【実施例】
【0061】
図2に示すように、酸化チタン皮膜の表面部に無数の微細孔が密に形成されている要因は、前記した製造方法において、陽極酸化処理を行うための製造条件、すなわち、電解浴の組成と電解浴の温度、チタン製箔に印加する電圧、陽極酸化処理の時間、及び、陽極酸化処理済みの基材に実施する加熱処理の温度とその加熱時間、等が影響するものと考えられる。そこで、本願の発明者らは、優れた光触媒機能、特に優れた抗菌性を安定して発揮することができる長尺のチタン製箔を基材とした光触媒体を製造するための製造条件を見出すために、製造条件を代えた以下の基礎実験を行った。
【0062】
実施例1
光触媒体の基材として、アルカリ系洗浄剤で洗浄した厚さが80μm、幅が125 mm、長さが10 mの長尺のチタン製箔(材質:JIS規格規定の純チタン1種)を4つ準備し、上記実施態様と同様に脱脂・酸洗処理を行った。表1に示す組成が異なる4種の電解浴(電解浴No.1〜4)を用い、それぞれ4つのチタン製箔に陽極酸化処理を施した。この陽極酸化処理では、チタン製箔を連続陽極酸化装置の10℃の電解浴内を走行させながら+100 Vの電圧を印加して30秒間の陽極酸化処理を施した。陽極酸化処理においてチタン製箔に電圧を印加する方法は(手段2)を採用した。陽極酸化処理を施した4つの長尺のチタン製箔は、連続加熱装置を用いて、加熱装置内を走行させながら450℃の大気中雰囲気で60秒間の加熱処理をそれぞれ施した。得られた4つの光触媒体をサンプル1-1〜1-4とする。
【0063】
サンプル1-1〜1-4について、JIS R 1702(フィルム密着法)による光触媒抗菌性試験を行うために、それぞれの光触媒体から3つの試験用試料(サンプル片)を作製して、光触媒抗菌性試験を行った。この光触媒抗菌性試験の結果を表1の抗菌活性値(R)欄に示す。表1の抗菌活性値(R)は、それぞれの光触媒体についてその3つの試験用試料から得られた抗菌活性値(R)の平均値である。表1の「外観」欄には、加熱処理を施して得た光触媒体の表面を目視による外観結果を示しており、「○」は表面に色ムラ等の異常が生じていない場合、「×」は色ムラが発生して、外観上好ましくない場合を示す。
【0064】
【表1】
(注):「wt%」は重量%、「M」はモル数を示し、各電解浴の残部は水である。
【0065】
表1に示す基礎実験1の結果から、電解浴No.4を用いたサンプル1-4の抗菌活性値(R)が最も高い値である「3.36」であった。これにより、表1に示す4種の電解浴のうちでC
4H
4Na
2O
61wt%とH
2O
22wt%の2液からなる電解浴No.4が好ましい電解浴であることが分かった。
【0066】
実施例2
陽極酸化処理において、陽極酸化処理の実施条件(陽極酸化条件)となるチタン製箔に印加する電圧(印加電圧)、陽極酸化処理の時間(陽極酸化時間)、及び電解浴の温度(浴温度)と、JIS R 1702(フィルム密着法)による光触媒抗菌性試験により得た抗菌活性値(R)との関係を確認する基礎実験を行った。実施例2では、上記した陽極酸化条件の印加電圧、陽極酸化時間、浴温度の設定値をそれぞれ変えた実験を行うとともに、これら設定値ごとに複数のチタン製箔について基礎実験を行った。なおチタン製箔の仕様(厚さ、長さ、幅、材質)は実施例1に用いた仕様と同一である。陽極酸化時間は、長尺のチタン製箔を陽極酸化装置の電解浴内を所定の電圧を印加しながら流すラインスピード(チタン製箔の走行速度)を調節することにより変化させた。
【0067】
実施例2において長尺のチタン製箔に印加する印加電圧の設定値は、それぞれ直流の+80 V、+100 V、+120 V、+130 Vの4種に設定し、陽極酸化時間の設定値は20秒、25秒、30秒、35秒の4種に設定し、浴温度は10℃、20℃、30℃の3種に設定した実験を行った。なお、長尺のチタン箔に電圧を印加する方法(給電手段)として(手段2)を採用し、長尺のチタン製箔の両面に陽極酸化処理を施した。また、実施例2において陽極酸化処理済みの長尺のチタン製箔の加熱処理は、全てのチタン製箔に対して同一の条件で加熱処理装置内を走行させながら450℃の大気雰囲気で60秒間行った。光触媒体の抗菌活性値(R)を確認するための試料は、サンプルごとに6〜12個を採取した。
【0068】
陽極酸化時間を30秒に設定し、浴温度を10℃に設定し、印加電圧はそれぞれ80 V、100 V、120 V、130 Vに設定し、光触媒体を作製した。その他の製造条件は実施例1と同じである。得られた光触媒体の抗菌活性値(R)と印加電圧との関係を
図3(a)に示す。
図3(a)に示すように、印加電圧が+80 V〜+100 V程度の範囲に設定した陽極酸化処理を行うと、2.0以上の安定した抗菌活性値(R)が得られた。
【0069】
印加電圧を+100 Vに設定し、浴温度を10℃に設定し、陽極酸化時間を20秒、25秒、30秒、35秒の4種に設定し、光触媒体を作製した。その他の製造条件は実施例1と同じである。得られた光触媒体の抗菌活性値(R)と陽極酸化時間との関係を
図3(b) に示す。
図3(b)に示すように、陽極酸化時間を短い時間である20秒〜25秒間としたとき、長尺の光触媒体は2.0以上の抗菌活性値(R)を得られた。
【0070】
印加電圧を100 Vに設定し、陽極酸化時間を30秒に設定し、浴温度を10℃、20℃、30℃の3種に設定し、光触媒体を作製した。その他の製造条件は実施例1と同じである。得られた光触媒体の抗菌活性値(R)と浴温度との関係を
図3(c) に示す。
図3(c)に示すように浴温度を10℃に設定した陽極酸化処理を行うと、抗菌活性値(R)が2.0〜4.0の範囲であって、さらに最も高い抗菌活性値(R)が得られた。なお上記光触媒体に形成された酸化チタンの皮膜の厚さを確認したところ、いずれも100 nm程度であった。
【0071】
実施例3
陽極酸化処理を施した(陽極酸化処理済みの)長尺のチタン製箔を加熱装置で加熱処理して、このチタン製箔の表面に形成した酸化チタンの皮膜に、アナターゼ型酸化チタンの結晶を生成して抗菌性を発揮させるための実験を行った。この基礎実験3では、加熱装置内の加熱温度を大気雰囲気で450℃、550℃、750℃の3種の温度に設定し、これらそれぞれの加熱温度について、陽極酸化処理済みの長尺のチタン製箔の先端から最終端までを加熱装置内を走行させながら60秒間の加熱処理を行う実験を行った。その他の実験条件は陽極酸化時間を22.5秒とした以外は実施例1と同じである。得られた光触媒体の抗菌活性値(R)を確認するための試料は、サンプルごとに6個を採取し、光触媒体の表面を走査型電子顕微鏡で撮像してその表面部の状態も確認した。
【0072】
得られた光触媒体の抗菌活性値(R)と加熱温度との関係を
図4に示す。
図4に示すように、いずれの設定した加熱温度においても抗菌活性値(R)が2.0以上の値が得られ、450℃から750℃へと高い温度で加熱するに従って抗菌活性値(R)が高くなることが確認された。特に、750℃に設定した温度では抗菌活性値(R)は3.0を超えた値が得られた。
【0073】
得られた光触媒体について、その表面に形成された酸化チタン皮膜についてテープ剥離試験を行って、その試験結果に基づいて光触媒体の表面の状態を走査型電子顕微鏡で撮像した。其の結果、550℃と750℃の温度で加熱処理して得た光触媒体の表面に形成された酸化チタン皮膜には、テープ剥離試験を行った後にその一部分の領域にこの皮膜の剥離が生じていることが確認された。低温の450℃で加熱処理した光触媒体には、酸化チタン皮膜の剥離の発生は確認されなかった。
【0074】
550℃又は750℃の温度で加熱処理したときに、酸化チタン皮膜の剥離が発生する原因は、次の通りであると推測できる。大気雰囲気の550℃又は750℃という高い温度で酸化チタン皮膜が加熱されると、大気雰囲気中の酸素(O
2)と酸化チタン皮膜との酸化作用が促進されて、酸化チタン皮膜の剥離が発生すると考えられる。一方、これらの温度よりも低い温度である450℃で加熱処理すると、大気雰囲気中の酸素による酸化作用が発生しなくて酸化チタン皮膜の剥離が発生しなかったと推測することができる。
【0075】
実施例4
実施例1〜3の結果に基づいて、基材となる長尺のチタン製箔から、陽極酸化処理と加熱処理を施し、長尺の光触媒体を作製し、その表面に形成された酸化チタン皮膜の表面の構成と、その抗菌活性値(R)を確認するための試作を行った。この試作を行った光触媒体の基材となる長尺のチタン製箔の仕様、及び陽極酸化処理を施すまでにこの長尺のチタン製箔に下記の条件で脱脂処理と酸洗処理を行った。
チタン箔の厚さ :80μm
チタン箔の幅 :125 mm
チタン箔の長さ :100 m
チタン箔の材質 :JIS規格の純チタン(1種)
チタン箔の脱脂処理:温度60℃のアルカリ系洗浄剤で脱脂
チタン箔の酸洗処理:HFが1wt%、H
2O
2が5wt%、HNO
3が15 wt%、
残部が水からなる40℃の酸洗液で酸洗
【0076】
陽極酸化処理は次の条件で施した。なお、上記した2つの長尺のチタン製箔(コイル)のうちの一つは浴温度を10℃に設定した下記組成の電解浴で陽極酸化処理を施し、他のチタン製箔は浴温度を30℃に設定した下記組成となる電解浴で陽極酸化処理を施した。
(陽極酸化処理の条件)
電解浴の組成 :C
4H
4Na
2O
6が1wt%、H
2O
2が2wt%、残部
が水からなる電解浴(表1に示す電解浴No.4)
電解浴の温度(浴温度):10℃、30℃
印加電圧 :100 V、給電手段は前記(手段2)
陽極酸化時間 :22.5秒
【0077】
上記条件で陽極酸化処理を施した2つの長尺のチタン製箔を連続加熱装置内を走行させながら下記の条件で加熱処理を施した。
(加熱処理の条件)
加熱雰囲気 :大気
加熱温度 :450℃
加熱時間 :60秒
【0078】
得られた光触媒体のうち、浴温度を10℃に設定して製造した光触媒体(サンプル4-1)の表面に形成された酸化チタン皮膜の表面部を走査型電子顕微鏡で撮像した写真(倍率30,000倍)を
図5に示し、浴温度を30℃に設定して製造した光触媒体[サンプル4-2(参考例)]の表面に形成された酸化チタン皮膜の表面部を走査型電子顕微鏡で撮像した写真(倍率30,000倍)を
図6に示す。
【0079】
図5及び
図6に示す写真は、
図2に示すように微細孔1が密集して形成されている領域(多孔質領域)を走査型電子顕微鏡で拡大して撮像したものであり、黒丸形状、あるいは黒色の細長い楕円形状などで表示されている部位が、酸化チタン皮膜の表面部に形成されている微細孔1を示している。サンプル4-1及び4-2の光触媒体に形成された酸化チタン皮膜の厚さを測定したところ、両者とも100 nm〜150 nmであった。
【0080】
図5及び
図6から明らかなように、
図5に示すサンプル4-1の酸化チタン皮膜のほうが、
図6に示すサンプル4-2よりも微細孔がより密集状態で形成されていた。この理由は、電解浴の温度によって形成される酸化チタン皮膜の導電率が変化し、これにより酸化チタン皮膜を流れる電流密度分布が異なってくるためであると推定される。すなわち、電解浴の浴温度を10℃という低い温度に設定して陽極酸化処理を施すと、酸化チタン皮膜を流れる電流密度が低下し、チタン製箔と生成された酸化チタン皮膜において、それぞれの電解浴との界面において電気抵抗が上昇する。そのため、チタン製箔の表面の陽極酸化反応が活性化し、チタン製箔の表面に形成される酸化チタン皮膜の表面には、より微細孔が密集状態で生成されると推測される。
【0081】
サンプル4-1及び4-2の光触媒体の酸化チタン皮膜の表面部について、
図5及び
図6に示す走査型電子顕微鏡で撮像した画像データ(倍率30,000倍)をプリントして縦横が1000 nm×1000 nmの任意の正方形の範囲を5ケ所(領域1〜5)設定した。各領域1〜5についてその範囲内に存在する微細孔1の幅の最大値と最小値とをスケールを用いて計測して孔幅Wを算出し、孔幅Wが50 nm〜300 nmである微細孔1の個数を計測した。得られた結果を表2に示す。各領域1〜5内に存在する微細孔1の個数は、走査型電子顕微鏡で撮像した画像データを、画像解析用の別の画像処理装置を用いて計測することも可能である。
【0082】
電解浴の浴温度を10℃と30℃に設定して陽極酸化処理を施して得たそれぞれの光触媒体について、JIS R 1702(フィルム密着法)による光触媒抗菌性試験を行った。得られた抗菌活性値(R)を表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
表2に示すように、電解浴の浴温度を10℃に設定して陽極酸化処理を施して得た光触媒体に形成された酸化チタン皮膜の表面において、縦横が1000 nm×1000 nmの正方形内に生成された微細孔1の個数は19〜36個になり、その平均個数は25.4個になった。一方、浴温度を30℃に設定した場合には10〜19個になり、その平均個数は15.2個になり、浴温度を10℃に設定した方が生成個数は平均個数で1.6倍多くなっていることが確認された。抗菌活性値(R)については、双方とも2.0を超えた値が得られたが、浴温度を10℃に設定した場合には2.7の値になり、浴温度を30℃に設定した場合と比較して約1.3倍高くなっていた。
【0085】
このように、電解浴の浴温度を10℃に設定したサンプル4-1の光触媒体の方が、30℃に設定したサンプル4-2より優れた抗菌性を発揮することができる理由は、次の通りであると考えられる。すなわち、電解浴の浴温度をより低い温度である10℃に設定すると、陽極酸化処理の時間が極めて短い時間(例えば22.5秒)であっても、形成される酸化チタン皮膜を流れる電流密度が低下してチタン製箔と酸化チタン皮膜において、それぞれの電解浴との界面の電気抵抗が上昇するので、チタン製箔表面の陽極酸化反応がより促進される。これにより、チタン製箔の表面に表2に示すように微細孔が密に、かつ密集した状態で生成されると推定することができる。酸化チタン皮膜の表面に微細孔が密集して生成されていると、酸化チタン皮膜の表面の表面積がより広くなるので、この表面部への紫外光の照射により、電解浴の浴温度を30℃に設定したサンプル4-2よりも抗菌性の機能が向上したものと考えられる。
【0086】
サンプル4-1の光触媒体について、JIS R 1702(フィルム密着法)による光触媒抗菌性試験を行った。
図7(a)の左側に示す写真は、この光触媒体を暗所に6時間保管したときの大腸菌(白丸で示されている)の状況を、
図7(a)の右側に示す写真は紫外光(光源:ブラックライト蛍光灯)を6時間照射しときの大腸菌の状況を示している。
図7(a)の右側に示されているように、本発明の抗菌性を有する光触媒体については目視で大腸菌の存在は確認できなかった。
【0087】
比較例として、陽極酸化処理と加熱処理を施していない状態のチタン製箔を用いて同様の光触媒抗菌性試験を行った。
図7(b)の左側に示す写真は暗所に6時間保管したときの大腸菌(白丸で示されている)の状況を、
図7(b)の右側に示す写真は紫外光(光源:ブラックライト蛍光灯)を6時間照射したときの大腸菌の状況を示している。陽極酸化処理を施していないチタン製箔については、抗菌作用が生じなくて大腸菌の数に変化はなかった。
【0088】
実施例5
ビーカテストにより、長さ10 cm、幅5cm、厚さ80μmのチタン製箔の基材を、実施例4と同様の陽極酸化条件(浴温度は10℃)及び加熱処理条件で陽極酸化と加熱処理を施して光触媒体を試作した。ビーカテストとは、上記チタン製箔の基材を容器内で静止状態で陽極酸化処理と加熱処理を行った試作テストを示す。試作した光触媒体に形成されている酸化チタン皮膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果、酸化チタン皮膜の表面に対して、ほぼ80〜90%以上の領域が微細孔が密集した多孔質領域であった。
【0089】
これに対し、前記したように長尺のチタン製箔からなる基材を走行させながら陽極酸化処理と加熱処理を行うことにより得られる長尺の光触媒体は、酸化チタン皮膜の全表面に対して多孔質構造となっている領域の比率(多孔質領域の比率)は、ビーカテストにより得た光触媒体と比較して低下する。
【0090】
そこで、長さ50 m、幅125 mm、厚さ80μmの4つの長尺のチタン製箔からなる基材(基材1〜基材4)のそれぞれを、電解浴の浴温度を37℃、30℃、20℃、10℃に設定した温度で22.5秒間の陽極酸化処理を、陽極酸化装置内を走行させながら施し、陽極酸化処理済みの基材を加熱装置内を走行させながら加熱処理して光触媒体[サンプル5-1〜5-4(サンプル5-1及び5-2は参考例)]を作製した。
【0091】
実施例5において、電解浴の浴温度を除く他の製造条件は、これら4つの長尺のチタン製箔ともに下記のように同一の条件とした。
電解浴の組成 :C
4H
4Na
2O
6が1wt%、H
2O
2が2wt%、残部
が水からなる電解浴
印加電圧 :100 V
陽極酸化処理時間 :22.5秒
加熱処理の温度 :450℃(大気雰囲気)
加熱時間 :60秒
【0092】
得られた4つの光触媒体を走査型電子顕微鏡で観察し、酸化チタン皮膜の表面に形成されている多孔質領域の比率と、多孔質領域を含む所定の大きさの試料(縦横が50 mm×50 mm)を作製し、JIS R1702に準拠した光触媒抗菌性試験を行って抗菌性活性値(R)を求めた。サンプル5-1〜5-3については上記手順で2回実験を行い、サンプル5-4については上記手順で3回実験を行った。得られた結果を表3に示す。表3に示す「多孔質領域の比率(%)」とは、走査型電子顕微鏡でこの試作した長尺の光触媒体のそれぞれについてその表面を任意に選択して、その複数箇所(10ケ所)を観察したときに観察された観察視野に該当する酸化チタン皮膜の表面おいて、多孔質領域が占める割合を目視で判定した結果の平均値である。
【0093】
【表3】
【0094】
表3に示すように、電解浴の浴温度をそれぞれ37℃、30℃、20℃、10℃に設定した陽極酸化処理を施して得た光触媒体は、最も高い37℃の温度で陽極酸化処理を施した場合にその多孔質領域の比率が20%以下になっている領域が観察され、その領域を含む光触媒体の抗菌活性値(R)は2.0に達していなかった。これに対して、浴温度を30℃、20℃、10℃に設定して陽極酸化処理を施して得た光触媒体は、その多孔質領域の比率が25%を超えた領域が観察され、その抗菌活性値(R)も2.0を超えていた。
【0095】
上記したように、本発明の
製造方法により得られた光触媒体は、その表面にアナターゼ型酸化チタンの結晶構造を含有する酸化チタン皮膜を備えており、その酸化チタン皮膜の表面は、孔幅Wの値が50 nm〜300 nmの微細孔が密集状態で形成された多孔質領域が散在し、この多孔質領域は酸化チタン皮膜表面の25%以上の領域を占めており、
かかる光触媒体はJIS R1702に準拠した光触媒抗菌性試験を行ったときに、長尺(例えば長さが100 m以上)のチタン製箔を連続陽極酸化処理して製造した場合でも、抗菌活性値(R)が2.0以上の値を安定して発揮することができる。