(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5787645
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】補強構造を有するヒートパイプおよびこれを用いた熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
F28D15/02 102B
F28D15/02 102H
F28D15/02 101H
F28D15/02 101Z
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-148811(P2011-148811)
(22)【出願日】2011年7月5日
(65)【公開番号】特開2013-15277(P2013-15277A)
(43)【公開日】2013年1月24日
【審査請求日】2014年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】志村 隆広
(72)【発明者】
【氏名】中村 敏明
(72)【発明者】
【氏名】池田 匡視
【審査官】
▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−087051(JP,A)
【文献】
特開平07−198279(JP,A)
【文献】
特開2000−028280(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02312626(EP,A1)
【文献】
国際公開第2007/029125(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏平断面を有する受熱部と、偏平断面を有する放熱部と、前記受熱部と前記放熱部との間に形成され、それぞれの偏平方向が変化する面方向変化部と、を有するヒートパイプと、
前記面方向変化部の補強を行う補強部材と、
を具備し、
前記面方向変化部により、同一軸上に形成される前記受熱部と前記放熱部のそれぞれの受熱面および放熱面の面方向が異なる方向に向けて形成され、
前記補強部材は、前記受熱部の少なくとも一方の面に面接合される受熱部接合部と、前記放熱部の少なくとも一方の面に接合される放熱部接合部と、前記受熱部接合部と前記放熱部接合部とを連結し、前記面方向変化部の両側部に設けられる連結部を有し、
前記面方向変化部は曲面であり、
前記連結部は前記面方向変化部の面方向の変化角度と同様に捻じられ、前記連結部が前記面方向変化部の曲面と干渉しないことを特徴とする補強構造を有するヒートパイプ。
【請求項2】
偏平断面を有する受熱部と、偏平断面を有する放熱部と、前記受熱部と前記放熱部との間に形成され、それぞれの偏平方向が変化する面方向変化部と、を有するヒートパイプと、
前記面方向変化部の補強を行う補強部材と、
を具備し、
前記面方向変化部により、同一軸上に形成される前記受熱部と前記放熱部のそれぞれの受熱面および放熱面の面方向が異なる方向に向けて形成され、
前記補強部材は、前記受熱部の少なくとも一方の面に面接合される受熱部接合部と、前記放熱部の少なくとも一方の面に接合される放熱部接合部と、前記受熱部接合部と前記放熱部接合部とを連結し、前記面方向変化部の両側部に設けられる連結部を有し、
前記補強部材は板状部材であり、前記面方向変化部に対応する大きさの切り抜き部が形成され、前記切り抜き部において前記受熱面および前記放熱面のそれぞれの面方向に対応するようにねじられて前記連結部が形成されることを特徴とするヒートパイプ。
【請求項3】
偏平断面を有する受熱部と、偏平断面を有する放熱部と、前記受熱部と前記放熱部との間に形成され、それぞれの偏平方向が変化する面方向変化部と、を有するヒートパイプと、
前記面方向変化部の補強を行う補強部材と、
を具備し、
前記面方向変化部により、同一軸上に形成される前記受熱部と前記放熱部のそれぞれの受熱面および放熱面の面方向が異なる方向に向けて形成され、
前記補強部材は、前記受熱部の少なくとも一方の面に面接合される受熱部接合部と、前記放熱部の少なくとも一方の面に接合される放熱部接合部と、前記受熱部接合部と前記放熱部接合部とを連結し、前記面方向変化部の両側部に設けられる連結部を有し、
前記補強部材は、さらに一対の固定部材を具備し、一方の前記固定部材は、前記受熱部接合部に対して、前記受熱部の他方の面から配置され、前記受熱部接合部の側端部と接合され、他方の前記固定部材は、前記放熱部の他方の面から配置され、前記放熱部接合部の側端部と接合されることを特徴とするヒートパイプ。
【請求項4】
偏平断面を有する受熱部と、偏平断面を有する放熱部と、前記受熱部と前記放熱部との間に形成され、それぞれの偏平方向が変化する面方向変化部と、を有するヒートパイプと、
前記面方向変化部の補強を行う補強部材と、
を具備し、
前記面方向変化部により、同一軸上に形成される前記受熱部と前記放熱部のそれぞれの受熱面および放熱面の面方向が異なる方向に向けて形成され、
前記補強部材は、前記受熱部の少なくとも一方の面に面接合される受熱部接合部と、前記放熱部の少なくとも一方の面に接合される放熱部接合部と、前記受熱部接合部と前記放熱部接合部とを連結し、前記面方向変化部の両側部に設けられる連結部を有し、
前記補強部材は、前記受熱部接合部と、前記放熱部接合部と、前記連結部とが別体で構成され、前記連結部は、前記受熱部接合部の側端部と前記放熱部接合部の側端部とに接合されることを特徴とするヒートパイプ。
【請求項5】
熱交換器であって、
偏平断面を有する受熱部と、偏平断面を有する放熱部と、前記受熱部と前記放熱部との間に形成され、それぞれの偏平方向が変化する面方向変化部と、を有するヒートパイプと、
前記面方向変化部の補強を行う補強部材と、
一または複数のフィン材と
を具備し、
前記面方向変化部により、同一軸上に形成される前記受熱部と前記放熱部のそれぞれの受熱面および放熱面の面方向が異なる方向に向けて形成され、
前記補強部材は、前記受熱部の少なくとも一方の面に接合される受熱部接合部と、前記放熱部の少なくとも一方の面に接合される放熱部接合部と、前記受熱部接合部と前記放熱部接合部とを連結し、前記面方向変化部の両側部に設けられる連結部と、を具備し、
前記放熱部および前記放熱部接合部の外面に前記フィン材が接合されることを特徴とする熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器や車両用バッテリ等の発熱体を冷却するためのヒートパイプ等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器や車両用バッテリ等における発熱体の冷却のため、ヒートパイプが用いられる場合がある。ヒートパイプを用いた熱交換器によれば、発熱体からの受熱部と、放熱を行う部位を分離させることができる。
【0003】
このような発熱体の放熱に用いられるヒートパイプとしては、受熱部と放熱部とを偏平形状とするとともに、それぞれの偏平方向が垂直に形成されるヒートパイプがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−198279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図10(a)は、従来のヒートパイプ100を示す概略図である。ヒートパイプ100は、受熱部101および放熱部103が設けられる。受熱部101および放熱部103はそれぞれ偏平形状であり、長さ方向の端面視において互いに垂直に形成される。受熱部101と放熱部103との間には、それぞれの偏平方向が変化する面方向変化部105が形成される。すなわち、ヒートパイプ100は、受熱部101と放熱部103とが面方向変化部105によって連結されている。
【0006】
図10(b)、
図10(c)は、当該ヒートパイプ100を用いた熱交換器110を示す図であり、
図10(b)は正面図、
図10(b)は平面図である。
【0007】
受熱部101は、例えば、図示を省略した受熱板等を介して上下面に発熱体111が配置される。また、放熱部103には、図示を省略した熱拡散板等を介して複数のフィン113がろう付け等によって設けられる。発熱体111からの熱は、受熱部101に伝達され、受熱部101で受熱された熱は、ヒートパイプ内部の作動液の移動および気化・凝縮によって、放熱部103へ伝達される。さらに、放熱部103において、ヒートパイプ内部からフィン113を介して外気に熱が放出される。以上により、発熱体111が冷却される。
【0008】
ここで、
図10(b)に示すように、放熱部103において上下方向(図中矢印H方向)に冷却ファン等によって気流を生じさせる場合がある。このような場合に、ヒートパイプ100は、空気の流れ方向に対して、放熱部103が偏平して薄くなっているため(
図10(c))、ヒートパイプ自体が気流の抵抗(圧力損失)にならず、効率良く空気を放熱部に流すことができる。すなわち、冷却風速を高めることにより、フィンの熱伝達率を向上させ、より効率良く熱を放出することができる。
【0009】
このように、受熱部101と放熱部103とを偏平させて、発熱体111の設置方向と、冷却エアの気流方向に応じて、適切にそれぞれの偏平方向を異なる方向に向けることで、レイアウトの設計自由度が高く、効率の良い熱交換器を得ることができる。
【0010】
一方、このような熱交換器110には、使用する場所や態様によって振動や繰り返しの応力が付与される場合がある。この場合には、断面形状が変化する面方向変化部105に応力が集中しやすい。このため、特に、面方向変化部105近傍において、ヒートパイプ100の破損等の恐れがある。ヒートパイプ100が損傷すると、ヒートパイプ100は熱輸送をしなくなる。このため、発熱体111の冷却が不足し、例えば電子部品等である発熱体111自体の故障等を引き起こす恐れがある。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、長期信頼性に優れ、熱交換器のレイアウトの設計自由度を高くできるヒートパイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、偏平断面を有する受熱部と、偏平断面を有する放熱部と、前記受熱部と前記放熱部との間に形成され、それぞれの偏平方向が変化する面方向変化部と、を有するヒートパイプと、前記面方向変化部の補強を行う補強部材と、を具備し、前記面方向変化部により、同一軸上に形成される前記受熱部と前記放熱部のそれぞれの受熱面および放熱面の面方向が異なる方向に向けて形成され、前記補強部材は、前記受熱部の少なくとも一方の面に面接合される受熱部接合部と、前記放熱部の少なくとも一方の面に接合される放熱部接合部と、前記受熱部接合部と前記放熱部接合部とを連結し、前記面方向変化部の両側部に設けられる連結部
を有し、前記面方向変化部は曲面であり、
前記連結部は前記面方向変化部の面方向の変化角度と同様に捻じられ、前記連結部が前記面方向変化部の曲面と干渉しないことを特徴とする補強構造を有するヒートパイプである。
【0013】
第2の発明は、偏平断面を有する受熱部と、偏平断面を有する放熱部と、前記受熱部と前記放熱部との間に形成され、それぞれの偏平方向が変化する面方向変化部と、を有するヒートパイプと、前記面方向変化部の補強を行う補強部材と、
を具備し、前記面方向変化部により、同一軸上に形成される前記受熱部と前記放熱部のそれぞれの受熱面および放熱面の面方向が異なる方向に向けて形成され、前記補強部材は、前記受熱部の少なくとも一方の面に面接合される受熱部接合部と、前記放熱部の少なくとも一方の面に接合される放熱部接合部と、前記受熱部接合部と前記放熱部接合部とを連結し、前記面方向変化部の両側部に設けられる連結部を有し、前記補強部材は板状部材であり、前記面方向変化部に対応する大きさの切り抜き部が形成され、前記切り抜き部において前記受熱面および前記放熱面のそれぞれの面方向に対応するようにねじられて前記連結部が形成されることを特徴とするヒートパイプである。
【0014】
第3の発明は、偏平断面を有する受熱部と、偏平断面を有する放熱部と、前記受熱部と前記放熱部との間に形成され、それぞれの偏平方向が変化する面方向変化部と、を有するヒートパイプと、前記面方向変化部の補強を行う補強部材と、
を具備し、前記面方向変化部により、同一軸上に形成される前記受熱部と前記放熱部のそれぞれの受熱面および放熱面の面方向が異なる方向に向けて形成され、前記補強部材は、前記受熱部の少なくとも一方の面に面接合される受熱部接合部と、前記放熱部の少なくとも一方の面に接合される放熱部接合部と、前記受熱部接合部と前記放熱部接合部とを連結し、前記面方向変化部の両側部に設けられる連結部を有し、前記補強部材は、さらに一対の固定部材を具備し、一方の前記固定部材は、前記受熱部接合部に対して、前記受熱部の他方の面から配置され、前記受熱部接合部の側端部と接合され、他方の前記固定部材は、前記放熱部の他方の面から配置され、前記放熱部接合部の側端部と接合されることを特徴とするヒートパイプである。
【0015】
第4の発明は、偏平断面を有する受熱部と、偏平断面を有する放熱部と、前記受熱部と前記放熱部との間に形成され、それぞれの偏平方向が変化する面方向変化部と、を有するヒートパイプと、前記面方向変化部の補強を行う補強部材と、
を具備し、前記面方向変化部により、同一軸上に形成される前記受熱部と前記放熱部のそれぞれの受熱面および放熱面の面方向が異なる方向に向けて形成され、前記補強部材は、前記受熱部の少なくとも一方の面に面接合される受熱部接合部と、前記放熱部の少なくとも一方の面に接合される放熱部接合部と、前記受熱部接合部と前記放熱部接合部とを連結し、前記面方向変化部の両側部に設けられる連結部を有し、前記補強部材は、前記受熱部接合部と、前記放熱部接合部と、前記連結部とが別体で構成され、前記連結部は、前記受熱部接合部の側端部と前記放熱部接合部の側端部とに接合されることを特徴とするヒートパイプである。
【0016】
第1の発明によれば、同一軸上に形成され、偏平断面を有する受熱部と放熱部のそれぞれの受熱面および放熱面の面方向が所定の角度で異なる方向に向けて形成されるため、発熱体の設置方向に対する冷却風の気流方向の自由度を高くすることが可能な補強構造を有するヒートパイプを得ることができる。
【0017】
また、面方向変化部を補強するための補強部材が設けられるため、強度的に弱い面方向変化部の破損を防止することができる。さらに、受熱部接合部と放熱部接合部とがそれぞれ受熱部および放熱部の全長に渡って配置されれば、それぞれの受熱部接合部と放熱部接合部端部における、補強部材の設置境界に応力集中が生じることがない。
【0018】
第2の発明によれば、補強部材が板状部材であり、面方向変化部に対応する大きさの切り抜き部が形成され、切り抜き部において受熱面および放熱面のそれぞれの面方向に対応するようにねじられて連結部が形成されることで、部品点数が少なく、補強部材自体の製造性にも優れる。
【0019】
第3の発明によれば、一対の固定部材用い、ヒートパイプを覆うように、一方の固定部材を受熱部接合部に接合し、他方の固定部材を放熱部接合部に接合することで、より確実に補強部材をヒートパイプに固定することができ、ヒートパイプを確実に補強することができる。
【0020】
第4の発明によれば、受熱部接合部と、放熱部接合部と、連結部とが別体で構成され、連結部を受熱部接合部の側端部と放熱部接合部の側端部とまたがるように接合することで、確実にヒートパイプを補強することができるとともに、ヒートパイプの厚みと連結部との厚みを揃えることもできる。このようにすることで、ヒートパイプの外周面に不要な段差等が形成されることを防止することができる。
【0021】
第
5の発明は、熱交換器であって、偏平断面を有する受熱部と、偏平断面を有する放熱部と、前記受熱部と前記放熱部との間に形成され、それぞれの偏平方向が変化する面方向変化部と、を有するヒートパイプと、前記面方向変化部の補強を行う補強部材と、一または複数のフィン材とを具備し、前記面方向変化部により、同一軸上に形成される前記受熱部と前記放熱部のそれぞれの受熱面および放熱面の面方向が異なる方向に向けて形成され、前記補強部材は、前記受熱部の少なくとも一方の面に接合される受熱部接合部と、前記放熱部の少なくとも一方の面に接合される放熱部接合部と、前記受熱部接合部と前記放熱部接合部とを連結し、前記面方向変化部の両側部に設けられる連結部と、を具備し、前記放熱部および前記放熱部接合部の外面に前記フィン材が接合されることを特徴とする熱交換器である。
【0022】
第
5の発明によれば、面方向変化部を確実の補強することができ、当該部位の損傷を確実に防止することが可能であるとともに、効率の良い熱交換器を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、長期信頼性に優れ、熱交換器のレイアウトの設計自由度を高くできる、補強構造を有するヒートパイプ等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】補強部材1を示す図で、(a)は板状部材3のねじり加工前の状態を示す斜視図、(b)は板状部材1をねじり加工した状態を示す斜視図、(c)は(b)のD方向矢視図。
【
図2】補強構造を有するヒートパイプ10を示す図で、(a)は補強部材1とヒートパイプ13との分解斜視図、(b)は組み立て斜視図。
【
図4】熱交換機20を示す図で、(a)は正面図、(b)は平面図。
【
図5】補強構造を有するヒートパイプ30を示す図で、(a)は補強部材33とヒートパイプ13との分解斜視図、(b)は組み立て斜視図。
【
図7】(a)は受熱部接合部材41および放熱部接合部材43と、ヒートパイプ13との分解斜視図、(b)は組み立て斜視図。
【
図8】補強構造を有するヒートパイプ50を示す図で、(a)は補強部材40とヒートパイプ13との分解斜視図、(b)は組み立て斜視図。
【
図10】(a)はヒートパイプ103を示す斜視図、(b)は従来の熱交換機110を示す正面図、(c)は従来の熱交換機110を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態にかかるヒートパイプについて説明する。
図1は、補強部材1を示す図であり、
図1(a)は板状部材3のねじり加工前の状態を示す斜視図、
図1(b)は板状部材3をねじり加工した状態を示す斜視図、
図1(c)は
図1(b)のD方向矢視図である。
【0026】
図1(a)に示すように、板状部材3は、金属平板に切り抜き部5が形成された部材である。切り抜き部5は、板状部材3の幅方向(図中上下方向)の略中央に形成された中空部である。板状部材3としては、熱伝導性に優れ、軽量な部材であることが望ましく、材料としては、たとえばアルミニウムなどが好適である。
【0027】
平坦な状態の板状部材3は、板状部材3の長手方向を軸として、切り抜き部5の部位で所定角度ねじられる(図中矢印A方向)。このようにすることにより、切り抜き部5の前後で、板状部材3のそれぞれの平坦部の面方向が変化する。
【0028】
図1(b)および
図1(c)に示すように、板状部材3の長手方向を軸としてねじられた部位を連結部11とし、連結部11の前後の部位をそれぞれ受熱部接合部7、放熱部接合部9とする。すなわち、受熱部接合部7および放熱部接合部9は、同一軸上(板上部材の長手方向の軸上)に形成されるとともに、それぞれの受熱部接合部7、放熱部接合部9の面方向(図中矢印B方向およびC方向)が異なる方向に向くように形成される。このようにして、連結部11で面方向が変化する板状部材3を補強部材1と称する。
【0029】
なお、受熱部接合部7および放熱部接合部9それぞれの範囲において、それぞれ面方向は一定であり受熱部接合部7および放熱部接合部9の範囲内で面変更が変化することはない。また、以下の説明においては、受熱部接合部7および放熱部接合部9の互いの面方向が、垂直(90°)である例を示すが、この角度は、適用するヒートパイプに応じて適宜設定される。
【0030】
次に、ヒートパイプの構造について説明する。
図2は、補強部材1とヒートパイプ13との接合方法を示す図で、
図2(a)は補強部材1とヒートパイプ13との分解斜視図、
図2(b)はヒートパイプ13と補強部材1との組み立て斜視図である。
【0031】
ヒートパイプ13には、受熱部15および放熱部17が設けられる。受熱部15および放熱部17はそれぞれ偏平形状であり、同一軸上(ヒートパイプ13の長手方向の軸上)で、それぞれ互いの面方向が異なる方向に向けて形成される。受熱部15と放熱部17との間には、それぞれの偏平方向が変化する面方向変化部19が形成される。すなわち、ヒートパイプ13は、受熱部15と放熱部17とが面方向変化部19によって連結されている。
【0032】
ヒートパイプ13の長手方向を軸とした面方向変化部19での受熱部15および放熱部17の面方向の変化角度と、補強部材1の長手方向を軸とした連結部11での受熱部接合部7および放熱部接合部9のねじれ角度とは略一致する。なお、以下の説明においては、受熱部5と放熱部17の互いの面方向が、垂直(90°)である例を示すが、この角度は、用いられる熱交換器の仕様に応じて適宜設定される。
【0033】
また、面方向変化部19は、全長に渡って偏平形状に形成されたヒートパイプを、局部的にねじることで形成してもよく、または、円断面のヒートパイプの受熱部接合部7および放熱部接合部9に対応する部位を、それぞれ異なる方向に偏平加工してもよい。
【0034】
補強部材1の受熱部接合部7および放熱部接合部9は、それぞれ、ヒートパイプ13の受熱部15および放熱部17に対応する長さで形成される。また、補強部材1の連結部11と、ヒートパイプ13の面方向変化部19とは対応する部分に形成される。
【0035】
図2(b)に示すように、補強部材1の受熱部接合部7および放熱部接合部9は、ぞれぞれ、ヒートパイプ13の受熱部15および放熱部17の一方の面に接合される。それぞれの接合は、互いに接触する部位を半田付け等で接合すればよい。このようにヒートパイプ13と補強部材1とが接合されたものを、補強構造を有するヒートパイプ10とする。すなわち、構成要素の一つであるヒートパイプ13と、同様に構成要素の一つである補強部材1とが接合した構造の全体を、「補強構造を有するヒートパイプ10」とする。
【0036】
図3は、
図2(b)のE方向矢視図である。図に示すように、ヒートパイプ13の受熱部15および放熱部17と、補強部材1の受熱部接合部7および放熱部接合部9は互いに面接触する。なお、互いの間の隙間を完全に埋めるために、さらに熱伝導性グリス等の熱伝導部材を塗布してもよい。また、ハンダなどの熱伝導率のよい金属を充填してもよい。
【0037】
また、図に示す補強構造を有するヒートパイプ10は、補強部材1の幅が、ヒートパイプ13の受熱部15および放熱部17それぞれの幅よりも広幅である例を示すが、本発明はこれに限られず、補強部材1の幅を、受熱部15および放熱部17と一致させてもよく、または部分的に狭くしてもよい。また、補強部材1の長さは、ヒートパイプ13の長さと合わせたが、補強部材1とヒートパイプ13の長さは異なってもよい。
【0038】
図4は、補強構造を有するヒートパイプ10を用いた熱交換器20を示す図であり、
図4(a)は正面図、
図4(b)は平面図である。補強構造を有するヒートパイプ10の受熱部15には、発熱体21が設けられる。この際、受熱部15は偏平しているため、発熱体21との接触面積を確保することができる。受熱部15の一方の面には、補強部材1の受熱部接合部7が配置される。したがって、受熱部15の一方の面は、受熱部接合部7を介して発熱体21と接触する。なお、発熱体21が受熱部15の一方の面のみに配置される場合には、より熱抵抗を下げるため、受熱部接合部7とは反対側の面に発熱体21を接触させればよい。
【0039】
放熱部17には、複数のフィン23が設けられる。フィン23は例えばアルミニウム製である。なお、フィン23の枚数は図示した例に限られず、少なくとも1枚以上のフィンを有すればよい。フィン23と放熱部17とは、半田付けやかしめ等により接合される。なお、放熱部17の一方の面には、補強部材1の放熱部接合部9が配置される。したがって、放熱部17の一方の面は、放熱部接合部9を介してフィン23と接合される。
【0040】
以上、本実施の形態によれば、ヒートパイプ13の受熱部15および放熱部17の面方向が異なるため、発熱体21の設置方向と冷却風の気流方向とが異なる場合にも効率良く配置することができる。この際、ヒートパイプ13の面方向の変化角度と同様にねじられた補強部材1が用いられ、補強部材1が面方向変化部19をまたがるようにヒートパイプ13と接合されるため、補強部材1によって、面方向変化部19への応力を低減することができる。
【0041】
また、補強部材1は、板状部材3に切り抜き部5を形成して、切り抜き部5近傍をねじり加工するものであるため、加工が容易である。また、切り抜き部5によって、補強部材1とヒートパイプ13の面方向変化部19とが干渉することがない。なお、本実施形態では、切り抜き部5の形状は矩形の例を示したが、本発明はこれに限定されない。切り抜き部5の形状は、接合されるヒートパイプの形状に適合するように、自由に設計することができる。すなわち、切り抜き部5の形状は、ヒートパイプの受熱部や放熱部、面方向変化部などと適合できるように、適当な大きさや形状にすることができる。
【0042】
また、本実施形態では、受熱部接合部7は、受熱部15の一方の面の略全面に接合され、放熱部接合部9は、放熱部17の一方の面の略全面に接合される。したがって、受熱部15および放熱部17において、補強部材1との接合部と非接合部との境界が生じない。したがって、補強部材1の端部近傍において、ヒートパイプ13に応力が集中することもない。
【0043】
次に、第2の実施の形態について説明する。
図5は、補強構造を有するヒートパイプ30を示す図であり、
図5(a)は補強部材33とヒートパイプ13との分解斜視図、
図5(b)は組み立て斜視図である。また、
図6は、
図5(b)のF方向矢視図である。なお、以下の実施の形態において、
図1〜
図3に示す構成と同一の機能を果たす構成要素には、
図1〜
図3と同一の番号を付し、重複した説明を避ける。
【0044】
補強構造を有するヒートパイプ30は、補強構造を有するヒートパイプ10と略同様の構成であるが、板状部材3のみからなる補強部材1に対し、板状部材3と一対の固定部材31とからなる補強部材33が用いられる点で異なる。まず、前述の補強構造を有するヒートパイプ10と同様に、ヒートパイプ13に板状部材3(補強部材1)が接合される。この状態で、さらに、固定部材31が接合される。
【0045】
固定部材31は、板部材が曲げ加工されて形成された部材であり、幅は板状部材3と略同一である。また、幅方向の中央部には、ヒートパイプ13の幅に応じた凹形状が形成される。一対の固定部材31は、受熱部15および放熱部17のそれぞれに対し、板状部材3との接合面とは反対側からヒートパイプ13に被せられる。
【0046】
すなわち、固定部材31および板状部材3によってヒートパイプ13が被覆され、固定部材31の側端部は板状部材3の側端部と半田やかしめ等で接合される。固定部材31の内面側は、必要に応じて、ヒートパイプ13の外表面との接触部には隙間を埋めるように熱伝導グリス等の熱伝導部材を塗布してもよい。また、ハンダなどの熱伝導率の高い金属を充填してもよい。
【0047】
なお、固定部材31は、受熱部15および放熱部17の全長に渡って形成される例を示したが、本発明では、これに限られない。固定部材31の長さは適宜設定される。
【0048】
第2の実施の形態にかかる補強構造を有するヒートパイプ30によれば、補強構造を有するヒートパイプ10と同様の効果を得ることができる。また、固定部材31によって、補強部材33が確実にヒートパイプ13に固定されるため、ヒートパイプ13の局所的な応力の発生を確実に防止することができる。なお、補強構造を有するヒートパイプ30に対しても、
図4と同様にフィン23を接合して熱交換器として利用することができる。この場合、フィン23は、補強部材33を介してヒートパイプ13に接合される。
【0049】
次に、第3の実施の形態について説明する。
図7から
図9は、第3の実施の形態に用いられる補強構造を有するヒートパイプ50の組み立て工程を示す図である。補強構造を有するヒートパイプ50は、補強構造を有するヒートパイプ10と略同様の構成であるが、受熱部接合部材41、放熱部接合部材43、連結部材45がそれぞれ別体で構成される点で異なる。なお、受熱部接合部材41、放熱部接合部材43、連結部材45を総称して補強部材40とする。
【0050】
まず、
図7(a)、
図7(b)に示すように、ヒートパイプ13の受熱部15および放熱部17のそれぞれの一方の面に受熱部接合部材41、放熱部接合部材43を接合する。それぞれの接合は、例えば半田付けにより行われる。受熱部接合部材41、放熱部接合部材43は、それぞれ受熱部15および放熱部17の幅よりも広幅の平板状の部材である。なお、受熱部接合部材41、放熱部接合部材43は、受熱部15および放熱部17の長さと略一致させ、受熱部15および放熱部17の一方の面の全面に接合されることが望ましい。
【0051】
次に、
図8(a)、
図8(b)に示すように、受熱部接合部材41および放熱部接合部材43の側端部(ヒートパイプ13の幅方向にはみ出した部分)に一対の連結部材45を接合する。連結部材45は、長手方向を軸として、ねじり部が形成された部材である。なお、連結部材45のねじり角度は、ヒートパイプ13の面方向変化部19における面方向変化角度に対応する。
【0052】
図9は、
図8(b)のG方向矢視図である。連結部材45の幅は、ヒートパイプ13の幅方向にはみ出した部位の幅と略一致する。また、連結部材45の厚みは、例えば、ヒートパイプ13の厚みと略一致する。したがって、補強部材40が接合された状態で、受熱部15および放熱部17における、補強構造を有するヒートパイプ50の両面および側面は略平坦に形成され、外周部に段差等が形成されることがない。
【0053】
第3の実施の形態にかかる補強構造を有するヒートパイプ50によれば、補強構造を有するヒートパイプ10と同様の効果を得ることができる。また、連結部材45を別体で用いることで、受熱部接合部材41、放熱部接合部材43を薄肉化するとともに、最も強度の必要な部位であるねじり部の肉厚を厚くし、強度を持たせることができる。このため、より強固に面方向変化部19を補強することができる。
【0054】
なお、補強構造を有するヒートパイプ50に対しても、
図4と同様にフィン23を接合して熱交換器として利用することができる。この際、補強部材40を接合した状態で、受熱部15および放熱部17の部位における補強構造を有するヒートパイプ50の断面の外周面に段差等が形成されることがない。したがって、発熱体21やフィン23との接合も容易である。
【0055】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと解される。
【0056】
例えば、前述の実施形態においては、受熱部の受熱面が平坦な例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、発熱体の表面が平坦ではなく、例えば波形状である場合には、受熱部の形状を長手方向に対して波型にするなど変形させても良い。すなわち、受熱部の形状は、発熱体の表面形状に合わせて任意に設定することができる。この場合でも、ヒートパイプの長手方向に垂直な方向の断面が扁平していれば良い。
【符号の説明】
【0057】
1、33、40………補強部材
3………板状部材
5………切り抜き部
7………受熱部接合部
9………放熱部接合部
10、30、50………補強部材を有するヒートパイプ
11………連結部
13………ヒートパイプ
15………受熱部
17………放熱部
19………面方向変化部
20………熱交換器
21………発熱体
23………フィン
31………固定部材
41………受熱部接合部材
43………放熱部接合部材
45………連結部材
100………ヒートパイプ
101………受熱部
103………放熱部
105………面方向変化部
110………熱交換器
111………発熱体
113………フィン