【文献】
JIANG,Jia et al.,Fabrication of waveguide devices by UV photopatterning of fluorinated poly(arylene ether ketone)s co,Optical Engineering,2007年 7月,Vol.46, No.7,p.074601-1〜074601-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
<光導波路>
図1は、本発明の光導波路の製造方法により製造される光導波路の一例を示した図であり、コアの長さ方向に対して垂直な断面図である。光導波路1は、互いに平行に、かつ間隔をあけて設けられた複数のコア10と、コア10の周囲を囲むクラッド20とを有する長尺のフィルム状のものである。
【0013】
(コア)
コア10の屈折率は、クラッド20の屈折率よりも高い。
コア10の断面形状は、図示例では矩形であるが、これに限定されない。たとえば、台形、円形、楕円形、五角形以上の多角形であってもよい。コア10の断面形状が多角形である場合、その角が丸みを帯びていてもよい。
コア10の断面形状および大きさは、光源または受光素子との結合効率等を考慮して適宜設計すればよい。結合効率は、コア径および開口数(NA)に依存する。
【0014】
コア10の幅aおよび高さbは、それぞれ1〜100μmが好ましい。コア10の幅aおよび高さbが1μm以上であれば、光源または受光素子との結合効率の低下が抑えられる。コア10の幅aおよび高さbが100μm以下であれば、曲げ半径(R)=1mm程度で曲げられた場合であっても、曲げ損失が小さく抑えられる。また、受光素子として用いられるフォトダイオード(PD)の受光部の大きさ(幅および高さ)が、通常100μm以下であるため、この点からもコア10の幅aおよび高さbは100μm以下であることが好ましい。
【0015】
コアを形成するコア形成用樹脂は、架橋性官能基を有する含フッ素ポリアリーレンプレポリマー(以下、「プレポリマー(A)」という。)である。
プレポリマー(A)は、複数の芳香族環が単結合または連結基を介して結合しているポリアリーレン構造を有するとともに、フッ素原子を有し、かつ架橋性官能基を有する。
ポリアリーレン構造における連結基としては、エーテル結合(−O−)、スルフィド結合(−S−)、カルボニル基(−CO−)、スルホン酸基から水酸基を除いた二価基(−SO
2−)等が挙げられる。
【0016】
プレポリマー(A)のうち、複数の芳香族環がエーテル結合(−O−)を含む連結基を介して結合している構造を有するものを、含フッ素ポリアリーレンエーテルプレポリマー(A1)という。
エーテル結合を含む連結基としては、エーテル性酸素原子のみからなるエーテル結合(−O−)、炭素鎖中にエーテル性酸素原子を含むアルキレン基等が挙げられる。
含フッ素ポリアリーレンエーテルプレポリマー(A1)は、エーテル性酸素原子を有するため、分子構造が柔軟性を有し、硬化物の可撓性を良好にする。
【0017】
プレポリマー(A)は、芳香族環を有するため、耐熱性が良好である。
プレポリマー(A)の架橋性官能基は、プレポリマー製造時には実質上反応を起こさず、外部エネルギを与えることにより反応し、プレポリマー分子間の架橋または鎖延長により高分子量化を引き起こす反応性官能基である。外部エネルギとしては、熱、光、電子線等が挙げられる。外部エネルギは、複数を併用してもよい。
【0018】
架橋性官能基としては、ビニル基、アリル基、アリルオキシ基、メタクリロイル(オキシ)基、アクリロイル(オキシ)基、ビニルオキシ基、トリフルオロビニル基、トリフルオロビニルオキシ基、エチニル基、1−オキソシクロペンタ−2,5−ジエン−3−イル基、シアノ基、アルコキシシリル基、ジアリールヒドロキシメチル基、ヒドロキシフルオレニル基、シクロブタレン環、オキシラン環等が挙げられる。反応性が高く、高い架橋密度が得られる点で、ビニル基、メタクリロイル(オキシ)基、アクリロイル(オキシ)基、トリフルオロビニルオキシ基、エチニル基、シクロブタレン環、オキシラン環が好ましく、高分子量化後の耐熱性が良好となる点から、ビニル基、エチニル基が特に好ましい。
【0019】
外部エネルギとして熱を用いる場合、プレポリマー(A)としては、架橋性官能基として40〜500℃の反応温度で反応する反応性官能基を有するものが好ましい。反応温度が低すぎると、プレポリマー(A)または該プレポリマー(A)を含む硬化性組成物の保存時における安定性が確保できない。反応温度が高すぎると、反応時にプレポリマー自体の熱分解が発生してしまう。該反応温度は、60〜300℃がより好ましく、70〜200℃がさらに好ましく、120〜250℃が特に好ましい。
【0020】
外部エネルギとして光(化学線)を用いる場合、プレポリマー(A)と感光剤とを共存させた状態で露光することが好ましい。具体的には、プレポリマー(A)と感光剤を含むコア形成用樹脂組成物(硬化性組成物)により形成されたコア10が好ましい。後述する工程(II)において、所望の部分にのみ光(化学線)を選択的に照射すれば、露光部のみでプレポリマー(A)が高分子量化され、未露光部分を現像液に溶解させて除去することで、所望のパターンのコア10が得られる。
【0021】
プレポリマー(A)は、フッ素原子を有する。すなわち、プレポリマー(A)は、C−H結合の水素原子がフッ素原子に置換されたC−F結合を有するため、C−H結合の存在割合が少なくなっている。C−H結合は光通信波長帯域(1250〜1650nm)において吸収を有するため、C−H結合が少ないプレポリマー(A)は、光通信波長帯域における光の吸収が抑えられる。また、フッ素原子を有するため、吸水率および吸湿率が低く、高温高湿に対する耐性に優れるとともに、化学的にも安定性が高い。したがって、プレポリマー(A)を用いた光導波路にあっては、外的環境の変化、特に湿度変化による屈折率変動が小さく、特性が安定しており、また、光通信波長帯域における透明性が高い。
プレポリマー(A)におけるC−F結合の数(N
F)とC−H結合の数(N
H)の合計に対する、C−F結合の数(N
F)の割合(N
F/(N
F+N
H))は、0.1以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、1が特に好ましい。
【0022】
また、プレポリマー(A)の硬化物は、波長1310nm付近における透明性が高いため、既存の光学素子との適合性が良い光導波路が得られる。通常の石英系光ファイバを用いた光伝送装置においては、1310nmを使用波長とする場合が多いため、該使用波長に適合する受光素子等の光学素子が多く製造されており、信頼性も高い。
【0023】
好ましいプレポリマー(A)としては、含フッ素芳香族化合物(ペルフルオロ(1,3,5−トリフェニルベンゼン)、ペルフルオロビフェニル等)と、フェノール系化合物(1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等)と、架橋性化合物(ペンタフルオロスチレン、アセトキシスチレン、クロルメチルスチレン等)とを、脱ハロゲン化水素剤(炭酸カリウム等)の存在下で反応させて得られるポリマーが挙げられる。
プレポリマー(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
(クラッド)
クラッド20は、アンダークラッド層22およびオーバークラッド層24からなる。
アンダークラッド層22の材料およびオーバークラッド層24の材料は、コア10の屈折率よりも、アンダークラッド層22の屈折率およびオーバークラッド層24の屈折率が低くなる材料であれば、同じであってもよく、異なっていてもよい。
アンダークラッド層22の厚さcおよびオーバークラッド層24の厚さdは、開口数(NA)の値に応じて、光の損失が小さくなるように設計される。
【0025】
アンダークラッド層22の厚さcは、コア10の保護の点から、5〜50μmが好ましい。
オーバークラッド層24の厚さdは、コア10の保護の点から、コア10の高さbよりも厚く、かつ15〜150μmが好ましい。
クラッド20の厚さ(c+d)は、20〜200μmが好ましい。
【0026】
クラッド20を形成する材料は、前記プレポリマー(A)と、分子量が140〜5000であり、架橋性官能基を有し、フッ素原子を有していない化合物(以下、「化合物(B)」という。)の混合物が挙げられる。
【0027】
化合物(B)は、分子量が140〜5000であり、架橋性官能基を有し、フッ素原子を有していない。フッ素原子を有していないため、含フッ素化合物に比べて低コストになりやすい。化合物(B)の分子量が5000以下であれば、化合物(B)の粘度が低く抑えられ、プレポリマー(A)と混合したときに均一な組成物が得られやすい。また良好な平坦性が得られやすい。化合物(B)の分子量が140以上であれば、良好な耐熱性が得られ、加熱による分解、揮発が生じ難い。化合物(B)の分子量の範囲は250〜3000が好ましく、250〜2500が特に好ましい。
【0028】
化合物(B)の架橋性官能基は、フッ素原子を含有せず、前記プレポリマー(A)の架橋性官能基を反応させる工程と同工程で反応を生じる反応性官能基が好ましい。
化合物(B)の架橋性官能基は、少なくとも化合物(B)と反応して架橋または鎖延長を引き起こす。化合物(B)の架橋性官能基が、プレポリマー(A)および化合物(B)の両方と反応して架橋または鎖延長を引き起こすことが好ましい。
化合物(B)の架橋性官能基としては、炭素原子−炭素原子における二重結合または三重結合が好ましい。ただし芳香族性の二重結合、三重結合は含まない。
架橋性官能基としての二重結合、三重結合は、分子鎖の内部に存在してもよく、末端に存在してもよいが、反応性が高いことから末端に存在することが好ましい。二重結合の場合には、内部オレフィンであっても、末端オレフィンであってもよいが、末端オレフィンが好ましい。分子鎖の内部にあるとは、シクロオレフィン類のように脂肪族環の一部に存在することも含む。
具体的には、ビニル基、アリル基、エチニル基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基からなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。これらのうちで、感光剤の存在下でなくても、光照射により反応が進行する点でアクリロイル基、アクリロイルオキシ基が好ましい。
【0029】
化合物(B)は架橋性官能基を2個以上有することが好ましく、2〜20個有することがより好ましく、2〜8個有することが特に好ましい。架橋性官能基を2個以上有していると、分子間を架橋させることができるため、硬化膜における耐熱性を向上させ、硬化膜における加熱による膜厚減少を良好に抑えることができる。
【0030】
化合物(B)の具体例としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレートトリウンデシレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートモノウンデシレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,9−ノナンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、メタクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、下式(1)で表されるエトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、下式(2)で表されるプロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールメタクリレート、下式(3)で表される化合物等が挙げられる。またポリエステルアクリレート(二価アルコールと二塩基酸との縮合物の両末端をアクリル酸で修飾した化合物:東亞合成社製、商品名アロニックス(M−6100、M−6200、M−6250、M−6500);多価アルコールと多塩基酸との縮合物の水酸基末端をアクリル酸で修飾した化合物:東亞合成社製、商品名アロニックス(M−7100、M−7300K、M−8030、M−8060、M−8100、M−8530、M−8560、M−9050))も利用できる。これらは市販品から入手できる。
上記に挙げた中でも、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレートが硬化膜の成形性が良好であるので好ましい。
【0032】
クラッド20の屈折率は、コア10の屈折率よりも低い。クラッド20の屈折率は、化合物(B)の種類、およびプレポリマー(A)と化合物(B)の混合比率によって調整できる。
上記に挙げた化合物(B)の例示の中で、化合物(B)単独で硬化させた硬化物の屈折率が、プレポリマー(A)を単独で硬化させた硬化物の屈折率より低いものは、これをプレポリマー(A)に配合することにより、プレポリマー(A)の硬化物よりも屈折率を下げることができる。
屈折率を上げる化合物(B)を用いる場合は、屈折率を下げる化合物(B)と組み合わせることによって、クラッド20の屈折率を、コア10の屈折率よりも低くできる。
【0033】
クラッド20は、比較的低分子量の化合物(B)を含むため、均一な層となりやすく、硬化の際に表面が平坦になりやすい。また化合物(B)は架橋反応するため良好な耐熱性に寄与する。
クラッド20に含まれる、プレポリマー(A)と化合物(B)との合計質量に対する、プレポリマー(A)の割合は1〜97質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、8〜35質量%がさらに好ましい。プレポリマー(A)の含有割合が多いほど高耐熱性が得られやすく、化合物(B)の含有割合が多いほどクラッド20表面の平坦性が良好となりやすい。
【0034】
<光導波路の製造方法>
以下、本発明の光導波路の製造方法の一例として、前記光導波路1を製造する方法について説明する。
[第1実施形態]
本実施形態の光導波路1の製造方法は、下記工程(I−A)〜(IV−A)を有する。
(I−A)
図2に示すように、フレキシブルな基材30(以下、単に「基材30」という。)上に、アンダークラッド層22を形成する工程。
(II−A)プレポリマー(A)からなるコア形成用樹脂、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」という。)からなる溶媒を含むコア形成用樹脂組成物(以下、「組成物(a)」という。)を、アンダークラッド層22上に塗布し、プリベークを行って、アンダークラッド層22上にコア前駆体層12を形成した積層体33を得る工程。
(III−A)コア前駆体層12を露光、現像してパターニングし、コア10を形成する工程。
(IV−A)アンダークラッド層22およびコア10上にオーバークラッド層24を形成する工程。
【0035】
工程(I−A):
例えば、
図3に示すように、基材30が巻き回されたロール40を用意し、ロール40から基材30を送り出し、ダイコータ41によって基材30上にアンダークラッド層形成用樹脂組成物(以下、組成物(b)という。)を塗布し、ベーク手段42にて加熱および/または光照射によってベークを行うことで、
図2に示すように、基材30上にアンダークラッド層22を形成した積層体31を得た後、さらにロール43から送り出される保護フィルム32を積層体31のアンダークラッド層22上に積層してロール44に巻き取る。
【0036】
基材30としては、例えば、ロール・トゥ・ロール方式でロールに巻き取り可能な柔軟性を有するフィルム状またはシート状の基材が挙げられ、プラスチックフィルム、シリコーンフィルム等が挙げられる。プラスチックフィルムの材料としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
また、保護フィルム32としては、基材30で挙げたものと同じものが挙げられる。アンダークラッド層22上に保護フィルム32を積層することで、ロールに巻き取った際にチリやゴミを巻き込む等してアンダークラッド層22の表面に傷が生じること、および基材30裏面からアンダークラッド層22への転写を防ぐことができる。
【0037】
組成物(b)としては、例えば、プレポリマー(A)、化合物(B)、および溶媒を必須成分として含み、必要に応じて熱硬化促進剤、感光剤、接着性向上剤等の添加剤を含む硬化性組成物が挙げられる。
組成物(b)に使用する溶媒は、プレポリマー(A)および化合物(B)を溶解または分散できるものであればよく、例えば、PGMEA、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、イソ酪酸イソブチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジブチルケトン等が挙げられる。
【0038】
組成物(b)(100質量%)中のプレポリマー(A)と化合物(B)の合計の割合は、コアとの密着性、フィルム化した時のフレキシブル性の点から、1質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。また、前記割合は、コスト、光の閉じ込めの点から、99質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
組成物(b)中におけるプレポリマー(A)と化合物(B)との合計質量に対する、プレポリマー(A)の割合は、1〜97質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、8〜35質量%がさらに好ましい。プレポリマー(A)の含有割合が多いほどアンダークラッド層22の高耐熱性が得られやすく、化合物(B)の含有割合が多いほどアンダークラッド層22表面の平坦性が良好となりやすい。
【0039】
加熱によってベークを行う場合、組成物(b)は熱硬化促進剤を含んでもよい。熱硬化促進剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、過酸化ジ−tert−ブチル、過酸化ジクミル等が挙げられる。
また、光照射によってベークを行う場合、組成物(b)は感光剤を含んでもよい。感光剤としては、IRGACURE 907(α−アミノアルキルフェノン系)、IRGACURE 369(α−アミノアルキルフェノン系)、DAROCUR TPO(アシルホスフィンオキサイド系)、IRGACURE OXE01(オキシムエステル誘導体)、IRGACURE OXE02(オキシムエステル誘導体)(いずれもチバスペシャリティーケミカルズ社製)等が挙げられる。これらのうち、DAROCUR TPO、IRGACURE OXE01、IRGACURE OXE02が特に好ましい。
また、組成物(b)は、接着性向上剤を含んでもよい。これにより、アンダークラッド層22とそれに接する層との密着性が向上する。接着性向上剤としては、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0040】
加熱によりアンダークラッド層22を形成する場合、加熱温度は、120〜500℃が好ましく、150〜210℃がより好ましい。加熱温度が下限値以上であれば、アンダークラッド層を充分に架橋することが容易になる。加熱温度が上限値以下であれば、アンダークラッド層を充分に架橋しつつ、材料が飛散もしくは分解することを抑制することが容易になる。
また、加熱時間は、0.1〜3時間が好ましい。
光照射によりアンダークラッド層22を形成する場合、積算照度は、10〜2000mJ/cm
2が好ましく、100〜1000mJ/cm
2がより好ましい。積算照度が下限値以上であれば、充分に架橋させ、硬化させることが容易になる。積算照度が上限値以下であれば、処理時間を短縮でき、生産性が向上する。
【0041】
工程(II−A):
図4に示すように、保護フィルム32でアンダークラッド層22を保護した積層体31をロール44から送り出し、アンダークラッド層22上の保護フィルム32を剥離してロール45に巻き取り、積層体31のアンダークラッド層22上に、ダイコータ46によって組成物(a)を塗布し、オーブン47で加熱することでプリベークを行い、
図2に示すように、アンダークラッド層22上にコア前駆体層12を形成した積層体33を得た後、ロール48から送り出した保護フィルム34をコア前駆体層12上に積層してロール49に巻き取る。
プリベークを行うと、プレポリマー(A)の架橋性官能基の一部が反応し、半硬化状態のコア前駆体層12が形成される。半硬化状態とは、硬化反応が一部しか進行しておらず、後述する工程(III−A)の露光後の現像において、現像液に溶解して除去され得る状態を意味する。
【0042】
組成物(a)は、プレポリマー(A)からなるコア形成用樹脂と、PGMEAからなる溶媒を必須成分として含む硬化性組成物である。組成物(a)は、必要に応じて、組成物(b)で挙げた熱硬化促進剤、感光剤、接着性向上剤等の添加剤を含んでもよい。
組成物(a)(100質量%)中のプレポリマー(A)の割合は、透明性、耐熱性、フレキシブル性、密着性、硬化性の点から、20質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。また、前記プレポリマー(A)の割合は、組成物(a)の塗布が可能な量の溶媒を含有させられる範囲内でできるだけ多いことが好ましい。
【0043】
本発明者等が、コア形成用樹脂としてプレポリマー(A)を使用した場合にコアにクラックが生じやすいことについて検討したところ、プレポリマー(A)以外の樹脂を使用した場合に比べ、プリベークによりコア前駆体層を形成した後から露光前までの取り扱いにおいて、湾曲等によってコア前駆体層にクラックが生じやすくなっていることが要因であると判明した。特にロール・トゥ・ロール方式を採用し、コア前駆体層を形成した積層体をロールに巻き取るステップがある場合、ロールに巻き取られることでコア前駆体層が湾曲するためクラックが生じやすくなる。この問題についてさらに検討したところ、プリベーク後のコア前駆体層の溶媒の含有量を特定の範囲に制御することで、コア前駆体層でのクラックの発生を抑制できることを見い出した。
すなわち、本実施形態では、工程(II−A)において、コア前駆体層12の乾燥固形分の質量(単位:g)に対する、プリベーク後のコア前駆体層12に含有される溶媒の質量(単位:g)の割合Xを、0.14〜0.48とすることを特徴とする。
【0044】
前記割合Xを0.14以上とすることで、コア前駆体層12を形成した積層体33をロール49に巻き取る際等、製造時において積層体33を取り扱う際にコア前駆体層12にクラックが生じることが抑制される。このような効果が得られる要因は、以下のように考えられる。プレポリマー(A)は、他の樹脂に比べて、完全に硬化していない状態で含有する溶媒量が少なくなると、柔軟性が小さくなり脆くなる性質を有すると考えられる。しかし、前記割合Xを0.14以上とすることで、コア前駆体層12が溶媒で適度に膨潤した状態となり、プリベーク後においてもコア前駆体層12に充分な柔軟性が得られる。これにより、コア前駆体層12が脆くなることが抑制され、取り扱いの際に湾曲してもクラックの発生が抑制されると考えられる。
また、コア前駆体層12は、溶媒の含有量が多いほどクラックが生じ難いが、溶媒の含有量が多すぎるとタッキングが生じる。前記割合Xを0.48以下とすることで、コア前駆体層12にタッキングが生じることを抑制できる。前記割合Xは、コア前駆体層12にタッキングが生じることをより抑制できることから、0.37以下が好ましい。
【0045】
前記割合Xは、本発明の製造方法とは別に、以下に示す試験を行うことで算出される。
割合Xを求めようとする本発明の特定の実施態様の製造方法と同条件で、下記工程(x1)および(x2)で各試験片を作成して、その質量を測定する。
(x1)所定の寸法の基材上にアンダークラッド層を形成した試験片−Iを作成し、試験片−Iの質量W
1(単位:g)を測定する。
(x2)試験片−Iのアンダークラッド層上に組成物(a−1)を塗布し、プリベークを行って試験片−IIとし、試験片−IIの質量W
2(単位:g)を測定する。
その後、試験片−IIのコア前駆体層を190℃で1時間加熱して完全硬化(フルベーク)させ、溶媒を除去して試験片−IIIとし、該試験片−IIIの質量W
3(単位:g)を測定する。そして、質量W
2からW
3を差し引いて、プリベーク後のコア前駆体層に含有される溶媒の質量Y(=W
2−W
3)を算出し、質量W
3から質量W
1を差し引いて、コア前駆体層の乾燥固形分の質量Z(=W
3−W
1)を算出する。その後、式X=Y/Zにより割合Xを算出する。
前記試験により、プリベークにおける加熱温度および加熱時間の条件と、割合Xの関係がわかるので、光導波路1の製造において試験した条件と同条件のプリベークを採用した際の割合Xがわかる。
【0046】
前記割合Xは、オーブン47における加熱温度、処理時間等のプリベークの条件を調節することで調節できる。加熱温度が高く、処理時間が長いほど割合Xが小さくなる。
プリベークの加熱温度は、64〜108℃が好ましく、80〜90℃がより好ましい。加熱温度が下限値以上であれば、コア前駆体層12にタッッキングが生じ難くなる。加熱温度が上限値以下であれば、処理時間を短縮でき、生産性が向上する。
プリベークの処理時間は、0.1〜10分が好ましく、0.5〜2分がより好ましい。処理時間が下限値以上であれば、コア前駆体層12にタッキング生じにくく、さらっとしやすい。処理時間が上限値以下であれば、処理時間を短縮でき、生産性が向上する。
【0047】
プリベークを行ってコア前駆体層12を形成した後は、得られた積層体33のコア前駆体層12上に保護フィルム34を積層してロール49に巻き取る。これにより、積層体33を長時間保存する場合でも、コア前駆体層12からの溶媒の揮発量をより低減でき、コア前駆体層12に含有される溶媒の前記割合Xを前記範囲内に維持することが容易になる。
保護フィルム34としては、基材30で挙げたプラスチックフィルム、シリコーンフィルム等が使用できる。
【0048】
工程(III−A):
アンダークラッド層22上のコア前駆体層12を、フォトマスクを介して露光、現像してパターニングすることで、
図2に示すように、アンダークラッド層22上にコア10を形成する。つまり、コア前駆体層12をフォトリソグラフ法で加工してコア10を形成する。現像後は、必要に応じて仕上げのポストベークを行ってもよい。
工程(III−A)で露光を行うまで、コア前駆体層12における前記溶媒の質量の割合Xが前記範囲内に制御されるようにする。
【0049】
コア前駆体層12の露光は、保護フィルム34が光を透過する場合、保護フィルム34を積層したまま行ってもよく、保護フィルム34を取り除いた後に行ってもよい。保護フィルム34を積層したまま露光を行う場合は、保護フィルム34上にフォトマスクを配置すればよい。また、保護フィルム34が光を透過しない場合は、保護フィルム34を取り除いた後に露光を行う。
【0050】
工程(IV−A):
アンダークラッド層22およびコア10上にオーバークラッド形成用樹脂組成物(以下、「組成物(c)」という。)を塗布し、アンダークラッド層22の場合と同様に、加熱および/または光照射を行ってベークを行い、
図2に示すように、オーバークラッド層24を形成する。これにより、光導波路1が得られる。基材30は、必要に応じて剥離して取り除いてもよい。
組成物(c)としては、組成物(b)で挙げたものと同じものが挙げられる。組成物(b)と組成物(c)の組成は、アンダークラッド層22とオーバークラッド層24の屈折率がコア10の屈折率よりも低くなるものであれば、同じであってもよく、異なっていてもよい。
オーバークラッド層24を形成する際の加熱条件、光照射条件は、アンダークラッド層22を形成する場合と同様の条件を採用できる。
【0051】
なお、アンダークラッド層22およびコア10上にオーバークラッド層24を形成する方法は、前記方法には限定されない。例えば、別の基材上にオーバークラッド層24となる硬化膜を一旦形成しておき、該基材から剥離した前記硬化膜を熱ラミネート法によりアンダークラッド層22およびコア10上に貼り合わせてオーバークラッド層24を形成してもよい。
【0052】
[第2実施形態]
以下、光導波路1の製造方法の他の実施形態について説明する。第2実施形態の光導波路1の製造方法は、工程(I−B)〜(IV−B)を有する。
(I−B)
図5に示すように、フレキシブルな第1の基材50(以下、単に「第1の基材50」という。)上にアンダークラッド層22を形成する工程。
(II−B)組成物(a)を、フレキシブルな第2の基材51(以下、単に「第2の基材51」という。)上に塗布し、プリベークを行ってコア前駆体層12を形成する工程。
(III−B)第2の基材51からコア前駆体層12を、第1の基材50上に形成されたアンダークラッド層22上に熱ラミネート法で積層した後、コア前駆体層12を露光、現像してパターニングし、コア10を形成する工程。
(IV−B)アンダークラッド層22およびコア10上にオーバークラッド層24を形成する工程。
【0053】
工程(I−B):
例えば、第1実施形態の工程(I−A)と同様にして、第1の基材50が巻き回されたロールを用意し、該ロールから第1の基材50を送り出し、ダイコータ等で第1の基材50上に組成物(b)を塗布し、加熱および/または光照射によってベークを行うことで、
図5に示すように、第1の基材50上にアンダークラッド層22を形成した積層体52を得た後、さらにアンダークラッド層22上に保護フィルム53を積層してロールに巻き取る。
【0054】
第1の基材50および保護フィルム53としては、第1実施形態の基材30で挙げたものと同じものが挙げられる。
加熱温度、加熱時間、光照射の積算照度等のベーク条件は、第1実施形態の工程(I−A)の条件と同様である。
【0055】
工程(II−B):
例えば、
図6に示すように、第2の基材51が巻き回されたロール60を用意し、そのロール60から送り出した第2の基材51上に、ダイコータ61によって組成物(a)を塗布し、オーブン62で加熱することでプリベークを行い、
図5に示すように、第2の基材51上にコア前駆体層12を形成した積層体54を得た後、ロール63から送り出した保護フィルム55を積層体54のコア前駆体層12上に積層してロール64に巻き取る。
【0056】
第2の基材51としては、例えば、ロール・トゥ・ロール方式でロールに巻き取り可能な柔軟性を有し、形成したコア前駆体層12を剥離しやすいフィルム状またはシート状の基材が好ましい。具体的には、表面にシリコーンが塗布されたプラスチックフィルム等の離型フィルム等が挙げられる。
【0057】
第2実施形態についても、工程(II−B)において、コア前駆体層12の乾燥固形分の質量に対する、プリベーク後のコア前駆体層12に含有される溶媒の質量の割合Xを0.14〜0.48とすることを特徴とする。これにより、露光までの積層体54の取り扱いの際にコア前駆体層12にクラックやタッキングが生じることを抑制でき、コア10にクラック等の不具合のない高品質な光導波路1が得られる。また、コア前駆体層12にタッキングが生じることをより抑制できることから、前記割合Xの上限は、0.37が好ましい。
オーブン62における加熱温度、処理時間等のプリベーク条件の好ましい態様は、第1実施形態におけるプリベーク条件の好ましい態様と同じである。
【0058】
第2実施形態における割合Xは、本発明の製造方法とは別に、以下に示す試験を行って算出される。
所定の寸法の第2の基材を試験片−IVとし、試験片−IVの質量W
4を測定する。そして、割合Xを求めようとする本発明の特定の実施態様の製造方法と同条件で、試験片−IV上に組成物(a−1)を塗布し、プリベークを行って試験片−Vとし、該試験片−Vの質量W
5(単位:g)を測定する。その後、試験片−Vのコア前駆体層を190℃で1時間加熱して完全硬化(フルベーク)させ、溶媒を除去して試験片−VIとし、該試験片−VIの質量W
6(単位:g)を測定する。そして、質量W
5からW
6を差し引いて、プリベーク後のコア前駆体層に含有される溶媒の質量Y(=W
5−W
6)を算出し、質量W
6から質量W
4を差し引いて、コア前駆体層の乾燥固形分の質量Z(=W
6−W
4)を算出する。その後、式X=Y/Zにより割合Xを算出する。
前記試験により、プリベークにおける加熱温度および加熱時間の条件と、割合Xの関係がわかるので、光導波路1の製造において試験の条件と同条件のプリベークを採用した際の割合Xがわかる。
【0059】
プリベークを行ってコア前駆体層12を形成した後は、得られた積層体54のコア前駆体層12上に保護フィルム55を積層してロール64に巻き取る。これにより、積層体54を長時間保存する場合でも、コア前駆体層12からの溶媒の揮発量をより低減でき、コア前駆体層12に含有される溶媒の前記割合Xを前記範囲内に維持することが容易になる。
保護フィルム55としては、第1実施形態の基材30で挙げたプラスチックフィルム、シリコーンフィルム等が使用できる。
【0060】
工程(III−B):
積層体54のコア前駆体層12を、積層体52のアンダークラッド層22側に熱ラミネート法で積層し、第1の基材50、アンダークラッド層22およびコア前駆体層12が積層された積層体56を得た後、第1実施形態の工程(III−A)と同様にして、フォトマスクを介してコア前駆体層12を露光、現像してパターニングし、コア10を形成する。
コア前駆体層12の積層の具体的な手順は、積層体52のアンダークラッド層22側にコア前駆体層12を積層した積層体56が得られれば特に限定されない。例えば、
図7に示すように、保護フィルム53を剥離した積層体52と、保護フィルム55を剥離した積層体54を、コア前駆体層12とアンダークラッド層22が向かい合うように熱ラミネート法により貼り合わせる方法(B−1)、保護フィルム53を剥離した積層体52と、第2の基材51を剥離したコア前駆体層12と保護フィルム55の積層体を、コア前駆体層12とアンダークラッド層22が向かい合うように熱ラミネート法により貼り合わせる方法(B−2)等が挙げられる。方法(B−1)および方法(B−2)のいずれについても、得られた積層体における第2の基材51または保護フィルム55は、積層体56のコア前駆体層12を保護する保護フィルムとしてそのまま積層しておいてもよく、剥離してもよい。
【0061】
露光、現像は、第2の基材51または保護フィルム55が光を透過する場合、積層体56のコア前駆体層12上に第2の基材51または保護フィルム55を積層した状態で行ってもよい。
現像後は、必要に応じて仕上げのポストベークを行ってもよい。
【0062】
積層体52とコア前駆体層12を熱ラミネートする際の温度は、コア前駆体層12におけるプレポリマー(A)の架橋性官能基の反応が過度に進行せず、露光、現像によるパターニングの精度を損なわない範囲であればよい。具体的には、40〜120℃が好ましい。
【0063】
工程(IV−B):
第1実施形態の工程(IV−A)と同様にして、アンダークラッド層22およびコア10上に、オーバークラッド層24を形成する。第1の基材50は、必要に応じて剥離して取り除いてもよい。
【0064】
以上説明した本発明の光導波路の製造方法によれば、コア前駆体層の乾燥固形分の質量に対する、当該コア前駆体層に含有される溶媒の質量の割合Xを、特定の範囲内に制御することで、製造中の取り扱い時にコア前駆体層にクラックやタッキングが生じることを抑制できる。そのため、コアにクラック等の不具合がない高品質な光導波路が安定して得られる。
ロール・トゥ・ロール方式を採用し、コア前駆体層を形成した積層体を露光前に一旦ロールに巻き取るステップを有する場合、ロールに巻き取られることでコア前駆体層が湾曲してコア前駆体層にクラックが生じる可能性が高まる。しかし、本発明の光導波路の製造方法は、この場合でもクラックの発生を抑制できるため、ロール・トゥ・ロール方式を採用する光導波路の製造に特に有効である。
【0065】
本発明の光導波路の製造方法は、前述した方法には限定されない。例えば、コア前駆体層を形成した積層体を露光前に一旦ロールに巻き取るステップを有さない方法であってもよい。また、露光まで前記割合Xを前記範囲内に制御できれば、コア前駆体層上に保護フィルムを積層しない方法であってもよい。また、組成物(a)〜(c)の塗布方法は、スピンコート等の他の方法であってもよい。
【実施例】
【0066】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
(プレポリマー(A1−1))
N,N−ジメチルアセトアミド(以下、「DMAc」という。)中で、ペルフルオロビフェニルと1,3,5−トリヒドロキシベンゼンとを炭酸カリウムの存在下に反応させた後、つづいて4−アセトキシスチレンを水酸化カリウムの存在下に反応させてプレポリマーを合成した。得られたプレポリマーのDMAc溶液を塩酸水溶液に投入することで再沈精製し、真空乾燥して粉末状のプレポリマー(A1−1)を得た。
【0067】
(組成物(a−1))
プレポリマー(A1−1)の48g、安定化剤として4−tert−ブチルカテコール(TBC)の0.0144g、および溶媒としてPGMEAの52gをサンプル瓶に入れ、ミックスロータを用いて室温で72時間混合した後、濾過装置(ミリポア社製、フィルタの孔径:5μm)を用いて濾過して組成物(a−1)を得た。
【0068】
(組成物(b−1))
プレポリマー(A1−1)の48g、化合物(B)としてポリプロピレングリコール#400(9PG)の192g、熱硬化促進剤として過酸化ベンゾイル(日油社製)の52g、安定化剤としてTBCの0.0144g、および溶媒としてPGMEAの52gをサンプル瓶に入れ、ミックスロータを用いて室温で72時間混合した後、濾過装置(ミリポア社製、フィルタの孔径:5μm)を用いて濾過して、同じ組成の組成物(b−1)を得た。
【0069】
コア前駆体層の乾燥固形分の質量に対する、プリベーク後のコア前駆体層に含まれる溶媒の質量の割合Xと、コア前駆体でのクラックおよびタッキングの発生について、以下に示すような試験を行った。
[例1]
フレキシブルな基材としてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(長さ300mm×幅150mm×厚み188μm)を使用し、その表面に、ダイコータにより組成物(b−1)を塗布し、190℃で1時間加熱して、PETフィルム上に厚さ15μmのアンダークラッド層を形成して試験片−Iとした。得られた試験片−Iの質量A(W
1)は1.0727gであった。
次いで、得られた試験片−Iのアンダークラッド層上に、組成物(a−1)を厚さ120μmとなるようにダイコータにより塗布し、試験片−IAとした。積層体−IAの質量Bは1.4265gであった。その後、試験片−IAに対して、100℃で5分間加熱することでプリベークを行って、アンダークラッド層上にコア前駆体層を形成した試験片−IIを得て、直径3インチのロールに巻き取った。プリベーク後の試験片−IIの質量C(W
2)は1.2965gであった。
次いで、試験片−IIをロールから引き出し、190℃で1時間加熱してコア前駆体層を完全硬化(フルベーク)させ、溶媒を除去して試験片−IIIを得た。フルベーク後の試験片−IIIの質量D(W
3)は1.2486gであった。
【0070】
[例2〜28]
コア前駆体層を形成する際のプリベークの加熱温度を表1〜3に示すように変更し、プリベーク後のコア前駆体層に含有される溶媒の割合Xを表1〜3に示すように変更した以外は、例1と同様にして、コア前駆体層を形成した積層体を作成してロールに巻き取った後に、該ロールから引き出してコア前駆体層を完全硬化(フルベーク)させて溶媒を除去し、前記質量A〜Dを測定した。
【0071】
(割合X等の算出方法)
プリベーク後のコア前駆体層に含有される溶媒の質量Y(=C−D)と、コア前駆体層の乾燥固形分の質量Z(=D−A)を算出し、式X=Y/Zにより割合Xを算出した。また、前記割合Xの他に、以下に示す割合G、H、Iを算出した。
割合G(G=1−F/E):組成物(a−1)の塗布量に対する、プリベークにより除去された溶媒の質量の割合。
割合H(H=1−Z/E):組成物(a−1)の塗布量に対する、コア前駆体層に含まれる溶媒の質量の割合。
割合I(I=Y/F):プリベーク後のコア前駆体層の質量に対する、プリベーク後のコア前駆体層に含まれる溶媒の質量の割合。
【0072】
[評価方法]
各例で得られた積層体について、フルベーク後のコア前駆体層のクラックおよびタックの有無を確認し、以下の基準で評価した
1.タッキングの評価
○:表面がさらさらしている。
△:触るとあとがつくが、製造上特に問題ない。
×:べとつく。
2.クラックの評価
○:3インチコアに巻きつけても膜表面がひび割れない。
△:6インチコアに巻きつけても膜表面がひび割れないが、3インチコアに巻きつけると、膜表面がひび割れる。
×:6インチコアに巻きつけて、膜表面がひび割れる。
各例の結果を表1〜3に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
表1〜3に示すように、割合Xが0.14よりも小さい例24〜28では、コア前駆体層を形成した積層体をロールに巻き取ったことで、コア前駆体層にクラックが生じたのに対し、割合Xを0.14以上とした例1〜23ではクラックの発生が抑制された。さらに、割合Xが0.48以下の例1〜23では、タッキングの発生も抑制されており、割合Xが0.37以下の例5〜23において特にタッキングの発生が抑制された。