【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の実施例および比較例における分析および評価は次のようにして行った。
【0050】
(1)粉末X線回折パターンの測定
粉末X線回折装置を用いて、回折角(2θ)=5〜50°の範囲を走査速度1°/分で走査し、対称反射法で測定した。分析条件の詳細を以下に示す。
<分析条件>
装置:株式会社リガク製RINT2400
X線源:CuKα(λ=1.5418Å) 40kV 200mA
ゴニオメーター:縦型ゴニオメーター
検出器:シンチレーションカウンター
ステップ幅:0.02°
スリット:発散スリット=0.5°
受光スリット=0.15mm
散乱スリット=0.5°
【0051】
(2)吸脱着等温線の作成
ガス吸着量測定装置を用いて容量法(JIS Z8831−2に準拠)によりガス吸着量の測定を行い、吸脱着等温線を作成した。このとき、測定に先立って試料を373K、50Paで8時間乾燥し、吸着水などを除去した。測定条件の詳細を以下に示す。
<分析条件>
装置:日本ベル株式会社製BELSORP−18PLUS
平衡待ち時間:500秒
【0052】
<合成例1>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物2.81g(9.5mmol)、2−ニトロ−1,4−ベンゼンジカルボン酸2.00g(9.5mmol)及び2,6−ジ(4−ピリジル)−ベンゾ[1,2−c:4,5−c’]ジピロール−1,3,5,7(2H,6H)−テトロン1.75g(4.7mmol)を容量比でN,N−ジメチルホルムアミド:エタノール=1:1からなるN,N−ジメチルホルムアミドとエタノールの混合溶媒800mLに溶解させ、363Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体4.13g(収率95%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを
図2に示す。
【0053】
<合成例2>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物2.81g(9.5mmol)、1,4−ベンゼンジカルボン酸1.57g(9.5mmol)及び2,6−ジ(4−ピリジル)−ベンゾ[1,2−c:4,5−c’]ジピロール−1,3,5,7(2H,6H)−テトロン1.75g(4.7mmol)を容量比でN,N−ジメチルホルムアミド:エタノール=1:1からなるN,N−ジメチルホルムアミドとエタノールの混合溶媒800mLに溶解させ、363Kで48時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体3.72g(収率95%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを
図3に示す。
【0054】
<比較合成例1>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物5.03g(17mmol)、2−ニトロ−1,4−ベンゼンジカルボン酸3.57g(17mmol)及びトランス−1,2−ビス(4−ピリジル)エテン1.55g(8.5mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド690mLに溶解させ、393Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、エタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体4.05g(収率65%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを
図4に示す。
【0055】
<比較合成例2>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物2.81g(9.5mmol)、2−ニトロ−1,4−ベンゼンジカルボン酸2.00g(9.5mmol)及び4,4’−ビピリジル0.739g(4.7mmol)を容量比でN,N−ジメチルホルムアミド:エタノール=1:1からなるN,N−ジメチルホルムアミドとエタノールの混合溶媒800mLに溶解させ、363Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体2.89g(収率87%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを
図5に示す。
【0056】
<比較合成例3>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物2.81g(9.5mmol)、1,4−ベンゼンジカルボン酸1.57g(9.5mmol)及び4,4’−ビピリジル0.739g(4.7mmol)を容量比でN,N−ジメチルホルムアミド:エタノール=1:1からなるN,N−ジメチルホルムアミドとエタノールの混合溶媒800mLに溶解させ、363Kで48時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。その後、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体2.75g(収率95%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを
図6に示す。
【0057】
<比較合成例4>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物1.78g(6.0mmol)、2−ニトロ−1,4−ベンゼンジカルボン酸1.27g(6.0mmol)及びN,N’−ジ(4−ピリジル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミド1.26g(3.0mmol)を容量比でN,N−ジメチルホルムアミド:エタノール=1:1からなるN,N−ジメチルホルムアミドとエタノールの混合溶媒540mLに溶解させ、363Kで24時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体2.66g(収率91%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを
図7に示す。
【0058】
<比較合成例5>
窒素雰囲気下、硝酸亜鉛六水和物5.35g(18mmol)、1,4−ベンゼンジカルボン酸0.598g(3.6mmol)及びN,N’−ジ(4−ピリジル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミド1.51g(3.6mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド1800mLに溶解させ、353Kで72時間攪拌した。析出した金属錯体を吸引濾過により回収した後、メタノールで3回洗浄を行った。続いて、373K、50Paで8時間乾燥し、目的の金属錯体0.648g(収率41%)を得た。得られた金属錯体の粉末X線回折パターンを
図8に示す。
【0059】
<実施例1>
合成例1で得た金属錯体について、195Kにおけるエタンの吸着量を容量法により測定し、吸着等温線を作成した。結果を
図9に示す。
【0060】
<比較例1>
比較合成例1で得た金属錯体について、195Kにおけるエタンの吸着量を容量法により測定し、吸着等温線を作成した。結果を
図9に示す。
【0061】
図9より、本発明の金属錯体はエタンの吸着量が多いので、エタンの吸着材として優れていることがわかる。
【0062】
<実施例2>
合成例1で得た金属錯体について、195Kにおける二酸化炭素の吸脱着量を容量法により測定し、吸脱着等温線を作成した。結果を
図10に示す。
【0063】
<比較例2>
比較合成例2で得た金属錯体について、195Kにおける二酸化炭素の吸脱着量を容量法により測定し、吸脱着等温線を作成した。結果を
図10に示す。
【0064】
図10より、本発明の金属錯体は二酸化炭素の有効吸着量が多いので、二酸化炭素の吸蔵材として優れていることがわかる。
【0065】
<実施例3>
合成例1で得た金属錯体について、195Kにおける二酸化炭素とエチレンの吸脱着量を容量法により測定し、吸脱着等温線を作成した。結果を
図11に示す。また、10kPa、50kPa及び90kPaでの二酸化炭素とエチレンの吸着量比を表1に示す。
【0066】
<実施例4>
合成例2で得た金属錯体について、195Kにおける二酸化炭素とエチレンの吸脱着量を容量法により測定し、吸脱着等温線を作成した。結果を
図12に示す。また、10kPa、50kPa及び90kPaでの二酸化炭素とエチレンの吸着量比を表1に示す。
【0067】
<比較例3>
比較合成例2で得た金属錯体について、195Kにおける二酸化炭素とエチレンの吸脱着量を容量法により測定し、吸脱着等温線を作成した。結果を
図13に示す。また、10kPa、50kPa及び90kPaでの二酸化炭素とエチレンの吸着量比を表1に示す。
【0068】
<比較例4>
比較合成例3で得た金属錯体について、195Kにおける二酸化炭素とエチレンの吸脱着量を容量法により測定し、吸脱着等温線を作成した。結果を
図14に示す。また、10kPa、50kPa及び90kPaでの二酸化炭素とエチレンの吸着量比を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
表1より、本発明の金属錯体はエチレンに対する二酸化炭素の吸着量比が大きく、高い二酸化炭素選択吸着能を有するので、エチレンと二酸化炭素の分離材として優れていることがわかる。
【0071】
<実施例5>
合成例1で得た金属錯体について、195Kにおける二酸化炭素と窒素の吸脱着量を容量法により測定し、吸脱着等温線を作成した。結果を
図15に示す。また、10kPa、50kPa及び90kPaにおける二酸化炭素と窒素の吸着量比を表2に示す。
【0072】
<実施例6>
合成例2で得た金属錯体について、195Kにおける二酸化炭素と窒素の吸脱着量を容量法により測定し、吸脱着等温線を作成した。結果を
図16に示す。また、10kPa、50kPa及び90kPaにおける二酸化炭素と窒素の吸着量比を表2に示す。
【0073】
<比較例5>
比較合成例4で得た金属錯体について、195Kにおける二酸化炭素と窒素の吸脱着量を容量法により測定し、吸脱着等温線を作成した。結果を
図17に示す。また、10kPa、50kPa及び90kPaにおける二酸化炭素と窒素の吸着量比を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
表2より、本発明の金属錯体は窒素に対する二酸化炭素の吸着量比が大きく、高い二酸化炭素選択吸着能を有するので、窒素と二酸化炭素の分離材として優れていることがわかる。
【0076】
<実施例7>
合成例1で得た金属錯体について、195Kにおける二酸化炭素とメタンの吸脱着量を容量法により測定し、吸脱着等温線を作成した。結果を
図18に示す。また、10kPa、50kPa及び90kPaにおける二酸化炭素とメタンの吸着量比を表3に示す。
【0077】
<実施例8>
合成例2で得た金属錯体について、195Kにおける二酸化炭素とメタンの吸脱着量を容量法により測定し、吸脱着等温線を作成した。結果を
図19に示す。また、10kPa、50kPa及び90kPaにおける二酸化炭素とメタンの吸着量比を表3に示す。
【0078】
<比較例6>
比較合成例4で得た金属錯体について、195Kにおける二酸化炭素とメタンの吸脱着量を容量法により測定し、吸脱着等温線を作成した。結果を
図20に示す。また、10kPa、50kPa及び90kPaにおける二酸化炭素とメタンの吸着量比を表3に示す。
【0079】
<比較例7>
比較合成例5で得た金属錯体について、195Kにおける二酸化炭素とメタンの吸脱着量を容量法により測定し、吸脱着等温線を作成した。結果を
図21に示す。また、10kPa、50kPa及び90kPaにおける二酸化炭素とメタンの吸着量比を表3に示す。
【0080】
【表3】
【0081】
表3より、本発明の金属錯体はメタンに対する二酸化炭素の吸着量比が大きく、高い二酸化炭素選択吸着能を有するので、メタンと二酸化炭素の分離材として優れていることがわかる。
【0082】
実施例1〜8及び比較例1〜7の結果より、本発明の構成要件を満たす合成例1〜2で得た金属錯体は、本発明の構成要件を満たさない比較合成例1〜5で得た金属錯体に比べ、各種ガスの吸着性能、吸蔵性能及び分離性能に優れていることは明らかである。このような差が生じる理由は必ずしも定かではないが、本発明の金属錯体の構成配位子を用いることにより、ガス分子と細孔表面との相互作用が大きくなるため、優れたガス吸着性能、優れたガス吸蔵性能及びガス分離性能を発現するためであると考えられる。