(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願の光学系、光学装置、及び光学系の製造方法について説明する。
本願の光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群とを有し、前記第1レンズ群が少なくとも1枚の負レンズを有し、前記第1レンズ群の位置は固定であり、前記第2レンズ群を像側へ移動させ、前記第3レンズ群を物体側へ移動させることにより、無限遠物体から近距離物体への合焦を行い、以下の条件式(1)を満足することを特徴とする。
(1) 1.80 < f/(−f4) < 9.00
ただし、
f :無限遠物体合焦時の前記光学系の焦点距離
f4:無限遠物体合焦時の前記第4レンズ群の焦点距離
【0010】
条件式(1)は、第4レンズ群の焦点距離を規定するものである。本願の光学系は、条件式(1)を満足することにより、バックフォーカスを確保しながら、球面収差、像面湾曲収差、及びコマ収差を良好に補正することができる。
本願の光学系の条件式(1)の対応値が上限値を上回ると、第4レンズ群の焦点距離が小さくなる。このため、像面湾曲収差とコマ収差を良好に補正することができなくなってしまう。なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(1)の上限値を7.00とすることがより好ましい。
一方、本願の光学系の条件式(1)の対応値が下限値を下回ると、第4レンズ群の焦点距離が大きくなる。このため、バックフォーカスを確保することが困難になり、また球面収差を良好に補正することができなくなってしまう。なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(1)の下限値を1.90とすることがより好ましい。
以上の構成により、無限遠物体から等倍の近距離物体への合焦の際に移動するレンズ群の移動量が小さく、良好な光学性能を備えた光学系を実現することができる。
【0011】
また本願の光学系は、前記第1レンズ群が有する前記負レンズは1枚のみであることが望ましい。前記第1レンズ群が2枚以上の負レンズを有する場合、本願の光学系が大型化し、また軸上色収差が悪化してしまうため好ましくない。
また本願の光学系は、以下の条件式(2)を満足することが望ましい。
(2) 3.80 < (−f4)/f3 < 14.00
ただし、
f3:無限遠物体合焦時の前記第3レンズ群の焦点距離
f4:無限遠物体合焦時の前記第4レンズ群の焦点距離
【0012】
条件式(2)は、第3レンズ群と第4レンズ群の焦点距離を規定するものである。本願の光学系は、条件式(2)を満足することにより、像面湾曲収差、球面収差、及びコマ収差を良好に補正することができる。
本願の光学系の条件式(2)の対応値が上限値を上回ると、第3レンズ群の焦点距離が小さくなるため、像面湾曲収差を良好に補正することができなくなってしまう。また、第4レンズ群の焦点距離が大きくなるため、球面収差を良好に補正することができなくなってしまう。なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(2)の上限値を12.50とすることがより好ましい。
一方、本願の光学系の条件式(2)の対応値が下限値を下回ると、像面湾曲収差とコマ収差を良好に補正することができなくなってしまう。なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(2)の下限値を4.00とすることがより好ましい。
【0013】
また本願の光学系は、以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
(3) 4.80 < f4/f2 < 25.00
ただし、
f2:無限遠物体合焦時の前記第2レンズ群の焦点距離
f4:無限遠物体合焦時の前記第4レンズ群の焦点距離
【0014】
条件式(3)は、第2レンズ群と第4レンズ群の焦点距離を規定するものである。本願の光学系は、条件式(3)を満足することにより、像面湾曲収差、球面収差、及びコマ収差を良好に補正することができる。
本願の光学系の条件式(3)の対応値が上限値を上回ると、第2レンズ群の焦点距離が小さくなるため、像面湾曲収差を良好に補正することができなくなってしまう。また、第4レンズ群の焦点距離が大きくなるため、球面収差を良好に補正することができなくなってしまう。なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(3)の上限値を20.00とすることがより好ましい。
一方、本願の光学系の条件式(3)の対応値が下限値を下回ると、像面湾曲収差とコマ収差を良好に補正することができなくなってしまう。なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(3)の下限値を5.00とすることがより好ましい。
【0015】
また本願の光学系は、前記第3レンズ群が接合レンズを有することが望ましい。この構成により、本願の光学系は軸上色収差と倍率色収差を良好に補正することができる。
また本願の光学系は、前記第2レンズ群が接合レンズを有することが望ましい。この構成により、本願の光学系は軸上色収差と倍率色収差を良好に補正することができる。
また本願の光学系は、前記第2レンズ群が3枚のレンズのみで構成されていることが望ましい。この構成により、本願の光学系は球面収差やコマ収差等の諸収差を良好に補正することができる。
また本願の光学系は、前記第3レンズ群が3枚のレンズのみで構成されていることが望ましい。この構成により、本願の光学系は球面収差やコマ収差等の諸収差を良好に補正することができる。
【0016】
また本願の光学系は、前記第1レンズ群と前記第4レンズ群との間に開口絞りを有することが望ましい。この構成により、本願の光学系はコマ収差を良好に補正することができる。
また本願の光学系は、前記開口絞りが前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間に配置されていることが望ましい。この構成により、本願の光学系はコマ収差をより良好に補正することができる。
また本願の光学系は、前記開口絞りの絞り径が合焦の際に変化することが望ましい。この構成により、本願の光学系は球面収差やコマ収差等の諸収差を良好に補正することができる。
【0017】
また本願の光学系は、前記第4レンズ群の位置が合焦の際に固定であることが望ましい。この構成により、本願の光学系は、合焦時における球面収差やコマ収差等の諸収差の変動を少なくすることができる。
また本願の光学系は、前記光学系中の全てのレンズ面が球面又は平面であることが望ましい。この構成により、本願の光学系のレンズ加工及び組立調整が容易になり、これらの誤差による光学性能の劣化を防ぐことができるため好ましい。また、像面がずれた場合でも描写性能の劣化が少ないため好ましい。
本願の光学装置は、上述した構成の光学系を備えたことを特徴とする。これにより、無限遠物体から等倍の近距離物体への合焦の際に移動するレンズ群の移動量が小さく、良好な光学性能を備えた光学装置を実現することができる。
【0018】
本願の光学系の製造方法は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群とを有する光学系の製造方法であって、前記第1レンズ群が少なくとも1枚の負レンズを有するようにし、前記第1レンズ群の位置は固定であり、前記第2レンズ群を像側へ移動させ、前記第3レンズ群を物体側へ移動させることにより、無限遠物体から近距離物体への合焦を行うようにし、前記光学系が以下の条件式(1)を満足するようにすることを特徴とする。これにより、無限遠物体から等倍の近距離物体への合焦の際に移動するレンズ群の移動量が小さく、良好な光学性能を備えた光学系を製造することができる。
(1) 1.80 < f/(−f4) < 9.00
ただし、
f :無限遠物体合焦時の前記光学系の焦点距離
f4:無限遠物体合焦時の前記第4レンズ群の焦点距離
【0019】
以下、本願の数値実施例に係る光学系を添付図面に基づいて説明する。
(第1実施例)
図1は本願の第1実施例に係る光学系の無限遠物体合焦時のレンズ断面図であり、合焦の際の各レンズ群の移動軌跡も示している。
本実施例に係る光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、Fナンバーを決定する開口絞りSと、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4とからなる。
第1レンズ群G1は、物体側から順に、両凸形状の正レンズL11と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL12と、両凹形状の負レンズL13と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL14との接合負レンズとからなる。
第2レンズ群G2は、物体側から順に、両凹形状の負レンズL21と、両凹形状の負レンズL22と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL23との接合負レンズとからなる。
【0020】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凸形状の正レンズL31と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL32と両凸形状の正レンズL33との接合正レンズとからなる。
第4レンズ群G4は、物体側から順に、両凹形状の負レンズL41と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL42との接合負レンズと、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL43と、両凸形状の正レンズL44とからなる。
以上の構成の下、本実施例に係る光学系は、第1レンズ群G1、開口絞りS、及び第4レンズ群G4の位置を像面Iに対して固定とし、第2レンズ群G2を光軸に沿って像側へ移動させ、第3レンズ群G3を光軸に沿って物体側へ移動させることにより、無限遠物体から等倍の近距離物体への合焦を行う。
なお、本実施例に係る光学系では、開口絞りSの無限遠物体合焦時の絞り径よりも近距離物体合焦時の絞り径が小さくなるように、合焦の際に開口絞りSの絞り径が変化する。
【0021】
以下の表1に、本実施例に係る光学系の諸元の値を掲げる。
表1において、fは焦点距離、BFはバックフォーカスを示す。
[面データ]において、面番号は物体側から数えた光学面の順番、rは曲率半径、dは光軸上の面間隔、ndはd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率、νdはd線(波長λ=587.6nm)に対するアッベ数をそれぞれ示している。また、物面は物体面、可変は可変の面間隔、(絞りS)は開口絞りS、像面は像面Iをそれぞれ示している。なお、曲率半径r=∞は平面を示し、空気の屈折率nd=1.00000の記載は省略している。
[各種データ]において、FNOはFナンバー、2ωは画角、Yは像高、TLは光学系全長(第1面から像面Iまでの距離)、diは第i面の可変の面間隔、βは撮影倍率をそれぞれ示す。
ここで、表1に掲載されている焦点距離fや曲率半径r、及びその他長さの単位は一般に「mm」が使われる。しかしながら光学系は、比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるため、これに限られるものではない。なお、以上に述べた表1の符号は、後述する各実施例の表においても同様に用いるものとする。
【0022】
(表1)第1実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞
1 80.4775 2.80 1.79500 45.31
2 -67.2134 0.15
3 22.8496 2.70 1.61800 63.34
4 155.4117 0.65
5 -134.0000 0.80 1.75520 27.57
6 19.0148 2.70 1.80400 46.60
7 346.5433 可変
8 -154.9309 0.80 1.62299 58.12
9 12.7982 2.30
10 -48.8633 0.80 1.51823 58.82
11 13.2188 1.90 1.78472 25.64
12 38.2840 可変
13(絞りS) ∞ 可変
14 40.5538 2.30 1.61800 63.34
15 -35.2835 0.10
16 19.4139 1.10 1.80809 22.74
17 10.4886 3.70 1.60300 65.44
18 -993.2637 可変
19 -136.0047 0.90 1.74400 44.81
20 9.7879 1.90 1.75520 27.57
21 17.2285 4.70
22 -10.8000 1.10 1.48749 70.31
23 -16.0003 0.10
24 53.6559 3.30 1.71999 50.27
25 -24.2509 BF
像面 ∞
[各種データ]
f 37.20
FNO 2.88
2ω 24.7゜
Y 8.11
TL 77.43
BF 16.09
<合焦時の可変間隔データ>
無限遠物体合焦時 近距離物体合焦時
f又はβ 37.20 -0.50 -1.01
d7 1.53 6.42 10.47
d12 10.72 5.82 1.77
d13 10.96 6.23 1.40
d18 2.30 7.02 11.85
BF 16.09 16.09 16.09
[レンズ群データ]
群 始面 f
1 1 25.05
2 8 -15.15
3 14 18.10
4 19 -211.78
[条件式対応値]
(1) f/(−f4) = 5.70
(2) (−f4)/f3 = 11.70
(3) f4/f2 = 14.00
【0023】
図2(a)、
図2(b)、及び
図2(c)はそれぞれ、本願の第1実施例に係る光学系の無限遠物体合焦時の諸収差図、撮影倍率β=−0.5の時の諸収差図、及び撮影倍率β=−1.0の時(近距離物体合焦時)の諸収差図である。
各収差図において、FNOはFナンバー、Yは像高をそれぞれ示す。dはd線(λ=587.6nm)、gはg線(λ=435.8nm)における収差をそれぞれ示す。非点収差図において、実線はサジタル像面、破線はメリディオナル像面をそれぞれ示す。なお、後述する各実施例の諸収差図においても、本実施例と同様の符号を用いる。
図2(a)、
図2(b)、及び
図2(c)より、本実施例に係る光学系は無限遠物体合焦時から近距離物体合焦時にわたって諸収差が良好に補正され優れた結像性能を有していることがわかる。
【0024】
(第2実施例)
図3は本願の第2実施例に係る光学系の無限遠物体合焦時のレンズ断面図であり、合焦の際の各レンズ群の移動軌跡も示している。
本実施例に係る光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、Fナンバーを決定する開口絞りSと、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4とからなる。
第1レンズ群G1は、物体側から順に、両凸形状の正レンズL11と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL12と、両凹形状の負レンズL13と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL14との接合負レンズとからなる。
第2レンズ群G2は、物体側から順に、両凹形状の負レンズL21と、両凹形状の負レンズL22と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL23との接合負レンズとからなる。
【0025】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凸形状の正レンズL31と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL32と両凸形状の正レンズL33との接合正レンズとからなる。
第4レンズ群G4は、物体側から順に、両凹形状の負レンズL41と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL42との接合負レンズと、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL43と、両凸形状の正レンズL44とからなる。
以上の構成の下、本実施例に係る光学系は、第1レンズ群G1及び開口絞りSの位置を像面Iに対して固定とし、第2レンズ群G2を光軸に沿って像側へ移動させ、第3レンズ群G3を光軸に沿って物体側へ移動させ、第4レンズ群G4を光軸に沿って移動させることにより、無限遠物体から等倍の近距離物体への合焦を行う。
なお、本実施例に係る光学系では、開口絞りSの無限遠物体合焦時の絞り径よりも近距離物体合焦時の絞り径が小さくなるように、合焦の際に開口絞りSの絞り径が変化する。
以下の表2に、本実施例に係る光学系の諸元の値を掲げる。
【0026】
(表2)第2実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞
1 62.5471 2.72 1.79500 45.29
2 -65.0490 0.15
3 22.6930 2.50 1.62299 58.22
4 174.1884 0.60
5 -120.0000 0.80 1.78472 25.68
6 16.6957 2.80 1.80400 46.57
7 6876.0909 可変
8 -71.7826 0.80 1.60311 60.67
9 10.9013 2.30
10 -68.8400 0.80 1.51742 52.30
11 11.2530 1.80 1.80518 25.43
12 34.2160 可変
13(絞りS) ∞ 可変
14 34.6945 2.20 1.61800 63.37
15 -33.0826 0.10
16 18.8317 1.10 1.76182 26.56
17 10.2304 3.10 1.59319 67.90
18 -3408.2041 可変
19 -475.8216 0.92 1.62299 58.22
20 9.2000 1.80 1.54814 45.79
21 12.8431 4.60
22 -11.4956 1.10 1.48749 70.40
23 -15.5600 0.10
24 19.6665 3.42 1.51860 69.97
25 -46.4686 BF
像面 ∞
[各種データ]
f 37.1
FNO 2.40
2ω 24.7゜
Y 8.18
TL 70.20
BF 14.13
<合焦時の可変間隔データ>
無限遠物体合焦時 近距離物体合焦時
f又はβ 37.05 -0.50 -1.01
d7 1.50 6.25 9.80
d12 9.80 5.05 1.50
d13 8.83 5.54 1.50
d18 2.25 5.53 9.55
BF 14.13 13.24 13.36
[レンズ群データ]
群 始面 f
1 1 22.98
2 8 -14.05
3 14 16.59
4 19 -76.27
[条件式対応値]
(1) f/(−f4) = 2.10
(2) (−f4)/f3 = 4.60
(3) f4/f2 = 5.40
【0027】
図4(a)、
図4(b)、及び
図4(c)はそれぞれ、本願の第2実施例に係る光学系の無限遠物体合焦時の諸収差図、撮影倍率β=−0.5の時の諸収差図、及び撮影倍率β=−1.0の時(近距離物体合焦時)の諸収差図である。
図4(a)、
図4(b)、及び
図4(c)より、本実施例に係る光学系は無限遠物体合焦時から近距離物体合焦時にわたって諸収差が良好に補正され優れた結像性能を有していることがわかる。
【0028】
(第3実施例)
図5は本願の第3実施例に係る光学系の無限遠物体合焦時のレンズ断面図であり、合焦の際の各レンズ群の移動軌跡も示している。
本実施例に係る光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、Fナンバーを決定する開口絞りSと、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4とからなる。
第1レンズ群G1は、物体側から順に、両凸形状の正レンズL11と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL12と、両凹形状の負レンズL13と両凸形状の正レンズL14との接合負レンズとからなる。
第2レンズ群G2は、物体側から順に、両凹形状の負レンズL21と、両凹形状の負レンズL22と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL23との接合負レンズとからなる。
【0029】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凸形状の正レンズL31と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL32と両凸形状の正レンズL33との接合正レンズとからなる。
第4レンズ群G4は、物体側から順に、両凹形状の負レンズL41と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL42との接合負レンズと、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL43と、両凸形状の正レンズL44とからなる。
以上の構成の下、本実施例に係る光学系は、第1レンズ群G1、開口絞りS、及び第4レンズ群G4の位置を像面Iに対して固定とし、第2レンズ群G2を光軸に沿って像側へ移動させ、第3レンズ群G3を光軸に沿って物体側へ移動させることにより、無限遠物体から等倍の近距離物体への合焦を行う。
なお、本実施例に係る光学系では、開口絞りSの無限遠物体合焦時の絞り径よりも近距離物体合焦時の絞り径が小さくなるように、合焦の際に開口絞りSの絞り径が変化する。
以下の表3に、本実施例に係る光学系の諸元の値を掲げる。
【0030】
(表3)第3実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞
1 100.9013 2.80 1.78800 47.35
2 -52.4774 0.15
3 21.0408 2.40 1.72916 54.61
4 110.4223 0.70
5 -87.5313 0.90 1.78472 25.64
6 18.8617 2.40 1.79500 45.31
7 -228.4833 可変
8 -89.4401 0.80 1.51680 63.88
9 10.0686 2.00
10 -35.9995 0.80 1.51823 58.82
11 10.9067 0.97 1.78472 25.64
12 29.3852 可変
13(絞りS) ∞ 可変
14 34.1643 2.00 1.49782 82.57
15 -24.6009 0.10
16 17.4739 0.70 1.84666 23.80
17 9.9643 3.50 1.60300 65.44
18 -78.7084 可変
19 -60.1553 0.70 1.78800 47.35
20 10.2000 2.00 1.75520 27.57
21 18.6523 4.75
22 -11.7834 1.11 1.51680 63.88
23 -17.4095 0.10
24 36.0398 3.88 1.72916 54.61
25 -31.9682 BF
像面 ∞
[各種データ]
f 37.10
FNO 2.85
2ω 24.9゜
Y 8.11
TL 68.83
BF 15.04
<合焦時の可変間隔データ>
無限遠物体合焦時 近距離物体合焦時
f又はβ 37.10 -0.50 -1.01
d7 1.54 6.25 9.80
d12 8.75 5.05 1.50
d13 8.23 5.54 1.50
d18 1.68 5.53 9.55
BF 15.04 15.04 15.04
[レンズ群データ]
群 始面 f
1 1 21.65
2 8 -13.05
3 14 15.41
4 19 -86.17
[条件式対応値]
(1) f/(−f4) = 2.30
(2) (−f4)/f3 = 5.60
(3) f4/f2 = 6.60
【0031】
図6(a)、
図6(b)、及び
図6(c)はそれぞれ、本願の第3実施例に係る光学系の無限遠物体合焦時の諸収差図、撮影倍率β=−0.5の時の諸収差図、及び撮影倍率β=−1.0の時(近距離物体合焦時)の諸収差図である。
図6(a)、
図6(b)、及び
図6(c)より、本実施例に係る光学系は無限遠物体合焦時から近距離物体合焦時にわたって諸収差が良好に補正され優れた結像性能を有していることがわかる。
【0032】
上記各実施例によれば、無限遠物体から等倍の近距離物体への合焦の際に移動するレンズ群の移動量が小さく、良好な光学性能を備えた光学系を実現することができる。詳細には、フィルムカメラや電子スチルカメラ等に好適であり、画角が25度程度、Fナンバーが2.4〜2.8程度で、無限遠物体から等倍の近距離物体まで高品質な画像を撮影可能なオートフォーカスに適した内焦式の光学系を実現することができる。
なお、上記各実施例に係る光学系は、最も像側に配置されるレンズ成分の像側のレンズ面から像面までの光軸上の距離(バックフォーカス)を最も小さい状態で10.0〜30.0mm程度とすることが好ましい。また、上記各実施例に係る光学系は、像高を5.0〜12.5mmとすることが好ましく、5.0〜9.5mmとすることがより好ましい。
【0033】
ここで、上記各実施例は本願発明の一具体例を示しているものであり、本願発明はこれらに限定されるものではない。以下の内容は、本願の光学系の光学性能を損なわない範囲で適宜採用することが可能である。
本願の光学系の数値実施例として4群構成のものを示したが、本願はこれに限られず、その他の群構成(例えば、5群や6群等)の光学系を構成することもできる。具体的には、本願の光学系の最も物体側や最も像側にレンズ又はレンズ群を追加した構成でも構わない。なお、レンズ群とは、空気間隔で分離された少なくとも1つのレンズを有する部分をいう。
【0034】
また、本願の光学系は、無限遠物体から近距離物体への合焦を行うために、レンズ群の一部、1つのレンズ群全体、或いは複数のレンズ群を合焦レンズ群として光軸方向へ移動させる構成としてもよい。特に、第2レンズ群と第3レンズ群を合焦レンズ群とすることが好ましい。また、斯かる合焦レンズ群は、オートフォーカスに適用することも可能であり、オートフォーカス用のモータ、例えば超音波モータ等による駆動にも適している。
また、本願の光学系において、いずれかのレンズ群全体又はその一部を、防振レンズ群として光軸に垂直な成分を含むように移動させ、又は光軸を含む面内方向へ回転移動(揺動)させることで、手ブレ等によって生じる像ブレを補正する構成とすることもできる。特に、本願の光学系では第4レンズ群の少なくとも一部を防振レンズ群とすることが好ましい。
【0035】
また、本願の光学系を構成するレンズのレンズ面は、球面又は平面としてもよく、或いは非球面としてもよい。レンズ面が球面又は平面の場合、レンズ加工及び組立調整が容易になり、これらの誤差による光学性能の劣化を防ぐことができるため好ましい。また、像面がずれた場合でも描写性能の劣化が少ないため好ましい。レンズ面が非球面の場合、研削加工による非球面、ガラスを型で非球面形状に成型したガラスモールド非球面、又はガラス表面に設けた樹脂を非球面形状に形成した複合型非球面のいずれでもよい。また、レンズ面は回折面としてもよく、レンズを屈折率分布型レンズ(GRINレンズ)或いはプラスチックレンズとしてもよい。
【0036】
また、本願の光学系において開口絞りは第2レンズ群又は第3レンズ群の近傍に配置されることが好ましく、開口絞りとして部材を設けずにレンズ枠でその役割を代用する構成としてもよい。
また、本願の光学系を構成するレンズのレンズ面に、広い波長域で高い透過率を有する反射防止膜を施してもよい。これにより、フレアやゴーストを軽減し、高コントラストの高い光学性能を達成することができる。
【0037】
次に、本願の光学系を備えたカメラを
図7に基づいて説明する。
図7は本願の光学系を備えたカメラの構成を示す図である。
本カメラ1は、撮影レンズ2として上記第1実施例に係る光学系を備えたデジタル一眼レフカメラである。
本カメラ1において、不図示の物体(被写体)からの光は、撮影レンズ2で集光されて、クイックリターンミラー3を介して焦点板4に結像される。そして焦点板4に結像されたこの光は、ペンタプリズム5中で複数回反射されて接眼レンズ6へ導かれる。これにより撮影者は、被写体像を接眼レンズ6を介して正立像として観察することができる。
また、撮影者によって不図示のレリーズボタンが押されると、クイックリターンミラー3が光路外へ退避し、不図示の被写体からの光は撮像素子7へ到達する。これにより被写体からの光は、当該撮像素子7によって撮像されて、被写体画像として不図示のメモリに記録される。このようにして、撮影者は本カメラ1による被写体の撮影を行うことができる。
【0038】
ここで、本カメラ1に撮影レンズ2として搭載した上記第1実施例に係る光学系は、上述のように無限遠物体から等倍の近距離物体への合焦の際に移動するレンズ群の移動量が小さく、良好な光学性能を備えている。これにより本カメラ1は、オートフォーカスに適しており、無限遠物体から等倍の近距離物体まで高品質な画像を撮影することができる。なお、上記第2、第3実施例に係る光学系を撮影レンズ2として搭載したカメラを構成しても、上記カメラ1と同様の効果を奏することができる。また、クイックリターンミラー3を有しない構成のカメラに上記各実施例に係る光学系を搭載した場合でも、上記カメラ1と同様の効果を奏することができる。
【0039】
最後に、本願の光学系の製造方法の概略を
図8に基づいて説明する。
図8は本願の光学系の製造方法を示す図である。
本願の光学系の製造方法は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群とを有する光学系の製造方法であって、以下のステップS1〜S3を含むものである。
ステップS1:第1レンズ群が少なくとも1枚の負レンズを有するようにする。
ステップS2:レンズ鏡筒に公知の移動機構を設ける等することで、第1レンズ群の位置は固定であり、第2レンズ群を像側へ移動させ、第3レンズ群を物体側へ移動させることにより、無限遠物体から近距離物体への合焦を行うようにする。
ステップS3:光学系が以下の条件式(1)を満足するようにし、第1〜第4レンズ群をレンズ鏡筒内に物体側から順に配置する。
(1) 1.80 < f/(−f4) < 9.00
ただし、
f :無限遠物体合焦時の光学系の焦点距離
f4:無限遠物体合焦時の第4レンズ群の焦点距離
【0040】
斯かる本願の光学系の製造方法によれば、無限遠物体から等倍の近距離物体への合焦の際に移動するレンズ群の移動量が小さく、良好な光学性能を備えた光学系を製造することができる。