特許第5788033号(P5788033)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5788033
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】架空送電線支持構造物
(51)【国際特許分類】
   H02G 7/00 20060101AFI20150910BHJP
   H02G 7/20 20060101ALI20150910BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   H02G7/00
   H02G7/20
   H02G1/02
【請求項の数】1
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-10996(P2014-10996)
(22)【出願日】2014年1月24日
(62)【分割の表示】特願2013-143432(P2013-143432)の分割
【原出願日】2013年7月9日
(65)【公開番号】特開2015-19559(P2015-19559A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2014年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】神山 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 広二
【審査官】 甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−357359(JP,A)
【文献】 特公昭31−001286(JP,B1)
【文献】 特開2012−005263(JP,A)
【文献】 特開2003−180026(JP,A)
【文献】 特開2006−230131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/00−7/22
H02G 1/00−1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架空送電線を支持する腕金が回線ごとに上下に配置され、
前記腕金の本数を前記架空送電線の回線数の二倍以上とし、
下側又は上側の回線に対応する前記腕金に支持された架空送電線と、上側又は下側の回線に対応する前記腕金に支持された架空送電線とを、絶縁ジャンパー線で接続したことを特徴とする架空送電線支持構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空送電線の工事方法に適した架空送電線支持構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
送電線の交換、回線の増設、鉄塔の建て替えなどの工事を行う際には、停電や片回線送電などが行われるが、その実施期間の短縮化を図るために、送電線の迂回路を形成する方法が知られている。
例えば、鉄塔の建て替え工事の際に、その工事用地を迂回する経路に沿って複数の支持柱を設置し、送電線から引き出されたジャンパー線を支持柱により支持することで迂回路を形成する工事方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−018225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記工事方法では、鉄塔の周囲に支持柱を設置するための用地が必須となる。しかしながら、住宅地や山間部では用地確保が困難であり、国立公園等のような自然保護地域では周囲の工事用地まで工事許可を得ることが困難な場合がある。さらに、地盤の悪い土地では支持柱を設置するための基礎工事が必要となり、作業負担や工事の規模が拡大する等の問題が生じていた。
【0005】
本発明は、工事用地の確保の困難を軽減できる架空送電線支持構造物を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
架空送電線支持構造物にかかる本発明は、架空送電線を支持する腕金が回線ごとに上下に配置され、
前記腕金の本数を前記架空送電線の回線数の二倍以上とし、
下側又は上側の回線に対応する前記腕金に支持された架空送電線と、上側又は下側の回線に対応する前記腕金に支持された架空送電線とを、絶縁ジャンパー線で接続したことを特徴とする。
なおここで、上記架空送電線支持構造物には、腕金は少なくとも上側と下側の二回線分が設けられているが、より多くの腕金を設けることを除外する意味ではない。
【0007】
上記架空送電線支持構造物によれば、例えば、架空送電線の工事を行う際に、既設の架空送電線の上方又は下方に迂回路を形成することができるので、迂回路を設けるための新たな工事用地を確保する負担を軽減でき、工事費用の軽減を図ることが可能となる。
【0008】
また、工事区間外部の架空送電線と新設の架空送電線とを架空送電線支持構造物に沿って上下に設けられた絶縁ジャンパー線で接続して、工事区間外部の架空送電線の接続端部を上又は下へ移動させる作業を不要とし、接続の作業時間の迅速化を実現する。このため、迂回路接続のための停電或いは送電電力低下の時間の短縮が可能となる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明により、工事用地の確保の困難を軽減できる架空送電線支持構造物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】発明の実施形態における架空線工事の対象となる工事区間の構成図である。
図2】工事区間内の耐張鉄塔の平面図である。
図3】絶縁ジャンパー線取付工程を行った工事区間の構成図である。
図4】懸垂鉄塔における絶縁ジャンパー線の取り付け状態を示す拡大側面図である。
図5】絶縁ジャンパー線のケーブル取付端子の拡大正面図である。
図6図6(A)はケーブル取付端子に装備される内径の小さなカラーの側面図、図6(B)は正面図である。
図7図7(A)はケーブル取付端子に装備される内径の大きなカラーの側面図、図7(B)は正面図である。
図8】絶縁ジャンパー線の束取りと載置状態を示した説明図である。
図9】懸垂鉄塔における束取りを行った絶縁ジャンパー線の取り付け状態を示す拡大側面図である。
図10】鉄塔構築工程を行った工事区間の構成図である。
図11】鉄塔構築工程後の耐張鉄塔の平面図である。
図12】架線工程を行った工事区間の構成図である。
図13】迂回路形成工程を行った工事区間の構成図である。
図14】架空送電線交換工程を行った工事区間の構成図である。
図15】鉄塔撤去工程を行った工事区間の構成図である。
図16】完了工事区間の両側に設けられた新規工事区間の構成図である。
図17】絶縁ジャンパー線取付工程を行った新規工事区間の構成図である。
図18】鉄塔構築工程を行った新規工事区間の構成図である。
図19】架線工程を行った新規工事区間の構成図である。
図20】迂回路形成工程を行った新規工事区間の構成図である。
図21】架空送電線交換工程を行った新規工事区間の構成図である。
図22】鉄塔撤去工程を行った新規工事区間の構成図である。
図23】完了工事区間とその両側の設けられた新規工事区間を新たな工事完了区間とし、さらにその両側の新規工事区間も工事が完了した状態を示す構成図である。
図24】架空送電線の交換・増設及び懸垂鉄塔の撤去の工事を行う工事区間の構成図である。
図25】絶縁ジャンパー線取付工程を行った工事区間の構成図である。
図26】鉄塔構築工程を行った工事区間の構成図である。
図27】架線工程を行った工事区間の構成図である。
図28】迂回路形成工程を行った工事区間の構成図である。
図29】架空送電線交換工程を行った工事区間の構成図である。
図30】鉄塔撤去工程を行った工事区間の構成図である。
図31】完了工事区間の両側の設けられた新規工事区間の構成図である。
図32】完了工事区間とその両側の設けられた新規工事区間を新たな工事完了区間とし、さらにその両側の新規工事区間も工事が完了した状態を示す構成図である。
図33】鉄塔構築工程に替えて嵩上げ工程を行う場合の作業の進行を示す説明図である。
図34】嵩上げ工程を行う場合の図33に続く作業の進行を示す説明図である。
図35】嵩上げ工程を行う場合の図34に続く作業の進行を示す説明図である。
図36】嵩上げ工程を行う場合の図35に続く作業の進行を示す説明図である。
図37】嵩上げ工程を行う場合の図36に続く作業の進行を示す説明図である。
図38】懸垂鉄塔における絶縁ジャンパー線の取り付け状態の他の例を示す拡大側面図である。
図39】懸垂鉄塔における絶縁ジャンパー線の取り付け状態のさらに他の例を示す拡大側面図である。
図40図39における絶縁ジャンパー線の支持状態を示すジャンパー線に沿った方向から見た図である。
図41】懸垂鉄塔における束取りを行った絶縁ジャンパー線の取り付け状態の他の例を示す拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態の概要]
本発明の第1の実施形態として、複数の径間からなる工事区間において、架空送電線の回線の増設及び送電容量の大きな架空送電線への交換を行うための架空送電線の工事方法について図面を参照して説明する。
【0012】
[工事区間の鉄塔の構成]
送電線路の架空送電線の交換のための工事や回線を増す工事は、送電線路の沿線を複数の工事区間に区切り、工事区間毎に実施される。図1は、工事区間の一例を示すもので、この工事区間A内には、既存の鉄塔として、複数の耐張鉄塔10A及び懸垂鉄塔10Bが設置されている。
懸垂鉄塔10Bは、架空送電線から、主に下方への重力荷重が作用し、延線方向には荷重が殆ど生じない箇所で使用される。例えば、懸垂鉄塔10Bは、架空送電線の経路が直線となる区間内に設置される。
これに対して、耐張鉄塔10Aは、架空送電線から、下方への重力荷重だけでなく、延線方向に沿った張力も作用する箇所に使用される。例えば、耐張鉄塔10Aは、架空送電線の経路が屈曲する区間の屈曲部に設置されている。
図1は、両端に耐張鉄塔10A、10Aが設置され、それらの間に二本の懸垂鉄塔10B,10Bが設置された区間を工事区間Aとする場合を例示している。
【0013】
[鉄塔]
耐張鉄塔10A及び懸垂鉄塔10Bは、図1に示すように、いずれも上下方向に沿った複数の主材11と当該複数の主材11の間に水平又は斜め方向に沿って配置された複数の副材12とから全体が構築されている。
なお、図1では、耐張鉄塔10Aと懸垂鉄塔10Bとを簡略的に同一構造で図示しているが、実際には、耐張鉄塔10Aは、架空送電線(以下、「送電線」と記す。)20からの張力にも耐えられるように、懸垂鉄塔10Bよりも強度の高い構造に構成されている。
【0014】
耐張鉄塔10A及び懸垂鉄塔10Bは二回線鉄塔で、各鉄塔10A、10Bの両側には、三相交流の送電を行うための三本の送電線20,20,20が1組ずつ取り付けられている。すなわち、各鉄塔10A、10Bの側部には、腕金14,14,14が3段に、かつ、図2に示すように、両側に延出するように(図2では耐張鉄塔10Aのみ図示)設けられており、各腕金14に送電線20が取り付けられている。
【0015】
図1に示すように、工事区間Aの端にある耐張鉄塔10Aの腕金14には、二本の送電線20,20の端部が個別に碍子15a,15aを介して連結されている。一方の送電線20は工事区間A内にあり、他方は、工事区間A外にある。
また、懸垂鉄塔10Bの腕金14には、この箇所を通過する送電線20が懸垂碍子15bを介して吊下げられている。
なお、図1に示す既設の送電線20は、送電容量が66[kV]の鋼心アルミ撚り線である。
【0016】
耐張鉄塔10Aの腕金14に連結された二本の送電線20,20の端部には、一方から他方に渡って、相互間を電気的に接続するためのジャンパー線30が装備されている。
ジャンパー線30は、絶縁被覆されていないACSR(鋼心アルミ撚り線)からなる導線31と、導線31の両端部に装備されたケーブル取付端子32,32とを備えており、2つの半割部材で構成された取付端子32により送電線20に着脱可能に取り付けられている。
【0017】
また、図1に示すように、耐張鉄塔10A及び懸垂鉄塔10Bの頂上部には、亜鉛メッキ鋼線(又はアルミ覆鋼線)からなる架空地線25が架設されている。
【0018】
[架空送電線の工事方法:絶縁ジャンパー線取付工程]
上記工事区間Aにおいて耐張鉄塔10A及び懸垂鉄塔10Bに対する架空送電線の回線増設工事及び架空送電線を交換する工事の方法を、工程ごとに順を追って説明する。
まず、図3に示すように、二本の耐張鉄塔10Aの各腕金14により支持されている工事区間A外の送電線20の端部と工事区間A内の送電線20の端部とを接続する全てのジャンパー線30を絶縁ジャンパー線130に交換する。
前記耐張鉄塔10Aのジャンパー線交換工事に続けて、送電線20の懸垂鉄塔10Bの懸垂碍子15bに吊下げられた部分を、図4に示すように、絶縁ジャンパー線130に置き換える。この工事は、次のように行う。
まず、送電線20の懸垂碍子15bに吊下げられた箇所から両側に所定寸法離れた位置に、ぞれぞれ引留め工具200を取りつける。両側の引留め工具200、200を、シリコーン碍子201を介して、鉄塔10Bの腕金14の懸垂碍子15bの上端部が取り付けられた箇所に引き留めた後、2つの引留め工具200,200間で送電線20を切断する。ついで、切断された両側の送電線20を絶縁ジャンパー線130で接続する。
絶縁ジャンパー線130は、支持具202で把持して懸垂碍子15bの下に吊り下げる。前記、引留め工具200には、カムアロング、クサビクランプ、圧縮クランプなどを利用できる。
【0019】
この絶縁ジャンパー線130は、図5に示すように、二本の送電線20,20の電気的接続を行うケーブル131とその両端部に設けられた取付端子132,132とを備えている。
ケーブル131は、主に、導体部と、その外周に形成された絶縁層と、その外周に形成された遮蔽層と、その外周に設けられたシースとで構成されている。
【0020】
取付端子132は、導体からなる二部材で構成され、ボルト締めによりケーブル131の導体部を挟持することで当該導体部と電気的に接続されている。また、取付端子132を構成する二部材には、双方の対向面に断面半円形の挟持溝133が形成されている。ボルト締めの際に、この挟持溝133に送電線20を挟み込むことにより、当該取付端子132を送電線20に装着し且つ電気的に接続する。
【0021】
なお、このケーブル取付端子132は、挟持溝133と架空送電線との間に、内径が異なる複数種類の円筒状のカラー134の中から適切なものを選択し介在させることにより、径の異なる種々の架空送電線に対する装着を可能としている。
例えば、絶縁ジャンパー線130は、既設の送電線20と後述する新設の架空送電線である送電線120(図13参照)とに接続される場合がある。新設の送電線120は、既設の送電線20よりも送電容量が大きく、その外径も既設の送電線20よりも大きくなっている。
このため、既設の送電線20に絶縁ジャンパー線130の取付端子132を装着する際には、図6に示すように、その外径が挟持溝133に一致し、その内径が既設の送電線20に適したカラー134が使用される。また、新設の送電線120に取付端子132を装着する際には、図7に示すように、既設の送電線20より太い新設の送電線120に合わせて内径を大きくしたカラー134が使用される(外径は挟持溝133に一致している)。
なお、いずれのカラー134も、円筒を直径方向に沿って二分割した良導体からなる二つの半円筒体から構成されているので、二部材から構成されるケーブル取付端子132をボルト締めにより装着する際には、その挟持圧がカラー134を介して架空送電線に作用し、強固に装着することが可能である。
【0022】
上記絶縁ジャンパー線130は、絶縁ジャンパー線取付工程の次に行われる鉄塔構築工程での新規鉄塔の構築の際に、絶縁層及び遮蔽層によって接触、放電等を抑制して作業領域を確保するためのものである。
【0023】
上記絶縁ジャンパー線取付工程では、絶縁ジャンパー線を取り付ける回線の送電を停止させる必要がある。このとき、この工事区間Aの鉄塔に架設されている二回線がいずれも同じ送電先に向かうものである場合には、片回線送電により、一回線ずつ送電を停止させて作業を行い、一回線分の送電を維持して完全な停電を回避することができる。
また、絶縁ジャンパー線を取り付ける二回線がそれぞれ異なる送電先に向かう場合には、それぞれの送電先への送電を停止させてジャンパー線30から絶縁ジャンパー線130への交換作業が行われる。
いずれの場合でも、ジャンパー線30及び絶縁ジャンパー線130は、送電線20に対する着脱がボルトを用いて容易に行うことができるので、片回線送電期間又は停電期間を短縮し、迅速な復帰を図ることが可能である。
【0024】
なお、耐張鉄塔10Aに取り付ける絶縁ジャンパー線130は、後述する迂回路形成工程でも使用することを視野において、耐張鉄塔10Aにおいて工事区間A内外の二本の送電線20を接続するために必要な長さよりも長くしておくことが望ましい。
その場合、過度な弛みが生じて下の送電線20との離隔距離が不足することがないように、耐張鉄塔10Aにおいては、図8に示すように、ケーブル131の余長分を環状にして結束バンドで束ねた束取り状態Tとし、水平な副材12の上に載置しておくことが望ましい。
また、懸垂鉄塔10Bにおいては、図9に示すように、懸垂碍子15bの両側(老番側と若番側)の張力バランスを確保するように、懸垂碍子15bの両側で束取り状態T,Tとして、引留め工具200、200等に吊下げておくことが望ましい。また、ケーブル131の両側の束取り状態T,Tの形成位置は、互いに離間するようにより径間側に形成することが望ましい。これにより、ケーブル131の束取り状態T,Tとなる部位とその下側に支持されている送電線20との離隔距離をより長く確保することが可能となる。
【0025】
[架空送電線の工事方法:鉄塔構築工程]
次に、工事区間内の全鉄塔10A,10Bを包み込み工法により個別に包み込みながら回線を増設した新規鉄塔を構築する鉄塔構築工程を行う。
包み込み工法とは、既設の鉄塔10A、10Bを撤去しないで、当該鉄塔10A、10Bを内側に取り込むようにして同じ敷地内に新規鉄塔を構築する工法である。新規鉄塔は、その主材及び副材が内側の鉄塔10A、10Bと干渉しないようにその寸法、配置等に考慮を払って設計されている。
図10に示すように、各耐張鉄塔10Aに対しては新規鉄塔としての耐張鉄塔110Aがその外側に構築され、各懸垂鉄塔10Bに対しては新規鉄塔としての懸垂鉄塔110Bがその外側に構築される。
なお、これら新規の鉄塔110A,110Bを構築する際には、予め各鉄塔10A,10Bから架空地線25が撤去される。
【0026】
新規鉄塔としての耐張鉄塔110A、懸垂鉄塔110Bは四回線鉄塔であり、内側の既設の鉄塔10A、10Bよりも高く構築される。この新規鉄塔としての耐張鉄塔110A、懸垂鉄塔110Bの両側面の下部にはそれぞれ一回線分の腕金114が設けられ、両側面の上部にそれぞれ一回線分の腕金114が設けられている。つまり、上部に二回線、下部に二回線の腕金114が設けられている。
新設の鉄塔110A、110Bの下側の二回線分の腕金114は、既設の鉄塔10A、10Bの腕金14に近い高さに設けられている。また、これら腕金14と腕金114とは、いずれも同じ方向に向かって両側面から延出されている。また、上側の二回線分の各腕金114はこれら下側の回線の各腕金114よりも上方に配置されている。
【0027】
図11に示すように、耐張鉄塔110Aは、それぞれの腕金114が腕金14よりも長く延出されている(懸垂鉄塔110Bは図示していないが腕金114の長さについては耐張鉄塔110Aと同様である)。
耐張鉄塔110A(又は懸垂鉄塔110B)の一側面には、二回線分の六本の腕金114が上下に並び、その間隔は、新設する送電線120(図12参照)の送電容量に応じた離隔距離を考慮した距離になっている。
また、耐張鉄塔110A(又は懸垂鉄塔110B)は、その頂上部において、架空地線118(図12参照)を支持する腕金117を有している。
【0028】
前記絶縁ジャンパー線取付工程で取り付けた絶縁ジャンパー線130を介して送電がされる状態にされてから、この鉄塔構築工程が実行されるので、各鉄塔110A,110Bを包み込み工法で構築する場合に、作業領域を十分に確保することができ、各送電線20の送電を停止させることなく安全に鉄塔構築作業を行うことができる。
【0029】
[架空送電線の工事方法:架線工程]
次に、工事区間A内の全鉄塔10A,10Bに支持された既設の送電線20の上側に新設の送電線120を架線する架線工程を実行する。
この架線工程では、図12に示すように、前記鉄塔構築工程で構築された各耐張鉄塔110A及び各懸垂鉄塔110Bの上側の二回線の腕金114に新設の送電線120が架線される。
新設の送電線120は、送電容量が275[kV]である鋼心アルミ撚り線であって、既設の送電線20よりも径の大きいものが使用される。
【0030】
鉄塔間に新設の送電線120を架線する場合には、引き抜き工法或いは吊金工法等により鉄塔間に延線する作業を行う。
引き抜き工法では、隣接する二つの鉄塔に滑車を設置し、これらの間に牽引ロープを掛け渡す。そして、牽引ロープに送電線120を連結し、ウィンチにより牽引ロープを一方の鉄塔から他方の鉄塔側に引き寄せることで送電線120を鉄塔間に延線する。
また、吊金工法では、予め隣接する二つの鉄塔間にワイヤロープを架け渡す。そして、このワイヤロープに沿って移動するための移動車輪を備える複数の吊金装置を曳行ロープで曳行し、ワイヤロープに沿って一定間隔で吊金装置を展開させる。各吊金装置は、送電線120を送る滑車を備えており、予め滑車に掛け渡しておいた牽引ロープに送電線120を連結して引き寄せることで鉄塔間に延線することができる。
【0031】
延線された送電線120は、その両端部が図示しないクランプ部材を用いて耐張鉄塔110Aの腕金114に取り付けられた碍子15aに連結され、その途中部分が懸垂鉄塔110Bの腕金114の懸垂碍子15bに吊下げられて支持される。その際、送電線120が適正な張力及び適正な弛み量となるように調節する緊線作業が行われる。
このようにして、工事区間内の鉄塔110A、110Bに新しい送電線120を増設する。
また、工事区間内の鉄塔110A、110Bの上端の腕金117に架空地線118の架線を行う。
【0032】
なお、上記架線工程の作業は、既設の送電線20より上方で行われるので、既設の送電線20の送電を停止させることなく行うことが可能である。
【0033】
[架空送電線の工事方法:切断工程]
次に、工事区間Aの両端部に位置する二本の耐張鉄塔10Aにおいて、工事区間A内の既設の送電線20を工事区間A外の送電線20から電気的に切断する切断工程を実行する。即ち、図12に示す、耐張鉄塔10Aの下側の回線において、工事区間A外の既設の送電線20と工事区間A内の既設の送電線20とを接続している絶縁ジャンパー線130の工事区間A内側の取付端子132(図11参照)を送電線20から外す。これにより、この絶縁ジャンパー線130を工事区間A内の既設の送電線20から切り離す。
また、この切断工程において、各懸垂鉄塔10Bの下側の二回線の全ての絶縁ジャンパー線130を撤去してもよい。
【0034】
なお、上記切断工程の作業は、絶縁ジャンパー線130を取り外す回線の送電を停止して行われるが、絶縁ジャンパー線130は、取付端子132のボルトを外すだけで容易に送電線20から取り外すことができるので、停電期間を短縮することが可能である。
【0035】
[架空送電線の工事方法:迂回路形成工程]
次に、工事区間の端部に位置する耐張鉄塔110Aにおいて、工事区間A外の送電線20の端部と工事区間内の新設の送電線120の端部とを絶縁ジャンパー線130により電気的に接続する迂回路形成工程を実行する。
この迂回路形成工程では、図13に示すように、切断工程で既設の送電線20から取り外された絶縁ジャンパー線130の取付端子132を、上方で支持された新設の送電線120の端部に取り付ける。また、絶縁ジャンパー線130は耐張鉄塔110Aに沿って上下に敷設される。
このようにして、工事区間Aの両端部において、工事区間A外の送電線20と工事区間A内の新設の送電線120とを絶縁ジャンパー線130により電気的に接続することにより迂回路が形成され、送電を再開できる。送電を再開すると、工事区間A外は送電線20で送電され、工事区間A内は新設の送電線120で送電される。
【0036】
なお、工事区間A外の送電線20と工事区間A内の送電線120とは、それぞれの支持されている端部が上下に離れているが、前述したように(図8参照)、絶縁ジャンパー線130のケーブル131を十分に長くして束取り状態Tとしておいたので、ここからケーブル131を引き出すことにより、同じ絶縁ジャンパー線130を上方に新設した送電線120に接続することが可能である。
仮に、絶縁ジャンパー線取付工程で取り付けた絶縁ジャンパー線130のケーブル131の長さが、工事区間Aの内外の既設の送電線20を接続するために必要な最小限の長さであった場合には、切断工程において、耐張鉄塔110A、110Aから絶縁ジャンパー線130を撤去し、この迂回路形成工程では、工事区間A外の既設の送電線20と工事区間A内の新設の送電線120を接続できる長さの絶縁ジャンパー線130を新たに取り付ける。
【0037】
なお、この迂回路形成工程の作業中は、切断工程から引き続いて、回線の送電を停止させておく必要があるが、絶縁ジャンパー線130のケーブル取付端子132の着脱は、ボルトを操作するだけで容易に行うことができるので、停電期間を短縮することが可能である。
特に、絶縁ジャンパー線130のケーブル131の長さが十分に長い場合には、工事区間A外の送電線20に取り付けた取付端子132は装着したままでよく、工事区間A内のみ、取付端子132を新設の送電線120に取り付ける作業を行えばよいので、停電期間を短縮することが可能である。
【0038】
[架空送電線支持構造物]
なお、図13に示す、既設の耐張鉄塔10Aと、包み込み工法によりその外側に構築された新設の耐張鉄塔110Aと、絶縁ジャンパー線130とからなる構造物は、本発明の架空送電線支持構造物の一実施形態である。
すなわち、この架空送電線支持構造物は、二回線分の架空送電線を支持する腕金14及び114が回線ごとに上下に配置されている。
また、絶縁ジャンパー線130は、絶縁層及び遮蔽層を有するものである。
この絶縁ジャンパー線130は、図3図8を参照して説明したように、下側の腕金14に支持された二本の既設の送電線20,20の端部同士を接続する状態と、図13に示したように、下側の腕金14に支持された架空送電線(工事区間A外の送電線20)の端部と上側の腕金114に支持された送電線120の端部とを接続する状態とにつなぎ替えることができるものである。
つまり、耐張鉄塔110Aが上側の回線である新設の送電線120をその腕金114で支持しており、耐張鉄塔10Aが下側の回線である既設の送電線20をその腕金14で支持している。
そして、絶縁ジャンパー線130は、図12に示した、耐張鉄塔10Aの腕金14が延線方向の両側に支持する二本の送電線20,20を電気的に接続した状態から、図13に示した、耐張鉄塔10Aの腕金14に支持された工事区間A外の送電線20と耐張鉄塔110Aの腕金114に支持された新設の送電線120とを電気的に接続した状態に、つなぎ替えることが可能である。
従って、耐張鉄塔110Aと耐張鉄塔10Aと絶縁ジャンパー線130とにより、本発明の架空送電線の工事方法に適した「架空送電線支持構造物」を実現している。
【0039】
[架空送電線の工事方法:送電線交換工程]
次に、工事区間の全ての鉄塔10A、10Bが支持する既設の送電線20を、図14に示すように、新しい送電線220(他の架空送電線)に交換する送電線交換工程を実行する。なお、新しい送電線220には、前述した上側の回線に架線した送電線120と同じ鋼心アルミ撚り線が使用されている。
この送電線交換工程では、まず、工事区間の鉄塔10A、10Bにより支持されている既設の送電線20を全て撤去する。各送電線20は、前記切断工程において全ての絶縁ジャンパー線130を外しておいた場合には、当該各送電線20の両端部において碍子15aと連結されたクランプ部材を取り外すことにより撤去することが可能である。
各送電線20の撤去が完了すると、次に、図14に示すように、工事区間A内の全鉄塔110A,110Bの下側回線用の腕金114に新しい架空送電線220を架線する。
この架線作業は、前述した上側回線に送電線120を架線した作業と同じ方法で行うことができる。
【0040】
即ち、引き抜き工法或いは吊金工法等により新しい架空送電線220を鉄塔間に延線し、緊線作業の後に、各腕金114の碍子15a,15bに架空送電線220を取り付けることで工事区間内の下側回線の送電線220の架線作業が完了する。
【0041】
上記送電線交換工程の作業は、既に上側の回線により送電の迂回路が確保されているので、送電をしたまま行うことが可能である。
【0042】
[架空送電線の工事方法:鉄塔撤去工程]
次に、図15に示すように、工事区間A内の懸垂鉄塔10Bを撤去する。
上記鉄塔撤去工程の作業は、懸垂鉄塔10Bの上方を迂回して送電が行われているので、送電を停止させることなく実施可能である。
【0043】
工事区間Aの両端に位置する耐張鉄塔10A,10Aは、その腕金14に、工事区間外の送電線20が取り付けられているので、まだ撤去されない。
後述するように、工事区間A外の送電線20が、後の工事で新しい架空送電線220に交換されると、当該工事区間A外の送電線20が耐張鉄塔10Aの腕金14から外されるので、この後、今回の工事区間Aの両端にある耐張鉄塔10A,10Aの撤去が行われる。
上記懸垂鉄塔10B,10Bの撤去作業が完了すると、この工事区間Aについては、回線の増設及び架空送電線の交換のための架空送電線の工事が完了する。
【0044】
[新規工事区間への遷移]
既に工事が完了した工事区間に隣接する新規工事区間に対して、架空送電線の回線の増設及び架空送電線の交換を行う架空送電線の工事方法について、図16図22を参照しつつ、さらに説明する。以下の説明では、既に工事が行われた工事区間Aを「完了工事区間A」、その沿線方向に隣接する工事区間Bを「新規工事区間B」と記載することがある。
この新規工事区間Bにおける工事も、前述の完了工事区間Aにおいて行った工事と略同様なので、異なる点を中心に説明することとし、共通する点は簡潔に説明する。
【0045】
新規工事区間Bには、図16に示すように、完了工事区間Aの片側の端部に位置する耐張鉄塔10Aとこの耐張鉄塔10Aから沿線方向に並んだ懸垂鉄塔10Bと耐張鉄塔10Aとが含まれている。
【0046】
この新規工事区間Bにおいても、送電線120を増設し、既設の送電線20を新しい送電線220に交換する工事は、前述の完了工事区間Aと同様に、[絶縁ジャンパー線取付工程]→[鉄塔構築工程]→[架線工程]→[切断工程]→[迂回路形成工程]→[送電線交換工程]→[鉄塔撤去工程]の順で行われる。
【0047】
[絶縁ジャンパー線取付工程]
この新規工事区間Bの一端にある耐張鉄塔10Aのジャンパー線30を撤去し、図17に示すように、絶縁ジャンパー線130に交換する。新規工事区間Bと完了工事区間Aとが重なる箇所にある耐張鉄塔10Aには、既に絶縁ジャンパー線130が取り付けられているので、この耐張鉄塔10Aに対する工事は省かれる。
また、送電線20の懸垂鉄塔10Bに吊下げられた箇所を絶縁ジャンパー線130に交換する(図17参照)。
なお、上記絶縁ジャンパー線の取り付け作業時には、この工事区間Bの送電線20に対して片回線送電又は送電停止状態とする。
【0048】
[鉄塔構築工程]
絶縁ジャンパー線取付工程が完了したら、この新規工事区間Bの送電線20を用いて送電を開始する。
そして、この送電再開状態で、鉄塔構築工程を実施する。鉄塔構築工程では、図18に示すように、包み込み工法により耐張鉄塔110A及び懸垂鉄塔110Bを構築する。なお、この場合も、新規工事区間Bと完了工事区間Aとが重なる箇所にある耐張鉄塔10Aに対する工事は省かれる。
【0049】
[架線工程]
次いで、送電を継続した状態で、架線工程を実施する。架線工程では、図19に示すように、耐張鉄塔110A及び懸垂鉄塔110Bの上側の各腕金114に新しい送電線120を架線する。
【0050】
[切断工程]
さらに、この後、送電を停止した状態で、切断工程を実施する。切断工程では、工事区間Bの両端部に位置する耐張鉄塔10A、10Aに設けられた絶縁ジャンパー線130の工事区間B内側の端部を、工事区間B内の送電線20から外す。
なお、この切断工程が実施された後の絶縁ジャンパー線130の状態は、新規工事区間Bの一端側と他端側とでは異なっている。
すなわち、新規工事区間Bの完了工事区間Aと重なる一端側の位置にある耐張鉄塔110Aに設けた絶縁ジャンパー線130の新規工事区間B外(完了工事区間A側)の端部は、完了工事区間Aに新設した送電線120に接続されている。
これに対して、新規工事区間Bの他端側の位置にある耐張鉄塔110Aに設けた絶縁ジャンパー線130の新規工事区間B外(未工事側)の端部は、既設の送電線20に接続されている状態である。
【0051】
[迂回路形成工程]
次いで、迂回路形成工程では、新規工事区間B内の既設の送電線20から外された絶縁ジャンパー線130の端部を、図20に示すように、新規工事区間Bに新設した上側回線の送電線120に接続する。
これにより、新規工事区間Bの上側回線の新設の送電線120が、完了工事区間Aの上側回線の送電線120と、未工事側の既設の送電線20と電気的に接続され、新規工事区間Bに新設された上側回線の送電線120を経路とする迂回路が形成される。そして、この迂回路を通じて送電を再開する。
【0052】
[送電線交換工程]
次いで、図21に示すように、送電線交換工程により、新規工事区間Bの下側回線の既設の送電線20を全て新規の架空送電線220に交換する。この時、前述のように迂回路が形成されているので、送電した状態で作業を行うことができる。
【0053】
[鉄塔撤去工程]
次いで、図22に示すように、鉄塔撤去工程により、新規工事区間Bの完了工事区間Aと重なる一端側の位置にある耐張鉄塔110Aと新規工事区間B内の懸垂鉄塔110Bの内側にある古い耐張鉄塔10A及び懸垂鉄塔10Bの撤去が行われ、当該新規工事区間の工事が完了する。
【0054】
図22は、完了工事区間Aの沿線方向両側の新規工事区間Bに送電線120の回線増設及び送電線220への交換を行う工事方法が完了した状態を示す図である。
上述のように、送電線路の沿線を複数に区切って企画した工事区間の工事を順次行い、最終的に、図23に示すように、既設の送電線20を全て撤去し、新しい送電線120,220を敷設した送電線路を完成する。
【0055】
[架空送電線の工事方法の技術的効果]
上述した架空送電線の工事方法では、工事区間内の各耐張鉄塔110A及び懸垂鉄塔110Bの上側回線の腕金114に支持された新設の送電線120とその両端部に接続された絶縁ジャンパー線130,130とにより、既設の送電線20に替わる迂回路の形成を行っている。
このため、既存の送電線路の沿線の外側に、工事のための迂回路を形成する用地を確保する必要がなく、用地確保が困難な地域でも工事を行うことができる。また、地盤の悪い地域でも迂回路を形成するための新たな用地に対する基礎工事を不要とする。
特に、新規の大型の鉄塔110A、110Bを、もとの低い鉄塔10A、10Bに対する包み込み工法で構築することにより、新たな用地確保の必要性をさらに低減することができる。
【0056】
また、前述の工事方法では、耐張鉄塔110Aに絶縁ジャンパー線130を当該鉄塔に上下に沿って設け、この絶縁ジャンパー線130で、工事区間内の上側に支持された新設の送電線120と工事区間外の送電線20とを接続したので、これら送電線20、120を接続するために、工事区間外の送電線20を鉄塔の下側の腕金14から上側の腕金114に付け替え直す作業が不要となり、効率的に工事を進めることが可能となる。
【0057】
また、遮蔽層と絶縁層とを備えたケーブル131からなる絶縁ジャンパー線130を、通常のジャンパー線30に替えて、使用することで、耐張鉄塔10A又は懸垂鉄塔10Bの周囲に作業領域を容易に確保することができ、送電を止めることなく、耐張鉄塔110A及び懸垂鉄塔110Bの包み込み工法による構築を行うことが可能となる。
【0058】
また、前述の実施形態の工事方法の絶縁ジャンパー線取付工程では、耐張鉄塔10Aにおいて工事区間内外の送電線20同士を接続する絶縁ジャンパー線130に長めのものを取り付け、迂回路形成工程では、この絶縁ジャンパー線130を用いて、工事区間外の送電線20と工事区間内の新設送電線120とを接続するので、絶縁ジャンパー線130の取付端子132の付け替える作業は、工事区間内の側のみ行えばよく、それぞれの工程で必要な長さの絶縁ジャンパー線を用いる場合に比較して、迂回路形成工程の作業効率を向上できる。また、絶縁ジャンパー線130の共用により、工事に用いる絶縁ジャンパー線の種類を減らして、工事コストの低減を図ることが可能となる。
なお、絶縁されている絶縁ジャンパー線130を用いたので、いずれかの接続状態において余長が生じたときには束取りし、鉄塔に載置しておく等して、ケーブル長を調節できるので、その取り扱いが容易である利点もある。
また、この絶縁ジャンパー線130に設けた取付端子132は、複数種類のカラー134を適宜選択して異なる径の送電線20、120に共用できるものなので、既設の送電線20と新設した送電線120の外径が異なる場合でも絶縁ジャンパー線130の流用が可能である。
【0059】
[第2の実施形態]
図24図32は、本発明の工事方法の第2の実施形態を示すもので、前述の第1の実施形態と同様の箇所には同じ符号を付し、簡潔に説明にする。
この実施形態では、架空送電線の交換・増設の工事と合せて、工事区間Aにある懸垂鉄塔10Ba,10Bbのうち、懸垂鉄塔10Baを腕金の増設も行うことなく完全に撤去する工事を合せて行う。
【0060】
この実施形態の工事方法では、[絶縁ジャンパー線取付工程](図25参照)、[鉄塔構築工程](図26参照)及び[架線工程](図27参照)を実施する際に、撤去予定の懸垂鉄塔10Baを作業対象からは外して工事が進められる。各鉄塔10A、10A、10Bbに対して、図3図10図12で説明した手順と同様に各工程の作業が行われる。なお、架線工程では、新設の送電線120は懸垂鉄塔10Baを回避してその上側を通過するように架線される。
【0061】
この後の[切断工程]、[迂回路形成工程]を実施して、図28に示すように、新設した送電線120を利用した迂回路を形成する。即ち、各鉄塔10A、10Aに対して、図13で説明した手順と同様に各工程の作業が行われる。
次いで図29に示すように[送電線交換工程]で既設の送電線20を新しい送電線220に交換する。即ち、鉄塔10A、10A、10Bbに対して、図14で説明した手順と同様に送電線交換工程の作業が行われる。このとき、新設の送電線220は懸垂鉄塔10Baを回避してその外側を通過するように架線される。
この後[鉄塔撤去工程]で、既設の懸垂鉄塔10Baと共に撤去すると、図30図31の状態になり、工事区間Aの工事が終了する。
【0062】
この後、順次、隣接する工事区間Bの工事を行う。工事区間Bは、前述した[絶縁ジャンパー線取付工程](図17参照)、[鉄塔構築工程](図18参照)、[架線工程](図19参照)、[切断工程]、[迂回路形成工程](図20参照)、[送電線交換工程](図21参照)及び[鉄塔撤去工程](図22参照)と同一の作業内容で工事を行う。
そして、最終的に図32に示すように、送電線路全体に、新しい送電線120を増設するとともに、既設の送電線20を新しい送電線220に交換する。
【0063】
なお、この工事区間B内の懸垂鉄塔10Bも撤去の対象とすることが可能である。その場合には、工事区間Aの場合と同様に、撤去する懸垂鉄塔10Bに対しては[絶縁ジャンパー線取付工程]、[鉄塔構築工程]及び[架線工程]の作業を行わず、[切断工程]、[迂回路形成工程]、[送電線交換工程]の後に[鉄塔撤去工程]で撤去する。
【0064】
[第3の実施形態]
前述した第1及び第2の実施形態における工事方法では、工事区間内の耐張鉄塔10A及び懸垂鉄塔10Bに対して包み込み工法で、より高い新規の耐張鉄塔110A及び懸垂鉄塔110Bを構築しているが、上方に回線増設の余地を得るために鉄塔10A、10Bを嵩上げ工法により、高くすることも可能である。
以下、発明の第3の実施形態として、鉄塔10A、10Bを嵩上げする嵩上げ工程とその前後の工程について説明する。
【0065】
まず、図33に示すように、嵩上げ工程の前に、耐張鉄塔10Aのジャンパー線30を絶縁ジャンパー線130に交換する(絶縁ジャンパー線取付工程)。また、図3で説明したのと同じ手順により、懸垂鉄塔10Bに対しても、絶縁ジャンパー線取付工程の作業を行う。
上記絶縁ジャンパー線取付工程は送電停止又は片回線送電で実施される。
【0066】
そして、図34及び図35に示すように、耐張鉄塔10Aの上端部を平坦に改造した後に、二回線分の腕金14が形成された嵩上げ構造体を上方に取り付ける(嵩上げ工程)。懸垂鉄塔10Bにも同様に嵩上げ工程の作業を行う。
前述のように絶縁ジャンパー線を取り付けたので、この嵩上げ工程は送電状態で実施できる。
【0067】
そして、図36に示すように、耐張鉄塔10Aに追加された上側回線の各腕金14に新設の送電線120を架線とする(架線工程)。また、図12で説明したように、懸垂鉄塔10Bには、懸垂碍子15bを介して送電線120を懸垂支持する。
上記架線工程も送電状態で実施される。
【0068】
その後、図37に示すように、工事区間外の送電線20に一端部が接続された絶縁ジャンパー線130の他端部を既設の送電線20から分離し、新設の送電線120に接続する(切断工程及び迂回路形成工程)。
上記切断工程及び迂回路形成工程は送電停止又は片回線送電で実施される。
【0069】
その後は、耐張鉄塔10Aの下側の回線で支持する既設の送電線20を撤去して新規の送電線220を架線する(架空送電線交換工程)。
各鉄塔10A、10Bに対する架空送電線交換工程は、図14の説明とほぼ同じ手順により実施されるが、嵩上げを行った各鉄塔10A、10Bの場合には、既設の送電線20を支持していた腕金14に新規の送電線220が架線される。
上記架空送電線交換工程は、迂回路が形成されているので送電状態で実施される。
【0070】
このように、鉄塔構築工程に替えて嵩上げ工程を行う場合には、鉄塔撤去工程は不要となるので、工事を短期で行うことが可能となる。また、鉄塔構築工程における包み込み工法では、新たな基礎の構築や工事用地が多少拡大する可能性があるが、嵩上げ工程ではそれらを殆ど不要とすることが可能である。
【0071】
なお、図37に示す「架空送電線支持構造物」は、嵩上げされた耐張鉄塔10Aと絶縁ジャンパー線130とによって構成されている。この「架空送電線支持構造物」の嵩上げされた耐張鉄塔10Aには、架空送電線を支持する腕金14が回線ごとに上下に配置されている。そして、絶縁ジャンパー線130は、下側回線用の腕金14に支持された送電線20,20の端部同士を接続する状態と、下側回線用の腕金14に支持された架空送電線(工事区間外の送電線20)の端部と上側回線用の腕金14に支持された送電線120の端部とを接続する状態とにつなぎ替えることができるものである。
つまり、耐張鉄塔10Aが上側回線である新設の送電線120を、増設された腕金14で支持しており、耐張鉄塔10Aが下側回線である既設の送電線20を既設の腕金14で支持している。
そして、絶縁ジャンパー線130は、図35に示す、耐張鉄塔10Aの下側回線用の腕金14の両側に支持された二本の送電線20,20を電気的に接続した状態と、図37に示す、耐張鉄塔10Aの下側回線用の腕金14に支持された工事区間外の送電線20と耐張鉄塔10Aの上側回線用に増設された腕金14に支持された新設の送電線120とを電気的に接続した状態とにつなぎ替えることが可能である。
絶縁ジャンパー線130は、図37の状態に必要な長さのものであり、図35の状態では余長があるため、余長分は束取りされて、耐張鉄塔10Aの水平な箇所などに置かれている。
従って、耐張鉄塔10Aと絶縁ジャンパー線130とにより架空送電線の工事方向に適した「架空送電線支持構造物」を実現している。
【0072】
[架空送電線の工事方法の他の例]
上記実施形態では、工事区間内に両側面に二回線分の腕金14を有する耐張鉄塔10Aと懸垂鉄塔10Bがある場合に、その回線の増設と架空送電線の交換を行う架空送電線の工事方法を例示したが、これに限られない。
例えば、工事区間内に、低い耐張鉄塔10A及び懸垂鉄塔10Bではなく、前記耐張鉄塔110A及び懸垂鉄塔110Bに相当する鉄塔(以下、耐張鉄塔110A、懸垂鉄塔110Bと記載して、説明を簡潔にする。)が当初から設けられており、下側(又は上側)の回線の腕金114のみに既設の送電線20が架線されて使用されており、上側(又は下側)の回線の腕金114には架線されずに全て未使用の場合に、上記工事方法を適用して回線の増設及び架空送電線の交換を行うことが可能である。
その場合、送電状態で、工事区間内の鉄塔110A,110Bの未使用の回線に新設の送電線120を架線する(架線工程)。
そして、送電停止又は片回線送電状態で、工事区間の両端の耐張鉄塔110Aにおいて、工事区間内外の既設送電線20の電気的接続を切断する(切断工程)。切断は、例えば、ジャンパー線30の撤去により行う。
そして、送電停止又は片回線送電状態で、工事区間の両端の耐張鉄塔110Aに上下に沿った絶縁ジャンパー線130を取り付け、これにより、工事区間外の既設の送電線20と工事区間内に新設した送電線120とを接続し、迂回路を形成する(迂回路形成工程)。
そして、送電を再開して、耐張鉄塔110A及び懸垂鉄塔110Bの下側(又は上側)の回線の腕金114に支持された既設の送電線20を撤去し、他の架空送電線220を新たに架線する(架空送電線交換工程)。
このように、工事区間内の鉄塔110A,110Bが上側又は下側に未使用の回線を有する場合には、鉄塔構築工程や嵩上げ工程を行うことなく、回線の増設と架空送電線の交換を行うことが可能である。
【0073】
また、上記の場合には、「架空送電線支持構造物」は、耐張鉄塔110Aと絶縁ジャンパー線130とによって構成されている。この「架空送電線支持構造物」の耐張鉄塔110Aには、架空送電線を支持する腕金114が回線ごとに上下に配置されている。そして、絶縁ジャンパー線130は、下側の回線に対応する腕金114に支持された送電線20,20の端部同士を接続する状態と、下側の回線に対応する腕金114に支持された架空送電線(工事区間外の送電線20)の端部と上側の回線に対応する腕金114に支持された送電線120の端部とを接続する状態とをつなぎ替えることができるものである。
従って、耐張鉄塔110Aと絶縁ジャンパー線130とにより架空送電線の工事方向に適した「架空送電線支持構造物」を実現している。
【0074】
[絶縁ジャンパー線の支持構造の他の例]
本発明の工事方法を実施する場合、既設の架空送電線が懸垂鉄塔に吊下げられていた箇所を絶縁ジャンパー線130に置き換えたときの構造は、図4図9に示した構造以外にも考えられる。
例えば、図38に示すように、懸垂鉄塔10Bの懸垂碍子15bの上部にシリコーン碍子201を2つ取り付け、これらに圧縮クランプ等からなる引留め工具200Aを用いて既設の送電線20を接続した構造であっても良い。切り離された送電線20、20には、絶縁ジャンパー線130が取り付けられ、この絶縁ジャンパー線130は懸垂碍子15bの下に吊下げられている。
また、図39及び図40に示した構造は、懸垂碍子15bの下部に、絶縁ジャンパー線130を支持する部分(ジャンパー支持部)203aと、シリコーン碍子201を引き留めるワイヤー201aを支持する部分(碍子支持部)203bとを備える支持具203を設けた構造である。シリコーン碍子201には、引留め工具200Aを用いて既設の送電線20が接続されている。
図41は、腕金14の両側で支持される送電線20,20を接続するために必要な長さよりも十分に長い絶縁ジャンパー線130を上記支持具203を用いて支持する場合の構造を示しており、絶縁ジャンパー線130の余長を束取り状態Tにして、絶縁ジャンパー線130が下の送電線20に近づくのを防止している。また、懸垂碍子15bの両側で絶縁ジャンパー線130を束取り状態Tにすることで、懸垂碍子15bの両側の張力のバランスを取っている。
【0075】
[その他]
なお、上記鉄塔10A,10B,110A,110Bでは、腕金14又は114が一本の送電線20又は120を支持する1導体の場合を例示したが、腕金14又は114は2導体、4導体、6導体、8導体などのように、複数本の架空送電線を支持するものであっても良い。
その場合、導体である架空送電線同士が接触しないように、複数の架空送電線の間には一定間隔でスペーサが設置される。また、複数導体の場合には、導体の本数に応じて複数のジャンパー線30又は130が使用される。
【0076】
また、上記鉄塔10A,10Bを二回線とする場合を例示したが、一回線鉄塔又はより多くの回線を有する鉄塔についても、上記架空送電線工事方法を適用することが可能である。その場合、鉄塔110A,110Bについては、鉄塔10A,10Bの二倍の回線を有し、鉄塔10A,10Bの回線と同数の回線が当該鉄塔10A,10Bの回線よりも上側又は下側に配置されていることが望ましい。
そして、これら鉄塔110A,110Bにおける、鉄塔10A,10Bの回線と同数であってその上側又は下側に配置された回線を迂回経路として利用することが望ましい。
【0077】
また、上記実施形態では、工事区間に鉄塔が四本設けられている場合を例示したが、鉄塔の本数はこれに限らず、より多い場合でも上述の工事方法を適用することが可能である。また、工事区間内の両端部にのみ耐張鉄塔が配置されている場合を例示したが、区間内の途中にも耐張鉄塔がある工事区間にも上記の工事方法を適用することは可能である。なお、その場合でも、迂回路形成工程において送電線20と送電線120とを絶縁ジャンパー線130により接続する作業が必須の耐張鉄塔110A,10Aは、工事区間の端部の鉄塔のみである。
【符号の説明】
【0078】
10A,110A 耐張鉄塔
10B,10Ba,10Bb,110B 懸垂鉄塔
11 主材
12 副材
14,114 腕金
20 送電線(架空送電線)
30 ジャンパー線
31 導線
32 ケーブル取付端子
120 送電線(新設の架空送電線)
130 絶縁ジャンパー線
131 ケーブル
132 ケーブル取付端子
134 カラー
220 送電線(他の架空送電線)
A 完了工事区間(工事区間)
B 新規工事区間(工事区間)
T 束取り状態
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