【実施例】
【0031】
以下に、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0032】
(実施例)
表1に示す純度の銅を用いて発明例No.1〜8および比較例No.9〜18の板厚180mm、幅720mm、長さ3000mmのサイズの鋳塊を、それぞれ、作製した。それらを表1に記載の温度で加熱した後、熱間圧延を行い、厚さ23mm、幅720mm、長さ約23mの板を作成したが、熱間圧延中の材料の温度は放射温度計にて計測し、各パス間の時間を制御することにより温度を調整した。次に各発明例および比較例の詳細な製造条件について詳述する。
【0033】
発明例No.1では、熱間圧延前に900℃で加熱を行い、次いで、850〜750℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後750〜550℃でパスを繰り返し、最終パスを550℃で圧延率14.8%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0034】
発明例No.2では、No.1の素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を18mmにし、冷間圧延を施さなかった。
【0035】
発明例No.3では、熱間圧延前に980℃で加熱を行い、次いで、950〜850℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後850〜600℃でパスを繰り返し、最終パスを580℃で圧延率11.5%で施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、可及的に直ちに水冷シャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0036】
発明例No.4では、熱間圧延前に780℃で加熱を行い、次いで、750〜700℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後700〜500℃でパスを繰り返し、最終パスを500℃で圧延率14.8%で施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0037】
発明例No.5では、熱間圧延前に890℃で加熱を行い、次いで、840〜720℃の温度域で、圧延率11.1%→12.5%→7.1%のパスを実施した。また、その後720〜600℃でパスを繰り返し、最終パスを550℃で圧延率14.8%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0038】
発明例No.6では、熱間圧延前に900℃で加熱を行い、次いで、850〜700℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→4.7%→4.3%のパスを実施した。また、その後700〜600℃でパスを繰り返し、最終パスを550℃で圧延率14.8%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0039】
発明例No.7では、熱間圧延前に900℃で加熱を行い、次いで、850〜750℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後750〜430℃でパスを繰り返し、最終パスを430℃で圧延率14.8%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0040】
発明例No.8では、熱間圧延前に850℃で加熱を行い、次いで、800〜720℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後720〜550℃でパスを繰り返し、最終パスを550℃で圧延率10.2%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0041】
比較例No.9では、熱間圧延前に900℃で加熱を行い、次いで、850〜750℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後750〜550℃でパスを繰り返し、最終パスを550℃で圧延率14.8%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0042】
比較例No.10では、熱間圧延前に900℃で加熱を行い、次いで、850〜750℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後750〜550℃でパスを繰り返し、最終パスを550℃で圧延率14.8%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後冷却を水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね10℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0043】
比較例No.11では、熱間圧延前に1020℃で加熱を行い、次いで、1000〜950℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後950〜700℃でパスを繰り返し、最終パスを700℃で圧延率14.8%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0044】
比較例No.12では、熱間圧延前に780℃で加熱を行い、次いで、690〜620℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後620〜500℃でパスを繰り返し、最終パスを450℃で圧延率14.8%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0045】
比較例No.13では、熱間圧延前に850℃で加熱を行い、次いで、800〜700℃の温度域で、圧延率2.8%→2.9%→2.9%→3.0%のパスを実施した。また、その後700〜550℃でパスを繰り返し、最終パスを550℃で圧延率14.8%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0046】
比較例No.14では、熱間圧延前に900℃で加熱を行い、次いで、850〜750℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後750〜650℃でパスを繰り返し、最終パスを620℃で圧延率14.8%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0047】
比較例No.15では、熱間圧延前に900℃で加熱を行い、次いで、850〜750℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後750〜400℃でパスを繰り返し、最終パスを385℃で圧延率14.8%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0048】
比較例No.16では、熱間圧延前に900℃で加熱を行い、次いで、850〜750℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後750〜550℃でパスを繰り返し、最終パスを550℃で圧延率6.1%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0049】
比較例No.17では、No.1の素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにし、冷間圧延で厚さ15mm×幅720mmの平板を作成した。
【0050】
比較例No.18では、No.3の素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を18mmにし、冷間圧延を施さなかった。
なお、比較例No.9、12、13は上記(1)の発明に対する比較例であり、比較例No.10、11、14〜18は上記(2)の発明に対する比較例である。
【0051】
このようにして得られた平板について、以下の方法で、内部欠陥の径と数、板表面での結晶粒径、硬さを測定した。また、スパッタリング特性を調査した。
【0052】
[1]内部欠陥評価
得られた平板約3mうち先端部、後端部各1mのサンプリングを行い、それらのターゲット面にて、日本クラウトクレーマー社製超音波探傷映像化処理装置を用い、欠陥のサイズと数を測定した。欠陥の径は円相当とみなし、平均値を求めた。欠陥の数は10μm以上の欠陥の数を単位面積1m
2当たりの数として換算した。
【0053】
[2]結晶粒径
内部欠陥評価を実施したサンプルを用い、圧延先端部、後端部の各々6箇所にてターゲット面にてミクロ組織観察を行い、JIS H 0501(切断法)に基づき測定した。得られた6箇所の値を平均して、そのターゲットの平均結晶粒径とした。
【0054】
[3]硬さ測定
内部欠陥評価を実施したサンプルを用い、圧延先端部、後端部の各々6箇所にてターゲット面にてJIS Z 2244に準拠してマイクロビッカース硬さ試験機にて測定を行った。得られた6箇所の値を平均して、そのターゲットの平均硬さとした。
【0055】
[4]スパッタリング特性
得られた平板から、幅630×長710をサンプリングし、上下面を面削・研磨を実施して厚さ10mmのスパッタリングターゲットを作成した。ターゲット面の粗さの影響を除外するため、粗さは全て最大粗さRaを0.5〜0.8μmに研磨して揃えた。DCマグネトロンスパッタリング装置にて、膜厚0.7mmの日本電気硝子社製OA−10ガラス基板にスパッタリングを実施し0.3μm膜厚の銅配線を作成した。スパッタリング条件はArガス圧力を0.4Pa、放電電力を12W/cm
2とした。その後真空中にて300℃、30minの熱処理を行った。熱処理後の銅配線の膜厚を10点測定した。測定位置は得られたターゲット材の全面に亘るように、基盤の中心を基準として、300mm四方おきに9点、基板の中心を2点測定した。同じ板から切出したターゲット材9枚の合計90点の総データにおいて最大膜厚および最小膜厚のレンジが±7%になった板を「良」、それ以上のバラつきが存在したものを「不良」とした。
【0056】
[5]異常放電発生の頻度
異常放電の頻度は、スパッタリングを10バッチ当たり、15回以下の発生を良、16回より多く発生した場合を不可とした。異常放電はアークカウンターにより観察した(アーキングが発生した回数をカウントした)。
【0057】
結果を表1に併せて示す。本発明例は、いずれにおいても異常放電が少なく、良好なスパッタリング特性を呈している。比較例No.9は不純物量が多いため、スパッタリング特性が不良となった。比較例No.10、11、13、および16は結晶粒径の規定が、比較例No.12、13は欠陥の規定が、比較例No.15は、結晶粒径と硬さの規定が、比較例No.17は硬さの規定が外れたため、異常放電多い、又は、スパッタリング特性が劣化した。比較例No.18は硬さが低すぎて、バッキングプレートに接合するときに、ゆがんだため、評価できなかった。
【0058】
【表1】