(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
分岐アルキレンジオール、炭素原子数8〜20の長鎖脂肪族ジカルボン酸、芳香族トリカルボン酸を反応させて得られる樹脂構造を有し、かつ、重量平均分子量(Mw)が10,000〜100,000の範囲、分子量分布(Mw/Mn)が3.0〜4.7の範囲にあるポリエステルポリオール(A)、及び多官能エポキシ化合物(B)を必須成分とすることを特徴とする樹脂組成物。
前記ポリエステルポリオール(A)が、分岐アルキレンジオール、炭素原子数8〜20の長鎖脂肪族ジカルボン酸、及び芳香族トリカルボン酸に加え、更に芳香族ジカルボン酸を原料成分として用い反応させて得られるものである、請求項1記載の樹脂組成物。
ポリエステルフィルム、フッ素系樹脂フィルム、ポリオレフィンフィルム及び金属箔からなる群から選ばれる1種類以上のフィルムと、これらのフィルム同士を貼り合わせる為の請求項6記載の2液型ラミネート用接着剤からなる接着層とから成形された太陽電池用バックシート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のポリエステルポリオールは、太陽電池用バックシート接着剤の主剤である2液型ラミネート接着剤用ポリオール剤として有用なものであり、分岐アルキレンジオールと、炭素原子数8〜20の長鎖脂肪族ジカルボン酸と、芳香族トリカルボン酸とを必須の原料成分として反応させて得られるものである。
【0018】
ここで、分岐アルキレンジオールを原料として用いることから得られるポリエステルポリオールの耐加水分解性が飛躍的に向上し、ラミネート接着剤に用いた場合の初期の接着性と耐湿熱後の接着性との変化が少ない、耐湿熱性に優れた接着剤が得られる。斯かる分岐アルキレンジオールは、具体的には、その分子構造内に3級炭素原子又は4級炭素原子を有するアルキレンジオールであり、例えば、1,2,2−トリメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−3−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘサン、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール等が挙げられる。これらのなかでも特に耐湿熱性に優れる点からネオペンチルグリコールが好ましい。
【0019】
また、炭素原子数8〜20の長鎖脂肪族ジカルボン酸を使用することから、得られるポリエステルポリオールの粘度が低減され、基材に対する密着性を向上させることができることに加え、ポリエステルポリオールの粘度が低減され、ラミネート接着剤として用いた場合にラミネート加工後のシート外観が向上する。
斯かる炭素原子数8〜20の長鎖脂肪族ジカルボン酸は、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカンニ酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、イコサン二酸等が挙げられる。
【0020】
これらの中でも特に前記した基材への密着性改善効果が顕著である点からスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸の如き炭素原子数が8〜13の範囲である脂肪族多塩基酸が特に好ましい。
【0021】
次に、芳香族トリカルボン酸を用いることにより、硬化物の耐熱性が良好なものとなる他、得られるポリエステルポリオールの分子量分布がブロードなものとなって基材に対する密着性が向上し、ラミネート接着剤として使用した場合の耐湿熱性が良好なものとなる。斯かる芳香族トリカルボン酸は、具体的には、トリメリット酸、無水トリメリット酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、無水ピロメリット酸の如き芳香族三塩基酸及びその無水物などが挙げられる。
【0022】
本発明のポリエステルポリオールは、以上詳述した分岐アルキレンジオールと、炭素原子数8〜20の長鎖脂肪族ジカルボン酸と、芳香族トリカルボン酸とを必須の原料成分として反応させて得られるものであるが、接着剤としての柔軟性、濡れ性を向上させる目的で、また、本発明の効果を損なわない範囲において、上記各原料成分に、更に、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−ノナンジオール、ジエチレングリコール等の直鎖状アルカンジオールを併用してもよく、また、トリメチロールプロパン等の分岐アルカン構造含有3官能アルコールを併用してもよい。なお、分岐アルカン構造含有3官能アルコールを用いる場合、過剰な高粘度化を起こさず、且つ適度な分岐構造が得られるという点から、分岐アルキレンジオールと分岐アルカン構造含有3官能アルコールとを質量比[分岐アルカンジオール/分岐アルカン構造含有3官能アルコール]が90/10〜99/1となる割合であることが好ましい。
【0023】
更に、本発明ではカルボン酸成分として、前記した炭素原子数8〜20の長鎖脂肪族ジカルボン酸に加え、最終的に得られる新規ポリエステルポリオールの分子量や粘度を調整する目的で、メタン酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、安息香酸の如きモノカルボン酸を併用してもよい。
【0024】
上記した各成分から本発明のポリエステルポリオールを製造する方法は、例えば、分岐アルキレンジオールと、炭素原子数8〜20の長鎖脂肪族ジカルボン酸と、芳香族トリカルボン酸とを必須とする原料成分を、エステル化触媒の存在下、150〜270℃の温度範囲で反応させる方法などが挙げられる。ここで用いるエステル化触媒は、例えば、有機スズ化合物、無機スズ化合物、有機チタン化合物、有機亜鉛化合物等が挙げられる。
【0025】
このようにして得られるポリエステルポリオールは、その重量平均分子量(Mw)が10,000〜100,000の範囲であって、かつ、分子量分布(Mw/Mn)が3.0〜4.7の範囲にあること特徴としている。重量平均分子量(Mw)が10,000未満の場合には、初期の接着強度が低下する傾向にあり、粘度が低いため均一に塗工しにくい樹脂組成物となる。重量平均分子量(Mw)が100,000を上回る場合には、樹脂組成物の粘度が高いため、塗工する際に多量の溶剤で希釈する必要があり、接着層が薄くなることから、初期の接着強度が低下する傾向があり、溶剤の乾燥工程に高温長時間を要するため生産コストや環境にも悪影響となる。
【0026】
また、前記ポリエステルポリオールの分子量分布(Mw/Mn)が、3未満の場合には2液型ラミネート用接着剤として用いた場合の基材への接着性が低くなり、硬化後の接着強度や、耐湿熱性に劣ったものとなる。他方、分子量分布(Mw/Mn)が、4.7を上回る場合にもやはり、2液型ラミネート用接着剤として用いた場合に、硬化後の接着強度が低下する傾向にある。斯かる基材への接着強度の観点からは、特に、前記ポリエステルポリオールの分子量分布(Mw/Mn)は、3.0〜4.5の範囲であることがより好ましい。
【0027】
尚、本願発明において、ポリエステルポリオールの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0028】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC−8220GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSK−GUARDCOLUMN SuperHZ−L
+東ソー株式会社製 TSK−GEL SuperHZM−M×4
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC−8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0029】
また、前記ポリエステルポリオールの水酸基価は、湿熱条件下での基材接着性に優れる点で、5〜30mgKOH/gの範囲であることが好ましく、7〜15mgKOH/gの範囲であることがより好ましい。
【0030】
以上詳述した本発明のポリエステルポリオールは、2液型ラミネート接着剤の主剤であるポリオール剤として有用であり、硬化剤と共に使用することができるが、本発明では、斯かるポリエステルポリオール(以下、これを「ポリエステルポリオール(A)」と表記する。)と、多官能エポキシ化合物(B)とを含有する樹脂組成物を2液型ラミネート接着剤の主剤として用いることが好ましい。即ち、前記ポリエステルポリオール(A)に加え、多官能エポキシ化合物(B)を併用することにより、接着層が吸湿した際に、該ポリエステルポリオール(A)の加水分解によって発生するカルボキシ基を前記多官能エポキシ化合物(B)中のエポキシ基が捕捉し、該接着層の耐湿熱性を一層向上させることができる。斯かる多官能エポキシ化合物(B)は、その数平均分子量(Mn)が300〜5,000の範囲である水酸基含有のエポキシ樹脂であることが好ましい。即ち、数平均分子量(Mn)が300以上の場合には、耐湿熱性に加え、基材に対する接着強度が一層良好なものとなる他、数平均分子量(Mn)が5,000以下の場合には、前記ポリエステルポリオール(A)との相溶性が良好なものとなる。これらのバランスに優れる点から、中でも、数平均分子量(Mn)が400〜2,000の範囲であるものがより好ましい。
【0031】
また、前記多官能エポキシ化合物(B)は、より硬化性に優れる樹脂組成物が得られることから、水酸基価が30〜160mgKOHの範囲であることが好ましく、50〜150mgKOH/gの範囲であることがより好ましい。
【0032】
前記多官能エポキシ化合物(B)は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。これらの中でも、湿熱条件下での基材接着性及び初期の接着強度に優れる樹脂組成物が得られる点で、ビスフェノール型のエポキシ樹脂が好ましい。
【0033】
更に、前記樹脂組成物は、前記ポリエステルポリオール(A)及び多官能エポキシ化合物(B)と共に、更に、水酸基含有脂肪族ポリカーボネート(C)を併用することにより、硬化物の架橋密度を飛躍的に向上させることができ、基材接着性を更に高めることができる。
【0034】
ここで用いる水酸基含有脂肪族ポリカーボネート(C)は、数平均分子量(Mn)が500〜3,000の範囲にあるものが、水酸基濃度が適度に高くなり、硬化時における架橋密度の向上が顕著なものとなる点から好ましく、特に、数平均分子量(Mn)が800〜2,000の範囲であるものがより好ましい。なお、ここで、数平均分子量(Mn)の測定方法は、前記したポリエステルポリオールにおけるGPC測定条件と同一条件にて測定される値である。
【0035】
前記水酸基含有脂肪族ポリカーボネート(C)は、より硬化性に優れる樹脂組成物となる点で、水酸基価が20〜300mgKOH/gの範囲であること、特に40〜250mgKOH/gの範囲であることがより好ましい。また、湿熱条件下での基材接着性に優れる点で、ポリカーボネートジオールであることが好ましい。
【0036】
ここで、前記水酸基含有脂肪族ポリカーボネート(C)は、例えば、多価アルコールとカルボニル化剤とを重縮合反応させる方法により製造することができる。
【0037】
前記水酸基含有脂肪族ポリカーボネート(C)の製造で用いる多価アルコールは、例えば、前記したポリエステルジオールの原料である分岐アルカンポリオール、又は非分岐アルカンジオールが何れも使用できる。
【0038】
また、前記水酸基含有脂肪族ポリカーボネート(C)の製造で用いるカルボニル化剤は、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等を挙げることができる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、前記ポリエステルポリオール(A)と、前記多官能エポキシ化合物(B)と、前記水酸基含有脂肪族ポリカーボネート樹脂(C)とを、前記ポリエステルポリオール(A)100質量部に対し、前記多官能エポキシ化合物(B)が5〜20質量部の範囲となる割合であって、かつ、前記ポリカーボネート樹脂(C)が5〜20質量部の範囲となる割合で含有することにより、種々の基材に対する接着性に優れ、湿熱条件下であっても高い基材接着性を維持できる樹脂組成物となる点から好ましい。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、前記ポリエステルポリオール(A)、前記多官能エポキシ化合物(B)、及び前記水酸基含有脂肪族ポリカーボネート樹脂(C)の他の水酸基含有化合物を含有していても良い。このような水酸基含有化合物は、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを反応させて得られるポリエステルポリオール、多塩基酸、多価アルコール及びポリイソシアネートを反応させて得られる数平均分子量(Mw)が25,000未満のポリエステルポリウレタンポリオール、二塩基酸、ジオール及びジイソシアネートを反応させて得られる直鎖型のポリエステルポリウレタンポリオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等のエーテルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール、前記ビスフェノールにエチレンオキサイド、プロプレンオキサイド等を付加して得られるビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0041】
本発明の樹脂組成物が、前記ポリエステルポリオール(A)、前記多官能エポキシ化合物(B)、及び前記水酸基含有脂肪族ポリカーボネート樹脂(C)の他の水酸基含有化合物を含有する場合、種々の基材に対する接着性に優れ、湿熱条件下であっても高い基材接着性を維持できる樹脂組成物が得られることから、その含有量は、前記ポリエステルポリオール(A)100質量部に対し、5〜20質量部の範囲となる割合であることが好ましい。
【0042】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記ポリエステルポリオール(A)を含むラミネート接着剤用ポリオール剤、又は、前記(A)〜(C)の各成分を含む樹脂組成物を主剤として用い、かつ、その硬化剤として、脂肪族ポリイソシアネート(D)を用いるものである。
【0043】
該脂肪族ポリイソシアネート(D)は、例えば、種々のポリイソシアネートが挙げられる。これらポリイソシアネート(D)は一種類を単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0044】
これら脂肪族ポリイソシアネート(D)の中でも、湿熱条件下での基材密着性に優れる点では、ヌレート型ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0045】
本発明において、前記脂肪族ポリイソシアネート(D)の配合割合は、より硬化性に優れる硬化性樹脂組成物となることから、前記ポリエステルポリオール(A)、前記エポキシ化合物(B)及び前記水酸基含有ポリカーボネート樹脂(C)に含まれる水酸基の合計モル数[OH]と、前記脂肪族ポリイソシアネート(D)に含まれるイソシアネート基のモル数[NCO]との比[OH]/[NCO]が、1/1〜1/2の範囲であることが好ましく、1/1.05〜1/1.5の範囲であることがより好ましい。
【0046】
また、主剤として用いる前記した樹脂組成物が、前記ポリエステルポリオール(A)、前記多官能エポキシ化合物(B)、及び前記水酸基含有ポリカーボネート(C)の他の水酸基含有化合物を含有する場合、前記脂肪族ポリイソシアネート(D)の配合割合は、前記硬化性樹脂組成物における水酸基の合計モル数[OH]と、前記ポリイソシアネート化合物(D)に含まれるイソシアネート基のモル数[NCO]との比[OH]/[NCO]は、1/1〜1/2の範囲であることが好ましく、1/1.05〜1/1.5の範囲であることがより好ましい。
【0047】
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、各種の溶剤を含有していても良い。前記溶媒は、例えば、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン等のケトン系化合物、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン等の環状エーテル系化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系化合物、トルエン、キシレン等の芳香族系化合物、カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系化合物が挙げられる。これらは単独で使用しても二種類以上を併用しても良い。
【0048】
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリコン系添加剤、フッ素系添加剤、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、帯電防止剤、防曇剤等の各種添加剤を含有しても良い。
【0049】
本発明の硬化性樹脂組成物は、種々のプラスチックフィルムを接着する為の2液型ラミネート用接着剤として有用である。
【0050】
ここで貼り合わせに用いられるプラスチックフィルムは、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリビニルアルコール、ABS樹脂、ノルボルネン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂等からなるフィルムが挙げられる。本願発明の2液型ラミネート用接着剤は、上記各種フィルムの中でも特に接着が難しいポリフッ化ビニル樹脂やポリフッ化ビニリデン樹脂からなるフィルムに対しても高い接着性を示す。
【0051】
前記各種フィルム同士を接着する際、本願発明の2液型ラミネート用接着剤の使用量は、2〜50g/m
2の範囲であることが好ましい。
【0052】
本発明の2液型ラミネート用接着剤を用い、複数のフィルムを接着して得られる積層フィルムは、湿熱条件下でも高い接着性を有し、フィルム同士が剥がれ難いという特徴がある。従って、本発明の2液型ラミネート用接着剤は、屋外等の厳しい環境下で用いる積層フィルム用途に好適に用いることができ、前記した通り、とりわけ太陽電池のバックシートを製造する際の接着剤として好ましく用いることができる。
【0053】
本発明の2液型ラミネート用接着剤を用い、太陽電池バックシートを製造する方法は、例えば、プラスチックフィルムに本発明の2液型ラミネート用接着剤を塗工し、次いで、この硬化性樹脂組成物層に他のプラスチック基材を重ねた後、25〜80℃の温度条件にて硬化させシート成形体を得る方法が挙げられる。
【0054】
ここで、本発明の2液型ラミネート用接着剤をプラスチックフィルムに塗工する装置としては、コンマコーター、ロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター等が挙げられる。また、プラスチック基材への前記2液型ラミネート用接着剤の塗布量は、乾燥膜厚で1〜50μm程度であることが好ましい。
【0055】
上記したプラスチックフィルムおよび接着剤層は複数存在してもよい。また、プラスチックフィルムの表面に金属蒸着膜等のガスバリア層を設け、その上に前記2液型ラミネート用接着剤を塗工、もう一つのプラスチックフィルムをラミネートする構造であってもよい。更に、太陽電池素子を封止する封止材料との接着性を向上させるため、該太陽電池用バックシートの封止材側表面には易接着層が設けられていてもよい。この易接着層は易接着層の表面に凹凸を形成でき、密着性を向上させる為にTiO
2、SiO
2、CaCO
3、SnO
2、ZrO
2およびMgCO
3等の金属微粒子とバインダーとから構成されるものであることが好ましい。
【0056】
また、本発明の太陽電池用バックシートにおける接着層の厚さは、1〜50μmの範囲であること、特に5〜15μmの範囲であることが好ましい。
【0057】
また、斯かる太陽電池用バックシートを用いてなる太陽電池モジュールは、カバーガラス板上にエチレン酢酸ビニル樹脂(EVA)シート、複数の太陽電池セル、エチレン酢酸ビニル樹脂(EVA)シート、本発明のバックシートを配設し、真空排気しながら加熱、EVAシートが溶解して太陽電池素子を封止することによって製造することができる。この際、複数の太陽電池素子はインターコネクタにより直列に接合されている。ここで、太陽電池素子としては、例えば、単結晶シリコン系太陽電池素子、多結晶シリコン系太陽電池素子、シングル接合型、またはタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池素子、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池素子、銅/インジウム/セレン系(CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子、色素増感型太陽電池素子、有機太陽電池素子等が挙げられる。
【実施例】
【0058】
以下に本発明を具体的な合成例、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、「部」は特に断りのない限り、質量基準である。
【0059】
尚、本実施例では、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0060】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC−8220GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSK−GUARDCOLUMN SuperHZ−L
+東ソー株式会社製 TSK−GEL SuperHZM−M×4
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC−8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0061】
また、赤外線吸収スペクトルは、ポリエステルポリオール(A)の溶液をKBr板に塗装し、溶剤を揮発させた試料を作成し測定した。
【0062】
実施例1〔ポリエステルポリオール(A1)の合成〕
攪拌棒、温度センサー、精留管を有するフラスコに、ネオペンチルグリコール788部、トリメチロールプロパン21部、イソフタル酸578部、無水フタル酸272部、セバシン酸419部、無水トリメリット酸17部及び有機チタン化合物0.2部を仕込み、乾燥窒素をフラスコ内に流入させ攪拌しながら230〜250℃に加熱しエステル化反応を行った。酸価が1.0mgKOH/g以下となったところで反応を停止し、100℃まで冷却後、酢酸エチルで固形分62%に希釈して、重量平均分子量(Mw)が48,000、分子量分布(Mw/Mn)が4.5、水酸基価が19、ガラス転移点(Tg)が10℃のポリエステルポリオール(A1)を得た。
【0063】
実施例2〔ポリエステルポリオール(A2)の合成〕
攪拌棒、温度センサー、精留管を有するフラスコに、ネオペンチルグリコール836部、イソフタル酸588部、無水フタル酸274部、セバシン酸406部、無水トリメリット酸15.2部及び有機チタン化合物0.2部を仕込み、乾燥窒素をフラスコ内に流入させ攪拌しながら230〜250℃に加熱しエステル化反応を行った。酸価が1.0mgKOH/g以下となったところで反応を停止し、100℃まで冷却後、酢酸エチルで固形分62%に希釈して、重量平均分子量(Mw)が25,000、分子量分布(Mw/Mn)が3.2、水酸基価が10、ガラス転移点(Tg)が6℃のポリエステルポリオール(A2)を得た。得られたポリエステルポリオール(A2)のGPCチャート図を
図1に、赤外線吸収スペクトル図を
図2に示す。
【0064】
実施例3〔ポリエステルポリオール(A3)の合成〕
攪拌棒、温度センサー、精留管を有するフラスコに、ネオペンチルグリコール794部、イソフタル酸511部、無水フタル酸272部、セバシン酸230部、ドデカン二酸261部、無水トリメリット酸21部及び有機チタン化合物0.2部を仕込み、乾燥窒素をフラスコ内に流入させ攪拌しながら230〜250℃に加熱しエステル化反応を行った。酸価が1.0mgKOH/g以下となったところで反応を停止し、100℃まで冷却後、酢酸エチルで固形分62%に希釈して、重量平均分子量(Mw)が24,000、分子量分布(Mw/Mn)が3.5、水酸基価が18、ガラス転移点(Tg)が−5℃のポリエステルポリオール(A3)を得た。
【0065】
比較例1〔ポリエステルポリオール(a1)の合成〕
攪拌棒、温度センサー、精留管を有するフラスコに、ネオペンチルグリコール1088部、イソフタル酸727部、無水フタル酸353部、セバシン酸524部及び有機チタン化合物0.2部を仕込み、乾燥窒素をフラスコ内にフローさせ攪拌しながら240〜260℃に加熱しエステル化反応を行った。酸価が0.5mgKOH/g以下となったところで反応を停止し、100℃まで冷却後、酢酸エチルで固形分62%に希釈して、重量平均分子量(Mw)が78,000、分子量分布(Mw/Mn)が2.5、水酸基価が5、ガラス転移点(Tg)が−10℃のポリエステルポリオール(a1)を得た。
【0066】
比較例2〔ポリエステルポリオール(a2)の合成〕
攪拌棒、温度センサー、精留管を有するフラスコに、ネオペンチルグリコール843部、イソフタル酸519部、無水フタル酸694部及び有機チタン化合物0.02部を仕込み、乾燥窒素をフラスコ内に流入させ攪拌しながら230〜250℃に加熱しエステル化反応を行った。酸価が1.0mgKOH/g以下となったところで反応を停止し、100℃まで冷却後、酢酸エチルで固形分62%に希釈して、重量平均分子量(Mw)が13,000、分子量分布(Mw/Mn)が2.2、水酸基価が20、ガラス転移点(Tg)が35℃のポリエステルポリオール(a2)を得た。
【0067】
比較例3〔ポリエステルポリオール(a3)の合成〕
攪拌棒、温度センサー、精留管を有するフラスコに、ネオペンチルグリコール862部、イソフタル酸389部、無水フタル酸520部、アジピン酸313部及び有機チタン化合物0.02部を仕込み、乾燥窒素をフラスコ内に流入させ攪拌しながら230〜250℃に加熱しエステル化反応を行った。酸価が1.0mgKOH/g以下となったところで反応を停止し、100℃まで冷却後、酢酸エチルで固形分62%に希釈して、重量平均分子量(Mw)が15,000、分子量分布(Mw/Mn)が2.1、水酸基価が18、ガラス転移点(Tg)が20℃のポリエステルポリオール(a3)を得た。
【0068】
比較例4〔ポリエステルポリオール(a4)の合成〕
攪拌棒、温度センサー、精留管を有するフラスコに、ネオペンチルグリコール1130部、イソフタル酸759部、無水フタル酸342部、セバシン酸534部及び有機チタン化合物1.2部を仕込み、乾燥窒素をフラスコ内にフローさせ攪拌しながら230〜250℃に加熱しエステル化反応を行った。酸価が1.0mgKOH/g以下となったところで反応を停止し、100℃まで冷却後、酢酸エチルで固形分80%に希釈した。次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート108部を仕込み、乾燥窒素をフラスコ内にフローさせ攪拌しながら70〜80℃に加熱しウレタン化反応を行った。イソシアネート含有率0.3%以下となったところで反応を停止し、数平均分子量が10000、重量平均分子量が22000で、水酸基価が9のポリエステルポリオールを得た。これを酢酸エチルで希釈して得られた固形分62%の樹脂溶液をポリエステルポリオール(a4)とする。
【0069】
実施例4〜12及び比較例5〜8
多官能エポキシ化合物(B1)として、数平均分子量(Mn)470、エポキシ当量245g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 860」)、多官能エポキシ化合物(B2)として数平均分子量(Mn)900、エポキシ当量475g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「JER1001」)、ポリカーボネート(C)として数平均分子量約1000、水酸基価約110であるプラクセルCD210(ダイセル化学社製)を用い、表1及び表2に従い、接着剤主剤を調製した。
接着剤硬化剤のポリイソシアネートとして、ヌレートタイプのヘキサメチレンジイソシアネート(D)スミジュールN3300(住友バイエルウレタン社製)を使用した。
表1,表2に示す配合で、ポリエステルポリオール、エポキシ化合物及びポリカーボネートを含有する主剤、硬化剤を一括混合して、各接着剤を調製した。尚、表中の配合量は固形分質量部であり、硬化剤の配合量は、主剤100質量部に対する配合量である。
【0070】
(評価サンプルの調製)
原反として125μm厚のPETフィルム(東レ(株)製「X10S」)を用い、上記の各接着剤組成物を5〜6g/m
2(乾燥質量)に塗装して、貼合用フィルムとして25μm厚のフッ素フィルム(旭硝子(株)アフレックス25PW)を用い、評価サンプルを得た。評価サンプルは、50℃、72時間、エージングした後、評価に供した。
【0071】
(評価方法)
評価1:外観 前記方法で作成した評価サンプルについて、フッ素フィルム側よりラミネート外観を目視評価した。
○:フィルム表面が平滑 △:フィルム表面に若干のクレーターが存在 ×:フィルム表面に多数のクレーター(凹み)が存在
【0072】
評価2:湿熱条件下での接着力の測定 前記方法で作成した評価サンプルについて、引っ張り試験機(SHIMADZU社製「AGS500NG」)を用い、剥離速度スピード300mm/min、強度N/15mmの条件下でT型剥離試験を行い、その強度を接着力として評価した。
評価サンプルの初期の接着力と、121℃、湿度100%環境下で25時間、50時間、75時間暴露した後のサンプルの接着力を測定した。
【0073】
評価3:耐湿熱性の評価 前記評価2で測定した評価サンプルの初期の接着力と、121℃、湿度100%環境下で75時間暴露した後のサンプルの接着力とを比較し、暴露後の接着力が初期の接着力の80%以上であったものを◎、65%以上80%未満であったものを○、40%以上65%未満であったものを△、40%未満であったものを×として評価した。
【0074】
【表1】
【表2】