特許第5787516号(P5787516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5787516硬化性樹脂組成物とその硬化物、およびプリント配線板
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787516
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物とその硬化物、およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/02 20060101AFI20150910BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20150910BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   C08F299/02
   H05K3/28 D
   G03F7/027 515
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2010-505850(P2010-505850)
(86)(22)【出願日】2009年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2009056328
(87)【国際公開番号】WO2009119821
(87)【国際公開日】20091001
【審査請求日】2011年12月16日
(31)【優先権主張番号】特願2008-86980(P2008-86980)
(32)【優先日】2008年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 賢治
(72)【発明者】
【氏名】有馬 聖夫
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−142211(JP,A)
【文献】 特開2005−043878(JP,A)
【文献】 特開2001−083710(JP,A)
【文献】 国際公開第01/058977(WO,A1)
【文献】 特開2003−280192(JP,A)
【文献】 特開2004−099635(JP,A)
【文献】 特開2006−040935(JP,A)
【文献】 特開2007−101830(JP,A)
【文献】 特開2008−020632(JP,A)
【文献】 特開2008−038130(JP,A)
【文献】 特開2008−038131(JP,A)
【文献】 特開2007−310380(JP,A)
【文献】 特開2006−284911(JP,A)
【文献】 特開2004−300264(JP,A)
【文献】 特開平08−012621(JP,A)
【文献】 特開2005−322825(JP,A)
【文献】 特開平11−311858(JP,A)
【文献】 特開平10−148942(JP,A)
【文献】 特開2005−191559(JP,A)
【文献】 特開平07−168347(JP,A)
【文献】 特開2001−281845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F299/02
C08L1/00−101/16
C08K5/101
H05K3/28
G03F7/004−7/039
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表層に微小な穴が形成されているプリント配線板に用いられる硬化性樹脂組成物であって、
乳酸エステルと、カルボキシル基含有樹脂と、光重合開始剤を含み、
前記カルボキシル基含有樹脂が
2官能又は多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させた感光性カルボキシル基含有樹脂あることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
着色剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記乳酸エステルは、天然物由来のL−乳酸エステルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
粘度が0.1〜250dPa・sであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
基板の表層に微小な穴が形成されているプリント配線板を覆うソルダーレジストであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を、基材上に塗布し、乾燥して乾燥塗膜を形成し、この乾燥塗膜を硬化して形成されたことを特徴とする硬化物。
【請求項7】
基板の表層に微小な穴が形成されているプリント配線板の基板上に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を塗布し、乾燥して形成された乾燥塗膜を露光・現像、硬化することにより形成されたパターンを備えることを特徴とするプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物と、これを用いた硬化物、およびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板用のソルダーレジストのパターンは、一般に、回路形成された基板上に硬化性樹脂組成物を塗布乾燥してソルダーレジストの乾燥塗膜を形成し、フォトツールを真空密着させて接触露光した後、現像することにより形成される(特許文献1参照)。
【0003】
このとき、乾燥塗膜の指触乾燥性が十分でないと、接触露光した際にフォトツールと密着してしまい、露光後、フォトツールが剥離できない、もしくは基板から乾燥塗膜がはがれてしまうという不具合が生じる。
【0004】
また、近年、高密度プリント配線板において、レーザーによる微小な穴あけ加工を行うビルトアップ基板が採用されている。このようなビルトアップ配線板において、表層にφ20μmからφ200μm、深さ20μmから100μmという微小な穴(ブラインドビア、レーザービア)が無数に存在しているが、これにソルダーレジストを塗布すると、微小な穴にソルダーレジストがテンティングしてしまう。そして、乾燥後にそれがはじけることにより、穴の周りだけがレジストが薄くなってしまう不具合が生じる。
【0005】
このように、硬化性樹脂組成物において、乾燥後の塗膜の指触乾燥性が十分でないことに起因した問題や、微小な穴にテンティングするといったコーティング性の問題が依然として解決されていないのが実情である。
【特許文献1】特開2000−7974号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、乾燥後の指触乾燥性およびコーティング性を向上させることが可能な硬化性樹脂組成物およびこれを用いた硬化物、プリント配線板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様の硬化性樹脂組成物は、基板の表層に微小な穴を有するプリント配線板用樹脂組成物であって、乳酸エステル、カルボキシル基含有樹脂、及び光重合開始剤を含むことを特徴としている。
【0008】
このような構成により、基板上への塗布乾燥後の指触乾燥性およびコーティング性、特に基板の表層に微小な穴を有するプリント配線板におけるハジキ防止を向上させることができるとともに、十分な深部硬化性を有する硬化性樹脂組成物を得ることが可能となる。また、乳酸エステルは、好ましくは天然物由来のL−乳酸エステルを用いることにより、化石燃料枯渇、CO排出量削減の環境側面から環境や人体に対する影響を低減することができる。この乳酸エステルで硬化性樹脂組成物の粘度を0.1〜250dPa・sに希釈することで、塗布性およびコーティング性(ハジキ防止)が向上する。特に本発明では、基板の表層に微小な穴が形成されている場合に有効である。
【0009】
また、カルボキシル基含有樹脂を含むことで、本発明の樹脂組成物にアルカリ現像性を付与し、高精細な現像を行うこともできる。
【0010】
本発明の一態様の硬化物又はプリント配線板は、基板上、特に表層に微小な穴が形成されている基板上に、乳酸エステルで希釈された粘度0.1〜250dPa・sの硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥して形成された乾燥塗膜を露光・現像、硬化することにより形成されたパターンを備えることを特徴としている。また、この露光は接触露光であることが好ましい。
【0011】
このような構成により、微小な穴へのコーティング不良、ハジキによる膜厚の不均一を抑え、深部まで十分硬化された絶縁性、耐熱性の高いパターンを備えた硬化物又はプリント配線板を得ることが可能となる。
【0012】
本発明において、微小な穴とはφ20μmからφ200μmの穴(ブラインドビア、レーザービア)を意味し、深さ方向については特に限定していない。すなわち、深さ方向については、深さ数μmの浅い穴から深さ100μmの穴まで広い範囲で適用されるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、乾燥後の指触乾燥性および微小な穴に対するコーティング性を向上させることが可能となる。その結果、接触露光を施してもパターンの基板からの剥離が抑えられるため、より高精細なパターンを形成することが可能となる。
【0014】
また、微小な穴へのコーティング不良、ハジキによる膜厚の不均一を抑え、深部まで十分に硬化することが可能となる。
【0015】
さらに、本発明によれば、微小な穴へのコーティング不良、ハジキによる膜厚の不均一を抑え、深部まで十分硬化された絶縁性、耐熱性の高いパターンを形成することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、乳酸エステル、カルボキシル基含有樹脂及び光重合開始剤を含むことを特徴とするものである。
【0018】
このような構成は、アルカリ現像型ソルダーレジストなどの硬化性樹脂組成物において、乳酸エステルを希釈剤として用いたとき、微小な穴の形成された基材への塗布、乾燥後のハジキ現象が少ないという新たな知見に基づくものである。
【0019】
ハジキ現象は、例えば、図1Aに示すように、基材11上に微小な穴12aの形成された銅回路12を形成した後、硬化性樹脂組成物13を塗布し、これを乾燥させると、図1Bに示すように、銅回路12の微小な穴12aの周囲の膜厚が薄くなるという現象である。このハジキ現象が、希釈剤として乳酸エステルを用いたときに少なくなるという理由は、乳酸エステルの樹脂との溶解性に関係していると考えられる。すなわち、乳酸エステルは、硬化性樹脂組成物の樹脂成分に対して、他の汎用溶剤よりも希釈効率が低い。そのため、硬化性樹脂組成物を使用可能な粘度に希釈した場合、溶剤に対する樹脂固形分が相対的に少なくなる。従って、このような硬化性樹脂組成物は、樹脂固形分が少ない分、微小な穴上および回路上に厚く塗布し、回路上の適正な乾燥膜厚を確保することになる。このように、希釈剤として乳酸エステルを用いる場合、他の汎用溶剤に比べて、微小な穴の上の塗布厚を厚くする結果、乾燥塗膜が薄膜でもハジキ現象が抑えられると考えられる。
【0020】
ここで、図2Aに示すように、乳酸エステルを含まない硬化性樹脂組成物であっても、微小な穴12a上の硬化性樹脂組成物13の塗布厚を厚くすることで、図2Bに示すように、ハジキ現象を抑えることはできる。しかしながら、この場合は、乾燥後および硬化後の微小な穴以外の部分の膜厚も厚くなってしまうという問題がある。
【0021】
この点、本実施形態の乳酸エステルを含む硬化性樹脂組成物を用いることにより、図3Aに示すように、微小な穴12a上の硬化性樹脂組成物13の塗布厚を厚くしても、図3Bに示すように、硬化性樹脂組成物13の乾燥後および硬化後の微小な穴12a以外の部分の厚さを薄膜化でき、しかもハジキ現象を抑制することが可能となる。
【0022】
このとき、乳酸エステルにより本発明の硬化性樹脂組成物の粘度を0.1〜250dPa・sに調整することが好ましい。より効果的には、0.5〜50dPa・sとすればよい。また、乳酸エステルのみの希釈では希釈効率が悪いため、他の汎用溶剤を併用することにより、ハジキ現象を抑えた上で、塗布膜厚や、組成物を容易に調整することが可能となる。
【0023】
そのため、通常は硬化性樹脂組成物13の塗布厚を厚くしなければハジキ現象を抑制できなかったが、本実施形態によれば乳酸エステルにて組成物の粘度に調整することにより、膜厚を薄くしてもハジキ現象が抑えられ、微小な穴周辺部の膜厚も均一に保つことができる。
【0024】
加えて、乳酸エステルを希釈剤として用いると、乾燥性が良好であり、乾燥塗膜の指触乾燥性を向上させることができる、という知見、露光後の画像形成性において、乳酸エステルを使用しないものと比べ、より細い最小残存ラインを形成することができる、という知見が予期せず得られた。その理由としては、詳細は不明であるものの、硬化性樹脂組成物の乾燥時の残存溶剤量がより少なくなったため、ソルダーレジスト底部での光反応性が向上することが考えられる。
【0025】
このようにして用いられる乳酸エステルには、化石燃料由来の乳酸エステルだけでなく、とうもろこしなどのでんぷんからの発酵による製造される乳酸エステルも存在する。化石燃料由来の乳酸エステル(光学異性体であるD体とL体の混合物)と天然物由来の発酵乳酸エステル(L体)では、ほぼ同様の効果が得られる。L体乳酸エステル(L−乳酸エステル)は、天然物由来炭素を有するため、これを用いることにより、化石燃料枯渇、CO排出量削減の環境側面から環境や人体に対する影響を低減することができる。
【0026】
本実施形態における乳酸エステルとしては、具体的には、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸n−ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、乳酸n−へキシル、乳酸シクロヘキシル、乳酸ベンジルなどがあげられ、好ましくは乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。これらの乳酸エステル化合物を単独でまたは2種以上の混合物として用いてもよく、それぞれL体、D体のいずれを用いてもよい。
【0027】
さらに、本実施形態の硬化性樹脂組成物は、乳酸エステルの他、熱硬化性成分、感光性成分など種々の構成成分を含有することが可能である。絶縁性、耐熱性など、プリント配線板に好適に用いることができるものであれば、特定の構成成分に限定されるものではなく、適宜選択することができる。
【0028】
基本的には、熱硬化性成分または感光性成分もしくはその両成分を含む種々の態様が考えられる。アルカリ現像型のソルダーレジストの場合は、乳酸エステル、カルボキシル基含有樹脂の他、光重合開始剤、分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物およびエポキシ化合物などの熱硬化性成分、さらに必要に応じて熱硬化触媒、フィラー、有機溶剤などを含有することができる。本発明の硬化性樹脂組成物は、天然物由来も使用できるため、環境への負荷も小さい。
【0029】
そして、上記の各成分の種類を適宜選択し、配合割合を最適化した硬化性樹脂組成物として用いることにより、所望の特性の硬化物、プリント配線板を得ることができる。
【0030】
本実施形態において、カルボキシル基含有樹脂としては、分子中にカルボキシル基を有している各種樹脂化合物を用いることができ、アルカリ現像性を付与することができる。このようなカルボキシル基含有樹脂としては、特に、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂が、光硬化性や耐現像性の面からより好ましい。そして、その不飽和二重結合は、アクリル酸もしくはメタアクリル酸またはそれらの誘導体由来のものが好ましい。
【0031】
カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下に列挙するような化合物が好ましい。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0032】
(1)(メタ)アクリル酸と不飽和基含有物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0033】
(2)ジイソシアネートとカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボン酸含有ウレタン樹脂。
【0034】
(3)ジイソシアネートと2官能エポキシ(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物およびカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応による感光性カルボン酸含有ウレタン樹脂。
【0035】
(4)上述した(2)または(3)の樹脂の合成中に分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化カルボン酸含有ウレタン樹脂。
【0036】
(5)上述した(2)または(3)の樹脂の合成中に分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化カルボン酸含有ウレタン樹脂。
【0037】
(6)2官能および多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させた感光性カルボキシル基含有樹脂。
【0038】
(7)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させた感光性カルボキシル基含有樹脂。
【0039】
(8)2官能オキセタン樹脂にジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボン酸含有ポリエステル樹脂。
【0040】
(9)上述した樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリル基を有する化合物を付加してなる感光性カルボキシル基含有樹脂。
【0041】
なお、このようなカルボキシル基含有樹脂の合成にも、乳酸エステルは用いられる。
【0042】
これらのカルボキシル基含有樹脂を含有することにより、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数の遊離のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能となる。
【0043】
また、カルボキシル基含有樹脂の酸価は、40〜200mgKOH/gであることが好ましい。カルボキシル基含有樹脂の酸価が
40mgKOH/g未満であるとアルカリ現像が困難となり、一方、200mgKOH/gを超えると現像液による露光部の溶解が進むために、必要以上にラインが痩せたり、場合によっては、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離してしまい、正常なレジストパターンの描画が困難となる。より好ましくは45〜120mgKOH/gである。
【0044】
また、カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000〜150,000、さらには5,000〜100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が2,000未満であると、タックフリー性能が劣ることがあり、露光後の塗膜の耐湿性が悪く現像時に膜減りが生じ、解像度が大きく劣ることがある。一方、重量平均分子量が150,000を超えると、現像性が著しく悪くなることがあり、貯蔵安定性が劣ることがある。
【0045】
このようなカルボキシル基含有樹脂の配合割合は、全組成物中に、20〜60質量%であることが好ましい。上記範囲より少ない場合、塗膜強度が低下したりするので好ましくない。一方、上記範囲より多い場合、粘性が高くなったり、塗布性などが低下してしまう。より好ましくは30〜50質量%である。
【0046】
このようなカルボキシル含有樹脂は、単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。
【0047】
また、光重合開始剤としては、オキシムエステル系光重合開始剤、α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤、およびアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群から選択される1種または2種以上を用いることができる。
【0048】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、具体的には、市販品としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のCGI−325、イルガキュアー OXE01、イルガキュアー OXE02など、ADEKA社製N−1919が挙げられる。これらのオキシムエステル系光重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
【0049】
α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。市販品としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー379などが挙げられる。
【0050】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。市販品としては、BASF社製のルシリンTPO、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュアー819などが挙げられる。
【0051】
このような光重合開始剤の配合割合は、上述したカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.01〜30質量部であればよい。0.01質量部未満であると、プリント配線板に用いられる銅上での光硬化性が不足し、塗膜が剥離したり、耐薬品性などの塗膜特性が低下したりするので好ましくない。一方、30質量部を超えると、光重合開始剤のソルダーレジスト塗膜表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向がある。より好ましくは0.5〜15質量部である。
【0052】
なお、オキシムエステル系光重合開始剤の場合、その配合割合は、上述したカルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましい。より好ましくは0.01〜5質量部である。
【0053】
さらに本実施形態の硬化性樹脂組成物には、上述した化合物以外の光重合開始剤や、光開始助剤および増感剤を使用することができる。例えば、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、キサントン化合物、および3級アミン化合物などが挙げられる。
【0054】
ベンゾイン化合物としては、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0055】
アセトフェノン化合物としては、具体的には、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。
【0056】
アントラキノン化合物としては、具体的には、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンなどが挙げられる。
【0057】
チオキサントン化合物としては、具体的には、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
【0058】
ケタール化合物としては、具体的には、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。
【0059】
ベンゾフェノン化合物としては、具体的には、ベンゾフェノン、4−ベンゾイルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−エチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−プロピルジフェニルスルフィドなどが挙げられる。
【0060】
3級アミン化合物としては、具体的にはエタノールアミン化合物、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物、例えば、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(日本曹達社製ニッソキュアーMABP)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学社製EAB)などのジアルキルアミノベンゾフェノン、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン(7−(ジエチルアミノ)−4−メチルクマリン)などのジアルキルアミノ基含有クマリン化合物、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製カヤキュアーEPA)、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure DMB)、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure BEA)、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル(日本化薬社製カヤキュアーDMBI)、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル(Van Dyk社製Esolol 507)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学社製EAB)などが挙げられる。
【0061】
これらの化合物のうち、特にチオキサントン化合物および3級アミン化合物が好ましい。チオキサントン化合物が含まれることは、深部硬化性の面から好ましく、中でも、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン化合物が好ましい。
【0062】
このようなチオキサントン化合物の配合割合としては、上記カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して20質量部以下であることが好ましい。チオキサントン化合物の配合割合が多すぎると、厚膜硬化性が低下して、製品のコストアップに繋がってしまう。より好ましくは10質量部以下である。
【0063】
3級アミン化合物としては、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物が好ましく、中でも、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、最大吸収波長が350〜410nmにあるジアルキルアミノ基含有クマリン化合物が特に好ましい。ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物としては、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンが、毒性も低く好ましい。最大吸収波長が350〜410nmにあるジアルキルアミノ基含有クマリン化合物は、最大吸収波長が紫外線領域にあるため、着色が少なく、無色透明な感光性組成物はもとより、着色顔料を用い、着色顔料自体の色を反映した着色ソルダーレジスト膜を提供することが可能となる。特に、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オンが波長400〜410nmのレーザー光に対して優れた増感効果を示すことから好ましい。
【0064】
このような3級アミン化合物の配合割合としては、前記カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましい。3級アミン化合物の配合割合が0.1質量部未満であると、十分な増感効果を得ることができない傾向にある。20質量部を超えると、3級アミン化合物による乾燥ソルダーレジスト塗膜の表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向がある。より好ましくは0.1〜10質量部の割合である。
【0065】
これらの光重合開始剤、光開始助剤および増感剤は、単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。
【0066】
また、分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物は、活性エネルギー線照射により、光硬化して、カルボキシル基含有樹脂を、アルカリ水溶液に不溶化、または不溶化を助けるものである。このような化合物としては、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコールまたはこれらのエチレオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、およびこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;およびメラミンアクリレート、および/または上記アクリレートに対応する各メタクリレート類などが挙げられる。
【0067】
さらに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物などが、挙げられる。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる。
【0068】
このような分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物の配合割合は、前記カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、5〜100質量部であることが好ましい。配合割合が、5質量部未満であると光硬化性が低下し、活性エネルギー線照射後のアルカリ現像により、パターン形成が困難となる。一方、100質量部を超えると、アルカリ水溶液に対する溶解性が低下して、塗膜が脆くなってしまう。より好ましくは、1〜70質量部の割合である。
【0069】
また、エポキシ化合物などの熱硬化性成分は、耐熱性を付与するために、用いられる。特に好ましいのは分子中に2個以上の環状エーテル基および/または環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略す)を有する熱硬化性成分である。
【0070】
このような分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、分子中に3、4または5員環の環状エーテル基、または環状チオエーテル基のいずれか一方または2種類の基を2個以上有する化合物であり、例えば、分子内に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子内に少なくとも2つ以上のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子内に2個以上のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂などが挙げられる。
【0071】
前記多官能エポキシ化合物としては、具体的には、ジャパンエポキシレジン社製のエピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、大日本インキ化学工業社製のエピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、東都化成社製のエポトートYD−011、YD−013、YD−127、YD−128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社のアラルダイド6071、アラルダイド6084、アラルダイドGY250、アラルダイドGY260、住友化学工業社製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128、旭化成工業社製のA.E.R.330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664など(いずれも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコートYL903、大日本インキ化学工業社製のエピクロン152、エピクロン165、東都化成社製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイド8011、住友化学工業社製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700、旭化成工業社製のA.E.R.711、A.E.R.714など(いずれも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコート152、エピコート154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、大日本インキ化学工業社製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、東都化成社製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドECN1235、アラルダイドECN1273、アラルダイドECN1299、アラルダイドXPY307、日本化薬社製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、住友化学工業社製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220、旭化成工業社製のA.E.R.ECN−235、ECN−299など(いずれも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業社製のエピクロン830、ジャパンエポキシレジン社製エピコート807、東都化成社製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドXPY306など(いずれも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成社製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(商品名)などの水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコート604、東都化成社製のエポトートYH−434、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドMY720、住友化学工業社製のスミ−エポキシELM−120など(いずれも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドCY−350(商品名)などのヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドCY175、CY179など(いずれも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−933、ダウケミカル社製のT.E.N.、EPPN−501、EPPN−502など(いずれも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(いずれも商品名)などのビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;日本化薬社製EBPS−200、旭電化工業社製EPX−30、大日本インキ化学工業社製のEXA−1514(商品名)などのビスフェノールS型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコート157S(商品名)などのビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコートYL−931、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイド163など(いずれも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドPT810、日産化学工業社製のTEPICなど(いずれも商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂社製ブレンマーDGTなどのジグリシジルフタレート樹脂;東都化成社製ZX−1063などのテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鉄化学社製ESN−190、ESN−360、大日本インキ化学工業社製HP−4032、EXA−4750、EXA−4700などのナフタレン基含有エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業社製HP−7200、HP−7200Hなどのジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂社製CP−50S、CP−50Mなどのグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体(例えばダイセル化学工業製PB−3600など)、CTBN変性エポキシ樹脂(例えば東都化成社製のYR−102、YR−450など)などが挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にノボラック型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂またはそれらの混合物が好ましい。
【0072】
多官能オキセタン化合物としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体などの多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0073】
分子中に2個以上の環状チオエーテル基を有する化合物としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂 YL7000などが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0074】
このような分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合割合は、カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基1当量に対して、0.6〜2.5当量であることが好ましい。分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合割合が0.6未満であると、ソルダーレジスト膜にカルボキシル基が残り、耐熱性、耐アルカリ性、電気絶縁性などが低下してしまう。一方、2.5当量を超えると、低分子量の環状(チオ)エーテル基が乾燥塗膜に残存することにより、塗膜の強度などが低下してしまう。より好ましくは、0.8〜2.0当量である。
【0075】
また、熱硬化触媒は、上述した分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化成分を使用する場合に併せて含有することが好ましい。このような熱硬化触媒としては、具体的には、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミンなどのアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどのヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィンなどのリン化合物など、また市販されているものとしては、例えば四国化成工業社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)などが挙げられる。
【0076】
但し、これらに特に限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基および/またはオキセタニル基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよい。そして、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0077】
また、密着性付与剤としても機能する化合物であるグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物などのS−トリアジン誘導体を用いることもできる。これらは、これら以外の上述した熱硬化触媒と併せて用いることが好ましい。
【0078】
これら熱硬化触媒の配合割合は、通常の量的割合で充分であり、例えばカルボキシル基含有樹脂または分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分100質量部に対して、0.1〜20質量部とすることが好ましい。より好ましくは0.5〜15.0質量部である。
【0079】
フィラーは、その塗膜の物理的強度などを上げるために必要に応じて用いられる。このようなフィラーとしては、無機または有機フィラーを使用することができるが、特に硫酸バリウム、球状シリカおよびタルクが好ましく用いられる。また、プリプレグ、絶縁シート、樹脂つき銅箔のごとき層間絶縁層に用いる場合はガラスクロスや無機、有機繊維不織布を使用することができる。さらに、白色の外観や難燃性を得るために酸化チタンや金属酸化物、水酸化アルミなどの金属水酸化物を体質顔料フィラーとしても使用することができる。
【0080】
このフィラーの配合割合は、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、300質量部以下であることが好ましい。フィラーの配合割合が、300質量部を超えた場合、光硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり印刷性が低下したり、硬化物が脆くなってしまう。より好ましくは0.1〜300質量部、特に好ましくは、0.1〜150質量部である。
【0081】
有機溶剤は、ここでは乳酸エステル以外の有機溶剤であり、カルボキシル基含有樹脂の合成や組成物の調整のため、または基板やキャリアフィルムに塗布するための粘度調整のために用いられる。このような有機溶剤としては、例えば、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などが挙げることができる。具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤などである。このような有機溶剤は、単独でまたは2種以上の混合物として用いられる。
【0082】
さらに、必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤(顔料、染料、色素のいずれでもよい)を使用することができる。
【0083】
以下に、これらの着色剤を例示する。
【0084】
[青色着色剤]
青色着色剤はフタロシアニン系、アントラキノン系があり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)番号が付されているものを挙げられる。
【0085】
Pigment Blue 15、Pigment Blue 15:1、Pigment Blue 15:2、Pigment Blue 15:3、Pigment Blue 15:4、Pigment Blue 15:6、Pigment Blue 16、Pigment Blue 60、
染料系としては
Solvent Blue 35 、Solvent Blue 45、Solvent Blue 63、Solvent Blue 68、Solvent Blue 70 、Solvent Blue 83、Solvent Blue 87、Solvent Blue 94、Solvent Blue 97、Solvent Blue 101、Solvent Blue 104、Solvent Blue 122、Solvent Blue 136、Solvent Blue 67、Solvent Blue 70などを使用することができる。これら以外にも金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0086】
[緑色着色剤]
緑色着色剤としては同様にフタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系があり、具体的には
Pigment Green 7、Pigment Green 36、Solvent Green 3、Solvent Green 5、Solvent Green 20、Solvent Green 28
などが挙げられる。これら以外にも金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物なども使用することができる。
【0087】
[黄色着色剤]
黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系などがあり、具体的には以下のものが挙げられる。
【0088】
(アントラキノン系)
Solvent Yellow 163、Pigment Yellow 24、Pigment Yellow 108、Pigment Yellow 193、Pigment Yellow 147、Pigment Yellow 199、Pigment Yellow 202
(イソインドリノン系)
Pigment Yellow 110、Pigment Yellow 109、Pigment Yellow 139、Pigment Yellow 179、Pigment Yellow 185
(縮合アゾ系)
Pigment Yellow 93、Pigment Yellow 94、Pigment Yellow 95、Pigment Yellow 128
、Pigment Yellow 155、Pigment Yellow 166、Pigment Yellow 180
(ベンズイミダゾロン)
Pigment Yellow 120、Pigment Yellow 151、Pigment Yellow 154、Pigment Yellow 156、Pigment Yellow 175、Pigment Yellow 181
(モノアゾ)
PigmentYellow1,2,3,4,5,6,9,10,12,61,62,62:1,65,73,74,75,97,100,104,105,111,116,167,168,169,182,183,
(ジスアゾ)
PigmentYellow12,13,14,16,17,55,63,81,83,87,126,127,152,170,172,174,176,188,198
[赤色着色剤]
赤色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系などがあり、具体的には以下のものが挙げられる。
【0089】
(モノアゾ系)
PigmentRed1,2,3,4,5,6,8,9,12,14,15,16,17,21,22,23,31,32,112,114,146,147,151,170,184,187,188,193,210,245,253,258,266,267,268,269,
(ジスアゾ系)
Pigment Red 37,38,41
(モノアゾレーキ)
PigmentRed48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53:1,53:2,57:1,58:4,63:1,63:2,64:1,68
(ベンズイミダゾロン)
Pigment Red 171、Pigment Red 175、Pigment Red 176、Pigment Red 185、Pigment Red 208
(ぺリレン)
Solvent Red 135、Solvent Red 179、Pigment Red 123、Pigment Red 149、Pigment Red 166、Pigment Red 178、Pigment Red 179、Pigment Red 190、Pigment Red 194、Pigment Red 224
(ジケトピロロピロール系)
Pigment Red 254、Pigment Red 255、Pigment Red 264、Pigment Red 270、Pigment Red 272
(縮合アゾ)
Pigment Red 220、Pigment Red 144、Pigment Red 166、Pigment Red 214、Pigment Red 220、Pigment Red 221、Pigment Red 242
(アンスラキノン系)
Pigment Red 168、Pigment Red 177、Pigment Red 216、Solvent Red 149、Solvent Red 150、Solvent Red 52、Solvent Red 207
(キナクリドン系)
Pigment Red 122、Pigment Red 202、Pigment Red 206、Pigment Red 207、Pigment Red 209
その他色調を調整する目的で紫、オレンジ、茶色、黒などの着色剤を加えても良い。具体的には、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet 13、36、C.I.ピグメントオレンジ1、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ14、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ17、C.I.ピグメントオレンジ24、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ40、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ46、C.I.ピグメントオレンジ49、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ63、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73、C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25;C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック7などが挙げられる。
【0090】
その他、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t − ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の熱重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤および/またはレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系などの密着性付与剤やシランカップリング剤などのような添加剤類を配合することができる。
【0091】
このような硬化性樹脂組成物のうち、感光性成分を含む光硬化性組成物は、基材上に塗布され、光硬化されることにより硬化物となる。光硬化は紫外線露光装置、またはレーザー発信光源、特に、波長が350〜410nmのレーザー光により硬化させることができる。そして、熱硬化成分を含む熱硬化性樹脂組成物、光硬化熱硬化性組成物は、加熱することにより熱硬化されることにより硬化物となる。基材を回路形成された基板とすることにより、同様にしてプリント基板が形成される。
【0092】
具体的には以下のようにして、硬化物、プリント配線板が形成される。例えば、乳酸エステルおよびその他の有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整された硬化性樹脂組成物を、回路形成された基板を含む基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、カーテンコート法などの方法により塗布する。
【0093】
ここで、上記基材としては、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素・ポリエチレン・PPO・シアネートエステルなどを用いた高周波回路用銅張積層板などの材質を用いたもので全てのグレード(FR−4など)の銅張積層版、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板などを挙げることができる。
【0094】
そして、約60〜100℃の温度で、組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの塗膜を形成する。あるいは、組成物をキャリアフィルム上に塗布し、乾燥させてフィルムとして巻き取ったものを基材上に張り合わせてもよい。
【0095】
その後、接触式(または非接触方式)により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光もしくはレーザーダイレクト露光機により直接パターン露光し、光照射により硬化されなかった未露光部を希アルカリ水溶液(例えば0.3〜3%炭酸ソーダ水溶液)により現像することにより、パターンを形成する。
【0096】
ここで、露光機としては、レーザー直接描画装置(レーザーダイレクトイメージング装置)、メタルハライドランプを搭載した露光機、(超)高圧水銀ランプを搭載した露光機、水銀ショートアークランプを搭載した露光機、もしくは(超)高圧水銀ランプなどの紫外線ランプを使用した直接描画装置を使用することができる。直接描画装置にて露光する際は、最大波長が350〜410nmの範囲にあるレーザー光を用いていれば、ガスレーザー、固体レーザーどちらでもよい。直接描画装置としては、例えば日本オルボテック社製、ORC社製などのものを使用することができ、最大波長が350〜410nmのレーザー光を発振する装置であれば、いずれの装置を用いてもよい。
【0097】
現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法などにを用いることができる。そして、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液を用いることができる。
【0098】
また、揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど、蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用い、乾燥機内の熱風を向流接触させる方法、およびノズルより支持体に吹き付ける方式を用いて行うことができる。
【0099】
さらに、熱硬化性成分を含有している組成物の場合、例えば約140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、前記カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基と、分子中に2個以上の環状エーテル基および/または環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分が反応し、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性などの諸特性に優れた硬化塗膜を形成することができる。
【0100】
尚、熱硬化性成分を含有していない場合でも、熱処理することにより、露光時に未反応の状態で残ったエチレン性不飽和結合が熱ラジカル重合し、塗膜特性が向上するため、目的・用途により、熱処理(熱硬化)しても良い。
【実施例】
【0101】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。例中、部および%は断りのない限り質量基準である。
【0102】
[硬化性樹脂組成物の合成]
攪拌機、温度計、環流冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた2リットルのセパラブルフラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、EOCN−104S、軟化点92℃、エポキシ当量220)660g、カルビトールアセテート421.3g、およびソルベントナフサ180.6gを導入し、90℃に加熱・攪拌し、溶解した。
【0103】
次に、一旦60℃まで冷却し、アクリル酸216g、トリフェニルホスフィン4.0g、メチルハイドロキノン1.3gを加えて、100℃で12時間反応させ、酸価が0.2mgKOH/gの反応生成物を得た。これにテトラヒドロ無水フタル酸 241.7gを仕込み、90℃に加熱し、6時間反応させた。
【0104】
このようにして、酸価50mgKOH/g、二重結合当量(不飽和基1モル当りの樹脂のg重量)400、重量平均分子量7,000のカルボキシル基含有樹脂の溶液(B−1ワニス)を得た。
【0105】
得られたB−1ワニスを用い、以下に示す配合例の成分とともに、表1に示すような配合割合で、希釈溶剤(乳酸エステルおよび有機溶剤)を用い、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、ソルダーレジスト用感光性樹脂組成物を調製した。
【0106】
(配合例)
ワニス 154部(固形分100部)
Irg907(チバ・スペシヤリティケミカルズ社製) 12部
DETX (日本化薬社製) 0.5部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA/日本化薬社製) 20部
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(ダウケミカル社製DEN−431) 15部
ビキシレノール型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製YX−4000)
25部
ジシアンジアミド 0.3部
メラミン 5部
硫酸バリウム (堺化学社製 硫酸バリウムB30) 100部
顔料1 C.I.PigmentBlue15:3 0.3部
顔料2 C.I.PigmentYellow147 0.8部
シリコーン系消泡剤 3部
【表1】
【0107】
*1:乳酸メチル(2−ヒドロキシメチルプロパン酸)
*2:L−乳酸メチル(2−ヒドロキシメチルプロパン酸)武蔵野化学研究所社製発酵乳酸メチル(L体含有率99.6%)
*3:乳酸エチル(2−ヒドロキシエチルプロパン酸)
*4:PM(プロピレングリコールモノメチルエーテル)
*5:PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
なお、希釈溶剤の添加量は、図4に示す希釈粘度曲線からIWATA CUP 30秒時の希釈率を算出した。なお、
希釈率(%)=インキ全重量/100
時間(秒)=IWATA CUPによるインキの落下時間
インキ温度=21℃±2℃
とした。
【0108】
ここで、得られた感光性樹脂組成物の分散度をエリクセン社製グラインドメータによる粒度測定にて評価したところ、15μm以下であった。
【0109】
[性能評価]
〈粘度の評価〉
各実施例および比較例の光硬化性熱硬化性樹脂組成物を、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した回転数5rpm値を粘度とした。
【0110】
〈最適露光量の評価〉
各実施例および比較例の光硬化性熱硬化性樹脂組成物を、銅厚50μmの回路パターン基板をバフロール研磨後、水洗し、乾燥してからスプレーコートまたはスクリーン印刷で乾燥後膜厚が25μmとなるよう全面塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させ室温まで放冷する。放冷後、ORC社製露光装置(HMW680−GW20)を用いてステップタブレット(KodakNo2)を介して露光し、現像(30℃、0.2MPa、1質量%炭酸ナトリウム水溶液)を60秒で行った際残存するステップタブレットのパターンが7段の時を最適露光量とした。
【0111】
[特性評価]
〈塗膜の色〉
各実施例および比較例のアルカリ現像型ソルダーレジストの硬化物の色を目視にて判断した。
【0112】
〈指触乾燥性〉
各実施例および比較例の組成物を、パターン形成された銅箔基板上にスプレーコートまたはスクリーン印刷で乾燥後膜厚が25μmとなるよう全面塗布し、60℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させ室温まで放冷する。この基板にPET製ネガフィルムを当て、ORC社製露光装置(HMW680−GW20)で1分間減圧条件下圧着させ、その後、ネガフィルムを剥がしたときのフィルムの張り付き状態を、以下の基準で評価した。
【0113】
○:フィルムは抵抗無く剥がれる。
【0114】
△:フィルムは剥がれるが塗膜に跡が少しついている。
【0115】
×:フィルムを剥がすときに抵抗があり、塗膜に跡がはっきりとついている。
【0116】
〈(微小な穴に対する)穴埋め性〉
各実施例および比較例の組成物を、銅めっき後φ100μm、深さ50μmに調整した微小な穴を有する基板にスプレーコートまたはスクリーン印刷で乾燥後膜厚が25μmとなるよう全面塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させ室温まで放冷する。放冷後、穴上のソルダーレジストのハジキ数を目視にてカウントし、以下の基準で評価した。
【0117】
不良率(%)=ハジキ数/総穴数1700穴
○:3%以下
△:4%以上10%以下
×:10%以上
〈深部硬化性〉
各実施例および比較例の組成物を、ライン/スペースが300/300μm、銅厚50μmの回路パターン基板をバフロール研磨後、水洗し、乾燥してからスプレーコートまたはスクリーン印刷で乾燥後膜厚が25μmとなるよう全面塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させ室温まで放冷する。放冷後、ORC社製露光装置(HMW680−GW20)を用いて露光した。露光パターンはスペース部に20/30/40/50/60/70/80/90/100μmのラインを描画させるパターンを使用した。露光量は、最適露光量評価によって得られた露光量とした。露光後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液によって現像を行ってパターンを描き、150℃×60分の熱硬化をすることにより硬化塗膜を得た。
【0118】
得られた光硬化性熱硬化性樹脂組成物の硬化塗膜の最小残存ラインを200倍に調整した光学顕微鏡を用いてカウントした。また、ライン中央部を切断し、鏡面仕上げを行った後、1000倍に調整した光学顕微鏡を用いて硬化塗膜の最小残存ラインの上部径、下部径、膜厚を測長した。評価基準は、最小残存ラインが小さい場合ほど、さらに下部径が設計値に近いほど深部硬化性が良好とした。
【0119】
結果を表1に併せて示す。
【0120】
前述したように、実施例のソルダーレジスト用感光性樹脂組成物は、指触乾燥性、微小な穴に対する穴埋め性と深部硬化性が優れた組成物であることがわかる。
【0121】
このように、本発明の一態様によれば、指触乾燥性に優れ、さらに微小な穴に対する穴埋め性と深部硬化性が優れた硬化性樹脂組成物を得ることができる。そして、特に、ソルダーレジスト用途として用いるに好適な光硬化性熱硬化性樹脂組成物、その硬化物およびそれを用いてパターン形成されたプリント配線板を提供することが可能である。
【0122】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。その他要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
図1A】はじき現象を示す図。
図1B】はじき現象を示す図。
図2A】従来の塗布状態を示す図。
図2B】従来の乾燥状態を示す図。
図3A】本発明の一態様における塗布状態を示す図。
図3B】本発明の一態様における乾燥状態を示す図。
図4】本発明の一態様における希釈粘度曲線を示す図。
【符号の説明】
【0124】
11…基材
12…銅回路
12a…微小な穴
13…硬化性樹脂組成物
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4