特許第5790819号(P5790819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790819
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】共役高分子化合物
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/10 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   C08G61/10
【請求項の数】9
【全頁数】71
(21)【出願番号】特願2014-67946(P2014-67946)
(22)【出願日】2014年3月28日
(62)【分割の表示】特願2009-54593(P2009-54593)の分割
【原出願日】2009年3月9日
(65)【公開番号】特開2014-194017(P2014-194017A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2014年4月4日
(31)【優先権主張番号】特願2008-57570(P2008-57570)
(32)【優先日】2008年3月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】田中 正信
(72)【発明者】
【氏名】田中 健太
(72)【発明者】
【氏名】山内 掌吾
(72)【発明者】
【氏名】東村 秀之
【審査官】 井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−327058(JP,A)
【文献】 特許第5514458(JP,B2)
【文献】 特表2004−527628(JP,A)
【文献】 特開2007−162009(JP,A)
【文献】 特表2007−519800(JP,A)
【文献】 特開2008−056910(JP,A)
【文献】 特表2008−516040(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/040530(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/060437(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/093821(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/00−61/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(16’)で表される繰り返し単位を含む共役高分子化合物。
(16’)
(式中、R’は式(4)で表される基を表し、R**炭素数1〜10のアルキル基を表す。)

−(R4c2−(Q2n4−Y2(M2a2(Z2b2 (4)

(式中、R4は置換基を有していてもよい1,3−フェニレン基を表し、Q2は置換基を有していてもよい2価の有機基を表し、Y2は−CO2-を表し、M2は金属カチオンまたは置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンを表し、Z2はF-、Cl-、Br-、I-、OH-、RbSO3-、RbCOO-、ClO-、ClO2-、ClO3-、ClO4-、SCN-、CN-、NO3-、SO42-、HSO4-、PO43-、HPO42-、H2PO4-、BF4-またはPF6-を表し、c2は1を表し、n4は0以上の整数を表す。a2は1以上の整数を表し、b2は0以上の整数を表す。a2およびb2は、式(4)で表される基の電荷が0となるよう選択される。Rbは置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6〜50のアリール基を表す。Qが複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。Mが複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。Zが複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
2がセシウムカチオンである請求項1に記載の共役高分子化合物。
【請求項3】
式(17’)で表される繰り返し単位を含む共役高分子化合物。
(17’)
(式中、R’’は式(6)で表される基を含む置換基を表し、R***炭素数1〜10のアルキル基を表す。)

−R6{−(CH2n6−Y3m1 (6)

(式中、R6は(1+m1)価の芳香族基を表し、n6は0以上の整数を表し、m1は1以上の整数を表す。Y3は式(7)または式(13)で表される基を表す。Y3が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。n6が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。式(6)中、ヘテロ原子が4個以上含まれる。

−O−(R’O)a4−R” (7)
−C(=O)−O−(R’O)a3−R” (13)

(式(7)および式(13)中、R’は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表し、R’’は水素原子、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基、−COOH、−SO3H、−OH、−SH、−NRc2、−CNまたは−C(=O)NRc2を表し、a3は3〜20の整数を表し、a4は3〜20の整数を表す。Rcは置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6〜50のアリール基を表す。R’が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。))
【請求項4】
さらに、式(20)で表される繰り返し単位を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の共役高分子化合物。
(20)
(式中、Ar4は置換基を有していてもよい2価の芳香族基または置換基を有していてもよい2価の芳香族アミン残基を表す。Xは置換基を有していてもよいイミノ基、置換基を有していてもよいシリレン基、置換基を有していてもよいエテニレン基またはエチニレン基を表し、m2およびm3は、それぞれ独立に、0または1であり、m2とm3の少なくとも1つは1である。)
【請求項5】
共役高分子化合物中に含まれる式(16’)で表される繰り返し単位の数の合計が、該共役高分子化合物が有する全繰り返し単位の数の合計を100モルとした場合、15〜100モルである、請求項1、2またはに記載の共役高分子化合物。
【請求項6】
共役高分子化合物中に含まれる式(17’)で表される繰り返し単位の数の合計が、該共役高分子化合物が有する全繰り返し単位の数の合計を100モルとした場合、15〜100モルである請求項またはに記載の共役高分子化合物。
【請求項7】
共役高分子化合物の数平均分子量が、5×103以上1×108以下である、請求項1〜のいずれかに記載の共役高分子化合物。
【請求項8】
共役高分子化合物の最低非占有分子軌道(LUMO)の軌道エネルギーが、−5.0eV以上−2.0eV以下である、請求項1〜のいずれかに記載の共役高分子化合物。
【請求項9】
共役高分子化合物の最高占有分子軌道(HOMO)の軌道エネルギーが、−6.0eV以上−3.0eV以下である、請求項1〜のいずれかに記載の共役高分子化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は共役高分子化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
積層構造体を含む電界発光素子もしくは光電変換素子の特性を向上させるため、電界発光素子の発光層と電極との間もしくは光電変換素子の電荷分離層と電極との間に様々な層を挿入する検討がなされている。例えば、発光層と電極との間に、カチオンとヘテロ原子を2個とを有する置換基を含む非共役高分子化合物からなる層を有する電界発光素子が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−530676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記電界発光素子の輝度は未だ十分なものではなかった。
本発明の目的は、高輝度で発光する電界発光素子を与えうる、または、高効率の光電変素子を与えうる積層構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち本発明は第一に、第1の電極および第2の電極と、該第1の電極と該第2の電極との間に発光層もしくは電荷分離層を有し、該発光層もしくは電荷分離層と該第1の電極との間に共役高分子化合物を含む層を有し、該共役高分子化合物が式(1)で表される繰り返し単位、式(3)で表される繰り返し単位および式(5)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる1種以上の繰り返し単位を有する積層構造体を提供する。

(1)
(式中、Ar1は2価の芳香族基を表し、R1は式(2)で表される基を含む置換基を表し、該ArはR以外の置換基を有していてもよい。n1は1以上の整数を表す。R1が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)

−(R2)c1−(Q1n2−Y1 (M1)a1(Z1)b1 (2)
(式中、R2は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表し、Q1は置換基を有していてもよい2価の有機基を表し、Y1はカルボカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニルカチオンまたはスルホニルカチオンを表し、M1はF-、Cl-、Br-、I-、OH-、RaSO3-、RaCOO-、ClO-、ClO2-、ClO3-、ClO4-、SCN-、CN-、NO3-、SO42-、HSO4-、PO43-、HPO42-、H2PO4-、BF4-またはPF6-を表し、Z1は金属イオンまたは置換基を有していてもよいアンモニウムイオンを表し、c1は0または1を表し、n2は0以上の整数を表し、c1が0の際はn2は0を表す。a1は1以上の整数を表し、b1は0以上の整数を表す。a1およびb1は、式(2)で表される置換基の電荷が0となるよう選択される。Raは置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6〜50のアリール基を表す。Q1が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。M1が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。Z1が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)

(3)
(式中、Ar2は2価の芳香族基を表し、R3は式(4)で表される基を含む置換基を表し、該ArはR以外の置換基を有していてもよい。n3は1以上の整数を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)

−(R4)c2−(Q2n4−Y2(M2)a2(Z2)b2 (4)
(式中、R4は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表し、Q2は置換基を有していてもよい2価の有機基を表し、Y2は、−CO2-、−SO3-、−SO2-、または−PO32-を表し、M2は金属カチオンまたは置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンを表し、Z2はF-、Cl-、Br-、I-、OH-、RbSO3-、RbCOO-、ClO-、ClO2-、ClO3-、ClO4-、SCN-、CN-、NO3-、SO42-、HSO4-、PO43-、HPO42-、H2PO4-、BF4-またはPF6-を表し、c2は0または1を表し、n4は0以上の整数を表す。ただし、Y2がSO3-の場合、n4は0である。a2は1以上の整数を表し、b2は0以上の整数を表す。a2およびb2は、式(4)で表される置換基の電荷が0となるよう選択される。Rbは置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6〜50のアリール基を表す。Q2が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。M2が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。Z2が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。


(5)
(式中、Ar3は2価の芳香族基を表し、R5は式(6)で表される基を含む置換基を表し、該ArはR以外の置換基を有していてもよい。n5は1以上の整数を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)

−R6{−(CH2n6−Y3m1 (6)

(式中、R6は1価の芳香族基を表し、n6は0以上の整数を表し、m1は1以上の整数を表す。Y3は−CNまたは式(7)〜(14)で表される基を表す。Y3が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。n6が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。式(6)中、ヘテロ原子が4個以上含まれる。

−O−(R’O)a4−R” (7)
−S−(R’S)a3−R” (8)
−C(=O)−(R’−C(=O))a3−R” (9)
−C(=S)−(R’−C(=S))a3−R” (10)
−N(R’)−(N(R’))a3−R” (11)
−C(=O)O−(R’−C(=O)O)a3−R” (12)
−C(=O)−O−(R’O)a3−R” (13)
−NHC(=O)−(R’NHC(=O))a3−R” (14)
(式(7)〜(14)中、R’は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表し、R’’は水素原子、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基、−COOH、−SO3H、−OH、−SH、−NRc2、−CNまたは−C(=O)NRc2を表し、a3は0以上の整数を表し、a4は3〜20の整数を表す。Rcは置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6〜50のアリール基を表す。R’が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。))
【0006】
本発明は第二に、第1の電極が陰極である前記積層構造体を提供する。
【0007】
本発明は第三に、第1の電極および第2の電極と、該第1の電極と該第2の電極との間に発光層もしくは電荷分離層を有し、該発光層もしくは電荷分離層と該第1の電極との間に溶解度パラメータが9.3未満の溶媒に対して不溶な共役高分子化合物を含む層を有する積層構造体を提供する。
【0008】
本発明は第四に、前記積層構造体を含む電界発光素子を提供する。
【0009】
本発明は第五に、前記積層構造体を含む光電変換素子を提供する。
【0010】
本発明は第六に、式(15)で表される繰り返し単位を含む共役高分子化合物を提供する。

(15)
(式中、R7は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。Qは置換基を有していてもよいアルキレン基または置換基を有していてもよいオキシアルキレン基を表し、Y1はカルボカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニルカチオンまたはスルホニルカチオンを表し、M1はF-、Cl-、Br-、I-、OH-、RaSO3-、RaCOO-、ClO-、ClO2-、ClO3-、ClO4-、SCN-、CN-、NO3-、SO42-、HSO4-、PO43-、HPO42-、H2PO4-、BF4-またはPF6-を表し、Z1は金属イオンまたは置換基を有していてもよいアンモニウムイオンを表し、n2は0以上の整数を表す。a1は1以上の整数を表し、b1は0以上の整数を表す。a1およびb1は、式(15)で表される繰り返し単位の電荷が0となるよう選択される。Raは置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6〜50のアリール基を表す。複数個あるR7、Y1、M1、a1、b1、n2は同一でも異なっていてもよい。また、Z1が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。Qが複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)
【0011】
本発明は第七に、式(16)で表される繰り返し単位を含む共役高分子化合物を提供する。

(16)
(式中、R8は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。Qは置換基を有していてもよいアルキレン基または置換基を有していてもよいオキシアルキレン基を表し、Y2は、−CO2-、−SO3-、−SO2-または−PO3-を表し、M2は金属カチオンまたは置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンを表し、Z2はF-、Cl-、Br-、I-、OH-、RbSO3-、RbCOO-、ClO-、ClO2-、ClO3-、ClO4-、SCN-、CN-、NO3-、SO42-、HSO4-、PO43-、HPO42-、H2PO4-、BF4-またはPF6-を表し、n4は0以上の整数を表す。ただし、YがSO3−の場合、n4は0である。a2は1以上の整数を表し、b2は0以上の整数を表す。a2およびb2は、式(16)で表される繰り返し単位の電荷が0となるよう選択される。Rbは置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6〜50のアリール基を表す。複数個あるR8、Y2、M2、a2、b2、n4は同一でも異なっていてもよい。また、Z2が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。Qが複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)
【0012】
本発明は第八に、式(17)で表される繰り返し単位を含む共役高分子化合物を提供する。

(17)

(式中、R6は1価の芳香族基を表し、n6は0以上の整数を表し、m1は1以上の整数を表す。Y3は−CNまたは式(7)〜(14)で表される基を表す。複数個あるR6、m1、n6、Yは、同一でも異なっていてもよい。
−O−(R’O)a4−R” (7)
−S−(R’S)a3−R” (8)
−C(=O)−(R’−C(=O))a3−R” (9)
−C(=S)−(R’−C(=S))a3−R” (10)
−N(R’)−(N(R’))a3−R” (11)
−C(=O)O−(R’−C(=O)O)a3−R” (12)
−C(=O)−O−(R’O)a3−R” (13)
−NHC(=O)−(R’NHC(=O))a3−R” (14)
(式(7)〜(14)中、R’は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表し、R’’は水素原子、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基、−COOH、−SO3H、−OH、−SH、−NRc2、−CNまたは−C(=O)NRc2を表し、a3は0以上の整数を表し、a4は3〜20の整数を表す。Rcは置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6〜50のアリール基を表す。
R’が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0013】
本発明の積層構造体を用いれば、輝度が高い電界発光素子または高効率の光電変換素子を製造することができるので、本発明は工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明に用いられる共役高分子化合物は、式(1)で表される繰り返し単位、式(3)で表される繰り返し単位および式(5)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる1種以上の繰り返し単位を有している。該共役高分子化合物としては、式(1)で表される繰り返し単位のみを有する共役高分子化合物、式(3)で表される繰り返し単位のみを有する共役高分子化合物、式(5)で表される繰り返し単位のみを有する共役高分子化合物、式(1)で表される繰り返し単位および式(3)で表される繰り返し単位を有する共役高分子化合物、式(1)で表される繰り返し単位および式(5)で表される繰り返し単位を有する共役高分子化合物、式(3)で表される繰り返し単位および式(5)で表される繰り返し単位を有する共役高分子化合物、式(1)で表される繰り返し単位、式(3)で表される繰り返し単位および式(5)で表される繰り返し単位を有する共役高分子化合物等が挙げられる。
【0016】
前記共役高分子化合物は、式(1)で表される繰り返し単位を2種類以上含んでいてもよく、式(3)で表される繰り返し単位を2種類以上含んでいてもよく、式(5)で表される繰り返し単位を2種類以上含んでいてもよい。
【0017】
本発明に用いられる共役高分子化合物が有していてもよい式(1)で表される繰り返し単位において、Ar1は2価の芳香族基を表し、R1は式(2)で表される基を含む置換基を表し、該ArはR以外の置換基を有していてもよい。n1は1以上の整数を表す。
式(2)で表される基は、Arに直接結合していてもよく、置換基を有していてもよいメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ノニレン基、ドデシレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロノニレン基、シクロドデシレン基、ノルボニレン基、アダマンチレン基等の炭素原子数1〜50程度の2価のアルキレン基、置換基を有していてもよいオキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシペンチレン基、オキシヘキシレン基、オキシノニレン基、オキシドデシレン、シクロプロピレンオキシ基、シクロブチレンオキシ基、シクロペンチレンオキシ基、シクロへキシレンオキシ基、シクロノニレンオキシ基、シクロドデシレンオキシ基、ノルボニレンオキシ基、アダマンチレンオキシ基等の炭素原子数1〜50程度のオキシアルキレン基、置換基を有していてもよいイミノ基、置換基を有していてもよいシリレン基、置換基を有していてもよいエテニレン基またはエチニレン基、置換基を有していてもよいメタントリイル基、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を介してArに結合していてもよい。1つの態様として、R1は式(2)で表される基である。
【0018】
式(1)中のAr1で表される2価の芳香族基としては、2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環基があげられ、炭素原子、水素原子、窒素原子および酸素原子からなる群から選ばれる1つ以上の原子からなる2価の芳香族基が好ましい。該2価の芳香族基としては、ベンゼン環、ピリジン環、1,2−ジアジン環、1,3−ジアジン環、1,4−ジアジン環、1,3,5−トリアジン環、フラン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾ-ル環、アザジザゾ-ル環等の単環式芳香環から水素原子を2個除いた2価の基、該単環式芳香環から選んだ二つ以上の環が縮合した縮合多環式芳香環から水素原子を2個除いた2価の基、二つ以上の芳香環を、単結合、エテニレン基またはエチニレン基で連結した多環から水素原子を2個除いた2価の基、2つの芳香環をメチレン基、エチレン基、カルボニル基等の2価の基で橋かけした構造を有する有橋多環式芳香環から水素原子を2個除いた2価の基等が挙げられる。
【0019】
単環式芳香環としては、例えば、以下の環が挙げられる。
【0020】
縮合多環式芳香環としては、例えば、以下の環が挙げられる。
【0021】
二つ以上の芳香環を、単結合、エテニレン基またはエチニレン基で連結した多環としては、例えば、以下の環が挙げられる。
【0022】
有橋多環式芳香環としては、例えば、以下の環が挙げられる。
【0023】
前記2価の芳香族基としては、原料モノマーの合成の容易さの観点から、式1〜15、式27〜30、式38〜40又は式42で表される環から水素原子を2個除いた基が好ましく、式1〜6、式8、式14、式27、式28、式38又は式42で表される環から水素原子を2個除いた基がより好ましく、式1、式38又は式42で表される環から水素原子を2個除いた基がさらに好ましい。
【0024】
前記2価の芳香族基は、R1で表される置換基を1個以上有し、R1で表される置換基以外の置換基を有していてもよい。当該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、シアノ基またはニトロ基等が挙げられ、前記置換基が複数個存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0025】
ここで、アルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキル基でもよい。炭素数は通常1〜20程度であり、1〜10が好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基等が挙げられる。前記アルキル基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。フッ素原子で置換されたアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基等が挙げられる。
【0026】
アルコキシ基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、シクロアルキルオキシ基であってもよく、置換基を有していてもよい。炭素数は通常1〜20程度であり、1〜10が好ましい。
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ラウリルオキシ基等が挙げられる。前記アルコキシ基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。フッ素原子で置換されたアルコキシ基としては、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基等が挙げられる。また、該アルコキシ基には、メトキシメチルオキシ基、2−メトキシエチルオキシ基も含まれる。
【0027】
アルキルチオ基としては、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、シクロアルキルチオ基であってもよく、置換基を有していてもよい。炭素数は通常1〜20程度であり、1〜10が好ましい。アルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、ラウリルチオ基等が挙げられる。前記アルキルチオ基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。フッ素原子で置換されたアルキルチオ基としては、トリフルオロメチルチオ基等が挙げられる。
【0028】
アリール基は、芳香族炭化水素から水素原子1個を除いた原子団であり、ベンゼン環を持つもの、縮合環を持つもの、独立したベンゼン環または縮合環2個以上が直接或いはビニレン等の基を介して結合したものも含まれる。アリール基は、炭素数が通常6〜60程度であり、7〜48が好ましい。アリール基の具体例としては、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基(C1〜C12は、炭素数1〜12であることを示す。以下も同様である。)、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基等が挙げられる。前記アリール基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。フッ素原子で置換されたアリール基としては、ペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。アリール基の中では、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基が好ましい。
【0029】
前記アリール基中のC1〜C12アルコキシフェニル基としては、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロピルオキシフェニル基、イソプロピルオキシフェニル基、ブトキシフェニル基、イソブトキシフェニル基、s−ブトキシフェニル基、t−ブトキシフェニル基、ペンチルオキシフェニル基、ヘキシルオキシフェニル基、シクロヘキシルオキシフェニル基、ヘプチルオキシフェニル基、オクチルオキシフェニル基、2−エチルヘキシルオキシフェニル基、ノニルオキシフェニル基、デシルオキシフェニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェニル基、ラウリルオキシフェニル基等が挙げられる。
【0030】
前記アリール基中のC1〜C12アルキルフェニル基としては、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、プロピルフェニル基、メシチル基、メチルエチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、イソブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、イソアミルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ドデシルフェニル基等が挙げられる。
【0031】
アリールオキシ基としては、炭素数が通常6〜60程度であり、7〜48が好ましい。
アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基の中では、C1〜C12アルコキシフェノキシ基及びC1〜C12アルキルフェノキシ基が好ましい。
【0032】
前記アリールオキシ基中のC1〜C12アルコキシフェノキシ基としては、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基、プロピルオキシフェノキシ基、イソプロピルオキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、イソブトキシフェノキシ基、s−ブトキシフェノキシ基、t−ブトキシフェノキシ基、ペンチルオキシフェノキシ基、ヘキシルオキシフェノキシ基、シクロヘキシルオキシフェノキシ基、ヘプチルオキシフェノキシ基、オクチルオキシフェノキシ基、2−エチルヘキシルオキシフェノキシ基、ノニルオキシフェノキシ基、デシルオキシフェノキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェノキシ基、ラウリルオキシフェノキシ基等が挙げられる。
【0033】
前記アリールオキシ基中のC1〜C12アルキルフェノキシ基としては、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、プロピルフェノキシ基、1,3,5−トリメチルフェノキシ基、メチルエチルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、ブチルフェノキシ基、イソブチルフェノキシ基、s−ブチルフェノキシ基、t−ブチルフェノキシ基、ペンチルフェノキシ基、イソアミルフェノキシ基、ヘキシルフェノキシ基、ヘプチルフェノキシ基、オクチルフェノキシ基、ノニルフェノキシ基、デシルフェノキシ基、ドデシルフェノキシ基等が挙げられる。
【0034】
アリールチオ基は、前述のアリール基に硫黄元素が結合したものであり、前記アリール基の芳香環上に置換基を有するものであってもよい。アリールチオ基は、炭素数が通常6〜60程度であり、6〜30が好ましい。アリールチオ基の具体例としては、フェニルチオ基、C1〜C12アルコキシフェニルチオ基、C1〜C12アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基等が挙げられる。
【0035】
アリールアルキル基は、前述のアリール基に前述のアルキル基が結合したものであり、置換基を有するものであってもよい。アリールアルキル基は、炭素数が通常7〜60程度であり、7〜30が好ましい。アリールアルキル基の具体例としては、フェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキル基等が挙げられる。
【0036】
アリールアルコキシ基は、前述のアリール基に前述のアルコキシ基が結合したものであり、置換基を有するものであってもよい。アリールアルコキシ基は、炭素数が通常7〜60程度であり、7〜30が好ましい。アリールアルコキシ基の具体例としては、フェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基、2−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基等が挙げられる。
【0037】
アリールアルキルチオ基は、前述のアリール基に前述のアルキルチオ基が結合したものであり、置換基を有するものであってもよい。アリールアルキルチオ基は、炭素数が通常7〜60であり、7〜30が好ましい。アリールアルキルチオ基の具体例としては、フェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基等が挙げられる。
【0038】
アリールアルケニル基は、前述のアリール基にアルケニル基が結合したものであればよい。アリールアルケニル基は、炭素数が通常8〜60程度であり、8〜30が好ましい。
アリールアルケニル基の具体例としては、フェニル−C2〜C12アルケニル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルケニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルケニル基、1−ナフチル−C2〜C12アルケニル基、2−ナフチル−C2〜C12アルケニル基等が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルケニル基、C2〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルケニル基が好ましい。
【0039】
アリールアルキニル基は、前述のアリール基にアルキニル基が結合したものであればよい。アリールアルキニル基は、炭素数が通常8〜60程度であり、8〜30が好ましい。
アリールアルキニル基の具体例としては、フェニル−C2〜C12アルキニル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルキニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルキニル基、1−ナフチル−C2〜C12アルキニル基、2−ナフチル−C2〜C12アルキニル基等が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルキニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルキニル基が好ましい。
【0040】
置換アミノ基としては、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基および1価の複素環基からなる群から選択される1または2個の基によって置換されたアミノ基が好ましい。該アルキル基、アリール基、アリールアルキル基または1価の複素環基は置換基を有していてもよい。置換アミノ基の炭素数は、該置換基の炭素数を含めないで通常1〜60程度であり、2〜48が好ましい。置換アミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、s−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ラウリルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、ジトリフルオロメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ピラジルアミノ基、トリアジルアミノ基、フェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基等が挙げられる。
【0041】
置換シリル基としては、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基および1価の複素環基からなる群から選択される1〜3個の基によって置換されたシリル基が挙げられる。置換シリル基は、炭素数が通常1〜60程度であり、3〜48が好ましい。なお、置換シリル基中の該アルキル基、アリール基、アリールアルキル基または1価の複素環基は置換基を有していてもよい。置換シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリ−イソプロピルシリル基、ジメチル−イソプロピルシリル基、ジエチル−イソプロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ラウリルジメチルシリル基、フェニル−C1〜C12アルキルシリル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルシリル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルシリル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルシリル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルシリル基、フェニル−C1〜C12アルキルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基等が挙げられる。
【0042】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
【0043】
アシル基は、炭素数が通常2〜20程度であり、2〜18が好ましい。アシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロベンゾイル基等が挙げられる。
【0044】
アシルオキシ基は、炭素数が通常2〜20程度であり、2〜18が好ましい。アシルオキシ基の具体例としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ペンタフルオロベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0045】
イミン残基は、イミン化合物(分子内に式:−N=C−で表される基を持つ有機化合物のことをいい、例えば、アルジミン、ケチミン及びこれらのN上の水素原子がアルキル基等で置換された化合物が挙げられる。)から水素原子1個を除いた残基であり、炭素数が通常2〜20程度であり、2〜18が好ましい。イミン残基としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0046】
アミド基は、炭素数が通常2〜20程度であり、2〜18が好ましい。アミド基の具体例としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、ジペンタフルオロベンズアミド基等が挙げられる。
【0047】
酸イミド基としては、酸イミドから窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる残基であり、炭素数が通常4〜20程度であり、4〜18が好ましい。酸イミド基としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0048】
1価の複素環基とは、複素環化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団をいう。1価の複素環基は、炭素数が通常4〜60程度であり、4〜20が好ましい。なお、1価の複素環基の炭素数には、置換基の炭素数は含まないものとする。また、前記複素環化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素等のヘテロ原子を環内に含むものをいう。このような1価の複素環基としては、例えば、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基等が挙げられ、中でも、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基及びC1〜C12アルキルピリジル基がより好ましい。
【0049】
置換オキシカルボニル基とは、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基または1価の複素環基で置換されたオキシカルボニル基、すなわち、−C(=O)OR (Rは、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基または1価の複素環基)で表される基である。置換オキシカルボニル基は、炭素数が通常2〜60程度であり、2〜48が好ましい。前記アルキル基、アリール基、アリールアルキル基または1価の複素環基は、置換基を有していてもよい。なお、上記炭素数には、前記置換基の炭素数は含まないものとする。置換オキシカルボニル基の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、s−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシロキシカルボニル基、シクロヘキシロキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシロキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシロキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0050】
Ar1がR1以外の置換基を有する場合、該置換基の中では、共役高分子化合物の原料となるモノマーの合成の容易さの観点から、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、カルボキシル基または置換オキシカルボニル基であることが好ましい。
【0051】
式(1)中、n1は1以上の整数を表す。好ましくは1から4であり、より好ましくは1から3である。
【0052】
本発明において共役とは、多重結合が一つの単結合または窒素原子をはさんで連なり、相互作用しあう状態を表す。
【0053】
1つの態様として、R1は、式(2)で表される。
−(R2)c1−(Qn2−Y1(M1)a1(Z1)b1 (2)
(式中、R2は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表し、Qは置換基を有していてもよい2価の有機基を表し、Y1はカルボカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニルカチオンまたはスルホニルカチオンを表し、M1はF-、Cl-、Br-、I-、OH-、RaSO3-、RaCOO-、ClO-、ClO2-、ClO3-、ClO4-、SCN-、CN-、NO3-、SO42-、HSO4-、PO43-、HPO42-、H2PO4-、BF4-またはPF6-を表し、Z1は金属イオンまたは置換基を有していてもよいアンモニウムイオンを表し、c1は0または1を表し、n2は0以上の整数を表す。ただし、c1が0の場合、n2は0である。a1は1以上の整数を表し、b1は0以上の整数を表す。a1およびb1は、式(2)で表される置換基の電荷が0となるよう選択される。Raは置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6〜50のアリール基を表す。)
【0054】
式(2)中、R2で表される2価の芳香族基としては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,6−アントラセニレン基、9,10−アントラセニレン基、ビフェニル−4,4'−ジイル基等が挙げられ、原料モノマーの合成の容易さの観点からは、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基が好ましい。
【0055】
前記2価の芳香族基が有していてもよい置換基としては、前述のAr1が有していてもよいR1以外の置換基と同様の置換基が挙げられ、前記共役高分子化合物を熱的に安定化する観点からは、置換基を有していることが好ましい。置換基が複数個存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0056】
式(2)中、Q1で表される2価の有機基としては、置換基を有していてもよいメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ノニレン基、ドデシレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロノニレン基、シクロドデシレン基、ノルボニレン基、アダマンチレン基等の炭素原子数1〜50程度の2価のアルキレン基、置換基を有していてもよいオキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシペンチレン基、オキシヘキシレン基、オキシノニレン基、オキシドデシレン、シクロプロピレンオキシ基、シクロブチレンオキシ基、シクロペンチレンオキシ基、シクロへキシレンオキシ基、シクロノニレンオキシ基、シクロドデシレンオキシ基、ノルボニレンオキシ基、アダマンチレンオキシ基等の炭素原子数1〜50程度のオキシアルキレン基、置換基を有していてもよいイミノ基、置換基を有していてもよいシリレン基、置換基を有していてもよいエテニレン基またはエチニレン基が挙げられ、原料のモノマーの合成の容易さの観点からは、アルキレン基、オキシアルキレン基が好ましい。
【0057】
式(2)中、Y1はカルボカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニルカチオンまたはスルホニルカチオンを表す。
カルボカチオンとしては、例えば、
(ここにRは、同一又は相異なり、アルキル基、アリール基を表す。)
で表される基があげられる。
アンモニウムカチオンとしては、例えば、
(ここにRは、同一又は相異なり、アルキル基、アリール基を表す。)
で表される基があげられる。
ホスホニルカチオンとしては、例えば、
(ここにRは、同一又は相異なり、アルキル基、アリール基を表す。)
で表される基があげられる。
スルホニルカチオンとしては、例えば、
(ここにRは、同一又は相異なり、アルキル基、アリール基を表す。)
で表される基があげられる。
式(2)中、Y1は、原料モノマーの合成の容易さおよび原料モノマーおよび共役高分子化合物の空気、湿気または熱に対する安定性の観点からは、アンモニウムカチオンが好ましい。
【0058】
式(2)中、Z1は金属イオンまたは置換基を有していてもよいアンモニウムイオンを表す。金属イオンとしては、1価、2価または3価のイオンが好ましく、Li、Na、K、Cs、Be、Mg、Ca、Ba、Ag、Al、Bi、Cu、Fe、Ga、Mn、Pb、Sn、Ti、V、W、Y、Yb、Zn、Zrのイオンが挙げられる。また、アンモニウムイオンが有していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素原子数1〜10程度のアルキル基が挙げられる。
【0059】
式(2)中、c1は共役高分子化合物の安定性の観点からは、1が好ましい。
【0060】
式(2)中、n2は0以上の整数を表す。好ましくは0から6であり、より好ましくは0である。
【0061】
式(2)中、a1は1以上の整数を表す。好ましくは1から3であり、より好ましくは1から2である。b1は、0以上の整数を表す。好ましくは0から2であり、より好ましくは0から1である。
【0062】
a1およびb1は、式(2)で表される置換基の電荷が0となるよう選択される。例えば、MがF-、Cl-、Br-、I-、OH-、RaSO3-、RaCOO-、ClO-、ClO2-、ClO3-、ClO4-、SCN-、CN-、NO3-、HSO4-、H2PO4-、BF4-またはPF6-である場合、Zが1価の金属イオンまたは置換基を有していてもよいアンモニウムイオンであれば、a1=b1+1であり、Z1が2価の金属イオンであれば、a1=2×b1+1であり、Zが3価の金属イオンであれば、a1=3×b1+1である。MがSO42-、HPO42-である場合、Zが1価の金属イオンまたは置換基を有していてもよいアンモニウムイオンであれば、b1=2×a1−1であり、Zが2価の金属イオンであれば、2×a1=2×b1+1の関係を満たし、Zが3価の金属イオンであれば、2×a1=3×b1+1の関係を満たす。
【0063】
aは置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6〜50のアリール基を表すが、これらの基が有していてもよい置換基としては、前述のAr1が有していてもよいR1以外の置換基と同様の置換基が挙げられる。
置換基が複数個存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。Raの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基等の炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基等の炭素数6〜30のアリール基が挙げられる。
【0064】
式(1)で示される繰り返し単位の中では、Arが式38で表される環から水素原子を2個除いた基である繰り返し単位が好ましく、下式

(式中、Rは式(2)で表される基を含む置換基を表し、R*は、R、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。)
で表される繰り返し単位が、より好ましい。
【0065】
式(1)で表される繰り返し単位としては、電子輸送性の観点からは、式(15)で表される繰り返し単位が好ましい。

(15)
(式中、Rは置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表し、Qは置換基を有していてもよいアルキレン基または置換基を有していてもよいオキシアルキレン基を表し、n2、Y、M、Z、a1およびb1は前述と同じ意味を表す。複数個あるn2、R、Y、M、a1およびb1は同一でも異なっていてもよい。また、Qが複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。Zが複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0066】
式(15)中、Rで表される2価の芳香族基としては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,6−アントラセニレン基、9,10−アントラセニレン基、ビフェニル−4,4'−ジイル基等が挙げられ、原料モノマーの合成の容易さの観点からは、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基が好ましい。
【0067】
で表される2価の芳香族基が有していてもよい置換基としては、前述のArが有していてもよいR以外の置換基と同様の置換基が挙げられ、前記共役高分子化合物を熱的に安定化する観点からは、置換基を有していることが好ましい。置換基が複数個存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0068】
式(15)で表される繰り返し単位としては、共役高分子化合物の吸湿性の観点からは、式(18)で表される繰り返し単位が好ましい。

(18)
(式中、R、n2、Y、M、Z1、a1およびb1は前述と同じ意味を表す。)
【0069】
式(18)で表される繰り返し単位の具体例としては、以下の繰り返し単位が挙げられる。
【0070】
本発明に用いられる共役高分子化合物は、式(3)で表される繰り返し単位を有していてもよい。Arは2価の芳香族基を表し、R3は式(4)で表される基を含む置換基を表し、該ArはR以外の置換基を有していてもよい。n3は1以上の整数を表す。式(4)で表される基は、Arに直接結合していてもよく、置換基を有していてもよいメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ノニレン基、ドデシレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロノニレン基、シクロドデシレン基、ノルボニレン基、アダマンチレン基等の炭素原子数1〜50程度の2価のアルキレン基、置換基を有していてもよいオキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシペンチレン基、オキシヘキシレン基、オキシノニレン基、オキシドデシレン、シクロプロピレンオキシ基、シクロブチレンオキシ基、シクロペンチレンオキシ基、シクロへキシレンオキシ基、シクロノニレンオキシ基、シクロドデシレンオキシ基、ノルボニレンオキシ基、アダマンチレンオキシ基等の炭素原子数1〜50程度のオキシアルキレン基、置換基を有していてもよいイミノ基、置換基を有していてもよいシリレン基、置換基を有していてもよいエテニレン基またはエチニレン基、置換基を有していてもよいメタントリイル基、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を介してArに結合していてもよい。1つの態様として、Rは式(4)で表される基である。
【0071】
Arで表される2価の芳香族基としては、原料モノマーの合成の容易さの観点から、式1〜15、式27〜30、式38〜40又は式42で表される環から水素原子を2個除いた基が好ましく、式1〜6、式8、式14、式27、式28、式38又は式42で表される環から水素原子を2個除いた基がより好ましく、式1、式38又は式42で表される環から水素原子を2個除いた基がさらに好ましい。
【0072】
式(4)中、Rは置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表し、Qは置換基を有していてもよい2価の有機基を表し、Yは、−CO2-、−SO3-、−SO2-または−PO3-を表し、共役高分子化合物の酸性度の観点からは−CO2-、−SO2-または−PO3-が好ましく、−CO2-がより好ましい。M2は金属カチオンまたは置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンを表し、Z2はF-、Cl-、Br-、I-、OH-、RSO3-、RCOO-、ClO-、ClO2-、ClO3-、ClO4-、SCN-、CN-、NO3-、SO42-、HSO4-、PO43-、HPO42-、H2PO4-、BF4-またはPF6-を表し、c2は0または1を表し、n4は0以上の整数を表す。ただし、YがSO3−の場合、n4は0である。a2は1以上の整数を表し、b2は0以上の整数を表す。a2およびb2は、式(4)で表される置換基の電荷が0となるよう選択される。Rbは置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6〜50のアリール基を表す。Qが複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。Mが複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。Zが複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0073】
式(4)中、Rで表される置換基を有していてもよい2価の芳香族基としては、例えば、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ビフェニル−4,4'−ジイル基等の炭素原子数6〜50程度のアリーレン基が挙げられる。
【0074】
前記2価の芳香族基が有していてもよい置換基としては、前述のAr1が有していてもよいR1以外の置換基と同様の置換基が挙げられ、前記共役高分子化合物を熱的に安定化する観点からは、置換基を有していることが好ましい。置換基が複数個存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0075】
式(4)中、Qで表される2価の有機基としては、前述のQで表される2価の有機基と同様の基が挙げられ、原料のモノマーの合成の容易さの観点からは、アルキレン基、オキシアルキレン基が好ましい。
【0076】
前記2価の有機基が有していてもよい置換基としては、前述のArが有していてもよいR以外の置換基と同様の置換基が挙げられる。置換基が複数個存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0077】
式(4)中、Mは金属カチオンまたは置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンを表す。金属カチオンとしては、1価、2価または3価のイオンが好ましく、Li、Na、K、Cs、Be、Mg、Ca、Ba、Ag、Al、Bi、Cu、Fe、Ga、Mn、Pb、Sn、Ti、V、W、Y、Yb、Zn、Zr等のイオンが挙げられる。また、アンモニウムイオンが有していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等の炭素原子数1〜10程度のアルキル基が挙げられる。
【0078】
式(4)中、n4は0以上の整数を表す。原料であるモノマー合成の観点から、好ましくは0から8であり、より好ましくは0である。ただし、YがSO3−の場合、n4は0である。
【0079】
式(4)中、a2は、1以上の整数を表す。好ましくは1から5であり、より好ましくは1から2である。b2は、0以上の整数を表す。好ましくは0から4であり、より好ましくは0から2である。
【0080】
a2およびb2は、式(4)で表される置換基の電荷が0となるよう選択される。例えば、Yが−CO2-、−SO3-、−SO2-または−PO3-であり、Mが1価の金属カチオンまたは置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンであり、ZがF-、Cl-、Br-、I-、OH-、RSO3-、RCOO-、ClO-、ClO2-、ClO3-、ClO4-、SCN-、CN-、NO3-、HSO4-、H2PO4-、BF4-またはPF6-である場合は、a2=b2+1である。Yが−CO2-、−SO3-、−SO2-、または−PO3-であり、Mが2価の金属カチオンであり、ZがF-、Cl-、Br-、I-、OH-、RSO3-、RCOO-、ClO-、ClO2-、ClO3-、ClO4-、SCN-、CN-、NO3-、HSO4-、H2PO4-、BF4-またはPF6-である場合は、b2=2×a2−1である。Yが−CO2-、−SO3-、−SO2-、または−PO3-であり、Mが3価の金属カチオンであり、ZがF-、Cl-、Br-、I-、OH-、RSO3-、RCOO-、ClO-、ClO2-、ClO3-、ClO4-、SCN-、CN-、NO3-、HSO4-、H2PO4-、BF4-、またはPF6-である場合は、b2=3×a2−1である。Yが−CO2-、−SO3-、−SO2-または−PO3-であり、Mが1価の金属カチオンまたは置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンであり、ZがSO42−またはHPO42−である場合には、a2=2×b2+1である。
【0081】
は置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜50のアリール基を表すが、これらの基が有していてもよい置換基としては、前述のArが有していてもよいR1以外の置換基と同様の置換基が挙げられる。置換基が複数個存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基等の炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基等の炭素数6〜30のアリール基が挙げられる。
【0082】
式(3)で示される繰り返し単位の中では、Arが式38で表される環から水素原子を2個除いた基である繰り返し単位が好ましく、下式

(式中、Ry'は式(4)で表される基を含む置換基を表し、R**は、Ry'、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。)
で表される繰り返し単位が、より好ましい。
【0083】
式(3)で表される繰り返し単位としては、電子輸送性の観点からは、式(16)で表される繰り返し単位が好ましい。


(16)
(式中、Rは置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表し、Qは置換基を有していてもよいアルキレン基または置換基を有していてもよいオキシアルキレン基を表し、n4、Y、M、Z、a2およびb2は前述と同じ意味を表す。複数個あるn4、R、Y、M、a2およびb2は同一でも異なっていてもよい。また、Qが複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。Zが複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)
【0084】
式(16)中、Rで表される2価の芳香族基としては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,6−アントラセニレン基、9,10−アントラセニレン基、ビフェニル−4,4'−ジイル基等が挙げられる。
【0085】
における2価の芳香族基としては、原料となるモノマーの合成の容易さの観点からは、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基が好ましい。
【0086】
で表される2価の芳香族基が有していてもよい置換基としては、前述のArが有していてもよいR以外の置換基と同様の置換基が挙げられ、前記共役高分子化合物を熱的に安定化する観点からは、置換基を有していることが好ましい。置換基が複数個存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。置換基の種類は、前記共役高分子化合物の溶解性の観点から、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基が好ましい。
【0087】
は、前記共役高分子化合物の合成の観点からは、Liカチオン、Naカチオン、Kカチオン、Csカチオンまたはテトラメチルアンモニウムカチオンが好ましい。
【0088】
式(15)で表される繰り返し単位としては、共役高分子化合物の耐水性の観点からは、式(19)で表される繰り返し単位が好ましい。

(19)
(式中、R、n4、Y、M、Z、a2およびb2は前述と同じ意味を表す。)
【0089】
式(19)で表される繰り返し単位の具体例としては、以下の繰り返し単位が挙げられる。

(式中、MはLi、Na、K、CsまたはNMe4を表す。)
【0090】
本発明に用いられる共役高分子化合物は、式(5)で表される繰り返し単位を有していてもよい。Arは2価の芳香族基を表し、R5は式(6)で表される基を含む置換基を表し、該ArはR以外の置換基を有していてもよい。n5は1以上の整数を表す。R中、ヘテロ原子が4個以上含まれる。式(6)で表される基は、Arに直接結合していてもよく、置換基を有していてもよいメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ノニレン基、ドデシレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロノニレン基、シクロドデシレン基、ノルボニレン基、アダマンチレン基等の炭素原子数1〜50程度の2価のアルキレン基、置換基を有していてもよいオキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシペンチレン基、オキシヘキシレン基、オキシノニレン基、オキシドデシレン、シクロプロピレンオキシ基、シクロブチレンオキシ基、シクロペンチレンオキシ基、シクロへキシレンオキシ基、シクロノニレンオキシ基、シクロドデシレンオキシ基、ノルボニレンオキシ基、アダマンチレンオキシ基等の炭素原子数1〜50程度のオキシアルキレン基、置換基を有していてもよいイミノ基、置換基を有していてもよいシリレン基、置換基を有していてもよいエテニレン基またはエチニレン基、置換基を有していてもよいメタントリイル基、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を介してArに結合していてもよい。1つの態様として、Rは式(6)で表される基である。
【0091】
に含まれるヘテロ原子としては、酸素、硫黄、セレン、テルル、窒素、リン、アンチモン、砒素、ホウ素等が挙げられる。Rは、同じ種類のヘテロ原子を2個以上有していてもよく、2種類以上のヘテロ原子を有していてもよい。原料となるモノマーの合成の容易さの観点からは、ヘテロ原子が酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素であることが好ましい。ヘテロ原子の数は、共役高分子化合物の溶解性の観点からは、4〜30が好ましく、6〜20がより好ましい。
【0092】
n5は1以上の整数を表す。共役高分子化合物の溶解性の観点からは、好ましくは2から4であり、より好ましくは2から3である。
【0093】
ArはR以外の置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。
Arで表される2価の芳香族基としては、原料モノマーの合成の容易さの観点から、式1〜15、式27〜30、式38〜40又は式42で表される環から水素原子を2個除いた基が好ましく、式1〜6、式8、式14、式27、式28、式38又は式42で表される環から水素原子を2個除いた基がより好ましく、式1、式38又は式42で表される環から水素原子を2個除いた基がさらに好ましい。
【0094】
Arで表される2価の芳香族基が有していてもよいR以外の置換基としては、前述のAr1が有していてもよいR1以外の置換基と同様の置換基が挙げられる。置換基が複数個存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0095】
は、式(6)で表される置換基である。
−R6{−(CH2n6−Y3m1 (6)

(式中、R6は1価の芳香族基を表し、n6は0以上の整数を表し、m1は1以上の整数を表す。Yは−CNまたは式(7)〜(14)で表される基を表す。Yが複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。n6が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。式(6)中、ヘテロ原子が4個以上含まれる。

−O−(R’O)a4−R” (7)
−S−(R’S)a3−R” (8)
−C(=O)−(R’−C(=O))a3−R” (9)
−C(=S)−(R’−C(=S))a3−R” (10)
−N(R’)−(N(R’))a3−R” (11)
−C(=O)O−(R’−C(=O)O)a3−R” (12)
−C(=O)−O−(R’O)a3−R” (13)
−NHC(=O)−(R’NHC(=O))a3−R” (14)
(式(7)〜(14)中、R’は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表し、R’’は水素原子、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基、−COOH、−SO3H、−OH、−SH、−NRc2、−CNまたは−C(=O)NRc2を表し、a3は0以上の整数を表し、a4は3〜20の整数を表す。Rcは置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6〜50のアリール基を表す。
R’が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)1つの態様として、R6は式(6)で表される基である。
【0096】
式(6)中、n6は0以上の整数を表す。好ましくは0から20であり、より好ましくは0から8である。
【0097】
式(6)中、m1は、共役高分子化合物の溶解性の観点からは、1から4であることが好ましく、1から3であることがより好ましい。
【0098】
式(6)において、R6は{−(CH2n6−Y3}で表される置換基をm1個有する1価の芳香族基を表す。R6で表される1価の芳香族基としては、単環式芳香環から水素原子を1個除いた基、縮合多環式芳香環から水素原子を1個除いた価の基、二つ以上の芳香環を、単結合、エテニレン基またはエチニレン基で連結した多環から水素原子を1個除いた基、有橋多環式芳香環から水素原子を1個除いた基等が挙げられる。単環式芳香環、縮合多環式芳香環、エテニレン基またはエチニレン基で連結した多環および有橋多環式芳香環の具体例としては、前述のAr1の説明に用いた単環式芳香環、縮合多環式芳香環、エテニレン基またはエチニレン基で連結した多環および有橋多環式芳香環の具体例と同様の化合物が挙げられ、原料であるモノマーの合成の観点から、フェニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジニル基、ピラジル基、トリアジル基、ナフチル基、アントラセニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、ビフェニル基が好ましい。
【0099】
6は、{−(CH2n6−Y3}で表される置換基以外の置換基を有していてもよい。
該置換基の具体例としては、前述のAr1が有していてもよいR1以外の置換基と同様の置換基が挙げられる。該置換基が複数個存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0100】
式(7)〜(14)中、R’で表される2価の炭化水素基しては、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,9−ノニレン基、1,12−ドデシレン基等の炭素数1〜50程度の2価の飽和炭化水素基、エテニレン基、プロペニレン基、3−ブテニレン基、2−ペンテニレン基、2−ヘキセニレン基、2−ノネニレン基、2−ドデセニレン基等の炭素数2〜50程度の2価の不飽和炭化水素基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロノニレン基、シクロドデシレン基、ノルボニレン基、アダマンチレン基等の炭素原子数3〜50程度の2価の環状飽和炭化水素基、エテニレン基、プロペニレン基、3−ブテニレン基、2−ブテニレン基、2−ペンテニレン基、2−ヘキセニレン基、2−ノネニレン基、2−ドデセニレン基等の炭素原子数2〜50程度のアルケニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ビフェニル−4,4'−ジイル基等の炭素原子数6〜50程度のアリーレン基、メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基、ペンチレンオキシ基、ヘキシレンオキシ基等の炭素原子数1〜50程度のアルキレンオキシ基等が挙げられる。
R’は置換基を有していてもよく、該置換基としては、前述のAr1が有していてもよいR1以外の置換基と同様の置換基が挙げられる。置換基が複数個存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0101】
式(7)〜(14)中、R”で表される1価の炭化水素基しては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基等の炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基等の炭素数6〜30のアリール基等が挙げられる。溶解性の観点からは、メチル基、エチル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が好ましい。R’’は置換基を有していてもよく、該置換基としては、前述のAr1が有していてもよいR1以外の置換基と同様の置換基が挙げられる。置換基が複数個存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0102】
式(7)〜(14)中、Rcは、共役高分子化合物の溶解性の観点からは、メチル基、エチル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が好ましい。
【0103】
式(7)中、a4は3〜20の整数を表し、3〜10が好ましい。式(8)〜(14)中、a3は0以上の整数を表す。式(8)においては、0〜30が好ましく、3〜20がより好ましい。式(9)〜(12)においては、0〜10が好ましく、0〜5がより好ましい。式(13)においては、0〜20が好ましく、3〜20がより好ましい。式(14)においては、0〜20が好ましく、0〜10がより好ましい。
【0104】
3としては、原料となるモノマーの合成の容易さの観点からは、−CN、式(7)で表される基、式(8)で表される基、式(12)で表される基、式(13)で表される基が好ましく、式(7)で表される基、式(8)で表される基、式(13)で表される基がより好ましい。さらに好ましくは、以下の基が挙げられる。

【0105】
式(5)で示される繰り返し単位の中では、Arが式38で表される環から水素原子を2個除いた基である繰り返し単位が好ましく、下式
(式中、Ry''は式(6)で表される基を含む置換基を表し、R***は、Ry''、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。)
で表される繰り返し単位がより好ましい。
【0106】
式(5)で表される繰り返し単位としては、電子輸送性の観点からは、式(17)で表される繰り返し単位が好ましい。

(17)

(式中、n6、m1、R6、Y3は前述と同じ意味を表す。複数個あるn6、m1、R6およびY3は、同一でも異なっていてもよい。)
【0107】
式(17)で表される繰り返し単位の具体例としては、以下の繰り返し単位が挙げられる。

【0108】


(式中R'''は水素原子またはメチル基を表す。)
【0109】
本発明に用いられる共役高分子化合物は、さらに式(20)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
(20)

(式中、Ar4は置換基を有していてもよい2価の芳香族基または置換基を有していてもよい2価の芳香族アミン残基を表す。Xは置換基を有していてもよいイミノ基、置換基を有していてもよいシリレン基、置換基を有していてもよいエテニレン基またはエチニレン基を表し、m2およびm3は、それぞれ独立に0または1を表し、m2およびm3の少なくとも1つは1である。)
【0110】
式(20)中のAr4で表される2価の芳香族基としては、2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環基があげられる。該2価の芳香族基としては、ベンゼン環、ピリジン環、1,2−ジアジン環、1,3−ジアジン環、1,4−ジアジン環、1,3,5−トリアジン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾ-ル環、アザジザゾ-ル環等の単環式芳香環から水素原子を2個除いた2価の基、該単環式芳香環の中から互いに独立して選んだ二つ以上が縮合した縮合多環式芳香環から水素原子を2個除いた2価の基、二つ以上の芳香環を、単結合、エテニレン基またはエチニレン基で連結した多環から水素原子を2個除いた2価の基、2つの芳香環をメチレン基、エチレン基、カルボニル基、イミノ基等の2価の基で橋かけした構造を有する有橋多環式芳香環から水素原子を2個除いた2価の基等が挙げられる。
【0111】
前記縮合多環式芳香環において、縮合する単環式芳香環の数は、共役高分子化合物の溶解性の観点からは、2〜4が好ましく、2〜3がより好ましく、2がさらに好ましい。前記二つ以上の芳香環を、単結合、エテニレン基またはエチニレン基で連結した多環において、連結される芳香環の数として、溶解性の観点からは、2〜4が好ましく、2〜3がより好ましく、2がさらに好ましい。前記有橋多環式芳香環において、橋かけされる芳香環の数として、共役高分子化合物の溶解性の観点からは、2〜4が好ましく、2〜3がより好ましく、2がさらに好ましい。
【0112】
前記単環式芳香環としては、例えば、以下の環が挙げられる。
【0113】
前記縮合多環式芳香環としては、例えば、以下の環が挙げられる。
【0114】
前記二つ以上の芳香環を、単結合、エテニレン基またはエチニレン基で連結した多環としては、例えば、以下の環が挙げられる。
【0115】
前記有橋多環式芳香環としては、例えば、以下の環が挙げられる。
【0116】
前記共役高分子化合物の電子および/またはホール受容性の観点からは、Ar4で表される2価の芳香族基は式46〜61、式62〜72、式78〜81、式92、式93、式94、式97で表される環から水素原子を2個除いた2価の基が好ましく、式46〜51、式60、式61、式78、式81、式92、式93、式97で表される環から水素原子を2個除いた2価の基がより好ましい。
【0117】
上記の2価の芳香族基は、R1、R2、R3で表される置換基以外の置換基を有していてもよい。当該置換基としては、前述のAr1が有していてもよいR1以外の置換基と同様の置換基が挙げられる。
【0118】
式(20)中のAr4で表される2価の芳香族基アミン残基とは、式(21)で表される基があげられる。

(21)
式中、Ar8、Ar9、Ar10及びAr11は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基または置換基を有していてもよい2価の複素環基を表し、Ar12、Ar13及びAr14は置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよい1価の複素環基を表し、n12及びm4は、それぞれ独立に、0または1を表す。
【0119】
前記アリーレン基、アリール基、2価の複素環基、1価の複素環基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、1価の複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールアルキルオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基及びカルボキシル基等があげられる。該置換基は、ビニル基、アセチレン基、ブテニル基、アクリル基、アクリレート基、アクリルアミド基、メタクリル基、メタクリレート基、メタクリルアミド基、ビニルエーテル基、ビニルアミノ基、シラノール基、小員環(たとえばシクロプロピル基、シクロブチル基、エポキシ基、オキセタン基、ジケテン基、エピスルフィド基等)を有する基、ラクトン基、ラクタム基、またはシロキサン誘導体の構造を含有する基等の架橋基であってもよい。
【0120】
n12が0の場合、Ar8中の炭素原子とAr10中の炭素原子とが直接結合してもよく、−O−、−S−等の2価の基を介して結合していてもよい。前記結合を形成しうるアリーレン基としては、フェニレン基等があげられ、2価の複素環基としては、ピリジンジイル基等があげられる。
【0121】
繰り返し単位として2価の芳香族アミン残基を含む共役高分子化合物は、さらに他の繰り返し単位を有していてもよい。他の繰り返し単位としては、フェニレン基、フルオレンジイル基等のアリーレン基等があげられる。なお、これらの共役高分子化合物の中では、架橋基を含んでいるものがより好ましい。
【0122】
また、式(21)で表される2価の芳香族アミン残基としては、具体的には、下記一般式102〜111で表される芳香族アミンから水素原子を2個除いた基が例示される。
【0123】
式102〜111で表される芳香族アミンは置換基を有していてもよく、該置換基としては、前述のAr1が有していてもよいR1以外の置換基と同様の置換基が挙げられ、置換基が複数個存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0124】
式(20)中、Xは置換基を有していてもよいイミノ基、置換基を有していてもよいシリレン基、置換基を有していてもよいエテニレン基またはエチニレン基を表す。イミノ基、シリル基もしくはエテニレン基が有していてもよい置換基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ラウリル基等の炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基等の炭素数6〜30のアリール基等が挙げられ、置換基を複数個有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0125】
前記共役高分子化合物の空気、湿気または熱に対する安定性の観点からは、Xはイミノ基、エテニレン基、エチニレン基が好ましい。
【0126】
前記共役高分子化合物の電子および/またはホール受容性の観点からは、m2が1であり、m3が0であることが好ましい。
【0127】
式(20)で表される繰り返し単位としては、前記共役高分子化合物の電子受容性の観点からは、式(22)で表される繰り返し単位が好ましい。

(22)
(式中、Ar5は、置換基を有していてもよいピリジンジイル基、置換基を有していてもよいピラジンジイル基、置換基を有していてもよいピリミジンジイル基、置換基を有していてもよいピリダジンジイル基または置換基を有していてもよいトリアジンジイル基を表す。)
【0128】
ピリジンジイル基が有していてもよい置換基としては、前述のAr4が有していてもよい置換基と同様の置換基が挙げられる。置換基が複数個存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。ピラジンジイル基が有していてもよい置換基としては、前述のAr4が有していてもよい置換基と同様の置換基が挙げられる。置換基が複数個存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。ピリミジンジイル基が有していてもよい置換基としては、前述のAr4が有していてもよい置換基と同様の置換基が挙げられる。置換基が複数個存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。ピリダジンジイル基が有していてもよい置換基としては、前述のAr4が有していてもよい置換基と同様の置換基が挙げられる。置換基が複数個存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。トリアジンジイル基が有していてもよい置換基としては、前述のAr4が有していてもよい置換基と同様の置換基が挙げられる。置換基が複数個存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0129】
電界発光素子の効率の観点からは、式(1)で表される繰り返し単位のみを有する共役高分子化合物、式(3)で表される繰り返し単位のみを有する共役高分子化合物、式(1)で表される繰り返し単位および式(5)で表される繰り返し単位を有する共役高分子化合物、式(3)で表される繰り返し単位および式(5)で表される繰り返し単位を有する共役高分子化合物が好ましく、式(1)で表される繰り返し単位のみを有する共役高分子化合物、式(3)で表される繰り返し単位のみを有する共役高分子化合物、式(3)で表される繰り返し単位および式(5)で表される繰り返し単位を有する共役高分子化合物がより好ましい。
【0130】
本発明に用いられる共役高分子化合物中に含まれる式(1)で表される繰り返し単位、式(3)で表される繰り返し単位および式(5)で表される繰り返し単位の数の合計は、該共役高分子化合物が有する全繰り返し単位の数の合計を100モルとした場合、15〜100モルであることが好ましく、電界発光素子の効率の観点からは50〜100モルであることがより好ましい。
【0131】
共役高分子化合物の塗布による成膜性の観点から、本発明に用いられる共役高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量が5×103〜1×108であることが好ましく、5×103〜1×107であることがより好ましく、1×104〜1×107であることがさらに好ましい。また、ポリスチレン換算の重量平均分子量が5×103〜1×108であることが好ましく、5×103〜1×107であることがより好ましい。
【0132】
本発明に用いられる共役高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ−(GPC)を用いて、求めることができる。
【0133】
共役高分子化合物の電子及び/またはホールの受容性を向上する観点からは、本発明に用いられる共役高分子化合物の最低非占有分子軌道(LUMO)の軌道エネルギーが、−5.0eV以上−2.0eV以下であることが好ましく、−4.5eV〜−2.0eV以下がより好ましい。また、最高占有分子軌道(HOMO)の軌道エネルギーが、−6.0eV以上−3.0eV以下であることが好ましく、−5.5eV以上−3.0eV以下がより好ましい。
【0134】
本発明の別の実施形態として、溶解度パラメータが9.3未満の溶媒に対して不溶である共役高分子化合物を用いた積層構造体が挙げられ、溶解度パラメーターが9.3未満の溶媒および水に対して不溶である共役高分子化合物を用いた積層構造体が好ましい。ここで溶解度パラメーターとは、浅原照三著「溶剤ハンドブック」(14版、講談社、1996年発行)に記載の値を用いる。「共役高分子化合物が溶媒に不溶とは」、共役高分子化合物10mgと溶媒1mLとを混合して20℃で攪拌した後に、5mg以上の共役高分子化合物が溶解しないで残存していることをいう。
【0135】
溶解度パラメーターが9.3未満の溶媒に可溶な共役高分子化合物は、塗布する際に該溶媒が該共役高分子化合物を含む層と接触する有機層を溶かす場合があるため好ましくない。また水に可溶な場合は、該共役高分子化合物を含む層の吸湿性が高くなるため好ましくない。
【0136】
溶解度パラメーターが9.3未満の溶媒(各括弧内の値は、各溶媒の溶解度パラメーターの値を表す)としては、イソペンチルアルコール(9.2)、クロロホルム(9.1)、シクロヘキサン(8.2)、ヘキサン(7.3)、ジエチルエーテル(7.4)、イソオクタン(7.0)、四塩化炭素(8.6)、テトラヒドロフラン(9.1)、トルエン(8.9)または混合溶媒が挙げられる。溶媒は単独であっても、混合した場合であっても、溶解度パラメーターが9.3以上20未満であれば使用できる。溶媒1と溶媒2を混合した場合には溶解度パラメーター(δm)は、δm=δ1×φ1+δ2×φ2により求める。(δ1は溶媒1の溶解度パラメーター、φ1は溶媒1の体積分率、δ2は溶媒2の溶解度パラメーター、φ2は溶媒2の体積分率を表す。)
【0137】
溶解度パラメーターが9.3未満の溶媒に不溶な共役高分子化合物としては、例えば以下の共役高分子化合物が挙げられる。

【0138】
本発明に用いられる共役高分子化合物の好ましい1つの態様は、式(30)で表される繰り返し単位を有する共役高分子化合物である。
(30)
(式中、Rはアルカリ金属を表し、Rはアルキル基またはアルコキシ基を表す。)
【0139】
式(30)で表される繰り返し単位としては、式(31)で表される繰り返し単位が好ましい。
(31)
(式中、R、Rは前述と同じ意味を表す。)
【0140】
本発明に用いられる共役高分子化合物の好ましい他の態様は、式(30)で表される繰り返し単位とアリーレン基である繰り返し単位とを有する共役高分子化合物である。アリーレン基としては、フェニレン基、フルオレンジイル基が好ましい。
【0141】
次に、本発明に用いられる共役高分子化合物を製造する方法について説明する。本発明に用いられる共役高分子化合物を製造するための好適な方法としては、例えば、下記一般式(23)で表される化合物を原料の一つとして適宜選択して用い、中でも、前記一般式(23)中の−Aa−が式(1)、(3)、(5)、(15)〜(19)で表される繰り返し単位である化合物をそれぞれ必須成分として含有させて、これを縮合重合させる方法を挙げることができる。

4−Aa−Y5 (23)
(式中Y及びYは、それぞれ独立に、縮合重合に関与する基を示す。)
【0142】
また、本発明に用いられる共役高分子化合物中に上記式(23)中の−Aa−で表される繰り返し単位とともに、前記−Aa−以外の他の繰り返し単位を含有させる場合には、前記−Aa−以外の他の繰り返し単位となる、2個の縮合重合に関与する置換基を有する化合物を用い、これを前記式(23)で表される化合物とともに共存させて縮合重合させればよい。
【0143】
このような他の繰り返し単位を含有させるために用いられる2個の縮合重合可能な置換基を有する化合物としては、式(24)で表される化合物が例示される。このようにして、前記Y4−Aa−Y5で表される化合物に加えて、式(24)で表される化合物を縮合重合させることで、−Ab−で表される繰り返し単位を更に有する本発明にかかる共役系ポリマーを製造することができる。

9−Ab−Y10 (24)

(式中、Abは前記一般式(20)で表される繰り返し単位または一般式(22)で表される繰り返し単位であり、Y9及びY10は、それぞれ独立に、縮合重合に関与する基を示す。)
【0144】
このような縮合重合に関与する基(Y4、Y5、Y9およびY10)としては、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、ホウ酸エステル残基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、−B(OH)2、ホルミル基、シアノ基またはビニル基等が挙げられる。
【0145】
このような縮合重合に関与する基として選択され得るハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられる。
【0146】
また、前記縮合重合に関与する基として選択され得るアルキルスルホネート基としては、メタンスルホネート基、エタンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基などが例示され、アリールスルホネート基としては、ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基などが例示され、アリールスルホネート基としては、ベンジルスルホネート基等が例示される。
【0147】
また、前記縮合重合に関与する基として選択され得るホウ酸エステル残基としては、下記式で表される基が例示される。
さらに、前記縮合重合に関与する基として選択され得るスルホニウムメチル基としては、下記式:

−CH2+Me2-、または、−CH2+Ph2-
(Eはハロゲン原子を示し、Phはフェニル基を示す。)
で表される基が例示される。
【0148】
また、前記縮合重合に関与する基として選択され得るホスホニウムメチル基としては、下記式:
−CH2+Ph3-
(Eはハロゲン原子を示す。)
で表される基が例示される。
【0149】
また、前記縮合重合に関与する基として選択され得るホスホネートメチル基としては、下記式:
−CH2PO(OR’)2
(R’はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基を示す。)
で表される基が例示される。
【0150】
さらに、前記縮合重合に関与する基として選択され得るモノハロゲン化メチル基としては、フッ化メチル基、塩化メチル基、臭化メチル基またはヨウ化メチル基が例示される。
【0151】
さらに、縮合重合に関与する基として好適な基としては、重合反応の種類によって異なるものであり一概には言えないが、例えば、Yamamotoカップリング反応など0価ニッケル錯体を用いる場合には、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基またはアリールアルキルスルホネート基が挙げられる。また、Suzukiカップリング反応などニッケル触媒またはパラジウム触媒を用いる場合には、アルキルスルホネート基、ハロゲン原子、ホウ酸エステル残基、−B(OH)2等が挙げられ、酸化剤または電気化学的に酸化重合する場合には水素原子が挙げられる。
【0152】
本発明に用いられる共役高分子化合物を製造する際には、例えば、縮合重合に関与する基を複数有する前記一般式(23)または(24)で表される化合物(モノマー)を、必要に応じて有機溶媒に溶解し、アルカリや適当な触媒を適宜用いて、有機溶媒の融点以上沸点以下の温度で反応させる重合方法を採用してもよい。このような重合方法としては、例えば、“オルガニック リアクションズ(Organic Reactions)”,第14巻,270−490頁,ジョンワイリー アンド サンズ(John Wiley&Sons,Inc.),1965年、“オルガニック シンセシス(Organic Syntheses)”,コレクティブ第6巻(Collective Volume VI),407−411頁,ジョンワイリー アンド サンズ(John Wiley&Sons,Inc.),1988年、ケミカル レビュー(Chem.Rev.),第95巻,2457頁(1995年)、ジャーナル オブ オルガノメタリック ケミストリー(J.Organomet.Chem.),第576巻,147頁(1999年)、マクロモレキュラー ケミストリー マクロモレキュラー シンポジウム(Macromol.Chem.,Macromol.Symp.),第12巻,229頁(1987年)等に記載の公知の方法を適宜採用することができる。
【0153】
また、本発明に用いられる共役高分子化合物を製造する際には、縮合重合に関与する基に応じて、既知の縮合重合反応を適宜採用してもよい。このような重合方法としては、例えば該当するモノマーを、Suzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、Ni(0)錯体により重合する方法、FeCl3等の酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法、または適当な脱離基を有する中間体高分子の分解による方法等が挙げられる。このような重合反応の中でも、Suzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、及びニッケルゼロ価錯体により重合する方法が、得られる高分子化合物の構造制御がし易いので好ましい。
【0154】
本発明に用いられる共役高分子化合物の好ましい製造方法の1つの態様は、縮合重合に関与する基(Y4、Y5、Y9およびY10)がそれぞれ独立にハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基またはアリールアルキルスルホネート基から選択され、且つニッケルゼロ価錯体存在下で縮合重合して高分子化合物を製造する方法があげられる。このような方法に使用する原料化合物としては、例えば、ジハロゲン化化合物、ビス(アルキルスルホネート)化合物、ビス(アリールスルホネート)化合物、ビス(アリールアルキルスルホネート)化合物、ハロゲン−アルキルスルホネート化合物、ハロゲン−アリールスルホネート化合物、ハロゲン−アリールアルキルスルホネート化合物、アルキルスルホネート−アリールスルホネート化合物、アルキルスルホネート−アリールアルキルスルホネート化合物およびアリールスルホネート−アリールアルキルスルホネート化合物等が挙げられる。
【0155】
また、前記共役高分子化合物の好ましい製造方法の他の態様は、縮合重合に関与する基(Y4、Y5、Y9、Y10)がそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、ホウ酸基、またはホウ酸エステル残基から選ばれ、全原料化合物が有する、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基及びアリールアルキルスルホネート基のモル数の合計(J)と、ホウ酸基(−B(OH)2)及びホウ酸エステル残基のモル数の合計(K)の比が実質的に1(通常 K/J は0.7〜1.2の範囲)であり、且つニッケル触媒またはパラジウム触媒を用いて縮合重合して共役系ポリマーを製造する方法があげられる。
【0156】
このような共役高分子化合物の製造方法を採用する場合における具体的な原料化合物の組み合わせとしては、ジハロゲン化化合物のみの組み合わせ、ビス(アルキルスルホネート)化合物のみの組み合わせ、ビス(アリールスルホネート)化合物とビス(アリールアルキルスルホネート)化合物のいずれかとジホウ酸化合物またはジホウ酸エステル化合物のいずれかとの組み合わせ等が挙げられる。また、シーケンスを制御した共役系ポリマーを製造する観点からは、ハロゲン−ホウ酸化合物、ハロゲン−ホウ酸エステル化合物、アルキルスルホネート−ホウ酸化合物、アルキルスルホネート−ホウ酸エステル化合物、アリールスルホネート−ホウ酸化合物、アリールスルホネート−ホウ酸エステル化合物、アリールアルキルスルホネート−ホウ酸化合物、アリールアルキルスルホネート−ホウ酸エステル化合物を用いることが好ましい。
【0157】
また、前記有機溶媒としては、用いる化合物や反応によっても異なるが、一般に副反応を抑制するために十分に脱酸素処理を施したものを用いることが好ましく、高分子化合物を製造する際には、このような有機溶媒を用いて不活性雰囲気下で反応を進行させることが好ましい。また、前記有機溶媒においては、前記脱酸素処理と同様に脱水処理を行うことが好ましい。但し、Suzukiカップリング反応のような水との2相系での反応の場合にはその限りではない。
【0158】
また、このような有機溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの不飽和炭化水素、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサンなどのハロゲン化飽和炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化不飽和炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類、蟻酸、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンなどのエーテル類、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ピリジンなどのアミン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルモルホリンオキシドなどのアミド類等が例示される。これらの有機溶媒は1種を単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。また、このような有機溶媒の中でも、反応性の観点からはエーテル類がより好ましく、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルが更に好ましい。また、反応速度の観点からはトルエン、キシレンが好ましい。
【0159】
また、前記共役高分子化合物を製造する際においては、原料化合物を反応させるために適宜アルカリや適当な触媒を添加することが好ましい。このようなアルカリまたは触媒は、採用する重合方法等に応じて選択すればよい。このようなアルカリまたは触媒としては、反応に用いる溶媒に十分に溶解するものが好ましい。また、前記アルカリまたは触媒を混合する方法としては、反応液をアルゴンや窒素などの不活性雰囲気下で攪拌しながらゆっくりとアルカリまたは触媒の溶液を添加するか、逆にアルカリまたは触媒の溶液に反応液をゆっくりと添加する方法が例示される。
【0160】
また、本発明にかかる高分子化合物においては、末端基に重合活性基がそのまま残っていると本発明の高分子発光素子の発光特性や寿命特性が低下する可能性があるため、末端基が安定な基で保護されていてもよい。このように安定な基で末端基が保護されている場合には、主鎖の共役構造と連続した共役結合を有していることが好ましく、その構造としては、例えば、炭素―炭素結合を介してアリール基または複素環基と結合している構造が挙げられる。このような末端基を保護する安定な基としては、例えば、特開平9−45478号公報において化10の構造式で示される1価の芳香族化合物基等の置換基が挙げられる。
【0161】
式(1)で表される繰り返し単位を含む共役高分子化合物を製造する他の好ましい方法としては、第1工程でイオンを有さない共役高分子化合物を重合し、第2工程で該共役高分子化合物からイオンを含有する共役高分子化合物を製造する方法が挙げられる。第1工程のイオンを有さない共役高分子化合物を重合する方法としては、前述の縮合重合反応が挙げられる。第2工程の反応としては、ハロゲン化アルキルを用いたアミンの4級アンモニウム塩化反応、SbF5によるハロゲン引き抜き反応等が挙げられる。
【0162】
式(3)で表される繰り返し単位を含む共役高分子化合物を製造する他の好ましい方法としては、第1工程でカチオンを有さない共役高分子化合物を重合し、第2工程で該共役高分子化合物からカチオンを含有する共役高分子化合物を製造する方法が挙げられる。第1工程のカチオンを有さない共役高分子化合物を重合する方法としては、前述の縮合重合反応が挙げられる。第2工程の反応としては、金属水酸化物、アルキルアンモニウムヒドロキシド等による加水分解反応等が挙げられる。
<積層構造体>
【0163】
次に、本発明にかかる積層構造体について説明する。
本発明の積層構造体は、第1の電極および第2の電極と、該第1の電極と該第2の電極との間に発光層もしくは電荷分離層を有し、該発光層もしくは電荷分離層と該第1の電極との間に共役高分子化合物を含む層を有し、該共役高分子化合物が式(1)で表される繰り返し単位、式(3)で表される繰り返し単位および式(5)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる1種以上の繰り返し単位を有する。
【0164】
本発明の積層構造体は、電界発光素子、光電変換素子等に用いることができる。積層構造体を電界発光素子に用いる場合は、積層構造体中に発光層を有している。積層構造体を光電変換素子に用いる場合は、積層構造体中に電荷分離層を有している。
【0165】
本発明に用いられる共役高分子化合物は電荷の注入性や輸送性に優れるため、該共役高分子化合物を含む層を電界発光素子に用いた場合、高輝度で発光する素子が得られる。また、該共役高分子化合物を含む層を光電変換素子に用いた場合、変換効率が高い素子が得られる。本発明の積層構造体は、発光層を有する場合に、本発明の効果を特に奏する。
【0166】
<電界発光素子>
本発明の積層構造体を用いた電界発光素子は、陰極、陽極、及び前記陰極と陽極との間に発光層を有する。本発明の電界発光素子は、通常任意の構成要素として基板をさらに有することができ、かかる基板の面上に前記陰極、陽極、発光層および本発明の共役高分子化合物を含む層、並びに必要に応じてその他の任意の構成要素を設けた構成とすることができる。
【0167】
本発明の電界発光素子の一態様としては、基板上に陽極が設けられ、その上層に発光層が積層され、さらにその上層に陰極が積層される。他の一態様としては、陰極を基板上に設け、陽極を発光層の上層に設けてもよい。また、他の態様としては、基板側から採光する所謂ボトムエミッションタイプ、基板と反対側から採光する所謂トップエミッションタイプ、または両面採光型のいずれのタイプの電界発光素子であってもよい。さらに他の態様としては、任意の保護膜、バッファー膜、反射層などの他の機能を有する層を設けてもよい。なお、電界発光素子の構成については、下記にて別途詳述する。電界発光素子はさらに封止膜、或いは、封止基板が覆い被せられ、電界発光素子が外気と遮断された発光装置が形成される。
【0168】
本発明に用いられる共役高分子化合物を含む層は、電界発光素子における陰極と発光層との間の層または陽極と発光層との間の層等として用いることができ、電荷注入層または電荷輸送層等として用いられる。
【0169】
共役高分子化合物を含む層を形成する方法としては、例えば、共役高分子化合物を含有する溶液を用いて成膜する方法が挙げられる。
【0170】
このような溶液からの成膜に用いる溶媒としては、水を除く溶解度パラメーターが9.3以上の溶媒が好ましい。該溶媒の例(各括弧内の値は、各溶媒の溶解度パラメーターの値を表す)としては、メタノール(12.9)、エタノール(11.2)、2−プロパノール(11.5)、1−ブタノール(9.9)、t−ブチルアルコール(10.5)、アセトニトリル(11.8)、1,2−エタンジオール(14.7)、N,N-ジメチルホルムアミド(11.5)、ジメチルスルホキシド(12.8)、酢酸(12.4)、ニトロベンゼン(11.1)、ニトロメタン(11.0)、1,2−ジクロロエタン(9.7)、ジクロロメタン(9.6)、クロロベンゼン(9.6)、ブロモベンゼン(9.9)、ジオキサン(9.8)、炭酸プロピレン(13.3)、ピリジン(10.4)、二硫化炭素(10.0)、またはこれらの溶媒の混合溶媒等が挙げられる。溶媒1と溶媒2との混合溶媒の場合には溶解度パラメーター(δm)は、δm1×φ12×φ2により求めることとする(δ1は溶媒1の溶解度パラメーター、φ1は溶媒1の体積分率、δ2は溶媒2の溶解度パラメーター、φ2は溶媒2の体積分率である。)
【0171】
溶液からの成膜方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法、ノズルコート法等の塗布法が挙げられる。
【0172】
共役高分子化合物を含む層の膜厚としては、用いる共役高分子化合物によって最適値が異なるため、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように適宜選択すればよく、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であることが好ましい。素子の駆動電圧を低くする観点からは、1nm〜1μmであることが好ましく、2nm〜500nmであることがより好ましく、2nm〜200nmであることがさらに好ましい。
【0173】
電界発光素子は、陰極および陽極を有し、陰極と陽極間に発光層を有するが、これらに加えて、さらに構成要素を備える。
例えば、陽極と発光層との間には正孔注入層、インターレイヤー、正孔輸送層のうちの1層以上を有することができる。正孔注入層が存在する場合は、発光層と正孔注入層との間にインターレイヤー、正孔輸送層のうちの1層以上を有することができる。
一方、陰極と有機発光層との間には電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層のうちの1層以上を有することができる。電子注入層が存在する場合は、有機発光層と電子注入層との間に電子輸送層、正孔ブロック層のうちの1層以上を有することができる。
本発明に用いられる共役高分子化合物を含む層は、正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層等に用いることができる。共役高分子化合物を含む層を正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤーとして用いる場合、第1の電極は陽極となり、第2の電極は陰極となる。共役高分子化合物を含む層を電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層として用いる場合、第1の電極は陰極となり、第2の電極は陽極となる。
【0174】
ここで、陽極は、正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー、発光層等に正孔を供給するものであり、陰極は、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層、発光層等に電子を供給するものである。
発光層とは、電界を印加した際に、陽極側に隣接する層より正孔を受け取り、陰極側に隣接する層より電子を受け取る機能、受け取った電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能、電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能を有する層をいう。
電子注入層及び電子輸送層とは、陰極から電子を受け取る機能、電子を輸送する機能、陽極から注入された正孔を障壁する機能のいずれかを有する層をいう。また、正孔ブロック層とは、主に陽極から注入された正孔を障壁する機能を有し、さらに必要に応じて陰極から電子を受け取る機能、電子を輸送する機能のいずれかを有する層をいう。
正孔注入層及び正孔輸送層とは、陽極から正孔を受け取る機能、正孔を輸送する機能、発光層へ正孔を供給する機能、陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有する層をいう。また、インターレイヤー層とは、陽極から正孔を受け取る機能、正孔を輸送する機能、発光層へ正孔を供給する機能、陰極から注入された電子を障壁する機能の少なくとも1つ以上を有し、通常、発光層に隣接して配置され、発光層と陽極、または発光層と正孔注入層若しくは正孔輸送層とを隔離する役割をもつ。
なお、電子輸送層と正孔輸送層を総称して電荷輸送層と呼ぶ。また、電子注入層と正孔注入層を総称して電荷注入層と呼ぶ。
【0175】
即ち、本発明の電界発光素子は下記の層構成(a)を有することができ、または、層構成(a)から、正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層の1層以上を省略した層構成を有することもできる。層構成(a)において、本発明に用いられる共役高分子化合物を含む層は、正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー、電子注入層、電子輸送層および正孔ブロック層からなる群から選ばれる1つ以上の層として用いることができる。
【0176】
(a)陽極−正孔注入層−(正孔輸送層及び/またはインターレイヤー)−発光層−(正孔ブロック層及び/または電子輸送層)−電子注入層−陰極
【0177】
ここで、符号「−」は各層が隣接して積層されていることを示す。
「(正孔輸送層及び/またはインターレイヤー)」は、正孔輸送層のみからなる層、インターレイヤーのみからなる層、正孔輸送層−インターレイヤーの層構成、インターレイヤー−正孔輸送層の層構成、またはその他の、正孔輸送層及びインターレイヤーをそれぞれ1層以上含む任意の層構成を示す。
「(正孔ブロック層及び/または電子輸送層)」は、正孔ブロック層のみからなる層、電子輸送層のみからなる層、正孔ブロック層−電子輸送層の層構成、電子輸送層−正孔ブロック層の層構成、またはその他の、正孔ブロック層及び電子輸送層をそれぞれ1層以上含む任意の層構成を示す。以下の層構成の説明においても同様である。
【0178】
さらに、本発明の電界発光素子は、1つの積層構造中に2層の発光層を有することができる。この場合、電界発光素子は下記の層構成(b)を有することができ、または、層構成(b)から、正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、電極の1層以上を省略した層構成を有することもできる。層構成(b)において、共役高分子化合物を含む層は、陽極と陽極に最も近い発光層との間に存在する層として用いられるか、陰極と陰極に最も近い発光層との間に存在する層として用いられる。
【0179】
(b)陽極−正孔注入層−(正孔輸送層及び/またはインターレイヤー)−発光層−(正孔ブロック層及び/または電子輸送層)−電子注入層−電極−正孔注入層−(正孔輸送層及び/またはインターレイヤー)−発光層−(正孔ブロック層及び/または電子輸送層)−電子注入層−陰極
【0180】
さらに、本発明の電界発光素子は、1つの積層構造中に3層以上の発光層を有することができる。この場合、電界発光素子は下記の層構成(c)を有することができ、または、層構成(c)から、正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、電極の1層以上を省略した層構成を有することもできる。層構成(c)において、共役高分子化合物を含む層は、陽極と陽極に最も近い発光層との間に存在する層として用いられるか、陰極と陰極に最も近い発光層との間に存在する層として用いられる。
【0181】
(c)陽極−正孔注入層−(正孔輸送層及び/またはインターレイヤー)−発光層−(正孔ブロック層及び/または電子輸送層)−電子注入層−繰返し単位A−繰返し単位A・・・−陰極
ここで、「繰返し単位A」は、電極−正孔注入層−(正孔輸送層及び/またはインターレイヤー)−発光層−(正孔ブロック層及び/または電子輸送層)−電子注入層の層構成の単位を示す。
【0182】
本発明の電界発光素子の層構成の好ましい具体例としては、下記のものが挙げられる。
下記層構成において、本発明に用いられる共役高分子化合物を含む層は、正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー、電子注入層、電子輸送層および正孔ブロック層からなる群から選ばれる1つ以上の層として用いることができる。
(d)陽極−正孔輸送層−発光層−陰極
(e)陽極−発光層−電子輸送層−陰極
(f)陽極−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−陰極
【0183】
またこれら構造の各一について、発光層と陽極との間に、発光層に隣接してインターレイヤー層を設ける構造も例示される。すなわち、以下の(d’)〜(g’)の構造が例示される。
(d’)陽極−インターレイヤー層−発光層−陰極
(e’)陽極−正孔輸送層−インターレイヤー層−発光層−陰極
(f’)陽極−インターレイヤー層−発光層−電子輸送層−陰極
(g’)陽極−正孔輸送層−インターレイヤー層−発光層−電子輸送層−陰極
【0184】
本発明において、電荷注入層(電子注入層、正孔注入層)を設けた電界発光素子としては、陰極に隣接して電荷注入層を設けた電界発光素子、陽極に隣接して電荷注入層を設けた電界発光素子が挙げられる。具体的には、例えば、以下の(h)〜(s)の構造が挙げられる。
(h)陽極−電荷注入層−発光層−陰極
(i)陽極−発光層−電荷注入層−陰極
(j)陽極−電荷注入層−発光層−電荷注入層−陰極
(k)陽極−電荷注入層−正孔輸送層−発光層−陰極
(l)陽極−正孔輸送層−発光層−電荷注入層−陰極
(m)陽極−電荷注入層−正孔輸送層−発光層−電荷注入層−陰極
(n)陽極−電荷注入層−発光層−電子輸送層−陰極
(o)陽極−発光層−電子輸送層−電荷注入層−陰極
(p)陽極−電荷注入層−発光層−電子輸送層−電荷注入層−陰極
(q)陽極−電荷注入層−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−陰極
(r)陽極−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−電荷注入層−陰極
(s)陽極−電荷注入層−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−電荷注入層−陰極
また(d’)〜(g’)に類似して、これら構造の各一について、発光層と陽極との間に、発光層に隣接してインターレイヤー層を設ける構造も例示される。なおこの場合、インターレイヤー層が正孔注入層及び/または正孔輸送層を兼ねてもよい。
【0185】
本発明に用いられる共役高分子化合物を含む層は、電子注入層または電子輸送層であることが好ましい。共役高分子化合物を含む層が、電子注入層または電子輸送層である場合、第1の電極は陰極である。
【0186】
本発明の電界発光素子は、さらに電極との密着性向上や電極からの電荷(即ち正孔または電子)の注入の改善のために、電極に隣接して絶縁層を設けてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層(即ち正孔輸送層または電子輸送層)または発光層の界面に薄いバッファー層を挿入してもよい。積層する層の順番や数、及び各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して適宜用いることができる。
【0187】
次に、本発明の電界発光素子を構成する各層の材料及び形成方法について、より具体的に説明する。
【0188】
<基板>
本発明の電界発光素子を構成する基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよく、例えばガラス、プラスチック、高分子フィルム、金属フィルム、シリコン基板、これらを積層したものなどが用いられる。前記基板としては、市販のものが入手可能であり、または公知の方法により製造することができる。
本発明の電界発光素子がディスプレイ装置の画素を構成する際には、当該基板上に画素駆動用の回路が設けられていてもよいし、当該駆動回路上に平坦化膜が設けられていてもよい。平坦化膜が設けられる場合には、該平坦化膜の中心線平均粗さ(Ra)がRa<10nmを満たすことが好ましい。
Raは、日本工業規格JISのJIS−B0601−2001に基いて、JIS−B0651からJIS−B0656およびJIS−B0671−1等を参考に計測できる。
【0189】
<陽極>
本発明の電界発光素子を構成する陽極は、正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー、発光層等で用いられる有機半導体材料への正孔供給性の観点から、かかる陽極の発光層側表面の仕事関数が4.0eV以上であることが好ましい。
陽極の材料には、金属、合金、金属酸化物、金属硫化物などの電気伝導性化合物、またはこれらの混合物等を用いる事ができる。陽極の材料の例としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化モリブデン等の導電性金属酸化物、または、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの導電性金属酸化物と金属との混合物等が挙げられる。
前記陽極は、これら材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。多層構造である場合は、仕事関数が4.0eV以上である材料を発光層側の最表面層に用いることがより好ましい。
【0190】
陽極の作製方法としては、特に限定されず公知の方法が利用でき、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。
【0191】
陽極の膜厚は、通常10nm〜10μmであり、好ましくは50nm〜500nmである。
また、短絡等の電気的接続の不良を防止する観点から、陽極の発光層側表面の中心線平均粗さ(Ra)はRa<10nmを満たす事が望ましく、より好ましくはRa<5nmである。
【0192】
さらに、該陽極は上記方法にて作製された後に、UVオゾン、シランカップリング剤、2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタンなどの電子受容性化合物を含む溶液、などで表面処理を施される場合がある。表面処理によって該陽極に接する有機層との電気的接続が改善される。
【0193】
本発明の電界発光素子において陽極を光反射電極として用いる場合には、かかる陽極が、高光反射性金属からなる光反射層と4.0eV以上の仕事関数を有する材料を含む高仕事関数材料層を組み合わせた多層構造が好ましい。
このような陽極の具体的な構成例としては、
(i) Ag−MoO3
(ii)(Ag-Pd-Cu合金)−(ITO及び/またはIZO)
(iii)(Al-Nd合金)−(ITO及び/またはIZO)
(iV)(Mo-Cr合金)−(ITO及び/またはIZO)
(V) (Ag-Pd-Cu合金)−(ITO及び/またはIZO)−MoO3
などが例示される。十分な光反射率を得る為に、Al、Ag、Al合金、Ag合金、Cr合金などの高光反射性金属層の膜厚は50nm以上である事が好ましく、より好ましくは80nm以上である。ITO、IZO、MoO3などの高仕事関数材料層の膜厚は通常、5nm〜500nmの範囲である。
【0194】
<正孔注入層>
本発明の電界発光素子において、本発明に用いられる共役高分子化合物以外の正孔注入層を形成する材料としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、スターバースト型アミン、フタロシアニン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール) 誘導体、有機シラン誘導体、およびこれらを含む重合体が挙げられる。また、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の導電性金属酸化物、ポリアニリン、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子およびオリゴマー、ポリ(3、4−エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルフォン酸、ポリピロール等の有機導電性材料およびこれらを含む重合体、アモルファスカーボンを挙げることができる。さらに、テトラシアノキノジメタン誘導体(例えば2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン)、1,4-ナフトキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ポリニトロ化合物、などのアクセプター性有機化合物、オクタデシルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤等も好適に使用できる。
前記材料は単一の成分で用いても複数の成分からなる組成物として用いてもよい。また、前記正孔注入層は、前記材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。また、正孔輸送層あるいはインターレイヤーで用いることができる材料として列記する材料も正孔注入層で用いることができる。
【0195】
正孔注入層の作製方法としては、公知の種々の方法が利用できる。無機化合物材料の場合は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられ、低分子有機材料の場合は、真空蒸着法、レーザー転写や熱転写などの転写法、溶液からの成膜による方法(高分子バインダーとの混合溶液を用いてもよい)等が挙げられる。また、高分子有機材料では、溶液からの成膜による方法が例示される。
【0196】
正孔注入材料が、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等の低分子化合物の場合には、真空蒸着法を用いて正孔注入層を形成する事ができる。
【0197】
また、高分子化合物バインダーと前記低分子正孔注入材料を分散させた混合溶液を用いて正孔注入層を成膜する事もできる。混合する高分子化合物バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。具体的には、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が例示される。
【0198】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔注入材料を溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒として、水、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の含塩素溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル溶媒等が例示される。
【0199】
溶液からの成膜方法としては、溶液からのスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の印刷法等の塗布法を用いることができる。パターン形成が容易であるという点で、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の印刷法やノズルコート法が好ましい。
【0200】
正孔注入層に続いて、正孔輸送層、インターレイヤー、発光層などの有機化合物層を形成する場合、特に、両方の層を塗布法によって形成する場合には、先に塗布した層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解して積層構造を作成できなくなることがある。
この場合には、下層を溶媒不溶にする方法を用いることができる。溶媒不溶にする方法としては、高分子化合物に架橋基を付け、架橋させて不溶化する方法、芳香族ビスアジドに代表される芳香環を有する架橋基を持った低分子化合物を架橋剤として混合し、架橋させて不溶化する方法、アクリレート基に代表される芳香環を有しない架橋基を持った低分子化合物を架橋剤として混合し、架橋させて不溶化する方法、下層を紫外光に感光させて架橋させ、上層の製造に用いる有機溶媒に対して不溶化する方法、下層を加熱して架橋させ、上層の製造に用いる有機溶媒に対して不溶化する方法などが挙げられる。下層を加熱する場合の加熱の温度は通常100℃〜300℃程度であり、時間は通常1分〜1時間程度である。
また、架橋以外で下層を溶解させずに積層するその他の方法として、隣り合った層の製造に異なる極性の溶液を用いる方法があり、たとえば、下層に水溶性の高分子化合物を用い、上層に油溶性の高分子化合物を用いて、塗布しても下層が溶解しないようにする方法などがある。
【0201】
正孔注入層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔注入層の膜厚としては、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは10nm〜100nmである。
【0202】
<正孔輸送層およびインターレイヤー>
本発明の電界発光素子において、本発明に用いられる共役高分子化合物以外の正孔輸送層およびインターレイヤーを構成する材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール) 誘導体、有機シラン誘導体、およびこれらの構造を含む重合体が挙げられる。また、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子およびオリゴマー、ポリピロール等の有機導電性材料も挙げることができる。
前記材料は単成分であってもあるいは複数の成分からなる組成物であってもよい。また、前記正孔輸送層およびインターレイヤーは、前記材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。また、正孔注入層で用いることができる材料として列記する材料も正孔輸送層で用いることができる。
【0203】
正孔輸送層およびインターレイヤーを構成する材料の例としては、特開昭63-70257、特開昭63-175860、特開平2-135359、特開平2-135361、特開平2-209988、特開平3-37992、特開平3-152184、特開平5-263073、特開平6-1972、WO2005/52027、特開2006-295203、等に開示される化合物が正孔輸送層およびインターレイヤーの材料として使用できる。中でも、繰り返し単位として2価の芳香族アミン残基を含む重合体が、好適に用いられる。
【0204】
2価の芳香族アミン残基としては、式(21)で表される基があげられる。
【0205】

正孔輸送層およびインターレイヤーの成膜方法としては、正孔注入層の成膜と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、前記したスピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法および印刷法が挙げられ、昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法、転写法などが挙げられる。溶液からの成膜に用いる溶媒の例としては、正孔注入層の成膜方法で列記した溶媒が挙げられる。
【0206】
正孔輸送層およびインターレイヤーに続いて、発光層などの有機化合物層を塗布法にて形成する際に、下層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解する場合は、正孔注入層の成膜方法での例示と同様の方法で下層を溶媒不溶にすることができる。
【0207】
正孔輸送層およびインターレイヤーの膜厚は、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔輸送層およびインターレイヤーの膜厚としては、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜100nmである。
【0208】
<発光層>
本発明の電界発光素子において、発光層が高分子化合物を含む場合、高分子化合物材料としては、ポリフルオレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリジアルキルフルオレン、ポリフルオレンベンゾチアジアゾール、ポリアルキルチオフェン等の共役高分子化合物を好適に用いることができる。
また、これら高分子材料を含む発光層は、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系色素化合物や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子色素化合物を含有してもよい。また、ナフタレン誘導体、アントラセン若しくはその誘導体、ペリレン若しくはその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン若しくはその誘導体、またはテトラフェニルブタジエン若しくはその誘導体、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウムなどの燐光を発光する金属錯体を含有してもよい。
【0209】
また、本発明の電界発光素子が有する発光層は、非共役高分子化合物と前記有機色素や前記金属錯体などの発光性有機化合物との組成物から構成されてもよい。非共役高分子化合物としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ( N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂が挙げられる。前記の非共役高分子化合物は側鎖にカルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン化合物、ポルフィリン化合物、および有機シラン誘導体からなる群から選ばれる1つ以上の誘導体もしくは化合物で表される構造を有していてもよい。
【0210】
発光層が低分子化合物を含む場合、該低分子化合物としては、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、カルバゾール、キナクリドン等の低分子色素化合物、ナフタレン誘導体、アントラセン若しくはその誘導体、ペリレン若しくはその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系、インジゴ系などの色素類、8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、フタロシアニン若しくはその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン若しくはその誘導体、またはテトラフェニルブタジエン若しくはその誘導体等が挙げられる。
発光層が燐光を発光する金属錯体を含む場合、該金属錯体としては、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム、チエニルピリジン配位子含有イリジウム錯体、フェニルキノリン配位子含有イリジウム錯体、トリアザシクロノナン骨格含有テルビウム錯体等が挙げられる。
【0211】
発光層に用いられる高分子化合物の具体例としては、WO97/09394、WO98/27136、WO99/54385、WO00/22027、WO01/19834、GB2340304A、GB2348316、US573636、US5741921、US5777070、EP0707020、特開平9-111233、特開平10-324870、特開平2000-80167、特開2001-123156、特開2004-168999、特開2007-162009、「有機EL素子の開発と構成材料」(シーエムシー出版、2006年発行)等に開示されているポリフルオレン、その誘導体及び共重合体、ポリアリーレン、その誘導体及び共重合体、ポリアリーレンビニレン、その誘導体及び共重合体、芳香族アミン及びその誘導体の(共)重合体が例示される。
また、低分子化合物の具体例としては、例えば、特開昭57−51781、「有機薄膜仕事関数データ集[第2版]」(シーエムシー出版、2006年発行)、「有機EL素子の開発と構成材料」(シーエムシー出版、2006年発行)等に記載されている化合物が例示される。
前記材料は単成分であってもあるいは複数の成分からなる組成物であってもよい。また、前記発光層は、前記材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0212】
発光層の成膜方法としては、正孔注入層の成膜と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェットプリント法等の前記塗布法および印刷法が挙げられ、昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法、転写法などが挙げられる。
溶液からの成膜に用いる溶媒の例としては、正孔注入層の成膜方法で列記した溶媒が挙げられる。
【0213】
発光層に続いて、電子輸送層などの有機化合物層を塗布法にて形成する際に、下層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解する場合は、正孔注入層の成膜方法での例示と同様の方法で下層を溶媒不溶にすることができる。
【0214】
発光層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、発光層の膜厚としては、例えば5nm〜1μmであり、好ましくは10nm〜500nmであり、さらに好ましくは30nm〜200nmである。
【0215】
<電子輸送層および正孔ブロック層>
本発明の電界発光素子において、本発明に用いられる共役高分子化合物以外の電子輸送層および正孔ブロック層を構成する材料としては、公知のものが使用でき、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体などが挙げられる。これらのうち、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、または8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体が好ましい。
前記材料は単成分であってもあるいは複数の成分からなる組成物であってもよい。また、前記電子輸送層および正孔ブロック層は、前記材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。また、電子注入層で用いることができる材料として列記する材料も電子輸送層および正孔ブロック層で用いることができる。
【0216】
電子輸送層および正孔ブロック層の成膜方法としては、正孔注入層の成膜と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェットプリント法等の前記塗布法および印刷法が挙げられ、昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法、転写法などが挙げられる。
溶液からの成膜に用いる溶媒の例としては、正孔注入層の成膜方法で列記した溶媒が挙げられる。
【0217】
電子輸送層および正孔ブロック層に続いて、電子注入層などの有機化合物層を塗布法にて形成する際に、下層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解する場合は、正孔注入層の成膜方法での例示と同様の方法で下層を溶媒不溶にすることができる。
【0218】
電子輸送層および正孔ブロック層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該電子輸送層および正孔ブロック層の膜厚としては、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜100nmである。
【0219】
<電子注入層>
本発明の電界発光素子において、本発明に用いられる共役高分子化合物以外の電子注入層を構成する材料としては、公知のものが使用でき、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体などが挙げられる。
前記材料は単成分であってもあるいは複数の成分からなる組成物であってもよい。また、前記電子注入層は、前記材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。また、電子輸送層および正孔ブロック層で用いることができる材料として列記する材料も電子注入層で用いることができる。
【0220】
電子注入層の成膜方法に制限はなく、正孔注入層の成膜と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェットプリント法等の前記塗布法および印刷法が挙げられ、昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法、転写法などが挙げられる。
溶液からの成膜に用いる溶媒の例としては、正孔注入層の成膜方法で列記した溶媒が挙げられる。
【0221】
電子注入層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該電子注入層の膜厚としては、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜100nmである。
【0222】
<陰極>
本発明の電界発光素子において、陰極は、発光層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子注入層などに隣接して、これらの層へ電子を供給する機能を有するものである。該陰極は、単一の材料または複数の材料からなる単層構造であってもよいし、複数層からなる多層構造であってもよい。多層構造である場合、第1陰極層とカバー陰極層の2層構造もしくは第1陰極層、第2陰極層およびカバー陰極層の3層構造が好ましい。ここで、第1陰極層は、陰極の中で最も発光層側にある層をいい、カバー陰極層は2層構造の場合は第1陰極層を、3層構造の場合は第1陰極層と第2陰極層を覆う層をいう。電子供給能の観点からは、第1陰極層の材料の仕事関数が3.5eV以下であることが好ましい。また、仕事関数が3.5eV以下の金属の酸化物、フッ化物、炭酸化物、複合酸化物なども第1陰極層材料として好適に用いられる。カバー陰極層の材料には、抵抗率が低く、水分への耐腐食性が高い金属、金属酸化物などが好適に用いられる。
第1陰極層材料の具体例としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属、前記金属を1種類以上含む合金、前記金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物、複合酸化物、及びこれらの混合物からなる群より選択される1つ以上の材料などが挙げられる。アルカリ金属またはその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物、複合酸化物の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム、フッ化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、モリブデン酸カリウム、チタン酸カリウム、タングステン酸カリウム、モリブデン酸セシウム等が挙げられる。アルカリ土類金属またはその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物、複合酸化物の例としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸化バリウム、モリブデン酸バリウム、タングステン酸バリウム等が挙げられる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属を1種類以上含む合金の例としては、Li-Al合金、Mg-Ag合金、Al-Ba合金、Mg-Ba合金、Ba-Ag合金、Ca-Bi-Pb-Sn合金、等が挙げられる。また、第1陰極層材料として列記した材料と電子注入層を構成する材料として列記した材料との組成物も第1陰極層に使用できる。第2陰極層の材料としては、第1陰極層の材料と同様の材料が例示される。
カバー陰極層材料の具体例としては、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、スズ、鉛、ニッケル、チタン、等の低抵抗金属及びこれらを含む合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化モリブデン等の導電性金属酸化物、さらにこれらの導電性金属酸化物と金属との混合物等が挙げられる。
【0223】
陰極が多層構造である場合の具体的としては、Mg/Al、Ca/Al、Ba/Al、NaF/Al、KF/Al、RbF/Al、CsF/Al、Na2CO3/Al、K2CO3/Al、Cs2CO3/Alなどの第1陰極層とカバー陰極層の2層構造、LiF/Ca/Al、NaF/Ca/Al、KF/Ca/Al、RbF/Ca/Al、CsF/Ca/Al、Ba/Al/Ag、KF/Al/Ag、KF/Ca/Ag、K2CO3/Ca/Agなどの第1陰極層、第2陰極層およびカバー陰極層の3層構造挙げられる(ここで、符号「/」は各層が隣接している事を示す)。なお、第2陰極層の材料が第1陰極層の材料に対して還元作用を有することが好ましい。ここで、材料間の還元作用の有無・程度は、例えば、化合物間の結合解離エネルギー(ΔrH°)から見積もることができる。即ち、第2陰極層を構成する材料による、第1陰極層を構成する材料に対する還元反応において、結合解離エネルギーが正であるような組み合わせである場合、第2陰極層の材料が第1陰極層の材料に対して還元作用を有するといえる。結合解離エネルギーは、例えば「電気化学便覧第5版」(丸善、2000年発行)、「熱力学データベースMALT」(科学技術社、1992年発行)などで参照できる。
【0224】
陰極の作製方法は公知の種々の方法が利用でき、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が例示される。金属、金属の酸化物、フッ化物、炭酸化物を用いる場合は真空蒸着法が多用され、高沸点の金属酸化物、金属複合酸化物や酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物を用いる場合は、スパッタリング法、イオンプレーティング法が多用される。異種材料との組成物を成膜する場合には、共蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが用いられる。特に、低分子有機物と金属または金属の酸化物、フッ化物、炭酸化物との組成物を成膜する場合には共蒸着法が適する。
【0225】
陰極の膜厚は用いる材料、層構造によって最適値が異なり、駆動電圧、発光効率、素子寿命が適度な値となるように選択すればよい。通常、第1陰極層の膜厚は0.5nm〜20nmの範囲であり、カバー陰極層の膜厚は10nm〜1μmの範囲である。例えば、第1陰極層にBaまたはCa、カバー陰極層にAlを用いる場合、BaまたはCaの膜厚は2nm〜10nm、Alの膜厚は10nm〜500nmであることが好ましく、第1陰極層にNaFまたはKF、カバー陰極層にAlを用いる場合、NaFまたはKFの膜厚は1nm〜8nm、Alの膜厚は10nm〜500nmであることが好ましい。
【0226】
本発明の電界発光素子において陰極を光透過性電極として用いる場合には、カバー陰極層の可視光透過率が40%以上、好ましくは50%以上であることが好ましい。このような可視光透過率は、カバー陰極層材料として酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化モリブデン等の透明導電性金属酸化物を用いるか、或いは、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、スズ、鉛等の低抵抗金属及びこれらを含む合金を用いたカバー陰極層の膜厚を30nm以下にすることで達成される。例えば、第1陰極層にBaを5nm、第2陰極層にAlを1nm、カバー陰極層にAgを15nm、とした陰極構造の場合、陰極の可視光透過率は50%となる。
また、陰極側からの光透過率を向上させる事を目的として、陰極のカバー陰極層上に反射防止層を設ける事もできる。反射防止層に用いられる材料としては、屈折率が1.8 〜3.0程度であることが好ましく、例えば、ZnS, ZnSe, WO3などが挙げられる。反射防止層の膜厚は材料の組み合せによって異なるが、通常10nm〜150nmの範囲である。例えば、陰極として、第1陰極層としてBaを5nm、第2陰極層としてAlを1nm、カバー陰極層としてAgを15nm積層させた場合、カバー陰極層に接して反射防止層としてWO3を21nm積層させると、発光層側からの光透過率は10%程度向上する。
【0227】
<絶縁層>
本発明の電界発光素子が任意に有しうる膜厚5nm以下の絶縁層は、電極との密着性向上、電極からの電荷(即ち正孔または電子)注入改善、隣接層との混合防止などの機能を有するものである。上記絶縁層の材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料(ポリメチルメタクリレートなど)等が挙げられる。膜厚5nm以下の絶縁層を設けた電界発光素子としては、陰極に隣接して膜厚5nm以下の絶縁層を設けたもの、陽極に隣接して膜厚5nm以下の絶縁層を設けたものが挙げられる。
【0228】
本発明の電界発光素子の製造方法は、例えば、基板上に各層を順次積層することにより製造することができる。具体的には、基板上に陽極を設け、その上に正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー等の層を必要に応じて設け、その上に発光層を設け、その上に電子輸送層、電子注入層等の層を必要に応じて設け、さらにその上に、陰極を積層することにより製造することができる。
【0229】
本発明の電界発光素子を用いてディスプレイ装置を製造することができる。該ディスプレイ装置は、電界発光素子を1画素単位として備える。画素単位の配列の態様は、特に限定されず、テレビ等のディスプレイ装置で通常採られる配列とすることができ、多数の画素が共通の基板上に配列された態様とすることができる。本発明の装置において、基板上に配列される画素は、必要に応じて、バンクで規定される画素領域内に形成することができる。
【0230】
前記装置は、さらに必要に応じて、発光層等を挟んで基板と反対側に、封止部材を有することができる。また、さらに必要に応じて、カラーフィルターまたは蛍光変換フィルター等のフィルター、画素の駆動に必要な回路及び配線等の、ディスプレイ装置を構成するための任意の構成要素を有することができる。
【0231】
<光電変換素子>
次に、本発明の積層構造体を用いて製造することができる光電変換素子について説明する。
【0232】
本発明の光電変換素子は、陰極および陽極と、陰極と陽極との間に電荷分離層を有し、電荷分離層と陰極および/または電荷分離層と陰極との間に本発明に用いられる共役高分子化合物を含む層を有する。陽極と電荷分離層との間に共役高分子化合物を含む層を有する場合、第1の電極は陽極であり、第2の電極が陰極であり、共役高分子化合物を含む層は正孔輸送層等として用いられる。陰極と電荷分離層との間に共役高分子化合物を含む層を有する場合、第1の電極は陰極であり、第2の電極が陽極であり、共役高分子化合物を含む層は電子輸送層等として用いられる。
【0233】
本発明の光電変換素子の電荷分離層には、電子供与性化合物と電子受容性化合物とが含まれている。電子供与性化合物としては、共役高分子化合物があげられ、具体的には、チオフェンジイル基を含む高分子化合物、フルオレンジイル基を含む高分子化合物等があげられる。また、電子受容性化合物としては、フラーレンおよびフラーレン誘導体等があげられる。
【0234】
本発明の光電変換素子は、通常は支持基板上に形成される。支持基板としては有機光電変換素子としての特性を阻害しなければ材質は特に制限されないが、ガラス基板やフレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板も用いることができる。
【0235】
本発明の光電変換素子は、公知の方法、例えば、Synth.Met.,102,982(1999)に記載の方法やScience,270,1789(1995)に記載の方法により製造することができる。
【実施例】
【0236】
以下実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0237】
重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ−(GPC)(東ソー株式会社製:HLC−8220GPC)を用いて、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量として求めた。また、測定する試料は、約0.5wt%の濃度になるようにテトラヒドロフランに溶解させ、GPCに50μL注入する。更に、GPCの移動相としてはテトラヒドロフランを用い、0.5mL/minの流速で流した。重合体の構造分析はVarian社製300MHzNMRスペクトロメータ−を用いた、1H-NMR解析によって行った。また、測定は、20 mg/mLの濃度になるように試料を可溶な重溶媒に溶解させて行った。重合体の最高占有分子軌道(HOMO)の軌道エネルギーは重合体のイオン化ポテンシャルから求め、最低非占有分子軌道(LUMO)の軌道エネルギーはイオン化ポテンシャルおよびHOMOとLUMOのエネルギー差から求めた。イオン化ポテンシャルの測定には光電子分光装置(理研計器株式会社製:AC−2)を用いた。また、HOMOとLUMOのエネルギー差は紫外・可視・近赤外分光光度計(Varian社製:Cary5E)を用いて重合体の吸収スペクトルを測定し、その吸収末端より求めた。
【0238】
参考例1
2,7−ジブロモ−9,9−ビス(4−へキシルオキシ−3−エトキシカルボニルフェニル)−フルオレン(BSAFBr2)の合成
2,7−ジブロモ−9−フルオレノン(20.3g)、サリチル酸エチル(59.8g)、メルカプト酢酸(0.55g)を300mLフラスコに入れ、窒素置換した。メタンスルホン酸(250mL)を添加し、混合物を75℃で終夜撹拌した。混合物を放冷し、氷水に添加して1時間撹拌した。生じた固体をろ別し、温アセトニトリルで洗浄した。混合物をアセトンから再結晶することで、固体を得た。この固体(3.3g)、1−ブロモヘキサン(2.5g)、炭酸カリウム(3.5g)、18−クラウン−6(0.4g)をN、N−ジメチルホルムアミド(DMF)(35 mL)に溶解させ、溶液をフラスコへ移して105℃で終夜撹拌した。混合物を室温まで放冷し、氷水へ加え、1時間撹拌した。
生じた固体を回収し、エタノールより再結晶することで、2,7−ジブロモ−9,9−ビス(4−へキシルオキシ−3−エトキシカルボニルフェニル)−フルオレン(BSAFBr2)を得た。

BSAFBr2
【0239】
参考例2
ポリ(9,9−ビス(4−へキシルオキシ−3−エトキシカルボニルフェニル)−フルオレン)(BSAFP)の合成
BSAFBr2(2.0g)を200mLフラスコに入れ、窒素置換した。脱水テトラヒドロフラン(75mL)をシリンジにより添加し、混合物を55℃に昇温した。そこに、2,2’−ビピリジン(0.68g)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(1.2g)を添加し、55℃で5時間撹拌した。混合物を室温まで冷却した後、反応溶液をメタノール(200mL)、水(200mL)、15%アンモニア水(50mL)の混合液に滴下した。生じた沈殿物をろ過により収集し、減圧乾燥をした後、トルエンに再溶解させた。溶液をセライトを用いてろ過した後、ろ液をアルミナカラムに通液し、カラム処理液を減圧濃縮した。濃縮した溶液にメタノールを滴下し、生じた沈殿物をろ過により収集したのち減圧乾燥することで、式(A)で表される繰返し単位からなる白色のBSAFP(752mg)を得た。BSAFPの数平均分子量(Mn)は398000であり、重量平均分子量(Mw)は729000であり、分散(Mw/Mn)は1.83であった。

(A)
【0240】
実施例1
BSAFPリチウム塩(BSAFLi)の合成
BSAFP(160mg)を100mLフラスコに入れ、窒素置換した。テトラヒドロフラン(20mL)、エタノール(20mL)を添加し、混合物を55℃に昇温した。そこに、水酸化リチウム(100mg)を水(2mL)に溶かした水溶液を添加し、55℃で1時間撹拌した。反応系中に固体が析出した後、さらにメタノール(40mL)を添加してさらに2時間撹拌した。混合物を室温まで冷却した後、反応溶媒を減圧留去した。生じた固体を水で洗浄し、減圧乾燥させることで薄黄色の固体(150mg)を得た。NMRスペクトルにより、BSAFP内のエチルエステル部位のエチル基由来のシグナルが完全に消失していることを確認した。得られたBSAFPのリチウム塩を共役高分子化合物1とよぶ。共役高分子化合物1は式(B)で表される繰返し単位からなる。共役高分子化合物1のHOMOの軌道エネルギーは−5.78eV、LUMOの軌道エネルギーは−3.14eVであった。

(B)
【0241】
実施例2
BSAFPナトリウム塩(BSAFNa)の合成
BSAFP(200mg)を100mLフラスコに入れ、窒素置換した。テトラヒドロフラン(20mL)、エタノール(20mL)を添加し、混合物を55℃に昇温した。そこに、水酸化ナトリウム(200mg)を水(2mL)に溶かした水溶液を添加し、55℃で3時間撹拌した。混合物を室温まで冷却した後、反応溶媒を減圧留去した。生じた固体を水で洗浄し、減圧乾燥させることで薄黄色の固体(180mg)を得た。NMRスペクトルにより、BSAFP内のエチルエステル部位のエチル基由来のシグナルが完全に消失していることを確認した。得られたBSAFPのナトリウム塩を共役高分子化合物2とよぶ。共役高分子化合物2は式(C)で表される繰返し単位からなる。共役高分子化合物2のHOMOの軌道エネルギーは−5.67eV、LUMOの軌道エネルギーは−3.04eVであった。

(C)
【0242】
実施例3
BSAFPカリウム塩(BSAFK)の合成
BSAFP(150mg)を100mLフラスコに入れ、窒素置換した。テトラヒドロフラン(20mL)、エタノール(20mL)を添加し、混合物を55℃に昇温した。そこに、水酸化カリウム(200mg)を水(2mL)に溶かした水溶液を添加し、55℃で3時間撹拌した。混合物を室温まで冷却した後、反応溶媒を減圧留去した。生じた固体を水で洗浄し、減圧乾燥させることで薄黄色の固体(130mg)を得た。NMRスペクトルにより、BSAFP内のエチルエステル部位のエチル基由来のシグナルが完全に消失していることを確認した。得られたBSAFPのカリウム塩を共役高分子化合物3とよぶ。共役高分子化合物3は式(D)で表される繰返し単位からなる。共役高分子化合物3のHOMOの軌道エネルギーは−5.65eV、LUMOの軌道エネルギーは−3.02eVであった。

(D)
【0243】
実施例4
BSAFPセシウム塩(BSAFCs)の合成
BSAFP(100mg)を100mLフラスコに入れ、窒素置換した。テトラヒドロフラン(20mL)、エタノール(20mL)を添加し、混合物を55℃に昇温した。そこに、水酸化セシウム(200mg)を水(2mL)に溶かした水溶液を添加し、55℃で3時間撹拌した。混合物を室温まで冷却した後、反応溶媒を減圧留去した。生じた固体を水で洗浄し、減圧乾燥させることで薄黄色の固体(90mg)を得た。NMRスペクトルにより、BSAFP内のエチルエステル部位のエチル基由来のシグナルが完全に消失していることを確認した。得られたBSAFPのセシウム塩を共役高分子化合物4とよぶ。共役高分子化合物4は式(E)で表される繰返し単位からなる。共役高分子化合物4のHOMOの軌道エネルギーは−5.65eV、LUMOの軌道エネルギーは−3.11eVであった。
(E)
【0244】
実施例5
BSAFPテトラメチルアンモニウム塩(BSAFNMe4)の合成
BSAFP(100mg)を100mLフラスコに入れ、窒素置換した。テトラヒドロフラン(20mL)、エタノール(20mL)を添加し、混合物を55℃に昇温した。そこに、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(27.3mg)を水(2mL)に溶かした水溶液を添加し、55℃で3時間撹拌した。混合物を室温まで冷却した後、反応溶媒を減圧留去した。生じた固体を水で洗浄し、減圧乾燥させることで薄黄色の固体(90mg)を得た。NMRスペクトルにより、BSAFP内のエチルエステル部位のエチル基由来のシグナルが完全に消失し、代わりにテトラメチルアンモニウムイオンのシグナルが現れていることを確認した。得られたBSAFPのアンモニウム塩を共役高分子化合物5とよぶ。共役高分子化合物5は式(F)で表される繰返し単位からなる。共役高分子化合物5のHOMOの軌道エネルギーは−5.75eV、LUMOの軌道エネルギーは−2.89eVであった。

(F)
【0245】
実施例6
エチレングリコール鎖含有BSAFP(BSAF−EG)の合成
BSAFP(100mg)を100mLフラスコに入れ、窒素置換した。トリエチレングリコールモノメチルエーテル(20mL)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(20mL)、濃硫酸(1mL)を添加し、混合物を150℃に昇温2日間撹拌した。混合物を室温まで冷却した後、水(100mL)、メタノール(100mL)の混合液に滴下した。生じた沈殿物をろ過により収集し、減圧乾燥させることで薄黄色の固体(90mg)を得た。NMRスペクトルにより、BSAFP内のエチルエステル部位のエチル基由来のシグナルが完全に消失し、代わりにトリエチレングリコールメチルエステルのシグナルが現れていることを確認した。得られたエチレングリコール鎖含有BSAFPを共役高分子化合物6とよぶ。共役高分子化合物6は式(G)で表される繰返し単位からなる。共役高分子化合物6のHOMOの軌道エネルギーは−5.84eV、LUMOの軌道エネルギーは−3.18eVであった。
(G)
【0246】
参考例3
2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル-1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ビス(4−へキシルオキシ−3−エトキシカルボニルフェニル)−フルオレン(BSAFBE)の合成
窒素雰囲気下、BSAFBr2(100g)、ビス(ピナコラート)ジボロン(68.08g)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン錯体(5.97g)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(4.05g)、酢酸カリウム(71.75g)、ジオキサン(1300mL)を混合し、110℃に加熱し、10時間加熱還流した。放冷後、反応溶液をろ過し、ろ液を減圧濃縮した。反応混合物をトルエンに溶解させ、アセトニトリルに加えて再沈殿をし、生じた沈殿物を回収した。沈殿物をトルエンに溶解させ、溶液に活性炭を加えて攪拌した後ろ過を行い、ろ液を減圧濃縮した。さらに、アセトニトリルおよび水を加えて攪拌後ろ過を行い、ろ別した固体をトルエンに溶解させてアセトニトリルより再沈殿を行うことで、2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル-1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ビス(4−へキシルオキシ−3−エトキシカルボニルフェニル)−フルオレン(BSAFBE)(78.6g)を得た。


BSAFBE

【0247】
参考例4
フェニル基共重合体(重合体A(BSAF−Ph))の合成
不活性雰囲気下、1,4-ジブロモベンゼン(0.21g)、BSAFBE(0.80g)、トリフェニルホスフィンパラジウム(0.01g)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquat336(登録商標))(0.20g)、トルエン(10mL)を混合し、105℃に加熱した。この反応溶液に2M 炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液(5mL)を滴下し、10時間還流させた。反応後、この反応液を室温まで冷却し、メタノール120ml中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥し、テトラヒドロフラン20mlに溶解させた。この溶液をメタノール120ml、水50mLの混合溶媒中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥し、テトラヒドロフラン20mlに溶解させた。この溶液をアセトン120mlに滴下して30分攪拌した後、析出した沈殿をろ過して20時間減圧乾燥させた。得られたフェニル基共重合体(重合体A(BSAF−Ph))の収量は400mgであった。
重合体A(BSAF−Ph)のポリスチレン換算の数平均分子量は、1.2×104であった。仕込みから推定されるBSAF−Phに含まれる繰り返し単位は、式(H)で表される繰り返し単位である。

(H)
【0248】
実施例7
重合体A(BSAF-Ph)のセシウム塩(BSAFCs-Ph)の合成
重合体A(BSAF-Ph)(200mg)を100mLフラスコに入れ、窒素置換した。テトラヒドロフラン(20mL)、エタノール(5mL)を添加し、混合物を55℃に昇温した。そこに、水酸化セシウム(200mg)を水(1mL)に溶かした水溶液を添加し、55℃で3時間撹拌した。混合物を室温まで冷却した後、反応溶媒を減圧留去した。生じた固体を水で洗浄し、減圧乾燥させることで薄黄色の固体(190mg)を得た。NMRスペクトルにより、重合体A(BSAF−Ph)のエチルエステル部位のエチル基由来のシグナルが完全に消失していることを確認した。得られた重合体A(BSAF-Ph)のセシウム塩を共役高分子化合物7とよぶ。共役高分子化合物7は式(I)で表される繰り返し単位からなる。共役高分子化合物7のHOMOの軌道エネルギーは−5.78eV、LUMOの軌道エネルギーは−3.19eVであった。


(I)
【0249】
参考例5
ピラジン共重合体(9:1)(重合体B(BSAF-pyrazine(9:1)))の合成
不活性雰囲気下、BSAFBr(0.35g)、BSAFBE(0.5g)、2,5−ジブロモピラジン(0.03g)トリフェニルホスフィンパラジウム(0.002g)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquat336(登録商標))(0.20g)、トルエン(10mL)を混合し、105℃に加熱した。この反応溶液に2M Na2CO3水溶液(5mL)を滴下し、5時間還流させた。反応後、この反応液を室温まで冷却し、メタノール120ml中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥し、テトラヒドロフラン20mlに溶解させた。この溶液をメタノール120ml、水50mLの混合溶媒中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥し、テトラヒドロフラン20mlに溶解させた。この溶液をアセトン120mlに滴下して30分攪拌した後、析出した沈殿をろ過して20時間減圧乾燥させた。ピラジン共重合体(9:1)(重合体B(BSAF-pyrazine(9:1)))の収量は550mgであった。
重合体B(BSAF-pyrazine(9:1))のポリスチレン換算の数平均分子量は、4.5×104であった。重合体B(BSAF-pyrazine(9:1))は式(J)で表される。式(J)中、m:nは繰り返し単位のモル比を表す。

(J)
【0250】
実施例8
重合体B(BSAF-pyrazine(9:1))のナトリウム塩(BSAFNa-pyrazine(9:1))の合成
重合体B(BSAF-pyrazine(9:1))(200mg)を100mLフラスコに入れ、窒素置換した。テトラヒドロフラン(20mL)、エタノール(5mL)を添加し、混合物を55℃に昇温した。そこに、水酸化ナトリウム(120mg)を水(1mL)に溶かした水溶液を添加し、55℃で3時間撹拌した。混合物を室温まで冷却した後、反応溶媒を減圧留去した。生じた固体を水で洗浄し、減圧乾燥させることで薄黄色の固体(120mg)を得た。NMRスペクトルにより、重合体B(BSAF-pyrazine(9:1))のエチルエステル部位のエチル基由来のシグナルが完全に消失していることを確認した。得られた重合体B(BSAF-pyrazine(9:1))のナトリウム塩を共役高分子化合物8とよぶ。共役高分子化合物8は式(K)で表される。式(K)中、m:nは繰り返し単位のモル比を表す。共役高分子化合物8のHOMOの軌道エネルギーは−5.65eV、LUMOの軌道エネルギーは−3.14eVであった。


(K)
【0251】
参考例6
ピラジン共重合体(99:1)(重合体C(BSAF-pyrazine(99:1)))の合成
不活性雰囲気下、BSAFBr2(0.43g)、BSAFBE(0.5g)、2,5−ジブロモピラジン(0.003g)トリフェニルホスフィンパラジウム(0.002g)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquat336(登録商標))(0.20g)、トルエン(10mL)を混合し、105℃に加熱した。この反応溶液に2M Na2CO3水溶液(5mL)を滴下し、5時間還流させた。反応後、この反応液を室温まで冷却し、メタノール120ml中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥し、テトラヒドロフラン20mlに溶解させた。この溶液をメタノール120ml、水50mLの混合溶媒中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥し、テトラヒドロフラン20mlに溶解させた。この溶液をアセトン120mlに滴下して30分攪拌した後、析出した沈殿をろ過して20時間減圧乾燥させた。ピラジン共重合体(99:1)(重合体C(BSAF-pyrazine(99:1)))の収量は530mgであった。
重合体C(BSAF-pyrazine(99:1))のポリスチレン換算の数平均分子量は、6.8×104であった。重合体C(BSAF-pyrazine(99:1))は式(L)で表される。式(L)中、m:nは繰り返し単位のモル比を表す。

(L)
【0252】
実施例9
重合体C(BSAF-pyrazine(99:1))のナトリウム塩(BSAFNa-pyrazine(99:1))の合成
重合体C(BSAF-pyrazine(99:1))(200mg)を100mLフラスコに入れ、窒素置換した。テトラヒドロフラン(20mL)、エタノール(5mL)を添加し、混合物を55℃に昇温した。そこに、水酸化ナトリウム(120mg)を水(1mL)に溶かした水溶液を添加し、55℃で3時間撹拌した。混合物を室温まで冷却した後、反応溶媒を減圧留去した。生じた固体を水で洗浄し、減圧乾燥させることで薄黄色の固体(150mg)を得た。NMRスペクトルにより、重合体C(BSAF-pyrazine(99:1))のエチルエステル部位のエチル基由来のシグナルが完全に消失していることを確認した。得られた重合体C(BSAF-pyrazine(99:1))のナトリウム塩を共役高分子化合物9とよぶ。共役高分子化合物9は式(M)で表される。式(M)中、m:nは繰り返し単位のモル比を表す。共役高分子化合物9のHOMOの軌道エネルギーは−5.58eV、LUMOの軌道エネルギーは−2.99eVであった。

(M)
【0253】
参考例7
N,N−ビス(4−ブロモフェニル)−N’,N'−ビス(4−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(芳香族アミンA)の合成
不活性雰囲気下、300mL三つ口フラスコにトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.24g(0.27mmol)、ジフェニルホスフィノフェロセン0.22g(0.4mmol)、ナトリウムターシャルブトキシド2.56g(26.7mmol)、およびトルエン125mLを入れ、室温で10分間撹拌した。続いて、トリス−(4−ブロモフェニル)アミン 12.9g(26.7mmol)を入れ、さらに室温で10分間撹拌した。その後、ビス(4−ブチルフェニル)アミン 5g(17.8mmol)を入れ、125℃まで昇温、9時間還流させた。反応終了後、反応液をろ過して不溶物を除去後、シリカゲルのショートカラムを通し,さらにシクロヘキサンを展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製することにより、N,N−ビス(4−ブロモフェニル)−N’,N'−ビス(4−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(芳香族アミンA)(2.96g、収率24%)を得た。
芳香族アミンA
【0254】
参考例8
芳香族アミンA共重合体(重合体D(BSAF-芳香族アミンA))の合成
芳香族アミンA(0.21g)、BSAFBr 0.38gおよび2,2’−ビピリジル 390mgを脱水したテトラヒドロフラン28mlに溶解した後、窒素雰囲気下において、この溶液に、ビス(1、5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)690mgを加え、60℃まで昇温し、3時間反応させた。反応後、この反応液を室温まで冷却し、25%アンモニア水10ml/メタノール120ml/イオン交換水50ml混合溶液中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥し、トルエン50mlに溶解させた。この溶液に1Nの塩酸30mlを加えて室温で3時間撹拌し、水層を除去後、4%アンモニア水30mlを加えて室温で3時間撹拌、水層を除去した。残ったトルエン溶液をメタノール150mlにて気化することにより再沈殿させ、不溶物をろ過して除去した。その後、再びトルエンに溶かしてアルミナカラム(活性アルミナ10g)を通して精製を行い、回収したトルエン溶液をメタノール200mlに滴下して30分間攪拌し、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥させた。得られた芳香族アミンA共重合体(重合体D(BSAF-芳香族アミンA))の収量は300mgであった。
重合体D(BSAF-芳香族アミンA)のポリスチレン換算の数平均分子量は、4.8×104であった。重合体D(BSAF-芳香族アミンA)は式(N)で表される。式(N)中、m:nは繰り返し単位のモル比を表す。
(N)
【0255】
実施例10
重合体D(BSAF-芳香族アミンA)のセシウム塩(BSAFCs-芳香族アミンA)の合成
重合体D(BSAF-芳香族アミンA)(200mg)を100mLフラスコに入れ、窒素置換した。テトラヒドロフラン(20mL)、エタノール(10mL)を添加し、混合物を55℃に昇温した。そこに、水酸化セシウム(200mg)を水(2mL)に溶かした水溶液を添加し、55℃で3時間撹拌した。混合物を室温まで冷却した後、反応溶媒を減圧留去した。生じた固体を水で洗浄し、減圧乾燥させることで薄黄色の固体(190mg)を得た。NMRスペクトルにより、重合体D(BSAF-芳香族アミンA)のエチルエステル部位のエチル基由来のシグナルが完全に消失していることを確認した。得られた重合体D(BSAF-芳香族アミンA)のセシウム塩を共役高分子化合物10とよぶ。共役高分子化合物10は式(O)で表される。式(O)中、m:nは繰り返し単位のモル比を表す。共役高分子化合物10のHOMOの軌道エネルギーは−5.63eV、LUMOの軌道エネルギーは−3.02eVであった。

(O)
【0256】
参考例9
芳香族アミンB共重合体(重合体E(BSAF-芳香族アミンB))の合成
不活性雰囲気下、BSAFBr(0.41g)、BSAFBE(0.5g)、N,N’-ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−t−ブチル-2,6−ジメチルフェニル)1,4−フェニレンジアミン(0.11g)トリフェニルホスフィンパラジウム(0.002g)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquat336(登録商標))(0.20g)、トルエン(10mL)を混合し、105℃に加熱した。この反応溶液に2M Na2CO3水溶液(5mL)を滴下し、8時間還流させた。反応後、この反応液を室温まで冷却し、メタノール120ml中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥し、テトラヒドロフラン20mlに溶解させた。この溶液をメタノール120ml、水50mLの混合溶媒中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥し、テトラヒドロフラン20mlに溶解させた。この溶液をアセトン120mlに滴下して30分攪拌した後、析出した沈殿をろ過して20時間減圧乾燥させた。得られた芳香族アミンB共重合体(重合体E(BSAF-芳香族アミンB))の収量は400mgであった。
重合体E(BSAF-芳香族アミンB)のポリスチレン換算の数平均分子量は、3.6×10であった。重合体E(BSAF-芳香族アミンB)は式(P)で表される。式(P)中、m:nは繰り返し単位のモル比を表す。


(P)
なお、N,N’-ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−t−ブチル-2,6−ジメチルフェニル)1,4−フェニレンジアミンは、例えば、特開2008−74917号公報の合成例1に記載されている方法で合成することができる。
【0257】
実施例11
重合体E(BSAF-芳香族アミンB)のセシウム塩(BSAFCs-芳香族アミンB)の合成
重合体E(BSAF-芳香族アミンB)(200mg)を100mLフラスコに入れ、窒素置換した。テトラヒドロフラン(20mL)、エタノール(5mL)を添加し、混合物を55℃に昇温した。そこに、水酸化セシウム(200mg)を水(1mL)に溶かした水溶液を添加し、55℃で3時間撹拌した。混合物を室温まで冷却した後、反応溶媒を減圧留去した。生じた固体を水で洗浄し、減圧乾燥させることで薄黄色の固体(160mg)を得た。NMRスペクトルにより、重合体E(BSAF-芳香族アミンB)のエチルエステル部位のエチル基由来のシグナルが完全に消失していることを確認した。得られた重合体E(BSAF-芳香族アミンB)のセシウム塩を共役高分子化合物11とよぶ。共役高分子化合物11は式(Q)で表される。式(Q)中、m:nは繰り返し単位のモル比を表す。共役高分子化合物11のHOMOの軌道エネルギーは−5.21eV、LUMOの軌道エネルギーは−2.62eVであった。

(Q)
【0258】
参考例10
アミノ基含有フルオレンポリマー(重合体F(BSAF-FN))の合成
不活性雰囲気下、BSAFBr(0.41g)、BSAFBE(0.5g)、2,7−ジブロモ−9,9−ビス(4−N,N-ジエチルアミノフェニル)−フルオレン、(0.08g)トリフェニルホスフィンパラジウム(0.002g)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquat336(登録商標))(0.20g)、トルエン(10mL)を混合し、105℃に加熱した。この反応溶液に2M Na2CO3水溶液(5mL)を滴下し、7時間還流させた。反応後、この反応液を室温まで冷却し、メタノール120ml中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥し、テトラヒドロフラン20mlに溶解させた。この溶液をメタノール120ml、水50mLの混合溶媒中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥し、テトラヒドロフラン20mlに溶解させた。この溶液をアセトン120mlに滴下して30分攪拌した後、析出した沈殿をろ過して20時間減圧乾燥させた。得られたアミノ基含有フルオレンポリマー(重合体F(BSAF-FN))の収量は430mgであった。
重合体F(BSAF-FN)のポリスチレン換算の数平均分子量は、1.2×104であった。
重合体F(BSAF-FN)は式(R)で表される。式(R)中、m:nは繰り返し単位のモル比を表す。


(R)
なお、2,7−ジブロモ−9,9−ビス(4−N,N-ジエチルアミノフェニル)−フルオレンは例えば、ポリマー(Polymer)第49巻、218頁(2008年)に記載されている方法で合成することができる。
【0259】
実施例12
重合体F(BSAF-FN)のセシウム塩(BSAFCs−FN)の合成
重合体F(BSAF-FN)(200mg)を100mLフラスコに入れ、窒素置換した。テトラヒドロフラン(20mL)、エタノール(5mL)を添加し、混合物を55℃に昇温した。そこに、水酸化セシウム(200mg)を水(1mL)に溶かした水溶液を添加し、55℃で3時間撹拌した。混合物を室温まで冷却した後、反応溶媒を減圧留去した。生じた固体を水で洗浄し、減圧乾燥させることで薄黄色の固体(180mg)を得た。NMRスペクトルにより、重合体F(BSAF-FN)のエチルエステル部位のエチル基由来のシグナルが完全に消失していることを確認した。得られた重合体F(BSAF-FN)のセシウム塩を共役高分子化合物12とよぶ。共役高分子化合物12は式(S)で表される。式(S)中、m:nは繰り返し単位のモル比を表す。共役高分子化合物12のHOMOの軌道エネルギーは−5.53eV、LUMOの軌道エネルギーは−2.76eVであった。

(S)
【0260】
参考例11
2,7−ジブロモ−9,9−ビス[3,4−ビス[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]フェニル]フルオレン(FEGBr2)の合成
不活性雰囲気下、2,7−ジブロモフルオレノン(50g)およびカテコール(345g)を混合し、130に昇温した。3-メルカプトプロピオン酸(1.96g)および硫酸(7g)を添加し、130度で1.5時間反応させた。放冷後、水(2L)に投入し、析出した結晶をろ過により回収した。結晶をエタノールに溶解させ、ろ過をした後、ろ液を濃縮し、濃縮液を水に加えて再沈殿を行った。生じた固体をろ過により回収し、トルエンに溶解させ、ろ過をした後、エタノールを加え、溶液をヘキサンに滴下し、5℃に冷却した。生じた固体をろ過により回収し、減圧乾燥することで白色固体を得た。不活性雰囲気下、白色固体20g、トリエチレングリコールモノメチルエステルトシラート(72g)、無水炭酸カリウム(52g)、アセトニトリル(500mL)を混合し、加熱還流下、4時間攪拌させた。放冷後、反応溶液をろ過し、ろ液を減圧濃縮した。反応混合物を酢酸エチルを展開溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィー、さらにTHFおよび酢酸エチルの混合溶媒を展開溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィーにより精製することで、2,7−ジブロモ−9,9−ビス[3,4−ビス[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]フェニル]フルオレン(FEGBr)(18g、収率43.2%)を得た。

FEGBr
【0261】
参考例12
エチレングリコール鎖含有フルオレン共重合体(重合体G(BSAF−FEG))
不活性雰囲気下、FEGBr2(0.80g)、BSAFBE(0.98g)、トリフェニルホスフィンパラジウム(0.01g)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquat336(登録商標))(0.20g)、トルエン(10mL)を混合し、105℃に加熱した。この反応溶液に2M Na2CO3水溶液(5mL)を滴下し、10時間還流させた。反応後、この反応液を室温まで冷却し、メタノール120ml中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥し、テトラヒドロフラン20mlに溶解させた。この溶液をメタノール120ml、水50mLの混合溶媒中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥し、テトラヒドロフラン20mlに溶解させた。この溶液をアセトン120mlに滴下して30分攪拌した後、析出した沈殿をろ過して20時間減圧乾燥させた。得られたエチレングリコール鎖含有フルオレン共重合体(重合体G(BSAF−FEG))の収量は920mgであった。
BSAF−FEGのポリスチレン換算の数平均分子量は、1.2×104であった。重合体G(BSAF−FEG)は式(T)で表される繰り返し単位からなる。


(T)
【0262】
実施例13
重合体G(BSAF−FEG)のセシウム塩(BSAFCs−FEG)の合成
重合体G(BSAFCs−FEG)(200mg)を100mLフラスコに入れ、窒素置換した。
テトラヒドロフラン(20mL)、エタノール(5mL)を添加し、混合物を55℃に昇温した。そこに、水酸化セシウム(200mg)を水(1mL)に溶かした水溶液を添加し、55℃で3時間撹拌した。混合物を室温まで冷却した後、反応溶媒を減圧留去した。生じた固体を水で洗浄し、減圧乾燥させることで薄黄色の固体(170mg)を得た。NMRスペクトルにより、重合体G(BSAFCs−FEG)のエチルエステル部位のエチル基由来のシグナルが完全に消失していることを確認した。得られた重合体G(BSAFCs−FEG)のセシウム塩を共役高分子化合物13とよぶ。共役高分子化合物13は式(U)で表される繰り返し単位からなる。共役高分子化合物13のHOMOの軌道エネルギーは−5.52eV、LUMOの軌道エネルギーは−2.91eVであった。

(U)
【0263】
参考例13
(2,7−ジブロモ)-9H−フルオレン-9,9-ジプロピオン酸ジブチルエステル(F2COOBuBr2)の合成
2,7−ジブロモフルオレン(8.02g)およびベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(0.56g)を30mLのベンゼンに溶解させた後、窒素雰囲気下において50%水酸化ナトリウム水溶液8mLを滴下し、15分攪拌した。N-ブチルアクリレート(12.65g)を滴下し、室温で5時間反応させた。反応溶液を酢酸エチル200mLに希釈し、水で3回、塩水で1回洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥させた。溶液をろ過し、溶媒留去した後、ジクロロメタンを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらにヘキサンから再結晶を行うことで(2,7−ジブロモ)-9H−フルオレン-9,9-ジプロピオン酸(F2COOBuBr2)(7.87g、55%)を得た。
F2COOBuBr
【0264】
参考例14
カルボン酸基含有フルオレンポリマー(重合体H(F8−F2COOBu))の合成
不活性雰囲気下、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン(1.00g)、F2COOBuBr2(1.09g)、トリフェニルホスフィンパラジウム(0.03g)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquat336(登録商標))(0.20g,アルドリッチ製)、トルエン(20mL)を混合し、105℃に加熱した。この反応溶液に2M Na2CO3水溶液(5mL)を滴下し、4時間還流させた。反応後、この反応液を室温まで冷却し、メタノール120ml中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥し、テトラヒドロフラン20mlに溶解させた。この溶液をメタノール120ml、水50mLの混合溶媒中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥し、テトラヒドロフラン20mlに溶解させた。この溶液をアセトン120mlに滴下して30分攪拌した後、析出した沈殿をろ過して20時間減圧乾燥させた。得られたカルボン酸基含有フルオレンポリマー(重合体H(F8−F2COOBu))の収量は300mgであった。
重合体H(F8−F2COOBu) のポリスチレン換算の数平均分子量は、3.5×104であった。重合体H(F8−F2COOBu)は式(V)で表される繰り返し単位からなる。

(V)
【0265】
実施例14
カルボン酸基含有フルオレンポリマーナトリウム塩(F8−F2COONa)の合成
重合体H(F8−F2COOBu)(200mg)を100mLフラスコに入れ、窒素置換した。
テトラヒドロフラン(20mL)、エタノール(5mL)を添加し、混合物を55℃に昇温した。そこに、水酸化ナトリウム(120mg)を水(1mL)に溶かした水溶液を添加し、55℃で3時間撹拌した。混合物を室温まで冷却した後、反応溶媒を減圧留去した。
生じた固体を水で洗浄し、減圧乾燥させることで薄黄色の固体(120mg)を得た。NMRスペクトルにより、重合体H(F8−F2COOBu)のブチルエステル部位のブチル基由来のシグナルが完全に消失していることを確認した。得られた重合体H(F8−F2COOBu)のナトリウム塩を共役高分子化合物14とよぶ。共役高分子化合物14は式(W)で表される繰返し単位からなる。共役高分子化合物14のHOMOの軌道エネルギーは−5.56eV、LUMOの軌道エネルギーは−2.75eVであった。

(W)
【0266】
参考例15
カルボン酸基含有フェニレンポリマー(重合体I(F8-PhCOOMe))の合成
不活性雰囲気下、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン(1.00g)、2,5−ジブロモ安息香酸メチル(アルドリッチ製)(0.52g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.01g)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquat336(登録商標))(0.20g,アルドリッチ製)、トルエン(20mL)を混合し、105℃に加熱した。この反応溶液に2M Na2CO3水溶液(5mL)を滴下し、4時間還流させた。反応後、この反応液を室温まで冷却し、メタノール120ml中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥し、テトラヒドロフラン20mlに溶解させた。この溶液をメタノール120ml、水50mLの混合溶媒中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥し、テトラヒドロフラン20mlに溶解させた。この溶液をアセトン120mlに滴下して30分攪拌した後、析出した沈殿をろ過して20時間減圧乾燥させた。得られたカルボン酸基含有フェニレンポリマー(重合体I(F8-PhCOOMe))の収量は300mgであった。
重合体I(F8-PhCOOMe)のポリスチレン換算の数平均分子量は、3.5×104であった。重合体I(F8-PhCOOMe)は式(X)で表される繰り返し単位からなる。
(X)
【0267】
実施例15
カルボン酸基含有フェニレンポリマーセシウム塩(F8−PhCOOCs)の合成
重合体I(F8-PhCOOMe)(160mg)を100mLフラスコに入れ、窒素置換した。
テトラヒドロフラン(20mL)、エタノール(5mL)を添加し、混合物を55℃に昇温した。そこに、水酸化セシウム(120mg)を水(1mL)に溶かした水溶液を添加し、55℃で3時間撹拌した。混合物を室温まで冷却した後、反応溶媒を減圧留去した。生じた固体を水で洗浄し、減圧乾燥させることで薄黄色の固体(110mg)を得た。NMRスペクトルにより、重合体I(F8-PhCOOMe)のメチルエステル部位のメチル基由来のシグナルが完全に消失していることを確認した。得られた重合体I(F8-PhCOOMe)のナトリウム塩を共役高分子化合物15とよぶ。共役高分子化合物15は式(Y)で表される繰返し単位からなる。共役高分子化合物15のHOMOの軌道エネルギーは−5.72eV、LUMOの軌道エネルギーは−2.93eVであった。
(Y)
【0268】
参考例16
ポリウレタンナトリウム塩(非共役イオ−Na)の合成
1,3−ブタンジオール(1.0g)、ジブチルスズジラウレート(7.5mg)、ジメチルオールプロピオン酸(0.5g)を100mLフラスコに入れ、DMF(50mL)を添加し、90℃で30分間撹拌した。イソホロンジイソシアネート(3.3g)を加え、90℃で3時間加熱した。60℃まで温度を下げ、1M水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和した。60℃でさらに1時間撹拌した後、溶媒を留去することで白色の固体(2.0g)を得た。得られたポリウレタンナトリウム塩を非共役高分子化合物1とよぶ。非共役高分子化合物1は式(Z)で表される繰返し単位からなる。

(Z)
【0269】
実施例16
<電界発光素子>
【0270】
陽極としてITOが成膜パターニングされたガラス基板のITO陽極上に、正孔注入材料溶液を塗布し、スピンコート法によって膜厚が60nmになる様に正孔注入層を成膜した。
成膜されたガラス基板を空気中で、200℃で10分加熱して正孔注入層を不溶化させ、基板を室温まで自然冷却させ、正孔注入層を得た。
ここで正孔注入材料溶液には、スタルクヴイテック社製PEDOT:PSS溶液(ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルフォン酸、「製品名:Baytron」)を用いた。
【0271】
次に、正孔輸送性高分子材料とキシレンとを混合し、正孔輸送性高分子材料が0.7重量%の正孔輸送層形成用組成物を得た。正孔輸送高分子材料としては、以下の方法で合成した。
還流冷却器及びオーバーヘッドスターラを装備した1リットルの三つ口丸底フラスコに、2,7−ビス(1,3,2−ジオキシボロール)−9,9−ジ(1−オクチル)フルオレン(3.863g、7.283mmol)、N,N−ジ(p−ブロモフェニル)−N−(4−(ブタン−2−イル)フェニル)アミン(3.177g、6.919mmol)及びジ(4−ブロモフェニル)ベンゾシクロブタンアミン(156.3mg、0.364mmol)を添加した。次いで、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquat336(登録商標))(2.29g)、続いてトルエン50mLを添加した。PdCl(PPh触媒(4.9mg)を添加した後、混合物を、105℃の油浴中で15分間撹拌した。炭酸ナトリウム水溶液(2.0M、14mL)を添加し、反応物を105℃の油浴中、16.5時間撹拌した。次いで、フェニルボロン酸(0.5g)を添加し、反応物を7時間撹拌した。水層を除去し、有機層を水50mLで洗浄した。有機層を反応フラスコに戻し、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.75g及び水50mLを添加した。反応物を85℃の油浴中、16時間撹拌した。水層を除去し、有機層を100mLの水で3回洗浄し、次いでシリカゲル及び塩基性アルミナのカラムに通した。次いで、ポリマーを含むトルエン溶液をメタノールに沈殿させる操作を2回繰り返し、ポリマーを60℃で真空乾燥し、正孔輸送性高分子4.2gを得た。正孔輸送性高分子材料のポリスチレン換算の重量平均分子量は124,000であり、分散(Mw/Mn)は2.8であった。
上記で得た正孔注入層形成済み基板の正孔注入層の上に、正孔輸送層形成用組成物をスピンコート法により塗布し、膜厚20nmの塗膜を得た。
この塗膜を設けた基板を不活性(窒素)雰囲気下で、190℃で20分間加熱し、塗膜を不溶化させた後、室温まで自然冷却させ、正孔輸送層を得た。
【0272】
次に、発光高分子材料(サメイション社製「BP361」)とキシレンとを混合し、発光高分子材料が1.4重量%の発光層形成用組成物を得た。
上記で得た正孔輸送層形成済み基板の正孔輸送層の上に、発光層形成用組成物をスピンコート法により塗布し、膜厚80nmの塗膜を得た。
この塗膜を設けた基板を不活性(窒素)雰囲気下で、130℃で20分間加熱し、溶媒を蒸発させた後、室温まで自然冷却させ、発光層を得た。
【0273】
メタノールとテトラヒドロフランとを体積比9:1で混合した溶媒(溶解度パラメータ12.5)と共役高分子化合物1とを混合し、共役高分子化合物1が0.2重量%の組成物を得た。
上記で得た発光層形成済み基板の発光層の上に、前記組成物をスピンコート法により塗布し、膜厚10nmの塗膜を得た。
この塗膜を設けた基板を不活性(窒素)雰囲気下で、100℃で10分間加熱し、溶媒を蒸発させた後、室温まで自然冷却させ、共役高分子化合物2を含む層を得た。
【0274】
上記で得た共役高分子化合物1を含む層を形成した基板を真空装置内に挿入し、真空蒸着法によってAlを80nm成膜し、陰極を形成し、積層構造体1を製造した。
【0275】
上記で得た陰極形成済み基板を真空装置より取り出し、不活性(窒素)雰囲気下で、封止ガラスと2液混合型エポキシ樹脂にて封止し、電界発光素子1とした。
【0276】
実施例17
共役高分子化合物1の代わりに、共役高分子化合物2を用いた以外は、実施例16と同様に操作し、電界発光素子2を得た。
【0277】
実施例18
共役高分子化合物1の代わりに、共役高分子化合物3を用いた以外は、実施例16と同様に操作し、電界発光素子3を得た。
【0278】
実施例19
共役高分子化合物1の代わりに、共役高分子化合物4を用いた以外は、実施例16と同様に操作し、電界発光素子4を得た。
【0279】
実施例20
共役高分子化合物1の代わりに、共役高分子化合物5を用いた以外は、実施例16と同様に操作し、電界発光素子5を得た。
【0280】
実施例21
共役高分子化合物を含む層の形成以外は、実施例16と同様に操作し、電界発光素子6を得た。共役高分子化合物を含む層は、メタノールとテトラヒドロフランとを体積比1:1で混合した溶媒(溶解度パラメータ11.0)と共役高分子化合物6とを混合し、共役高分子化合物6が0.2重量%の組成物を得、発光層形成した基板の発光層の上に、該組成物をスピンコート法により塗布することにより、膜厚10nmの層を形成した。
【0281】
実施例22
共役高分子化合物1の代わりに、共役高分子化合物7を用いた以外は、実施例16と同様に操作し、電界発光素子7を得た。
【0282】
実施例23
共役高分子化合物1の代わりに、共役高分子化合物8を用いた以外は、実施例16と同様に操作し、電界発光素子8を得た。
【0283】
実施例24
共役高分子化合物1の代わりに、共役高分子化合物9を用いた以外は、実施例16と同様に操作し、電界発光素子9を得た。
【0284】
実施例25
共役高分子化合物1の代わりに、共役高分子化合物10を用いた以外は、実施例16と同様に操作し、電界発光素子10を得た。
【0285】
実施例26
共役高分子化合物1の代わりに、共役高分子化合物11を用いた以外は、実施例16と同様に操作し、電界発光素子11を得た。
【0286】
実施例27
共役高分子化合物1の代わりに、共役高分子化合物12を用いた以外は、実施例16と同様に操作し、電界発光素子12を得た。
【0287】
実施例28
共役高分子化合物1の代わりに、共役高分子化合物13を用いた以外は、実施例16と同様に操作し、電界発光素子13を得た。
【0288】
実施例29
共役高分子化合物1の代わりに、共役高分子化合物14を用いた以外は、実施例16と同様に操作し、電界発光素子14を得た。
【0289】
実施例30
共役高分子化合物1の代わりに、共役高分子化合物15を用いた以外は、実施例16と同様に操作し、電界発光素子15を得た。
【0290】
比較例1
共役高分子化合物1を含む層を形成しなかった以外は、実施例16と同様に操作し、電界発光素子16を得た。
【0291】
比較例2
共役高分子化合物1の代わりに、非共役高分子化合物1を用いた以外は、実施例16と同様に操作し、電界発光素子17を得た。
【0292】
上記で得られた電界発光素子1〜17に、10Vの順方向電圧を印加し、発光輝度と発光効率を測定した。結果を表1に示す。
【0293】
【表1】
【0294】
表から明らかなように、本発明の積層構造体を含む電界発光素子は、前記積層構造体を含まない電界発光素子に比べ、発光輝度が顕著に優れる。