【実施例】
【0040】
本発明を、実施例を挙げてより詳細に説明する。
【0041】
(実施例1〜4、比較例1)
ハニカム構造体10の原料粉体であるSi
3N
4((株)宇部興産 E10)、AlN((株)トクヤマ H グレード)、Al
2O
3((株)住友化学 AKP-30)およびCeO
2((株)信越化学工業)を、表1に示す組成となるように秤量し、エタノール中で湿式混合した。表1に示すように、比較例1はCeを配合せず、実施例1はCeを2w%とし、実施例2,3はCeを同じ4w%としながら、Si
3N
4におけるSi、Nの、Al,Oへの置換量を異ならせている。また、実施例4はCeを9.7w%配合した。
【0042】
【表1】
【0043】
これらの混合粉体を、0.9MPa、N
2 雰囲気下にて、1850℃、2hの後、1500℃、1hの条件で焼成して、実施例1〜4および比較例1のセラミック担持体を得た。
【0044】
(実際例5)
金属ケイ素(Si)(山石金属製)60.2wt%に、AlN((株)トクヤマ H グレード)4.2wt%、Al
2O
3((株)住友化学 AKP-30)1.0wt%、CeO
2((株)信越化学工業)4.6wt%を添加し、乾粉混合した。次に、この混合材料に、分散剤(日本油脂(株)セラミゾール)0.4wt%、水19.6wt%、有機バインダーとしてのメチルセルロース(信越化学工業(株)「メトローズ」)10wt%を混合し、成形した。その後、成形体を窒素中、および窒素+酸素条件で脱脂し、脱脂後の成形体を窒素雰囲気下、1350℃、3hの後、1850℃、3hの条件で焼成して、実施例5のセラミック担持体を得た。
【0045】
次に、こうして得られた6つのセラミック担持体に対して、XRDによる構成相の同定、SEMによる微構造観察、EDSによる元素分析、及びXPSによるCeの電子状態分析を行った。微細造観察、および元素分析の結果を
図4に示す。電子状態分析の結果を
図5に示す。
【0046】
XRDプロファイルより、実施例1,2,4および比較例1のセラミック担持体においては、β-SiAlON のみが生成し、実施例3のセラミック担持体については、β-SiAlON の他、2次相として、α-SiAlONが生成していることを確認した。
【0047】
また、
図4、
図10に示すように、SEM観察の結果、β-SiAlONは、六角柱状粒子として成長している様子が確認された(
図4の二次電子像は実施例1のものであり、
図10の二次電子像は実施例4のものである)。また、実施例1〜3においては、EDS分析より生成物中にCeが均一に存在していることもわかった(
図4のCe分布は実施例1のものであり、
図10のCe分布は実施例4のものである)。
【0048】
さらに、
図5に示すように、Ceの電子状態より、Ce-O-Pt結合を作る、Ce
4+の存在が確認できた。
【0049】
次に、実施例1〜5および比較例1の各セラミック担持体に、ジニトロジアンミンPt硝酸水溶液を出発物質としてPtを担持させた後、500〜700℃、2hの条件にて空気中で焼成して、Ptの粒成長過程の観察を行った。また、Pt粒子の粒径を測定した。粒径計測は、以下に示す2つの方法で行い、結果は上記表1に併せて示す。
【0050】
(粒径測定の方法)
方法1:画像解析によるPt粒径測定
SEM観察によりPt粒子を含む組織を撮影した。次に、Pt粒子を二値化し、画像処理により平均粒径を測定した。但し、SEM観察によるPt粒子の粒径測定は、SEM観察できない数nmの粒子の測定はできない。
【0051】
方法2:XRDによる積分強度比較
熱処理した資料を、40keV,200mA、幅0.020℃、スキャンスピード0.5℃/s、スキャン回数5の条件でXRDにより積分測定した。Ptを塗布しない基材の積分強度をあらかじめ測定しておき、Pt塗布熱処理後の積分強度をPt塗布なしの積分強度で除した値を比較した。小さいほどPt粒径が細かいことを示している。
【0052】
図6に、実施例1のセラミック担持体を用いたサンプル(500℃2h)のSEM写真を示す。
図6において、(a)は二次電子像であり、(b)は反射電子像(組成像)である。同様にして、実施例2、実施例3、比較例1の各セラミック担持体を用いたサンプル(500℃2h)のSEM写真を、
図7、
図8、
図9に示す。
図6〜
図9において、白抜きで示すスケールは1μmであり、撮影は、倍率20,000,5.0kVで行った。
【0053】
図6〜
図9の二次電子像より、六角柱状粒子が成長していることが観測される。また、
図6〜
図9の反射電子像より、実施例1〜3のサンプルでは、100nm以上の径を有するPt粒子は観測されず、比較例1のサンプルでは、100nm以上の径を有するPt粒子が観測された。反射電子像は示していないが、実施例4,5のサンプルでも、100nm以上の径を有するPt粒子は観測されなかった。
【0054】
また、
図6〜
図8の二次電子像と
図9の二次電子像とを比較することで、Ceが固溶されたサイアロンの方が、六角柱状粒子の成長が促されていることが確認できた。
【0055】
Ceによる粒成長の抑制効果を確認すべく、Pt粒子の平均粒径を測定したところ、比較例1のサンプルでは、500℃で2h焼成した場合は139nmで、700℃で2h焼成した場合は155nmであった。
【0056】
一方、実施例1のサンプルでは、500℃で2h焼成した場合は100nmを超えるものは観測されず、700℃で2h焼成した場合は128nmであった。実施例2のサンプルでも、実施例1のサンプルと同様の結果であった。実施例3のサンプルでは、500℃で2h焼成した場合は100nmを超えるものは観測されず、700℃で2h焼成した場合は146nmであった。実施例4のサンプルでは、500℃で2h焼成した場合は100nmを超えるものは観測されず、700℃で2h焼成した場合は140nmであった。実施例5のサンプルでは、500℃で2h焼成した場合は100nmを超えるものは観測されず、700℃で2h焼成した場合は130nmであった。
【0057】
700℃で2h焼成したものについて、積分強度比較による粒径測定も行った。比較例1のサンプルの0.31に対して、実施例1〜5の値はこれよりも小さく、Pt粒径が細かいことが確認できた。
【0058】
これらの結果より、Ceによる固定効果にて、Pt粒子の粒成長が抑制されることが確認できた。
【0059】
(まとめ)
本発明のセラミック担持体は、上記課題を解決するために、排ガス浄化用の触媒能を有する貴金属を表面に担持する多孔質のセラミック担持体であって、Ceが固溶されると共に、比表面積が0.2m
2/cm
3以上のセラミック材よりなることを特徴としている。ここで比表面積とは、DPFなどとして成形されたセラミック担持体の単位体積あたりの表面積のことである。
【0060】
本発明の排ガス浄化用触媒体は、上記課題を解決するために、本発明のセラミック担持体と、該セラミック担持体の表面に、触媒能を有する貴金属として、Pt,Pd,Rhのうちの少なくとも1つ以上が担持されてなることを特徴としている。
【0061】
これによれば、セラミック材に固溶されたCeが貴金属の粒子(以下、貴金属粒子)と化学結合を形成して、貴金属粒子をセラミック担持体の表面に固定させることができる。また、Ceを固溶したセラミック材の比表面積が0.2m
2/cm
3以上であることで、セラミック担持体の表面に固定された貴金属粒子の間隔が十分広くなり、貴金属粒子の粒成長を効果的に抑制することができる。
【0062】
これにより、固溶されているCeによる貴金属粒子の固定効果と、該セラミック材の大きな比表面積による貴金属粒子の間隔を広げる分散効果とが複合的に作用して、貴金属粒子の粒成長を効果的に抑制することが可能となる。
【0063】
その結果、貴金属の触媒能を十分に発揮させ続けることができ、貴金属の担持量を同じとした場合には、従来構成のセラミック担持体を用いた排ガス浄化用触媒体よりも浄化性能を長く維持することができる。また、問題のない浄化能力を維持する期間を同じとした場合には、従来構成のセラミック担持体を用いた排ガス浄化用触媒体よりも、担持させる貴金属の量を削減することができる。
【0064】
本発明のセラミック担持体は、さらに、前記セラミック材がサイアロン組成を有する構成とすることができる。
【0065】
サイアロンには、α型とβ型とがあることが知られている。このうち、β-サイアロンは、六角柱状結晶粒子として成長することが確認されており、セラミックス材に要求されている比表面積の条件を容易に満足し得る。また、β-サイアロンは、Ceを固溶しやすく、添加したCeを有効に活用することが可能である。一方、α-サイアロンは、通常、Ceを添加しても固溶しにくいが、イットリウム(Y)を追加添加することによりCeを固溶することが可能となる。したがって、セラミック担持体としては、β-サイアロンに限らずα-サイアロンであってもよい。
【0066】
本発明のセラミック担持体は、さらに、前記セラミック材におけるCe含有量が0.5〜10wt%である構成とすることができる。
【0067】
含有量が0.5wt%を下回ると、固溶されるCeが不足して、必要量の貴金属粒子をセラミック担持体の表面に固定させることができなくなる恐れがある。固定されない貴金属粒子は、凝集を起こしやすくなる。一方、含有量が10wt%を超えると、Ceがサイアロンに固溶されずに、セラミック担持体の表面に、Ceを含む別の相が析出する恐れがある。Ceの析出を考慮した場合、Ce含有量の上限は5wt%とすることがより好ましい。