【実施例】
【0080】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本実施例で用いた分析機器及び測定方法を以下に列記する。
【0081】
[NMR測定]
装置:VARIAN製、Gemini−200
[紫外可視分光]
装置:島津製作所製、紫外可視分光光度計 UV−3100
[赤外分光分析]
装置:パーキンエルマー製、System2000 FT−IR
測定方法:KBr法
[GPC測定]
装置:東ソー製、HLC−8200、
カラム:東ソー製、G4000HXL−G3000HXL−G2000HXL
[表面抵抗測定]
装置:三菱油化製、Loresta IP MCP−250
[膜厚測定]
装置:ミツトヨ製、マイクロメーター MDC−25L
[熱分析装置]
1)熱分解温度測定
装置:マックサイエンス社製、TG−DTA 2000
条件:窒素雰囲気下、α−アルミナ(標準)10mg、試料10mg、昇温速度は10℃/min、25℃から500℃までの範囲において測定した。
【0082】
2)耐熱性評価
装置:リガク社製、Thermo Plus TG8120
条件:大気中、α−アルミナ(標準)10mg、試料10mg、事前処理として、室温から5℃/minで100℃まで昇温し、同温度で20分間ホールドした後、耐熱性評価を行った。評価は、100℃から2℃/minで150℃まで昇温し、15分間ホールドしたときまでの重量減少量を測定した。
【0083】
合成例1:スルホン化トリアリールアミンポリマー(16)の合成(一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマーの合成)
a)トリアリールアミンポリマー(14)の合成
冷却管、温度計を装着した1000mlの四つ口丸底フラスコに、室温下、4,4’−ジヨードビフェニル 20.30g(0.05mol)、アニリン 5.12g(0.055mol)、97%ナトリウム−tert−ブトキシド 11.53g(0.12mol;ヨウ素原子に対して1.2当量)及びo−キシレン 400.16gを仕込んだ。この混合液に、予め窒素雰囲気下で調製したトリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体 0.23g(0.25mol;ヨウ素原子に対して0.25mol%)及びトリターシャリーブチルホスフィン 1.6ml(パラジウム原子に対して原子4当量)のo−キシレン(31ml)溶液を添加した。その後、窒素雰囲気下、温度を120℃まで昇温し、120℃で撹拌しながら17時間熟成した。17時間後、アニリン 0.9g(0.01mol)を添加し、更に3時間反応を行った。反応終了後、この反応混合物を約80℃まで冷却した後、水 50.1gを添加し、更に90%アセトン水溶液(1650ml)の撹拌溶液へゆっくり加えた。ろ過により固体をろ別回収し、アセトン、水、アセトンの順番で洗浄した後、減圧乾燥し、淡黄色粉体 11.8gを得た(94%)。得られた粉体をTHF系GPCで分析した結果、ポリスチレン換算で重量平均分子量5,500及び数平均分子量3,100(分散度1.8)であった。
【0084】
【化18】
b)トリアリールアミンポリマー(15)の合成
冷却管、温度計を装着した1000mlの四つ口丸底フラスコに、室温下、合成例a)で得られたトリアリールアミンポリマー 11.65g(ポリスチレン換算で数平均分子量3,100)、97%ナトリウム−tert−ブトキシド 19.55g(0.20mol;推定NH原子数に対して26当量)、ブロモベンゼン 11.73g(0.08mol;推定NH原子数に対して10当量)、及びo−キシレン 400.32gを仕込んだ。この混合液に、予め窒素雰囲気下で調製したトリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体 0.10g(0.11mmol;推定NH原子数に対して14.7mol%)及びトリターシャリーブチルホスフィン 1.6ml(パラジウム原子に対して原子8当量)のo−キシレン(29ml)溶液を添加した。その後、窒素雰囲気下、温度を120℃まで昇温し、120℃で撹拌しながら1時間熟成した。反応終了後、この反応混合物を約80℃まで冷却した後、水 150.1gを添加し、更に92%アセトン水溶液(2050ml)の撹拌溶液へゆっくり加えた。ろ過により固体をろ別回収し、アセトン、水、アセトンの順番で洗浄した後、クロロベンゼン 662.6gに溶解し、濃縮後、アセトン(800ml)の撹拌溶液へゆっくり加えて、再沈殿で固体をろ別回収し、アセトン、水、アセトンの順番で洗浄した。ろ過した固体を減圧乾燥して淡黄色粉体 8.6gを得た(66%)。得られた粉体をTHF系GPCで分析した結果、ポリスチレン換算で重量平均分子量5,500及び数平均分子量3,700(分散度1.5)であった。
【0085】
【化19】
c)スルホン化トリアリールアミンポリマー(16)の合成
冷却管、温度計を装着した500mlの四つ口丸底フラスコに、室温下、合成例b)で得られたトリアリールアミンポリマー 8.00g(ポリスチレン換算で数平均分子量3,700)、アミド硫酸 136.18g(1.40mol;N−フェニルN−ビフェニルアミンを繰り返し単位とした場合の推定分子数に対して40当量)、及びN−メチルピロリドン 209.55gを仕込んだ。この混合液を窒素雰囲気下、温度120〜140℃で30分間加温した。反応終了後、N−メチルピロリドンを減圧留去しながら濃縮し、99%アセトン水溶液(1900ml)の撹拌溶液へゆっくり加えた。ろ過により固体をろ別回収し、水(150ml)に溶解した後、アセトン(1500ml)で再沈殿した。更に、水(150ml)に再溶解した後、アセトン(500ml)とメタノールの混合液(500ml)で再沈殿を繰り返した。メタノール(2000ml)に溶解し、濃縮後、アセトン(1900ml)の撹拌溶液へゆっくり加えて、再沈殿で固体をろ別回収し、アセトンで洗浄した。ろ過した固体を減圧乾燥してスルホン化トリアリールアミンポリマー灰白色粉体 11.4gを得た。
【0086】
【化20】
実施例1
酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの合成(1)
窒素雰囲気下、30mlのナス型フラスコに、合成例1で得られた灰白色のスルホン化トリアリールアミンポリマー 35mg(0.1mmol、N−(スルホン化フェニル)N−ビフェニルアミンを繰り返し単位とした場合の分子量:334.8g/mol、ポリスチレン換算で数平均分子量3,700)を水 5gに室温で溶解させた後、過硫酸アンモニウム 46mg(0.2mmol;N−(スルホン化フェニル)N−ビフェニルアミンを繰り返し単位とした場合の推定分子数に対して2当量)を加え、室温で16時間攪拌して化学酸化処理した。その際、反応液の色はすぐに淡黄色から赤褐色に変化した。反応終了後、得られた反応液を紫外可視分光分析にて分析したところ、長波長シフトした吸収が観測され、一般式(1)のスルホン化トリアリールアミンポリマーの酸化が推測された(
図3参照)ことから、酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの生成を確認した。
【0087】
実施例2
酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの合成(2)
窒素雰囲気下、500mlのナス型フラスコに、合成例1で得られた灰白色のスルホン化トリアリールアミンポリマー 1.05g(3.0mmol、N−(スルホン化フェニル)N−ビフェニルアミンを繰り返し単位とした場合の分子量:334.48g/mol、ポリスチレン換算で数平均分子量3,700)を水 150gに室温で溶解させた後、過硫酸アンモニウム 1.38g(6.0mmol;N−(スルホン化フェニル)N−ビフェニルアミンを繰り返し単位とした場合の推定分子数に対して2当量)を加え、室温で16時間攪拌して化学酸化処理した。その際、反応液の色はすぐに淡黄色から赤褐色に変化し、実施例1と同様に紫外可視分光分析にて長波長シフトが見られた。反応終了後、水 150gを加えて希釈した後、陽イオン交換樹脂(Lewatit S100、事前に5%塩酸で酸型化処理したもの)14g、陰イオン交換樹脂(Lewatit MP62)14gを添加して、窒素雰囲気下、室温で16時間攪拌した。その後、窒素雰囲気下で減圧ろ過し、ろ液をロータリーエバポレーターにて濃縮し、更に60℃で2時間減圧乾燥して黒色固体を0.85g得た。得られた固体の
1H−NMR及び
13C−NMRにより、スルホン化トリアリールアミン骨格を保持しながらも、芳香族プロトンのピークが低磁場シフトしたことから、酸化型スルホン化アリールアミンポリマーの生成を確認した。また、赤外分光分析により、3100cm
−1付近にブロードに観測されるスルホン酸基−SO
3Hの末端−O−H伸縮振動による吸収が減少し、スルホン酸基が自己ドーパントとして使用され、自己ドープ率の増加が見られた。次に、熱分析装置(TG−DTA)で熱分解温度を測定した結果、280℃だった。さらに、耐熱性評価を行った結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。
【0088】
【表1】
実施例3
実施例2で得られた酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマー約50mgをメノウ乳鉢で微粉末化し、圧縮成型器を用いて直径13mmのペレットを作製した。このペレットの膜厚と表面抵抗(4探針法)を測定した結果から、導電率は1.4×10
−2S/cm(表面抵抗2.4×10
3Ω/□、膜厚307μm)となり、酸化処理により導電性が向上したことを確認した。
【0089】
この導電率は、導電性高分子の用途として一般的に知られている、帯電防止、固体電解コンデンサの固体電解質、タッチパネルの電極、有機EL材料、電子ペーパーに使用可能な範囲であった。
【0090】
比較例1
合成例1で得られたスルホン化トリアリールアミンポリマー(一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマー)を実施例3と同様にペレット化して導電性を測定した結果、導電率は5.6×10
−7S/cm(表面抵抗5.8×10
7Ω/□、膜厚310μm)であった。
【0091】
一般式(1)で表されるスルホン化トリアリールアミンポリマー自体の導電性は低いものであった。
【0092】
実施例4
酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのアンモニウム塩の合成
30mlの反応管に、室温下、実施例2で得られた黒色の酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマー 0.20g(スルホン酸基の推定含有量、0.6mmol)、メタノール 5.0g、28%アンモニア水 1ml(14.8mmol)を仕込んだ。この混合液を窒素雰囲気下、室温で撹拌しながら16時間熟成した。その後、減圧で溶媒を留去し、100℃で2時間真空乾燥して、黒色の粉体 0.2gを得た。得られた粉体は
1H−NMR、
13C−NMR及び赤外分光分析により、酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのアンモニウム塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で熱分解温度を測定した結果、270℃だった。さらに、耐熱性評価を行った結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。また、水に2重量%以上溶解し、良好な水溶性を示した。
【0093】
実施例5
酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのメチルアミン塩の合成
実施例4の28%アンモニア水を40%メチルアミン水溶液 2ml(18.0mmol)に変更した以外は、実施例4の方法に準拠して行い、赤褐色の粉体 0.17gを得た。得られた粉体は
1H−NMR、
13C−NMR及び赤外分光分析により、酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのメチルアミン塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。また、水に2重量%以上溶解し、良好な水溶性を示した。
【0094】
実施例6
酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのn−ブチルアミン塩の合成
30mlの反応管に、室温下、実施例2で得られた酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマー 0.20g(スルホン酸基の推定含有量、0.6mmol)、メタノール 5.0g、n−ブチルアミン 83mg(1.1mmol)を仕込んだ。この混合液を窒素雰囲気下、室温で撹拌しながら16時間熟成した。その後、減圧で溶媒を留去し、ヘキサン/エタノール=5/1(v/v)の混合液で洗浄・ろ過した後、100℃で2時間真空乾燥して、黒色の粉体 0.16gを得た。得られた粉体は
1H−NMR、
13C−NMR及び赤外分光分析により、酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのn−ブチルアミン塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。また、水に2重量%以上溶解し、良好な水溶性を示した。
【0095】
実施例7
酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのtert−ブチルアミン塩の合成
実施例6のn−ブチルアミンをtert−ブチルアミン 83mg(1.1mmol)に変更した以外は、実施例6の方法に準拠して行い、灰黒色の粉体 0.22gを得た。得られた粉体は
1H−NMR、
13C−NMR及び赤外分光分析により、酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのtert−ブチルアミン塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。また、水に2重量%以上溶解し、良好な水溶性を示した。
【0096】
実施例8
酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの2−アミノエタノール塩の合成
実施例6のn−ブチルアミンを2−アミノエタノール 70mg(1.1mmol)に変更した以外は、実施例6の方法に準拠して行い、黒色の粉体 0.17gを得た。得られた粉体は
1H−NMR、
13C−NMR及び赤外分光分析により、酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーの2−アミノエタノール塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。また、水に2重量%以上溶解し、良好な水溶性を示した。
【0097】
実施例9
酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのジメチルアミン塩の合成
実施例5の40%メチルアミン水溶液を50%ジメチルアミン水溶液 1mlに変更した以外は、実施例5に準拠して行い、黒色の粉体 0.19gを得た。得られた粉体は
1H−NMR、
13C−NMR及び赤外分光分析により、酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのジメチルアミン塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。また、水に2重量%以上溶解し、良好な水溶性を示した。
【0098】
実施例10
酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのトリメチルアミン塩の合成
実施例5の40%メチルアミン水溶液を30%トリメチルアミン水溶液 2mlに変更した以外は、実施例5に準拠して行い、黒色の粉体 0.19gを得た。得られた粉体は
1H−NMR、
13C−NMR及び赤外分光分析により、酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのトリメチルアミン塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。また、水に2重量%以上溶解し、良好な水溶性を示した。
【0099】
実施例11
酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのトリエチルアミン塩の合成
実施例6のn−ブチルアミンをトリエチルアミン 111mg(1.1mmol)に変更した以外は、実施例6の方法に準拠して行い、黒色の粉体 0.16gを得た。得られた粉体は
1H−NMR、
13C−NMR及び赤外分光分析により、酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのトリエチルアミン塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。また、水に2重量%以上溶解し、良好な水溶性を示した。
【0100】
実施例12
酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのn−ヘキシルアミン塩の合成
実施例6のn−ブチルアミンをn−ヘキシルアミン 115mg(1.1mmol)に変更した以外は、実施例6に準拠して行い、黒色の粉体 0.21gを得た。得られた粉体は
1H−NMR、
13C−NMR及び赤外分光分析により、酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのn−ヘキシルアミン塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は1%以下で良好な耐熱性を示した。
【0101】
実施例13
スルホン化トリアリールアミンポリマーのジn−ブチルアミン塩の合成
実施例6のn−ブチルアミンをジn−ブチルアミン 147mg(1.1mmol)に変更した以外は、実施例6に準拠して行い、黒色の粉体 0.17gを得た。得られた粉体は
1H−NMR、
13C−NMR及び赤外分光分析により、酸化型スルホン化トリアリールアミンポリマーのジn−ブチルアミン塩であることが確認された。次に、熱分析装置(TG−DTA)で耐熱性を評価した結果、重量減少率は5%であった。