(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
試料と1種類以上の試薬を混合した混合液を複数の波長で光学的に測定した測光値の時系列データから,前記試料中の目的成分の濃度や活性値の測定を行う自動分析装置において,
前記時系列データを関数により近似し,該関数より近似される値を化学反応による測光値変化成分とする反応変化成分推定手段と,
前記時系列データと前記反応変化成分推定手段で得られた推定値との差分を算出して,外乱による変化成分の時系列データを抽出する外乱変化成分抽出手段と,
前記外乱による変化成分の時系列データの各時点において1時点前のデータとの第1の差分値と,1時点後ろのデータとの第2の差分値を計算し,前記第1の差分値の絶対値と前記第2の差分値の絶対値を比較し,小さい方の値を指標とする指標算出手段を有し,
該指標の値により異常の有無を判定することを特徴とする自動分析装置。
請求項1記載の自動分析装置において,過去に測定された試料に対し算出された複数の前記指標の分布の中心と,新たに測定された試料に対し算出された前記指標との相対的距離を計算する相対指標算出手段とを有することを特徴とする自動分析装置。
請求項2記載の自動分析装置において,前記指標算出手段により算出された値と前記相対指標算出手段により算出された値とを同時に表示する指標表示手段とを有することを特徴とする自動分析装置。
請求項1記載の自動分析装置において,過去に測定された試料に対し算出された複数の前記指標の分布の中心と,新たに測定された試料に対し算出された前記指標との相対的距離を計算する相対指標算出手段と,該相対指標に基き異常の有無を判定する手段とを有することを特徴とする自動分析装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施例1]
図1に,本発明の第1の実施例である異常判定支援システム100の構成図を示す。
本システム100は,制御部101と,一次記憶装置102と,装置内反応過程データ抽出部103と,反応過程データ近似部104と,外乱成分抽出部105と,スコア算出部106と,スコアDB読み出し部107と,スコアDB108と,スコアDB書き出し部109と,パーセンタイル算出部110と,ヒストグラム作成部111と,判定結果出力部112と,で構成される。
【0015】
本システム100はハードウェア構成として記載しているが,本システム100の機能はソフトウェアで構成されていてもよい。
【0016】
本システム100は,ネットワーク120を介して,自動分析装置130と通信できる。また,本システム100は,ネットワーク120を介して,入出力端末140と通信できる。
【0017】
ネットワーク120は,検査施設内のネットワークを前提としているが,検査部門を有する医療施設内のネットワークでもよい。
【0018】
自動分析装置130は,反応過程データを反応過程データ記憶装置131に格納する。また,反応過程データ記憶装置131に保存された反応過程データは,ネットワーク120を介して,装置内反応過程データ抽出部103によって抽出できる。また,反応過程データ記憶装置131に保存された反応過程データは,ネットワーク120を介して,入出力端末140で閲覧できる。
【0019】
自動分析装置130は,本システム100とは別のハードウェアとして記載しているが,本システム100の構成が自動分析装置130内に構成されていてもよい。
【0020】
反応過程データ記憶装置131は,自動分析装置130内に構成されることを前提としているが,自動分析装置130と反応過程データ記憶装置131が別のハードウェアで構成されていてもよい。また,反応過程データ記憶装置131が,本システム100内に構成されていてもよい。また,反応過程データ記憶装置131が,入出力端末140内に構成されていてもよい。
【0021】
入出力端末140は,キーボードやマウス等を入力機能,CRTディスプレイを出力機能とするパソコン等の情報機器を想定しているが,他の入出力機能を有していてもよい。また,入出力端末140は,Webブラウザ機能を搭載した端末でもよい。また,入出力端末140は,本システム100とは別のハードウェアとして記載しているが,入出力端末140の入出力機能が本システム100に搭載されていてもよい。また,入出力端末140は,自動分析装置130とは別のハードウェアとして記載しているが,入出力端末140の入出力機能が自動分析装置130に搭載されていてもよい。また,入出力端末140は,パーソナルコンピュータを前提としているが,臨床検査システムでもよい。
【0022】
また,入出力端末140のユーザは,検査技師等,自動分析装置130の操作者を前提としているが,自動分析装置130のメンテナンス担当者等,他のユーザでもよい。
【0023】
また,本システム100と,自動分析装置130と,入出力端末140は,1つのハードウェアとして構成されていてもよい。
【0024】
図2に,自動分析装置130の構成図を示す。自動分析装置130は,光源ランプ201と,恒温槽202と,セル203と,試料分注ノズル204と,第1試薬分注ノズル205aと,第2試薬分注ノズル205bと,攪拌機構206と,分光器207と,検知器208と,増幅器209と,A/D変換器210と,で構成される。分析時には,光源ランプ201から発せられた白色光(全波長)が,恒温槽202に浸けられたセル203を透過して分光器207に入り,分析項目によって異なる特定の単波長成分が検知器208で受光され,増幅器209による増幅後,A/D変換器210でA/D変換され,吸光度として出力される。
【0025】
セルは反応容器になっており,試料分注ノズル204から試料が,第1試薬分注ノズル205aから第1試薬が,第2試薬分注ノズル205bから第2試薬が,それぞれ分注され,攪拌機構206によって撹拌されることで,セル内部で化学反応が起こる。このときの化学反応について,経時的に吸光度を測定(測光)することで,試料中の分析物の濃度や活性値に換算することが可能となる。
【0026】
以下に反応過程データ上に現れる特徴的な吸光度変化について説明する。
恒温槽202やセル203内の気泡や水あかや異物が光軸を遮ることにより反応過程データに異常が現れる場合がある。このとき発生する異常は,複数波長の反応過程データ上に一時的な吸光度の上昇(以降ジャンプと呼ぶ)として現れる。つまり,反応過程データ上にこのようなジャンプが頻繁に現れる場合は,恒温槽202やセル203内に水あかや異物が混入していることが疑われる。このため,反応過程データに現れる異常な吸光度変化のうち,ジャンプによる異常を検出することで,異常の発生原因を限定し,早期的な装置異常の発見,すなわち装置保全の効率化,装置の信頼性向上につなげることができる。
【0027】
本発明の目的は,反応過程データよりジャンプの大きさを自動的に分析し,ジャンプの大きな点の検出やジャンプの発生頻度を提示することにある。
【0028】
図3に,精度管理試料を測定して得られた反応過程データをもとにジャンプによる異常判定を支援する時のフローチャート300を示す。
【0029】
まず,制御部101が装置内反応過程データ抽出部103を起動し,反応過程データ記憶装置131に記憶された反応過程データから,処理の対象となる波長λの反応過程データを抽出し,一次記憶装置102に格納するステップ301を実行する。
【0030】
次に,制御部101がスコア算出部106を起動し,反応過程データよりジャンプの大きさを表すスコアを測光点ごとに算出するステップ302を実行する。スコアは式(1)によって算出される。式(1)は,時刻tの測光点におけるジャンプのスコアが,前後のt−1,t+1との吸光度差の小さい方で定義されることを示している。これにより,ジャンプの特徴である瞬間的な吸光度の上昇,即ち1点のみの吸光度の上昇を定量化することができる。
E(t)=min((A(t)−A(t−1)),(A(t)−A(t+1))) …(1)
【0031】
図4に,反応過程データ上のジャンプに対して式(1)を適用する例400を示す。例400において,A
tは時刻tにおける吸光度を表しており,時刻tで吸光度のジャンプが発生している。A
tに対して式(1)を適用すると,A
tとA
t-1,A
t+1の差のうちの小さい方がスコアとして算出される。ジャンプが発生している場合,A
t-1,A
t+1から吸光度が大きく離れているため,スコアは周囲のスコアよりも大きくなる。
【0032】
次に,制御部101がスコアDB書き出し部109を起動し,現在処理している試料で算出したスコアをDBに登録するステップ303を実行する。
【0033】
図5にスコアDBの例500を示す。スコアDB108は,試料の種類を識別する試料IDを格納するフィールド501と,第1試薬と第2試薬の種類を識別する試薬IDを格納するフィールド502と,分析に使用した波長の種類を格納するフィールド503と,算出したスコアを測光点ごとに格納するフィールド504と,で構成されている。例500では,試薬「R
A1」と「R
A2」を使用して,波長「λ
1」で分析した試料ID「A」で識別される試料について,測光点22のスコアが「−3.58」,測光点23のスコアが「1.33」,測光点24のスコアが「−5.45」であることを示している。
【0034】
次に,制御部101が,処理すべき全ての波長に対して処理を行ったかを判断するステップ304を実行する。
【0035】
ステップ304で処理すべき全ての波長に対して処理が終了していないと判断された場合,制御部101が,装置内反応過程データ抽出部103を起動し,処理が終了していない波長についてステップ302からステップ303までを実行する。これにより,気泡や水あか,異物によるジャンプが複数の波長において発生するという特徴を活用したデータ分析が可能となる。
【0036】
以上のステップ301からステップ304により,対象となる測光点の吸光度が周囲の測光点の吸光度よりどの程度上昇しているかを定量化することが可能となる。
【0037】
次に,スコアを利用して,ジャンプの相対的な大きさを算出することで,ジャンプ判定の支援を行う処理を説明する。
【0038】
まず,制御部101が,ジャンプの相対的な大きさを算出する処理を実行するかを判断するステップ305を実行する。ジャンプの相対的な大きさを算出する処理を行わない場合は,ステップ306を実行する。ステップ306については後述する。
【0039】
ジャンプの相対的な大きさを算出する処理を行う場合,制御部101がスコアDB読み出し部107を起動し,対象と同一の試料,試薬,波長のスコアをスコアDB108より読み出すステップ307を実行する。
【0040】
次に,制御部101がパーセンタイル算出部110を起動し,読み出された波長の同一測光点のスコアに対する対象試料,測光点のスコアのパーセンタイルを算出するステップ308を実行する。これにより,対象となる試料の各測光点のジャンプの相対的な大きさが示される。
【0041】
図6に,各測光点のスコアと算出したパーセンタイルの例600を示す。例600では,DBから読み出されたスコアが,測光点とスコアの大きさによってプロットされており,時刻tにおける対象となる試料のパーセンタイルが95%であることを示している。また,例600では,測光点によってスコアの分布の平均値や分散が異なっていることも確認できる。スコアの相対的な大きさを示すことにより,各測光点の分布の差異の影響を加味したジャンプ判定を支援することができる。
【0042】
次に,制御部101が処理すべき全ての波長に対して処理を行ったかを判断するステップ309を実行する。これにより,ジャンプは全ての波長において発生するというジャンプの特徴を活用した反応過程データの分析が可能となる。処理すべき全ての波長に対して処理が終了していないと判断された場合,制御部101が対象となる波長に対してステップ307と308を実行する。
【0043】
次に,制御部101が判定結果出力部112を起動し,各波長のスコアの絶対値とパーセンタイルを出力するステップ310を実行する。
【0044】
図7に,スコアの順位の結果が出力されたときの入出力端末140の画面例を700に示す。画面例700では,スコアの絶対的な大きさを示すグラフ701にスコアの相対的な大きさを示すパーセンタイルが表示されている。これにより,検査技師はスコアの大きな点が他の試料の同一測光点の結果と比較して特異的に大きいかを知ることができる。一方で,スコアが他の測光点よりも比較的小さくても,他の試料の同一測光点の結果と比較して特異的に大きいかを確認することができる。よって,対象となる試料にジャンプが発生しているかを判断することを容易にすることができる。
以上の手順により,ジャンプの相対的な大きさを算出することで,ジャンプ判定の支援を行うことが可能となる。
【0045】
次に,ステップ305でジャンプの大きさを相対的に示す処理を実行しないと判断した場合か,ステップ310を実行した後,ジャンプの発生頻度の経時変化を提示する処理を実行するかを判断するステップ306を実行する。ジャンプの発生頻度の経時変化を提示する処理を行わない場合は,本処理を終了する。
【0046】
ジャンプの発生頻度の経時変化を提示する処理を実行する場合,制御部101がスコアDB読み出し部107を起動し,比較対象となる期間P1と現在の期間P2における同一の試料,試薬,波長のスコアを読み出すステップ311を実行する。例えば,期間P1,P2は○月○日〜△月△日の全試料,○時○分〜△時△分の全試料,試料ID○○〜△△の全試料などである。
【0047】
次に,制御部101がヒストグラム作成部111を起動し,波長毎,測光点毎にスコアの大きさのヒストグラムを期間P1,P2それぞれで作成するステップ312を実行する。これにより,スコアの分布をそれぞれの期間で得ることができる。
【0048】
次に,制御部101が処理すべき全ての波長に対して処理を行ったかを判断するステップ313を実行する。これにより,ジャンプは全ての波長において発生するというジャンプの特徴を活用した反応過程データの分析が可能となる。処理すべき全ての波長に対して処理が終了していないと判断された場合,制御部101が対象となる波長に対してステップ311と312を実行する。
【0049】
次に,制御部が結果出力部112を起動し,期間P1,P2のヒストグラムを同時に出力するステップ314を実施する。
【0050】
図8に,2つのヒストグラムが表示されたときの入出力端末140の画面例800を示す。画面例800では,期間P1のヒストグラム801と期間P2のヒストグラム802が,ピークの高さが揃うように表示されている。また,スコアの大きな測光点の頻度をわかりやすく表示するため,ヒストグラム801の一部を拡大したヒストグラム803,ヒストグラム802の一部を拡大したヒストグラム804が表示されており,頻度の差を一目で確認できるように,値域が適切に設定されている。これにより,スコア分布を期間P1,P2で比較することができ,ジャンプ発生頻度の多寡を確認することができる。発生頻度に差異が見られ,現在のジャンプが多い場合,恒温槽202やセル203内に水あかや異物が混入していることなどの装置の異常が考えられる。検査技師は大きなジャンプの発生頻度に大きな違いがないか,この画面により容易に判断できるので,適切なタイミングで装置のメンテナンスができる。
以上のステップ301から314により,反応過程データを分析することにより,ジャンプによる異常判定を支援することが可能となる。
【0051】
本実施例では,ステップ312において,波長,測光点ごとにヒストグラムを作成するとしたが,波長や測光点で区別せずにヒストグラムを作成してもよい。これにより,一つのヒストグラムで対象となる期間の度数分布が確認することができ,検査技師のより簡潔にデータの確認をすることができる。
【0052】
また,ステップ312において,スコアの大きさのヒストグラムを作成するとしたが,スコアの大きさではなく,スコアとスコアの平均値との差からヒストグラムを作成してもよい。これにより,波長や測光点毎の偏りの影響が除去され,波長や測光点で区別せずにヒストグラムを作成する場合により公平な比較を行うことができる。
【0053】
また,ステップ314において,二つのヒストグラム801,802のピークの高さを揃えるとしたが,ある基準となるデータ区間の高さを揃えるとしてもよい。これにより,ピークが存在するデータ区間が異なる場合において,その差異を明確に可視化することができる。
【0054】
[実施例2]
次に,本発明の第2の実施例について説明する。本実施例は反応過程データから,反応による吸光度変化成分を除去することにより外乱による吸光度変化成分を抽出する処理を加えたものである。その他の構成や処理については,第1の実施例と基本的に同じである。
【0055】
図9に,精度管理試料を測定して得られた反応過程データをもとにジャンプの大きさを定量化する時のフローチャートを示す。
【0056】
まず,前記ステップ301と同様のステップ901を実行する。
次に,制御部101が反応過程データ近似部104を起動し,反応過程データの近似関数を算出するステップ902を実行する。例えば,近似関数のモデルを式(2)とした場合,近似パラメータであるk,A0,A1が算出され,近似値が求められる。
A(t)=A0+A1(1−e
-kt) …(2)
【0057】
このとき,kは反応速度定数,A0は反応開始時の初期吸光度,A1は目的成分の濃度,を示す近似パラメータであり,tは時刻,A(t)は時刻tにおける測光点の吸光度,eは自然対数の底である。
【0058】
図10にステップ902実行後の反応過程データの例1000を示す。例1000では,反応過程データについて曲線近似によるフィッティングが行われた様子を示している。
【0059】
次に,制御部101が外乱成分抽出部105を起動し,反応過程データと近似値の差分を算出することにより,反応の外乱成分を抽出するステップ903を実行する。これにより,反応過程データの反応による吸光度変化成分が除去され,外乱による吸光度の変化が明確となり,高精度な異常判定を行うことが可能となる。また,反応過程データには波長ごとや測光点ごとの吸光度の分布に反応による大きな差異がみられる場合があるが,外乱成分を抽出することでその差異を低減することができる。これにより,波長間や測光点間のスコアの比較が可能となる。
【0060】
図11にステップ903実行後の外乱成分データの例1100を示す。例1100では,反応による吸光度変化成分が除去され,外乱による吸光度の変化が除去されていることが示されている。
【0061】
次に,制御部101がスコア算出部106を起動し,外乱成分データよりジャンプの大きさを表すスコアを測光点ごとに算出するステップ904を実行する。スコアは式(3)によって算出される。式(3)は,式(1)と同様の式であるが,吸光度の差分をスコアに用いるのではなく,ステップ903で算出した外乱成分を利用する。式(3)中,Dは外乱成分である。
E(t)=min((D(t)−D(t−1)),(D(t)−D(t+1))) …(3)
【0062】
以上のステップ901からステップ904により,対象となる測光点の吸光度が周囲の測光点の吸光度よりどの程度上昇しているかを吸光度変化の外乱成分より定量化することが可能となる。
ステップ905からステップ916については前記ステップ303からステップ314と同様であるため,割愛する。
【0063】
以上のステップ901から916により,反応過程データより抽出した外乱による吸光度変化成分を分析することにより,ジャンプによる異常判定の支援をより正確に実施することが可能となる。
【0064】
本実施例では,ステップ902において,式(2)をモデルとした近似を行うとしたが,近似手法は多項式近似やテイラー展開など,どのようなモデルを使用してもよい。これにより,反応過程データによって適したモデル式を選択することができ,より高精度なスコア算出が可能となる。ただし,この場合導出するパラメータは異なる。
【0065】
また,ステップ910において,波長毎,測光点毎にパーセンタイルを算出しているが,波長や測光点で区別を行わずにパーセンタイルを算出してもよい。また,算出されたパーセンタイルの波長ごとの平均値や中央値をその測光点における代表値としてもよい。これにより,一つの試料のパーセンタイルを示すグラフの数が減り,検査技師のデータ確認業務が容易となる。
【0066】
また,ステップ914において,波長,測光点ごとにヒストグラムを作成するとしたが,波長や測光点で区別せずにヒストグラムを作成してもよい。これにより,一つのヒストグラムで対象となる期間の度数分布が確認することができ,検査技師のより簡潔にデータの確認をすることができる。
【0067】
また,ステップ914において,スコアの大きさのヒストグラムを作成するとしたが,スコアの大きさではなく,スコアとスコアの平均値との差からヒストグラムを作成してもよい。これにより,波長や測光点毎の偏りの影響が除去され,波長や測光点で区別せずにヒストグラムを作成する場合により公平な比較を行うことができる。
【0068】
また,ステップ916において,二つのヒストグラム801,802のピークの高さを揃えるとしたが,ある基準となるデータ区間の高さを揃えるとしてもよい。これにより,ピークが存在するデータ区間が異なる場合において,その差異が明確に可視化することができる。
【0069】
[実施例3]
次に本発明の第3の実施例を説明する。装置の構成は実施例1,2と同じである。
図12は,本実施例において,反応過程データの異常の有無を判定するための処理フローを示している。なお,実施例2の説明に用いた処理フローを説明する
図9と同一の処理を行う処理ステップには,同じ記号を付している。
【0070】
処理ステップ901〜912間での処理は実施例3における
図9の同符合の処理ステップと同一であるため,説明は省略する。また,以下で述べる処理ステップ1210〜1230の処理は制御部で行う。処理ステップ907におけるパーセンタイル値を算出するかどうかの判断は,予めユーザが設定しておく。全項目に対してパーセンタイル算出を実行しても良いし,一部の項目についてのみ実行しても良い。また,全項目に対してパーセンタイルを実行させないという設定でも良い。
【0071】
処理ステップ1210では異常を判定するための,判定用閾値を読み出す。判定用の閾値は予め設定された値が記憶されている。値はスコアDB108に記憶しても良いし,制御部101内に保持していても良い。また,値はユーザが変更可能な構成としても良い。閾値は検査項目や試薬ごとに異なる値を設定しても良い。また,各測光ポイントで同一の値を用いても良いし,測光ポイントごとに異なる値を用いても良い。
【0072】
ステップ907においてパーセンタイルを実行すると判断された項目に対しては,判定用閾値として,過去のスコア値の分布に対してどの程度はずれたら異常と判定するかを相対値により容易に設定することが可能である。例えば,過去のデータの分布から上下1%のスコア値を異常と判定する場合には,パーセンタイル値に対し1%,99%という2種類の閾値を設定しておく。
【0073】
処理ステップ1220では,処理ステップ904で算出したスコア値,または処理ステップ910で算出したパーセンタイル値と,処理ステップ1210で読み出した判定用閾値を比較することにより,異常の有無を判定する。例えば上記のように1%,99%の2種類の判定用閾値を設定した場合,処理ステップ910で算出したパーセンタイル値が1%以下,または99%以上であった場合に異常と判定し,それ以外の場合には正常と判定する。
処理ステップ1230では処理ステップ1220での判定結果を判定結果出力部112に出力する。
【0074】
図12に示した処理フローでは,処理ステップ902,903において外乱成分の抽出処理を行っているが,第1の実施例と同様,外乱成分の抽出を行わない構成も可能である。この場合,時間を要する近似式の算出処理を行わないため,処理を高速化することが可能である。
【0075】
以上述べた第3の実施例によれば,近傍の測光ポイントとの差分値に基くスコア値を用いることにより,反応過程データの一点のみが異常な変動を示すような異常データを高精度に検出可能である。また,スコア値から換算したパーセンタイル値を用いることにより,過去のデータからどの程度外れたデータを異常と判定するかを相対値により容易に設定することが可能である。また,近似式を用いて外乱成分を抽出することにより,より高精度に異常な変動成分を検出可能となる。