(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリアリーレンエーテルA)がDIN EN ISO 1628−1に従って測定した、0.20〜0.95dl/gの粘度数を有する、請求項1または2記載の熱可塑性成形材料。
ポリアリーレンエーテルA)として、カルボキシ基なしで、重合体鎖1個当たり平均で最大0.5個のフェノール性末端基を有するポリエーテルスルホンが使用される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
ポリアリーレンエーテルE)がDIN EN ISO 1628−1に従って測定した、40〜65ml/gの粘度数を有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性成形材料であって、次の成分
A)カルボキシ基なしで、重合体鎖1個当たり平均で最大0.5個のフェノール性末端基を有する、少なくとも1つのポリアリーレンエーテルを10〜50質量%、
B)少なくとも1つのポリフェニレンスルフィドを5〜44.5質量%、
C)少なくとも1つの繊維状および/または粒子状の充填剤を10〜65質量%、
D)弾性グラファイトを0.5〜20質量%、
E)カルボキシ基を含む、少なくとも1つのポリアリーレンエーテルを0〜20質量%、
F)カルボキシ基なしで、重合体鎖1個当たり平均で少なくとも1.5個のフェノール性末端基を有する、少なくとも1つのポリアリーレンエーテルを0〜20質量%、
G)少なくとも1つの添加剤を0〜40質量%
含有し、
その際に成分A)〜G)の質量割合の総和は、前記成形材料に対して100質量%である、前記熱可塑性成形材料に関する。
【0002】
さらに、本発明は、被覆剤としての前記熱可塑性成形材料の使用および繊維、シートまたは成形体を製造するための前記熱可塑性成形材料の使用ならびにかかる熱可塑性成形材料を含有する繊維、シートまたは成形体に関する。
【0003】
好ましい実施態様は、特許請求の範囲および明細書から確認することができる。好ましい実施態様の組合せは、本発明の範囲内にある。
【0004】
高性能熱可塑性樹脂に対する需要は、重要性を増しており、その際に殊に、高い熱成形安定性、良好な機械的加工性および固有の難燃性を有する成形材料の需要が多い。
【0005】
ポリアリーレンエーテルは、高い熱成形安定性、良好な機械的性質および固有の難燃性によって優れている。
【0006】
しかし、ポリアリーレンエーテルは、非晶質であり、したがって、一部は、アグレッシブな媒体に対して僅かな安定性を示す。さらに、ポリアリーレンエーテルは、高い溶融粘度も有し、このことは、特に射出成形による大型の成形品への加工を損なう。また、高い溶融粘度は、高い充填材負荷量または繊維負荷量を有する成形材料を製造する際に不利である。
【0007】
ポリアリーレンエーテルとポリフェニレンスルフィドとゴムとからなる熱可塑性成形材料は、公知であり、この熱可塑性成形材料は、当該明細書によれば、改善された流動能および良好な耐化学薬品性を示す(欧州特許第673973号明細書)。この熱可塑性成形材料は、添加剤として炭素繊維を含むことができる。
【0008】
他方で、英国特許第2113235号明細書Aには、ポリフェニレンスルフィドおよびヒドロキシ基を有するポリアリーレンエーテルを含む熱可塑性成形材料が開示されている。
【0009】
欧州特許第855428号明細書および欧州特許第903376号明細書から、官能化されたポリアリーレンエーテルの他に、ゴムを含む、繊維強化されたポリアリーレンエーテルは、公知である。
【0010】
本発明の課題は、改善された加工性を有する熱可塑性成形材料を提供することであった。殊に、前記融液中での加工性は、高い繊維負荷量の際に改善されるべきであった。
【0011】
さらに、生じる熱可塑性成形材料は、良好な機械的性質、例えば破断点伸びおよび/または引裂強さによって優れているべきであった。
【0012】
それに応じて、冒頭に規定された熱可塑性成形材料が見い出された。
【0013】
成分A
本発明によれば、前記熱可塑性成形材料は、重合体鎖1個当たり平均で最大0.5個のフェノール性末端基を有する、少なくとも1つまたはそれ以上、特に1つのポリアリーレンエーテル(A)を含む。その際に、「平均で」の表現は、数平均を意味する。
【0014】
成分A)は、本発明による熱可塑性成形材料において、特に10〜50質量%、特に有利に14〜45質量%、殊に20〜45質量%、殊に有利に30〜45質量%の量であり、その際に成分A)〜G)の質量割合の総和は、前記成形材料に対して100質量%である。
【0015】
フェノール性末端基が反応性でありかつ熱可塑性成形材料において少なくとも部分的に変換された形で存在しうることは、当業者に周知である。前記熱可塑性成形材料は、特に前記成分を流動性状態で配合することにより、すなわち混合することにより製造される。
【0016】
フェノール性末端基とは、本発明の範囲内で、芳香族核に結合しておりかつ任意に脱プロトン化されて存在していてもよいヒドロキシ基であると解釈される。フェノール性末端基が塩基の作用のためにプロトンの分離によって、いわゆるフェノラート末端基として存在していてもよいことは、当業者に公知である。従って、フェノール性末端基の概念は、明確に芳香族OH基ならびにフェノラート基を含む。
【0017】
フェノール性末端基の割合は、特に電位差滴定によって測定される。このために、ポリマーは、ジメチルホルムアミド中に溶解され、かつトルエン/メタノール中のテトラブチルアンモニウムヒドロキシドの溶液によって滴定される。滴定終点の検出は、電位差測定により行なわれる。ハロゲン末端基の割合は、特に原子分光分析により測定される。
【0018】
ポリマーの全体量(m
OH)に対するフェノール性末端基の質量割合および数平均分子量(M
np)から、当業者は、公知方法により厳密に直鎖状ポリマー鎖を想定して次式:
n
OH=m
OH[質量%で]/100*M
np[g/molで]*1/17
によりポリマー鎖1本当たりのフェノール性末端基の平均数(n
OH)を算出することができる。
【0019】
それとは別に、ポリマー鎖1本当たりのフェノール性末端基の平均数(n
OH)は、厳密に直鎖状ポリマー鎖を前提に、同時にCl末端基の質量割合(m
Cl)を考慮したうえでOH末端基およびCl末端基だけが存在することを想定して、次のように算出することができる:n
OH =2/(1+(17/35.45*m
Cl/m
OH))。Clとは異なる末端基の場合に、如何にして算出方法に適合させることができるかは、当業者に公知である。
【0020】
末端基を同時に制御する、ポリアリーレンエーテルの製造は、当業者に公知であり、かつさらに下記に詳細に記載される。公知のポリアリーレンエーテルは、通常、ハロゲン末端基、殊に−Fまたは−Cl、またはフェノール性OH末端基またはフェノラート末端基を有し、その際の後者のフェノラート末端基は、それ自体として存在していてよいか、または反応された形で、殊に−OCH
3末端基の形で存在していてよい。
【0021】
特に、ポリアリーレンエーテル(A)は、成分(A)の質量に対して、フェノール性末端基を最大0.01質量%、特に有利に最大0.005質量%有する。
【0022】
成分(A)におけるフェノール性末端基の含量に対するそれぞれの上限は、1分子当たりの使用できる末端基の数(直鎖状ポリアリーレンエーテルの場合の2個)および数平均鎖長からもたらされる。相応する算出法は、当業者に公知である。
【0023】
特に、ポリマー鎖1本当たりの成分(A)のフェノール性末端基の平均数は、0〜0.2、殊に0〜0.1、特に有利に0〜0.05、殊に有利に0〜0.02、とりわけ有利に最大0.01である。
【0024】
ポリアリーレンエーテルは、ポリマークラスとして当業者に公知である。原理的に当業者に公知の全てのポリアリーレンエーテルおよび/または公知方法により製造可能な全てのポリアリーレンエーテルが成分(A)としてこれに該当する。相応する方法は、さらに下記に説明される。
【0025】
好ましいポリアリーレンエーテル(A)は、一般式I:
【化1】
〔式中、符号t、q、Q、T、Y、ArおよびAr
1は、次の意味を有する:
t、q:互いに独立して、0、1、2または3、
Q、T、Y:互いに独立して、それぞれ化学結合、または−O−、−S−、−SO
2−、S=O、C=O、−N=N−および−CR
aR
b−から選択された基、その際にR
aおよびR
bは、互いに独立して、それぞれ水素原子またはC
1〜C
12アルキル基、C
1〜C
12アルコキシ基もしくはC
6〜C
18アリール基を表わし、およびその際にQ、TおよびYからの少なくとも1つは、−SO
2−を表わし、および
Ar、Ar
1:互いに独立して、6〜18個の炭素原子を有するアリーレン基〕の構造単位から構成されている。
【0026】
Q、TまたはYが上記記載の前提のもとに化学結合である場合には、当該結合に隣接した基および当該結合の右側に隣接した基は、1個の化学結合を介して直接互いに結合して存在しているものと解釈できる。
【0027】
しかし、特に、式I中のQ、TおよびYは、互いに独立して、−O−および−SO
2−から選択され、但し、Q、TおよびYからなる群からの少なくとも1つは、−SO
2−を表わす。
【0028】
Q、TおよびYが−CR
aR
b−である場合は、R
aおよびR
bは、互いに独立して、それぞれ水素原子またはC
1〜C
12アルキル基、C
1〜C
12アルコキシ基もしくはC
6〜C
18アリール基を表わす。
【0029】
好ましいC
1〜C
12アルキル基は、1〜12個の炭素原子を有する直鎖状および分枝鎖状の飽和アルキル基を含む。殊に、次の基を挙げることができる:C
1〜C
6アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、2−メチル−ペンチルまたは3−メチル−ペンチルおよび長鎖状基、例えば分枝鎖状のヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ラウリルおよびこれらのモノまたはポリの分枝鎖状類似体。
【0030】
前記の使用可能なC
1〜C
12アルコキシ基におけるアルキル基として、1〜12個の炭素原子を有する、さらなる上記に規定されたアルキル基がこれに該当する。特に使用可能なシクロアルキル基は、殊にC
3〜C
12シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロプロピルメチル、シクロプロピルエチル、シクロプロピルプロピル、シクロブチルメチル、シクロブチルエチル、シクロペンチルエチル、シクロペンチルプロピル、シクロペンチルブチル、シクロペンチルペンチル、シクロペンチルヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルジメチルおよびシクロヘキシルトリメチルを含む。
【0031】
ArおよびAr
1は、互いに独立して、C
6〜C
18アリーレン基を意味する。さらに下記された出発生成物から出発して、Arは、有利にヒドロキノン、レソルシン、ジヒドロキシナフタリン、殊に2,7−ジヒドロキシナフタリンおよび4,4’−ビスフェノールからなる群から選択される、電子に富んだ、容易に求電子的に攻撃可能な芳香族物質に由来する。特に、Ar
1は、非置換のC
6アリーレン基またはC
12アリーレン基である。
【0032】
C
6〜C
18アリーレン基ArおよびAr
1として、殊にフェニレン基、例えば1,2−フェニレン、1,3−フェニレンおよび1,4−フェニレン、ナフチレン基、例えば1,6−ナフチレン、1,7−ナフチレン、2,6−ナフチレンおよび2,7−ナフチレン、ならびにアントラセン、フェナントレンおよびナフタセンに由来するアリーレン基がこれに該当する。
【0033】
特に、ArおよびAr
1は、式Iによる好ましい実施態様において、互いに独立して、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、ナフチレン、殊に2,7−ジヒドロキシナフチレンおよび4,4’−ビスフェニレンからなる群から選択される。
【0034】
好ましいポリアリーレンエーテル(A)は、繰返し構造単位としての少なくとも1つの次の構造単位Ia〜Io:〜を含む、かかるポリアリーレンエーテルである。
【0035】
【化2】
【0036】
【化3】
【0037】
好ましい構造単位Ia〜Ioに加えて、ヒドロキノンに由来する1個以上の1,4−フェニレン単位がレソルシンに由来する1,3−フェニレン単位またはジヒドロキシナフタリンに由来するナフチレン単位によって代用されている、かかる構造単位も好ましい。
【0038】
一般式Iの構造単位として、構造単位Ia、IgおよびIkが特に好ましい。さらに、成分(A)のポリアリーレンエーテルが基本的に一般式Iの種類の構造単位から、殊にIa、IgおよびIkから選択された構造単位から構成されていることは、特に好ましい。
【0039】
特に好ましい実施態様において、Arは、1,4−フェニレンであり、tは、1であり、qは、0であり、Tは、化学結合であり、かつYは、SO
2である。前記繰返し単位から構成された、特に好ましいポリアリーレンエーテルスルホン(A)は、ポリフェニレンスルホン(PPSU)と呼称される(式Ig)。
【0040】
さらなる特に好ましい実施態様において、Arは、1,4−フェニレンであり、tは、1であり、qは、0であり、Tは、C(CH
3)
2であり、かつYは、SO
2である。前記繰返し単位から構成された、特に好ましいポリアリーレンエーテルスルホン(A)は、ポリスルホン(PSU)と呼称される(式Ia)。
【0041】
さらなる特に好ましい実施態様において、Arは、1,4−フェニレンであり、tは、1であり、qは、0であり、TおよびYは、それぞれSO
2である。前記繰返し単位から構成された、特に好ましいポリアリーレンエーテルスルホン(A1)は、ポリエーテルスルホン(PESU)と呼称される(式Ik)。この実施態様が特に好ましい。
【0042】
略符号、例えばPPSU、PESUおよびPSUは、本発明の範囲内で、DIN EN ISO 1043−1:2001に相当する。
【0043】
本発明のポリアリーレンエーテル(A)は、標準としての狭く分布されるポリメチルメタクリレートと比較して溶剤ジメチルアセトアミド中でゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した、特に10000〜150000g/mol、殊に15000〜120000g/mol、特に有利に18000〜100000g/molの質量平均分子量M
wを有する。
【0044】
さらに、ポリアリーレンエーテル(A)は、350℃/1150s
-1での見掛け溶融粘度150〜300Pa.s、有利に150〜275Pa.sを有する。
【0045】
流動性は、前記溶融粘度につき評価された。前記溶融粘度は、毛管流動計により測定された。その際に、350℃での前記見掛粘度は、長さ30mm、0.5mmの半径、180°のノズル入口角度、12mmの融液の貯蔵容器の直径および5分間の予熱時間を有する円形毛管を備えた毛管粘度計(Goettfert Kapillarviskosimeter Rheograph 2003)における剪断速度の関数として測定された。1150s
-1で測定された値が記載されている。
【0046】
前記ポリアリーレンエーテルを生じる製造法は、当業者に自体公知であり、例えばHerman F.Mark,"Encyclopedia of Polymer Science and Technology",第3版,第4巻,2003,第2〜8頁の章"Polysulfones"中、ならびにHandbook of Polymer Synthesis,第2版,2005,第427〜443頁のHans R.Kricheldorf,"Aromatic Polyethers"中に記載されている。
【0047】
非プロトン性の極性溶剤中で無水アルカリ金属炭酸塩、殊に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムまたはその混合物の存在下での2個のハロゲン置換基を有する少なくとも1つの芳香族化合物と、前記ハロゲン置換基と比較して反応性である2個の官能基を有する少なくとも1つの芳香族化合物との反応は、特に好ましく、その際に炭酸カルシウムが特に有利である。溶剤としてのN−メチルピロリドンと塩基としての炭酸カリウムは、特に適当な組合せである。
【0048】
特に、OH末端基またはフェノラート末端基と適当なエーテル化剤との反応によって得られるポリアリーレンエーテル(A)は、ハロゲン末端基、殊にクロロ末端基を有するかまたはエーテル化末端基、殊にアルキルエーテル末端基を有する。
【0049】
適当なエーテル化剤は、例えば一官能性のアルキルハロゲン化物またはアリールハロゲン化物、例えばC
1〜C
6アルキルクロリド、C
1〜C
6アルキルブロミドもしくはC
1〜C
6アルキルヨージド、有利に塩化メチル、または塩化ベンジル、臭化ベンジルもしくはヨウ化ベンジルまたはその混合物である。成分(A)のポリアリーレンエーテルの範囲において好ましい末端基は、ハロゲン、殊に塩素、アルコキシ、殊にメトキシ、アリールオキシ、殊にフェノキシ、またはベンジルオキシである。
【0050】
成分B
本発明による成形材料は、成分(B)として少なくとも1つまたはそれ以上、特に1つのポリアリーレンスルフィドを含む。成分(B)として、原理的に全てのポリアリーレンスルフィドがこれに該当する。
【0051】
成分(B)は、本発明による熱可塑性成形材料において、特に5〜44.5質量%、特に有利に5〜30質量%、殊に5〜20質量%、殊に有利に10〜20質量%の量で存在し、その際に成分A)〜G)の質量割合の総和は、前記成形材料に対して、100質量%である。
【0052】
特に、30〜100質量%の成分(B)のポリアリーレンスルフィドは、一般式Ar−S−による繰返し単位からなり、その際に−Ar−は、6〜18個の炭素原子を有するアリーレン基である。
【0053】
全ての繰返し単位の全質量に対して、繰返し単位II
【化4】
を少なくとも30質量%、殊に少なくとも70質量%含有するポリアリーレンスルフィドは、好ましい。適当なさらなる繰返し単位は、殊に
【化5】
〔式中、Rは、C
1〜C
10アルキル、有利にメチルを意味する〕である。前記ポリアリーレンスルフィドは、ホモポリマー、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであってよく、その際にホモポリマー(同一の繰返し単位)が好ましい。殊に好ましいポリアリーレンスルフィドは、100質量%が一般式IIによる繰返し単位からなる。従って、成分(B)は、ポリフェニレンスルフィド、殊にポリ(1,4−フェニレンスルフィド)であるのが特に好ましい。
【0054】
本発明により使用されるポリアリーレンスルフィドの末端基として、殊にハロゲン、チオールまたはヒドロキシ、有利にハロゲンがこれに該当する。
【0055】
成分(B)のポリアリーレンスルフィドは、分枝鎖状であってもよいし、非分枝鎖状であってもよい。特に、成分(B)のポリアリーレンスルフィドは、直鎖状、すなわち非分枝鎖状である。
【0056】
成分(B)のポリアリーレンスルフィドは、特に、5000〜100000g/molの質量平均分子量を有する。
【0057】
成分(B)のポリアリーレンスルフィドは、特に、350℃/1150s
-1での見掛け溶融粘度40〜200Pa.s、有利に40〜180Pa.sを有する。
【0058】
流動性は、前記溶融粘度につき評価された。前記溶融粘度は、毛管流動計により測定された。その際に、350℃での前記見掛粘度は、長さ30mm、0.5mmの半径、180°のノズル入口角度、12mmの融液の貯蔵容器の直径および5分間の予熱時間を有する円形毛管を備えた毛管粘度計(Goettfert Kapillarviskosimeter Rheograph 2003)における剪断速度の関数として測定された。1150Hzで測定された値が記載されている。
【0059】
この種のポリアリーレンスルフィドは、自体公知であるか、または公知方法により製造されうる。相応する製造法は、例えば、Handbook of Polymer Synthesis,第2版,2005,第486〜492頁のHans R.Kricheldorf,"Aromatic Polyethers"中に記載されている。
【0060】
殊に、前記ポリアリーレンスルフィドは、米国特許第2513188号明細書中の記載と同様に、ハロゲン芳香族化合物を硫黄または金属スルフィドと反応させることによって製造されうる。同様に、ハロゲンで置換されたチオフェノールの金属塩を加熱することも可能である(英国特許第962941号明細書B参照)。ポリアリーレンスルフィドの好ましい合成には、例えば米国特許第3354129号明細書から確認できるように、アルカリ金属スルフィドを溶液中のハロゲン芳香族化合物と反応させることが含まれる。さらなる方法は、米国特許第3699087号明細書中および米国特許第4645826号明細書中に記載されている。
【0061】
成分C
本発明の熱可塑性成形材料は、成分(C)として、特に少なくとも1つまたはそれ以上、特に1つの繊維状充填剤および/または粒子状充填剤を含有する。
【0062】
前記の繊維状充填剤および/または粒子状充填剤は、10〜65質量%の量、有利に15〜65質量%の量、殊に有利に15〜60質量%、殊に15〜50質量%の量であり、その際に成分A)〜G)の全割合の総和は、前記成形材料に対して、100質量%である。
【0063】
本発明による成形材料は、殊に粒子状充填剤または繊維状充填剤を含有することができ、その際に繊維状充填剤が特に好ましい。しかし、成分(C)は、グラファイトを含まない。
【0064】
好ましい繊維状充填剤は、炭素繊維、チタン酸カリウムホイスカー、アラミド繊維および特に有利にガラス繊維である。ガラス繊維を使用する場合には、当該ガラス繊維は、前記マトリックス材料とのより良好な相容性のために、サイズ剤、有利にポリウレタンサイズ剤および付着助剤を備えていてよい。一般に、使用される炭素繊維およびガラス繊維は、6〜20μmの範囲内の直径を有する。成分(C)は、特に有利にガラス繊維からなる。
【0065】
ガラス繊維は、ガラス短繊維の形で、ならびにエンドレスストランド(ロービング)の形で混入することができる。完成した射出成形部材において、ガラス繊維の平均長さは、特に0.08〜5mmの範囲内にある。
【0066】
炭素繊維またはガラス繊維は、織物、マットまたはガラス繊維のシルクロービングの形で使用されてよい。
【0067】
ポリウレタンサイズ剤、エポキシサイズ剤またはポリエステルサイズ剤を備えたチョップトグラスファイバーは、好ましい。殊に、ポリウレタンサイズ剤、エポキシサイズ剤またはポリエステルサイズ剤を備えたチョップトグラスファイバーは、6〜20μmの長さ範囲内で好ましい。
【0068】
粒子状充填剤として、非晶質ケイ酸、炭酸塩、例えば炭酸マグネシウムおよび白亜、粉末状石英、雲母、多種多様なケイ酸塩、例えば粘土、白雲母、黒雲母、スゾライト(Suzoit)、スズマレタイト(Zinnmaletit)、タルク、緑泥石、金雲母、長石、ケイ酸カルシウム、例えばウォラストナイトまたはケイ酸アルミニウム、例えばカオリン、特にか焼カオリンが適している。
【0069】
好ましい粒子状充填剤は、粒子の少なくとも95質量%、有利には少なくとも98質量%が、完成品で測定した、45μm未満、有利に40μm未満の直径(幾何学的形状中心を通る最大直径)を有し、かつ、当該粒子のいわゆるアスペクト比が、完成品で測定した、1〜25の範囲内、有利に2〜20の範囲内にある粒子状充填剤である。アスペクト比は、粒径対厚さ(最大寸法対そのつど幾何学的形状中心を通る最小寸法)の比である。
【0070】
その際に、前記粒径は、例えば、ポリマー混合物の細片の電子顕微鏡写真を撮影し、かつ、少なくとも25個、有利には少なくとも50個の充填剤粒子を評価基準とすることによって測定されうる。同様に、粒径は、Transactions of ASAE(1983)第491頁に記載の沈降分析により測定しうる。その直径が40μm未満である充填剤の質量割合は、篩分析によっても測定されうる。
【0071】
粒子状充填剤として、タルク、カオリン、例えばか焼カオリンまたはウォラストナイトまたはこれらの充填剤の2つまたは全てから成る混合物は、特に好ましい。それらのなかでも、そのつど完成品で測定した、40μm未満の直径および1.5〜25のアスペクト比を有する粒子の少なくとも95質量%の割合を有するタルクが特に好ましい。カオリンは、好ましくは、そのつど完成品で測定した、20μm未満の直径および1.2〜20のアスペクト比を有する粒子の少なくとも95質量%の割合を有する。
【0072】
成分D
本発明による成形材料は、成分(D)として、少なくとも1つまたはそれ以上、特に1つの弾性グラファイトを含有する。
【0073】
前記弾性グラファイトは、有利に0.5〜20質量%、有利に1〜18質量%、殊に有利に1〜15質量%、殊に3〜10質量%の量であり、その際に成分A)〜G)の質量割合の総和は、前記成形材料に対して、100質量%である。
【0074】
グラファイトとは、本発明の範囲内で、炭素の六方晶系または菱面体晶系の安定した変態であると解釈できる。
【0075】
前記グラファイトの弾性は、当該グラファイトを5〜70MPaの圧力下で圧縮することにより、金属シリンダー内で測定されうる。グラファイトカラムの高さは、圧力負荷下と放圧後に測定され、この圧力負荷下と放圧後の差から弾性は算出される。好ましくは、60〜130%の弾性率を有する製品が使用される。
【0076】
グラファイトの密度は、1.9〜2.3である。
【0077】
特に、2〜100μm、殊に30〜90μm、とりわけ30〜70μmの粒度を有するグラファイトが使用される。
【0078】
粒度分布は、レーザー回折により、高度に希釈された懸濁液中で測定されうる。測定機器として、例えばBeckmann LS13320の機器が使用されうる。
【0079】
とりわけ、5〜19m
2/g、特に10〜18m
2/g、特に有利に14〜18m
2/gの比表面積を有するグラファイトが使用される。BET表面積は、DIN ISO 9277により測定されうる。
【0080】
グラファイトは、自然に存在する原料である。この自然に存在する製品は、例えば破砕機またはミル中で微粉砕され、かつさらなる方法の工程によって精製されうる。この製品の純度は、熱処理によって高められうる。グラファイトは、炭素含有製品、例えば石炭、石油または瀝青を炭化することによっても製造されうる。
【0081】
使用されるグラファイトは、例えばコークスから製造されうる。その際に、第1の精製工程において、揮発性炭化水素および別の不純物は、それらの含量が減少される。明らかにより高い温度で実施される第2の工程において、グラファイト化が行なわれる。このグラファイト化は、2000℃を上回る温度で行なわれる。特に、本発明により使用されるグラファイトは、効果的な温度管理を可能にする液床中で製造される。特別な実施態様は、例えば米国特許第4160813号明細書(とりわけ、第5欄、第28行〜第7欄、第37行)から確認することができる。
【0082】
成分(E)
特に、前記熱可塑性成形材料は、カルボキシル基を含む、少なくとも1つまたはそれ以上、特に1つの官能化されたポリアリーレンエーテルを含有する。
【0083】
成分(E)は、本発明による熱可塑性成形材料において、特に、0〜20質量%、特に有利に0.1〜15質量%、殊に0.1〜10質量%、殊に有利に2〜8質量%の量で存在し、その際に成分A)〜G)の質量割合の総和は、前記成形材料に対して、100質量%である。
【0084】
殊に、前記熱可塑性成形材料は、25℃でN−メチル−2−ピロリドンの1質量%溶液中で測定した、40〜65ml/gのDIN EN ISO 1628−1による粘度数を有する、カルボキシル基を含む、少なくとも1つの官能化されたポリアリーレンエーテルを含有する。25℃でN−メチル−2−ピロリドンの1質量%溶液中で測定した、成分(E)の官能化されたポリアリーレンエーテルのDIN EN ISO 1628−1による粘度数は、特に少なくとも46ml/g、特に有利に少なくとも47ml/g、殊に少なくとも48ml/gである。したがって、成分Eは、殊に成分Eが成分Aとは異なりカルボキシル基で官能化されていることによって、成分Aと区別される。
【0085】
25℃でN−メチル−2−ピロリドンの1質量%溶液中で測定した、65ml/gを上回る、DIN EN ISO 1628−1による粘度数を有する、カルボキシル基を含むポリアリーレンエーテルの使用は、一般に、機械的性質のさらなる改善を得ることなく、流動性の不利な低減をまねく。それに応じて、成分(E)のポリアリーレンエーテルのDIN EN ISO 1628−1による粘度数は、特に上向きに制限され、かつそれぞれ25℃でN−メチル−2−ピロリドンの1質量%溶液中で測定した、有利に最大65ml/g、特に有利に最大61ml/g、殊に最大57ml/gである。
【0086】
成分(E)のポリアリーレンエーテルのDIN EN ISO 1628−1による粘度数は、30〜65ml/g、有利に35〜65ml/gであることができる。
【0087】
特に、本発明による熱可塑性成形材料は、成分(A)の範囲内の規定と同様の一般式Iの構成成分ならびに一般式III:
【化6】
〔式中、
nは、0、1、2、3、4、5または6であり;
R
1は、水素、C
1〜C
6アルキル基または−(CH
2)
n−COOHを意味し;
Ar
2およびAr
3は、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して、C
6〜C
18アリーレン基であり、および
Yは、化学結合、または−O−、−S−、−SO
2−、S=O、C=O、−N=N−および−CR
aR
b−から選択された基を表わし、その際にR
aおよびR
bは、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して、それぞれ水素原子またはC
1〜C
12アルキル基、C
1〜C
12アルコキシ基もしくはC
6〜C
18アリール基を表わす〕の構成成分を含む、少なくとも1つの官能化されたポリアリーレンエーテルを成分(E)として含有する。
【0088】
特に、式Iおよび式IIIによる構成成分の総和に対する、一般式IIIによる構成成分の割合は、0.5〜3モル%、特に0.6〜2モル%、特に有利に0.7〜1.5モル%である。
【0089】
式Iおよび式IIIによる構成成分の総和に対する、一般式IIIによる構成成分の割合は、本発明の範囲内で、原則的に
1H−NMR分光分析により、内部標準としての規定された量の1,3,5−トリメトキシベンゼンで測定される。質量%からモル%への換算は、当業者に公知である。
【0090】
一般式IIIの範囲内で、特に、nは、2であり、かつR
1は、メチルである。その上、一般式IIIの範囲内で、特に、Ar
2およびAr
3は、それぞれ1,4−フェニレンであり、かつYは、−SO
2−である。
【0091】
本発明による成形材料において使用される、官能化されたポリアリーレンエーテル(成分E)は、自体公知の化合物であるか、または公知方法により製造可能である。
【0092】
例えば、成分(E)の官能化されたポリアリーレンエーテルは、欧州特許出願公開第0185237号明細書に準拠して、ならびにI.W.Parsons et al.,Polymer,34,2836(1993)およびT.Koch,H.Ritter,Macromol.Phys.195,1709(1994)に記載された方法に応じて入手可能である。
【0093】
それに応じて、ポリアリーレンエーテルは、一般式IV:
【化7】
〔式中、R
1およびnは、上記の意味を有する〕の化合物を一般式Vの化合物に対して反応性の少なくとも1つのさらなる芳香族化合物、例えば殊に4,4’−ジクロロジフェニルスルホンおよび任意にさらなるヒドロキシ官能化された化合物、例えばビスフェノールAおよび/またはビスフェノールSおよび/または4,4’−ジヒドロキシビフェニルと縮合させることによって得ることができる。適した反応成分は、当業者に一般的に知られている。
【0094】
成分(E)の官能化されたポリアリーレンエーテルの製造のために、原理的に成分(A)のポリアリーレンエーテルに対して使用される方法が使用されてもよく、その際に同様に塩基の作用下で双極性の非プロトン性溶剤中での溶液重合が好ましい。
【0095】
一般式Iの好ましい構成要素に関連して成分(A)に関する実施態様は、相応して成分(E)の官能化されたポリアリーレンエーテルに当てはまる。
【0096】
殊に、成分(A)および(E)のポリアリーレンエーテルが構造的に類似し、殊に同じモノマー構造単位を基礎とし、かつ単に一般式IVの構造単位に関連して成分(E)の範囲内で区別されることは、好ましい。成分(A)ならびに成分(E)が上記の規定と同様のタイプPESUの構造単位を基礎とするか、または成分(A)ならびに成分(E)が上記の規定と同様のタイプPPSUの構造単位を基礎とするか、または成分(A)ならびに成分(E)が上記の規定と同様のタイプPSUの構造単位を基礎とすることは、特に好ましい。「基礎とする」とは、これに関連して、成分(A)ならびに成分(E)が同じ構造単位から構成され、かつ単に、成分(E)がさらに官能化されておりかつ特に上記の規定と同様の一般式IVのモノマー構造単位を含むことによって区別されることと解釈することができる。成分(A)のポリアリーレンエーテルおよび成分(E)の官能化されたポリアリーレンエーテルがそれぞれ一般式Iの同じ構造単位を含むことは、特に好ましい。
【0097】
一般式IIIの範囲内で適した構造単位は、殊に次のとおりである:
【化8】
【0098】
上記式中、nは、それぞれ0〜4の整数を表わす。構造単位Vは、特に好ましい。
【0099】
成分F
本発明によれば、前記熱可塑性成形材料は、ポリマー鎖1個当たり平均で少なくとも1.5個のフェノール性末端基を有する、少なくとも1つまたはそれ以上、特に1つのポリアリーレンエーテル(F)を含有する。その際に、「平均で」の表現は、数平均を意味する。
【0100】
成分(F)は、本発明による熱可塑性成形材料において、特に0〜20質量%、特に有利に0.1〜15質量%、殊に1〜9質量%、殊に有利に2〜8質量%の量であり、その際に成分A)〜G)の質量平均の総和は、前記成形材料に対して100質量%である。
【0101】
成分(F)が、反応性のフェノール性末端基に対する当該成分の高い含量のために、成分(A)〜(B)に対する相溶化助剤として使用されることは、制限なしに説明される。
【0102】
末端基を同時に制御する場合のポリアリーレンエーテルの製造は、既に成分(A)の項目でさらに上記されている。
【0103】
特に、ポリアリーレンエーテル(F)は、それぞれOHの質量として換算した、成分(F)の質量に対して、フェノール性末端基を少なくとも0.15質量%、殊に少なくとも0.18質量%、特に有利に少なくとも0.2質量%有する。末位のフェノール性末端基の平均数は、滴定により測定されうる。
【0104】
成分(F)におけるフェノール性末端基の含量のそれぞれの上限は、1分子当たりに使用される末端基の数(直鎖状ポリアリーレンエーテルの場合に2個)および数平均鎖長からもたらされる。相応する算出法は、当業者に公知である。
【0105】
本発明による熱可塑性成形材料がポリアリーレンエーテル(F)を含有する場合は、成分(A)対成分(F)の質量比は、特に50:1〜2:1、殊に25:1〜5:1である。
【0106】
特に、ポリマー鎖1個当たりの成分(F)のフェノール性末端基の平均数は、1.6〜2、殊に1.7〜2、特に有利に1.8〜2、殊に有利に1.9〜2である。末位のフェノール性末端基の平均数は、滴定により測定されうる。
【0107】
本発明によるポリアリーレンエーテル(A)と(F)は、これらがその際にさらに互いに完全に混合可能である場合には、末端基は別として、同一であってよいか、または異なる構造単位から構成されていてよく、および/または異なる分子量を有していてよい。
【0108】
本発明による熱可塑性成形材料がポリアリーレンエーテル(F)を含有する場合は、成分(A)と(F)が構造的に広範囲に及ぶ一致を有し、殊に同一の構造単位から構成されかつ同様の分子量を有し、殊に一方の成分の数平均分子量が他方の成分の数平均分子量よりも最大30%大きいことは、好ましい。
【0109】
ポリアリーレンエーテルは、ポリマークラスとして公知である。原理的に、当業者に公知の全てのポリアリーレンエーテルおよび/または公知方法により製造可能な全てのポリアリーレンエーテルは、成分(F)の成分としてこれに該当する。相応する方法は、既に成分(A)の項目で説明された。
【0110】
好ましいポリアリーレンエーテル(F)は、互いに独立して、一般式Iの構造単位(上記参照)から構成されている。特に好ましいポリアリーレンエーテルスルホン(F)は、ポリエーテルスルホン(PESU)と呼称される。前記実施態様は、特に好ましい。
【0111】
一般に、好ましいポリアリーレンエーテル(F)は、5000〜60000g/molの範囲内の平均分子量M
n(数平均)および0.20〜0.95dl/gの相対粘度を有する。ポリアリーレンエーテルの相対粘度は、DIN EN ISO 1628−1に従って、25℃で1質量%のN−メチルピロリドン溶液中で測定される。
【0112】
本発明のポリアリーレンエーテル(F)は、標準としての狭く分布したポリメチルメタクリレートに対して溶剤のジメチルアセトアミド中でゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した、特に10000〜150000g/mol、殊に15000〜120000g/mol、特に有利に18000〜100000g/molの質量平均分子量M
wを有する。
【0113】
成分(F)のポリアリーレンエーテルを製造する好ましい方法は、以下に記載されかつ次の工程をa−b−cの順序で含む:
(a)望ましい成分(F)の1つをフェノール性末端基の含量に相応して有する溶剤(L)の存在下で少なくとも1つのポリアリーレンエーテル(F
*)を準備する工程、その際に当該ポリアリーレンエーテルのフェノール性末端基は、フェノラート末端基として存在し、および当該ポリアリーレンエーテルは、特に上記の規定と同様の一般式Iの構造単位から構成されている。
(b)少なくとも1つの酸、特に少なくとも1つの多官能性カルボン酸を添加する工程および
(c)成分(F)のポリアリーレンエーテルを固体として取得する工程。
【0114】
その際に、ポリアリーレンエーテル(F
*)は、有利に溶剤(L)中の溶液の形で準備される。
【0115】
記載されたポリアリーレンエーテル(F
*)は、原理的に様々な方法で準備することができる。例えば、相応するポリアリーレンエーテル(F
*)は、直接に適した溶剤と接触させることができ、かつ直接に、すなわちさらなる反応なしに本発明による方法において使用されることができる。それとは別に、ポリアリーレンエーテルのプレポリマーが使用されてよく、かつ溶剤の存在下で反応にもたらされてよく、その際に記載されたポリアリーレンエーテル(F
*)は、溶剤の存在下で生じる。
【0116】
単数のポリアリーレンエーテルまたは複数のポリアリーレンエーテル(F
*)は、工程(a)において、構造式X−Ar−Yの少なくとも1つの出発化合物(s1)を構造式HO−Ar
1−OHの少なくとも1つの出発化合物(s2)と、溶剤(L)および塩基(B)の存在下に反応させることによって準備され、その際に
− Yは、ハロゲン原子であり、
− Xは、ハロゲン原子およびOHから選択され、および
− ArおよびAr
1は、互いに独立して、6〜18個の炭素原子を有するアリーレン基である。
【0117】
その際に、(s1)および(s2)の割合は、望ましい含量のフェノール性末端基が生じるように選択される。適した出発化合物は、当業者に公知であるかまたは公知方法により製造されてよい。
【0118】
ヒドロキノン、レソルシン、ジヒドロキシナフタリン、殊に2,7−ジヒドロキシナフタリン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビスフェノールAおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニルは、出発化合物(s2)として特に好ましい。
【0119】
しかし、三官能性化合物を使用することも可能である。この場合には、分枝鎖状構造が生じる。三官能性出発化合物(s2)が使用される場合は、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが有利である。
【0120】
使用すべき量比は、原理的に、進行する重縮合反応の化学量論により、塩化水素の計算による分離の下でもたらされ、かつ当業者によって公知方法で調節される。しかし、フェノール性OH末端基の数を高めるために、過剰量の(s2)が好ましい。
【0121】
特に有利には、前記実施態様におけるモル比(s2)/(s1)は、1.005〜1.2、殊に1.01〜1.15、殊に有利に1.02〜1.1である。
【0122】
それとは別に、XがハロゲンでありかつYがOHである出発化合物(s1)が使用されてもよい。この場合、ヒドロキシ基の過剰量は、出発化合物(s2)を添加することによって調節される。この場合、使用されるフェノール性末端基対ハロゲンの比率は、特に1.01〜1.2、殊に1.03〜1.15、殊に有利に1.05〜1.1である。
【0123】
特に、重縮合の際の転化率は、少なくとも0.9であり、それによって十分に高い分子量が保証される。ポリアリーレンエーテルの前駆物質としてプレポリマーが使用される場合は、重合度は、本来のモノマーの数に対するものである。
【0124】
好ましい溶剤(L)は、非プロトン性の極性溶剤である。さらに、適した溶剤は、80〜320℃、殊に100〜280℃、有利に150〜250℃の範囲内の沸点を有する。適した非プロトン性の極性溶剤は、例えば高沸点エーテル、エステル、ケトン、不斉ハロゲン化炭化水素、アニソール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N−エチル−2−ピロリドンおよびN−メチル−2−ピロリドンである。
【0125】
特に、出発化合物(s1)と(s2)との反応は、記載された非プロトン性の極性溶剤(L)中、殊にN−メチル−2−ピロリドン中で行なわれる。
【0126】
出発化合物(s1)のハロゲン置換基に対する反応性を高めるために、フェノール性OH基の反応を、特に塩基(B)の存在下で行なうことは、当業者に自体公知である。
【0127】
特に、塩基(B)は、無水である。適した塩基は、殊に無水アルカリ金属炭酸塩、特に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムまたはこれらの混合物であり、その際に炭酸カリウムが特に好ましい。
【0128】
特に好ましい組合せは、溶剤(L)としてのN−メチル−2−ピロリドンと塩基(B)としての炭酸カリウムである。
【0129】
適した出発化合物(s1)と(s2)の反応は、80〜250℃、有利に100〜220℃の温度で実施され、その際に前記温度の上限は、溶剤の沸点によって制限される。前記反応は、特に2〜12時間、殊に3〜8時間の時間間隔で行なわれる。
【0130】
工程(a)に続けて、および工程(b)の実施前に、ポリマー溶液のろ過が実施されることは、有利であることが証明された。それによって、重縮合の際に形成される塩画分ならびに任意に形成されるゲル体は、除去される。
【0131】
その上、工程(a)の範囲内で、ポリアリーレンエーテル(F
*)と溶剤(L)との混合物の全質量に対して、ポリアリーレンエーテル(F
*)の量が、10〜70質量%、特に15〜50質量%に調節されることは、有利であることが判明した。
【0132】
工程(b)の範囲内で、少なくとも1つの酸、特に少なくとも1つの多官能性カルボン酸は、工程(a)からのポリアリーレンエーテル(F
*)、特に溶剤(L)中のポリアリーレンエーテル(F
*)の溶液に添加される。
【0133】
また、少なくとも1つの多官能性カルボン酸は、沈澱媒体に添加されてよい。
【0134】
「多官能性」とは、少なくとも2個の官能基を有することであると解釈することができる。前記官能基は、1分子当たりの(任意に平均的な)数のCOOH基である。多官能性とは、2個以上の官能基を有することであると解釈される。本発明の範囲内で、好ましいカルボン酸は、二官能性カルボン酸および三官能性カルボン酸である。
【0135】
多官能性カルボン酸は、様々な方法で、殊に固体または液状の形で、または特に、溶剤(L)と混合可能である溶剤中の溶液の形で添加することができる。
【0136】
特に、多官能性カルボン酸は、最大1500g/mol、殊に最大1200g/molの数平均分子量を有する。同時に、多官能性カルボン酸は、特に少なくとも90g/molの数平均分子量を有する。
【0137】
適している多官能性カルボン酸は、殊に一般的構造式VI:
HOOC−R−COOH (VI)
〔式中、Rは、2〜20個の炭素原子を有する炭化水素基を表わし、この炭化水素基は、任意にさらなる官能基、特にOHおよびCOOHから選択された官能基を含む〕による多官能性カルボン酸である。
【0138】
好ましい多官能性カルボン酸は、C
4〜C
10ジカルボン酸、殊にコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、およびトリカルボン酸、殊にクエン酸である。特に好ましい多官能性カルボン酸は、コハク酸およびクエン酸である。
【0139】
フェノール性末端基へのフェノラート末端基の十分な転移を保証するために、使用される単数の多官能性カルボン酸または複数の多官能性カルボン酸の量をフェノラート末端基の量に対して調節することは、有利であることが証明された。
【0140】
工程(b)の範囲内で、多官能性カルボン酸をフェノール性末端基の物質量に対して、カルボキシル基25〜200モル%、特にカルボキシル基50〜150モル%、特に有利にカルボキシル基75〜125モル%の量で添加することは、好ましい。
【0141】
ほとんど酸が供給されない場合には、ポリマー溶液の沈澱挙動は、不十分であり、他方で、明らかに過剰供給の場合には、さらなる加工の際に製品の変色が起こりうる。
【0142】
工程(c)の範囲内で、ポリアリーレンエーテル(F)は、固体として取得される。原則的に、固体として取得する様々な方法がこれに該当する。しかし、好ましいのは、沈澱によるポリマー組成物の取得である。
【0143】
好ましい沈澱は、殊に溶剤(L)と劣悪な溶剤(L’)とを混合することによって行なうことができる。劣悪な溶剤は、前記ポリマー組成物が溶解しない溶剤である。かかる劣悪な溶剤は、特に、非溶剤と溶剤との混合物である。好ましい非溶剤は、水である。溶剤と非溶剤との好ましい混合物(L’)は、特に溶剤(L)、殊にN−メチル−4−ピロリドンと水との混合物である。工程(b)からのポリマー溶液を劣悪な溶剤(L’)に添加することは、好ましく、このことは、前記ポリマー組成物の沈澱を生じる。その際に、特に過剰量の劣悪な溶剤が使用される。特に有利には、工程(a)からのポリマー溶液は、微細に分布された形で、殊に液滴の形で添加される。
【0144】
溶剤(L)、殊にN−メチル−2−ピロリドンと非溶剤、殊に水との混合物が劣悪な溶剤(L’)として使用される場合は、溶剤:非溶剤の混合比が1:2〜1:100、殊に1:3〜1:50であるのが好ましい。
【0145】
溶剤(L)としてのN−メチル−2−ピロリドンを組み合わせた、水とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)との混合物は、劣悪な溶剤(L’)として好ましい。劣悪な溶剤(L’)として、1:3〜1:50、殊に1:30のNMP/水の混合物が特に好ましい。
【0146】
沈澱は、溶剤(L)中の前記ポリマー組成物の含量がポリマー組成物と溶剤(L)との混合物の全質量に対して10〜50質量%、特に15〜35質量%である場合に、特に効率的に行なわれる。
【0147】
成分(F)は、特に、最大600ppmのカリウム含量を有する。カリウム含量は、原子分光分析により測定される。
【0148】
成分G
本発明による成形材料は、助剤、殊に加工助剤、顔料、安定剤、難燃剤または様々な添加剤の混合物の成分(G)を含有することができる。また、通常の添加剤は、例えば酸化遅延剤、熱分解および紫外線による分解に抗する薬剤、滑剤および離型剤、着色剤および可塑剤である。しかし、成分(G)は、グラファイトを含まない。
【0149】
本発明による成形材料における成分(G)の割合は、成分(A)〜(G)の全質量に対して、殊に0〜40質量%、特に0〜30質量%、とりわけ0〜20質量%である。成分(G)が安定剤を含む場合、この安定剤の割合は、通常、2質量%まで、特に0.01〜1質量%、殊に0.01〜0.5質量%であり、その際に成分A)〜G)の質量割合の総和は、前記成形材料に対して100質量%である。
【0150】
顔料および着色剤は、一般に成分(A)〜(G)の質量%の総和に対して、0〜6質量%、有利に0.05〜5質量%、殊に0.1〜3質量%の量で含有されている。
【0151】
熱可塑性樹脂を着色する顔料は、一般に公知であり、例えばR.GaechterおよびH.Mueller,Taschenbuch der Kunststoffadditive,Carl Hanser Verlag,1983,第494〜510頁参照のこと。顔料の第1の好ましい群として、白色顔料、例えば酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白[2PbCO
3−Pb(OH)
2]、リトポン、アンチモン白および二酸化チタンを挙げることができる。2つの最も慣用の結晶変態(ルチル型およびアナターゼ型)の中で、殊にルチル型が本発明による成形材料の白着色に使用される。本発明により使用されうる、黒の有色顔料は、酸化鉄黒(Fe
3O
4)、スピネル黒[Cu(Cr,Fe)
2O
4]、マンガン黒(二酸化マンガンと二酸化ケイ素と酸化鉄との混合物)、コバルト黒およびアンチモン黒ならびに特に有利にたいてい、ファーネスカーボンブラックまたはガスカーボンブラックの形で使用されるカーボンブラックである。このために、G.Benzing,Pigmente fuer Anstichmittel,Expert−Verlag(1988),第78頁以降を参照のこと。
【0152】
一定の色調の調節のために、無機多色顔料、例えばクロモキシド緑または有機多色顔料、例えばアゾ顔料もしくはフタロシアニンが使用されてよい。この種の顔料は、当業者に公知である。
【0153】
本発明による熱可塑性成形材料に添加されてよい酸化遅延剤および熱安定剤は、例えば周期律表の第I族の金属のハロゲン化物、例えばハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化リチウム、例えば塩化物、臭化物またはヨウ化物である。さらに、フッ化亜鉛および塩化亜鉛が使用されてよい。さらに、成分(A)〜(G)の質量%の総和に対して、特に1質量%までの濃度の、立体障害フェノール、ヒドロキノン、これらの群の置換された代表例、第二級芳香族アミン、任意に燐含有酸または該酸の塩との化合物の当該アミン、および前記化合物の混合物が使用可能である。
【0154】
UV安定剤の例は、様々な置換レソルシン、サリチラート、ベンゾトリアゾールおよびベンゾフェノンであり、これらは、一般に2質量%までの量で使用される。
【0155】
たいてい、成分(A)〜(G)の質量%の総和に対して1質量%までの量で添加される滑剤および離型剤は、ステアリルアルコール、ステアリン酸アルキルエステルおよびステアリン酸アルキルアミドならびにペンタエリトリットと長鎖状脂肪酸とのエステルである。ジアルキルケトン、例えばジステアリルケトンが使用されてもよい。
【0156】
好ましくは、本発明による成形材料は、ステアリン酸および/またはステアレートを0.1〜2質量%、有利に0.1〜1.75質量%、特に有利に0.1〜1.5質量%、殊に0.1〜0.9質量%(成分(A)〜(G)の質量%の総和に対して)含有する。原理的に、別のステアリン酸誘導体、例えばステアリン酸エステルが使用されてもよい。
【0157】
ステアリン酸は、有利に、脂肪を加水分解することによって製造される。その際に得られる生成物は、通常、ステアリン酸とパルミチン酸との混合物である。従って、かかる生成物は、当該生成物の組成に応じて、例えば50〜70℃の幅広い軟化範囲を有する。好ましくは、20質量%を上回る、特に有利に25質量%を上回るステアリン酸の割合を有する生成物が使用される。純粋なステアリン酸(98%超)が使用されてもよい。
【0158】
さらに、成分(G)は、ステアレートを含むこともできる。ステアレートは、相応するナトリウム塩と金属塩溶液(例えば、CaCl
2、MgCl
2、アルミニウム塩)との反応によって製造されてもよいし、脂肪酸と金属水酸化物とを直接反応させることによって製造されてもよい(例えば、Baerlocher Additives,2005参照)。好ましくは、アルミニウムトリステアレート(Aluminiumtristearat)が使用される。
【0159】
さらなる添加剤として、いわゆる成核剤、例えばタルクがこれに該当する。
【0160】
成形材料の製造
成分(A)〜(G)が混合される順序は、任意である。
【0161】
本発明による成形材料は、自体公知の方法、例えば押出法により製造されてよい。本発明による成形材料は、例えば、出発成分を通常の混合装置中、例えばスクリュー押出機、特に二軸スクリュー押出機、ブラベンダーミキサー、バンバリーミキサーまたは混練機中で混合し、かつ引続き押出すことにより、製造されてよい。押出後、押出品は、冷却され、かつ微粉砕される。前記成分の混合の順序は、変動されうる。相応して、2つまたは2つを上回る成分が予め混合されるが、しかし、全ての成分が一緒に混合されてよい。
【0162】
可能なかぎり均一な混合物を得るために、強力な混合が好ましい。そのために、一般に、290〜380℃、有利に300〜370℃の温度で0.2〜30分間の平均混合時間が必要とされる。押出後、押出品は、たいてい冷却され、かつ微粉砕される。
【0163】
典型的な本発明による成形材料の例は、次表から確認することができる。
【0164】
【表1】
【0165】
【表2】
【0166】
用途
本発明による熱可塑性成形材料は、好ましくは、繊維、シート、フォームまたは成形体の製造に使用されてよい。本発明による熱可塑性成形材料は、殊に家庭用品、電気部品または電子部品用の成形部材の製造ならびに車両分野、殊に自動車用の成形体の製造に適している。
【0167】
本発明による熱可塑性成形材料の機械的性質は、繊維、シートおよび/または成形体を製造するための熱可塑性成形材料の使用に有利である。殊に、前記熱可塑性成形材料は、例えば工業的目的または消費者に関連した目的のために、車両および機器作成における特殊な成形体の製造に適している。すなわち、前記熱可塑性成形材料は、電子部品、ケーシング、ケーシング部品、保護カバーフラップ、制動要素、ばね、グリップ、給気パイプ、カバー、エアダクト、空気吸込みグリル、バルブ部材の生産に使用されてよい。
【0168】
次の実施例は、本発明を詳説するが、これにより制限されるものではない。
【0169】
ISO規格
DIN ISO 527:プラスチック−引張特性の測定−第1部:一般的原理(ISO 527−1:1993 Corr 1を含めて:1994);ドイツバージョン EN ISO 527−1:1996。
【0170】
DIN ISO 179:プラスチック−シャルピー−衝撃強さの測定−第2部:機器を用いた耐衝撃性試験(ISO 179−2:1997);ドイツバージョン EN ISO 179:1999。
【0171】
DIN EN ISO 1628−1:プラスチック−毛管粘度計による希釈された溶液中のポリマーの粘度の測定−第1部:一般的原理(ISO 1628−1:2009);ドイツバージョン EN ISO 1628−1:2009。
【0172】
DIN EN ISO 1043−1:プラスチック−記号および略記号−第1部:基本ポリマーおよびその特別な性質(ISO 1043−1:2001);ドイツバージョン EN ISO 1043−1:2002。
【0173】
DIN ISO 9277:BET法に従ったガス吸着による固体の比表面積の測定(ISO 9277:1995)。
【0174】
一般的な注釈
試験体の弾性率、引裂強さおよび破断点伸びは、DIN ISO 527に従った引張試験において、ダンベル形試験片につき算出された。
【0175】
ガラス繊維含有製品の耐衝撃性は、DIN ISO 179 1eUに従ってISO試験体につき測定された。
【0176】
溶融粘度は、毛管流動計を用いて測定された。その際に、380℃での前記見掛粘度は、長さ30mm、0.5mmの半径、180°のノズル入口角度、12mmの融液の貯蔵容器の直径および5分間の予熱時間を有する円形毛管を備えた毛管粘度計(Goettfert Kapillarviskosimeter Rheograph 2003)における剪断速度の関数として測定された。1000Hzで測定された値が記載されている。測定は、1時間連続された。1時間後の測定値と初期値とからの商が記載されている。
【0177】
ポリアリーレンエーテルの粘度数は、DIN EN ISO 1628−1に従って25℃でN−メチル−ピロリドンの1%溶液中で測定された。
【0178】
グラファイトの弾性率は、グラファイトを5〜70MPaの圧力下で圧縮した金属性シリンダー内で測定された。圧力負荷下および放圧後のグラファイトカラムの高さが測定され、そのことから弾性が算出された(上記参照)。
【0179】
粒度分布は、レーザー回折により、高度に希釈された懸濁液中で測定された。測定機器として、Beckmann LS 13320の機器が使用された。
【0180】
BET表面積は、DIN ISO 9277に従って測定された。
【0181】
成分A
成分Aとして、49.0ml/gの粘度数を有するポリエーテルスルホン(BASF SE社のUltrason(登録商標)E 1010)を使用した。使用された製品は、Cl末端基0.19質量%およびOCH
3末端基0.23質量%を有していた。350℃/1150s
-1で測定された見掛け溶融粘度は、263Pa.sである。
【0182】
成分B
成分Bとして、350℃で76Pa.sの溶融粘度および1150s
-1の剪断速度を有するポリフェニレンスルフィドを使用した。
【0183】
成分C
成分Cとして、ポリウレタンサイズ剤を備えている、4.5mmのステープル長さおよび10μmの繊維直径を有するチョップトグラスファイバーを使用した。
【0184】
成分D1
成分D1として、90%の弾性率、50μm未満の粒子95%および16.1m
2/gの比表面積を有するグラファイトを使用した。粒度のd
50値は、次のとおりである:9μm。
【0185】
成分D2
粒度のd
50値は、次のとおりである:9.5μm。
【0186】
成分E
成分Eとして、ポリエーテルスルホンを使用し、これは、次のように製造された:
窒素雰囲気下で、ジクロロジフェニルスルホン577.03g、ジヒドロキシジフェニルスルホン495.34gおよび4,4’−ビス−ヒドロキシフェニル吉草酸5.73gをNMP 1053ml中に溶解し、かつ無水炭酸カリウム297.15gを添加した。この反応混合物を190℃に加熱し、かつこの温度で6時間維持した。引続き、このバッチをNMP 1947mlで希釈した。80℃未満の温度への冷却後、この懸濁液を排出した。ろ過によって、不溶性成分を分離した。得られた溶液を水中で沈澱させた。得られた白色粉末を数回熱水で抽出し、引続き140℃で真空中で乾燥させた。DPA単位の割合は、0.9モル%が測定され、この生成物の粘度数は、46.9ml/gであった。
【0187】
成分F
成分Fとして、OH末端基0.20質量%およびCl末端基0.02質量%を有する、55.6ml/gの粘度数を有するポリエーテルスルホンを使用した。
【0188】
成分X
成分Xとして、MFI 6g/10分(190℃/2.16kg)を有する、組成67/25/8(質量%で)のエチレン−メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレートターポリマーを使用した(ゴム Lotader AX8900)。
【0189】
【表3】