン酸亜鉛は難燃性やドリル加工性の向上に優れた効果を示す材料であるが、一般的に用いられるモリブデン酸亜鉛は比重が大きく、また分散性が悪いため、電子機器の作製に用いる樹脂組成物ワニスに直接添加すると沈降しやすく、製造不良の原因となりやすい。このため、モリブデン酸亜鉛をタルク等の比重の小さい材料に担持させた複合粒子(例えば、シャーウィン・ウィリアムズ株式会社製、ケムガード911C)を用いることが有効とされている(特許文献1参照)。
【0006】
また、この複合粒子はタルク等の微粒子を分散させた水溶液中に酸化モリブデン粒子を分散させ、その後、酸化亜鉛の分散液を添加することによりモリブデン酸亜鉛を担体粒子上に析出させることにより製造していることが知られている(特許文献2、3参照)。しかし、このようにタルク等の比重の小さい材料に担持させた複合粒子を使用しても、粗大なモリブデン酸亜鉛粒子が存在し、信頼性の低下を招いたり、また、タルク等の担体の影響で、樹脂組成物の粘度が上昇し成形性が悪くなったりといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3707043号公報
【特許文献2】特開平11−21432号公報
【特許文献3】特許第3389095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みなされたもので、電子機器の作製に用いる樹脂組成物ワニスに直接添加しても、モリブデン酸亜鉛化合物が短時間で沈降したり凝集したりすることを抑制することができるモリブデン酸亜鉛微粒子含有スラリー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意研究を続けた結果、モリブデン酸亜鉛化合物の中でも特定のモリブデン酸亜鉛、即ち亜鉛とモリブデンの原子比が2:1の含水モリブデン酸亜鉛化合物を含有するモリブデン酸亜鉛微粒子含有スラリー組成物は、電子機器の作製に用いる樹脂組成物ワニスに直接添加しても、モリブデン酸亜鉛化合物の急速な沈降や凝集がほとんど生じないことを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記の通りである。
【0010】
[1] 表面処理されたZn2MoO4(OH)2粒子を有機溶媒に分散してなるモリブデン酸亜鉛粒子含有スラリー組成物。
[2] 前記Zn2MoO4(OH)2粒子の平均粒径が2μm以下である[1]に記載のモリブデン酸亜鉛微粒子含有スラリー組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電子機器の作製に用いる樹脂組成物ワニスに直接添加しても、モリブデン酸亜鉛化合物が短時間で沈降したり凝集したりすることを抑制することができるモリブデン酸亜鉛微粒子含有スラリー組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のモリブデン酸亜鉛微粒子含有スラリー組成物について詳細に説明する。
本発明のモリブデン酸亜鉛微粒子含有スラリー組成物におけるモリブデン酸亜鉛微粒子は、亜鉛とモリブデンの原子比が2:1の含水モリブデン酸亜鉛化合物(Zn2MoO4(OH)2)である。
【0013】
含水モリブデン酸亜鉛化合物には、亜鉛とモリブデンの原子比が1:1の化合物(ZnMoO4・0.8H2O、亜鉛とモリブデンの原子比が1.5:1の化合物(Zn3Mo28(OH)2)、亜鉛とモリブデンの原子比が2:1の化合物(Zn2MoO4(OH)2)、亜鉛とモリブデンの原子比が2.5:1の化合物(Zn5Mo211・5H2O)等が知られている。
【0014】
これらの中でZnMoO4・0.8H2O及びZn5Mo211・H2Oは脱水温度が250℃付近と低く、電子材料としては耐熱温度が低く、特性が不十分である。また、Zn3Mo28(OH)2は脱水温度が360℃付近で耐熱性は十分であるが、粉砕が困難で3μm以下の微粒子のスラリー組成物の作製が困難である。
一方、Zn2MoO4(OH)2は、脱水温度が360℃付近で十分な耐熱性があることは知られていたが、その他の実用的な特性についてはほとんど知られておらず、特に電子機器分野においては用いられていなかった。そして、本発明において、Zn2MoO4(OH)2が、粉砕が容易で2μm以下の微粒子のスラリー組成物とすることが可能で、分散安定性に優れたスラリー組成物を作ることができることを見出したものである。
【0015】
Zn2MoO4(OH)2の合成方法は特に限定するものではないが、水溶液中で合成されたものが好ましい。例えば、酸化亜鉛の水分散液に亜鉛とモリブデンが原子比で2:1になるように三酸化モリブデンを加え、攪拌することにより合成される。
【0016】
合成温度は70℃以上100℃以下で行うことが好ましい。70℃以上とすることでZn2MoO4(OH)2が合成されやすくなり、100℃以下とすることで、圧力容器を使用しなくても合成することが可能で実用的な面から好ましい。合成時間は1時間以上5時間以下が好ましい。1時間以上とすることで反応を良好に進行させることができる。また、5時間を越える処理をしてもそれ以上の効果の向上は見られない。
【0017】
合成後、ろ過し水分を除去しケーキ状のモリブデン酸亜鉛化合物を乾燥して、亜鉛とモリブデンの原子比が2:1の含水モリブデン酸亜鉛化合物の粉体を得る。乾燥温度は構造水が分解脱水しない範囲であれば良いが、100℃以上300℃以下であることが好ましい。100℃以上とすることで良好に乾燥することができ、300℃以下とすることで構造水が脱水して無水物となるのを防ぐことができる。
【0018】
Zn2MoO4(OH)2粒子の平均粒径は2μm以下であることが好ましく、0.5〜1.5μmであることがより好ましい。平均粒径が2μm以下であることで粒子の沈降速度を抑制することができる。平均粒径は、分散・粉砕の方法,処理時間や表面処理剤の種類などによって調整することができる。また、平均粒径はレーザー散乱式粒度分布計で測定することができる。
【0019】
乾燥後にこの粉体を有機溶媒中に投入し分散しスラリー化する。スラリー化の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類が挙げられる。
【0020】
上記有機溶媒として、例えば、本発明のモリブデン酸亜鉛微粒子含有スラリー組成物を用いてプリント配線板を作製するための樹脂組成物ワニスを作製する場合は、樹脂組成物ワニスで用いられる有機溶媒と同じものを用いることが好ましい。有樹脂組成物ワニスと同じ有機溶媒を用いることによりモリブデン酸亜鉛微粒子の分散性安定性をより高めることができる。
【0021】
モリブデン酸亜鉛を有機溶媒中へ分散混合しスラリー化する方法としては、例えば、有機溶媒を攪拌しながらモリブデン化合物を少しずつ加えてよく混合し、次にビーズミル、ボールミル等のメディアミル、ディゾルバー等のハイスピードディスパーサー、ナノマイザー等の高圧ホモジナイザー、コロイドミル、超音波処理機等で分散処理する方法が挙げられる。これらの中で効率良く分散できる点からビーズミルで処理する方法が好ましい。
【0022】
また、有機溶媒中での分散性を向上させるために、Zn2MoO4(OH)2粒子に表面処理を施す。表面処理の方法としては、分散混合の際に表面処理剤として、シラン系やチタネート系、アルミネート系等のカップリング剤、ポリエーテル変性ポリシロキサン等の変性シリコーン類、ポリカルボン酸類、ウレタン系やアクリル系のポリマー分散剤等を添加することにより行うことができる。表面処理剤はこれらのうち1種類を用いてもよいし、2種以上を用いて処理を行っても良い。
【0023】
モリブデン酸亜鉛微粒子スラリー中におけるモリブデン酸亜鉛の含有量は15質量%から60質量%の範囲であることが好ましく。20質量%から50質量%の範囲であることがより好ましい。モリブデン酸亜鉛の含有量を60質量%以下とすることで粘度の上昇を防ぐことができる。モリブデン酸亜鉛の含有量を15%以上とすることで有機溶媒の量が多くなりすぎるのを防ぐことができる。
【0024】
本発明は特に、樹脂組成物ワニス中へモリブデン酸亜鉛化合物を分散混合させる際に、特定のモリブデン酸亜鉛化合物の分散スラリーを使用することにより、樹脂組成物ワニスの増粘やモリブデン酸亜鉛化合物の沈降や凝集の問題を解決することができる。
【0025】
上記のような樹脂組成物ワニスとしては、プリント配線板を作製する際に使用される、主に有機溶媒、樹脂成分、及び無機充填剤等を含有する一般的なワニスが挙げられる。
上記有機溶媒しては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が使用される。
樹脂成分としては、熱硬化性樹脂が使用され、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂等がが使用される。
無機充填剤としては、シリカ、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、EガラスやSガラス、Dガラス等のガラス粉や中空ガラスビーズ等が使用される。
【0026】
また、本発明のモリブデン酸亜鉛微粒子含有スラリー組成物を用いることにより、最終的に、低熱膨張率かつ高ドリル加工性で、半導体パッケージやプリント配線板用に好適な積層板等を作製することができる。この積層板に回路加工が施されてプリント配線板が得られる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)
純水1000gに酸化亜鉛0.3mol(24.41g)と三酸化モリブデン0.15mol(21.59g)を添加し、80℃で4時間攪拌し、亜鉛とモリブデンの原子比が2:1のモリブデン酸亜鉛化合物Zn2MoO4(OH)2を合成した。
【0029】
合成後、ろ過しケーキ状のモリブデン酸亜鉛を120℃で水分量0.5質量%以下になるまで乾燥した。乾燥したモリブデン酸亜鉛粉を乳鉢で軽く粉砕した。ピクノメータ法で測定した密度は4.0g/cm3であった。プロピレングリコールモノメチルエーテルを溶媒にレーザー散乱式粒度分布計で測定した平均粒径は5.5μmであった。乳鉢で粉砕したモリブデン酸亜鉛粉40g、表面処理剤としてビニルトリエトキシシラン0.4g、有機溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル80gと直径1mmΦのアルミナビーズ250gをビーズミルポットにいれ、1500回転で30分分散した。320メッシュのナイロンメッシュでビーズを分離し、モリブデン酸亜鉛微粒子を33質量%含むスラリーを得た。レーザー散乱式粒度分布計で測定した平均粒径は1.0μmであった。
【0030】
(実施例2)
ビーズミルによる分散処理を,1500回転で10分に変更した以外は実施例1と同様にモリブデン酸亜鉛微粒子を33質量%含むスラリーを得た。レーザー散乱式粒度分布計で測定した平均粒径は1.8μmであった。
【0031】
(比較例1)
純水1000gに酸化亜鉛0.3mol(24.41g)と三酸化モリブデン0.2mol(28.79g)を添加し、80℃で4時間攪拌し、亜鉛とモリブデンの原子比が3:2のモリブデン酸亜鉛化合物Zn3Mo28(OH)2を合成した。
【0032】
合成後、ろ過しケーキ状のモリブデン酸亜鉛化合物を120℃で水分量0.5質量%以下になるまで乾燥した。乾燥したモリブデン酸亜鉛粉を乳鉢で軽く粉砕した。ピクノメータ法で測定した密度は4.2g/cm3であった。プロピレングリコールモノメチルエーテルを溶媒にレーザー散乱式粒度分布計で測定した平均粒径は5.8μmであった。乳鉢で粉砕したモリブデン酸亜鉛粉40g、表面処理剤としてトリメチルビニルシラン0.4g、有機溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル80gと直径1mmΦのアルミナビーズ250gをビーズミルポットにいれ、1500回転で30分分散した。320メッシュのナイロンメッシュでビーズを分離し、モリブデン酸亜鉛微粒子を33質量%含むスラリーを得た。レーザー散乱式粒度分布計で測定した平均粒径は2.5μmであった。
【0033】
(比較例2)
ビーズミルによる分散処理時にビニルトリエトキシシラン0.4gを添加しないこと以外は実施例1と同様にモリブデン酸亜鉛微粒子を33wt%含むスラリーを得た。レーザー散乱式粒度分布計で測定した平均粒径は3.4μmであった。
【0034】
(樹脂組成物ワニスの沈降性の評価)
実施例、比較例の製造法で製造されるそれぞれのモリブデン酸亜鉛スラリー56.6部に以下の溶媒、樹脂成分、無機充填材を加えて樹脂組成物ワニスを作製した。
なお、樹脂組成物ワニスの組成及び含有量等は下記の通りとした。
樹脂成分1(熱硬化性樹脂):フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、エピクロンN−770),100部。
樹脂成分2(硬化剤):クレゾールノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製、フェノライトKA−1165)、63部。
樹脂成分3(硬化促進剤):2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成株式会社製、2E4MI),1部。
無機充填剤:溶融球状シリカスラリー、平均粒子径0.5μm、比表面積7m2/g、シリカ配合量70質量%(株式会社アドマテックス製、SC2050−KC)、297部。
溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテル(株式会社ゴードー製)、41部。
【0035】
樹脂組成物ワニスについて、直径5cm、長さ35cmのガラス製沈降管に樹脂組成物ワニス500cm3を採り、25℃の室温中で静置して、沈降管の底部に沈殿物が溜まるまでの時間を測定し沈降性を評価した。
【0036】
(樹脂組成物ワニス中の凝集物の有無の評価)
フラスコに樹脂組成物ワニス100cm3を採り、これにワニスで用いたのと同じ有機溶媒400cm3を加えてよく振とうした。この希釈ワニスを目開き20μmのナイロンメッシュでろ過し、メッシュ上に残留物が残るかどうかを目視で確認して凝集物の有無を評価した。結果を下記表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
以上から、本発明(実施例1,2)により、沈降や凝集が起きにくい樹脂組成物ワニスを製造することができることがわかる。