【実施例】
【0029】
次に、本実施形態に係る効果をさらに明確にするために、実施例および比較例について詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】
<実施例1>
[非架橋性粘着組成物の製造]
(1)アクリル酸エステル共重合体の調製
温度計、撹拌装置を備えた重合反応器に、水、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリロニトリル、及び乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウムを仕込み、減圧脱気および窒素置換を2度行って酸素を充分除去した。その後、クメンハイドロパーオキシドとホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムを加え、常圧下、温度30℃で乳化重合を開始し、重合転化率が95%に達するまで反応させた。得られた乳化重合液を塩化カルシウム溶液で凝固し、水洗、乾燥した後、重量平均分子量70万、分散度(Mw/Mn)2.5のアクリル酸エステル共重合体を得た。実施例1のアクリル酸エステル共重合体のモノマ成分はアクリル酸エチルとアクリル酸ブチルとアクリロニトリルであるため、表1においては、EA/BA/ANと記載する。
【0031】
(2)重量平均分子量および分散度の測定
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法の下記条件にて測定した。
分析装置:東ソー製、HLC‐8120GPC
カラム:東ソー製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計90cm
カラム温度:40℃
流速:0.8ml/min.
注入量:100μl
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:示唆屈折計
標準試料:ポリスチレン
【0032】
[粘着シートの作成]
得られたアクリル酸エステル共重合体を酢酸エチルにて溶解し、アクリル酸エステル共重合体100重量部に対して、硬化剤(日本ポリウレタン社製コロネートL)を1重量部配合した非架橋性粘着組成物を、厚さ100μmの基材フィルム(東レ社製ルミラーU34)上に、厚さ10μmになるように塗布し、粘着シートを作成した。
【0033】
<実施例2〜5、比較例1〜4>
実施例1に対して、アクリル酸エステル共重合体の製造に用いたモノマ成分を表1に示すように変更した。また、得られたアクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量(Mw)と分散度(Mw/Mn)が表1になるように重合条件を変更した。これら以外は硬化剤も含め、実施例1と同様にして粘着剤組成物、粘着シートを作成した。
【0034】
上記実施例および比較例で得られた粘着シートについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0035】
(酸価測定方法)
下記に示すような、JISK0070に準じた中和滴定法により測定した。まずは、試料を三角フラスコに量り取った。次に、アセトン100ml及び指示薬としてフェノールフタレイン溶液を数滴加え、水浴上で試料が完全に溶けるまで十分に振り混ぜた。次に、0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬のうすい紅色が30秒間続いたときを終点とした。そして、次式により酸価を算出した。
A=B×f×5.611/S 式(1)
(ただし、式(1)中、A:酸価(mgKOH/g)、B:滴定に用いた0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、f:0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液のファクター(濃度補正係数)、S:試料の質量(g))
【0036】
(水酸基価測定方法)
下記に示すような、JISK0070に準じた中和滴定法により測定した。まず、無水酢酸25gを全量フラスコ100mlに取り、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振り混ぜてアセチル化試薬を作製した。アセチル化試薬は、湿気、二酸化炭素及び酸の蒸気に触れないようにし、褐色瓶に保存した。次に、試料を平底フラスコに量り取り、これにアセチル化試薬5mlを全量ビペットを用いて加えた。次に、フラスコの口に小さな漏斗を置き、温度95〜100℃のグリセリン浴中に底部約1cmを浸して加熱した。フラスコの首がグリセリン浴の熱をうけて温度が上がるのを防ぐために、中に丸い穴をあけた厚紙の円板をフラスコの首の付け根にかぶせた。そして、1時間後、フラスコをグリセリン浴から取り出し、放冷後漏斗から水1mlを加えて振り動かして無水酢酸を分解した。さらに、分解を完全にするため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱し、放冷後エタノール5mlで漏斗及びフラスコの壁を洗った。フェノールフタレイン溶液数滴を指示薬として加え、0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬のうすい紅色が約30秒間続いたときを終点とした。空試験を上記同様、試料を入れないで行った。そして、次式により水酸基価を算出した。
A=((B−C)×f×28.05/S)+D 式(2)
(ただし、式(2)中、A:水酸基価(mgKOH/g)、B:空試験に用いた0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、C:滴定に用いた0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、f:0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液のファクター(濃度補正係数)、S:試料の質量(g)、D:酸価(mgKOH/g))
【0037】
(粘着力の測定方法)
(1)表面粗さRz=5μmである被着体に対する粘着力(A1)
各粘着シートから幅25mm×長さ300mmの試験片を3点採取し、それらを表面粗さRz=5μmとなるように研磨したSUS304鋼板(厚さ1.5mm〜2.0mm)上に貼着した後、2kgのゴムローラーを3往復かけて圧着し、1時間放置した後、測定値がその容量の15〜85%の範囲に入るJIS B 7721に適合する引張試験機を用いて粘着力を測定した。剥離角度は180度、剥離速度は300mm/minとした。測定環境は23℃、50%RHに調製した。
【0038】
(2)表面粗さRz=0.5μmである被着体に対する粘着力(A2)
各粘着シートから幅25mm×長さ300mmの試験片を3点採取し、それらを表面粗さRz=0.5μmとなるように研磨したSUS304鋼板(厚さ1.5mm〜2.0mm)上に貼着した後、2kgのゴムローラーを3往復かけて圧着し、1時間放置した後、測定値がその容量の15〜85%の範囲に入るJIS B 7721に適合する引張試験機を用いて粘着力を測定した。剥離角度は180度、剥離速度は300mm/minとした。測定環境は23℃、50%RHに調製した。
【0039】
(被着体選択性の評価方法)
前記のように測定した粘着力A1、A2が、A1/A2=0.8〜1.2の関係を満たす場合は○、満たさない場合は×とした。
【0040】
(被着体への糊残りの評価方法)
前記A1、A2の粘着力を測定した際、テープ剥離後のSUS板への糊残り有無を目視で評価した。SUS板に糊残りが無い場合を○、糊残りがあった場合を×とした。
【0041】
【表1】
EA:アクリル酸エチル、BA:アクリル酸ブチル、AN:アクリロニトリル、MEA:アクリル酸2−メトキシエチル、2HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル
【0042】
実施例1〜5、比較例1〜3に係るアクリル酸エステル共重合体は、酸価が0.1mgKOH/g以下であり、水酸基価が0.1mgKOH/g以下であった。
比較例4に係るアクリル酸エステル重合体は、イソシアネート系硬化剤またはエポキシ硬化剤と反応する官能基としてヒドロキシル基を有するものであり、水酸基価が5.0mgKOH/gであった。
【0043】
また、表1より、重量平均分子量70万〜200万かつ分散度5以下であり、イソシアネート系硬化剤またはエポキシ系硬化剤と反応する官能基を有さない(メタ)アクリル酸エステル共重合体を主成分とする非架橋性粘着組成物を基材フィルムの片方の面に積層した粘着シート(実施例1〜5)は、表面粗さの異なる被着体に対しても良好に貼り付き、剥離の際にも被着体への糊残りがなかった。
【0044】
一方、アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量が50万の場合(比較例1)、被着体選択性は良好であったが、被着体への糊残りが観察された。これは、分子量が低い為、低分子成分が糊残りした為と考えられる。
【0045】
また、アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量が210万の場合(比較例2)、糊残りは観察されなかったが、被着体選択性が悪化した。これは、分子量が高く、粗い表面に対する密着性が悪化した為と考えられる。
【0046】
更に、アクリル酸エステル共重合体の分散度が6の場合(比較例3)、被着体選択性が悪化し、被着体への糊残りも観察された。これは非架橋性粘着組成物の低分子成分が悪影響したと考えられる。
【0047】
また、アクリル酸エステル共重合体のモノマ成分にアクリル酸2−ヒドロキシエチルを用い、イソシアネート系硬化剤またはエポキシ硬化剤と反応する官能基としてヒドロキシル基を有する場合(比較例4)、被着体への糊残りは観察されなかったが、被着体選択性が悪化した。これは、硬化剤との架橋反応が進み、粗い面に対する密着性が著しく低下した為と考えられる。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。