特許第5788074号(P5788074)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5788074
(24)【登録日】2015年8月7日
(45)【発行日】2015年9月30日
(54)【発明の名称】ヒートパイプ
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20150910BHJP
【FI】
   F28D15/02 102E
   F28D15/02 101H
   F28D15/02 103C
   F28D15/02 103G
   F28D15/02 L
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-232381(P2014-232381)
(22)【出願日】2014年11月17日
【審査請求日】2014年12月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 義勝
(72)【発明者】
【氏名】川畑 賢也
(72)【発明者】
【氏名】三浦 達朗
(72)【発明者】
【氏名】柳田 智基
【審査官】 ▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−110991(JP,A)
【文献】 特開昭58−055687(JP,A)
【文献】 実開昭63−126778(JP,U)
【文献】 特開昭62−066097(JP,A)
【文献】 特開昭57−169598(JP,A)
【文献】 特開昭58−110992(JP,A)
【文献】 実開昭61−181967(JP,U)
【文献】 特開平01−273993(JP,A)
【文献】 特開2002−022381(JP,A)
【文献】 特開2007−056302(JP,A)
【文献】 特開2008−241180(JP,A)
【文献】 特開2004−198096(JP,A)
【文献】 特開昭58−110993(JP,A)
【文献】 特開昭59−215592(JP,A)
【文献】 特開平03−022815(JP,A)
【文献】 特開2014−52110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛇腹状凹凸部が形成され、内部に形成された空洞部が密閉されたコンテナと、前記空洞部の内周面に設けられ、該空洞部の長手方向に直線状に貫通する蒸気流路を有する、毛細管力を生じるウィック構造体と、前記空洞部に封入された作動流体と、を備え、
前記ウィック構造体が、粉末状の金属材料の焼成体であり、前記蛇腹状凹凸部の凸部内へ突設されているヒートパイプであって、
前記ウィック構造体が、前記蛇腹状凹凸部の凸部内の領域と前記蛇腹状凹凸部の凹部の位置に設けられているヒートパイプ
【請求項2】
前記コンテナの長手方向の一部または全部に、扁平加工が施されている請求項に記載のヒートパイプ。
【請求項3】
前記蛇腹状凹凸部が、前記コンテナの長手方向の一部または全部に形成されている請求項1または2に記載のヒートパイプ。
【請求項4】
前記蛇腹状凹凸部が、螺旋形状である請求項1乃至のいずれか1項に記載のヒートパイプ。
【請求項5】
前記凸部内のウィック構造体に、隙間部が形成されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載のヒートパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変形性を有し、且つ該変形形状が維持できる性質を備えた、外部からの入熱を作動流体の潜熱として輸送するヒートパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器に搭載されている半導体素子等の電子部品は、高機能化に伴う高密度搭載等により、発熱量が増大し、近年、その冷却がより重要となっている。電子部品等の発熱体の冷却方法として、熱輸送性能に優れていることから、ヒートパイプが使用されることがある。
【0003】
発熱体が狭い空間に搭載されていたり、複数の発熱体が高密度に搭載されると、ヒートパイプを曲げて発熱体と熱的に接続する必要がある。しかし、従来のヒートパイプは屈曲等の変形性に乏しいので、上記発熱体と十分に熱的に接続することができないという問題があった。
【0004】
上記問題から、近年、曲げやねじれ等の特性に優れたヒートパイプが要求されている。そこで、密閉管に、外周面側で径方向に平行に切り立った深溝、内周面側で毛細管力を生じさせる細溝がそれぞれ形成された蛇腹状螺旋形凹凸溝を形成し、上記深溝により容易に屈曲変形して変形後、直ちに自然復元しないで変形態をそのまま保持すると共に、細溝による毛細管力によって作動流体を還流させる密閉管を形成したヒートパイプが提案されている(特許文献1)。
【0005】
しかし、特許文献1のヒートパイプは、蛇腹状螺旋形凹凸溝の細溝の毛細管力によって作動流体を還流させるので、作動流体の還流が十分ではなく、ヒートパイプの熱輸送能力が低下してしまうという問題があった。また、特許文献1のヒートパイプでは、液相の作動流体の流路と気相の作動流体の流路との区分が不十分なので、対向流となる液相の作動流体の流れと気相の作動流体の流れに抵抗がかかり、この点でも、ヒートパイプの熱輸送能力が低下してしまうという問題があった。このため、特許文献1のヒートパイプは、トップヒートモードでの使用は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−287577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記した従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、曲げやねじれ等の変形が容易で該変形形状が維持できる特性と熱輸送能力ともに優れたヒートパイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、蛇腹状凹凸部が形成され、内部に形成された空洞部が密閉されたコンテナと、前記空洞部の内周面に設けられ、該空洞部の長手方向に貫通する蒸気流路を有する、毛細管力を生じるウィック構造体と、前記空洞部に封入された作動流体と、を備え、前記ウィック構造体と前記蛇腹状凹凸部の凸部との間に空隙部が形成されているヒートパイプである。
【0009】
上記本発明の態様では、コンテナの壁面を変形させることで該壁面を凹凸状に加工し、蛇腹状凹凸部が形成されている。凹凸状に加工されたコンテナの壁面の内面が空洞部を形成するので、空洞部の内周面にも蛇腹状凹凸部が形成されている。
【0010】
上記本発明の態様では、ヒートパイプの一方の端部である入熱部にて、外部の熱源(発熱体)から熱を受熱すると、入熱部にて液相の作動流体が気化し、熱源からの熱が潜熱として作動流体へ移動する。ヒートパイプの内部、すなわち、空洞部は、脱気されているので、入熱部にて気化した作動流体の蒸気、すなわち、気相の作動流体は、入熱部から、空洞部の長手方向に貫通するウィック構造体の蒸気流路だけでなく、ウィック構造体と蛇腹状凹凸部の凸部との間に形成された空隙部も介して、ヒートパイプの他方の端部である放熱部へ流れる。放熱部へ流れた作動流体の蒸気は、該放熱部にて凝縮し、前記潜熱を放出する。放熱部にて放出された潜熱は、放熱部からヒートパイプの外部環境へ放出される。放熱部にて凝縮し液体状となった作動流体は、放熱部からウィック構造体の毛細管力によって入熱部へ戻される。
【0011】
本発明の態様は、蛇腹状凹凸部が形成され、内部に形成された空洞部が密閉されたコンテナと、前記空洞部の内周面に設けられ、該空洞部の長手方向に直線状に貫通する蒸気流路を有する、毛細管力を生じるウィック構造体と、前記空洞部に封入された作動流体と、を備え、前記ウィック構造体が、粉末状の金属材料の焼成体であり、前記蛇腹状凹凸部の凸部内へ突設されているヒートパイプであって、前記ウィック構造体が、前記蛇腹状凹凸部の凸部内の領域と前記蛇腹状凹凸部の凹部の位置に設けられているヒートパイプである。
【0012】
なお、本明細書中、「蛇腹状凹凸部」の凹凸部について、ヒートパイプ外部から見て突出している部位が凸部、該凸部に対して窪んでいる部位が凹部である。
【0013】
本発明の態様は、前記コンテナの長手方向の一部または全部に、扁平加工が施されているヒートパイプである。扁平加工は、蛇腹状凹凸部が形成された部位でもよく、蛇腹状凹凸部が形成されていない部位でもよく、その両方の部位でもよい。
【0014】
本発明の態様は、前記蛇腹状凹凸部が、前記コンテナの長手方向の一部または全部に形成されているヒートパイプである。また、本発明の態様は、前記蛇腹状凹凸部が、螺旋形状であるヒートパイプである。
【0015】
本発明の態様は、前記ウィック構造体が、金属メッシュであるヒートパイプである。また、本発明の態様は、前記ウィック構造体が、粉末状の金属材料の焼成体であるヒートパイプである。また、本発明の態様は、前記凸部内のウィック構造体に、隙間部が形成されているヒートパイプである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の態様によれば、コンテナに蛇腹状凹凸部が形成されているので、ヒートパイプの、曲げやねじれ等の変形が容易で該変形形状が維持できる特性を有する。このように、本発明のヒートパイプは上記特性に優れるので、発熱体が狭い空間に搭載されていたり、複数の発熱体が高密度に搭載されていても、ヒートパイプに曲げ等の変形を施すことにより、確実に、被冷却体である発熱体と熱的に接続することができる。また、本発明の態様によれば、蛇腹状凹凸部により、ヒートパイプに加えられる振動や衝撃を吸収することができるので、揺れや衝撃を受ける部位にヒートパイプを設置しても、ヒートパイプの損傷や脱落を防止できる。
【0017】
本発明の態様によれば、空洞部の内周面に空洞部の長手方向に貫通する蒸気流路を有するウィック構造体が設置され、さらに、ウィック構造体と蛇腹状凹凸部の凸部との間に空隙部が形成され、気相の作動流体が上記蒸気流路と上記空隙部を入熱部から放熱部へ流れ、液相の作動流体がウィック構造体を放熱部から入熱部へ流れるので、気相の作動流体の流路と液相の作動流体の流路を確実に分離でき、結果、熱輸送効率に優れる。
【0018】
また、本発明の態様によれば、ウィック構造体と蛇腹状凹凸部の凸部との間に形成された空隙部は気相の作動流体の流路であり、該空隙部に液相の作動流体が流入することを防止できるので、蛇腹状凹凸部の凸部も優れた放熱能力を有し、ヒートパイプの放熱効率が向上する。
【0019】
本発明の態様によれば、ウィック構造体が、蛇腹状凹凸部の凸部内の領域にも設けられているので、ウィック構造体の毛細管力がより向上しつつ、蛇腹状凹凸部により、平滑面のみのコンテナと比較して表面積が増大するので、放熱効果もより向上する。また、本発明の態様によれば、蛇腹状凹凸部の凸部内に形成されたウィック構造体に隙間部が存在する、すなわち、凸部内に形成されたウィック構造体内部や凸部内に形成されたウィック構造体と凸部の内面との間に隙間部が存在する場合には、前記凸部内のウィック構造体により、毛細管力がより向上しつつ、前記隙間部が前記空隙部と同様の作用を発揮するので、蛇腹状凹凸部の凸部が優れた放熱能力を有する。
【0020】
本発明の態様によれば、コンテナの長手方向の一部または全部に、扁平加工が施されていることにより、発熱体との熱的接続性がより向上し、ヒートパイプの冷却能力がより増大する。また、上記扁平加工により、より狭い空間にも、ヒートパイプを配置することができる。さらに、入熱部側端部と放熱部側端部を扁平加工することにより、入熱部では発熱体との接触面積が増大し、かつ放熱部では冷却風の圧損を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態例に係るヒートパイプの側面図である。
図2】本発明の第1実施形態例に係るヒートパイプの側面断面図である。
図3図1におけるヒートパイプのA−A’断面図である。
図4】本発明の第2実施形態例に係るヒートパイプの側面断面図である。
図5】(a)図は、本発明の第3実施形態例に係るヒートパイプの部分側面図、(b)図は、図5(a)におけるヒートパイプのB−B’断面図である。
図6】本発明の第4実施形態例に係るヒートパイプの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の第1実施形態例に係るヒートパイプについて、図面を用いながら説明する。図1、2に示すように、第1実施形態例に係るヒートパイプ1は、径方向の断面が円形である密閉された管から形成されたコンテナ2と、コンテナ2内部の空洞部3の内周面に接した状態で設置された、毛細管力を生じさせるウィック構造体4と、空洞部3に封入された作動流体(図示せず)と、を有する。コンテナ2の周方向の壁面には、コンテナ2の長手方向の中央部に、コンテナ2の長手方向に対して平行方向に、コンテナ2の長軸を中心軸として螺旋形状の蛇腹状凹凸部6が形成されている。また、ウィック構造体4には、ウィック構造体4内部を空洞部3の長手方向に直線状に貫通する貫通孔である、蒸気流路5が設けられている。
【0023】
ヒートパイプ1では、コンテナ2の両端部には、螺旋形状の蛇腹状凹凸部6は形成されておらず、コンテナ2の内周面及び外周面は、ともに平滑となっている。このコンテナ2の両端部のうち、一方の端部は入熱部側端部7であり、他方の端部は放熱部側端部8である。入熱部側端部7が被冷却体である発熱体と熱的に接続されることで、入熱部側端部7が発熱体からの熱を受熱する。また、放熱部側端部8に、放熱フィンやヒートシンク等の熱交換手段(図示せず)を取り付けたり、放熱部側端部8を、直接、外部環境に露出させることにより、放熱部側端部8を冷却する。放熱部側端部8を冷却することにより、入熱部側端部7から放熱部側端部8へ輸送された発熱体由来の熱を、放熱部側端部8からヒートパイプ1外へ放出する。
【0024】
螺旋形状の蛇腹状凹凸部6には、凸部10と凹部11が、コンテナ2の長手方向に対して平行方向に、交互に、繰り返し形成されている。従って、凸部10も、凹部11も、コンテナ2の長手方向に螺旋状に伸びている。凸部10は、凹部11に対して、コンテナ2の径方向に対して平行方向または略平行方向にコンテナ2の内周面側から外周面側へ突出し、凹部11は、凸部10に対して、コンテナ2の径方向に対して平行方向または略平行方向にコンテナ2の外周面側から内周面側へ突出している。
【0025】
螺旋形状の蛇腹状凹凸部6では、凸部10の幅は特に限定されず、均一な幅でもよく、不均一な幅でもよい。また、凹部11の幅も特に限定されず、均一な幅でもよく、不均一な幅でもよい。さらに、螺旋形状の蛇腹状凹凸部6では、凸部10の高さ、凹部11の深さ、ともに、特に限定されず、均一な寸法でも、不均一な寸法でもよい。
【0026】
図2、3に示すように、空洞部3には、入熱部側端部7から放熱部側端部8まで、ウィック構造体4が配置されている。ウィック構造体4は、コンテナ2の内周面、すなわち、空洞部3の周面に接した状態で空洞部3に収容されている。ヒートパイプ1には、コンテナ2の長手方向に対して平行方向に、螺旋形状の蛇腹状凹凸部6が形成されているので、空洞部3の周面のうち凹部11に相当する位置とウィック構造体4の外面とが接した状態で、ウィック構造体4が空洞部3に収容されている。
【0027】
ヒートパイプ1では、ウィック構造体4の形状は円筒形となっている。また、上記の通り、ウィック構造体4の外面が凹部11と接している。従って、ウィック構造体4の外面と螺旋形状の蛇腹状凹凸部6の凸部10との間には空隙部12が形成されている。すなわち、凸部10の内部空間が空隙部12となっている。凸部10も凹部11もコンテナ2の長手方向に螺旋状に形成されていることに対応して、空隙部12も空洞部3の長手方向に螺旋状に伸びている。
【0028】
また、図2に示すように、空洞部3の周面のうち凹部11に相当する位置とウィック構造体4の外面とが接した状態であることに対応して、螺旋形状の蛇腹状凹凸部6が形成されていないコンテナ2の両端部では、空洞部3の周面とウィック構造体4の外面とは接触しておらず、空間部13が形成されている。この空間部13は空隙部12と連通した状態となっている。
【0029】
さらに、円筒形であるウィック構造体4には、空洞部3の長手方向に対して平行方向または略平行方向にウィック構造体4内部を貫通する蒸気流路5が設けられている。図3に示すように、蒸気流路5の、ウィック構造体4の径方向に対して平行方向の断面は、円形状となっている。
【0030】
ウィック構造体4の蒸気流路5とウィック構造体4外面と螺旋形状の蛇腹状凹凸部6の凸部10との間に形成された空隙部12とが、ヒートパイプ1の一方の端部である入熱部側端部7にて気化した作動流体を、入熱部側端部7からヒートパイプ1の他方の端部である放熱部側端部8へ流す、気相の作動流体の流路となることで、発熱体から受熱した熱を入熱部側端部7から放熱部側端部8へ輸送することができる。入熱部側端部7から放熱部側端部8へ輸送された気相の作動流体は、放熱部側端部8にて潜熱を放出し、凝縮して液相の作動流体となる。
【0031】
ウィック構造体4は、所定の毛細管力を生じさせる。従って、ウィック構造体4が、その毛細管力によって、放熱部側端部8にて凝縮した作動流体を放熱部側端部8から入熱部側端部7へ還流させる。ウィック構造体4の毛細管力は、例えば、ウィック構造体4が占める体積に対する、ウィック構造体4のウィック材料が存在しない空間の体積の比率、すなわち、ウィック構造体4の空孔率を調節することで、調整できる。
【0032】
ヒートパイプ1では、ウィック構造体4に形成された蒸気流路5と、ウィック構造体4とコンテナ2の凸部10との間の空隙部12とが、気相の作動流体を入熱部側端部7から放熱部側端部8へ流す流路となり、ウィック構造体4が液相の作動流体を放熱部側端部8から入熱部側端部7へ還流させる。従って、ヒートパイプ1では、相互に対向流となる気相の作動流体と液相の作動流体について、その流通路が明確に区分されるので、良好な熱輸送効率が得られる。また、上記の通り、ウィック構造体4とコンテナ2の凸部10との間の空隙部12は、気相の作動流体の流路であり、液相の作動流体の空隙部12への流入は、毛細管力を生じさせるウィック構造体4の存在によって防止される。従って、凸部10内部、すなわち、空隙部12は気相となっているので、凸部10からヒートパイプ1の外部環境への放熱も促進され、結果、ヒートパイプ1の冷却効果がより向上する。
【0033】
コンテナ2の材質については、特に限定されないが、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等を使用することができる。また、ウィック構造体4の材質は、特に限定されないが、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属メッシュ等を挙げることができる。コンテナ2の内部空間に封入する作動流体としては、コンテナ2の材料との適合性に応じて、適宜選択可能であり、例えば、水、代替フロン、フロリーナ、シクロペンタン等を挙げることができる。
【0034】
次に、本発明の第1実施形態例に係るヒートパイプ1の使用方法例について説明する。ヒートパイプ1の使用方法は、特に限定されないが、ヒートパイプ1は、例えば、狭小空間に設置された基板上に実装されている電子部品(発熱体)を冷却することができる。この場合、螺旋形状の蛇腹状凹凸部6の部分で、ヒートパイプ1に、発熱体周辺の空間の状況や発熱体の位置に応じた必要な曲げやねじれ等の変形を施した後、入熱部側端部7を基板上の電子部品と熱的に接続し、放熱部側端部8を上記した熱交換手段等にて冷却することで、狭小空間に設けられた基板上の電子部品を冷却できる。
【0035】
次に、本発明の第1実施形態例に係るヒートパイプ1の製造方法例について説明する。ヒートパイプ1の製造方法は、特に限定されないが、例えば、螺旋形状の蛇腹状凹凸部6を備えた管材内に、シート状の金属メッシュを丸めて円筒状にしたもの挿入してウィック構造体4を形成した後、管材内に作動流体を注入後、管材を密閉してコンテナ2を形成することによりヒートパイプ1を製造できる。螺旋形状の蛇腹状凹凸部6は、例えば、コンテナ2の材料となる管材内に、芯棒を挿入した後、ローラー等でコンテナ2の材料となる管材の壁面を塑性変形することで形成できる。
【0036】
次に、本発明の第2実施形態例に係るヒートパイプについて、図面を用いながら説明する。なお、第1実施形態例に係るヒートパイプと同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0037】
図4に示すように、本発明の第2実施形態例に係るヒートパイプ30では、螺旋形状の蛇腹状凹凸部6の凸部10内の領域にも、毛細管力を生じさせるウィック構造体34が設けられている。図4では、凸部10内の領域はウィック構造体34で充填されている。また、ヒートパイプ30では、ウィック構造体34は空洞部3の周面全体と接した状態となっている。すなわち、空洞部3の、螺旋形状の蛇腹状凹凸部6の凹部11の位置だけではなく、凸部10の位置、螺旋形状の蛇腹状凹凸部6が形成されていない入熱部側端部7の位置及び螺旋形状の蛇腹状凹凸部6が形成されていない放熱部側端部8の位置と、ウィック構造体34の外面とが接した状態で、ウィック構造体34が空洞部3に収容されている。従って、ヒートパイプ30では、ヒートパイプ1の空隙部12及び空間部13に相当する部位は形成されない。
【0038】
上記から、図4に示すように、凸部10の位置、螺旋形状の蛇腹状凹凸部6が形成されていない入熱部側端部7及び放熱部側端部8の位置におけるウィック構造体34の厚さは、いずれも、凹部11の位置におけるウィック構造体34の厚さよりも、凹部11の深さの寸法分、厚くなっている。
【0039】
ウィック構造体34には、空洞部3の長手方向に対して平行方向または略平行方向にウィック構造体34内部を直線状に貫通する蒸気流路5が設けられている。また、蒸気流路5の、ウィック構造体34の径方向に対して平行方向の断面は、円形状となっている。
【0040】
ウィック構造体34が、螺旋形状の蛇腹状凹凸部6の凸部10内にも設けられ、空洞部3の周面全体と接した状態となっているので、ヒートパイプ30では、ウィック構造体34の毛細管力がより向上し、さらに、螺旋形状の蛇腹状凹凸部6により、平滑面のみのコンテナと比較して表面積が増大するので、放熱効果も向上する。
【0041】
ヒートパイプ30では、凸部10内の領域はウィック構造体34で充填されているが、螺旋形状の蛇腹状凹凸部6の凸部10内の領域に位置するウィック構造体34には、隙間部(図示せず)が存在する(すなわち、製造時に前記隙間部が形成される)場合もある。前記隙間部は、ウィック構造体34内部やウィック構造体34と凸部10の内面との間に形成される。前記隙間部が形成される場合、凸部10内にもウィック構造体34が形成されていることにより、毛細管力がより向上しつつ、前記隙間部内は気相となるので、前記隙間部はヒートパイプ1の空隙部12と同様の作用を発揮して、螺旋形状の蛇腹状凹凸部6の凸部10が優れた放熱能力を有する。
【0042】
ウィック構造体34の材質は、特に限定されないが、例えば、粉末状である、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属材料の焼成体等を挙げることができる。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態例に係るヒートパイプ30の製造方法例について説明する。ヒートパイプ30の製造方法は、特に限定されないが、例えば、螺旋形状の蛇腹状凹凸部6を備えた管材内に、芯棒を挿入し、管材の内壁面と芯棒との間に形成された空隙に粉末状の金属材料を充填後、加熱処理して、金属材料の焼成体であるウィック構造体34を形成する。加熱処理後、芯棒を管材から引き抜き、管材内に作動流体を注入して、管材を密閉しコンテナ2を形成することによりヒートパイプ30を製造できる。このように管材に蛇腹状凹凸部を形成してから、金属粉末を充填して焼成体を形成することで、蛇腹状凸凹部にも金属粉末が充填し、ウィック構造体が蛇腹状凹凸部の凸部内へ突設されているヒートパイプ構造になる。また、先ず、管材に蛇腹状凹凸部を形成してから、金属粉末を充填して焼成体を形成することで、金属粉末を充填して焼成体を形成した後に蛇腹状凹凸部を形成した場合の焼成体の割れや剥がれを防止することができる。
【0044】
次に、本発明の第3実施形態例に係るヒートパイプについて、図面を用いながら説明する。なお、第1実施形態例に係るヒートパイプと同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0045】
図5(b)に示すように、第3実施形態例に係るヒートパイプ1’では、第1実施形態例に係るヒートパイプ1の、径方向の断面が円形であるコンテナ2に代えて、コンテナ22に扁平加工が施されている。すなわち、円形の管材に扁平加工が施されることで、コンテナ22の径方向に対して平行方向の断面が、対向する平坦部と対向する曲部とを有する形状となっている。ヒートパイプ1’では、入熱部側端部(図示せず)から放熱部側端部(図示せず)まで、ヒートパイプ1’の長手方向の中央部に形成された螺旋形状の蛇腹状凹凸部26の部分を含めて扁平加工が施されている。また、上記扁平加工に応じて、コンテナ22内部に収容されたウィック構造体4も、扁平に変形している。
【0046】
図5(a)に示すように、ヒートパイプ1’の螺旋形状の蛇腹状凹凸部26には、第1実施形態例に係るヒートパイプ1と同様に、凸部20と凹部21が、コンテナ22の長手方向に対して平行方向に、交互に、繰り返し形成されている。
【0047】
また、図5(b)に示すように、ヒートパイプ1’のウィック構造体4には、第1実施形態例に係るヒートパイプ1と同様に、ウィック構造体4を貫通する貫通孔である蒸気流路5が設けられている。ウィック構造体4が扁平に変形していることに応じて、蒸気流路5の、ウィック構造体4の径方向に対して平行方向の断面も、対向する略平坦部と対向する曲部とを有する形状となっている。
【0048】
さらに、ヒートパイプ1’では、第1実施形態例に係るヒートパイプ1と同様に、ウィック構造体4の外面が凹部21と接している。よって、ウィック構造体4の外面と螺旋形状の蛇腹状凹凸部26の凸部20との間には空隙部12が形成されている。
【0049】
ヒートパイプ1’では、コンテナ22に扁平加工が施されて平坦部が形成されていることにより、発熱体との熱的接続性がより向上し、ヒートパイプの冷却能力がより増大する。また、上記扁平加工により、ヒートパイプ1’の高さが低減されるので、隙間のような狭い空間にも、ヒートパイプ1’を配置することができる。さらに、入熱部側端部と放熱部側端部を扁平加工することにより、入熱部では発熱体との接触面積を増大させつつ、放熱部では冷却風の圧損を低減できる。
【0050】
次に、本発明の第4実施形態例に係るヒートパイプについて、図面を用いながら説明する。なお、上記実施形態例に係るヒートパイプと同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0051】
図6に示すように、第4実施形態例に係るヒートパイプ40では、螺旋形状の蛇腹状凹凸部6、26に代えて、コンテナに螺旋形状ではない蛇腹状凹凸部56が形成されている。第4実施形態例に係るヒートパイプ40では、螺旋形状ではない蛇腹状凹凸部56の凸部50が、複数形成され、それぞれの凸部50は、コンテナ2の長軸を中心に同心円状に形成されている。また、凹部51も、複数形成され、それぞれの凹部51は、コンテナ2の長軸を中心に同心円状に形成されている。つまり、螺旋形状ではない蛇腹状凹凸部56の各凸部50は、その頂部が、コンテナ2の径方向に対して平行方向または略平行方向(図6では平行方向)に対向した構造となっている。また、螺旋形状ではない蛇腹状凹凸部56の各凹部51は、その底部が、コンテナ2の径方向に対して平行方向または略平行方向(図6では平行方向)に対向した構造となっている。
【0052】
上記蛇腹状凹凸部56でも、ヒートパイプ40に、曲げやねじれ等の変形が容易で該変形形状が維持できる特性を付与できる。なお、ヒートパイプ40でも、ウィック構造体は、金属メッシュでもよく、金属材料の焼成体でもよい。
【0053】
次に、本発明のその他の実施形態例について説明する。上記各実施形態例では、螺旋形状の蛇腹状凹凸部はヒートパイプの中央部に形成され、入熱部側端部と放熱部側端部には螺旋形状の蛇腹状凹凸部が形成されていなかったが、これに代えて、ヒートパイプの中央部だけでなく、入熱部側端部及び/または放熱部側端部にも螺旋形状の蛇腹状凹凸部が形成されてもよく、ヒートパイプの全面に螺旋形状の蛇腹状凹凸部が形成されてもよい。また、第3実施形態例に係るヒートパイプでは、ヒートパイプの全面に扁平加工が施されていたが、これに代えて、入熱部側端部及び/または放熱部側端部に扁平加工が施され、螺旋形状の蛇腹状凹凸部には扁平加工が施されていない態様でもよい。
【0054】
第3実施形態例に係るヒートパイプ1’では、第1実施形態例に係るヒートパイプ1のコンテナに扁平加工が施された態様であったが、これに代えて、第2実施形態例に係るヒートパイプ30のコンテナに扁平加工が施された態様でもよい。また、蛇腹状凹凸部の形状は、特に限定されず、上記した螺旋形状や複数の凹部と凸部が同心円状に配置された形状のほか、例えば、凸部及び凹部が複数形成され、各凸部の頂部及び各凹部の底部が、対向していない形状でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のヒートパイプは、曲げやねじれ等の変形が容易で該変形形状が維持できる特性と優れた熱輸送能力とを有するので、例えば、狭い空間に配置された発熱体を冷却する分野で利用価値が高い。
【符号の説明】
【0056】
1、1’、30、40 ヒートパイプ
2、22 コンテナ
3 空洞部
4、34 ウィック構造体
5 蒸気流路
6、26 螺旋形状の蛇腹状凹凸部
12 空隙部
56 螺旋形状ではない蛇腹状凹凸部
【要約】      (修正有)
【課題】曲げやねじれ等の変形が容易で該変形形状が維持できる特性と熱輸送能力ともに優れたヒートパイプを提供する。
【解決手段】蛇腹状凹凸部6が形成され、内部に形成された空洞部3が密閉されたコンテナと、前記空洞部3の内周面に設けられ、該空洞部3の長手方向に貫通する蒸気流路5を有する、毛細管力を生じるウィック構造体4と、前記空洞部3に封入された作動流体と、を備え、前記ウィック構造体4と前記蛇腹状凹凸部6の凸部10との間に空隙部12が形成されているヒートパイプ1。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6