特許第5786575号(P5786575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5786575
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】炭化水素混合物の脱硫方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 49/04 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
   C10G49/04
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-199031(P2011-199031)
(22)【出願日】2011年9月13日
(65)【公開番号】特開2013-60509(P2013-60509A)
(43)【公開日】2013年4月4日
【審査請求日】2014年3月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】谷地 義秀
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−512924(JP,A)
【文献】 特公昭62−045278(JP,B2)
【文献】 特開2001−322953(JP,A)
【文献】 特公昭61−018597(JP,B2)
【文献】 特公昭61−046034(JP,B2)
【文献】 特開2010−202696(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/133732(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジオレフィン類を10重量%以上含有する炭化水素混合物に含まれる硫黄化合物の少なくとも一部を、230〜500℃で還元処理した担持型のニッケルを主成分とする触媒を用いて、
圧力0.1MPa以下の条件で、気相、還元雰囲気下において除去する炭化水素混合物の脱硫方法であって、
前記炭化水素混合物は、C5ラフィネートであり、前記炭化水素混合物中に、シクロペンタジエンが10重量%以上含まれていることを特徴とする炭化水素混合物の脱硫方法。
【請求項2】
前記硫黄化合物の除去を、圧力0.1MPa以下、および温度180〜400℃の条件で行なうことを特徴とする請求項1に記載の炭化水素混合物の脱硫方法。
【請求項3】
前記硫黄化合物の除去を行う際の圧力が0.05MPa以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の炭化水素混合物の脱硫方法。
【請求項4】
前記炭化水素混合物が、ナフサの熱分解物であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の脱硫方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオレフィン類を10重量%以上含有する炭化水素混合物に含まれる硫黄化合物を脱硫する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成ゴム等の主原料であるイソプレンは、通常、エチレンセンターのエチレンクラッカーより排出されるC5留分中に含まれるイソプレンを抽出蒸留することによって得られる。
【0003】
C5留分中に含まれるイソプレンを抽出蒸留するプロセスにおいては、C5留分からシクロペンタジエンを二量化(ジシクロペンタジエンとなる)除去した後、ペンタン、ペンテン類等の軽質分、およびペンタジエン類(ジシクロペンタジエンおよび1,3−ペンタジエンを含む)、アセチレン類等の重質分をそれぞれ2つの蒸留塔で除去し、さらに次の抽出蒸留塔でジオレフィン類(1,3−ペンタジエンを含む)および残りのアセチレン類を除去した後、残留分を蒸留することで、塔底より効率よくイソプレンを得ることができる。
【0004】
この際、抽出残油であるC5ラフィネートが得られるが、該C5ラフィネートをエチレンセンターに返送して、主としてガソリン基材やエチレンクラッカーの原料として利用することができる。また、除去したジシクロペンタジエンおよび1,3−ペンタジエン等は、樹脂等の原料として利用することができる。
【0005】
ところで、C5留分中には、含硫黄成分が数重量ppm〜数百重量ppmの濃度で含まれていることから、抽出残油であるC5ラフィネートにも、含硫黄成分が数重量ppm〜数百重量ppm含まれていることになる。
【0006】
そのため、C5ラフィネートをエチレンクラッカーの原料として利用する場合、C5ラフィネート中に含硫黄成分が上記のように多量に含まれていると、エチレンセンターにあるエチレンプラントの精製部に設置されたジエン除去塔内の触媒が著しく劣化し、精製部における水素の消費量が大幅に増大し、エチレンプラントの採算性が悪化してしまうという問題がある。また、含硫黄成分によりジエン除去塔内の触媒が被毒されてしまうため、含硫黄成分が多量に含まれると、被毒した触媒を再生したり、入れ替えを行なう必要が生じてしまい、触媒のランニングコストが悪化するという問題もある。
【0007】
そのため、含硫黄成分が多量に含まれるC5ラフィネートは、品質的にもコスト的にも問題があるため、エチレンクラッカーの炭化水素原料に利用することはできず、燃料として焼却しているというのが現状である。
【0008】
その一方で、昨今の環境問題への関心の高まりから、二酸化炭素の増加が懸念されており、原油を有効利用する必要性が高まっていることから、C5ラフィネートを燃焼せず、炭化水素原料として利用することが望まれている。
【0009】
そのため、含硫黄成分が数重量ppm〜数百重量ppm含まれているC5ラフィネートを、特にエチレンクラッカーの炭化水素原料として利用するためには、含硫黄成分を可能な限り除去する必要がある。
【0010】
また、C5ラフィネート中には、ジオレフィン類を原料とする製品の需要に対する余剰成分として、イソプレン、ジシクロペンタジエンおよび1,3−ペンタジエン等のジオレフィン類が数十重量%のレベルで含まれている。
【0011】
そのため、エチレンクラッカー用の炭化水素原料として、C5ラフィネートを利用するためには、このように数十重量%のジオレフィン類を含んだC5ラフィネートから、含硫黄成分を効率よく、かつ、可能な限り除去する必要がある。
【0012】
これに対し、含硫黄成分を除去する方法として、Co−Mo/アルミナ、Ni−Mo/アルミナ等の触媒を用い、液相にて、高温、高圧下で水素化脱硫を行なう方法が広く用いられている。このような水素化脱硫方法は、高圧下で水素化脱硫を行うことにより、ジオレフィン類の二重結合を極力水素化せずに、含硫黄成分を、主として二硫化水素へと分解し、二硫化水素を分離または吸収する方法である。
【0013】
しかしながら、この水素化脱硫方法は、液相にて、高温、高圧下で反応を行うものであることから、高濃度のジオレフィン類を含有するC5ラフィネートに用いた場合、ディールスアルダー反応の進行が促進され、そのため、脱硫と同時に進行されるジオレフィン類の水素化が極めて進行しにくくなるおそれがある。そして、この場合、脱硫後のC5ラフィネートは、含硫黄成分は低減されているものの、ジオレフィン類が多量に含まれることとなるため、エチレンクラッカーの炭化水素原料として利用するには、品質的にもコスト的にも問題がある。
【0014】
また、たとえば、特許文献1には、灯油および液化石油ガス(LPG)に含まれる含硫黄成分に対し、ニッケル触媒を用いた脱硫方法が開示されている。しかしながら、この方法では、C5ラフィネートなどの高濃度のジオレフィン類を含有するものに用いた場合、脱硫性能としては不十分なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2010−1480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、ジオレフィン類を10重量%以上含有する炭化水素混合物から、該炭化水素混合物に含まれる硫黄化合物を除去する脱硫方法において、硫黄化合物を効率的に除去し、かつ、脱硫に用いる触媒の寿命を伸ばすことにより、生産性を向上させることのできる炭化水素混合物の脱硫方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、ジオレフィン類を10重量%以上含有する炭化水素混合物に含まれる硫黄化合物を、230〜500℃で還元処理した担持型のニッケルを主成分とする触媒を用い、気相、還元雰囲気下において除去することにより、硫黄化合物を効率的に除去することができ、しかも、脱硫に用いる触媒の寿命を伸ばすことができ、これにより生産性を向上させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0018】
すなわち、本発明によれば、ジオレフィン類を10重量%以上含有する炭化水素混合物に含まれる硫黄化合物の少なくとも一部を、230〜500℃で還元処理した担持型のニッケルを主成分とする触媒を用いて、圧力0.1MPa以下の条件で、気相、還元雰囲気下において除去することを特徴とする炭化水素混合物の脱硫方法が提供される。
【0019】
本発明においては、前記硫黄化合物の除去を、圧力0.1MPa以下、および温度180〜400℃の条件で行なうことが好ましい。
本発明においては、前記硫黄化合物の除去を行う際の圧力が0.05MPa以下であることが好ましい。
本発明においては、前記ジオレフィン類が、シクロペンタジエンを含むものであることが好ましい。
また、本発明においては、前記炭化水素混合物が、ナフサの熱分解物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ジオレフィン類を10重量%以上含有する炭化水素混合物に含まれる硫黄化合物を効率的に除去し、かつ、脱硫に用いる触媒の寿命を伸ばすことにより、生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の炭化水素混合物の脱硫方法は、ジオレフィン類を10重量%以上含有する炭化水素混合物に含まれる硫黄化合物の少なくとも一部を、230〜500℃で還元処理した担持型のニッケルを主成分とする触媒を用いて、気相、還元雰囲気下において除去する方法である。
【0022】
<炭化水素混合物>
まず、本発明で用いる炭化水素混合物について説明する。本発明で用いる炭化水素混合物は、炭化水素化合物の混合物であり、10重量%以上のジオレフィン類と、硫黄化合物とを含有するものである。
【0023】
本発明で用いる炭化水素混合物に含まれるジオレフィン類の含有割合は、10重量%以上であり、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上である。また、ジオレフィン類の含有割合の上限は特に限定されないが、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。ジオレフィン類の含有割合が上記範囲にある場合に、本発明の効果をより一層顕著なものとすることができる。なお、本発明で用いる炭化水素混合物に含まれるジオレフィン類としては、特に限定されないが、たとえば、イソプレン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、および1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。
【0024】
また、本発明で用いる炭化水素混合物に含有される硫黄化合物の含有割合は、硫黄原子換算で、炭化水素混合物全体に対して、下限で、好ましくは10重量ppm以上であり、より好ましくは30重量ppm以上であり、上限で、好ましくは500重量ppm以下であり、より好ましくは300重量ppm以下である。硫黄化合物の含有割合が上記範囲にある場合に、本発明の効果をより一層顕著なものとすることができる。なお、本発明で用いる炭化水素混合物に含まれる硫黄化合物としては、炭化水素化合物に不純物として含まれる一般的な化合物が挙げられ、その具体例としては、硫黄や、チオール類、スルフィド類、チオフェン類、二硫化炭素などが挙げられる。
【0025】
本発明においては、このような炭化水素混合物としては、特に限定されないが、たとえば、ナフサの熱分解物、特に、C5ラフィネートが挙げられる。C5ラフィネートは、ナフサを熱分解してエチレンを生産する際に副生する、炭素数5の有機化合物を主成分とするC5留分から、少なくともイソプレンの一部を抽出蒸留により分離した後に、抽出残油として得られる留分である。炭化水素混合物として、ナフサの熱分解物、特に、C5ラフィネートを用いた場合に、本発明の効果をより一層顕著なものとすることができる。
【0026】
ここで、C5ラフィネートとしては、炭素数5の有機化合物を主成分とするC5留分から、少なくともイソプレンの一部を抽出蒸留により分離した後に、抽出残油として得られる留分であるため、イソプレンを抽出蒸留した際に、イソプレンの一部は残存する場合も考えられる。そのため、C5ラフィネートとしては、イソプレンを含有するものであってもよい。
【0027】
また、C5ラフィネートとしては、少なくともイソプレンの一部を抽出蒸留により分離した後に、抽出残油として得られる留分であればよいが、イソプレンに加えて、ジシクロペンタジエン、および1,3−ペンタジエンの3成分のそれぞれ一部を抽出蒸留により分離した後に、抽出残油として得られる留分であることが好ましい。この場合においても、各成分を抽出蒸留した際に、イソプレン、ジシクロペンタジエン、および1,3−ペンタジエンの3成分のそれぞれ一部は残存する場合も考えられる。そのため、C5ラフィネートとしては、イソプレン、ジシクロペンタジエン、および1,3−ペンタジエンを含むものであってもよい。さらに、C5ラフィネートとしては、分離されたイソプレン、ジシクロペンタジエン、および1,3−ペンタジエンのうち、利用見込みのない分(余剰分)が、抽出残油に混合されたものも含まれる。
【0028】
なお、炭素数5の有機化合物を主成分とするC5留分から、イソプレン、ジシクロペンタジエン、および1,3−ペンタジエンを抽出蒸留する方法としては、たとえば、GPI(日本ゼオン株式会社)等の公知の方法が挙げられる。
【0029】
次いで、本発明の脱硫方法について、説明する。
【0030】
<ガス化工程>
まず、10重量%以上のジオレフィン類を含有する炭化水素混合物を加熱などによりガス化させる。好ましくは、さらに、ガス化炭化水素混合物に含まれる炭素数10のジオレフィン類の少なくとも一部を熱分解させる気相熱分解工程を行なう。
【0031】
なお、気相熱分解工程は、炭素数10のジオレフィン類の少なくとも一部を熱分解させる工程であるため、炭化水素混合物として、炭素数10のジオレフィン類を含有するC5ラフィネートを用いる場合には、以下に説明する気相熱分解工程を経た後に、後述する脱硫工程を行なうことが好ましい。しかしその一方で、炭化水素混合物として、炭素数10のジオレフィン類をほとんど含有しない炭化水素混合物を用いる場合には、以下に説明する気相熱分解工程を経ずに、後述する脱硫工程を行なうことが好ましい。
以下においては、好適な態様である、気相熱分解工程を行なう場合を例示して説明を行なう。
【0032】
気相熱分解工程においては、まず、炭化水素混合物を加熱することによりガス化させる。たとえば、炭化水素混合物を加熱してガス化させる方法としては、反応装置内に備えられた予熱器に、炭化水素混合物を供給して予熱した後、該予熱器と配管によって接合された気化器に供給して加熱する方法が挙げられる。加熱温度は、通常、180〜400℃、好ましくは190℃〜350℃である。
【0033】
なお、炭化水素混合物をガス化させる際には、希釈剤やエントレーナー(添加剤)等を添加することもできる。
【0034】
このような希釈剤やエントレーナーとしては、気相熱分解工程における熱分解反応や、後述する脱硫工程の脱硫反応、および後述する水素添加工程における水素化反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。
【0035】
希釈剤の具体例としては、窒素ガス、へリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガス;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の炭素数5〜10のアルカン類;シクロペンタン、シクロへキサン、シクロヘプタン等の炭素数5〜10のシクロアルカン類;1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1−ヘプテン等の炭素数5〜10のアルケン類;シクロペンテン、シクロへキセン、シクロヘプテン等の炭素数5〜10のシクロアルケン類;などが挙げられる。これらの中でも、沸点が40〜300℃の範囲にあるものが好ましい。
【0036】
エントレーナーとしては、高沸点不純物を溶解することが必要なことから、沸点が150℃以上のものが望ましい。具体的には、鉱油系および合成系の潤滑油、ならびに熱媒油等が挙げられる。
【0037】
希釈剤およびエントレーナーの使用量は、特に限定されないが、通常、炭化水素混合物100重量部に対して、0〜3000重量部、好ましくは0〜2000重量部、より好ましくは0〜1000重量部である。希釈剤およびエントレーナーの使用量が多すぎると、プロセス効率の面で不利となる場合がある。
【0038】
次いで、好適には、ガス化した炭化水素混合物を、熱分解器に供給し、ガス化炭化水素混合物に含まれる、炭素数10のジオレフィン類の少なくとも一部を熱分解する処理を行なう。なお、炭素数10のジオレフィン類としては、たとえば、ジシクロペンタジエンが挙げられ、この場合には、熱分解反応により、ガス化炭化水素混合物に含まれるジシクロペンタジエンがシクロペンタジエンに分解することとなる。このように、ガス化炭化水素混合物について、熱分解を行なうことにより、炭化水素混合物に炭素数10のジオレフィン類が高濃度で含まれる場合であっても、後述する水素添加工程における水素化反応が効率よく進行し、結果として、ジオレフィン類およびオレフィン類が効率的に除去された炭化水素混合物を最終的に得ることができる。
【0039】
熱分解を行なう際における温度は、通常、200〜500℃、好ましくは310〜450℃である。また、熱分解における圧力は、ゲージ圧で、上限は、好ましくは0.5MPa以下、より好ましくは0.3MPa以下であり、下限は、好ましくは0MPa以上である。
【0040】
また、熱分解の時間としては、たとえば、熱分解器内で熱分解を行う場合、熱分解器内の滞留時間(ガス基準)を、所定の分解率が得られるような範囲とすればよく、特に限定されないが、好ましくは0.01〜60秒、より好ましくは0.05〜40秒である。
【0041】
そして、このような気相熱分解工程により、炭化水素混合物に含まれていた炭素数10のジオレフィン類の少なくとも一部が分解されたガス化炭化水素混合物を得ることができる。
【0042】
このような気相熱分解工程により、ガス化炭化水素混合物中の炭素数10のジオレフィン類の含有割合を、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.1重量%以下に減少させることができる。
【0043】
<脱硫工程>
次いで、上述したガス化工程によりガス化等を行なったガス化炭化水素混合物について、該混合物に含まれる硫黄化合物の少なくとも一部を除去する脱硫工程を行なう。
【0044】
脱硫工程は、脱硫触媒として、予め230〜500℃で還元処理した担持型のニッケルを主成分とする触媒を用い、通常、このような脱硫触媒が充填された脱硫反応器に、上述したガス化工程、好適には気相熱分解工程により気相熱分解を行なった、ガス化炭化水素混合物を供給することにより行なわれる。
【0045】
担持型のニッケルを主成分とする触媒(以下、適宜、「担持型ニッケル触媒」とする。)としては、担体としての担持無機化合物に、金属としてのニッケルを担持してなる化合物を主成分として含む触媒である。担体としての担持無機化合物の具体例としては、シリカ、アルミナ、ボリア、シリカ−アルミナ、珪藻土、白土、粘土、マグネシア、マグネシア−シリカ、チタニア、ジルコニアなどが挙げられる。これらのなかでも、脱硫性能がより高いという点より、マグネシア−シリカおよび珪藻土が好ましく、珪藻土がより好ましい。
【0046】
また、担体に担持する金属としては、ニッケル単体でも、十分な脱硫性能を実現することができるが、脱硫性能をより高めることができるという点より、ニッケルに加えて、パラジウム、白金、ルテニウム、銅、クロム、モリブデン、亜鉛、およびコバルトからなる群より選択される少なくとも一種の金属を含有するものを用いてもよい。なお、この場合における、ニッケルの含有割合は、担体に担持する金属の全体に対して、好ましくは60〜99.5重量%、より好ましくは80〜99重量%、さらに好ましくは90〜95重量%である。
【0047】
さらに、担持型ニッケル触媒の形状は特に制限されず、一般的には、ペレット状、球状、円柱状、リング状等である。さらに、触媒の粒径も特に制限されず、脱硫反応器の内径等によって最適な値を選べばよいが、本発明で用いる触媒の平均粒径は、効率よく脱硫反応が進行する観点から、好ましくは1〜40mmであり、より好ましくは2〜20mmである。
【0048】
なお、本発明において、脱硫触媒としての担持型ニッケル触媒としては、予め230〜500℃で還元処理したものを用いる。このような条件で還元処理することにより、担持型ニッケル触媒を活性化させ、これにより、脱硫工程における硫黄化合物の除去の効率を向上させることができ、かつ、担持型ニッケル触媒の寿命を延ばすことができ、結果として、生産性を向上させることができる。
【0049】
脱硫触媒としての担持型ニッケル触媒を予め還元処理する方法としては、特に限定されないが、たとえば、担持型ニッケル触媒を脱硫反応器に入れ、担持型ニッケル触媒を入れた脱硫反応器に、水素などの還元性のガスを流しながら、脱硫反応器を加熱することで、脱硫反応器に入れた担持型ニッケル触媒を230〜500℃に加熱する方法等が挙げられる。
【0050】
還元処理を行なう際における、担持型ニッケル触媒の加熱温度は、230〜500℃であり、好ましくは250〜450℃、より好ましくは300〜400℃である。加熱温度が低すぎると、触媒の活性化が不十分となり、上述した効果が得難くなってしまう。一方、加熱温度が高すぎると、加熱により、担持型ニッケル触媒の細孔が塞がってしまい、触媒活性が低下してしまう。
【0051】
また、還元処理を行なう際における、担持型ニッケル触媒の加熱時間は、特に限定されないが、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上である。加熱時間をこの範囲とすることにより、還元処理による担持型ニッケル触媒の活性化を十分に行なうことができる。
【0052】
また、還元処理を行なう際における、水素のガス空間速度(水素ガスの1時間当りの総流量を触媒の充填容積(空筒基準)で除した値。以下、「GHSV」という。)は、特に限定されないが、100〜10000/時間が好ましく、200〜5000/時間がより好ましい。
【0053】
脱硫工程において、用いる脱硫反応器としては、特に限定されないが、多管式固定床流通反応器であるのが好ましい。また、多管式固定床流通反応器の反応管の内径は、好ましくは6〜100mm、より好ましくは10〜70mmであり、反応管の長さは、好ましくは0.1〜10m、より好ましくは0.2〜7mである。
【0054】
本発明においては、脱硫工程における脱硫反応は、炭化水素混合物をガス化させた状態で、還元雰囲気下にて行なう。すなわち、気相、および還元雰囲気の条件にて行なう。気相条件にて行なうことにより、この際に用いる還元ガスとの反応性が向上する。なお、還元ガスとしては、水素ガスを用いることができ、脱硫反応を、水素ガス雰囲気下で行うことにより、ジオレフィン類を比較的多く含有する炭化水素混合物の脱硫工程において、硫黄化合物の除去の効率を向上させることができ、かつ、担持型ニッケル触媒の寿命を延ばすことができ、結果として、生産性を向上させることができる。脱硫反応を水素ガス雰囲気下で行う際における、水素のガス空間速度(GHSV)は、特に限定されないが、100〜10000/時間が好ましく、200〜5000/時間がより好ましい。
【0055】
特に、本発明においては、脱硫反応を、触媒として予め230〜500℃で還元処理を行なった担持型ニッケル触媒を用い、かつ、炭化水素混合物をガス化させた状態で、還元雰囲気下で行うことにより、炭化水素混合物としてジオレフィン類を10重量%以上と比較的多く含有するものを用いた場合でも、脱硫反応を良好に行うことができる。また、本発明によれば、脱硫反応を良好に行うことができることに加えて、炭化水素混合物の水素化反応を進行させることもできる。すなわち、本発明においては、脱硫工程において、脱硫と同時に、炭化水素混合物に含まれるジオレフィン類およびオレフィン類から選ばれる少なくともいずれかの炭素−炭素二重結合の、少なくとも一部を水素化する水素化反応を進行させることができる。
【0056】
脱硫反応の温度は、特に制限されないが、効率よく脱硫反応が進行する観点から、好ましくは180〜400℃、より好ましくは190〜350℃、さらに好ましくは200〜330℃である。
【0057】
また、脱硫反応の圧力は、ゲージ圧で、上限は、好ましくは0.3MPa以下、より好ましくは0.1MPa以下、さらに好ましくは0.05MPa以下であり、下限は、好ましくは0MPa以上である。脱硫反応の圧力が高すぎると、ガス化炭化水素混合物中に含まれる、気相熱分解工程で熱分解された成分(たとえば、シクロペンタジエン)が、二量化反応してしまい、熱分解前の炭素数10のジオレフィン類(たとえば、ジシクロペンタジエン)に戻ってしまうという不具合がある。特に、炭化水素混合物として、シクロペンタジエンを10重量%以上含有するものを用いた場合において、脱硫反応の圧力を高くし過ぎた場合に、このような傾向が強くなる。
【0058】
さらに、脱硫反応のガス化炭化水素混合物のガス空間速度(GHSV)は、特に限定されないが、好ましくは50〜500/時間、より好ましくは100〜300/時間である。
【0059】
このような脱硫工程により、脱硫工程前の炭化水素混合物に含有される硫黄化合物を、その硫黄原子換算で、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上を除去することができる。
【0060】
そして、本発明では、このような230〜500℃で還元処理した担持型ニッケル触媒を用いて、気相、還元雰囲気下において硫黄化合物を除去する脱硫工程を行なうことにより、得られる炭化水素混合物中における、硫黄化合物を効率的に除去することができ、かつ、担持型ニッケル触媒の長寿命化を実現することができる。そのため、脱硫反応を行なう際における生産性を向上させることができる。加えて、本発明では、このような脱硫工程により、硫黄化合物の含有割合を上記範囲に低減しながら、水素化反応を進行させることもできる。
【0061】
<水素添加工程>
なお、本発明においては、上述した脱硫工程により脱硫反応を行なったガス化炭化水素混合物について、必要に応じてガス化炭化水素混合物に含まれるジオレフィン類およびオレフィン類から選ばれる少なくともいずれかの炭素−炭素二重結合の、少なくとも一部を水素化する水素添加工程を行なってもよい。
【0062】
水素添加工程においては、水素化反応は、触媒の存在下で行なうことが好ましく、通常、触媒が充填された水素化反応器に、上述した脱硫工程にて脱硫反応を行ったガス化炭化水素混合物を供給することにより行なわれる。触媒としては、特に限定されないが、本発明においては、担持型のニッケルを主成分とする触媒を用いることが好ましい。
【0063】
担持型のニッケルを主成分とする触媒としては、たとえば、上述した脱硫工程と同様のものを用いることができる。また、担持型のニッケルを主成分とする触媒としては、上述した脱硫工程と同様に、予め還元処理を行なったものを用いてもよい。
【0064】
水素添加工程において、用いる水素化反応器としては、特に限定されないが、多管式固定床流通反応器であるのが好ましい。また、多管式固定床流通反応器の反応管の内径は、好ましくは6〜100mm、より好ましくは10〜70mmであり、反応管の長さは、好ましくは0.1〜10m、より好ましくは0.3〜7mである。
【0065】
水素添加工程においては、水素化反応は、還元雰囲気下で行なうことが好ましく、特に水素ガス雰囲気下で行うことが好ましい。水素ガス雰囲気下で水素化反応を行なうことにより、水素化反応の効率をより高めることができる。水素化反応を水素ガス雰囲気下で行う際における、水素のガス空間速度(GHSV)は、特に限定されないが、100〜10000/時間が好ましく、200〜5000/時間がより好ましい。
【0066】
水素化反応の温度は、特に制限されないが、効率よく水素化反応が進行する観点から、好ましくは140〜400℃、より好ましくは150〜300℃、さらに好ましくは160〜250℃である。
【0067】
また、水素化反応の圧力は、ゲージ圧で、上限は、好ましくは0.3MPa以下、より好ましくは0.1MPa以下、さらに好ましくは0.05MPa以下であり、下限は、好ましくは0MPa以上である。水素化反応の圧力が高すぎると、ガス化炭化水素混合物中に含まる、気相熱分解工程で熱分解された成分(たとえば、シクロペンタジエン)が、二量化反応してしまい、熱分解前の炭素数10のジオレフィン類(たとえば、ジシクロペンタジエン)に戻ってしまうという不具合がある。そして、熱分解前の炭素数10のジオレフィン類に戻ってしまうと、水素添加工程における水素化が困難となってしまい、結果として、ジオレフィン類およびオレフィン類の含有割合が高い炭化水素混合物が最終的に得られることになってしまう。
【0068】
さらに、水素化反応のガス化炭化水素混合物のガス空間速度(GHSV)は、特に限定されないが、好ましくは50〜500/時間、より好ましくは100〜300/時間である。
【0069】
そして、このような水素添加工程により、ガス化炭化水素混合物に含まれていたジオレフィン類およびオレフィン類から選ばれる少なくともいずれかの炭素−炭素二重結合の、少なくとも一部が除去されたガス化炭化水素混合物を得ることができ、そして、これを熱交換型の冷却器などで凝縮することにより、脱硫および水素化された炭化水素混合物を得ることができる。
【0070】
本発明によれば、このような水素添加工程を行なうことにより、炭化水素混合物中のジオレフィン類およびオレフィン類の量を適切に低減することができる。特に、本発明によれば、脱硫工程の後に、水素添加工程を行なうことにより、水素添加工程に用いる水素化触媒が、硫黄化合物により被毒してしまうことを有効に防止することができ、その結果として、水素化触媒の寿命を著しく伸ばすことができる。
【0071】
なお、上記においては、脱硫工程の前に気相熱分解工程を行なうとともに、脱硫工程の後には水素添加工程を行なうような例を示したが、本発明においては、気相熱分解工程および水素添加工程は必須の工程ではない。そのため、これらのうち一方、あるいは両方については必ずしも行なう必要は無い。
【0072】
しかしその一方で、たとえば、炭化水素混合物として、ナフサの熱分解物、特に、C5ラフィネートを用いた場合には、最終的に得られる炭化水素混合物中のジオレフィン類およびオレフィン類の量を効果的に低減できるという観点より、気相熱分解工程および水素添加工程を行なうことが好ましい。すなわち、気相熱分解工程、脱硫工程および水素添加工程をこの順に行なうことが好ましい。これにより、最終的に得られる脱硫および水素化された炭化水素混合物を、エチレンクラッカーの原料またはガソリン基材として好適に用いることができる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「%」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記に従った。
【0074】
〔実施例1〕
(硫黄化合物含有C5ラフィネートの調製)
C5ラフィネートを、送液ポンプにて190℃に加熱したステンレス鋼製気化管(長さ:250mm、内径23.2mm)に導入しガス化させた。次いでガス化したC5ラフィネートを350℃に加熱したステンレス鋼製熱分解管(長さ:250mm、内径23.2mm)に導入し、C5ラフィネート中の主にジシクロペンタジエンを熱分解する気相熱分解処理を行なった。分解管出口ガスを熱交換型の冷却器で凝縮した。得られた凝縮液中の硫黄化合物の含有割合は、硫黄原子換算で、43重量ppmであった。そして、脱硫触媒の加速度試験を行なうため、得られた凝縮液に、硫黄原子換算で、1600重量ppmのエタンチオール、1600重量ppmのジメチルスルフィド、1600重量ppmの二硫化炭素、および200重量ppmのチオフェンを加え、硫黄化合物含有C5ラフィネートを得た。なお、得られた硫黄化合物含有C5ラフィネートについては、ガスクロマトグラフによる組成分析を行なった。得られた炭化水素化合物について、その含有割合を表1に示す。
【0075】
(触媒の還元処理)
100℃に加温したジャケット式ステンレス鋼製反応管(長さ:250mm、内径:23.2mm)に、ニッケル担持触媒(日揮化学社製、N112触媒、担持金属:ニッケル50%、銅2%、クロム2%、担体:珪藻土)20gを充填し、供給速度:GHSV=300で水素ガスを導入した。次いで、1時間かけて反応管の温度を200℃まで昇温させた。次いで反応管を250℃まで昇温させ、そのままの温度を維持しながら、4時間反応させることで、ニッケル担持触媒の還元処理を行なった。
【0076】
(脱硫試験)
上記にて調製した硫黄化合物含有C5ラフィネートを、送液ポンプにて190℃に加熱したステンレス鋼製気化管(長さ:250mm、内径23.2mm)に供給速度:LHSV=1.56で導入しガス化させた。次いで、ガス化した硫黄化合物含有C5ラフィネートと、水素ガス(供給速度:GHSV=311)とを共に、300℃に加熱し、上記にて還元処理を行なったニッケル担持触媒20gが充填されたステンレス鋼製反応管(長さ:250mm、内径:23.2mm)へ導入した。このときの反応器内の温度は、320〜330℃であり、反応圧力は、0.01MPa以下であった。そして、反応管出口ガスを熱交換型の冷却器で凝縮し、凝縮液を得た。
【0077】
そして、本実施例においては、硫黄化合物含有C5ラフィネートを、水素ガスと共に、還元処理を行なったニッケル担持触媒が充填されたステンレス鋼製反応管に連続的に供給することで、連続運転を行ない、一定時間毎に、得られた凝縮液を抽出し、抽出した凝縮液について、化学発光型硫黄検出器付きガスクロマトグラフによる硫黄化合物の分析を行った。なお、本実施例では、このような試験を、脱硫率が90%を切るまで行なった。表2に、脱硫率が90%を切った時点における、S/Niモル比(ニッケル担持触媒に含まれるNi原子のモル数に対する、脱硫処理した硫黄化合物のS原子のモル数の比率)、および脱硫率が90%を切った時点における、脱硫された各硫黄化合物のモル量(硫黄原子換算)をそれぞれ示す。
なお、脱硫率は、以下の式より求めた。
脱硫率(%)=100×(硫黄化合物含有C5ラフィネート中の硫黄化合物の硫黄原子のモル量−生成凝縮液中の硫黄化合物の硫黄原子のモル量)/硫黄化合物含有C5ラフィネート中の硫黄化合物の硫黄原子のモル量
【0078】
なお、本実施例においては、組成分析は、測定装置として、FID検出器付きガスクロマト装置(Agilent Technologies社製)を、キャピラリーカラムとして、HP−1(60m×250μm×1.0μm)を用い、試料注入量:1.0μL、スプリット比:1/50、注入口温度:140℃、検出器温度:300℃、キャリヤガス:ヘリウム、および、キャリヤガス流量:1.0ml/minとし、オーブン温度:40℃の条件で加熱を開始し、40℃で10分間保持し、次いで、250℃まで10℃/minの速度で昇温させ、さらに、280℃まで20℃/minの速度で昇温させることにより行なった。そして、得られた分析結果から、面積比率により、それぞれの炭化水素化合物の含有割合を求めた。
【0079】
また、本実施例においては、硫黄化合物の分析は、測定装置として、化学発光型硫黄検出器付きガスクロマト装置(Agilent Technologies社製)を、キャピラリーカラムとして、HP−1(30m×320μm×1.0μm)を用い、試料注入量:0.2μL、スプリット比:1/50、注入口温度:140℃、検出器温度:800℃、キャリヤガス:ヘリウム、および、キャリヤガス流量:1.0ml/minとし、オーブン温度:40℃の条件で加熱を開始し、40℃で10分間保持し、次いで、240℃まで10℃/minの速度で昇温させ、さらに、280℃まで20℃/minの速度で昇温させることにより行なった。そして、得られた分析結果から、絶対検量線法により、各硫黄化合物の濃度を算出した。
【0080】
〔実施例2〕
ニッケル担持触媒の還元処理の条件を、250℃、4時間から、300℃、4時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、脱硫試験を行なった。結果を表2に示す。
【0081】
〔実施例3〕
ニッケル担持触媒の還元処理の条件を、250℃、4時間から、350℃、4時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、脱硫試験を行なった。結果を表2に示す。
【0082】
〔実施例4〕
ニッケル担持触媒として、N112触媒の代わりに、N102F触媒(日揮化学社製、担持金属:ニッケル60%、担体:マグネシア−シリカ)を使用した以外は、実施例2と同様にして、脱硫試験を行なった。結果を表2に示す。
【0083】
〔比較例1〕
ニッケル担持触媒の還元処理の条件を、250℃、4時間から、200℃、4時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、脱硫試験を行なった。結果を表2に示す。
【0084】
〔比較例2〕
脱硫試験を行う際に、水素ガスを導入しなかった以外は、実施例2と同様にして、脱硫試験を行なった。結果を表2に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
表2より、脱硫触媒として、230〜500℃で還元処理を行なったニッケル担持触媒を用い、還元雰囲気(水素ガス雰囲気)下で、脱硫反応を行なった場合には、触媒の寿命が長く(脱硫率が90%を切るまでの硫黄化合物の処理量が多く)、さらに、種々の硫黄化合物を良好に除去することが可能であった(実施例1〜4)。
【0088】
一方、200℃で還元処理を行なったニッケル担持触媒を用いた場合には、触媒の寿命が短い(脱硫率が90%を切るまでの硫黄化合物の処理量が少ない)結果となった(比較例1)。
また、非還元雰囲気下で、脱硫反応を行なった場合には、脱硫触媒として、230〜500℃で還元処理を行なったニッケル担持触媒を用いた場合でも、触媒の寿命が極端に短い(脱硫率が90%を切るまでの硫黄化合物の処理量が極端に少ない)結果となった(比較例2)。