特許第5787098号(P5787098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5787098半導体基板の洗浄方法および洗浄システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787098
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】半導体基板の洗浄方法および洗浄システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20150910BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20150910BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20150910BHJP
   C23G 1/10 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   H01L21/304 647Z
   H01L21/304 648G
   H01L21/304 643A
   B08B3/08 Z
   H01L21/306 F
   C23G1/10
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-183307(P2012-183307)
(22)【出願日】2012年8月22日
(65)【公開番号】特開2014-41915(P2014-41915A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2015年2月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091926
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】小川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】山川 晴義
【審査官】 行武 哲太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−166064(JP,A)
【文献】 特開2009−263689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TiNが少なくとも一部露出し、シリサイド化処理がされた半導体基板を洗浄する方法であって、
硫酸溶液を電解部に通液しつつ循環させて前記電解部での電解により所定濃度の過硫酸を生成する過硫酸生成工程と、
前記過硫酸生成工程で得た、過硫酸を含有する硫酸溶液と、一種以上のハロゲン化物イオンを含むハロゲン化物溶液とを、前記電解部に通液することなく混合して、混合後において過硫酸を含む酸化剤濃度が0.001〜2mol/Lの混合溶液を生成する溶液混合工程と、
前記混合溶液を加熱する加熱工程と、
加熱された前記混合溶液を移送して前記半導体基板に接触させて洗浄する洗浄工程とを有することを特徴とする半導体基板の洗浄方法。
【請求項2】
前記加熱工程では、前記混合溶液の液温が80〜200℃の沸点以下の温度となるように加熱することを特徴とする請求項1記載の半導体基板の洗浄方法。
【請求項3】
80℃以上の前記混合溶液を生成してから5分以内に前記半導体基板に接触させることを特徴とする請求項2に記載の半導体基板の洗浄方法。
【請求項4】
前記半導体基板は前記シリサイド化処理に用いた金属膜を有し、該金属膜が白金を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体基板の洗浄方法。
【請求項5】
前記混合溶液において、前記ハロゲン化物イオンの濃度の総和が0.2mmol/L〜2mol/Lであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体基板の洗浄方法。
【請求項6】
前記硫酸溶液の濃度が、前記混合溶液において50〜95質量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の半導体基板の洗浄方法。
【請求項7】
前記加熱工程の初期に加熱されて移送される溶液を、前記半導体基板に接触させることなく系外に排出することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の半導体基板の洗浄方法。
【請求項8】
前記加熱工程に一過式の加熱過程を含み、前記一過式の加熱過程に溶液を通液しつつ加熱を開始することを特徴とする請求項7記載の洗浄方法。
【請求項9】
前記洗浄工程後、系内の混合溶液を加熱工程における経路を通し、かつ前記経路で加熱することなく系外に排出する混合溶液排出工程を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の半導体基板の洗浄方法。
【請求項10】
TiNが少なくとも一部露出し、シリサイド化処理がされた半導体基板を洗浄液によって洗浄する洗浄部と、
硫酸溶液を電解する電解部と、
前記電解部に通液しつつ硫酸溶液を循環させる第1循環路と、
前記第1循環路に接続され前記電解部に通液することなく硫酸溶液を循環させる第2循環路と、
前記第2循環路内の硫酸溶液に一種以上のハロゲン化物イオンを含むハロゲン化物溶液を混合して混合溶液を生成する溶液混合部と、
第2循環路に接続され、前記混合溶液を洗浄液として前記洗浄部に送液する洗浄液移送路と、
前記第2循環路または前記洗浄液移送路に介設され、前記路内の溶液を加熱する加熱部と、
第2循環路または前記洗浄液移送路に前記加熱部の下流側位置で接続され、前記混合溶液を前記洗浄部に至らすことなく系外に排出する排出路と、を備えることを特徴とする半導体基板の洗浄システム。
【請求項11】
前記第1循環路と前記第2循環路とは、それぞれ単独のまたは連動した溶液循環が可能であることを特徴とする請求項10記載の半導体基板の洗浄システム。
【請求項12】
前記第2循環路と、前記洗浄液移送路および排出路との接続切り替えを行う接続切替部を備えることを特徴とする請求項10または11に記載の半導体基板の洗浄システム。
【請求項13】
前記電解部は、前記混合溶液を基準にして、酸化剤濃度が0.001〜2mol/Lとなるように過硫酸を生成するものであること特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の半導体基板の洗浄システム。
【請求項14】
前記溶液混合部は、前記混合溶液を基準にして、前記ハロゲン化物イオンの濃度の総和が0.2mmol/L〜2mol/Lとなるように混合溶液を生成するものであること特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の半導体基板の洗浄システム。
【請求項15】
前記洗浄部が枚葉式洗浄装置であることを特徴とする請求項10〜14のいずれかに記載の半導体基板の洗浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TiNが少なくとも一部露出し、シリサイド化処理がされた半導体基板を洗浄する半導体基板の洗浄方法および洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CMOSプロセスではシリサイド抵抗を低減するために、シリサイド材料としてNiやCoを用いたNiSiやCoSiが用いられる。しかし、接合リーク電流の低減のため、NiやCoにPtやPdを5〜10%混入した合金が用いられている。中でも、NiPtを用いた場合は耐熱性の向上と接合リーク電流の抑制効果が期待される。(特許文献1、2参照)
【0003】
シリサイド化工程では、合金をSi基板上に製膜後、熱酸化処理を施すことで合金とSiが反応してシリサイドが形成されるが、残留する未反応の合金は除去する必要がある。例えばNiPtシリサイド形成後に未反応のNiPtを除去するため、SPM(硫酸と過酸化水素の混合液)を用いる方法が知られている。(特許文献3、4参照)
また、NiPtを溶解しつつゲート金属(TiNなど)のエッチングを抑える洗浄方法として、王水を用いる方法が知られている。(特許文献4、5参照)
また、硫酸系酸化剤で処理した後に塩酸系酸化剤で処理する方法が提案されている。(特許文献6参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−258487号公報
【特許文献2】特開2008−160116号公報
【特許文献3】特開2002−124487号公報
【特許文献4】特開2008−118088号公報
【特許文献5】特表2009−535846号公報
【特許文献6】特開2010−157684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の方法のうちSPMを用いる方法では、過酸化水素の配合比率を高くすればNiPtを溶解することができるが、その際にエッチングしてはいけないTiN(例えばゲート金属として露出)も溶解してしまう。
また、王水を用いる方法では、王水がシリサイド膜を痛めてしまう。
さらに、硫酸系酸化剤で処理した後に塩酸系酸化剤で処理する方法では、二段階で処理するため一剤処理と比較して時間がかかり操作が煩雑になるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、メタル電極が形成され、シリサイド化処理がされた半導体基板を洗浄する際に、TiNやシリサイド膜の損傷を抑制しつつ効果的に洗浄を行うことができる半導体基板の洗浄方法および洗浄システムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の半導体基板の洗浄方法のうち、第1の本発明は、TiNが少なくとも一部露出し、シリサイド化処理がされた半導体基板を洗浄する方法であって、
硫酸溶液を電解部に通液しつつ循環させて前記電解部での電解により所定濃度の過硫酸を生成する過硫酸生成工程と、
前記過硫酸生成工程で得た、過硫酸を含有する硫酸溶液と、一種以上のハロゲン化物イオンを含むハロゲン化物溶液とを、前記電解部に通液することなく混合して、混合後において過硫酸を含む酸化剤濃度が0.001〜2mol/Lの混合溶液を生成する溶液混合工程と、
前記混合溶液を加熱する加熱工程と、
加熱された前記混合溶液を移送して前記半導体基板に接触させて洗浄する洗浄工程とを有することを特徴とする。
【0008】
第2の本発明の半導体基板の洗浄方法は、前記第1の本発明において、前記加熱工程では、前記混合溶液の液温が80〜200℃の沸点以下の温度となるように加熱することを特徴とする。
【0009】
第3の本発明の半導体基板の洗浄方法は、前記第1または第2の本発明において、80℃以上の前記混合溶液を生成してから5分以内に前記半導体基板に接触させることを特徴とする。
【0010】
第4の本発明の半導体基板の洗浄方法は、前記第1〜第3の本発明のいずれかにおいて、前記半導体基板は前記シリサイド化処理に用いた金属膜を有し、該金属膜が白金を含むことを特徴とする。
【0011】
第5の本発明の半導体基板の洗浄方法は、前記第1〜第4の本発明のいずれかにおいて、前記混合溶液において、前記ハロゲン化物イオンの濃度の総和が0.2mmol/L〜2mol/Lであることを特徴とする。
【0012】
第6の本発明の半導体基板の洗浄方法は、前記第1〜第5の本発明のいずれかにおいて、前記硫酸溶液の濃度が、前記混合溶液において50〜95質量%であることを特徴とする。
【0013】
第7の本発明の半導体基板の洗浄方法は、前記第1〜第6の本発明のいずれかにおいて、前記加熱工程の初期に加熱されて移送される溶液を、前記半導体基板に接触させることなく系外に排出することを特徴とする。
【0014】
第8の本発明の半導体基板の洗浄方法は、前記第7の本発明において、前記加熱工程に一過式の加熱過程を含み、前記一過式の加熱過程に溶液を通液しつつ加熱を開始することを特徴とする。
【0015】
第9の本発明の半導体基板の洗浄方法は、前記第1〜第8の本発明のいずれかにおいて、前記洗浄工程後、系内の混合溶液を加熱工程における経路を通し、かつ前記経路で加熱することなく系外に排出する混合溶液排出工程を有することを特徴とする。
【0016】
第10の本発明の半導体基板の洗浄システムは、
TiNが少なくとも一部露出し、シリサイド化処理がされた半導体基板を洗浄液によって洗浄する洗浄部と、
硫酸溶液を電解する電解部と、
前記電解部に通液しつつ硫酸溶液を循環させる第1循環路と、
前記第1循環路に接続され前記電解部に通液することなく硫酸溶液を循環させる第2循環路と、
前記第2循環路内の硫酸溶液に一種以上のハロゲン化物イオンを含むハロゲン化物溶液を混合して混合溶液を生成する溶液混合部と、
前記第2循環路に接続され、前記混合溶液を洗浄液として前記洗浄部に送液する洗浄液移送路と、
前記第2循環路または前記洗浄液移送路に介設され、前記路内の溶液を加熱する加熱部と、
第2循環路または前記洗浄液移送路に前記加熱部の下流側位置で接続され、前記混合溶液を前記洗浄部に至らすことなく系外に排出する排出路と、を備えることを特徴とする。
【0017】
第11の本発明の半導体基板の洗浄システムは、前記第10の本発明において、
前記第1循環路と前記第2循環路とは、それぞれ単独のまたは連動した溶液循環が可能であることを特徴とする。
【0018】
第12の本発明の半導体基板の洗浄システムは、前記第10または第11の本発明において、前記第2循環路と、前記洗浄液移送路および排出路との接続切り替えを行う接続切替部を備えることを特徴とする。
【0019】
第13の本発明の半導体基板の洗浄システムは、前記第10〜第12の本発明のいずれかにおいて、前記電解部は、前記混合溶液を基準にして、酸化剤濃度が0.001〜2mol/Lとなるように過硫酸を生成するものであること特徴とする。
【0020】
第14の本発明の半導体基板の洗浄システムは、前記第10〜第13の本発明のいずれかにおいて、前記溶液混合部は、前記混合溶液を基準にして、前記ハロゲン化物イオンの濃度の総和が0.2mmol/L〜2mol/Lとなるように混合溶液を生成するものであること特徴とする。
【0021】
第15の本発明の半導体基板の洗浄システムは、前記第10〜第14の本発明のいずれかにおいて、前記洗浄部が枚葉式洗浄装置であることを特徴とする。
【0022】
本発明で洗浄の対象となる半導体基板は、TiNが少なくとも一部露出し、シリサイド化処理がされた半導体基板である。該半導体基板の製造方法は本発明としては特に限定されるものではない。
【0023】
本発明で用いる硫酸溶液は、酸化剤として少なくとも過硫酸を含む硫酸溶液である。なお、過硫酸としては、ペルオキソ二硫酸とペルオキソ一硫酸が例示され、いずれか一方、または両方が混合したものでもよい。このとき酸化剤としては過硫酸と過硫酸の自己分解に伴って発生する過酸化水素がほぼ全量を占める。
酸化剤は、硫酸溶液とハロゲン化物溶液の混合溶液において、0.001〜2mol/Lの濃度となるように混合条件を設定しておく。該濃度は、半導体基板に接触する際に維持されているのが望ましい。
酸化剤濃度0.001mol/L未満では洗浄力が不足し、酸化剤濃度が2mol/Lを超過するとエッチングレートが高くなってしまい実用が困難である。
硫酸溶液は、硫酸溶液とハロゲン化物溶液の混合溶液において、硫酸濃度が50〜95質量%となるように設定するのが望ましく、80質量%以上とすることが、沸点が高くない、より高温で洗浄できるという理由でより好ましい。ただし含水量が極度に少ないとシリサイド化処理に用いた膜に含まれる金属の溶解効率が下がるので90質量%以下とするのが好ましい。
【0024】
ハロゲン化物溶液は、一種以上のハロゲン化物イオンを含む溶液であり、ハロゲン化物イオンとしては、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンの一種または二種以上が例示される。ハロゲン化物イオンを含む溶液としては、ハロゲン化物イオンの水素酸(HF、HCl、HBr、HI)やその塩(NaCl)の溶液が挙げられる。しかしHBrやHI、Iは着色しやすく、NaClのような塩はNaがウエハ上に残存する恐れがあり、さらにHFは取り扱いに注意を要するため、HClが好ましい。
なお、ハロゲン化物イオンは、硫酸溶液とハロゲン化物溶液の混合溶液において、各ハロゲン化物イオン濃度の総和が0.2mmol/L〜2mol/Lとなるように調整するのが望ましい。
【0025】
硫酸溶液とハロゲン化物溶液との混合は、第2循環路で行うことができるが、第2循環路の経路に介設された混合槽などの槽内で混合してもよい。要は、第2循環路の経路内で循環しつつ混合が行われるものであればよい。混合溶液では、生成した錯化剤がシリサイド化用に形成した膜と接触するまでに消費されることを避けるために、硫酸溶液とハロゲン化物溶液とが混合され、かつ液温80℃以上となった後、5分(好ましくは3分)以内に半導体基板に接触するのが好ましい。
【0026】
半導体基板に接触させる混合溶液は、液温を80℃以上、好ましくは100℃以上の温度にして前記半導体基板に接触させるのが望ましい。
これは、80℃未満では洗浄能力が不足であり、100℃以上であれば洗浄能力はほぼ十分だからである。一方、液温の上限は200℃以下の沸点以下の温度とすることができるが、エネルギー効率やエッチングレートの点から160℃以下の沸点以下の温度であることがより好ましい。
なお、液温を調整する場合、半導体基板に混合溶液を接触させる際に上記温度を有するものとする。
【0027】
また、洗浄はバッチ式でも枚葉式でも構わないが、接触効率の点で枚葉式の方がより好ましい。
【発明の効果】
【0028】
すなわち、本発明によれば、電解部へのハロゲン化物イオンの流入を可及的に避けて電解を行うことで効率的な電解を可能にし、結果として酸化剤として少なくとも過硫酸を含む硫酸溶液とハロゲン化物イオンを含む混合溶液が、酸化剤濃度が0.001〜2mol/Lの状態で半導体基板に接触することで、TiNやシリサイド膜を傷めることなく半導体基板を効果的に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態の半導体基板洗浄システムを示す図である。
図2】同じく、過硫酸生成工程における半導体基板洗浄システムの動作を説明する図である。
図3】同じく、溶液混合工程における半導体基板洗浄システムの動作を説明する図である。
図4】同じく、加熱工程初期における半導体基板洗浄システムの動作を説明する図である。
図5】同じく、加熱工程(初期を除く)および洗浄工程における半導体基板洗浄システムの動作を説明する図である。
図6】同じく、洗浄工程後の混合溶液排出工程における半導体基板洗浄システムの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(実施形態1)
以下に、本発明の一実施形態の半導体基板洗浄システム1を図1に基づいて説明する。
半導体基板洗浄システム1は、硫酸溶液を通液しつつ電解する電解部2を備えている。電解部2は無隔膜型であり、少なくとも硫酸溶液と接液する部分をダイヤモンド電極とした陽極2aおよび陰極2bが隔膜で隔てることなく内部に配置され、両電極には図示しない直流電源が接続されている。なお、本発明としては、電解部2を隔膜型によって構成することも可能であり、バイポーラ電極を備えるものであってもよい。
【0031】
上記電解部2には、電解液貯留槽10が電解側循環ライン3を介して循環通液可能に接続されている。電解部2を基準として、送り側の電解側循環ライン3には、硫酸溶液を循環させる電解側循環ポンプ4と冷却器5がこの順に介設されており、戻り側の電解側循環ライン3には気液分離器6が介設されている。気液分離器6には、オフガス処理ユニット7が接続されている。電解側循環ライン3および電解液貯留槽10は、本発明の第1循環路を構成する。
【0032】
電解液貯留槽10には、さらに送液ポンプ21aを介して貯留側循環ライン20の送り側が接続されている。貯留側循環ライン20の送液側には、送液ポンプ21a、フィルタ22、予加熱槽23、送液ポンプ21b、急速加熱器24が下流側に向けてこの順に介設されており、貯留側循環ライン20の送液先端側は、三方弁25の一ポートに接続されている。急速加熱器24は、石英製の管路を有し、例えば近赤外線ヒータによって硫酸溶液を一過式で加熱する。
三方弁25の他のポートには、貯留側循環ライン20の戻り側が接続されており、戻り側の貯留側循環ライン20には、三方弁26(2ポート間)、環流槽27、送液ポンプ21c、冷却器29がこの順に介設され、貯留側循環ライン20の戻り側先端は、電解液貯留槽10に接続されている。貯留側循環ライン20および電解液貯留槽10は、本発明の第2循環路を構成する。上記三方弁25、26は、本発明の接続切替部に相当するものである。
【0033】
この実施形態では、電解側循環ライン3と貯留側循環ライン20とが電解液貯留槽10によって合流しており、電解液貯留槽10は、第1循環路と第2循環路の一部機能を担っている。
【0034】
三方弁25のさらに他のポートには、洗浄液移送ライン40が接続されている。洗浄液移送ライン40の先端側は、枚葉式洗浄機30内でノズル31に接続されている。枚葉式洗浄機30は、本発明の洗浄部に相当する。枚葉式洗浄機30には、洗浄に用いた混合溶液を排出するドレインライン42が設けられている。
【0035】
また、三方弁26の第2循環路の一部を担う2つのポート以外の他のポートには、排出ライン41が接続されており、排出ライン41は、下流端でドレインライン42に合流している。
なお、電解液貯留槽10、予加熱槽23、環流槽27の少なくとも1つには、ハロゲン化物溶液投入部11が接続されており、いずれかの槽の硫酸溶液にハロゲン化物溶液を投入して混合することが可能になっている。電解液貯留槽10、予加熱槽23、環流槽27の少なくとも1つと、ハロゲン化物溶液投入部11とは、共同して本発明の溶液混合部を構成する。また、貯留側循環ライン20にハロゲン化物溶液を注入できる構成とすることも可能である。
上記半導体基板洗浄システム1では、電解の動作、各送液ポンプの動作、三方弁25、26の切替動作等を制御部によって制御して各工程を実行することができる。以下に各工程の動作内容を説明する。なお、以下の工程では、上記動作等は図示しない制御部の制御によって実行される。
【0036】
(過硫酸生成工程)
次に、半導体基板洗浄システム1における過硫酸生成工程を図2を用いて説明する。
【0037】
なお、本実施形態で好適な対象例は、メタルゲート電極やサイドウォールが形成されているなどTiNが少なくとも一部露出し、その膜厚が60nm以下(好ましくは30nm以下)、シリサイド層の厚さが60nm以下(好ましくは25nm以下)、ゲート幅が45nm以下(好ましくは30nm以下)のケースである。ただし、本発明で対象となる半導体基板がこれに限定されるものではない。
半導体基板100は、洗浄に備えて、枚葉式洗浄機30内の回転台など(図示しない)に配置される。
【0038】
また、システムの動作に際し、電解液貯留槽10には、硫酸濃度が50〜95質量%の硫酸が収容される。この状態で、電解部2では、陽極2a、陰極2b間に通電がされ、かつ電解液貯留槽10内の硫酸溶液が電解側循環ライン3を通じて電解側循環ポンプ4で送液され、電解部2、気液分離器6を介して電解液貯留槽10に環流する。この際に、硫酸溶液は、冷却器5によって好適には電解に適した液温30〜80℃に冷却され、電解部2の陽極2a、陰極2b間を好適には通液線速度を1〜10,000m/hr.で通液される。電解部2では、硫酸溶液を通液しつつ好適には電極表面での電流密度が10〜100,000A/mとなるように通電することで硫酸溶液中に過硫酸が生成される。過硫酸が生成された硫酸溶液は、電解部2から出液され、気液分離器6で電解によって生成された水素などのガスが分離される。分離されたガスは気液分離器6に接続されたオフガス処理ユニット7で希薄化等の処理がなされる。気液分離器6でガスが分離された、過硫酸を含む硫酸溶液は、電解側循環ライン3を通じて電解液貯留槽10に環流される。電解側循環ライン3内の硫酸溶液は、上記循環と電解、気液分離を繰り返し、次第に過硫酸濃度が高まる。
【0039】
また、この際に、送液ポンプ21aによって電解液貯留槽10の硫酸溶液が貯留側循環ライン20を通じて送液され、フィルタ22で硫酸溶液中のSS等を除去した後、予加熱槽23に収容される。この際には、予加熱槽23では加熱は行われない。予加熱槽23内の硫酸溶液は、さらに送液ポンプ21bで送液され、急速加熱器24を通過する。なお、この際に急速加熱器24は加熱動作をさせず、三方弁25では、洗浄液移送ライン40が接続されたポートは閉じ、貯留側循環ライン20の送り側と戻り側のポートをそれぞれ開いておき、三方弁26では、貯留側循環ライン20が接続された二つのポートを開き、排出ライン41が接続されたポートを閉じておく。送液ポンプ21bで送液される硫酸溶液は、急速加熱器24を通過した後、三方弁25、三方弁26を介して環流槽27に収容される。
【0040】
さらに送液ポンプ21cによって環流槽27の硫酸溶液が送液され、冷却器29によって硫酸溶液を好適には30〜80℃に冷却して電解液貯留槽10に環流させる。これにより電解液貯留槽10内の溶液は、貯留側循環ライン20によっても循環する。すなわち、この工程では、電解側循環ライン3と貯留側循環ライン20の両方で、電解液貯留槽10を介して硫酸溶液が循環することになる。
上記工程により電解側循環ライン3と貯留側循環ライン20、電解液貯留槽10、予加熱槽23、環流槽27にある硫酸溶液中の酸化剤濃度が均等になり、電解の制御によって、酸化剤濃度として0.001〜2mol/Lの範囲内において予め設定した濃度に調整される。
【0041】
酸化剤濃度が所定の濃度になると、送液ポンプ4の動作および電解部2での通電を停止し、過硫酸生成工程を終了する。一方、送液ポンプ21a、21b、21cは、そのまま送液を続けても良く、また、一旦停止をしてもよい。
【0042】
(溶液混合工程)
次に、溶液混合工程を図3を参照しつつ説明する。
送液ポンプ21a、21b、21cを稼働させたまま、または送液ポンプ21a、21b、21cを停止した状態で、電解液貯留槽10、予加熱槽23、環流槽27の少なくとも1つに接続したハロゲン化物溶液投入部11から、接続がされた槽にハロゲン化物溶液を投入する。ハロゲン化物溶液は、一種以上のハロゲン化物イオンを含む溶液であり、ハロゲン化物イオンとしては、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンの一種または二種以上が例示される。ハロゲン化物イオンを含む溶液としては、ハロゲン化物イオンの水素酸(HF、HCl、HBr、HI)やその塩(NaCl)の溶液が挙げられる。しかしHBrやHI、Iは着色しやすく、NaClのような塩はNaがウエハ上に残存する恐れがあり、さらにHFは取り扱いに注意を要するため、HClが好ましい。
【0043】
ハロゲン化物溶液の投入量は、貯留側循環ライン20およびこれに介設された各部全体の混合溶液において、ハロゲン化物イオン濃度の総和が0.2mmol/L〜2mol/Lとなるように設定する。なお、ハロゲン化物溶液の投入量自体は、硫酸溶液の容量に比べて相当に小さく、硫酸溶液における硫酸濃度、酸化剤濃度は、混合前と同等であるとみなすことができる。
【0044】
送液ポンプ21a、21b、21cを停止した状態で、ハロゲン化物溶液を投入した場合には、送液ポンプ21a、21b、21cを稼働させ、送液ポンプ21a、21b、21cが稼働したままの状態では、そのまま稼働させて、貯留側循環ライン20を通じて硫酸溶液およびハロゲン化物溶液を循環させつつ両溶液の均等な混合を図る。三方弁25、26の開閉状態は、過硫酸生成工程と同様である。両溶液が十分に混合され、上記ハロゲン化物イオン濃度の総和が上記範囲内の予め設定した濃度に調整されると、溶液混合工程を終了する。この際には、送液ポンプ21a、21b、21cは動作させたままにしておくのが望ましい。
なお、溶液混合工程では、急速加熱器24は動作させないが、予加熱槽23は混合溶液を90〜120℃に加熱するように動作させてもよい。
【0045】
(加熱・洗浄工程)
次いで、溶液混合工程で得られた混合溶液を加熱する工程を図4図5に基づいて説明する。
加熱工程の初期では、予加熱槽23を動作させて溶液を90〜120℃に加熱するとともに、急速加熱器24を動作させる。さらに、図4に示すように、三方弁25は、そのまま変更せず、三方弁26で連通方向を切り換えて、貯留側循環ライン20と排出ライン41とを連通させる。これにより貯留側循環ライン20を通じた溶液循環は停止する。加熱・洗浄工程では、送液ポンプ21a、21b、21cが稼働した状態で加熱を開始をする。急速加熱器24は、溶液を通液しつつ加熱することを前提とするため、送液が停止した状態で急速加熱器24を動作させると急速加熱器24内に残っている溶液が急激に加熱され、沸騰などの諸問題を引き起こすおそれがあり、溶液を循環させた状態で加熱を開始するのが望ましい。
【0046】
加熱工程初期では、送液ポンプ21a、21b、21cが稼働した状態で、三方弁26の切替がなされる。すなわち、貯留側循環ライン20の戻り側上流側が接続されたポートと排出ライン41が接続されたポートを開き、貯留側循環ライン20の戻り側下流側が接続されたポートを閉じる。
さらに、予加熱槽23、急速加熱器24の動作開始がなされる。急速加熱器24では、枚葉式洗浄装置30の洗浄液ノズル31出口で100〜200℃の沸点以下の温度となるように急速加熱する。
なお、加熱工程初期では、上記三方弁26の接続切替によって、急速加熱器24の下流側の貯留側循環ライン20内にあって比較的低温の混合溶液や加熱初期の混合溶液が、貯留側循環ライン20の一部、三方弁26、排出ライン41、ドレインライン42を通して系外に排出される。
【0047】
その後、三方弁25に至る混合溶液が100〜200℃の沸点以下の温度になると、図5に示すように、三方弁25の接続を切り替えて貯留側循環ライン20の戻り側に接続されたポートを閉じ、貯留側循環ライン20の送り側と洗浄液移送ライン40が接続されたポートを開いて連通させる。これにより、100〜200℃の沸点以下の温度に加熱された混合溶液が貯留側循環ライン20の送り側から洗浄液移送ライン40に導入され、ノズル31から送出されて半導体基板100に接触する。ノズル31の送出状態は、噴霧、滴下、または流下が例示され、滴下、流下では圧力を与えて半導体基板100に溶液を吹き付けるものであってもよい。混合溶液は、半導体基板100に接触した際に100〜200℃の沸点以下の温度を有しているのが望ましい。
【0048】
なお、混合溶液は、混合された状態で、かつ100〜200℃の沸点以下の温度になってから5分以内に半導体基板100に接触している。この時間は、急速加熱器24からノズル31までの距離、ノズル31から半導体基板100までの距離、送液速度などによって定めるものであり、予め上記時間条件を満たすようにラインの長さや送液速度を設定する。
半導体基板100に対する洗浄を完了すると、予加熱槽23および急速加熱器24の動作を停止し、加熱工程および洗浄工程を終了する。洗浄の完了は、例えば予め洗浄時間を定めておき、この洗浄時間に達することで洗浄完了とすることができ、また、各種測定の結果に応じて洗浄完了と判定してもよい。
なお、この形態では、加熱工程と洗浄工程とがほぼ同時に実行されるものとして説明したが、これら工程が独立し、例えば加熱工程後に洗浄工程を開始するものであってもよい。
【0049】
(混合溶液排出工程)
次に、混合溶液排出工程について図6に基づいて説明する。
加熱工程、洗浄工程を終了した後、三方弁25を切り替えて洗浄液移送ライン40が接続されたポートを閉じ、貯留側循環ライン20の送り側と戻り側とを連通させ、それとともに三方弁26を切り替えて貯留側循環ライン20の戻り側下流側を閉じ、貯留側循環ライン20の戻り側上流側と排出ライン41を連通させる。この状態で、送液ポンプ21a、21b、21cは稼働したままの状態を維持することで、貯留側循環ライン20の一部、排出ライン41、ドレインライン42を通じて混合溶液が系外に排出される。この際の排出量は適宜設定することができる。加熱工程、洗浄工程を終了した後、そのまま混合溶液を流し続けることで、急速加熱器24内で溶液が急激に加熱されるのを防止でき、また、急速加熱器24を冷却して、次の溶液循環に備えることができる。急速加熱器24は加熱動作を停止した後も、蓄熱状態にあり、通液を停止すると、急速加熱器24内に残存している溶液が急激に加熱されるおそれがあるためである。
【0050】
また、混合溶液の系外への排出は、系内でのハロゲン化物イオン量を低下させる目的もある。ハロゲン化物イオンが洗浄時の濃度のままで残存していると、その後、過硫酸生成工程に移行した際に、電解の支障になる。混合溶液排出工程が終了した後、送液ポンプ21a、21b、21cを停止させ、硫酸を補充することで、ハロゲン化物イオン濃度を低下させることができる。この際に、第2循環路に残存する混合溶液の全量を排出してもよく、また、硫酸溶液を所定量補充した際に、ハロゲン化物イオンの濃度の総和が0.02mmol/L以下になるように排出量を定めることができる。
その後は、次の半導体基板に対し、硫酸溶液の補充後、過硫酸生成工程、溶液混合工程、加熱・洗浄工程、混合溶液排出工程を繰り返すことで継続して半導体基板の洗浄を行うことができる。
【0051】
なお、上記各実施形態では、洗浄部として枚葉式のものを説明したが、本発明としてはバッチ式のものであってもよい。枚葉式の洗浄部は、半導体基板1枚ないし数枚ずつを洗浄するものであり、特には洗浄用の溶液を半導体基板に噴霧、滴下、流下等するものが例示される。バッチ式の洗浄部は、複数枚の半導体基板を洗浄するものであり、特には、洗浄用の溶液を貯液し、ここに半導体基板を所定時間浸漬するものが例示される。
【0052】
以上、本発明について上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りは適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 半導体基板洗浄システム
2 電解部
3 電解側循環ライン
4 送液ポンプ
10 電解液貯留槽
20 貯留側循環ライン
21a、21b、21c 送液ポンプ
23 予加熱槽
24 急速加熱器
25 三方弁
26 三方弁
30 枚葉式洗浄機
31 ノズル
40 洗浄液移送ライン
41 排出ライン
42 ドレインライン
100 半導体基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6