(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
一般式(I)において、R
1及びR
2はお互い独立して下記の重合性基を表す。
【0015】
これらの重合基はラジカル重合、ラジカル付加重合、カチオン重合、及びアニオン重合により硬化する。特に重合方法として紫外線重合を行う場合には、式(R−1)、式(R−2)、式(R−4)、式(R−5)、式(R−7)、式(R−11)、式(R−13)又は式(R−15)が好ましく、式(R−1)、式(R−2)、式(R−7)、式(R−11)又は式(R−13)がより好ましく、式(R−1)又は式(R−2)が特に好ましい。
【0016】
S
1及びS
2はお互い独立してスペーサー基又は単結合を表すが、スペーサー基としては、炭素数2〜6のアルキレン基、又は単結合が好ましく、該アルキレン基は酸素原子同士が直接結合しないものとして炭素原子が酸素原子、−COO−、−OCO−、−OCOO−に置き換えられても良い。
【0017】
L
1、L
2、L
3、L
4、及びL
5はお互い独立して、単結合、−OCH
2−、−C
2H
4−、−CH
2O−、−COO−、−OCO−、−OCOOCH
2−、−CH
2OCOO−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−COOC
2H
4−、−OCOC
2H
4−、−C
2H
4OCO−、−C
2H
4COO−、−CF
2O−が好ましく、安価に製造、液晶配向性の観点から、単結合、―COO−、−OCO−、又は−OCH
2−、−CH
2O−がより好ましい。特に好ましい構造としては、L
2、L
3、L
4の少なくとも1つ以上は―COOC
2H
4−、―OCOC
2H
4−、−C
2H
4OCO−、又は−C
2H
4COO−を表わし、L1及びL5が単結合を表わす。M
1及びM
2は、1,4−フェニレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、又はナフタレン−2,6−ジイル基が好ましく、mは0又は1がより好ましい。p、q、r、及びsはお互い独立して、0又は1を表わすが、p=q=r=s=1であるか、p=r=1、q=s=0であるか又は、p=r=0、q=s=1である場合が好ましく、p=r=1、q=s=0であることがより好ましい。
【0018】
一般式(I)で表される化合物は、より具体的には、下記の一般式(I-1)〜一般式(I-15)で表される化合物が好ましい。
【0021】
(式中、n及びlは、0〜12の整数を表わすが、0の場合は芳香環に結合している酸素原子は除去する。)
本発明の化合物は以下に記載する合成方法で合成することができる。
(製法1) 一般式(I-1)で表される化合物の製造
プロトカテク酸エチルエステルと塩化ベンジルとの炭酸カリウム等の塩基を用いたエーテル化反応を行いベンジル保護基を2つ有する中間体(S-1)を得て、更に水酸化ナトリウム等の塩基で加水分解を行い、芳香族カルボン酸誘導体(S-2)を得る。次いで、2-(4-ヒドロキシフェニル)エタノールとジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いたエステル化反応により中間体(S-3)を得る。
【0023】
次いでパラジウムカーボンを用いた接触水素還元によりベンジル基を脱離させ、更に塩化アクリロイルとのエステル化反応により目的物化合物(I-1)を得ることができる。
【0025】
(製法2) 一般式(I-3)で表される化合物の製造
没食子酸メチルエステルに6-クロロヘキサノールとの炭酸カリウム等の塩基を用いたエーテル化反応を行い水酸基を3つ有する中間体(S-4)を得て、更に水酸化ナトリウム等の塩基で加水分解を行い、芳香族カルボン酸誘導体(S-5)を得る。次いで、トリエチルアミンを用いたメタクリル酸クロリドとのエステル化反応によりメタクリル基を3つ有する芳香族カルボン酸誘導体(S-6)を得る。
【0027】
次いで、メタクリル基を3つ有する芳香族カルボン酸誘導体(S-6)と2-(4-ヒドロキシフェニル)エタノールとのジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いたエステル化反応により目的化合物中(I-3)を得ることができる。
【0029】
(製法3) 一般式(I-5)で表される化合物の製造
2-フルオロ-4-ヒドロキシ安息香酸エチルエステルと2-(4-ヒドロキシフェニル)エタノールとの錫触媒を用いたエステル交換反応によりフェノール誘導体(S-7)を得る。次いで芳香族カルボン酸誘導体(S-2)とフェノール誘導体(S-7)とのジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いたエステル化反応により中間体(S-8)を得る。更にパラジウムカーボンを用いた接触水素還元によりベンジル基を脱離させ、フェノール性水酸基を4つ有する中間体(S-9)を得る。
【0031】
次いで、フェノール性水酸基を4つ有する中間体(S-9)と6-クロロヘキシルアクリレートとの炭酸カリウム等の塩基を用いたエーテル化反応を行い目的物化合物(I-5)を得ることができる。
【0033】
(製法4) 一般式(I-7)で表される化合物の製造
6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸エチルエステルと2-(4-ヒドロキシフェニル)エタノールとの錫触媒を用いたエステル交換反応によりナフトール誘導体(S-10)を得る。
【0035】
3,5-ジヒドロキシ安息香酸エチルエステルに3-クロロプロパノールとの炭酸カリウム等の塩基を用いたエーテル化反応を行い水酸基を2つ有する中間体(S-11)を得て、更に水酸化ナトリウム等の塩基で加水分解を行い、芳香族カルボン酸誘導体(S-12)を得る。次いで、トリエチルアミンを用いたアクリル酸クロリドとのエステル化反応によりアクリル基を2つ有する芳香族カルボン酸誘導体(S-13)を得る。
更に芳香族カルボン酸誘導体 (S-13)とナフトール誘導体(S-10)とのジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いたエステル化反応により目的化合物(I-7)を得ることができる。
【0037】
(製法5) 一般式(I-11)で表される化合物の製造
N-メチロールアクリルアミドと6-クロロヘキサン酸とのジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いたエステル化反応によりアクリルアミド化合物(S-14)を得る。次いで、中間体(S-3)をパラジウムによる接触水素還元によりベンジル基を脱離させた化合物(S-15)とアクリルアミド化合物(S-14)との炭酸カリウム等の塩基を用いたエーテル化反応を行い目的化合物(I-11)を得ることができる。
【0039】
本願発明の化合物は、ネマチック液晶、スメクチック液晶、キラルスメクチック、及びコレステリック液晶組成物に使用できる。本願発明の液晶組成物は、本願発明の化合物を一種以上用いる以外に、任意の範囲で他の重合性化合物を添加しても構わない。本願発明の重合性液晶組成物中に含まれる重合性液晶化合物としては、重合性官能基としてアクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基を有するものが特に好ましい。更に重合性液晶化合物としては、重合性官能基を分子内に2つ以上持つものが好ましい。また、本願発明の液晶組成物がコレステリック液晶の場合は、キラル化合物の添加が好ましい。更に重合性基を有しない液晶組成物に添加しても構わなく、特に高分子安定化液晶デバイスに有用な材料である。
【0040】
本願発明以外の重合性化合物の具体例としては、一般式(I)で表される化合物を含有する以外に制限はないが、組み合わせて使用する重合性液晶化合物としては、化合物中にアクリロイルオキシ基(R-1)又はメタアクリロイルオキシ基(R-2)を有するものが好ましく、重合性官能基を分子内に2つ以上持つものがより好ましい。
【0041】
組み合わせて使用する重合性液晶化合物として具体的には一般式(II)及び一般式(III)
【0043】
ただし、式中Aは、H、F、Cl、CN、SCN、OCF
3、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基であり、酸素原子同士が直接結合しないものとして炭素原子が酸素原子、硫黄原子、−CO−、―COO−、−OCO−、−OCOO、−CH=CH−、−C≡C−で置換されて良く、又は−L
8−S
4−R
4、及び
【0045】
であり、R
3及びR
4は、重合性基であり、S
3及びS
4は、お互い独立して単結合、又は1〜12個の炭素原子を有するアルキレン基を表わし、ここで一つ以上の−CH
2−は、酸素原子同士が直接結合しないものとして炭素原子が酸素原子、−COO−、−OCO−、−OCOO−に置き換えられても良く、L
6、L
7、及びL
8はお互い独立して、単結合、−O−、−S−、−OCH
2−、−CH
2O−、−CO−、―COO−、−OCO−、−OCOOCH
2−、−CH
2OCOO−、−CO−NR
11−、−NR
11−CO−、−SCH
2−、−CH
2S−、―CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、―COOC
2H
4−、―OCOC
2H
4−、―C
2H
4OCO−、―C
2H
4COO−、−OCOCH
2−、−CH
2OCO−、―CH
2COO−、―COOCH
2−、−CH=CH−、−C
2H
4−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF
2−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CF
2CH
2−、−CH
2CF
2−、−CF
2CF
2−又は−C≡C−を表わすが(式中、R
11は炭素原子1〜4のアルキル基を表わす。)、M
3、及びM
4はお互い独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表わすが、M
3、及びM
4はお互い独立して無置換であるか又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、又はニトロ基に置換されていても良く、nは0、1、2又は3を表わす。nが2又は3を表す場合、2個あるいは3個存在するL
5及びM
4は同一であっても異なっていても良い。
【0046】
特に好ましい化合物としては、L
6、L
7、及びL
8はお互い独立して、単結合、−O−、―COOC
2H
4−、―OCOC
2H
4−、―C
2H
4OCO−、―C
2H
4COO−、−COO−又は−OCO−を表し、M
3、及びM
4はお互い独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基で表される化合物が好ましい。
【0047】
一般式(II)で表される化合物は具体的には、一般式(II-1)〜一般式(II-23)で表される化合物が好ましい。
【0050】
(式中、a及びbは、0〜12の整数を表すが、0の場合は芳香環に結合している酸素原子は除去する。)また本願発明の液晶組成物に使用する重合性液晶化合物としては、液晶温度範囲や複屈折率の調節、粘度低減を目的として一般式(III-1)〜一般式(III-11)を配合することが好ましい。
【0052】
式中、a及びbは、0〜12の整数を表わすが、aが0の場合は芳香環に結合している酸素原子は除去する。本願発明の液晶組成物がキラルスメクチック液晶あるいはコレステリック液晶の場合は、通常キラル化合物を添加するが、具体的な化合物としては一般式(IV-1)〜一般式(IV-7)に示される。キラル化合物の配合量は、液晶組成物に対して、0.5〜50重量%が好ましく、2〜30重量%がより好ましい。
【0054】
(式中、a及びbは、0〜12の整数を表わすが、0の場合は芳香環に結合している酸素原子は除去する。)更に本発明の液晶組成物に、重合性基を有しない液晶組成物に添加してもよく、通常の液晶デバイス、例えばSTN(スーパー・ツイステッド・ネマチック)液晶や、TN(ツイステッド・ネマチック)液晶、TFT(薄膜トランジスター)液晶等に使用されるネマチック液晶組成物、強誘電液晶組成物等が挙げられる。
【0055】
また、重合性官能基を有する化合物であって、液晶性を示さない化合物を添加することもできる。このような化合物としては、通常、この技術分野で高分子形成性モノマーあるいは高分子形成性オリゴマーとして認識されるものであれば特に制限なく使用することができるが、その添加量は組成物として液晶性を呈するように調整する必要がある。
【0056】
本発明の液晶組成物は、重合開始剤を添加しなくても熱及び光による重合が可能であるが、光重合開始剤の添加が好ましい。添加する光重合開始剤の濃度は、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜10質量%がさらに好ましく、0.4〜5質量%が特に好ましい。光開始剤としては、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、アシルフォスフィンオキサイド類等が挙げられる。
【0057】
また、本発明の液晶組成物には、その保存安定性を向上させるために、安定剤を添加することもできる。使用できる安定剤としては、例えば、ヒドロキノン類、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、β−ナフチルアミン類、β−ナフトール類、ニトロソ化合物等が挙げられる。安定剤を使用する場合の添加量は、液晶組成物に対して0.005〜1質量%の範囲が好ましく、0.02〜0.5質量%がさらに好ましく、0.03〜0.1質量%が特に好ましい。
【0058】
また、本発明の液晶組成物を位相差フィルム、偏光フィルムや配向膜の原料、又は印刷インキ及び塗料、保護膜等の用途に利用する場合には、その目的に応じて金属、金属錯体、染料、顔料、色素、蛍光材料、燐光材料、界面活性剤、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物等を添加することもできる。
【0059】
次に本発明の光学異方体について説明する。本発明の液晶組成物を重合させることによって製造される光学異方体は種々の用途に利用できる。例えば、本発明の重合性液晶組成物を、配向させない状態で重合させた場合、光散乱板、偏光解消板、モアレ縞防止板として利用可能である。また、本発明の重合性液晶組成物を配向させた状態において、重合させることにより製造された光学異方体は、物理的性質に光学異方性を有しており、有用である。このような光学異方体は、例えば、本発明の重合性液晶組成物表面を、布等でラビング処理した基板、もしくは有機薄膜を形成した基板表面を布等でラビング処理した基板、あるいはSiO
2を斜方蒸着した配向膜を有する基板上に担持させるか、基板間に挟持させた後、本発明の液晶を重合させることによって製造することができる。
【0060】
重合性液晶組成物を基板上に担持させる際の方法としては、スピンコーティング、ダイコーティング、エクストルージョンコーティング、ロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、ディッピング、プリント法等を挙げることができる。またコーティングの際、重合性液晶組成物をそのまま使用しても有機溶媒を添加しても良い。有機溶媒としては、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、セロソルブ、シクロヘキサノン、γ−ブチルラクトン、アセトキシ−2−エトキシエタン、プロピレングリコールモノメチルアセタート、N−メチルピロリジノン類を挙げることができる。これらは単独でも、組み合わせて用いても良く、その蒸気圧と重合性液晶組成物の溶解性を考慮し、適宜選択すれば良い。また、その添加量は90重量%以下が好ましい。添加した有機溶媒を揮発させる方法としては、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥を用いることができる。重合性液晶材料の塗布性をさらに向上させるためには、基板上にポリイミド薄膜等の中間層を設けることや、重合性液晶材料にレベリング剤を添加するのも有効である。基板上にポリイミド薄膜等の中間層を設けるのは、重合性液晶材料を重合させて得られる光学異方体と基板の密着性が良くない場合に、密着性を向上させる手段としても有効である。
【0061】
液晶組成物を基板間に挟持させる方法としては、毛細管現象を利用した注入法が挙げられる。基板間に形成された空間を減圧し、その後液晶材料を注入する手段も有効である。
【0062】
ラビング処理、あるいはSiO
2の斜方蒸着以外の配向処理としては、液晶材料の流動配向の利用や、電場又は磁場の利用を挙げることができる。これらの配向手段は単独で用いても、また組み合わせて用いても良い。さらに、ラビングに代わる配向処理方法として、光配向法を用いることもできる。この方法は、例えば、ポリビニルシンナメート等の分子内に光二量化反応する官能基を有する有機薄膜、光で異性化する官能基を有する有機薄膜又はポリイミド等の有機薄膜に、偏光した光、好ましくは偏光した紫外線を照射することによって、配向膜を形成するものである。この光配向法に光マスクを適用することにより配向のパターン化が容易に達成できるので、光学異方体内部の分子配向も精密に制御することが可能となる。
【0063】
基板の形状としては、平板の他に、曲面を構成部分として有していても良い。基板を構成する材料は、有機材料、無機材料を問わずに用いることができる。基板の材料となる有機材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリアリレート、ポリスルホン、トリアセチルセルロース、セルロース、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられ、また、無機材料としては、例えば、シリコン、ガラス、方解石等が挙げられる。
【0064】
これらの基板を布等でラビングすることによって適当な配向性を得られない場合、公知の方法に従ってポリイミド薄膜又はポリビニルアルコール薄膜等の有機薄膜を基板表面に形成し、これを布等でラビングしても良い。また、通常のTN液晶デバイス又はSTN液晶デバイスで使用されているプレチルト角を与えるポリイミド薄膜は、光学異方体内部の分子配向構造を更に精密に制御することができることから、特に好ましい。
【0065】
また、電場によって配向状態を制御する場合には、電極層を有する基板を使用する。この場合、電極上に前述のポリイミド薄膜等の有機薄膜を形成するのが好ましい。
【0066】
本発明の液晶組成物を重合させる方法としては、迅速な重合の進行が望ましいので、紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を照射することによって重合させる方法が好ましい。紫外線を使用する場合、偏光光源を用いても良いし、非偏光光源を用いても良い。また、液晶組成物を2枚の基板間に挟持させて状態で重合を行う場合には、少なくとも照射面側の基板は活性エネルギー線に対して適当な透明性が与えられていなければならない。また、光照射時にマスクを用いて特定の部分のみを重合させた後、電場や磁場又は温度等の条件を変化させることにより、未重合部分の配向状態を変化させて、さらに活性エネルギー線を照射して重合させるという手段を用いても良い。また、照射時の温度は、本発明の液晶組成物の液晶状態が保持される温度範囲内であることが好ましい。特に、光重合によって光学異方体を製造しようとする場合には、意図しない熱重合の誘起を避ける意味からも可能な限り室温に近い温度、即ち、典型的には25℃での温度で重合させることが好ましい。活性エネルギー線の強度は、0.1mW/cm
2〜2W/cm
2が好ましい。強度が0.1mW/cm
2以下の場合、光重合を完了させるのに多大な時間が必要になり生産性が悪化してしまい、2W/cm
2以上の場合、重合性液晶化合物又は重合性液晶組成物が劣化してしまう危険がある。
【0067】
重合によって得られた本発明の光学異方体は、初期の特性変化を軽減し、安定的な特性発現を図ることを目的として熱処理を施すこともできる。熱処理の温度は50〜250℃の範囲で、また熱処理時間は30秒〜12時間の範囲が好ましい。
【0068】
このような方法によって製造される本発明の光学異方体は、基板から剥離して単体で用いても、剥離せずに用いても良い。また、得られた光学異方体を積層しても、他の基板に貼り合わせて用いてもよい。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
(実施例1) 一般式(I−1−1)で表される化合物の製法
【0070】
【化21】
【0071】
(第一工程) 撹拌装置、冷却器、及び温度計を備えた反応容器にプロトカテク酸エチル 18.2g(100ミリモル)、ベンジルクロリド 27.8g(220ミリモル)、炭酸カリウム 41g(300ミリモル)、ジメチルホルムアミド 300mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で反応器を100℃に加熱し反応させた。反応終了後、酢酸エチル、純水を加え分液し、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(S−1)に示す化合物29gを得た。
(第二工程) 撹拌装置、及び温度計を備えた反応容器に、式(S−1)に示す化合物20g(55ミリモル)、 水酸化ナトリウム 5.3g(132ミリモル)、エタノール 200ml、純水50ml加え、60℃で2時間攪拌して加水分解を行った。反応終了後、10%塩酸水溶液を加え反応液を中和した。反応液を冷却後、析出した結晶をろ過し、水、エタノールで結晶を洗浄し、乾燥させた。更に得られた3,4-ジベンジルオキシ安息香酸 18g(53ミリモル)を撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に仕込み、更に2-(4-ヒドロキシフェニル)エタノール 3.7g(27ミリモル)、ジメチルアミノピリジン 610mg、塩化メチレン 200mlを仕込んだ。氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち、窒素ガスの雰囲気下でジイソプロピルカルボジイミド 8g(63ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し5時間反応させた。反応液をろ過した後、ろ液に塩化メチレン200mlを加え、10%塩酸水溶液で洗浄し、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い、塩化メチレン/メタノールによる再結晶により式(S−3)に示す化合物17.7gを得た。
(第三工程) 撹拌装置備えたオートクレーブ容器に、上記式(S−3)に示す化合物 17.7g(23ミリモル)、5%パラジウムカーボン 890mg、テトラヒドロフラン100ml、エタノール20mlを仕込み、0.3MPaの水素にて還元反応(室温、8時間)を行った。反応液をろ過した後、反応溶媒を留去して式(S−16)に示す化合物9.3gを得た。
(第四工程) 撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記の式(S−16)に示す化合物9.3g(23ミリモル)、アクリル酸クロリド 10g(110ミリモル)、塩化メチレン50mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で反応器を5℃以下に冷却した。次いでトリエチルアミン 11g(110ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、20℃以下で3時間反応させた。反応終了後、塩化メチレンを加え、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(I−1−1)に示す目的の化合物11.5gを得た。この化合物の融点は、131℃であった。
(物性値)
H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:3.08(t,2H), 4.54(t,2H),6.02−6.07(m,4H),6.23−6.32(m,4H),6.57−6.64(m,4H),7.15(d,2H),7.26−7.33(m,4H),7.41(d,2H),7.92−7.96(m,2H),8.09−8.16(m,2H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:34.7,64.8,121.5,123.3,123.5,124.8,125.4,126.6,126.7,128.0,129.8,139.1,149.7,164.3,165.8
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1760,1652−1622,809 cm
−1
融点:131℃
(実施例2) 一般式(I−3−1)で表される化合物の製法
【0072】
【化22】
【0073】
(第一工程) 撹拌装置、冷却器、及び温度計を備えた反応容器にプロトカテク酸エチル 18.2g(100ミリモル)、6−クロロヘキサノール 30g(220ミリモル)、炭酸カリウム 41.4g(300ミリモル)、ジメチルホルムアミド 500mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で反応器を100℃に加熱し反応させた。反応終了後、酢酸エチル、純水を加え分液し、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(S−17)に示す化合物32gを得た。
(第二工程) 撹拌装置、及び温度計を備えた反応容器に、上記式(S−17)に示す化合物32g(84ミリモル)、 水酸化ナトリウム 4g(100ミリモル)、エタノール 300ml、純水50ml加え、60℃で2時間攪拌して加水分解を行った。反応終了後、10%塩酸水溶液を加え反応液を中和した。反応液を冷却後、析出した結晶をろ過し、水、エタノールで結晶を洗浄し、乾燥させた。更に得られた3,4-ジ(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)安息香酸を撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に仕込み、更にアクリル酸クロリド 9.5g(100ミリモル)、塩化メチレン300mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で反応器を5℃以下に冷却した。次いでトリエチルアミン 10g(100ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、20℃以下で3時間反応させた。反応終了後、塩化メチレンを加え、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(S−18)に示す化合物29gを得た。
(第三工程) 攪拌機、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記の式(S−18)に示す化合物29g(63.ミリモル)、2-(4-ヒドロキシフェニル)エタノール 4.3g(31ミリモル)、ジメチルアミノピリジン 900mg、塩化メチレン 300mlを仕込み、氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち。窒素ガスの雰囲気下でジイソプロピルカルボジイミド 9.5g(75ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し5時間反応させた。反応液をろ過した後、ろ液に塩化メチレン200mlを加え、10%塩酸水溶液で洗浄し、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い、塩化メチレン/メタノールによる再結晶により式(I−3−1)に示す目的の化合物26gを得た。この化合物の融点は、59℃であった。
(物性値)
H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:1.46−1.55(m,16H), 1.68−1.72(m,8H),1.85−1.88(m,8H),3.09(t,2H),4.03−4.08(m,8H),4.14−4.19(m,8H),4.51(t,2H),5.80(m,4H),6.12(m,4H),6.37(m,4H),6.87(dd,2H),7.13(d,2H),7.26(m,2H)7.51(m,2H),7.64(d,2H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:25.7,25.8,28.6,29.0,29.1,34.8,64.5,64.5,65.1,68.7,68.8,68.9,111.7,114.0,114.3,121.5,123.3,124.2,128.4,129.8,130.3,135.3,148.1,152.8,153.4,164.7,166.0
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1760,1652−1622,809 cm
−1
融点:59℃
(実施例3) 一般式(I−6−1)で表される化合物の製法
【0074】
【化23】
【0075】
(第一工程) 撹拌装置、冷却器、水分計及び温度計を備えた反応容器に2-(4-ヒドロキシフェニル)エタノール 13.8g(100ミリモル)、ヒドロキシ安息香酸メチル 14g(90ミリモル)、ジブチル錫オキシド 740mg、キシレン 300mlを仕込み、反応器を150℃に加熱し還流させた。1時間に一度水分計に溜まった溶媒を除去し、同量のキシレンを加えた。反応終了後、反応液を冷却し、結晶をろ過した。ろ液をトルエン/メタノールの1/1混合溶媒で洗浄した後、結晶を乾燥させ式(S−19)に示す化合物24gを得た。
(第二工程) 攪拌機、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記の式(S−19)に示す化合物10g(39ミリモル)、及び実施例2で合成した式(S−18)に示す化合物36g(78ミリモル)、ジメチルアミノピリジン 1g、塩化メチレン 500mlを仕込み、氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち。窒素ガスの雰囲気下でジイソプロピルカルボジイミド 11.8g(93.6ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し5時間反応させた。反応液をろ過した後、ろ液に塩化メチレン200mlを加え、10%塩酸水溶液で洗浄し、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い、塩化メチレン/メタノールによる再結晶により式(I−6−1)に示す目的の化合物35gを得た。この化合物の融点は、78℃であった。
(物性値)
H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:1.47−1.56(m,16H), 1.69−1.74(m,8H),1.85−1.88(m,8H),3.09(t,2H),4.05−4.09(m,8H),4.15−4.19(m,8H),4.56(t,2H),5.80(m,4H),6.12(m,4H),6.37(m,4H),6.92(m,2H),7.15(d,2H),7.26(d,2H),7.29(d,2H),7.65(m,2H),7.80(m,2H),8.10(d,2H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:25.7,25.8,28.6,29.0,29.1,34.8,64.4,64.5,68.7,68.8,69.0,111.7,114.4,121.7,123.3,124.2,128.4,129.8,130.3,135.3,148.1,152.8,153.4,164.7,166.0
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1760,1652−1622,809 cm
−1
融点:78℃
(比較例1) 一般式(S−24)で表される化合物の製法
冷却器及び温度計を備えた反応容器に、実施例2の式(S−18)に示す化合物10g(21.6ミリモル)、ヒドロキノン 1.2g(10.8ミリモル)、ジメチルアミノピリジン 240mg、塩化メチレン 100mlを仕込み、氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち。窒素ガスの雰囲気下でジイソプロピルカルボジイミド 3.3g(26ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し5時間反応させた。反応液をろ過した後、ろ液に塩化メチレン50mlを加え、10%塩酸水溶液で洗浄し、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い、塩化メチレン/メタノールによる再結晶により式(S−20)に示す目的の化合物8gを得た。この化合物の融点は、80℃であった。
【0076】
【化24】
【0077】
(物性値)
H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:1.46−1.56(m,16H), 1.70−1.74(m,8H),1.86−1.92(m,8H),4.06−4.10(m,8H),4.15−4.19(m,8H),5.79(m,4H),6.12(m,4H),6.37(m,4H),6.92(d,2H),7.26(s,4H),7.66(s,2H),7.84(d,2H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:25.7,25.8,28.6,29.0,29.1,64.4,64.5,68.8,69.0,111.7,114.4,121.7,122.5,124.2,128.4,130.3,148.2,148.3,153.4,164.7,166.0
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1760,1652−1622,809 cm
−1
融点:80℃
(実施例4)
以下に示す組成の重合性液晶組成物(組成物1)を調製した。
【0078】
【化25】
【0079】
式(I−1)及び(I−6−1)で表される化合物を含有する重合性液晶組成物(組成物1)は、良好な相溶安定性を有し、ネマチック液晶相を示した。この組成物に光重合開始剤 イルガキュアー907(チバスペシャリティーケミカル社製)を3%添加して重合性液晶組成物(組成物2)を調製した。この組成物2のシクロヘキサノン溶液を、ポリイミド付きガラスにスピンコートし、これに高圧水銀ランプを用いて4mW/cm
2の紫外線を120秒間照射したところ、組成物2が均一な配向状態を保ったまま重合し、光学異方体が得られた。この光学異方体の表面硬度(JIS−S−K−5400による)は2Hであった。得られた光学異方体の加熱前の位相差を100%としたとき、240℃、1時間加熱後の位相差は90%であり、位相差減少率は10%だった。
(比較例2)
以下に示す組成の重合性液晶組成物(組成物3)を調製した。この組成物3は組成物1の式(I−1)及び(I−6−1)で表される化合物を比較例1で製造例を示した式(S−20)で表される化合物及び同様に製造される式(S−21)で表される化合物に置き換えたものとなっている。
【0080】
【化26】
【0081】
重合性液晶組成物は、ネマチック液晶相を示したが、溶解性が悪く室温1時間で結晶が析出した。連結基として、―COOC
2H
4−、―OCOC
2H
4−、−C
2H
4OCO−又は−C
2H
4COO−を有する化合物は他の材料との相溶性に優れることが示された。
(比較例3)
以下に示す組成の重合性液晶組成物(組成物4)を調製した。
【0082】
【化27】
【0083】
重合性液晶組成物(組成物4)は、連結基として−C
2H
4OCO−を有する化合物を含有するため、良好な相溶安定性を有し、ネマチック液晶相を示した。この組成物に光重合開始剤 イルガキュアー907(チバスペシャリティーケミカル社製)を3%添加して重合性液晶組成物(組成物5)を調製した。この組成物5のシクロヘキサノン溶液を、ポリイミド付きガラスにスピンコートし、これに高圧水銀ランプを用いて4mW/cm
2の紫外線を120秒間照射したところ、組成物5が均一な配向状態を保ったまま重合し、光学異方体が得られた。この光学異方体の表面硬度(JIS−S−K−5400による)は2Bであった。得られた光学異方体の加熱前の位相差を100%としたとき、240℃、1時間加熱後の位相差は75%であり、位相差減少率は25%だった。
【0084】
このように、比較例3の組成物5は、重合性基を分子内に2個しか持たない材料のみで構成されている重合性液晶化合物であるため、本願発明の組成物2と比較して、作製できる光学異方体の位相差減少率が大きく、耐熱性に劣ることが明らかである。又、表面硬度も2Bと不十分なものであった。