【実施例】
【0012】
図1〜
図8に、実施例のアニオン交換膜CO
2センサ2,22とその特性とを示す。
図1はCO
2センサ2,22のセンサ本体4を示し、アニオン交換膜6の一面に検知極8を、反対面に対極を設け、Au線等のリード線11,12を接続する。アニオン交換膜6は例えば強塩基性の水酸化物イオン伝導性の合成樹脂膜であり、例えば株式会社アストム製のネオセプタ(ネオセプタは登録商標)を用いる。なおアニオン交換膜6での伝導陰イオンの種類は任意である。検知極8と対極10の材料は、Ptペーストもしくはカーボンブラック(CB)に担持したPtを、アニオン交換膜6と同質のアニオン交換樹脂(AER)と混合したもの等を用いるが、例えばPtの薄膜電極などでもよい。またPtに代えて、Au,Rh,Ir,Ruなどの他の貴金属電極(厚膜または薄膜)を用いてもよく、さらにLaCoO
3,LaNiO
3などの卑金属の酸化物電極などを用いてもよい。また対極はCBから成る炭素電極、もしくは炭素の薄膜電極などでもよい。
【0013】
図2にアニオン交換膜CO
2センサ2の構造を示し、アニオン交換膜6の検知極8とは反対面に対極10が設けられ、検知極8側がCO
2濃度を測定する雰囲気(被検ガス)に曝され、対極10側がCO
2濃度が既知の雰囲気(参照ガス)に曝される。そして検知極8と対極10間の起電力を測定する。
【0014】
図8に示すように、CO
2センサ2には相対湿度依存性があるので、水溜を備えたアニオン交換膜CO
2センサ22(
図3)を用いてもよい。24は容器で水を収容し、26はPTFE膜などの多孔質膜で、検知極8を覆うことにより外部から保護し、多孔質膜26は容器24に固定されて、これらの隙間からリード線11,12を引き出す。
【0015】
センサ本体4の製造方法を説明する。塩化白金酸の水溶液をCBと混合し、60分間超音波照射した後、70℃に加熱して乾燥した後、350℃で1時間水素雰囲気中で還元することにより、PtをCB量に対して10wt%担持させたPt/CBを調製した。強塩基性で水酸化物イオン伝導性のアニオン交換樹脂(4級アンモニウム基をアニオン交換基として有するアニオン交換樹脂で、イオン交換容量は1.5mmol/g)の有機溶媒溶液に、前記のPt/CBを混合し、電極材料とした。この電極材料を用いた電極をPt/CB-AERと呼び、その組成は質量比でAER:CB:Pt=1.1:1:0.1である。他の電極材料として、田中貴金属株式会社製の市販のPtペースト(TR-7905)を前記のアニオン交換樹脂の溶液と混合し、アニオン交換樹脂とPtとを33:1の質量比で含むペーストを調製した。このペースト用いた電極をPt-AERと呼ぶ。強塩基性で水酸化物イオン伝導性のアニオン交換膜(4級アンモニウム基をアニオン交換基として有するアニオン交換樹脂で、イオン交換容量は1.8mmol/g)の表裏両面に、Pt/CB-AERを塗布し、検知極と対極とを作製すると共に、Auからなるリード線11,12を固定した。同様にPt-AERの電極材料を、前記のアニオン交換膜の表裏両面に塗布すると共に、リード線11,12を取り付けた。製造したセンサ本体4の構成を表1に示す。
図2のセンサ2を用いて特性を測定し、対極10側には参照ガスを、検知極8側には被検ガスを供給し、リード線11,12間の起電力を測定した。
【0016】
なおアニオン交換膜は一般にアニオン交換基を有する樹脂の膜であり、アニオン交換基は例えば4級アンモニウム基、4級ホスホニウム基等である。アニオン交換膜は、例えばポリスチレン、ポリビニルピリジン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリベンズイミダゾール等の樹脂を基材として、アニオン交換基等の官能基を導入し、キャスト成膜等により成膜したものである。アニオン交換膜は通常0.2〜3mmol/g、好ましくは0.5〜2.5mmol/gのアニオン交換容量を有し、乾燥によりアニオン伝導性が低下しないように、25℃における含水率は7wt%以上で、好ましくは10〜90wt%である。膜厚は、電気抵抗が低く、かつ必要な機械的強度を保つために、5〜200μmが好ましく、より好ましくは10〜100μmとする。またアニオン交換膜は、25℃で0.5mol/LのNaCl水溶液中での膜抵抗が例えば0.05〜1.5Ωcm
2であり、好ましくは0.1〜0.5Ωcm
2である。
【0017】
表1 センサ本体の構成
アニオン交換膜 水酸化物イオン伝導性強塩基性アニオン交換膜
検知極と対極(Pt/CB-AER) Pt:カーボンブラック:アニオン交換樹脂=0.1:1:1.1
検知極と対極(Pt-AER) Pt:アニオン交換樹脂=1:33
【0018】
図4は2%のCO
2への応答波形を示し、最初は検知極/対極とも395ppmCO
2と20%O
2とを含むN
2ガスの雰囲気に置かれ、対極側のCO
2濃度を固定し検知極側のCO
2濃度を変化させて、測定温度は30℃で相対湿度は57%である。対極側のCO
2濃度を395ppmに固定したまま、検知極側のCO
2濃度を395ppmと2%との間で変化させた。Pt/CB-AER電極とPt-AER電極とを比較すると、Pt-AER電極では起電力の変化が大きいが、雰囲気への応答はPt/CB-AER電極の方が速いことが分かる。
図5は、被検ガス中のCO2濃度を395ppmから2%までの範囲で変化させた際の起電力を示し、最初は検知極/対極とも395ppmCO
2と20%O
2とを含むN
2ガスの雰囲気に置かれ、測定温度は30℃、相対湿度は57%、対極のCO
2濃度は395ppmに固定した。起電力の勾配をネルンストの式と比較すると、Pt-AER電極では反応の電子数は1.6、Pt/CB-AER電極では反応の電子数は2であることが分かる。
【0019】
前記の(6)の CO
2+H
2O+2e
-→CO+2OH
- の電極反応では、センサ2はCOに対してCO
2とは逆向きに応答するはずである。1000ppmのCOへの応答波形(Pt-AER電極)を
図6に示し、検知極と対極は共に20%のO
2を含み、相対湿度が50%で残余がN
2ガスの雰囲気に置かれ、測定温度は21℃である。この条件で被検ガスに1000ppmのCOを導入した際の結果を
図6に示す。センサ2はCOに対して、CO
2とは逆向きに応答している。
【0020】
図7はO
2濃度を0%,20%,30%に変化させた際の応答波形(Pt-AER電極)を示し、最初検知極を2%のCO
2と20%のO
2を含むN
2ガスの雰囲気に置き、O
2濃度を0%、10%及び30%に変化させる。対極は395ppmのCO
2と20%のO
2を含むN
2ガスの雰囲気に置かれている。測定温度は30℃で、検知極側も対極側も共に相対湿度を57%とした。
図7からO
2濃度の変化に対する応答がごく僅かで、O
2はCO
2の検出反応に関与しないことが分かり、このことは(6)の電極反応を支持している。
【0021】
図8は30℃で相対湿度が0〜80%の各雰囲気での、2%のCO
2に対する応答波形(Pt-AER電極)を示し、検知極と対極は共に20%のO
2を含むN
2ガスの雰囲気に置かれている。またCO
2の導入前は検知極と対極は共に395ppmのCO
2を含んでいる。相対湿度が低いほど応答は大きくなるが、回復が遅くなる。相対湿度が低いと起電力の変化が大きくなることは、アニオン交換膜中に溶解したCO
2濃度が相対湿度が低いほど高くなることを示している。
【0022】
図4〜
図7から、起電力はCO
2に対して正に応答し、CO
2に対してほぼ2電子反応であり、O
2は応答に関与せず、COに対して負に応答することが分かる。これらのことは、電極反応が(6)に沿ったものであることを支持している。実施例では検知極8と対極10をアニオン交換膜6の両面に設けたが、これらを同一面に設けて、対極10を気密な樹脂等で被検ガスから遮断しても良い。