【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明により、この目的は、投影光を生成するように構成された光源と、瞳平面と、回折光学要素とを含むマイクロリソグラフィ投影露光装置の照明系によって達成される。回折光学要素は、瞳平面内の投影光の放射照度分布が、投影光によって回折光学要素上に照明される視野の位置に依存するように、光源と瞳平面の間に配置される。更に、照明系は、光源と回折光学要素の間に配置された光学結像系を含む。
【0022】
光学結像系は、回折光学要素が実際に光源の像によって照明されるという効果を有する。この像と回折光学要素の間の距離は小さく、又は更にゼロであるので、光源によって放出される投影光ビームの方向及び発散の変化は、投影光によって回折光学要素上に照明される視野部分に対して影響を持たないか、又は少なくとも有意な影響を持たない。
【0023】
光源の光射出窓が物体平面に配置され、回折光学要素が光学結像系の像平面に配置される場合には、光源の光射出窓は、回折光学要素上に厳密に結像されることになる。その結果、投影光の方向及び発散の変化は、投影光によって回折光学要素上に照明される視野の位置に対して影響を全く持たないことになる。
【0024】
しかし、多くの場合に、投影光によって回折光学要素上に照明される視野内でより均一な放射照度分布を得るために、回折光学要素は、僅かにデフォーカスされた軸上位置に配置されることが望ましいものになる。デフォーカスは、回折光学要素を光学結像系の像平面を外して配置すること、光源の光射出窓を光学結像系の物体平面を外して配置すること、又は両方の構成要素を像平面及び物体平面それぞれを外して配置することのいずれかによって達成することができる。
【0025】
多くの場合に、物体側と、更に像側とでテレセントリックである光学結像系を有することが好ましい。付加的な制約条件として、屈折パワー又は反射パワーを有し、かつビーム送出部に配置される光学要素を光学結像系が含んではならないことが追加される場合には、光学結像系は、少なくとも、屈折パワー又は反射パワーを有する3つの光学要素を備えなければならないことを見ることができる。3つよりも少ない光学要素のみを有する場合には、テレセントリック性を達成すること、及びビーム送出部内へのそのような光学要素の配列を回避することは可能ではない。
【0026】
例えば、光学結像系は、2つの正のレンズと、これらの2つの正のレンズの間に配置された負のレンズとを含むことができる。そのような光学結像系は、小さい追加容積しか必要とせず、照明系の残りの構成要素、特にビーム送出部を実質的に修正する必要なく光源とビーム送出部の間に配置することができる。
【0027】
上述したように、ビーム送出部の全長は、多くの場合に、半導体製作工場における局所条件に依存する。従って、光学結像系は、異なる長さのビーム送出部に迅速かつ簡単に適応させることができるように構成すべきである。光学結像系は、その物体側と像側でテレセントリックである場合には、余儀なく無限焦点のものである。この場合、テレセントリック性が維持されるように自由物体距離を変更することにより、自由像距離を変更することができる。
【0028】
光学結像系の物体長を簡単な方式で変更することを可能にするために、照明は、光源と光学結像系の間に配置された多重ビーム折り返し系を含むことができる。そのような多重ビーム折り返し系は、例えば、複数のプリズム又は平面ミラーを含むことができ、かつプリズム又は平面ミラーのうちの1つ又はそれよりも多くを変位させることにより、多重ビーム折り返し系内の光路長を簡単に調節することができるように構成することができる。例えば、少なくとも1つのプリズム又はミラーは、案内レールに沿った異なる位置に固定することができるように案内レール上に装着することができる。
【0029】
一部の実施形態において、光源と回折光学要素の間の軸上距離は、2mと25mの間、特に5mと20mの間にある。
【0030】
光学結像系は、|β|>1、好ましくは|β|≧2である横倍率βを有することができる。自由像距離の増加Δd
iは、自由物体距離の増加Δd
o=Δd
i/β
2を必要とすることになるので、|β|>1という条件は、自由物体距離の増加Δd
oが自由像距離の増加よりも常に小さくなることを保証する。実際に、ビーム送出部長さに対応するある一定の自由像距離を得るべき場合には、|β|が大きい程、自由物体距離の調節は小さくなる。
【0031】
更に、|β|>1である横倍率βは、自由物体距離が自由像距離よりも小さくなることを保証する。これは、その場合に光学結像系内に含まれる全ての光学要素を光源と照明系のビーム送出部の間に配置することができることから有利である。
【0032】
最後に、1つ重要な点を追加すると、|β|>1である横倍率βは、回折光学要素上に照明される視野が、通常望ましいこととして投影光が光源によって放出される時の投影光のビーム断面よりも大きいという効果を有する。
【0033】
しかし、横倍率が非常に大きい場合には、回折光学要素上に照明される視野のサイズが最終的に大き過ぎる場合がある。この場合、光学結像系と回折光学要素の間に補助的なビーム縮小ユニットを配置することができる。このユニットは、光学結像系から射出する平行な光ビームの直径を縮小するように構成される。
【0034】
照明系は、回折光学要素を光学軸と平行ではない変位方向に沿って変位させるように構成された変位機構を含むことができる。この場合、回折光学要素を変位方向に沿って変位させることにより、回折光学要素によって生成される回折効果を光視野の位置に依存して変更することができる。
【0035】
投影光に対して回折光学要素を変位させる代わりに、固定された回折光学要素に対して投影光ビームを移動すること、又は更に両方の手段を組み合わせることを考えることができる。投影光ビームを移動するために、ビームステアリングデバイスを使用することができ、これは、回折光学要素が一時的に静止する場合に光視野の位置を変更するように構成される。
【0036】
定義
本明細書では「光」という用語をあらゆる電磁放射線、特に、可視光、UV光、DUV光、及びVUV光を表す上に使用する。
【0037】
本明細書では「光線」という用語を線によって表すことができる伝播経路を有する光を表す上に使用する。
【0038】
本明細書では「光束」という用語を視野平面に共通の起点を有する複数の光線を表す上に使用する。
【0039】
本明細書では「光ビーム」という用語を特定のレンズ又は別の光学要素を通過する光を表す上に使用する。
【0040】
本明細書では「位置」という用語を3次元空間内でのエンティティ又は無形物体(光等)の基準点の場所を表す上に使用する。通常は位置を3つの直交座標の組によって示している。従って、向き及び位置は、3次元空間内でのエンティティの配置を完全に説明する。
【0041】
本明細書では「方向」という用語を直線の空間的な向きを表す上に使用する。従って、特定の方向に沿った物体の移動は、この物体がこの線上の2つの反対の向きに移動することが許されることを意味する。
【0042】
本明細書では「面」という用語を3次元空間内でのあらゆる平面又は曲面を表す上に使用する。面は、エンティティの一部とすることができ、又は通常は視野又は瞳平面においてそうであるように、エンティティとは完全に別個のものとすることができる。
【0043】
本明細書では「視野平面」という用語をマスク平面と光学的に共役な平面を表す上に使用する。
【0044】
本明細書では「共役平面」という用語を間に結像関係が確立される平面を表す上に使用する。共役平面の概念に関する更に別の情報は、「1次設計及び
図」という名称のE.Delanoの論文、応用光学、1963年、第2巻第12号、1251〜1256ページに説明されている。
【0045】
本明細書では「瞳平面」という用語をマスク平面内の異なる点を通過する周辺光線が交わる平面を表す上に使用する。数学的な意味で平面ではなく、若干湾曲した面を指し、従って、厳密な意味では瞳面と呼ぶべき場合にも、「瞳平面」という用語を使用する。
【0046】
本明細書では「光学ラスター要素」という用語を各光学ラスター要素が複数の隣接する光学チャンネルのうちの1つに関連付けられるように他の同一又は類似の光学ラスター要素と共に配置されたあらゆる光学要素、例えば、レンズ、プリズム、又は回折光学要素を表す上に使用する。
【0047】
本明細書では「テレセントリック」という用語を視野平面から射出した光束の主光線が光学軸と平行に伝播することを表す上に使用する。
【0048】
本明細書では「光学インテグレーター」という用語をNAが開口数であってaが照明視野内で照明される面積である時に積NA・aを増大させる光学系を表す上に使用する。
【0049】
本明細書では「コンデンサー」という用語を2つの平面の間、例えば、視野平面と瞳平面の間にフーリエ関係を確立する(少なくとも近似的に)光学要素又は光学系を表す上に使用する。
【0050】
本明細書では「自由物体距離」という用語を光学結像系の最初の物体側光学要素の頂点と物体平面の間の軸上距離を表す上に使用する。
【0051】
本明細書では「自由像距離」という用語を光学結像系の最後の像側光学要素の頂点と像平面の間の軸上距離を表す上に使用する。
【0052】
本明細書では「空間放射照度分布」という用語を光が入射する実面又は虚面にわたって合計放射照度が如何に変化するかを表す上に使用する。通常、空間放射照度分布は、x,yが面上の点の空間座標である時に、関数I
s(x,y)によって表すことができる。
【0053】
本明細書では「角度放射照度分布」という用語を光束の放射照度が光束を構成する光線の角度に依存して如何に変化するかを表す上に使用する。通常、角度放射照度分布は、α、βが光線の方向を表す角度座標である時に、関数I
a(α,β)によって表すことができる。
【0054】
本発明の様々な特徴及び利点は、以下に続く詳細説明を添付図面と併せて参照することによってより容易に理解することができる。