特許第5788072号(P5788072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5788072難燃性樹脂組成物およびその組成からなる成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5788072
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】難燃性樹脂組成物およびその組成からなる成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/06 20060101AFI20150910BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20150910BHJP
   C08L 25/06 20060101ALI20150910BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20150910BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20150910BHJP
   C08J 11/04 20060101ALI20150910BHJP
【FI】
   C08L23/06ZAB
   C08L23/12
   C08L25/06
   C08K3/22
   C08K3/26
   C08J11/04
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-190599(P2014-190599)
(22)【出願日】2014年9月18日
【審査請求日】2015年1月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100118809
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 育男
(74)【代理人】
【識別番号】100131288
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 尚祐
(72)【発明者】
【氏名】三ツ木 伸悟
(72)【発明者】
【氏名】廣石 治郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 康雄
(72)【発明者】
【氏名】和田 直人
(72)【発明者】
【氏名】土生 晃嗣
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−274065(JP,A)
【文献】 特開2008−063558(JP,A)
【文献】 特開2011−198507(JP,A)
【文献】 特開2004−075936(JP,A)
【文献】 特開2010−254886(JP,A)
【文献】 特開平10−231398(JP,A)
【文献】 特開平06−306214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/06
C08L 23/12
C08L 25/06
C08K 3/22
C08K 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン10〜85質量%、ポリプロピレン4〜85質量%およびポリスチレン0〜40質量%を含有する樹脂(A)100質量部に対し、水酸化マグネシウム(B)をy質量部、炭酸カルシウム(C)をx質量部とすると、下記(1)および(2)の関係をいずれも満たすケーブルトラフ成形体用樹脂組成物であって、
前記水酸化マグネシウム(B)が、表面処理されたものであり、
「地中電線を収める管又はトラフの「自消性のある難燃性」試験方法JESC E7003(2005)」の判定基準に適合することを特徴とする難燃性樹脂組成物。
(1) 48≧x≧10
(2) 30>y≧−0.19x+28.8
【請求項2】
前記水酸化マグネシウム(B)が、昇温温度10℃/分で240℃から400℃に加熱することによる質量減少量が20質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
前記難燃性樹脂組成物を射出成形して得られた成形体のJIS K7110に準拠したアイゾット衝撃試験(試験片の厚さ4mm、ノッチ2mm)で得られた値が、5.0kJ/m以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
前記炭酸カルシウムの平均粒径が、4μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項5】
前記組成物中に含有する樹脂成分が、前記ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンから選択される樹脂のみであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項6】
前記水酸化マグネシウム(B)が、脂肪酸で表面処理したものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂(A)が、廃棄プラスチックを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、酸化チタンを含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を、押出混練して得られてなるケーブルトラフ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性樹脂組成物および成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブルトラフの材料としてコンクリートが用いられていたが、近年コンクリートに替えて、樹脂製のトラフの使用が検討されている。
また、電線・ケーブル用の絶縁層及びシース層材料として、特許文献1には、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などを含む樹脂0〜100質量部に対して、金属水酸化物からなる難燃剤を20〜150質量部混和し、さらに、金属水酸化物の炭酸化による白色化を防ぐため、炭酸カルシウムを金属水酸化物量の0.8〜5.0倍程度混入させた樹脂組成物が提案されている。この樹脂組成物によれば、燃焼時にハロゲン化水素等の有害ガスの発生がなく、機械強度を保持することができ、難燃性と耐炭酸ガス白化性という相反する課題が解決されることが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などを含む樹脂0〜100重量部に対して、難燃性を持たせるために表面処理がされた金属水酸化物を3〜39重量部含有させた樹脂組成物からなる、表面に凹凸を有する管状に成形された電線管が提案されている。これにより、ハロゲン系難燃剤及び燐系難燃剤の使用を最小限または使用せずに、機械特性と難燃性を付与した電線管が得られることが記載されている。
【0004】
さらに近年、材料の樹脂として、プラスチックのリサイクルを図る観点で廃棄プラスチックを利用して形成されたトラフが検討されている。例えば、特許文献3には、樹脂の一部または全部に、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレン等を含む廃棄プラスチックを用いた樹脂組成物が提案されている。この樹脂組成物から成形された成形体は、耐衝撃性、曲げ弾性率および難燃性を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−213480号公報
【特許文献2】特開2003−4178号公報
【特許文献3】特開2008−63558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
難燃性に優れる水酸化マグネシウムは無機難燃剤の中でも高価であり、コスト削減のために、添加量は少ないほどよい。また、水酸化マグネシウムは廃棄プラスチックに比べて高価であり、コスト削減のために、添加量は少ないほどよい。しかしながら、水酸化マグネシウムの添加量が一定量以下に減らすと、難燃性が極端に低下する。このため、特許文献3では、難燃性の向上のために水酸化マグネシウムを多量に添加している。水酸化マグネシウムを多量に使用すると上記のように、コスト面で不利になる。これに加えて、連続的に製造・加工を繰り返したところ、加工成形時に押出機のホッパー部で水酸化マグネシウムは詰まりを生じ易いことがわかった。このため、加工中に、加工工程を一時中断することになり、生産効率が低下し、また、押出機のホッパーからの定量的な供給ができないと、品質面でばらつきが生じてしまうという懸念が生じた。
このような状況を鑑み、本発明は、高い難燃性を維持し、耐衝撃性および耐着火性に優れるとともに、加工性に優れ、しかも低コストでの製造が可能な難燃性樹脂組成物および成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンを特定量含有する樹脂に、水酸化マグネシウムと炭酸カルシウムを所定量含有させることにより、高い難燃性と耐衝撃性、および優れた加工性を示すことを見出した。本発明はこの知見をもとになされたものである。
【0008】
すなわち、上記の課題は以下の手段により解決された。
(1)ポリエチレン10〜85質量%、ポリプロピレン4〜85質量%およびポリスチレン0〜40質量%を含有する樹脂(A)100質量部に対し、水酸化マグネシウム(B)をy質量部、炭酸カルシウム(C)をx質量部とすると、下記(1)および(2)の関係をいずれも満たすケーブルトラフ成形体用樹脂組成物であって、
前記水酸化マグネシウム(B)が、表面処理されたものであり、
「地中電線を収める管又はトラフの「自消性のある難燃性」試験方法JESC E7003(2005)」の判定基準に適合することを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【0009】
(1) 48≧x≧10
(2) 30>y≧−0.19x+28.8
【0010】
(2)前記水酸化マグネシウム(B)が、昇温温度10℃/分で240℃から400℃に加熱することによる質量減少量が20質量%以上であることを特徴とする(1)に記載の難燃性樹脂組成物。
(3)前記難燃性樹脂組成物を射出成形して得られた成形体のJIS K7110に準拠したアイゾット衝撃試験(試験片の厚さ4mm、ノッチ2mm)で得られた値が、5.0kJ/m以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載の難燃性樹脂組成物。
(4)前記炭酸カルシウムの平均粒径が、4μm以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
(5)前記組成物中に含有する樹脂成分が、前記ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンから選択される樹脂のみであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
(6)前記水酸化マグネシウム(B)が、脂肪酸で表面処理したものであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
)前記樹脂(A)が、廃棄プラスチックを含むことを特徴とする(1)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
(8)さらに、酸化チタンを含有することを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
)前記(1)〜()のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を、押出混練して得られてなるケーブルトラフ。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、高い難燃性を維持し、耐衝撃性および耐着火性に優れるとともに、加工性に優れ、しかも低コストでの製造が可能な難燃性樹脂組成物および成形体を提供することが可能となった。
これによって、上記のような優れた難燃性樹脂組成物および成形体を安定的に、低コストで製造することが可能となった。
【0012】
本発明では、特定の樹脂に対して、水酸化マグネシウムと炭酸カルシウムを特定の関係を維持して併用するものである。
ここで、炭酸カルシウムとの組み合わせの作用はまだ定かではないが、二酸化炭素や水分のような不燃性ガス発生の作用により、トータルの無機物の配合量を少なくしても高い難燃性および優れた耐着火性を得ることができると推定される。
また、高価な水酸化マグネシウムの添加量を低減することができ、コストを削減できるという利点がある。特に天然水酸化マグネシウムや非結晶成長型水酸化マグネシウムを使用できることはこの点から効果的である。また、前記樹脂として廃棄プラスチックを使用することにより、高い難燃性を維持し、低コストで、しかも、加工性に優れ、生産効率を落とすことなく、耐衝撃性および耐着火性に優れた難燃性樹脂組成物および成形体を安定的に供給できる。
さらには、無機物として水酸化マグネシウムと炭酸カルシウムを使用することにより燃焼時に有害なガスが発生せず、環境にやさしい樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<<難燃性樹脂組成物>>
本発明の難燃性樹脂組成物は、ポリエチレン10〜85質量%、ポリプロピレン4〜85質量%およびポリスチレン0〜40質量%を含有する樹脂(A)100質量部に対し、水酸化マグネシウム(B)と、炭酸カルシウム(C)を特定の関係で、特定量含有し、かつ「地中電線を収める管又はトラフの「自消性のある難燃性」試験方法JESC E7003(2005)」の判定基準に適合する難燃性樹脂組成物である。
【0014】
なお、樹脂(A)中に含有するポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンの総和は100質量%を超えることはない。
【0015】
以下、樹脂(A)の各成分について説明する。
<ポリエチレン>
本発明に用いられるポリエチレンは、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンとα−オレフィンとの共重合体などが挙げられる。具体的には、例えば、NUCポリエチレン〔商品名、日本ユニカー(株)製〕、UBEポリエチレン〔商品名、宇部興産(株)製〕などが挙げられる。ただし、本発明では、これらに限定されるものではない。
ポリエチレンの含有量は、樹脂成分(A)中、10〜85質量%が好ましく、15〜70質量%がより好ましい。ポリエチレンが多すぎると十分な弾性率が得られなくなり、少なすぎると耐衝撃性が低下する恐れがあるためである。
【0016】
<ポリプロピレン>
本発明に用いられるポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体やポリプロピレンとα−オレフィンとのブロック、ランダム、もしくはグラフト共重合体、またはこれらの混合物などが挙げられる。α−オレフィンとしてはエチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、4−メチルペンテンなどが挙げられる。具体的には、例えば、BC4L〔商品名、日本ポリケム(株)製〕などが挙げられる。ただし、本発明では、これらに限定されるものではない。
ポリプロピレンの含有量は、樹脂(A)中、4〜85質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましい。ポリプロピレンが多すぎると耐衝撃性が低下する恐れがあり、少なすぎると弾性率が低下する恐れがあるためである。
【0017】
<ポリスチレン>
本発明に用いられるポリスチレンは、スチレンの単独重合体または共重合体が使用でき、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(m−メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(ジビニルベンゼン)などが挙げられる。具体的には、例えば、HF77〔商品名、PSジャパン(株)社製〕などが挙げられる。ただし、本発明では、これらに限定されるものではない。
ポリスチレンの含有量は、樹脂(A)中、0〜40質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。ポリスチレンが多すぎると衝撃強度が低下する恐れがあり、少なすぎると弾性率が低下する恐れがあるためである。
【0018】
本発明では、樹脂(A)は、ポリエチレン10〜85質量%、ポリプロピレン4〜85質量%およびポリスチレン0〜40質量%を含有する。ここで、樹脂(A)中には、本発明の特性を損なわない範囲で他の樹脂成分を含有してもよい。他の樹脂成分としては例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸アルキル共重合体などが挙げられる。
【0019】
また、本発明では、樹脂(A)の一部または全部として廃棄プラスチックを使用してもよい。廃棄プラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンの少なくとも1種であってもよいし、全てが廃棄プラスチックでもよい。また、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンのそれぞれ単体を回収してなる廃棄プラスチックを配合して使用してもよいし、既に廃棄物の回収段階でポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンが混合されており、そのまま減容、ペレット化されている廃棄プラスチックを使用してもよい。
【0020】
既に廃棄物の回収段階で各樹脂成分が混合されているものとしては、例えば、容器包装リサイクル法に基づいて、一般家庭からでる容器等を回収した廃棄プラスチックなどが挙げられる。
廃棄プラスチックの含有量は、樹脂(A)中、1〜100質量%が好ましく、25〜100質量%がより好ましい。
本発明では、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンを、本発明で規定する範囲の含有量となるように、廃棄プラスチックおよび他のポリマーの混合比を調整する。
【0021】
<水酸化マグネシウム(B)>
本発明で使用する水酸化マグネシウムは、合成または天然、非結晶成長型水酸化マグネシウムのいずれでもよいが、好ましくは天然および非結晶型水酸化マグネシウムである。
【0022】
天然水酸化マグネシウムとしては天然ブルーサイト鉱石等の天然鉱物を粉砕、表面処理した水酸化マグネシウムが好ましい。また、非結晶成長型水酸化マグネシウムとしては、例えば海水やにがりに含まれるマグネシウム塩水溶液を消石灰などのアルカリと反応させて作られたもので、結晶成長せずにコロイド状沈殿物を適宜洗浄、ろ過乾燥して得られるものが挙げられる。これは、合成品のため、砒素やアスベスト等の不純物の混入がなく、価格も水酸化マグネシウムの中で最も安い。
【0023】
非結晶成長型水酸化マグネシウムを電子顕微鏡で観察すると、粒径が0.01〜1.99μmの1次粒子が凝集してできた2次凝集物が多く、粒径が一般に3μm以上のものが多い。非結晶成長型水酸化マグネシウムは、粒径が2〜40μmの大きすぎるサイズのものを多量に含むため、樹脂への添加・分散が困難である。しかしながら、粒径が2〜40μmの水酸化マグネシウムと、粒径が0.01〜1.99μmの水酸化マグネシウムを、質量比で25:75〜99:1の範囲内で混合した場合、この混合した水酸化マグネシウムに対して表面処理材を併用すると、樹脂への分散が容易にできる。
【0024】
水酸化マグネシウムは、表面処理剤で表面処理したものが好ましく、特に天然水酸化マグネシウムは、粒子も不均一であり、吸湿性に富むために表面処理を施すことが望ましい。
このため、本発明では、表面処理した水酸化マグネシウムを使用する。
【0025】
表面処理は、脂肪酸、リン酸エステルまたはシランカップリング剤による表面処理が挙げられる。
脂肪酸としてはステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ベヘン酸、アラキジン酸およびこれらのナトリウム塩やカリウム塩などの金属塩化合物が挙げられる。
リン酸エステルは、ステアリルアルコールリン酸エステルやその金属塩やラウリルアルコールリン酸エステルもしくはその金属塩等が挙げられる。
シラン処理におけるシランカップリング剤としては、末端にアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ビニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤が挙げられる。
これらの表面処理は、複数の方法で表面処理されていてもよく、また同じ表面処理、例えば、脂肪酸による表面処理では、複数の異なった脂肪酸で表面処理されていてもよい。
本発明では、これらの表面処理のうち、脂肪酸で表面処理したものが好ましい。
【0026】
<炭酸カルシウム(C)>
本発明で使用する炭酸カルシウムは、石灰石、大理石、方解石等の鉱石を粉砕した重質炭酸カルシウムや合成石である沈降性炭酸カルシウムあるいは軽質炭酸カルシウム等を挙げることができる。この中で、コストの点からは、重質炭酸カルシウム、押出加工性や物性の点からは、粒度分布が均一な合成品の炭酸カルシウムが好ましく使用でき、目的に応じ適宜選択すればよい。
炭酸カルシウムの平均粒径は4μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。平均粒径の好ましいものを選定することで、樹脂(A)との混練性、得られるコンパウンドの機械的物性等の点から好ましい結果が得られる。また、炭酸カルシウムは、表面を脂肪酸系、油脂系、界面活性剤系、ワックス系、リン酸系またはシラン系等の表面処理剤によって表面処理されたものを用いると、ベース樹脂との混練性や樹脂組成物とした場合の機械的物性を向上させることが可能である。
この表面処理は、水酸化マグネシウムで記載したものが好ましく適用される。
【0027】
<水酸化マグネシウムと炭酸カルシウムの配合量>
本発明では、水酸化マグネシウム(B)をy質量部、炭酸カルシウム(C)をx質量部とすると、下記(1)および(2)の関係をいずれも満たす。
【0028】
(1) 48≧x>0
(2) 30>y≧−0.19x+28.8
【0029】
本発明において、上記(1)と(2)を満たすことにより、難燃性と耐衝撃性、加工性の点で優れる。
炭酸カルシウムを含まない場合、加工性が悪く、しかも、満足すべき難燃性などを達成するには、高価な水酸化マグネシウムを多量使用することになる。
逆に、炭酸カルシウムを、48質量部を超えて配合した場合、耐衝撃性が悪くなり、しかも、廃棄プラスチック使用時にコスト的に不利となる。
また、水酸化マグネシウムの配合量が30質量部を超えると、加工性に劣り、コスト的にも不利になる。なお、水酸化マグネシウムの配合量の最少量は、上記(1)と(2)の関係から明らかなように、19.68質量部以上である。水酸化マグネシウムの配合量が、19.68質量部未満であると、難燃性が悪くなる。
ここで、水酸化マグネシウムと炭酸カルシウムの合計量は、上記(1)と(2)の関係から明らかなように、28.8質量部以上78質量部未満である。
水酸化マグネシウムと炭酸カルシウムの合計量が、28.8質量部未満であると、難燃性が悪くなり、逆に、78質量部を超えると、コスト的に不利になり、また耐衝撃性が悪くなる。
【0030】
本発明では、上記(1)の関係は、下記(1−1)の関係であることが好ましく、下記(1−2)の関係であることがさらに好ましい。
【0031】
(1−1) 48≧x≧27
(1−2) 48≧x≧31
【0032】
なお、上記(1−2)の場合で示すと、さらに好ましい関係は、下記(1−2)と(2)を同時に満たすことである。
【0033】
(1−2) 48≧x≧31
(2) 30>y≧−0.19x+28.8
なお、本発明では、上記(1)は、48≧x≧10である。
【0034】
<その他の無機化合物>
本発明においては、無機化合物として水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム以外の無化合物を含有してもよい。
このような無機化合物としては、酸化チタンが挙げられる。酸化チタンを含有する場合、樹脂(A)100質量部に対し、0.7〜25質量部が好ましく、1〜25質量部がより好ましい。なお、酸化チタンを所定量配合することにより、耐候性を向上させ、色調を調整することが可能となる。
酸化チタンとしては、ルチル型結晶構造を有する酸化チタン(ルチル型酸化チタン)、あるいは、ルチル型酸化チタンとアナターゼ型結晶構造を有する酸化チタン(アナターゼ型酸化チタン)とが含まれているものがある。好ましくはルチル型酸化チタンである。また酸化チタン表面を表面処理剤で処理したものが好ましい。ここで、表面処理剤としては、例えば、アルミニウムおよびシリカ、有機シロキサンなどが挙げられる。
【0035】
<その他の化合物>
本発明の難燃性樹脂組成物には、通常樹脂に添加される酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤などの添加剤などを本発明の特性を損なわない範囲で適宜配合してもよい。
【0036】
<難燃性樹脂組成物の製造方法>
本発明の難燃性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば混練ロール、ニーダー、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー等の混練装置を単独でもしくは組み合わせて使用することができる。
【0037】
<成形体>
本発明の成形体は、その形状は制限されるものではないが、例えば、トラフ、ケーブルダクト、排水溝、ピット蓋等が挙げられる。本発明の成形体の成形方法は、成形する物品の種類、形状、サイズ等により適宜選択することができ、例えば、プレス成形、射出成形、圧縮成形および押出成形等が挙げられる。
【0038】
本発明の成形体は、耐衝撃性、難燃性および耐熱性に優れるため、コンクリート製のトラフと比しても遜色なく、トラフとして使用することが可能である。さらに本発明のトラフはコンクリートよりも軽量なため設置しやすく、落としても割れないなどハンドリング性もよい。さらに、廃棄プラスチックを使用することもできるので、低コストである。よって、本発明の成形体は特にトラフとして好適に使用することができる。本発明のトラフは、上記の難燃性樹脂組成物を用い、例えば、通常のプレス成形により製造することができる。
【0039】
本発明の難燃性樹脂組成物は、成形体とした場合に、「地中電線を収める管又はトラフの『自消性のある難燃性』試験方法JESC E7003(2005)」の判定基準に適合するものである。この試験法による判定基準は、日本電気技術規格委員会規格のものであり、日本電気技術規格委員会のウェブサイト http://jesc.gr.jp/jesc−assent/quotation/jesc_e7003_05.html からダウンロードすることができる。
この判定基準では、樹脂組成物を成形してなる成形体から得られた試験試料に、約130mmのブンゼンバーナーの還元炎で燃焼させ、その炎を取り去ったとき、60秒以内に消える場合が「適合」である。
【0040】
また、昭和37年8月14日通商産業省令第85号の平成16年10月27日経済産業省令第103号改正の省令「電気用品の技術上の基準を定める省令」において定められた「電気用品の技術上の基準を定める省令別表第二附表第二十四の耐燃性試験」の判定基準もあり、本発明では、この基準にも適合するものである。なお、この機判定基準では、炎によって試料に着火しない場合が「適合」である。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
実施例1〜11、比較例1〜20および参考例1、2
表2〜4に示す各材料を表示の割合(表中の数値は質量部を示す)で配合した混合物を二軸押出機にて混練し、各熱可塑性樹脂組成物を得た。その後、射出成形を行い、各試験片を作製した。
なお、使用した材料は下記の通りである。
【0043】
<樹脂A>
樹脂Aとして、以下の廃材プラスチック1を使用した。
【0044】
・廃材プラスチック1:容器包装リサイクル法で回収された廃棄プラスチック(ポリエチレン70質量%、ポリプロピレン20質量%、ポリスチレン10質量%)
【0045】
<水酸化マグネシウム>
・水酸化マグネシウムA1:脂肪酸により表面処理されたもの(商品名「マグラックスST」、新鉱工業(株)社製)
・水酸化マグネシウムA2:表面処理無しのもの(中国製、原料:ブルーサイト鉱、商品名「ブルーサイト」、三光社製)
・水酸化マグネシウムA3:脂肪酸により表面処理されたもの(商品名「マグシーズW」、神島化学工業(株)社製)
・水酸化マグネシウムA4:表面処理無しのもの(商品名「UD650−1」、宇部マテリアルズ(株)社製)
【0046】
<質量減少量率>
上記水酸化マグネシウムA1〜A4の質量減少率を測定した結果、下記表1の結果を得た。
水酸化マグネシウムをパンにとり、熱重量測定装置(商品名:TG−DTA200、セイコー社製)により、窒素を200ml/分流しながら昇温速度10℃/分で昇温し、240℃〜400℃の温度範囲において生じる、変化の前後の質量差(質量減少率)を測定した。
【0047】
【表1】
【0048】
<炭酸カルシウム>
炭酸カルシウムB:平均粒径1.5μm
(商品名「ソフトン1500」、備北粉化工業社製)
【0049】
各実施例および比較例について、以下の評価を行った。
【0050】
<難燃性試験>
「日本電気技術規格委員会規格 地中電線を収める管又はトラフの『自消性のある難燃性』試験方法JESC E7003(2005)」に準拠し、試験試料を下記のように準備した。加熱源はブンゼンバーナーとし、酸化炎の長さ約130mm、還元炎の長さ約35mmに調整した。試験試料は本来完成品から切り出すが、今回は完成品とほぼ同様のリブ付き平板(長さ約300mm、幅200mm、厚さ15mm)を作成した。試料を水平に支持し、試料の平面部を着火するまで燃焼させ、炎を取り去った後、60秒以内に消えたものを[○]とし、60秒以内に消えなかったものを[×]とした。
【0051】
<酸素指数(OI値)による燃焼性の試験>
JIS K7201−2に準拠し、サンプル厚さ4mm、ノッチ2mmの試験片にて、酸素指数(OI値)による燃焼性の試験の測定を行った。
なお、酸素指数とは、材料が燃焼を持続するのに必要な最低酸素濃度(容量%)が酸素指数(Oxygen Index)である。
【0052】
<アイゾット(Izod)衝撃試験>
JIS K7110に準拠し、サンプル厚さ4mm、ノッチ2mmの試験片にて測定を行った。
得られた値が、5kJ/m以上のものが合格レベルで「○」であり、5kJ/m未満のものが不合格の「×」である。
表2〜4には、得られた値とともに、上記評価ランクも併記した。
【0053】
<加工性>
上部:φ300、排出部:φ50のホッパーを用いた3時間の押出加工成形で、ホッパー部の詰まりが認められたものを「×」、詰まりが起きなかったものを「○」として評価した。
【0054】
得られた結果を下記表2〜4に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
表2〜4から明らかなように、水酸化マグネシウムおよび炭酸カルシウムの含有量を本発明の範囲とすることにより、自己消化性の難燃性の評価基準を満たすと同時に、燃焼を持続するのに必要な最低酸素濃度であるOI値(容量%)が高く、耐着火性に優れ、しかも耐衝撃性にも優れていることがわかる。
また、実施例3、参考例1、実施例10、参考例2の比較から、表面処理が施された水酸化マグネシウムを用いた場合(実施例3、10)は、表面処理されていない水酸化マグネシウムを用いた場合(参考例1、2)と比較して、OI値が高く、難燃性の点でも優れていることがわかる。しかも、質量減少率が20%以上と高い水酸化マグネシウム(A1、A3、A4)を使用することで、耐衝撃性が向上することがわかる(参考例1と実施例3、実施例10、参考例2の比較)。
なお、比較例7〜9、19〜20の結果から、水酸化マグネシウムと炭酸カルシウムの使用量を本発明で規定する量使用することが、本発明の効果を効果的に発現するのに必要であることがわかる。
また、比較例7〜9、19〜20の結果より、従来のように、水酸化マグネシウムだけで炭酸カルシウムを含まないものは、3時間の加工中で、1回以上ホッパー部で詰まりが生じ、加工性が悪かった。なお、実施例1〜11に見られるように、炭酸カルシウムを含んだものは3時間の加工中でホッパー部での詰まりは見られず、加工性に問題がないことがわかる。水酸化マグネシウムと炭酸カルシウムを併用することで、安定した連続加工成形が可能であり、生産効率が高く、安定供給が可能となった。なお、ホッパー部の詰まりを生じさせる原因となっている水酸化マグネシウムの高い安息角の影響が、炭酸カルシウムが混合されることで緩和されるものと思われる。
【要約】
【課題】
難燃性、耐衝撃性、加工性に優れる難燃性樹脂組成物及び成形体を提供する。
【解決手段】
ポリエチレン10〜85質量%、ポリプロピレン4〜85質量%およびポリスチレン0〜40質量%を含有する樹脂(A)100質量部に対し、水酸化マグネシウム(B)をy質量部、炭酸カルシウム(C)をx質量部とすると、下記(1)及び(2)の関係をいずれも満たす樹脂組成物であって、「地中電線を収める管又はトラフの「自消性のある難燃性」試験方法JESC E7003(2005)」の判定基準に適合する難燃性樹脂組成物及び成形体。
(1) 48≧x>0
(2) 30>y≧−0.19x+28.8
【選択図】なし