特許第5787521号(P5787521)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787521
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】吸水性ポリマー粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/04 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
   C08F20/04
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-544674(P2010-544674)
(86)(22)【出願日】2009年1月26日
(65)【公表番号】特表2011-511116(P2011-511116A)
(43)【公表日】2011年4月7日
(86)【国際出願番号】EP2009050835
(87)【国際公開番号】WO2009095370
(87)【国際公開日】20090806
【審査請求日】2012年1月23日
(31)【優先権主張番号】08101023.3
(32)【優先日】2008年1月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100110593
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルフリート ハイデ
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ヘヒラー
(72)【発明者】
【氏名】マルク ヘラルドゥス ニコラス グリモン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ メース
(72)【発明者】
【氏名】カール イェー ポッセミーアス
【審査官】 新留 豊
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−520778(JP,A)
【文献】 特開平06−056931(JP,A)
【文献】 大森英三,アクリル酸とそのポリマー〔I〕,1973年12月30日,p.1-14
【文献】 Fredric L. Buchholz, Andrew T. Graham,Modern Superabsorbent Polymer Technology ,1998年,p.167-181
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00− 246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 少なくとも部分的に中和されていてもよいエチレン性不飽和の酸基を有する少なくとも1種のモノマーと、
b) 少なくとも1種の架橋剤と、
c) 少なくとも1種の開始剤と、
d) 場合により、a)において挙げられたモノマーと共重合可能なエチレン性及び/又はアリル性の不飽和の1種又は複数のモノマーと、
e) 場合により、1種又は複数の水溶性ポリマーとを有する水性モノマー溶液又は懸濁液の重合による吸水性ポリマー粒子の連続的製造方法において、
少なくとも1つの使用材料を少なくとも2つの仕入れ先から調達し、一方の仕入れ先からの前記使用材料は、少なくとも1つの他方の仕入れ先からの使用材料とは少なくとも1種の副成分の含有量が相違し、重合の供給において副成分の濃度変化の際に、架橋剤b)の量及び/又は開始剤c)の量を調整し、前記モノマーa)はアクリル酸であり、及び前記副成分はアリルアクリラートであり、前記少なくとも1つの使用材料はモノマーa)であることを特徴とする、吸水性ポリマー粒子の製造方法。
【請求項2】
前記副成分の含有量の相違は、少なくとも0.002質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
モノマーa)の少なくとも1つの副成分の含有量が、前記吸水性ポリマー粒子の連続的製造方法の間に重合の供給において時間的に変化することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記副成分の含有量は24時間未満で少なくとも0.002質量%変化することを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記モノマーa)は0.016質量%未満の重合防止剤を含有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記重合防止剤がヒドロキノンモノメチルエーテルであることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記モノマーa)を、重合の前及び場合により中和の前に蒸留することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記モノマーa)を、重合の前及び場合により中和の前に緩衝容器中で中間貯蔵することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記緩衝容器中でのモノマーa)の滞留時間は24時間未満であることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項10】
重合により得られたポリマーゲルを乾燥し、粉砕し、分級し、場合により後架橋することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記吸水性ポリマー粒子は、少なくとも15g/gの遠心分離保持容量を有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノマーが少なくとも2つの異なる仕入れ先から調達される吸水性ポリマー粒子を連続的に製造する方法に関する。
【0002】
吸水性ポリマー粒子の製造は、研究論文「Modern Superabsorbent Polymer Technology」,F.L.Buchholz及びA.T.Graham,Wiley-VCH,1998,第71〜103頁に記載されている。
【0003】
吸水性ポリマーは、おむつ、タンポン、生理帯およびその他の衛生用品を製造するために使用され、また一方で農業園芸における保水剤としても使用される。
【0004】
WO2003/051940A1は、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.001〜0.016質量%を含有するアクリル酸の使用下での吸水性ポリマー粒子の製造方法を開示している。
【0005】
WO2006/053731A1は吸水性ポリマー粒子の製造の際に少量のアリルアクリラート及び/又はアリルアルコールを有するアクリル酸の使用を教示している。
【0006】
重合の際に、モノマー中の少量の副成分がすでに最終生成物の特性に著しく影響を及ぼす。従って、前記副成分は通常では供給元の条件で詳細に特定される。従って、異なる副成分スペクトルを有する多様な供給元のモノマーの使用は行われない。他方で、1つより多くの供給元があることが有利であることもある。
【0007】
本発明の課題は、吸水性ポリマー粒子を製造するため改善された、特に確実な方法を提供することであった。
【0008】
前記課題は、
a) 少なくとも部分的に中和されていてもよいエチレン性不飽和の酸基を有する少なくとも1種のモノマーと、
b) 少なくとも1種の架橋剤と、
c) 少なくとも1種の開始剤と、
d) 場合により、a)において挙げられたモノマーと共重合可能なエチレン性及び/又はアリル性の不飽和の1種又は複数のモノマーと、
e) 場合により、1種又は複数の水溶性ポリマーとを有する水性モノマー液又は懸濁液の重合による吸水性ポリマー粒子の製造方法において、
少なくとも1つの使用材料、有利にモノマーa)は、少なくとも2つの仕入れ先から調達され、一方の仕入れ先からの前記使用材料は、少なくとも1つの他方の仕入れ先からの使用材料とは少なくとも1種の副生成物の含有量において異なることを特徴とする、水性モノマー液又は懸濁液の重合による吸水性ポリマー粒子の製造方法により解決された。
【0009】
本発明の範囲内で異なる仕入れ先とは、例えば異なる供給元であることができる。しかしながら、前記モノマーは、一つの供給元で、異なる方法で、例えば蒸留と晶析とにより精製され、かつ異なる品質として提供されていることも可能である。
【0010】
本発明の範囲内で、使用材料は例えばモノマーa)、架橋剤b)、開始剤c)、モノマーd)及び/又はポリマーe)である。しかしながら、本発明の範囲内で、使用材料は、前記モノマーa)の少なくとも部分的な中和のために使用された塩基、特に苛性ソーダでもある。
【0011】
本発明の範囲内で、吸水性ポリマー粒子の連続的製造の際に、少なくとも使用材料の仕入れ先が連続運転の間に変わり、つまり仕入れ先が変更されるか又は異なる仕入れ先からの使用材料を付加的に供給される。今まで通常の停止及びプロセスパラメータの初期設定はもはや必要ない。
【0012】
副成分は、アクリル酸の公知の副成分、例えば酢酸、ギ酸、プロピオン酸、2−フルフラール、3−フルフラール、アリルアクリラート、ベンズアルデヒド、無水マレイン酸、マレイン酸、プロトアネモニン、アクロレイン、ホルムアルデヒド、安息香酸又はアクリル酸の製造の際に使用される助剤及びこれらの分解生成物であることができる。しかしながら、前記重合の際の開始挙動の変更により生じる、知られていない副生成物であることもできる。
【0013】
本発明は、予備試験により前記副成分の重合への影響を測定し、架橋剤b)の量及び/又は開始剤c)の量の調整により前記影響を補償することができるという認識に基づく。
【0014】
副成分の含有量についての有利な代表成分はアリルアクリラートである。アリルアクリラートは、蒸留及び晶析の場合に多様に低減され、従ってモノマーa)として使用されるアクリル酸の前処理についての指標である。
【0015】
異なる仕入れ先のモノマーa)において前記副成分の含有量の相違は、モノマーa)に対してそれぞれ、有利に少なくとも0.002質量%、特に有利に少なくとも0.0035質量%、さらに特に有利に少なくとも0.005質量%である。
【0016】
著しい差異の許容は、より多くの仕入れ先による供給を可能にし、従って前記モノマーa)についての供給の安定性を高める。
【0017】
連続的重合法の場合に、前記副成分の含有量は、前記時間にわたる仕入れ先の変更の際に変化する。前記副成分の含有量の少なくとも0.002質量%の時間的変化は、有利に24時間未満であり、特に有利に12時間未満であり、さらに特に有利に6時間未満である。
【0018】
副成分の含有量のより急速な時間的変化の許容は、モノマーa)のためにより小さな貯蔵タンクの使用を可能にする。
【0019】
このことは、あまり安定化されていないモノマーa)、例えば重合防止剤、例えばヒドロキノンモノメチルエーテル0.016質量%未満で安定化されたモノマーa)を貯蔵する場合に特に重要である。
【0020】
しかしながら、前記仕入れ先を介してより高く安定化されたモノマーa)を入手し、重合防止剤の含有量を例えば蒸留により、つまり重合の前に及び場合により中和の前に低下させることも可能でもある。
【0021】
重合防止剤を前もって少なくとも部分的に分離する場合には、このあまり安定化されていないモノマーa)を緩衝容器中で中間貯蔵することが有利である。それにより、前記方法工程を少なくとも部分的に前記重合から分離することができる。
【0022】
安全性の理由から、前記緩衝容器は大きすぎるように選択することは好ましくない、つまりモノマーa)の前記緩衝容器中での滞留時間は、有利に24時間未満であり、特に有利に12時間未満であり、さらに特に有利に6時間未満である。
【0023】
前記モノマーa)は、有利に水溶性であり、つまり、23℃での水中での溶解度は一般に少なくとも1g/100g水、有利に少なくとも5g/100g水、特に有利に少なくとも25g/100g水、さらに特に有利に少なくとも50g/100g水である。理想的には、前記モノマーa)は何れの比率でも水と混合可能である。
【0024】
適当なモノマーa)は、例えばエチレン性不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸である。特に有利なモノマーは、アクリル酸及びメタクリル酸である。アクリル酸がさらに特に有利である。
【0025】
他の適当なモノマーa)は、例えばエチレン性不飽和スルホン酸、例えばスチレンスルホン酸及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)である。
【0026】
前記モノマーa)の全量に対するアクリル酸及び/又はその塩の割合は、有利に少なくとも50mol%、特に有利に少なくとも90mol%、さらに特に有利に少なくとも95mol%である。
【0027】
前記モノマーa)、特にアクリル酸は有利にはヒドロキノン半エーテルを0.025質量%まで含有する。有利なヒドロキノン半エーテルは、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)及び/又はトコフェロールである。
【0028】
トコフェロールとは、次の式
【化1】
[式中、R1は水素又はメチル、R2は水素又はメチル、R3は水素又はメチル、R4は水素又は1〜20個の炭素原子を有する酸基を表す]の化合物であると解釈される。
【0029】
4についての有利な基は、アセチル、アスコルビル、スクシニル、ニコチニル及び他の生理学的に許容性のカルボン酸である。前記カルボン酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸であってよい。
【0030】
有利なのはR1=R2=R3=メチルであるアルファ−トコフェロール、特にラセミ体のアルファ−トコフェロールである。R1は特に有利に水素又はアセチルである。特に有利なのは、RRR−アルファ−トコフェロールである。
【0031】
前記モノマー溶液は、アクリル酸に対してそれぞれ、有利に高くても130質量ppm、特に有利に高くても70質量ppm、有利に少なくとも10質量ppm、特に有利に少なくとも30質量ppm、特に約50質量ppmのヒドロキノン半エステルを含有し、その際、アクリル酸塩はアクリル酸として一緒に考慮される。例えば、前記モノマー溶液の製造のために、アクリル酸を相応する含有量のヒドロキノン半エーテルと一緒に使用することができる。
【0032】
架橋剤b)は、有利にポリマー網目中にラジカル重合により組み込むことができる少なくとも2つの重合可能な基を有する化合物である。適当な架橋剤b)は、例えばエチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジアクリラート、ポリエチレングリコールジアクリラート、アリルメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、トリアリルアミン、テトラアリルアンモニウムクロリド、テトラアリルオキシエタン(例えばEP530438A1に記載)、ジアクリラート及びトリアクリラート(例えばEP547847A1、EP559476A1、EP632068A1、WO93/21237A1、WO2003/104299A1、WO2003/104300A1、WO2003/104301A1及びDE10331450A1に記載)、アクリラート基の他にさらにエチレン性不飽和基を含有する混合アクリラート(例えばDE10331456A1及びDE10355401A1に記載)、又は架橋剤混合物(例えばDE19543368A1、DE19646484A1、WO90/15830A1及びWO2002/32962A2に記載)である。
【0033】
適当な架橋剤b)は、特にN,N′−メチレンビスアクリルアミド及びN,N′−メチレンビスメタクリルアミド、不飽和モノカルボン酸又はポリカルボン酸とポリオールとのエステル、例えばジアクリラート又はトリアクリラート、例えばブタンジオールジアクリラート又はエチレングリコールジアクリラート、又はブタンジオールジメタクリラート又はエチレングリコールジメタクリラートならびにトリメチロールプロパントリアクリラート及びアリル化合物、例えばアリル(メタ)アクリラート、トリアリルシアヌラート、マレイン酸ジアリルエステル、ポリアリルエステル、テトラアリルオキシエタン、トリアリルアミン、テトラアリルエチレンジアミン、リン酸のアリルエステルならびに例えば、EP343427A2に記載されているようなビニルホスホン酸誘導体である。更に、適当な架橋剤b)は、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル及びペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル及びグリセリントリアリルエーテル、ソルビトールをベースとするポリアリルエーテルならびにそのエトキシル化化合物である。本発明による方法の場合に、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリラートが使用可能であり、その際、使用されたポリエチレングリコールは100〜1000の分子量を有し、例えばポリエチレングリコール−400−ジアクリラートである。
【0034】
しかしながら、特に有利な架橋剤b)は、3〜20箇所エトキシル化されたグリセリン、3〜20箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパン、3〜20箇所エトキシル化されたトリメチロールエタンのジ−及びトリアクリラート、特に、2〜6箇所エトキシル化されたグリセリン又はトリメチロールプロパン、3箇所プロポキシル化されたグリセリン又はトリメチロールプロパン、並びに混合して3箇所エトキシル化又はプロポキシル化されたグリセリン又はトリメチロールプロパン、15箇所エトキシル化されたグリセリン又はトリメチロールプロパン、並びに少なくとも40箇所エトキシル化されたグリセリン、トリメチロールエタン又はトリメチロールプロパンのジ−及びトリアクリラートである。
【0035】
さらに特に有利な架橋剤b)は、例えばWO2003/104301A1に記載されているように、アクリル酸又はメタクリル酸でエステル化してジアクリラート又はトリアクリラートにされた、数箇所エトキシ化された及び/又はプロポキシ化されたグリセリンである。3〜10箇所エトキシル化されたグリセリンのジアクリラート及び/又はトリアクリラートが特に有利である。さらに、1〜5箇所エトキシル化及び/又はプロポキシル化されたグリセリンのジアクリラート又はトリアクリラートが特に有利である。3〜5箇所エトキシル化及び/又はプロポキシル化されたグリセリンのトリアクリラートが最も有利である。
【0036】
架橋剤b)の量は、モノマーa)に対してそれぞれ、有利に0.05〜1.5質量%、特に有利に0.1〜1質量%、さらに特に有利に0.3〜0.6質量%である。
【0037】
開始剤c)として、重合条件下でラジカルに分解する全ての化合物、例えば過酸化物、ヒドロペルオキシド、過酸化水素、過硫酸塩、アゾ化合物及びいわゆるレドックス開始剤を使用することができる。水溶性開始剤の使用が有利である。大抵の場合には、異なる開始剤の混合物、例えば過酸化水素とペルオキソ二硫酸ナトリウム又はペルオキソ二硫酸カリウムとの混合物を使用することが有利である。過酸化水素とペルオキソ二硫酸ナトリウムとの混合物は、全ての任意の比率で使用することができる。
【0038】
エチレン性不飽和の酸基を有するモノマーa)と共重合可能なエチレン性不飽和モノマーd)は、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、クロトン酸アミド、ヒドロキシエチルアクリラート、ヒドロキシエチルメタクリラート、ジメチルアミノエチルメタクリラート、ジメチルアミノエチルアクリラート、ジメチルアミノプロピルアクリラート、ジエチルアミノプロピルアクリラート、ジメチルアミノブチルアクリラート、ジメチルアミノエチルメタクリラート、ジエチルアミノエチルメタクリラート、ジメチルアミノネオペンチルアクリラート及びジメチルアミノネオペンチルメタクリラートである。
【0039】
水溶性ポリマーe)として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、デンプン誘導体、ポリグリコール又はポリアクリル酸、有利にポリビニルアルコール及びデンプンを使用することができる。
【0040】
有利な重合防止剤は、最適な作用のために溶解した酸素を必要とする。従って、前記モノマー溶液は、重合前に不活性化、つまり不活性ガス、有利には窒素の導通により溶解した酸素を除去することができる。前記モノマー溶液の重合前の酸素含有率は、有利に1質量ppm未満、特に有利に0.5質量ppm未満に低減される。
【0041】
適当なポリマー及び他の適当な親水性のエチレン性不飽和モノマーa)の製造は、DE19941423A1、EP686650A1、WO2001/45758A1及びWO2003/104300A1に記載されている。
【0042】
適当な反応器は、例えば混練式反応器又はベルト式反応器である。混練機中で、水性モノマー溶液又は懸濁液の重合の際に生じるポリマーゲルは、WO2001/38402A1に記載のように、例えば反転撹拌シャフトによって連続的に粉砕される。前記ベルト上の重合は、例えばDE3825366A1及びUS6,241,928に記載されている。ベルト式反応器中での前記重合の場合には、更なる方法工程、例えばミンチャー、押出基又は混練機中で粉砕しなければならないポリマーゲルが生じる。
【0043】
得られたヒドロゲルの酸基は、一般的には部分的に、有利に25〜95mol%、特に50〜80mol%、特に有利に60〜75mol%中和されており、その際、慣用の中和剤、有利にアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩並びにこれらの混合物を使用することができる。アルカリ金属塩の代わりにもアンモニウム塩を使用することもできる。ナトリウム及びカリウムがアルカリ金属として特に有利であるが、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウム並びにこれらの混合物がさらに特に有利である。
【0044】
前記中和は、有利にモノマーの段階で実施される。これは、通常では、中和剤を水溶液として、融液として又は有利に固体として混入することにより行われる。例えば、50質量%を明らかに下回る含水率を有する水酸化ナトリウムは、23℃を上回る融点を有するワックス状の塊として存在することができる。この場合、高めた温度で粉粒体又は融液として計量供給することが可能である。
【0045】
前記中和を、重合後にヒドロゲルの段階で実施することも可能である。さらに、前記中和剤の一部をモノマー溶液にあらかじめ添加することにより、重合前に酸基を40mol%まで、有利に10〜30mol%、特に有利に15〜25mol%中和すること、及び所望の最終中和度を重合の直後にヒドロゲルの段階で調節することも可能である。前記ヒドロゲルを重合の後に少なくとも部分的に中和する場合、前記ヒドロゲルは有利に機械的に、例えばミートグラインダを用いて粉砕し、その際、中和剤を吹き付けるか、降りかけるか又は注ぎ込み、次いで入念に混合することができる。さらに、この得られたゲル材料をなお数回均質化のために粉砕することができる。
【0046】
前記ヒドロゲルを、次いで、有利に、15質量%未満、特に有利に10質量%未満、さらに特に有利に8質量%未満の残留水分にまでベルト式乾燥器で乾燥させ、その際、前記含水量はEDANA(European Disposables and Nonwovens Association)により推奨された試験法No. WSP 230.2-05「Moisture content」に従って測定される。しかしながら選択的に、乾燥のために流動層乾燥器又は加熱されたプローシェアミキサーを使用することもできる。特に白色の製品を得るために、有利に前記ゲルの乾燥の際に蒸発する水の迅速な搬出を保証することが有利である。このために、乾燥温度を最適化しなければならず、空気供給及び空気排出を制御して行わなければならず、かつそれぞれの場合に十分な通気に留意しなければならない。前記乾燥は、もちろん、前記ゲルの固体含有量ができる限り高い場合にそれだけ容易であり、前記製品はそれだけ白色である。従って、前記ゲルの固体含有量は乾燥の前に25〜80質量%であるのが有利である。乾燥器に窒素又は他の酸化性でない不活性ガスを通気するのが特に有利である。しかしながら選択的に、酸化による黄変現象を抑制するために、乾燥の間に単に酸素の分圧だけを単に低減することもできる。
【0047】
この乾燥されたヒドロゲルは、この後に粉砕及び分級し、この場合、粉砕のために通常では一段又は多段式のロールミル、有利に2段又は3段のロールミル、ピン付きミル、ハンマーミル又は振動ミルを使用することができる。
【0048】
生成物画分として分離されたポリマー粒子の平均粒度は、有利に少なくとも200μm、特に有利に250〜600μm、極めて有利に300〜500μmである。前記生成物画分の平均粒度は、EDANA(European Disposables and Nonwovens Association)により推奨された試験法No. WSP 220.2-05「Partikel size distribution」に従って測定することができ、その際、篩別画分の質量割合を累積的にプロットし、かつ平均粒度をグラフで決定する。前記平均粒度は、この場合、累積して50質量%について生じる目開きの値である。
【0049】
有利に少なくとも150μm、特に有利に少なくとも200μm、さらに特に有利に少なくとも250μmの粒度を有する粒子の割合は、有利に少なくとも90質量%、特に有利に少なくとも95質量%、さらに特に有利に少なくとも98質量%である。
【0050】
有利に高くても850μm、特に有利に高くても700μm、さらに特に有利に高くても600μmの粒度を有する粒子の割合は、有利に少なくとも90質量%、特に有利に少なくとも95質量%、さらに特に有利に少なくとも98質量%である。
【0051】
前記ポリマー粒子は、特性をさらに改善するために後架橋することができる。適当な後架橋剤は、前記ポリマーゲルの少なくとも2つのカルボキシレート基と共有結合を形成することができる複数の基を有する化合物である。適した化合物は、例えばアルコキシシリル化合物、ポリアジリジン、ポリアミン、ポリアミドアミン、ジエポキシド又はポリエポキシド(例えばEP83022A2、EP543303A1及びEP937736A2に記載)、二官能性又は多官能性アルコール(例えばDE3314019A1、DE3523617A1及びEP450922A2に記載)、又はβ−ヒドロキシアルキルアミド(例えばDE10204938A1及びUS6,239,230に記載)である。
【0052】
さらにDE4020780C1では環状カーボネートが、DE19807502A1では2−オキサゾリドン及びその誘導体、例えば2−ヒドロキシエチル−2−オキサゾリドンが、DE19807992C1ではビス−及びポリ−2−オキサゾリジノンが、DE19854573A1では2−オキソテトラヒドロ−1,3−オキサジン及びその誘導体が、DE19854574A1ではN−アシル−2−オキサゾリドンが、DE10204937A1では環状尿素が、DE10334584A1では二環式アミドアセタールが、EP1199327A2ではオキセタン及び環状尿素が、WO2003/31482A1ではモルホリン−2,3−ジオン及びその誘導体が適当な後架橋剤として記載されている。
【0053】
さらに、DE3713601A1に記載されているような、付加的な重合可能なエチレン性不飽和基を含有する後架橋剤も使用することができる。
【0054】
後架橋剤の量は、前記ポリマーに対してそれぞれ、有利に0.001〜2質量%、特に有利に0.02〜1質量%、さらに特に有利に0.05〜0.2質量%である。
【0055】
本発明の特に有利な実施態様の場合には、前記後架橋の前、その間又はその後に、前記後架橋剤に加えて多価カチオンを前記粒子表面に塗布する。
【0056】
本発明による方法において使用することができる多価カチオンは例えば二価のカチオン、例えば亜鉛、マグネシウム、カルシウム、鉄及びストロンチウムのカチオン、三価のカチオン、例えばアルミニウム、鉄、クロム、希土類及びマンガンのカチオン、四価のカチオン、例えばチタン及びジルコニウムのカチオンである。対イオンとして、例えば塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン及びカルボン酸イオン、例えば酢酸イオン及び乳酸イオンが可能である。硫酸アルミニウムが有利である。金属塩の他に、多価カチオンとしてポリアミンも使用することができる。
【0057】
多価カチオンの使用量は、前記ポリマーに対してそれぞれ、例えば0.001〜1.5質量%、有利に0.005〜1質量%、特に有利に0.02〜0.8質量%である。
【0058】
前記後架橋は、一般的に、前記後架橋剤の溶液を前記ヒドロゲル又は乾燥したポリマー粒子に吹き付けることにより実施される。前記吹き付けに引き続き、前記後架橋剤で被覆されたポリマー粒子を熱的に乾燥させ、その際、前記後架橋反応は乾燥前でも乾燥中でも行うことができる。
【0059】
前記後架橋剤の溶液の吹き付けは、有利に可動式混合装置を有するミキサー、例えばスクリューミキサー、ディスクミキサー、プローシェアミキサー及びパドルミキサー中で実施される。特に有利に、横型ミキサー、例えばプローシェアミキサー及びパドルミキサー、さらに特に有利に縦型ミキサーである。適当なミキサーは、例えばLoedigeミキサー、Bepexミキサー、Nautaミキサー、Processallミキサー及びSchugiミキサーである。
【0060】
前記後架橋剤は、一般に水溶液として使用される。非水性溶剤の添加により、前記後架橋剤の前記ポリマー粒子内への侵入深さを調節することができる。
【0061】
前記熱的乾燥は、有利に接触型乾燥器、特に有利にパドル型乾燥器、さらに特に有利にディスク型乾燥器中で実施する。適当な乾燥器は、例えばBepex乾燥機及びNara乾燥機である。さらに、流動層乾燥器を使用することもできる。
【0062】
前記乾燥はミキサー自体の中で、ジャケットの加熱又は熱風の吹き込みによって行うことができる。同様に適しているのは、後方に配置された乾燥機、例えばシェルフ型乾燥機、ロータリーキルン又は加熱可能なスクリューである。流動層乾燥器中で混合及び乾燥するのが特に有利である。
【0063】
有利な乾燥温度は、100〜250℃、有利に120〜220℃、特に有利に130〜210℃、さらに特に有利に150〜200℃の範囲内にある。反応ミキサー又は乾燥器中で前記温度での有利な滞留時間は、有利に少なくとも10分、特に有利に少なくとも20分、さらに特に有利に少なくとも30分、通常では最大で60分である。
【0064】
引き続き、後架橋されたポリマーを新たに分級することができる。
【0065】
この後架橋されたポリマー粒子は、前記特性の更なる改善のために被覆するか又は後湿潤させることができる。獲得挙動(Akquisitionverhaltens)及び透過性(SFC)を改善するために適した被覆は、例えば無機不活性物質、例えば非水溶性金属塩、有機ポリマー、カチオンポリマー並びに2価又は多価の金属カチオンである。粉塵結合のために適した被覆は例えばポリオールである。前記ポリマー粒子の不所望なケーキングに対して適した被覆は、例えば熱分解シリカ、例えばアエロジル(登録商標)200、及び界面活性剤、例えばSpan(登録商標)20である。
【0066】
本発明による方法により得られた吸水性ポリマー粒子は、有利に15質量%未満、特に有利に10質量%未満、さらに特に有利に8質量%未満の含水量を有し、この場合、前記含水量はEDANA(European Disposables and Nonwovens Association)により推奨された試験法No. WSP 230.2-05「Moisture content」に従って測定される。
【0067】
本発明による方法により得られた吸水性ポリマー粒子は、一般に少なくとも15g/g、有利に少なくとも20g/g、特に少なくとも22g/g、特に有利に少なくとも24g/g、さらに特に有利に少なくとも26g/gの遠心分離保持容量(CRC)を有する。前記吸水性ポリマー粒子の遠心分離保持容量(CRC)は通常では60g/g未満である。この遠心分離保持容量(CRC)は、EDANA(European Disposables and Nonwovens Association)により推奨された試験法No. 241.2-05「Centrifuge retention capacity」に従って測定される。
【0068】
本発明による方法により得られた吸水性ポリマー粒子は、一般に少なくとも15g/g、有利に少なくとも20g/g、特に少なくとも22g/g、特に有利に少なくとも24g/g、さらに特に有利に少なくとも26g/gの0.7psi(4.83kPa)の荷重下での吸収力を有する。この吸水性ポリマー粒子の0.7psiでの荷重下吸収力(AUL0.7psi)は、通常では50g/g未満である。この0.7psiでの荷重下吸収力(AUL0.7psi)は、EDANA(European Disposables and Nonwovens Association)により推奨された試験法No. WSP 242.2-05「Absorption under pressure」と同様に測定され、その際、0.3psi(2.07kPa)の圧力の代わりに、0.7psi(4.83kPa)の圧力を調節する。
【0069】
実施例
水と、50質量%の苛性ソーダ液と、アクリル酸との連続的な混合によって38.8質量%のアクリル酸/アクリル酸ナトリウム溶液を製造し、この中和度は71.3モル%であった。このモノマー溶液の固体含有率は、38.8質量%であった。前記モノマー溶液を前記成分の混合後に熱交換器により連続的に冷却した。
【0070】
複数箇所エチレン性不飽和の架橋剤として、ポリエチレングリコール−400−ジアクリラートを使用する。この使用量は、モノマー溶液1t当たり1.3kgであった。
【0071】
このラジカル重合の開始のために次の成分を使用した:過酸化水素(モノマー溶液1t当たり1.03kg(0.25質量%))、ペルオキソ二硫酸ナトリウム(モノマー溶液1t当たり3.10kg(15質量%))、及びアスコルビン酸(モノマー溶液1t当たり1.05kg(1質量%))。
【0072】
前記モノマー溶液の流量は20t/hであった。
【0073】
個々の成分を、容積6.3m3を有する反応器List Contikneter(List社、Arisdorf、スイス)中に以下の量で連続的に計量供給した:
モノマー溶液 20t/h
ポリエチレングリコール−400−ジアクリラート 26kg/h
過酸化水素溶液/ペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液 82.6kg/h
アスコルビン酸溶液 21kg/h
【0074】
架橋剤及び開始剤の添加時点の間に前記モノマー溶液を窒素で不活性化した。
【0075】
前記反応器の端部で、さらに150μmより小さい粒度を有する分離された細粒1000kg/hを計量供給した。
【0076】
この反応溶液は、供給部で23.5℃の温度を有していた。この反応器は、38rpmのシャフト回転数で運転した。反応器中での前記反応混合物の滞留時間は15分であった。
【0077】
重合及びゲル粉砕の後に水性ポリマーゲルをベルト式乾燥器に供給した。前記乾燥ベルト上での滞留時間は約37分であった。
【0078】
この乾燥したヒドロゲルを粉砕し、篩い分けした。
【0079】
モノマーa)として使用されたアクリル酸を晶析により精製し、アリルアクリラートの含有量は0.0001質量%の検出限界を下回った。
【0080】
連続的製造の間に、蒸留により製造されたアクリル酸をモノマーa)としても使用した。この蒸留されたアクリル酸はアリルアクリラート約0.008質量%を含有していた。
【0081】
晶析されたアクリル酸も、蒸留されたアクリル酸も、共通の受容器を介して中和工程に計量供給した。前記受容器内でのアクリル酸中のアリルアクリラートの含有量を規則的に分析した。前記受容器内でのアリルアクリラートの含有量が上昇する場合にこの量を低減させ、アリルアクリレートの含有量の0.004質量%の変化は、モノマー溶液1t当たり0.026kgの架橋剤量の変化に相当した。この措置により、製造された吸水性ポリマー粒子の遠心分離保持容量(CRC)は2g/gの幅の目標範囲内に維持された。