【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の半導体基板の洗浄方法のうち、第1の本発明は、TiNが少なくとも一部露出し、シリサイド化処理がされた半導体基板を洗浄する方法であって、
硫酸溶液を電解部に通液しつつ循環させて前記電解部での電解により所定濃度の過硫酸を生成する過硫酸生成工程と、
前記過硫酸生成工程で得た、過硫酸を含有する硫酸溶液と、一種以上のハロゲン化物イオンを含むハロゲン化物溶液とを、前記電解部に通液することなく混合して、混合後において過硫酸を含む酸化剤濃度が0.001〜2mol/Lの混合溶液を生成する溶液混合工程と、
前記混合溶液を加熱する加熱工程と、
加熱された前記混合溶液を移送して前記半導体基板に接触させて洗浄する洗浄工程とを有することを特徴とする。
【0008】
第2の本発明の半導体基板の洗浄方法は、前記第1の本発明において、前記加熱工程では、前記混合溶液の液温が80〜200℃の沸点以下の温度となるように加熱することを特徴とする。
【0009】
第3の本発明の半導体基板の洗浄方法は、前記第1または第2の本発明において、80℃以上の前記混合溶液を生成してから5分以内に前記半導体基板に接触させることを特徴とする。
【0010】
第4の本発明の半導体基板の洗浄方法は、前記第1〜第3の本発明のいずれかにおいて、前記半導体基板は前記シリサイド化処理に用いた金属膜を有し、該金属膜が白金を含むことを特徴とする。
【0011】
第5の本発明の半導体基板の洗浄方法は、前記第1〜第4の本発明のいずれかにおいて、前記混合溶液において、前記ハロゲン化物イオンの濃度の総和が0.2mmol/L〜2mol/Lであることを特徴とする。
【0012】
第6の本発明の半導体基板の洗浄方法は、前記第1〜第5の本発明のいずれかにおいて、前記硫酸溶液の濃度が、前記混合溶液において50〜95質量%であることを特徴とする。
【0013】
第7の本発明の半導体基板の洗浄方法は、前記第1〜第6の本発明のいずれかにおいて、前記加熱工程の初期に加熱されて移送される溶液を、前記半導体基板に接触させることなく系外に排出することを特徴とする。
【0014】
第8の本発明の半導体基板の洗浄方法は、前記第7の本発明において、前記加熱工程に一過式の加熱過程を含み、前記一過式の加熱過程に溶液を通液しつつ加熱を開始することを特徴とする。
【0015】
第9の本発明の半導体基板の洗浄方法は、前記第1〜第8の本発明のいずれかにおいて、前記洗浄工程後、系内の混合溶液を加熱工程における経路を通し、かつ前記経路で加熱することなく系外に排出する混合溶液排出工程を有することを特徴とする。
【0016】
第10の本発明の半導体基板の洗浄システムは、
TiNが少なくとも一部露出し、シリサイド化処理がされた半導体基板を洗浄液によって洗浄する洗浄部と、
硫酸溶液を電解する電解部と、
前記電解部に通液しつつ硫酸溶液を循環させる第1循環路と、
前記第1循環路に接続され前記電解部に通液することなく硫酸溶液を循環させる第2循環路と、
前記第2循環路内の硫酸溶液に一種以上のハロゲン化物イオンを含むハロゲン化物溶液を混合
して混合溶液を生成する溶液混合部と、
前記第2循環路に接続され、
前記混合溶液を洗浄液として前記洗浄部に送液する洗浄液移送路と、
前記第2循環路または前記洗浄液移送路に介設され、前記路内の溶液を加熱する加熱部と、
第2循環路または前記洗浄液移送路に前記加熱部の下流側位置で接続され、前記混合溶液を前記洗浄部に至らすことなく系外に排出する排出路と、を備えることを特徴とする。
【0017】
第11の本発明の半導体基板の洗浄システムは、前記第10の本発明において、
前記第1循環路と前記第2循環路とは、それぞれ単独のまたは連動した溶液循環が可能であることを特徴とする。
【0018】
第12の本発明の半導体基板の洗浄システムは、前記第10または第11の本発明において、前記第2循環路と、前記洗浄液移送路および排出路との接続切り替えを行う接続切替部を備えることを特徴とする。
【0019】
第13の本発明の半導体基板の洗浄システムは、前記第10〜第12の本発明のいずれかにおいて、前記電解部は、前記混合溶液を基準にして、酸化剤濃度が0.001〜2mol/Lとなるように過硫酸を生成するものであること特徴とする。
【0020】
第14の本発明の半導体基板の洗浄システムは、前記第10〜第13の本発明のいずれかにおいて、前記溶液混合部は、前記混合溶液を基準にして、前記ハロゲン化物イオンの濃度の総和が0.2mmol/L〜2mol/Lとなるように混合溶液を生成するものであること特徴とする。
【0021】
第15の本発明の半導体基板の洗浄システムは、前記第10〜第14の本発明のいずれかにおいて、前記洗浄部が枚葉式洗浄装置であることを特徴とする。
【0022】
本発明で洗浄の対象となる半導体基板は、TiNが少なくとも一部露出し、シリサイド化処理がされた半導体基板である。該半導体基板の製造方法は本発明としては特に限定されるものではない。
【0023】
本発明で用いる硫酸溶液は、酸化剤として少なくとも過硫酸を含む硫酸溶液である。なお、過硫酸としては、ペルオキソ二硫酸とペルオキソ一硫酸が例示され、いずれか一方、または両方が混合したものでもよい。このとき酸化剤としては過硫酸と過硫酸の自己分解に伴って発生する過酸化水素がほぼ全量を占める。
酸化剤は、硫酸溶液とハロゲン化物溶液の混合溶液において、0.001〜2mol/Lの濃度となるように混合条件を設定しておく。該濃度は、半導体基板に接触する際に維持されているのが望ましい。
酸化剤濃度0.001mol/L未満では洗浄力が不足し、酸化剤濃度が2mol/Lを超過するとエッチングレートが高くなってしまい実用が困難である。
硫酸溶液は、硫酸溶液とハロゲン化物溶液の混合溶液において、硫酸濃度が50〜95質量%となるように設定するのが望ましく、80質量%以上とすることが、沸点が高くない、より高温で洗浄できるという理由でより好ましい。ただし含水量が極度に少ないとシリサイド化処理に用いた膜に含まれる金属の溶解効率が下がるので90質量%以下とするのが好ましい。
【0024】
ハロゲン化物溶液は、一種以上のハロゲン化物イオンを含む溶液であり、ハロゲン化物イオンとしては、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンの一種または二種以上が例示される。ハロゲン化物イオンを含む溶液としては、ハロゲン化物イオンの水素酸(HF、HCl、HBr、HI)やその塩(NaCl)の溶液が挙げられる。しかしHBrやHI、I
2は着色しやすく、NaClのような塩はNaがウエハ上に残存する恐れがあり、さらにHFは取り扱いに注意を要するため、HClが好ましい。
なお、ハロゲン化物イオンは、硫酸溶液とハロゲン化物溶液の混合溶液において、各ハロゲン化物イオン濃度の総和が0.2mmol/L〜2mol/Lとなるように調整するのが望ましい。
【0025】
硫酸溶液とハロゲン化物溶液との混合は、第2循環路で行うことができるが、第2循環路の経路に介設された混合槽などの槽内で混合してもよい。要は、第2循環路の経路内で循環しつつ混合が行われるものであればよい。混合溶液では、生成した錯化剤がシリサイド化用に形成した膜と接触するまでに消費されることを避けるために、硫酸溶液とハロゲン化物溶液とが混合され、かつ液温80℃以上となった後、5分(好ましくは3分)以内に半導体基板に接触するのが好ましい。
【0026】
半導体基板に接触させる混合溶液は、液温を80℃以上、好ましくは100℃以上の温度にして前記半導体基板に接触させるのが望ましい。
これは、80℃未満では洗浄能力が不足であり、100℃以上であれば洗浄能力はほぼ十分だからである。一方、液温の上限は200℃以下の沸点以下の温度とすることができるが、エネルギー効率やエッチングレートの点から160℃以下の沸点以下の温度であることがより好ましい。
なお、液温を調整する場合、半導体基板に混合溶液を接触させる際に上記温度を有するものとする。
【0027】
また、洗浄はバッチ式でも枚葉式でも構わないが、接触効率の点で枚葉式の方がより好ましい。