(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程(b)で冷却媒体により吸収された熱が、少なくとも部分的に、工程(a)の反応における少なくとも一つの反応物流への間接的熱移動に使用される請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
用いるアミンが、6〜18個の炭素原子を有する少なくとも一種の芳香族ジアミンであるか、2〜18個の炭素原子を有する少なくとも一種の(環式)脂肪族ジアミンである請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一つの好ましい実施様態を、
図1に模式的に示す。
【0012】
本発明のイソシアネートの製造方法は、少なくとも以下の工程を含む:
(a)反応ゾーン中での少なくとも一種のアミンとホスゲンとの気相反応と、
(b)続く間接冷却による冷却ゾーン中での反応ガスの冷却、
ただし、少なくとも該冷却ゾーン中の最も温度が高い領域において、反応ガスの熱を吸収する冷却媒体が生成物に対して交流で流される。
【0013】
以下、本発明の方法の各工程を説明する。
【0014】
工程(a)
「反応ゾーン」は、反応器の内部で工程(a)の反応が進行する領域を意味するものとする。化学量論的また反応速度論的に出発化合物と中間体の変換が実質的に完了している領域または点は、(空間的)反応ゾーンの末端と(反応のための)変換の終了を示す。本プロセスで製造しようとするイソシアネートまたは相当するカルバモイル塩化物の少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、特に少なくとも99重量%の生成が終了している時には、出発化合物の変換は実質的に完了している。
【0015】
本発明の方法においては、気相でホスゲンを少なくとも一種のアミンと反応させる。当業界の熟練者にはイソシアネートの形成が中間体を経由して起こることは公知である。中間体は、例えばモノアミノモノカルバモイル塩化物や、ジカルバモイル塩化物、ジアミンから生成するモノアミノモノイソシアネートとモノイソシアナトモノカルバモイル塩化物、アミノ化合物の塩酸塩である。
【0016】
「気相での変換」とは、反応物と中間体がガス状で相互に反応し、これらが、反応中で、反応ゾーンを通過中に、少なくとも95重量%が、好ましくは少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、さらに好ましくは少なくとも99.5重量%、特に少なくとも99.9重量%が気相で存在していることを意味するものとする。
【0017】
また、気相でのアミンとホスゲンの反応(工程a)の具体的実施方法に関して、本発明は特に制限を受けない。工程(a)のアミンとホスゲンの気相反応の実施方法は、当業界の熟練者には広く知られており、例えばEP−A2062876や同文書中に引用の文書に記載されている。従って本発明は、既知の気相でのアミンのホスゲン化によるイソシアネートの製造方法に取り入れることができる。
【0018】
工程(a)の本発明の変換の好ましい実施方法が、例えばWO2009/027232、WO2009/037179、WO2008/086922、EP−A09167604.9、WO2010/010135、WO2009/027234に記載されている。なお、それぞれの内容を本発明の引用として採用するが、これらの文書中に記載の冷却をいずれの場合も本発明の冷却(b)で置き換えるものとする。
【0019】
アミン、特にジアミンとホスゲンとの反応は、化学量論的に過剰な状態で、具体的にはアミンがホスゲンに対して化学量論的に欠乏している状態で実施することが好ましい。通常、ホスゲンの反応性アミノ基に対するモル比は1.1:1〜20:1であり、好ましくは1.2:1〜10:1である。
【0020】
アミンを含む反応物流は、所望の目標イソシアネート生成物に対応したアミンを含む。本発明の方法のためには、相当するイソシアネートを与える反応に用いられるアミンが、ほとんど分解することなくなく、即ち少なくとも95重量%が分解することなく、好ましくは少なくとも98%が、より好ましくは少なくとも99%が、さらに好ましくは少なくとも99.5%が、特に少なくとも99.8%が、特に少なくとも99.9%が、さらには少なくとも99.95重量%が分解することなく気相に変換できるものであってよい。脂肪族、脂環式または芳香族のアミンを使用でき、好ましくは脂肪族または芳香族アミンを使用できる。ジアミンがアミンとして好ましい。したがって本発明の方法で製造可能なイソシアネートは、芳香族、脂環式または脂肪族イソシアネートであり、好ましくはジイソシアネートである。
【0021】
6〜18個の炭素原子を持つ芳香族炭化水素と2〜18個の炭素原子をもつ脂肪族または脂環式炭化水素のアミン、特にジアミンが、特に好ましい。好ましい(環式)脂肪族アミンは、以下に詳細に詳述する(環式)脂肪族イソシアネートに由来するものである。本明細書において、(環式)脂肪族イソシアネートは、脂環式及び/又は脂肪族イソシアネートを短縮した用語である。
【0022】
以下、製造の好ましいイソシアネートを説明する。本発明で好ましく用いられるアミンは、以下に説明するイソシアネートに由来するものであり、そのイソシアネート基を1級アミン基で置換したものである。
【0023】
脂環式イソシアネートは、少なくとも一個の脂肪族環系を持つものである。
【0024】
脂肪族イソシアネートは、直鎖又は分岐鎖に結合したイソシアネート基のみを持つものである。これらは、イソシアネート基に結合していないなら芳香族環系を含んでいてもよい。
【0025】
芳香族イソシアネートは、少なくとも一個の芳香族環系に結合した少なくとも一個のイソシアネート基を持つものである。
【0026】
芳香族イソシアネートは6〜20個の炭素原子をもつことが好ましい。特に好ましいのは、モノマー状のメチレンジ(フェニルイソシアネート)、(ジイソシアナトジフェニルメタンとも呼ばれる、略語:MDI)であり、特に4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン及び/又は2,2’−ジイソシアナトジフェニルメタンであり、また2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)とナフチルジイソシアネート(NDI)である。
【0027】
好ましい(環式)脂肪族のジイソシアネートは、脂肪族のイソシアネート(例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート(1,5−ジイソシアナトペンタン)、ヘキサメチレンジイソシアネート(1,6−ジイソシアナトヘキサン)、2−メチルペンタン1,5−ジイソシアネート、1,8−オクタメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート、1,14−テトラデカメチレンジイソシアネート)、リシンジイソシアネートの誘導体、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリメチルヘキサンジイソシアネートまたはテトラメチルヘキサンジイソシアネート、また3(または4)、8(または9)−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロ−[5.2.1.0
2,6]デカン異性体混合物、脂環式ジイソシアネート(例えば、1,4−、1,3−または1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、4,4’−または2,4’−ジ(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,4−または2,6−ジイソシアナト−1−メチルシクロヘキサンである。
【0028】
特に好ましいのは、1,6−ジイソシアナトヘキサンと、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジ(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、トリレンジイソシアネート異性体混合物である。
【0029】
本発明の方法により、原理的にはジイソシアネート以外にモノイソシアネートも得ることができるし、平均で2個を越えるイソシアネート基をもつ高級イソシアネートを得ることもできる。本目的のための適当な例は、トリイソシアナトノナンや2,4,6−トリイソシアナトトルエン、トリフェニルメタントリイソシアネートまたは2,4,4’−トリイソシアナトジフェニルエーテルなどのトリイソシアネート、または例えば適当なアニリン/ホルムアルデヒド縮合物のホスゲン化で得られるジイソシアネートとトリイソシアネートとさらに高級なポリイソシアネートの混合物、メチレンブリッジをもつポリフェニルポリイソシアネートである。
【0030】
好ましいモノイソシアネートはフェニルイソシアネートである。しかし、ジイソシアネートの製造が好ましい。本発明で特に好ましいのは、トリレンジイソシアネート(TDI)の製造であり、特に2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネートの製造である。
【0031】
気相ホスゲン化の場合、反応中に生成する全ての化合物が、即ち反応物(アミンとホスゲン)と中間体(特に、中間体として形成されるモノ−及びジカルバモイル塩化物)、最終生成物(イソシアネート、塩化水素)、投入されるいずれかの不活性媒体が、反応条件下で上記の少なくとも一つの反応ゾーン内で気相に留まるようにする。これらの反応物、不活性物質、または反応物に不活性なガスの混合物は、反応ゾーンの上流で完全に気相となって存在していることが好ましい。
【0032】
このことは、このガス流がまったく未気化のアミン液滴を含まず、気化混合ノズルから反応ゾーンの最後までの経路での凝縮が適当な方法で抑えられていることを意味する。
【0033】
液滴形成は、特に流体を過熱させることで防止でき、また当業界の熟練者には既知の、冷所での凝縮を防止するための技術的方策で防止できる。反応物または反応物に不活性な混合ガスは、反応ゾーンの上流ですでに過熱されていることがより好ましい。なお、「過熱」は、反応物混合物が特定圧力での沸点を越える温度に加熱されることを意味する。この過熱は、反応ゾーンに指定される範囲内に含まれる温度にまで行われる。
【0034】
反応物、反応中に生成する中間体または目的生成物が、気相から、例えば反応器壁面または他の装置部品上に分離すると、これらの付着物が、熱伝導やこれらの部品の流動を悪化させることがある。
【0035】
工程(a)の初期では、アミンの温度は、200〜450℃の範囲であることが好ましい。加えるアミンの圧力は、0.05〜5絶対barの範囲であることが好ましい。加えるホスゲンの温度は、250〜450℃の範囲であることが好ましい。このためにホスゲンは、通常当業界の熟練者には既知の方法で添加前に加熱される。二つの反応物流、即ちアミン含有反応物流とホスゲン含有反応物流を、約300〜450℃の範囲の温度にまで前加熱し、工程(a)ではこの温度で使用することがより好ましい。
【0036】
工程(a)の前に少なくとも一つのガス状ホスゲン含有流を少なくとも一つのガス状アミン含有流と混合し、次いでこの混合物を工程(a)で、少なくとも一つの反応ゾーン中で200〜600℃の温度で変換することが好ましい。
【0037】
このアミン含有反応物流を多段で反応温度にまで加熱することができる。いろいろな熱源を使用できる。使用可能な熱源には、水蒸気や電気加熱、燃焼ガスなどの通常の熱源が含まれる。また、工程(b)中で冷却媒体により吸収された熱は、少なくとも部分的に、工程(a)での反応に使用される少なくとも一つの反応物流への、特にアミン含有反応物流への間接的熱移動に利用できることが好ましい。
【0038】
アミン含有反応物流への熱移動は、原理的には間接的熱伝達で行われる。必要なら、熱源とアミン含有反応物流の間に別の熱媒体回路が設けられる。適当な熱媒体は溶融塩または他の高温熱媒体である。
【0039】
アミン含有反応物流の加熱は、実質的にアミン含有反応物流の沸点への加熱と、その気化、所望の反応ゾーン入口温度への過熱を含んでいる。これらの三工程のそれぞれは、同一あるいは異なる熱源をもつ一台以上の装置で実施可能である。
【0040】
ある好ましい実施様態においては、一台以上の装置中で、アミン含有反応物流がスチームによりスチームの凝縮温度あるいはスチーム入口温度の近くにまで加熱される。所望の反応ゾーン入口温度にまで上げるのに不足する熱、即ち過熱と必要なら気化(または気化温度までの加熱)に必要な熱は、工程(b)で冷却媒体により吸収された熱で供給され、必要なら電気加熱または燃焼ガスによる熱で補充されることが好ましい。これは単一装置で実施しても複数装置で実施してもよい。
【0041】
反応物流の予熱に役立つ装置は当業界の熟練者には公知である。予熱あるいは過熱のために、特に管束熱交換器やプレート式熱交換器、また当分野の熟練者には既知の類似の熱交換器を使用することができる。
【0042】
気化は、通常のエバボレータ型装置で、例えば循環型蒸発器、流下液膜式蒸発器、上昇液膜式蒸発器、薄膜蒸発器、ミリ蒸発器またはマイクロ蒸発器で実施できる。分解を避けるために、気化を低圧で、したがって低沸点で行うことができる。必要となる反応圧力への加圧は、適当なコンプレッサーにより行うことができ、あるいは混合装置としてエジェクタノズルを使用して行うことができる。
【0043】
アミン含有反応物に対して述べたことが、実質的にホスゲン含有反応物流にも当てはまる。しかしながら、与えられるホスゲン流がすでにガス状であって気化が不要であることもありうる。いくつかの状況では、液体のホスゲン含有反応物流が、反応ゾーンでは歓迎されない比較的高沸点の溶媒を一部含んでいることがある。この場合には、この反応物流を部分的に気化させることができる。その場合、溶媒が除かれたガス流が、必要ならさらに過熱されているガス流が、反応のための反応物流となる。残りの溶媒濃縮流は適当な後処理に送ることができる。
【0044】
ホスゲン含有反応物流とアミン含有反応物流は、それぞれ不活性ガスで希釈できる。即ち他の不活性媒体を、本発明のホスゲン流及び/又はアミン流に添加できる。この不活性媒体は、反応槽内で反応温度で実質的にガス状であり、反応中に生成する化合物に反応せず、反応条件下で安定な媒体である。反応条件下で少なくとも95重量%が分解も反応もしない、好ましくは少なくとも98%が、より好ましくは少なくとも99%が、さらに好ましくは少なくとも99.5%が、特に少なくとも99.9重量%が分解も反応もしない不活性媒体が好ましい。
【0045】
この不活性媒体は、一般的には反応前にアミン及び/又はホスゲンと混合されてもよいし、循環ホスゲンの一部となっていてもよいが、反応物流とは別に、例えば反応ゾーンに直接投入されてもよい。例えば、窒素、二酸化炭素または一酸化炭素、ヘリウムまたはアルゴンなどの希ガス、トルエンまたはキシレンなどの芳香族化合物、またはクロロベンゼンまたはジクロロベンゼンなどの塩素化芳香族化合物を使用することができる。窒素及び/又はクロロベンゼンを不活性媒体として使用することが好ましい。
【0046】
一般に、この不活性媒体は、アミン及び/又はホスゲンに対する不活性媒体のガス体積比率が0.0001〜30、好ましくは0.001〜15、より好ましくは0.001〜5となるような量で使用される。
【0047】
ホスゲン含有流による反応槽へのホスゲンの供給も、単一のホスゲン含有流に代えて、複数のホスゲンを含有する支流を供給して行うことができる。このような場合には、ホスゲン含有支流が相まってホスゲン含有全体流となる。
【0048】
ある可能な実施様態では、用いるホスゲン及び/又は本プロセスにおいて循環するホスゲンが、反応ゾーンに直接供給されるのでなく、まずホスゲンの精製にまわされる。特に微量の分子状塩素を除くことが推奨される。従って、ホスゲン合成で得られたホスゲンが、微量の分子状塩素(Cl
2)を例えば5ppmより多量に含む場合、好ましくは3ppmより、より好ましくは1ppmより、さらに好ましくは0.5ppmより、特に0.1ppmより多量に含む場合に、この実施様態が特に好ましい。
【0049】
反応物を、反応流に高せん断が加わるような混合装置中で混合することが好ましい。用いる混合装置は、混合ノズルのようなスタチックミキサーであることが好ましく、これを本発明の方法の工程(a)の上流に位置させる。混合ノズルの使用が特に好ましい。
【0050】
この混合は、いろいろな方法で実施でき、特に、EP−A699657に記載のようにして、EP−A1319655の欄1行54〜欄2行24と欄4行16〜40、EP−A1275640の欄3行27〜欄4行5、EP−A1362847の欄2行19〜欄3行51と欄4行40〜欄5行12、及びWO2010/010135に記載のようにして実施できる。なお、本明細書に関してこれら文献を引用として採用する。
【0051】
混合装置内での混合の後、ホスゲンとアミンと必要なら不活性媒体を含むガス状混合物が、反応ゾーンをもつ反応器に送られる。
【0052】
「反応器」は、反応ゾーンをもつ工業用装置を意味するものとする。工程(a)中で有用な反応器は、先行技術から知られている非触媒的単一相ガス反応、好ましくは連続的非触媒的単一相ガス反応に好適であり、必要な圧力に耐える既存の反応器である。反応混合物との接触に適当な材料は、例えば、スチール、特に合金スチールやタンタル、ニッケル、ニッケル合金、銀または銅などの金属、ガラス、セラミック、エナメル、またはこれらの均一あるいは不均一混合物である。スチール製反応器の使用が好ましい。反応器の壁面は平滑であっても凹凸があってもよい。適当な凹凸は、例えば溝や波形である。このような反応器のデザインは既知である。
【0053】
好適な反応器の例が、EP−B1289840の欄3行49〜欄4行25に、EP−B1593334、WO2004/026813の頁3行24〜頁6行10、WO03/045900の頁3行34〜頁6行15、EP−A11275639の欄4行17−欄5行17、EP−B1570799の欄2行1〜欄3行42に記載されている。なお、本明細書に関してこれらの文献を引用として採用する。円管状反応器の使用が好ましい。
【0054】
また、実質的に立方体状の反応槽を、好ましくはプレート状反応器またはプレート状反応槽を使用することもできる。特に好ましいプレート状反応器の、幅の高さに対する比率は、少なくとも2:1、好ましくは少なくとも3:1、より好ましくは少なくとも5:1、特に少なくとも10:1である。この幅の高さに対する比率の上限は、反応槽の望ましい容量により決まり、原理的には無限である。工業的に利用可能な反応槽は、幅/高さ比が最大で5000:1、好ましくは1000:1のものであることが分っている。
【0055】
反応ゾーン中でのホスゲンとアミンとの反応は、絶対圧力が少なくとも0.1barで最大20barで、好ましくは0.5bar〜10bar、より好ましくは0.7bar〜5barで行われる。
【0056】
ある好ましい実施様態では、この反応器が複数の反応器をもつ。一つの可能な実施様態では、この混合装置が独立した装置でなくでもよい。これに代えて、混合装置を反応器内部に取り付けることも好ましいであろう。混合装置と反応器とからなる一体型装置の一例は、フランジで取り付けたノズルをもつ管形反応器である。
【0057】
本発明の工程(a)において、反応ゾーン内の温度は、反応槽中に存在する分圧条件下で、用いるジアミンの塩酸塩の解離温度を越える温度となるように選ばれることが好ましい。用いるアミンと設定圧力により、好ましい反応槽中の温度は、通常200℃より上であり、好ましくは260℃より上、より好ましくは300℃より上である。一般にこの温度は、高くても600℃であり、好ましくは高くても570℃である。
【0058】
本発明の工程(a)での反応混合物の平均接触時間は、一般的には0.001秒〜5秒間であり、好ましくは0.01秒〜4秒間、より好ましくは0.02秒〜3秒間である。「平均接触時間」は、反応物の混合の開始から、これらが反応ゾーンを離れ冷却ゾーンに入るまでの時間を意味するものとする。ある好ましい実施様態においては、本発明の方法中の流れは、ボーデンシュタイン数が10より大きいこと、好ましくは100より大きいこと、より好ましくは500より大きいことで特徴づけられる。
【0059】
ある好ましい実施様態においては、反応器の大きさと流量が、反応混合物に乱流が存在するように、即ちレイノルズ数が少なくとも2300である、好ましくは少なくとも2700である流れが存在するように選ばれる。なお、このレイノルズ数は反応槽の水力直径により決まる値である。
【0060】
ガス状反応物は、この反応槽を流速3〜400m/秒の速度で、好ましくは10〜250m/秒の速度で通過することが好ましい。この乱流により、EP−A570799に記載のように、小さな標準偏差、通常6%以内の標準偏差の狭い滞留時間と、良好な混合が得られる。EP−A593334に記載されている狭窄のような方策は、さらに閉塞を起こしやすいため、不必要である。
【0061】
大プラント容積の生産プラントを建設する場合、複数の反応器管を平行に連結することができる。対応する反応器のタイプは当業界の熟練者には公知である。反応器中の反応領域、即ち反応ゾーンの温度は、その外表面を経由して制御可能であり、反応を等温的に実施することができる。しかしながらこの変換を断熱的に行うこともできる。断熱反応方式の場合、環境との熱交換はない。これは、特に反応ゾーンまたは反応器管を断熱することで実施可能である。この変換は断熱的に進むことが好ましい。しかしながら、理想的に断熱的な中間体ステージや理想的に等温反応的な中間体ステージも可能であり、この場合には、環境との熱交換がいくらかあるように、あるいは必要なら熱損失を補償するために微量の熱が加えられるように上述の絶縁をデザインする。
【0062】
本発明の方法の工程(a)の変換は、単一ステージで行うことが好ましい。これは、反応物の混合と変換が、所望の温度範囲内で単一工程で進むことを意味するものとする。また本発明の方法は、連続的に行うことが好ましい。
【0063】
工程(b)
本発明によれば、次いで工程(b)で、反応ガスを冷却ゾーンで間接冷却により冷却する。その際、反応ガスの熱を吸収する冷却媒体は、少なくとも該冷却ゾーン中の最も高温の領域において生成物流に対して向流に流される。
【0064】
工程(b)の「冷却ゾーン」は、反応ガスが反応ゾーンを離れる温度からこの温度より低い温度にまで冷却されるゾーンをいう。この冷却ゾーンは適当な冷却装置内にあり、これは熱交換器としての機能を持っている。
【0065】
「生成物流」は、工程(a)で生成するガス状生成物流をいう。後者は、反応ガスとよばれる。
【0066】
したがって、工程(b)では生成物流が冷却される。生成物流の方向が生成物流動方向である。冷却ゾーン中の最も高温の領域は、生成物流の温度に関係する。生成物流動方向は、全体の冷却ゾーンにわたり同一または一定であることが好ましく、冷却を行う装置の構造により発生する。好ましい管状のデザインの冷却ゾーンの場合、生成物流動方向は一本または複数の管の方向で決まる。例えば管のたわみの結果として、この生成物流動方向が冷却ゾーン中で変化することもある。
【0067】
反応ガスから放出される熱は、熱交換器中での間接冷却により、即ち伝熱媒体との直接の接触なしに、伝熱媒体に移動させられる。この伝熱媒体を、これ以降冷却媒体とよぶ。従って、この冷却媒体は、特定の温度より低い流体、好ましくは液体(冷却液体)である。
【0068】
連続的に熱を除去するには、この冷却媒体を連続的に動かす必要がある。このため、生成物流に対して冷却媒体を連続的に移動させる必要がでてくる。原理的には、冷却媒体の全体あるいは一部を、生成物流とは異なる方向にあるいは生成物流と同じ方向に、例えば生成物流に併流または向流で流すことができる。
【0069】
「向流」は、本発明において、向流に流す冷却媒体が、生成物流の方向の第一の点で温度T
K(x)をもち、生成物流の下流、即ち生成物流の流れ方向にある第二の点x*で温度T
K(x*)をもち、T
K(x*)がT
K(x)より小さいことを意味する。生成物流T
Pの温度にも同じことが言えるため、「向流」は、冷却媒体の温度T
Kが生成物流動方向で低下することを意味する。
【0070】
原理的には、冷却媒体の流れを一本以上の支流に分割し、上記の流れ方向の一つ以上を実施することもできる。
【0071】
しかしながら本発明によれば、少なくとも該冷却ゾーン中の最も高温の領域において、冷却媒体、即ち冷却媒体の少なくとも一本の支流が、生成物流に向流に流される。好ましくは、冷却媒体の全体の流れが、工程(b)で、少なくとも該冷却ゾーン中の最も高温の領域において生成物流に向流方向に流される。しかしながら、工程(b)の結果としての温度低下の少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%に関与する領域では、少なくとも一本の支流を、特に全ての冷却媒体を、生成物流に対して向流方向に流すことが好ましい。工程(b)の冷却ゾーン全体にわたって冷却媒体の流れを生成物流の向流方向とすることが特に好ましい。
【0072】
向流方向での流動は、いろいろな方法で実施可能であり、例えば冷却媒体流を生成物流に平行で向流方向に送る平行流方法、あるいは生成物流と冷却媒体流とを特定の点で交叉させる交差流方式で実施可能である。あるいは、冷却媒体流を、生成物流の周りをらせん状に流してもよい。上記の方法の中間段階も考えられる。
【0073】
第一の好ましい実施様態においては、冷却媒体が、生成物流に平行で向流方向に流される(角度:180°)。これは、特に生成物流の流れる管の周りを冷却媒体の流れが覆うようにして
行われる。
【0074】
第二の好ましい実施様態においては、生成物流に沿ってらせん状に冷却媒体が向流方向に流れるように、冷却媒体が流される。
【0075】
第三の特に好ましい実施様態においては、冷却媒体がクロスフローで流される。「クロスフロー」は、少なくとも2点で冷却媒体流が生成物流に交叉し、全体としての冷却媒体の流動方向が、冷却媒体が生成物流の向流方向に流れるように選ばれているものをいうこととする。この実施様態は、特に、冷却媒体を第一の接点で生成物流が移動する管(生成物管)に交叉させ、その後、この冷却媒体の方向を曲げて、冷却流に対して下流にあり生成物流に対して上流にある生成物管を何度も交叉するようにして行うことができる。接触点での、生成物流動方向に対する冷却流の方向の角度は、90°であっても、90°でなくてもよく、特に60°〜150°、好ましくは70°〜140°である。冷却流は、生成物管の領域で、即ち生成物管の所あるいは近傍で曲がっていても、あるいはこの領域の外側で曲がっていてもよい。工程(b)では管束伝熱装置内で反応ガスを冷却することが極めて好ましい。管束伝熱装置は、当業界の熟練者には管束熱交換器としてよく知られており、これにより上記の冷却媒体のクロスフローが可能となる。「管束伝熱装置」と「管束熱交換器」は、本発明において同義に理解される。
【0076】
本発明の工程(b)の目的は、生成物温度を、副生成物または変換生成物の形成を避けることのできる温度まで、充分速く低下させることである。したがって熱交換器は、十分に迅速に所望の最終温度または中間温度にまで冷却できることが必要である。同時に、この向流原理を実施することにより、反応ガスの冷却ゾーンへの入口でのまた他の冷却ゾーン中での反応ガス温度と冷却媒体温度との間の温度差を低下させたり、なくしたりすることができる。
【0077】
冷却ゾーン中での冷却は、比伝熱面積が反応ガス(1m
3)に対して少なくとも300m
2/m
3である熱交換器を用いて行うことが好ましい。この冷却ゾーン中の比伝熱面積は、より好ましくは反応ガス(1m
3)に対して少なくとも350m
2/m
3であり、特に反応ガス(1m
3)に対して少なくとも400m
2/m
3、最も好ましくは反応ガス(1m
3)に対して少なくとも450m
2/m
3である。構造のため引き起こされる比伝熱面積の上限は、例えば、最大で反応ガス(1m
3)に対して5000m
2/m
3であり、特に反応ガス(1m
3)に対して4000m
2/m
3である。
【0078】
原理的には、有用な熱交換器は、向流原理の実行を可能とするものである。適当な熱交換器は、当業界の熟練者には公知である。これらは、反応ガス(1m
3)に対して少なくとも300m
2/m
3である所望の比伝熱面積を持つことが好ましい。
【0079】
適当な熱交換器は、特に管束熱交換器、プレート式熱交換器、スパイラル状熱交換器である。
【0080】
間接冷却に用いる熱交換器は管束熱交換器であることが好ましい。管束熱交換器を使用すると、好ましい比伝熱面積が得られ、本発明の向流原理が単純かつ安価で実施可能となる。
【0081】
一つの可能な実施様態においては、工程(b)の終期の温度が反応混合物の露点温度より低く、反応混合物中に存在するイソシアネートが少なくとも部分的に凝縮により液相に転換され、ホスゲンと塩化水素が実質的に完全に気相で残留する。
【0082】
従って、間接冷却が行われる熱交換器は凝縮器として設計される。従って間接冷却は、冷却ゾーンでイソシアネートが少なくとも部分的に凝縮する程度にまで行われる。他の必要な冷却は、さらに下流の冷却ステージで実施可能である(以下を参照)。あるいは、冷却されてはいるが未凝縮である工程(b)の反応ガスを、他の冷却ステージに、あるいは直接低沸点物除去用カラムに供給することもできる。
【0083】
工程(b)において、生成物流中に存在するイソシアネートといずれの高沸点物が実質的に凝縮しないような温度にまで、まず間接冷却することが好ましい。これにより、効果的に付着物の形成を防止することができる。
【0084】
工程(b)での冷却時間は、好ましくは0.01〜10秒間であり、好ましくは0.02〜5秒間、特に0.05〜3秒間である。これにより、変換生成物と副生成物の生成を効果的に防止することができる。本発明において、「冷却時間」は、生成物流を冷却ゾーンに入るときの温度から反応ガスの露点より50℃上の温度にまで冷却するのに必要な時間を意味するものとする。
【0085】
装置的な意味で、工程(b)中の冷却ゾーンはいろいろな方法で実施可能である。例えばこの冷却ゾーンを、反応ゾーンから離れた装置中に設けることができる。あるいは第二の実施形態においては、同一の装置内に反応ゾーンと共にこの冷却ゾーンを設けることもでき、これが好ましい。第二の好ましい実施様態において、この装置が管状装置(流動管あるいは管形反応器)であることが好ましい。その場合、冷却ゾーン中でのその管の内径は、反応ゾーンの直径から多くても50%、より好ましくは多くても20%異なるだけであり、特に反応ゾーンの径と同じ径である。これにより流動の乱れを防止できる。特に管束内の均一な流動が可能となり、均一冷却が起こり、このため変換生成物の生成が減少する。上記の流管は、邪魔板として働く内部構造を持たないことが好ましい。
【0086】
特に好ましい実施様態においては、間接冷却で移動する熱が少なくとも部分的に、少なくとも一つのホスゲン化用反応物流への間接熱移動に利用される。これは、工程(b)における冷却媒体の達成可能な温度レベルが高いことで可能となる。流体から、気相にある少なくとも一種のホスゲン化用反応物流への間接熱移動方法は、当業界の熟練者には公知である。このようにして、工程(b)で得られる熱を利用でき、プロセスのエネルギーコストを大きく低下させることができる。
【0087】
好適な冷媒は、原理的には、必要な温度範囲内で液体であり熱的に安定な物質である。間接冷却に溶融塩を使用することが好ましい。好ましい溶融塩は、アルカリ金属硝酸塩の溶融物、特に硝酸ナトリウム及び/又は硝酸カリウムの溶融物である。
【0088】
工程(b)での冷却の後に、他の冷却ステージが続いても、あるいは必要なら複数の他の冷却ステージが続いてもよい。
【0089】
ある好ましい実施様態においては、工程(b)での冷却の後に、少なくとも一回の他の冷却ステージ(bb)が続く。第二の(及び他の)冷却ステージにおいては、ステージ(bb)が直接冷却の場合、冷却原理が異なり、または、ステージ(bb)が間接冷却の場合、工程(b)と(bb)の具体的な冷却回路が相互に異なる。
【0090】
この好ましい実施様態においては、本発明の第一の冷却ステージ(b)において、反応ガスが第一の冷却ゾーン中で冷却され、生成物流が冷却ゾーン中で冷却媒体により間接的に冷却され、上述のように少なくとも該冷却ゾーン中の最も高温の領域中で、反応ガスの熱を吸収する冷却媒体が生成物流に対して向流で流される。次いで第二のステージ(bb)で、反応ガスが第二の冷却ゾーンでさらに冷却される。このステージ(bb)の後に、必要なら他の冷却ゾーンと冷却工程(bbb等)が続いてもよい。
【0091】
第二の冷却ステージ(bb)は、設計が第一の冷却ステージ(b)と異なっていてもよいし、同様に実施してもよい。例えば、同様に第二の冷却ステージ(bb)で間接的に冷却することができ、必要なら上述のように向流方向で冷却することができる。あるいは、ステージ(bb)で直接冷却することができ、これが好ましい。このようにして付着物の生成をさらに抑えることができる。
【0092】
上に詳述したように、工程(b)の後で生成物流が凝縮した形で存在しないことが好ましい。しかしながら工程(bb)の後では、生成物流が少なくとも部分的に凝縮した形であることが好ましい。
【0093】
特に好ましい実施様態においては、工程(bb)においてクエンチ法により冷却が行われる。クエンチ法による直接冷却は、当業界の熟練者には公知である。
【0094】
クエンチ法を実施する過程で、前冷却された反応混合物が混合装置に供給され、その中でガスの温度が冷却液体の投入により低下(クエンチ)させられる。この加工ステージの実施様態には、洗浄塔、攪拌容器、気泡塔、クエンチノズルなどが挙げられる。少なくとも一種の、好ましくは一種の不活性溶媒との接触により、生成したイソシアネートが凝縮により内部のガス状反応混合物から分離され(洗い流され)、過剰のホスゲンと塩化水素といずれかの不活性媒体は、実質的にガス状でこの後処理装置を通過する。
【0095】
このクエンチ液は、イソシアネートをよく溶解できなければならない。有機溶媒を使用することが好ましい。特にハロゲン原子で置換されていてもよい芳香族溶媒が用いられる。このような液体の例としては、トルエンやベンゼン、ニトロベンゼン、アニソール、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン(オルトまたはパラまたはその異性体混合物)、トリクロロベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン(メシチレン)、キシレン、ヘキサン、ジエチルイソフタレート(DEIP)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、これらの混合物があげられ、好ましくはモノクロロベンゼンがあげられる。
【0096】
本発明の方法のある特定の実施様態においては、噴霧投入される液体が、イソシアネートの混合物、イソシアネートと溶媒の混合物、またはイソシアネートであり、いずれの場合も、用いるクエンチ液が、低沸点物、例えば塩化水素とホスゲンの画分を含んでいてもよい。上記特定のプロセスで製造したイソシアネートを使用することが好ましい。クエンチゾーン中での温度低下で、噴霧投入されるイソシアネートとの副反応を抑えることができる。この実施様態の長所は、特に溶媒除去をなくすことができることである。
【0097】
他の好ましい実施様態においては、少なくとも一種の反応物と共に使用される不活性媒体とクエンチ法に使用される溶媒が同一化合物である。この場合、モノクロロベンゼンを使用することが極めて好ましい。
【0098】
工程(bb)では、実質的にイソシアネートとホスゲンと塩化水素とからなる反応混合物が、噴霧投入される液体と強く混合される。この混合は、反応混合物の温度が150〜250℃から100〜200℃に、好ましくは100〜160℃に低下するように、また反応混合物中に存在するイソシアネートが完全にあるいは部分的に凝縮により噴霧投入される液体液滴中に移動し、ホスゲンと塩化水素が実質的に完全に気相に残留するように行われる。
【0099】
クエンチゾーン中で液相の移動させることが好ましい、ガス状反応混合物中に存在するイソシアネートの比率は、反応混合物中に存在する全てのイソシアネートに対して好ましくは20〜100重量%であり、より好ましくは50〜99.5重量%、特に70〜99重量%である。
【0100】
クエンチゾーンで液相に移動させられる、ガス状反応混合物中に存在するホスゲンと塩化水素の比率は、一般的には25重量%未満であり、好ましくは10重量%未満である。
【0101】
本発明においてクエンチ液中へのホスゲンの吸収を低く抑えるために、このクエンチ法を低圧で、例えば1〜5barで、高温で、例えば100〜160℃で行うことが好ましい。
【0102】
不活性溶媒の温度を、アミンに対応するカルバモイル塩化物のクエンチ法媒体中の溶解温度より高く維持することが特に好ましい。
【0103】
原理的には、この加工ステージのために、吸収に適当な既知の全ての方法や装置を、例えば洗浄塔や噴霧クエンチを使用できる。このクエンチを、一段以上のステージで行ってもよいが、一段のステージで行うことが好ましい。このクエンチはさらに、用いるプロセスによって併流または向流モードで行うことができる。
【0104】
他の適当なクエンチ法は、例えばEP−A1403248、節2行39−節3行18から公知である。なお、この特許を、この開示内容に関して引用として採用する。また、クエンチ法は、WO2008/055899、WO2008/055904またはWO2005/123665に詳細に記載された内容に応じて実施できる。なお、これらの文献も引用として採用する。
【0105】
この反応混合物は、クエンチゾーンを、好ましくは上から下向きに通過する。クエンチ法ゾーンの下には、捕集容器があり、この中に液相が沈殿し、捕集され、出口から除かれて後処理される。残留する気相は、捕集容器から第二の出口と通して除かれ、同様に後処理される。
【0106】
イソシアネート中に残留する少量の副生成物は、特に更なる精留により、不活性ガスでのストリップにより、あるいは結晶化により、好ましくは精留により所望のイソシアネートから除かれる。
【0107】
後処理
工程(b)と必要なら他の冷却ステージ(bb等)の後で、イソシアネートを、必要なら工程(c)における副生成物と未反応反応物の除去のための後処理にかける。この後処理には、凝縮相中の残留するホスゲンと塩化水素の気化が含まれる。
【0108】
このイソシアネートの後処理方法は、当業界の熟練者には公知である。当業界の熟練者は、反応生成物の温度と相状態(これらは、最後に用いた冷却方法による)に応じて、一つ以上の適当な後処理方法を選択する。
【0109】
ある好ましい実施様態においては、蒸留により、より好ましくは精留により、イソシアネートが溶媒から除かれる。例えばDE−A10260092に記載のように、塩化水素と不活性媒体及び/又はホスゲンを含む残留不純物を除くこともできる。
【0110】
工程(c)では、実質的にホスゲン及び/又は塩化水素ガスとを含む、場合によってはさらに不活性媒体を含むガス流が得られる。これらのホスゲン及び/又は塩化水素ガス及び/又は不活性媒体を含む流れの少なくともいくつかに存在する塩化水素は、当業界の熟練者には公知の方法で、ホスゲンから除かれる。
【0111】
他の好ましい実施様態においては、フレッシュなホスゲンを混合した後で、アミン含有流と混合する前のホスゲン含有流中の塩化水素の質量分率が15重量%未満となるように、好ましくは10%未満、より好ましくは5重量%未満となるように、塩化水素の除去が行われる。
【0112】
塩化水素及び/又はホスゲン、及びクエンチからのいずれかの溶媒を含む混合物は、蒸留及び/又はスクラビングで分離されることが好ましい。蒸留とスクラビングを組み合わせて分離を行うことが好ましい。
【0113】
このスクラビング媒体は、特に、トルエン、ベンゼン、ニトロベンゼン、アニソール、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン(オルトまたはパラ、またはその異性体混合物)、トリクロロベンゼン、キシレン、ヘキサン、ジエチルイソフタレート(DEIP)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、又はこれらの混合物であり、好ましくはモノクロロベンゼンである。工程(bb)でクエンチに用いたのと同じ溶媒をスクラビング液体として使用することが特に好ましい。このスクラビングは、併流で行ってもよいが、向流で行うことが好ましい。
【0114】
スクラビングと蒸留、例えば加圧蒸留を併用する場合、スクラビング媒体、好ましくはトルエン、クロロベンゼンまたはジクロロベンゼンでのスクラビングで、ホスゲンが塩化水素含有流から分離される。例外的な場合には、ホスゲンが凝縮した形で存在する。スクラビング後のスクラビング処理媒体からのホスゲンと塩化水素の除去は、蒸留または脱着で行うことが好ましい。この除去は、ガス状ホスゲン流が得られるように行うことが好ましく、特に好ましい実施様態においては、必要ならフレッシュなホスゲンとの混合後に、塩化水素含量が15重量%未満となるガス状ホスゲン流が得られるように行うことが好ましい。
【0115】
スクラビングと蒸留は、圧力が1〜10絶対barで、好ましくは1〜5絶対barで行なわれる。
【0116】
この塩化水素/ホスゲンの分離の後に、吸着装置、好ましくは活性炭フィルターが続き、この中で、分離後の塩化水素流中の微量のスクラビング媒体が除かれてもよい。
【0117】
他の実施様態においては、このようにして得られた主にホスゲンを含む流れを、次いで本発明の方法における供給原料として再循環させることができる。
【0118】
本発明の一つの好ましい実施様態を、
図1に模式的に示す。
図1は、本発明の好ましい実施様態を説明するためのものであり、なんら本発明を制限するものではない。下記の好ましい実施様態中の個々の要素を、上述の実施様態と組み合わせることも好ましい。
【0119】
図1の好ましい実施様態の説明:
少なくとも一種のアミンとホスゲンを含む反応物流(6)が、反応器(2)中にある反応ゾーン(1)に入る。次いで、得られたガス流(生成物流(5))が、冷却装置(3)、好ましくは管束伝熱装置(管束熱交換器)内にある冷却ゾーン(12)に入る。
【0120】
生成物流(5)は、生成物流(5)の方向とは向流方向に流れる冷却流(11)により、冷却流体の流れ(4)の中で冷却される。なお、冷却装置(3)内の冷却流体の流動(4)は、管束熱交換器内で屈曲した装置の形で、特に屈曲プレートの形で行われることが好ましい。この好ましい実施様態においては、冷却流が生成物流と数点で交叉している(交差構造は上記を参照)。生成物流(5)は、次いで間接冷却の領域から去る。加熱された冷却流(11)は、必要なら任意の補助熱源(13)によりさらに加熱され、次いで加熱装置(9)内でアミン流(8)の加熱に用いられる。この任意の補助熱源(13)は、特に電気加熱装置であるか、燃焼ガスで作動する熱交換器である。
【0121】
加熱されたアミン流(8)は加熱装置(9)を出た後、さらに任意の補助熱源(13)で加熱される。上述のように、アミン流れ(8)の余熱後に使用されるいずれの任意の補助熱源(13)も、特に電気加熱装置として、あるいは燃焼ガスで作動する熱交換器として設計することができる。次いで、前加熱されたアミン流(8)とホスゲン流(10)が混合装置(7)に入る。この混合装置(7)は、反応器(2)とは別の装置であってもよく、あるいは反応器(2)に組み込まれたものであってもよい。