(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5786998
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】有機性排水の生物処理方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/12 20060101AFI20150910BHJP
C02F 3/06 20060101ALI20150910BHJP
C02F 3/10 20060101ALI20150910BHJP
C02F 1/56 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
C02F3/12 B
C02F3/12 H
C02F3/12 F
C02F3/12 D
C02F3/12 A
C02F3/12 M
C02F3/12 S
C02F3/06
C02F3/10 Z
C02F1/56 Z
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-71668(P2014-71668)
(22)【出願日】2014年3月31日
【審査請求日】2015年2月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】藤島 繁樹
【審査官】
片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−305295(JP,A)
【文献】
特開2003−260479(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/103124(WO,A1)
【文献】
特開平02−017998(JP,A)
【文献】
特開昭59−082997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00−34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性排水を生物処理槽で生物処理する有機性排水の生物処理方法であって、
生物処理水中の汚泥を該生物処理槽内で固液分離するために、生物処理槽の排水出口側に仕切板を設けて該生物処理槽内を生物処理室と該排水出口側の上向流流路とに区画し、該生物処理室からの生物処理水を該上向流流路にLV0.5〜5m/hで上向流通水し、該上向流流路の上部の排水出口から上澄水を槽外に排出する生物処理方法において、
該仕切板に沿って該生物処理室内に区画板を設けることにより、該仕切板と区画板との間に、上部及び下部がいずれも該生物処理室に連通した循環流路を形成し、生物処理室内の生物処理水の一部を該仕切板と区画板との間の循環流路に前記上向流流路におけるLVよりも大きいLVにて上向流通水することを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項2】
有機性排水を多段に設けられた生物処理槽で生物処理する方法であって、
第一段の生物処理槽において、分散菌による有機物の分解により分散菌の増加した第一生物処理水を生成させ、
最後段の生物処理槽において、最終生物処理水を生成させる有機性排水の生物処理方法であって、
最終生物処理水中の汚泥を最後段の生物処理槽内で固液分離するために、生物処理槽の排水出口側に仕切板を設けて該生物処理槽内を生物処理室と該排水出口側の上向流流路とに区画し、該生物処理室からの生物処理水を該上向流流路にLV0.5〜5m/hで上向流通水し、該上向流流路の上部の排水出口から上澄水を槽外に排出する生物処理方法において、
該仕切板に沿って該生物処理室内に区画板を設けることにより、該仕切板と区画板との間に、上部及び下部がいずれも該生物処理室に連通した循環流路を形成し、生物処理室内の生物処理水の一部を該仕切板と区画板との間の循環流路に前記上向流流路におけるLVよりも大きいLVにて上向流通水することを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項3】
請求項2において、最後段の生物処理槽において、揺動床の生物膜処理を行って最終生物処理水を生成させることを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項4】
請求項3において、揺動床担体が、シート状の発泡プラスチックであることを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、原水の通水と通水停止とを繰り返す方法であって、通水停止時間を通水時間の1/20〜1/4とすることを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記循環流路において曝気を行うことにより、該循環流路に上向流を形成することを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記循環流路における上向流のLVを前記上向流流路のLVの1.5〜200倍とすることを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、生物処理槽にカチオン系高分子凝集剤を添加することを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項9】
有機性排水を生物処理槽で生物処理する有機性排水の生物処理装置であって、
生物処理水中の汚泥を該生物処理槽内で固液分離するために、生物処理槽の排水出口側に仕切板を設けて該生物処理槽内を生物処理室と該排水出口側の上向流流路とに区画し、該生物処理室からの生物処理水を該上向流流路に上向流通水し、該上向流流路の上部の排水出口から上澄水を槽外に排出する生物処理装置において、
該仕切板に沿って該生物処理室内に区画板を設けることにより、該仕切板と区画板との間に、上部及び下部がいずれも該生物処理室に連通した循環流路を形成し、生物処理室内の生物処理水の一部を該仕切板と区画板との間の循環流路に前記上向流流路におけるLVよりも大きいLVにて上向流通水する通水手段を設けたことを特徴とする有機性排水の生物処理装置。
【請求項10】
有機性排水を多段に設けられた生物処理槽で生物処理する装置であって、
第一段の生物処理槽において、分散菌による有機物の分解により分散菌の増加した第一生物処理水を生成させ、
最後段の生物処理槽において、最終生物処理水を生成させる有機性排水の生物処理装置であって、
最終生物処理水中の汚泥を最後段の生物処理槽内で固液分離するために、生物処理槽の排水出口側に仕切板を設けて該生物処理槽内を生物処理室と該排水出口側の上向流流路とに区画し、該生物処理室からの生物処理水を該上向流流路に上向流通水し、該上向流流路の上部の排水出口から上澄水を槽外に排出する生物処理装置において、
該仕切板に沿って該生物処理室内に区画板を設けることにより、該仕切板と区画板との間に、上部及び下部がいずれも該生物処理室に連通した循環流路を形成し、生物処理室内の生物処理水の一部を該仕切板と区画板との間の循環流路に前記上向流流路におけるLVよりも大きいLVにて上向流通水する通水手段を設けたことを特徴とする有機性排水の生物処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生活排水、下水、食品工場、パルプ工場、半導体製造排水、液晶製造排水といった有機性排水の処理に広く利用することができる有機性排水の生物処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機性排水を生物処理する場合に用いられる活性汚泥法は、処理水質が良好で、メンテナンスが容易であるなどの利点から、下水処理や産業廃水処理等に広く用いられている。しかしながら、活性汚泥法におけるBOD容積負荷は一般に0.5〜0.8kg/m
3/d程度であるため、広い敷地面積が必要となる。また、分解したBODの20〜40%が菌体、即ち汚泥へと変換されるため、大量の余剰汚泥処理も問題となる。活性汚泥法には、汚泥と処理水との固液分離に膜分離装置を利用する膜式活性汚泥法と、沈殿池を用いる沈殿池型の活性汚泥法とがある。膜式活性汚泥法には膜の設置費、交換・維持費がかかるという短所がある。沈殿池型活性汚泥法には設置面積が大きくなるという短所がある。
【0003】
有機性排水の高負荷処理に関しては、担体を添加した流動床法が知られている。この方法を用いた場合、3kg/m
3/d以上のBOD容積負荷で運転することが可能となる。しかしながら、この方法では発生汚泥量は分解したBODの30〜50%程度で、通常の活性汚泥法より高くなることが欠点となっている。
【0004】
特許文献1には、有機性排水をまず、第一処理槽で細菌により処理し、排水に含まれる有機物を酸化分解して非凝集性の細菌の菌体に変換した後、第二処理槽で固着性原生動物に捕食除去させることで余剰汚泥の減量化が可能になることが記載されている。さらに、この方法では高負荷運転が可能となり、活性汚泥法の処理効率も向上するとされている。
【0005】
このように細菌の高位に位置する原生動物や後生動物の捕食を利用した廃水処理方法は、多数考案されている。例えば、特許文献2には、特許文献1の処理方法で問題となる原水の水質変動による処理性能悪化の対策が記載されている。具体的な方法としては、「被処理水のBOD変動を平均濃度の中央値から50%以内に調整する」、「第一処理槽内および第一処理水の水質を経時的に測定する」、「第一処理水の水質悪化時には微生物製剤または種汚泥を第一処理槽に添加する」等の方法をあげている。
【0006】
特許文献3では、細菌、酵母、放線菌、藻類、カビ類や廃水処理の初沈汚泥や余剰汚泥を原生動物や後生動物に捕食させる際に超音波処理または機械攪拌により、捕食されるフロックのフロックサイズを動物の口より小さくさせる方法を提案している。
【0007】
流動床と活性汚泥法の多段処理による有機性排水の生物処理方法としては、特許文献4に記載のものがある。この方法では、後段の活性汚泥法をBOD汚泥負荷0.1kg−BOD/kg−MLSS/dの低負荷で運転することで、汚泥を自己酸化させ、汚泥引き抜き量を大幅に低減できるとしている。
【0008】
特許文献5には、活性汚泥法による生物処理槽の排水出口側に仕切りを設けて上向流の流路を形成し、生物処理水を該流路にLV1〜20m/hで上向流通水し、該流路で沈降した汚泥を生物処理槽に戻し、該流路を上昇した上澄水を槽外に排出する有機性排水の生物処理槽が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭55−20649号公報
【特許文献2】特開2000−210692号公報
【特許文献3】特開昭55−20649号公報
【特許文献4】特許第3410699号公報
【特許文献5】WO2013/103124A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
生物処理槽内に汚泥を維持する方法として沈殿池による汚泥返送、膜による処理水分離がある。沈殿池型による汚泥返送には設置面積が大きくなるという短所がある。また、膜による汚泥返送には膜の設置費、交換・維持費がかかるという短所がある。また、上記の微小動物の捕食作用を利用した活性汚泥法は、実際に有機性廃水処理に用いられており、対象とする排水によっては処理効率の向上、発生汚泥量の減量化は可能である。しかしながら、この汚泥減量効果は安定しないのが現状である。
【0011】
活性汚泥法による生物処理槽に流動床担体を添加することにより、汚泥や微小動物の安定した維持は可能となるが、分離スクリーンが必要になったり、担体による酸素溶解効率の低下する等の課題がある。
【0012】
特許文献5の生物処理槽によると、排水出口側に上向流流路を設け、LV1〜20m/hで上向流通水することにより、生物処理槽内に汚泥や微小動物を安定して維持することが可能となる。
【0013】
しかしながら、上向流流路に気泡が混入した場合などには、上向流流路における汚泥の分離効率が低下し、汚泥が流出したり、生物処理槽内の汚泥濃度が低下するおそれがある。
【0014】
本発明は上記従来の問題点を解決し、活性汚泥法を適用した有機性排水の生物処理において汚泥および微小動物を安定して維持することができ、また、発生汚泥量を大幅に減量化することができると共に、高負荷運転による処理効率の向上と、処理水質の安定化を図ることができる活性汚泥法による有機性排水の生物処理方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1発明の有機性排水の生物処理方法は、有機性排水を生物処理槽で生物処理する有機性排水の生物処理方法であって、生物処理水中の汚泥を該生物処理槽内で固液分離するために、生物処理槽の排水出口側に仕切板を設けて該生物処理槽内を生物処理室と該排水出口側の上向流流路とに区画し、該生物処理室からの生物処理水を該上向流流路にLV0.5〜5m/hで上向流通水し、該上向流流路の上部の排水出口から上澄水を槽外に排出する生物処理方法において、該仕切板に沿って該生物処理室内に区画板を設けることにより、
該仕切板と区画板との間に、上部及び下部がいずれも該生物処理室に連通した循環流路を形成し、生物処理室内の生物処理水の一部を該
仕切板と区画板との間の循環流路に前記上向流流路におけるLVよりも大きいLVにて上向流通水することを特徴とする。
【0016】
第2発明の有機性排水の生物処理方法は、有機性排水を多段に設けられた生物処理槽で生物処理する方法であって、第一段の生物処理槽において、分散菌による有機物の分解により分散菌の増加した第一生物処理水を生成させ、最後段の生物処理槽において、最終生物処理水を生成させる有機性排水の生物処理方法であって、最終生物処理水中の汚泥を最後段の生物処理槽内で固液分離するために、生物処理槽の排水出口側に仕切板を設けて該生物処理槽内を生物処理室と該排水出口側の上向流流路とに区画し、該生物処理室からの生物処理水を該上向流流路にLV0.5〜5m/hで上向流通水し、該上向流流路の上部の排水出口から上澄水を槽外に排出する生物処理方法において、該仕切板に沿って該生物処理室内に区画板を設けることにより、
該仕切板と区画板との間に、上部及び下部がいずれも該生物処理室に連通した循環流路を形成し、生物処理室内の生物処理水の一部を該
仕切板と区画板との間の循環流路に前記上向流流路におけるLVよりも大きいLVにて上向流通水することを特徴とする。
【0017】
第3発明の有機性排水の生物処理装置は、有機性排水を生物処理槽で生物処理する有機性排水の生物処理装置であって、生物処理水中の汚泥を該生物処理槽内で固液分離するために、生物処理槽の排水出口側に仕切板を設けて該生物処理槽内を生物処理室と該排水出口側の上向流流路とに区画し、該生物処理室からの生物処理水を該上向流流路に上向流通水し、該上向流流路の上部の排水出口から上澄水を槽外に排出する生物処理装置において、該仕切板に沿って該生物処理室内に区画板を設けることにより、
該仕切板と区画板との間に、上部及び下部がいずれも該生物処理室に連通した循環流路を形成し、生物処理室内の生物処理水の一部を該
仕切板と区画板との間の循環流路に前記上向流流路におけるLVよりも大きいLVにて上向流通水する通水手段を設けたことを特徴とする。
【0018】
第4発明の有機性排水の生物処理装置は、有機性排水を多段に設けられた生物処理槽で生物処理する装置であって、第一段の生物処理槽において、分散菌による有機物の分解により分散菌の増加した第一生物処理水を生成させ、最後段の生物処理槽において、最終生物処理水を生成させる有機性排水の生物処理装置であって、最終生物処理水中の汚泥を最後段の生物処理槽内で固液分離するために、生物処理槽の排水出口側に仕切板を設けて該生物処理槽内を生物処理室と該排水出口側の上向流流路とに区画し、該生物処理室からの生物処理水を該上向流流路に上向流通水し、該上向流流路の上部の排水出口から上澄水を槽外に排出する生物処理装置において、該仕切板に沿って該生物処理室内に区画板を設けることにより、
該仕切板と区画板との間に、上部及び下部がいずれも該生物処理室に連通した循環流路を形成し、生物処理室内の生物処理水の一部を該
仕切板と区画板との間の循環流路に前記上向流流路におけるLVよりも大きいLVにて上向流通水する通水手段を設けたことを特徴とする。
【0019】
第1〜第4発明において、前記循環流路における上向流のLVを前記上向流流路のLVの1.5〜200倍とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、生物処理槽内に上向流流路を設け、該上向流流路に生物処理水を高LV(0.5〜5m/h)で上向流通水するので、沈降性の良い汚泥が該上向流流路で沈降分離される。これにより、沈降性の良い汚泥を選択的に槽内に保持するとともに、沈降性の悪い汚泥のみを排出することができる。このため、生物処理装置内の汚泥濃度を高く保持することが可能となる。処理水中の汚泥濃度は低いため、場合によっては汚泥を分離するための固液分離装置を省略でき、固液分離装置を設けたとしても、従来のものよりも小型で安価なものとすることが可能となる。
【0021】
この上向流流路に汚泥が溜まったり、生物処理槽の曝気による気泡が上向流流路に混入すると、汚泥の固液分離不良や処理水質の悪化を引き起こすおそれがある。そこで、本発明では、出口側上向流の流路の手前に区画板によって循環流路を設け、この循環流路に、槽内の生物処理液を、出口側上向流流路のLVよりも高LVの上向流にて通水する。これにより、出口側への気泡の流出およびそれに伴う汚泥の流出を防止することができる。
【0022】
本発明の一態様では、原水の通水と通水停止を繰り返し行い、通水時間の1/20から1/4の通水停止期間を設定することにより、出口側上向流流路に溜まった汚泥を槽内の生物処理部に戻すことが出来、処理がより安定する。
【0023】
また、沈降性が過剰に向上し、上向流流路下部で沈殿した汚泥は定期的に引き抜いても良い。また、このように引き抜いた汚泥は、当該生物処理槽内の上流側に返送しても良い。
【0024】
本発明の一態様では、生物処理槽を多段に設け、前段の生物処理槽を、有機物を分散菌に変換する分散菌槽とし、最後段の生物処理槽に、分散菌を捕食する固着性の濾過捕食型微小動物の足場として揺動性担体を設ける。この処理においては、揺動性担体だけでなく沈降性の良い汚泥も微小動物の足場として利用し、微生物濃度を高く維持することができる。
【0025】
揺動床担体をシート状の発泡プラスチックとすることで、より沈降性の良い汚泥を生成させ、槽内に保持することができる。
【0026】
また、凝集剤を添加することで汚泥の沈降性を改善しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の有機性排水の生物処理方法及び装置の実施の形態を示すブロック図である。
【
図2】本発明の有機性排水の生物処理方法及び装置の実施の形態を示すブロック図である。
【
図3】本発明の有機性排水の生物処理方法及び装置の実施の形態を示すブロック図である。
【
図4】本発明の有機性排水の生物処理方法及び装置の実施の形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に図面を参照して本発明の有機性排水の生物処理方法及び装置の実施の形態を詳細に説明する。
図1〜3は本発明の有機性排水の生物処理方法及び装置の実施の形態を示す系統図である。
【0029】
図1〜3において、1は第一生物処理槽、2は第二生物処理槽、11,21は散気管、12は流動床担体、16は担体分離用スクリーン、22は揺動床担体である。
図1〜3において、23は第二生物処理槽2に設けられた仕切板、24は上昇流路であり、この上昇流路24において汚泥が固液分離される。第二生物処理槽2にあっては、仕切板23に沿って生物処理室内に区画板26が設置され、区画板26と仕切板23との間に循環流路27が形成されている。この循環流路27に、上向流を形成するための手段(この実施の形態では、散気ノズル28)が設けられている。なお、
図1〜3において同一機能を奏する部材には同一符号を付してある。
【0030】
図1の態様では、BOD容積負荷1kg/m
3/d以上例えば1〜20kg/m
3/dの原水(有機性排水)を第一生物処理槽1に導入し、散気管11で曝気し、分散性細菌(非凝集性細菌)により、有機成分(溶解性BOD)の70%以上、望ましくは80%以上、さらに望ましくは85%以上を酸化分解する。この第一生物処理槽1のpHは好ましくは6〜8.5とする。ただし、食品製造排水など原水中に油分を多く含む場合や、半導体製造排水や液晶製造排水など原水中に有機性の溶媒や洗浄剤を多く含む場合には分解速度を高くするため、pHは8〜9としても良い。
【0031】
第一生物処理槽1への通水は、一過式とする。第一生物処理槽1のBOD容積負荷を1kg/m
3/d以上、例えば1〜20kg/m
3/d、HRT(原水滞留時間)を24h以下、好ましくは8h以下、例えば0.5〜8hとすることにより、分散性細菌が優占化した処理水を得ることができ、また、HRTを短くすることでBOD濃度の低い排水を高負荷で処理することができる。
【0032】
第一生物処理槽1には、後段の生物処理槽からの汚泥の一部を返送したり、この第一生物処理槽1を二槽以上の多段構成としたり、担体12を添加したりすることにより、BOD容積負荷5kg/m
3/d以上の高負荷処理も可能となる。
【0033】
流動床担体12の形状は、球状、ペレット状、中空筒状、糸状、板状等の任意であり、大きさ(径)は0.1〜10mm程度である。担体12の材料は、天然素材、無機素材、高分子素材等任意であり、ゲル状物質を用いても良い。担体は、流動床担体に限定されるものではなく、固定床担体、揺動性担体のいずれでも良い。固定床担体、揺動性担体を用いた場合には、分離スクリーン16は不要となる。
【0034】
第一生物処理槽1に添加する担体の充填率が高い場合、分散菌は生成せず、細菌は担体に付着するか、糸状性細菌が増殖する。そこで、第一生物処理槽1に添加する担体の充填率を、流動床担体の場合は10%以下、例えば1〜10%とし、固定床担体、揺動性担体の場合は5%以下、例えば0.5〜5%とすることで、濃度変動に影響されず、捕食しやすい分散菌の生成が可能になる。
【0035】
第一生物処理槽1の溶存酸素(DO)濃度を1mg/L以下、好ましくは0.5mg/L以下として、糸状性細菌の増殖を抑制しても良い。
【0036】
第一生物処理槽1の処理水(第一生物処理水)を、後段の第二生物処理槽2に導入し、曝気し、残存している有機成分の酸化分解、分散性細菌の自己分解及び微小動物の捕食による余剰汚泥の減量化を行う。
【0037】
最終段の生物処理槽(この実施の形態では第二生物処理槽2)には、その出口部を囲むように仕切板23が設けられ、この仕切板23に沿って区画板26が設けられ、生物処理槽2内が生物処理室29と、循環流路27と、上向流流路24とに区画されている。この仕切板23の上端は第二生物処理槽2の水面から突出している。仕切板23の下端は第二生物処理槽2の水面から2m以上、特に3〜4m下方に位置している。この仕切板23と槽壁との間が上昇流路24となっている。第二生物処理槽2内の汚泥混合水がこの上昇流路を上昇する間に汚泥が沈降する。本発明では、この上向流路24における上昇流のLVを0.5〜5m/h好ましくは1〜2.5m/h、さらに好ましくは1.5〜2.5m/hとする。なお、第二生物処理槽2には余剰汚泥の取出管25が設けられている。
【0038】
余剰汚泥の取出管25の接続位置は特に限定されるものではないが、上向流流路24または循環流流路27の下方に接続するように設置し、過剰に沈殿した汚泥を引き抜くようにしても良い。
【0039】
第二生物処理槽2の処理水の一部を、上向流流路24の上方あるいは、処理水配管から、上流側に循環させるようにして、原水流量変動時のLV変動を防止するようにしても良い。
【0040】
仕切板23と区画板26との間に循環流路27を形成している。区画板26の上端は第二生物処理槽2の水面よりも低く、下端は第二生物処理槽2の底面よりも高い。これにより、循環流路27の上部及び下部が生物処理室29に連通している。循環流路27内に散気ノズル28が設けられている。
【0041】
散気ノズル28から散気することにより、この循環流路27に上向流流路24のLVの1.5〜200倍、望ましくは2〜150倍のLVの上向流を形成し、出口側すなわち上向流流路24への気泡の流出およびそれに伴う汚泥の流出を防止する。循環流路27に上向流を発生させる方法は曝気のほか、プロペラによる機械攪拌等を採用してもよい。
【0042】
生物処理室29には生物処理室29を曝気するための手段として散気管21が設けられている。循環流路27の上向流を発生させる手段として曝気を用いた場合には、散気管21は省略可能であるが、生物処理室29内のDOおよび循環流路27のLVの両者を適切に維持するために、生物処理室29を曝気するための手段と、循環流路27の上向流発生手段とはそれぞれ個別に設けることが好ましい。
【0043】
第二生物処理槽2では、細菌に比べ増殖速度の遅い微小動物の働きと細菌の自己分解を利用するため、微小動物と細菌が系内に留まるような運転条件及び処理装置を用いる必要がある。そこで、この実施の形態では、第二生物処理槽2には、揺動床担体22を生物処理室29に設置して微小動物の槽内保持量を高めている。
【0044】
揺動床担体22としては、次の条件を満たす軟質シート状物が好ましい。
(1)シート寸法は、槽の深さ方向の長さ100〜400cm×槽の水平方向の奥行5〜200cm×厚み0.5〜5cm。(微小動物が産卵・生育しやすい程度に広い見かけ表面積を有する。)
(2)見かけ表面積500cm
2以上の面を少なくとも2面有する。(微小動物が産卵・生育しやすい程度に広い見かけ表面積を有する。)
(3)素材は発泡合成樹脂特に軟質ポリウレタンフォームが好ましい。(たわみ性を有するため通水を阻害せず生物膜が剥がれやすい)
(4)孔径が0.05〜10mm。(汚泥が付着しやすく剥がれやすい大きさである。)
(5)発泡セルのセル数が5〜125個/25mmである。(汚泥が付着しやすく剥がれやすいセル分布である。)
第二生物処理槽2にこのような薄い板状ないし短冊状の軽量ポリウレタンフォームのような多孔質のシート状揺動床担体を設置すると、揺動床担体が、十分な弾力性を有し、槽内の水の流れの中でたわむ(形状維持しない)ことにより、薄くても十分な機械的強度を持ち、破損することがない。また、たわむことで槽内の通水を阻害することなく均一に混合され、担体の多孔質構造内にも均等に汚泥含有液が通水されるようになる。
【0045】
多孔質担体の発泡セルの条件としては、発泡セルの分布が均一なものが好ましい。発泡セルが多すぎたり、セル径が大きすぎたりすると、多孔質担体の機械的強度が小さくなるため、上記の通り、セル数/25mm(25mmの長さの範囲に存在するセル数)として、上限値が125個/25mm程度であることが好ましい。逆に、発泡セルが少な過ぎたり、セル径が小さすぎたりすると、多孔質担体としての機能を十分に得ることができないことから、多孔質担体の機能を十分に発揮させるために、このセル数/25mmの下限値は5個/25mm程度であることが好ましい。なお、このセル数/25mmについては、走査型電子顕微鏡により撮影した多孔質担体の写真を用い、長さ方向の直線25mmに対して交差する発泡セル数を計測する作業を複数箇所について行い、計測結果の平均値を算出して求めることができる。
【0046】
第二生物処理槽2には、揺動床担体のほかにさらに上向流流路24で分離可能な流動床担体を充填してもよい。
【0047】
第二生物処理槽2では、微小動物を維持するための多量の足場が必要となるが、過度に担体の充填率が多いと槽内の混合不足、汚泥の腐敗などが起こるため、添加する担体の充填率は、0.5〜30%、特に1〜20%程度とすることが望ましい。
【0048】
揺動床担体の好ましい設置形態は次の通りである。
(i)揺動床担体を設置する生物処理槽において、〔揺動床担体の見かけ表面積〕/〔生物処理槽容積〕が1〜50[m−1]である。(負荷増加に合わせて担体量を増加させる。)
なお、見かけ表面積は多孔質の内部の表面積を考慮しない外面の表面積であり、例えば直方体であれば6面の表面積の合計(長さ×幅×2+長さ×厚さ×2+厚さ×幅×2)でる。
(ii)揺動床担体の充填率は、微小動物による生物処理槽以降の生物処理槽(返送ラインに生物処理槽がある場合はそれも含む)の総容積の1〜20%である。(負荷増加に合わせて担体量増加)
(iii)揺動床担体として短冊状シート(長手方向×短手方向×厚み方向)を、揺動床担体の長手方向が槽の深さ方向(鉛直下向き)となるように槽内に設置する。このとき揺動床担体の短手方向の向きは特に限定されず、例えば、槽への流入側から流出側への通水方向と略垂直となるように槽内に設置することができる。
(iv)第二生物処理槽の容量が担体の寸法に対し大きい場合には、担体の上下面に留め具を取り付けたものを複数枚用意し、これを第二生物処理槽の深さ方向/および又は幅方向に所定の枚数を並列させ、SUS等の材質よりなる枠材に担体を取り付けた留め具を固定してユニット化し、更に、この担体ユニットを必要に応じて第二生物処理槽内の水の流れ方向に複数枚設けるようにする。
【0049】
微小動物による捕食を促進させるため、第二生物処理槽2のpHを7.0以下としても良い。
【0050】
第二生物処理槽2では、分散状態の菌体を捕食する濾過捕食型微小動物だけでなく、フロック化した汚泥を捕食できる凝集体捕食型微小動物も増殖する。後者は遊泳しながらフロックを捕食するため、優先化した場合、汚泥は食い荒らされ、微細化したフロック片が散在する汚泥(沈降性の悪い汚泥)となる。また、このフロック片により、特に後段で膜分離を行う膜式活性汚泥法では膜の目詰まりが発生する。そこで、凝集体捕食型微小動物を間引くため、SRTを60日以下望ましくは45日以下の範囲内で一定に制御することが望ましい。ただし15日未満では不必要に頻繁すぎて凝集体捕食型微小動物だけでなく濾過捕食型微小動物の数が減少しすぎるので15日以上とするのが好ましい。
【0051】
第一生物処理槽1では有機物の大部分、すなわち排水BODの70%以上、望ましくは80%以上を分解し、菌体へと変換しておく必要があるが、第一生物処理槽1で溶解性有機物を完全に分解した場合、第二生物処理槽2ではフロックが形成されず、また、微小動物増殖のための栄養も不足し、圧密性の低い汚泥(沈降性の悪い汚泥)のみが優占化した生物処理槽となる。そこで、
図2の通り、原水の一部をバイパスして第二生物処理槽2に供給し、第二生物処理槽2への溶解性BODによる汚泥負荷が0.025kg−BOD/kg−MLSS/d以上となるように運転してもよい。この時のMLSSには担体付着分のMLSSも含む。
【0052】
また、沈降性が悪化した際は、凝集剤を一時的に添加し、沈降性を改善しても良い。凝集剤として、無機凝集剤と有機凝集剤のいずれかまたは両方を生物処理槽最後段添加することが望ましい。無機凝集剤は鉄系、アルミ系だけでなく、スラグ、シリカ、カルシウム等、通常の排水処理に使用されているものを使用できる。同様に有機凝集剤も、アニオン系ポリマー、カチオン系ポリマー以外にも通常の排水処理に使用されているものを使用できるが、中でもカチオン系高分子凝集剤が好適である。
【0053】
揺動性担体が設置できない場合や設置量が制限される場合は、凝集剤の添加頻度を増やすことで沈降性を維持しても良いし、LVを0.5〜5m/h内で低く設定することで汚泥を維持しても良い。
【0054】
本発明のようにLV0.5〜5m/hで沈降分離した分離水に対して、より高度な処理水水質を得るために固液分離として膜分離、凝集沈殿、加圧浮上のいずれを行ってもよい。なお、凝集沈殿や加圧浮上を行うときは、凝集剤の添加量の低減することができる。第二生物処理槽2からの沈降分離水を凝集槽で凝集処理し、次いで固液分離槽(沈殿槽)で沈殿処理して処理水と沈降汚泥とに分離する。また、凝集固液分離を設けず、凝集剤を直接第二生物処理槽に添加し処理水質を向上させても良い。その際、沈降性がよければ、カチオン系ポリマーの添加だけでよい。第二生物処理槽へのカチオン系高分子凝集剤の添加量は0.5〜20mg/L程度が好ましく、さらに1〜10mg/Lがより好ましい。
【0055】
図3のよう無酸素槽30を設け、そこに第二生物処理槽汚泥を循環させることで、凝集体捕食型微小動物の増殖を抑制させても良い。この場合、無酸素槽30のHRTは30min以上とし、DOを消費させるため、原水の一部や第一生物槽処理水の一部または全量を通水しても良い。
【0056】
本発明では、原水の供給と供給停止とを繰り返すようにしてもよい。この場合は、原水の供給時間T
Fと原水の供給停止時間T
Sとの関係は、T
S/T
Fが1/20〜1/4となる程度が好ましい。T
Fは1〜12h程度が好ましい。
【0057】
図1〜3は、本発明の実施の形態の一例を示すものであり、本発明は何ら図示のものに限定されない。例えば、第一生物処理槽1、第二生物処理槽2の後段に第三生物処理槽を設けるなどして、生物処理槽を3段以上に設けてもよい。また、各槽は独立して設けられてもよく、1つのタンク内を仕切板で区画して各槽を形成してもよい。
【0058】
本発明では、区画板26及び仕切板23を有した生物処理槽2を単独で設置して排水処理を行ってもよい。
図4は、その一例を示すものであり、原水が直接的に生物処理槽2に供給され、処理される。
【実施例】
【0059】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0060】
[実施例1(フロー:
図1)]
図1において、容量が88Lの第一生物処理槽1(汚泥返送なし)と150Lの第二生物処理槽2を用い、原水(食品製造排水)について下記の処理を実施した。なお、第一生物処理槽1のDOのみ0.5mg/Lとし、第二生物処理槽2はDO=2〜3mg/Lで運転した。
【0061】
また、第一生物処理槽1には充填率5%で5mm角の流動床担体12を添加し、第二生物処理槽2には板状のポリウレタンフォーム(長さ100cm×幅30cm×厚さ1cm/1枚)よりなる揺動床担体22を設置した。原水CODcrは1250mg/L(BOD=800mg/L)、第一生物処理槽に対するCODcr容積負荷は8.6kg−CODcr/m
3/d、HRT3.5h、全体でのCODcr容積負荷2kg−CODcr/m
3/d、HRT9.5hの条件で運転した。
【0062】
散気ノズル28から散気することにより、循環流路27での上向流のLVを10m/hとした。上向流流路24での上向流LVは5m/hである。
【0063】
その結果、処理水のSSは30mg/Lであり、SRT=30dで第二生物処理槽から引き抜いた余剰汚泥分と合わせた汚泥転換率は0.15kg−SS/kg−CODcrとなった。
【0064】
[比較例1]
区画板26、循環流路27及び散気ノズル28を設けないこと以外は実施例1と同一条件にて処理を行った。
【0065】
その結果、処理水のSSは通常30mg/Lであるが、定期的に出口流路で汚泥の堆積浮上が発生し、その際の処理水はSSは100mg/Lまで上昇した。SRT=30dで第二生物処理槽から引き抜いた余剰汚泥分と合わせた汚泥転換率は0.18kg−SS/kg−CODcrとなった。
[実施例2]
実施例1において、第二生物処理槽2にカチオン系高分子凝集剤(栗田工業株式会社クリファームPC728)を5mg/L添加したこと以外は同一条件にて処理を行った。
【0066】
その結果、処理水のSSは15mg/Lであり、SRT=30dで第二生物処理槽から引き抜いた余剰汚泥分と合わせた汚泥転換率は0.12kg−SS/kg−CODcrとなった。
[実施例3]
実施例1において、原水をT
F=2h供給し、原水供給をT
S=100min停止する供給・停止を繰り返し行うようにしたこと以外は同一条件にて処理を行った。
【0067】
その結果、処理水のSSは20mg/Lであり、SRT=30dで第二生物処理槽から引き抜いた余剰汚泥分と合わせた汚泥転換率は0.13kg−SS/kg−CODcrとなった。
【符号の説明】
【0068】
1 第一生物処理槽
2 第二生物処理槽
12 流動床担体
23 仕切板
24 上向流流路
26 区画板
27 循環流路
28 散気ノズル
29 生物処理室
30 無酸素槽
【要約】
【課題】活性汚泥法を適用した有機性排水の生物処理において、汚泥および微小動物を安定して維持することができ、また、発生汚泥量を大幅に減量化することができると共に、高負荷運転による処理効率の向上と、処理水質の安定化を図ることができる活性汚泥法による有機性排水の生物処理方法及び装置を提供する。
【解決手段】第二生物処理槽2内に区画板26と仕切板23とにより循環流路27及び上向流流路24が設けられている。生物処理室29内の生物処理水は循環流路27に上向流流路24よりも高LVで上向流通水される。上向流流路24を0.5〜5m/hで上昇して、固液分離された処理水が槽2から取り出される。
【選択図】
図1