特許第5790866号(P5790866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5790866-接着層、層及び組成物 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5790866
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】接着層、層及び組成物
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20150917BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20150917BHJP
【FI】
   H01M10/0585
   H01M4/13
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-501361(P2014-501361)
(86)(22)【出願日】2013年7月16日
(86)【国際出願番号】JP2013069719
(87)【国際公開番号】WO2014014118
(87)【国際公開日】20140123
【審査請求日】2014年1月15日
(31)【優先権主張番号】特願2012-159299(P2012-159299)
(32)【優先日】2012年7月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】緒方 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】村上 力
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−241172(JP,A)
【文献】 特開2005−060485(JP,A)
【文献】 特開2002−015773(JP,A)
【文献】 特開2003−151638(JP,A)
【文献】 特開2003−163033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05− 10/0587
H01M 4/00− 4/62
C09J 123/00−123/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池用セパレータと二次電池用電極との間に配置される接着層であって、
前記接着層は炭素数2〜4のα−オレフィンに由来する構造単位を有する樹脂を含む層を圧着して得られ、
前記炭素数2〜4のα−オレフィンに由来する構造単位を有する樹脂が、炭素数2〜4のα−オレフィンに由来する構造単位と、脂肪酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酸性基含有ビニルモノマー、芳香族ビニルモノマー、ジエン及びアクリロニトリルからなる群から選ばれる少なくとも一種に由来する構造単位とを有する樹脂、又は、炭素数2〜4のα−オレフィンに由来する構造単位のみを有する樹脂であり、
前記接着層における前記樹脂の占有面積が10〜80%であり、
ノニオン系界面活性剤を含む接着層。
【請求項2】
接着層に含まれる炭素数2〜4のα−オレフィンに由来する構造単位を有する樹脂の量が0.001〜1g/mである請求項1に記載の接着層。
【請求項3】
炭素数2〜4のα−オレフィンに由来する構造単位を有する樹脂の最低造膜温度が40〜150℃である請求項1又は2に記載の接着層。
【請求項4】
二次電池用セパレータと二次電池用電極とを接着するための層であって、
前記層は炭素数2〜4のα−オレフィンに由来する構造単位を有する樹脂と、ノニオン系界面活性剤とを含み、
前記炭素数2〜4のα−オレフィンに由来する構造単位を有する樹脂が、炭素数2〜4のα−オレフィンに由来する構造単位と、脂肪酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酸性基含有ビニルモノマー、芳香族ビニルモノマー、ジエン及びアクリロニトリルからなる群から選ばれる少なくとも一種に由来する構造単位とを有する樹脂、又は、炭素数2〜4のα−オレフィンに由来する構造単位のみを有する樹脂であり、
前記層における前記樹脂の占有面積が10〜80%である層。
【請求項5】
層に含まれる炭素数2〜4のα−オレフィンに由来する構造単位を有する樹脂の量が0.001〜1g/mである請求項4に記載の層。
【請求項6】
炭素数2〜4のα−オレフィンに由来する構造単位を有する樹脂の最低造膜温度が40〜150℃である請求項4又は5に記載の層。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれかに記載の層と、二次電池用セパレータ又は二次電池用電極とを含む積層体。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれかに記載の接着層、二次電池用セパレータ、及び、二次電池用電極を含む二次電池用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着層、層及び組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池用部材として、接着層を介することなく電極とセパレータとを積層させた部材が知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】芳尾真幸/小沢昭弥編「リチウムイオン二次電池第二版−材料と応用−」、日刊工業新聞社、2001年8月、p.173−177
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の上記二次電池用部材は、電極とセパレータとの間にずれが生じやすく、電池組立時の作業性の点で、必ずしも十分に満足できるものではない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の発明を含む。
[1] 二次電池用セパレータと二次電池用電極との間に配置される接着層であって、
前記接着層は炭素数2〜4のα−オレフィンに由来する構造単位を有する樹脂を含む層を圧着して得られ、
前記接着層における前記樹脂の占有面積が10〜80%である接着層。
[2] 接着層に含まれる炭素数2〜4のα−オレフィンに由来する構造単位を有する樹脂の量が0.001〜1g/mである[1]に記載の接着層。
[3] 炭素数2〜4のα−オレフィンに由来する構造単位を有する樹脂の最低造膜温度が40〜150℃である[1]又は[2]に記載の接着層。
[4] さらにノニオン系界面活性剤を含む[1]〜[3]のいずれかに記載の接着層。
[5] 二次電池用セパレータと二次電池用電極とを接着するための層であって、
前記層は炭素数2〜4のα−オレフィンに由来する構造単位を有する樹脂を含み、
前記層における前記樹脂の占有面積が10〜80%である層。
[6] 層に含まれる炭素数2〜4のα−オレフィンに由来する構造単位を有する樹脂の量が0.001〜1g/mである[5]に記載の層。
[7] 炭素数2〜4のα−オレフィンに由来する構造単位を有する樹脂の最低造膜温度が40〜150℃である[5]又は[6]に記載の層。
[8] さらにノニオン系界面活性剤を含む[5]〜[7]のいずれかに記載の層。
[9] 二次電池用セパレータと二次電池用電極とを接着させるための組成物であって、
炭素数2〜4のα−オレフィンに由来する構造単位を有する樹脂、沸点が100〜300℃の有機溶剤及び水を含有する組成物。
[10] さらに界面活性剤を含む[9]に記載の組成物。
[11] さらに沸点が100℃未満のアルコールを含む[9]又は[10]に記載の組成物。
[12] 組成物がエマルションである[9]〜[11]のいずれかに記載の組成物。
[13] エマルションに含まれる分散質の数平均粒子径が0.3〜2μmである[12]に記載の組成物。
[14] エマルションに含まれる分散質の粒径標準偏差が0.5以下である[12]又は[13]に記載の組成物。
[15] エマルションに含まれる分散質全量に対する、粒子径0.6μm未満の分散質の数が10%未満である[12]〜[14]のいずれかに記載の組成物。
[16] 固形分比率が0.001〜50質量%である[9]〜[15]のいずれかに記載の組成物。
[17] 二次電池用セパレータと二次電池用電極との間に配置される接着層であって、[9]〜[16]のいずれかに記載の組成物から形成される接着層。
[18] 二次電池用セパレータと二次電池用電極との間に配置される接着層を形成するための層であって、[9]〜[16]のいずれかに記載の組成物から形成される層。
[19] [5]〜[8]のいずれかに記載の層と、二次電池用セパレータ又は二次電池用電極とを含む積層体。
[20] [9]〜[16]のいずれかに記載の組成物を、二次電池用セパレータ又は二次電池用電極に塗布する工程を含む積層体の製造方法。
[21] [1]〜[4]のいずれかに記載の接着層、二次電池用セパレータ、及び、二次電池用電極を含む二次電池用部材。
[22] (a)[9]〜[16]のいずれかに記載の組成物を、二次電池用セパレータに塗布する工程
(b)塗布された組成物を乾燥して、層と二次電池用セパレータとを含む積層体を得る工程、並びに、
(c)前記層と二次電池用電極とを圧着させる工程
を含む、二次電池用セパレータ、接着層及び二次電池用電極を、この順に有する二次電池用部材の製造方法。
[23] (a)[9]〜[16]のいずれかに記載の組成物を、二次電池用電極に塗布する工程
(b)塗布された組成物を乾燥して、層と二次電池用電極とを含む積層体を得る工程、並びに、
(c)前記積層体と二次電池用セパレータとを圧着させる工程
を含む、二次電池用電極、接着層及び二次電池用セパレータを、この順に有する二次電池用部材の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の接着層によれば、二次電池部材に含まれる二次電池用セパレータと二次電池用電極とを十分な強度で接着させることができ、二次電池組立時の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】積層体の断面構造を示す概略図である。
図2】二次電池用部材の断面構造を示す概略図である。
図3】二次電池用部材の断面構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<接着層>
本発明の接着層(本明細書中「本接着層」と記載することがある)とは、二次電池用セパレータ(本明細書中「セパレータ」と記載することがある)と二次電池用電極(本明細書中「電極」と記載することがある)との間に配置されるものであり、炭素数2〜4のα−オレフィンに由来する構造単位を有する樹脂(本明細書中「樹脂A」と記載することがある)を含む層を圧着して得られるものであり、本接着層における樹脂Aの占有面積が10〜80%であるものである。かかる接着層は、セパレータと電極とを接着するものである。
(セパレータ)
セパレータは、通常、微細孔を有する。セパレータとしては、例えば、ビスコースレーヨン、天然セルロース等の抄紙;セルロース、ポリエステル等の繊維を抄紙して得られる混抄紙;電解紙;クラフト紙;マニラ紙;ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリエステル不織布、ガラス繊維、多孔質ポリオレフィン(例えば、多孔質ポリエチレン、多孔質ポリプロピレン)、多孔質ポリエステル、アラミド繊維、ポリブチレンテレフタレート不織布、パラ系全芳香族ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンと6フッ化プロピレンとの共重合体、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂等の不織布又は多孔質膜;プロトン伝導型ポリマー;等の膜が挙げられる。電解紙、ビスコースレーヨン又は天然セルロースの抄紙、セルロース及びポリエステルの繊維を抄紙して得られる混抄紙、クラフト紙、マニラ紙、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリエステル不織布、マニラ麻シート、ガラス繊維シート、多孔質ポリオレフィン及び多孔質ポリエステルが好ましく、多孔質ポリオレフィン及び多孔質ポリエステルがより好ましい。
セパレータが有する微細孔の孔径は、通常0.01〜10μmである。セパレータの厚さは、通常1〜300μm、好ましくは5〜30μmである。
セパレータは、空隙率の異なる膜を積層した積層膜であってもよい。中でも、多孔質ポリオレフィンと多孔質ポリエステルとを積層した積層膜が好適である。
セパレータは、前記膜又は積層膜に、さらに耐熱層を積層した耐熱積層膜であってもよい。
耐熱層としては、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、芳香族ポリアミド、ポリイミド等のポリアミド系又はポリイミド系ポリマー;フィラー粒子等を含む耐熱層等が挙げられる。セパレータは、1種の耐熱層を有していてもよいし、2種類以上の耐熱層を有してもよい。
前記フィラー粒子としては、無機物の微粒子又は有機物の微粒子が挙げられる。
無機物の微粒子としては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、マイカ、ゼオライト、ガラス等を含む微粒子等が挙げられる。
有機物の微粒子としては、スチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル等の単独重合体あるいは2種類以上の共重合体;ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド等のフッ素系樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリメタクリレート等を含む微粒子等が挙げられる。2種類以上の微粒子や異なる粒度分布を持つ同種の微粒子を混合して、フィラー粒子としてもよい。
(電極)
電極としては、二次電池用の正極と負極とが挙げられる。電極は、通常、電極活物質及び必要に応じて導電材が、集電体の少なくとも一方の面に、結着剤を介して塗布されたものである。
電極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる活物質が挙げられる。電極活物質には正極活物質と負極活物質とがある。
正極活物質としては、リチウム、鉄、コバルト、ニッケル及びマンガンからなる群から選ばれる少なくとも1種類の金属を含有する金属複合酸化物等が挙げられ、好ましくは、LiMO(但し、Mは1種以上の遷移金属、好ましくはCo、MnまたはNiの少なくとも一種を表し、1.10>x>0.05である)、又は、Li(式中、Mは1種以上の遷移金属、好ましくはMnを表し、1.10>x>0.05である。
)を含んだ正極活物質であり、具体的にはLiCoO、LiNiO、LiNiCo(1−y)(式中、1.10>x>0.05、1>y>0である。)、LiMnで表される正極活物質等が挙げられる。
負極活物質としては、各種の珪素酸化物(SiO等)、炭素質物質、金属複合酸化物等が挙げられ、好ましくは、アモルファスカーボン、グラファイト、天然黒鉛、MCMB、ピッチ系炭素繊維、ポリアセンなどの炭素質材料;A(式中、AはLi、MはCo、Ni、Al、Sn及びMnから選択された少なくとも一種、Oは酸素原子を表し、x、y、zはそれぞれ1.10≧x≧0.05、4.00≧y≧0.85、5.00≧z≧1.5の範囲の数である。)で表される金属複合酸化物が挙げられる。
導電材としては、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、活性炭等の導電性カーボン;天然黒鉛、熱膨張黒鉛、鱗状黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛系導電材;気相成長炭素繊維等の炭素繊維;アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金等の金属微粒子あるいは金属繊維;酸化ルテニウムあるいは酸化チタン等の導電性金属酸化物;及びポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン等の導電性高分子等が挙げられる。
少量で効果的に導電性が向上する点で、カーボンブラック、アセチレンブラック及びケッチェンブラックが好ましい。
導電材の含有量は、電極活物質100質量部に対して0〜50質量部が好ましく、0〜30質量部がより好ましい。
集電体の材料としては、ニッケル、アルミニウム、チタン、銅、金、銀、白金、アルミニウム合金又はステンレス等の金属;炭素素材又は活性炭繊維に、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、銅、スズ、鉛又はこれらの合金をプラズマ溶射又はアーク溶射することによって形成されたもの;及び、ゴム又はスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)など樹脂に導電材を分散させた導電性フィルム等が挙げられる。
集電体の形状としては、箔、平板状、メッシュ状、ネット状、ラス状、パンチング状若しくはエンボス状であるもの又はこれらを組み合わせたもの(例えば、メッシュ状平板など)等が挙げられる。
集電体表面にエッチング処理により凹凸を形成させてもよい。
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー;
ポリブタジエン、ポリイソプレン、イソプレン−イソブチレン共重合体、天然ゴム、スチレン−1,3−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、1,3−ブタジエン−イソプレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−1,3−ブタジエン−イソプレン共重合体、1,3−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−1,3−ブタジエン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−1,3−ブタジエン−イタコン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル−1,3−ブタジエン−メタクリル酸メチル−フマル酸共重合体、スチレン−1,3−ブタジエン−イタコン酸−メタクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−1,3−ブタジエン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−1,3−ブタジエン−イタコン酸−メタクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−1,3−ブタジエン−メタクリル酸メチル−フマル酸共重合体等のジエン系ポリマー;
エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアセテート共重合体、エチレン系アイオノマー、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、クロロスルホン化ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー;
スチレン−エチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−プロピレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリル酸n−ブチル−イタコン酸−メタクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリル酸n−ブチル−イタコン酸−メタクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体等のスチレン系ポリマー;
ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、アクリレート−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル−アクリル酸メチル−アクリル酸−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート等のアクリレート系ポリマー;
ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、芳香族ポリアミド、ポリイミド等のポリアミド系又はポリイミド系ポリマー;
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のエステル系ポリマー;
カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース等のセルロース系ポリマー(これらのアンモニウム塩やアルカリ金属塩等の塩類を含む);
スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン・ブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン・ブロック共重合体、スチレン−イソプレン・ブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン・ブロック共重合体等のブロック共重合体;
エチレン−塩化ビニル共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体;及びその他メチルメタクリレート重合体等が挙げられる。
(樹脂A)
前記炭素数2〜4のα−オレフィンに由来する構造単位(本明細書中「構造単位(α)」と記載することがある)を有する樹脂は、さらに、炭素数2〜4のα−オレフィンと共重合可能なその他のモノマーに由来する構造単位を有していてもよい。
樹脂Aの最低造膜温度は、好ましくは40〜150℃であり、より好ましくは45〜120℃であり、さらに好ましくは50〜100℃である。
樹脂Aの融点は、好ましくは40〜150℃であり、より好ましくは45〜120℃であり、さらに好ましくは50〜100℃である。
炭素数2〜4のα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等を挙げることができる。
樹脂Aは、構造単位(α)を単独で含有していてもよく、複数種を含有していてもよい。
構造単位(α)としては、エチレンに由来する構造単位が好ましい。
α−オレフィンと共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の脂肪酸ビニル;
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル等の炭素数1〜16のアルキル基を有するアクリル酸エステル;
メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリル等の炭素数1〜16のアルキル基を有するメタクリル酸エステル;
アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−メタクリロイルオキシエチルサクシネート、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシエチルメタクリレート等の酸性基含有ビニルモノマー;
スチレン、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル等の芳香族ビニルモノマー;
1,3−ブタジエン、イソプレン等のジエン;及び
アクリロニトリル;等が挙げられる。中でも脂肪酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが好ましく、酢酸ビニル、アクリル酸エチルがより好ましい。
樹脂Aは、好ましくは、構造単位(α)と、その他の構造単位とを有する樹脂であり、より好ましくは、構造単位(α)と、脂肪酸ビニル、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一種に由来する構造単位とを有する樹脂であり、さらに好ましくは、構造単位(α)と、酢酸ビニル及び/又はアクリル酸エチルに由来する構造単位とを有する樹脂である。
樹脂Aは単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
(その他の添加剤)
接着層はさらにその他の添加剤を含有してもよい。
その他の添加剤としては、水に溶解又は膨潤する粘度調整剤;バインダー補助剤;アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、アルキルスルホサクシネート等のアニオン性界面活性剤;スルホ基を有していてもよいポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンアルキルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤;ヒドロキシエチルセルロースの等の水溶性高分子;その他の有機化合物の粉末;アルミナ、シリカ、ゼオライト等のセラミック;等が挙げられる。好ましくは、アニオン性界面活性剤及びノニオン系界面活性剤であり、よりこ好ましくはノニオン系界面活性剤である。
本接着層における樹脂Aの占有面積は10〜80%である。
樹脂の占有面積とは、セパレータ及び電極を、樹脂Aを含む固形分が被覆している面積の割合をいう。占有面積は、接着されたセパレータと電極とを、接着層を境にして分離し、例えば走査電子顕微鏡(株式会社 日立ハイテクノロジーズ製、SU1510)を用いて、分離されたセパレータ表面を観察し、画像解析ソフトImage J(アメリカ国立衛星研究所製)にて計測することにより導き出すことができる。
占有面積は好ましくは20〜75%であり、より好ましくは30〜70%であり、さらに好ましくは40〜65%であり、特に好ましくは50〜60%である。占有面積が上記範囲よりも低いと接着力が不十分となり、上記範囲よりも高いと二次電池の内部抵抗が上昇する傾向がある。
本接着層に含まれる樹脂の量は、好ましくは0.001〜1g/mであり、より好ましくは0.01〜1g/mであり、さらに好ましくは0.05〜0.5g/mである。樹脂の量が上記範囲よりも低いと接着力が不十分となり、上記範囲よりも高いと二次電池の内部抵抗が上昇する傾向がある。
本接着層がセパレータに形成された場合、接着層を有さないセパレータと、接着層を有するセパレータとの透気抵抗度の変化率は30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
<層>
本発明の層(本明細書中「本層」と記載することがある)とは、炭素数2〜4のα−オレフィンに由来する構造単位を有する樹脂Aを含むものであり、層における該樹脂の占有面積が10〜80%であるものである。かかる層は、セパレータと電極とを接着させるためのものであり、セパレータ及び電極から選ばれる少なくとも一つの表面に存在する。好ましくはセパレータの表面に存在する。本層をセパレータと電極との間に配置して圧着することで本接着層が得られる。
セパレータ、電極及び樹脂Aとしては、上記したものと同じものが挙げられる。層はさらにその他の添加剤を含有してもよく、該添加剤としては、上記したものと同じものが挙げられる。
層における樹脂の占有面積は10〜80%である。
樹脂の占有面積とは、セパレータ又は電極の表面を、前記樹脂を含む固形分が被覆している面積の割合をいう。前記占有面積は、セパレータ又は電極の最表面に層を作製した後、例えば走査電子顕微鏡(株式会社 日立ハイテクノロジーズ製、SU1510)を用いて、セパレータ表面を観察し、画像解析ソフトImage J(アメリカ国立衛星研究所製)にて計測することにより導き出すことができる。
前記占有面積は好ましくは12〜70%であり、より好ましくは14〜60%であり、さらに好ましくは16〜50%であり、特に好ましくは18〜40%である。占有面積が上記範囲よりも低いと接着力が不十分となり、上記範囲よりも高いと二次電池の内部抵抗が上昇する傾向がある。
本層に含まれる樹脂の量は、好ましくは0.001〜1g/mであり、より好ましくは0.01〜1g/mであり、さらに好ましくは0.05〜0.5g/mである。樹脂の量が上記範囲よりも低いと接着力が不十分となり、上記範囲よりも高いと二次電池の内部抵抗が上昇する傾向がある。
本層の厚さは、0.005〜100μmであることが好ましく、0.005〜20μmであることがより好ましく、0.005〜10μmであることがさらに好ましい。厚さが上記の範囲内であると、得られる二次電池の内部抵抗を大幅には上昇させない傾向にあるため好ましい。厚さと占有面積との両方が上記の範囲内であると、この傾向がさらに高いためより好ましい。
本層がセパレータに形成された場合、本層を有さないセパレータと、本層を有するセパレータとの透気抵抗度の変化率は30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
<組成物>
本発明の組成物(本明細書中「本組成物」と記載することがある)とは、炭素数2〜4のα−オレフィンに由来する構造単位を有する樹脂A、沸点が100〜300℃の有機溶剤及び水を含有するものであり、セパレータと電極とを接着させるためのものである。セパレータ又は電極に塗布された組成物から、該有機溶剤及び水を除去することで、本層が得られ、さらに該本層から本接着層を形成することができる。組成物は、セパレータと電極との接着性能や、接着層を含む電池の性能を大幅に低下させない範囲において、さらに界面活性剤等のその他の添加剤及び沸点が100℃未満のアルコールを含んでもよい。
セパレータ、電極及び樹脂Aとしては、上記したものと同じものが挙げられる。その他の添加剤としては、上記したものと同じものが挙げられる。
樹脂Aの含有量は、本組成物の総量100質量部に対して通常0.001〜30質量部であり、好ましくは0.01〜20質量部である。
本組成物がその他の添加剤を含有する場合、その含有量は、本組成物の総量100質量部に対して、通常0.1〜10質量部である。
本組成物は好ましくは界面活性剤を含有する。本組成物が界面活性剤を含有する場合、その含有量は、樹脂A100質量部に対して通常0.001〜100質量部であり、好ましくは1〜100質量部である。
(水)
水は、純水でもよいし、水道水程度に不純物を含んでいてもよい。
(沸点が100〜300℃の有機溶剤)
沸点が100〜300℃の有機溶剤としては、1−ブタノール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のアルコール;ブチルエーテル、イソブチルエーテル、n−アミルエーテル、イソアミルエーテル、エチルn−アミルエーテル、エチルイソアミルエーテル等の飽和脂肪族エーテル化合物;不飽和脂肪族エーテル化合物;アニソール、フェネトール、フェニルエーテル、ベンジルエーテル等の芳香族エーテル化合物;ジオキサン等の環状エーテル化合物;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールエーテル化合物;ギ酸、酢酸、無水酢酸、アクリル酸、プロピオン酸、酪酸等のモノカルボン酸化合物;ギ酸ブチル、ギ酸アミル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ブチルシクロヘキシル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸アミル、酪酸ブチル、シュウ酸ジエチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、リン酸トリエチル等の有機酸エステル化合物;プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタン等のカーボネート化合物;ブチロニトリル等のニトリル化合物;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物;3−メチル−2−オキサゾリドン等のカーバメート化合物;メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン等のケトン化合物;フルフラール、スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンスルトン等が挙げられる。
中でも、アルコールが好ましく、1−ブタノール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール及びブタンジオールがさらに好ましく、1−ブタノールが特に好ましい。該有機溶剤は単独でも、組み合わせてもよい。
沸点が100〜300℃の有機溶剤の含有量は、水100質量部に対して通常0.01〜100質量部であり、好ましくは0.01〜80質量部である。
(沸点が100℃未満のアルコール)
沸点が100℃未満のアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、2−ブタノール及びtert−ブチルアルコールが挙げられる、好ましくはメタノール、エタノール、1−プロパノール及びイソプロピルアルコールであり、より好ましくは1−プロパノール及びイソプロピルアルコールである。
本組成物が沸点が100℃未満のアルコールを含有する場合、その含有量は、樹脂100質量部に対して通常50〜4000質量部であり、好ましくは200〜3000質量部である。
本組成物の固形分比率は、好ましくは0.001〜50質量%であり、より好ましくは0.001〜30質量%であり、さらに好ましくは0.001〜20質量%である。固形分比率とは、組成物から沸点が300℃以下の揮発成分を除去した成分の比率である。
本組成物は、好ましくはエマルションである。すなわち、樹脂Aの一部又は全部が分散質として、沸点が100〜300℃の有機溶剤および水を含む分散媒に分散していると好ましい。該分散質の数平均粒子径は、通常0.005〜100μmであり、好ましくは0.01〜50μmであり、より好ましくは0.05〜50μmであり、さらに好ましくは0.1〜10μmであり、特に好ましくは0.3〜2μmである。該分散質の粒子径標準偏差は、通常1以下であり、好ましくは0.6以下であり、より好ましくは0.4以下である。該分散質が含む粒子径0.6μm未満の分散質の数は、通常90%以下であり、好ましくは50%以下であり、より好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは3%未満であり、特に好ましくは1%未満である。数平均粒子径、粒子径標準偏差及び粒子径0.6μm未満の分散質の割合を上記範囲とすることで、得られる二次電池の内部抵抗は大幅に上昇しない。
かかる数平均粒子径、粒子径標準偏差及び粒子径0.6μm未満の分散質の数は、例えば、レーザ回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、SALD−2200)を用いて測定することができる。
(組成物の製造方法)
本組成物は、樹脂A、沸点が100〜300℃の有機溶剤及び水、及び、必要により沸点が100℃未満のアルコール及びその他の成分を、任意の順番で混合することにより得られる。ここで、溶融状態の樹脂Aを水に分散させ、そこに沸点が100〜300℃の有機溶剤を混合してもよいし、樹脂Aと沸点が100〜300℃の有機溶剤との混合溶液を攪拌しながら、そこに水を加えてもよい。また、乳化重合により得られた樹脂Aのエマルションに沸点が100〜300℃の有機溶剤を混合してもよい。
乳化重合は、通常、炭素数2〜4のα−オレフィンと、α−オレフィンと共重合可能なその他のモノマーとを、水の存在下で重合させることにより実施される。その際、乳化剤として作用する界面活性剤及び重合開始剤を加えておくのが好ましい。前期界面活性剤と水との混合物中に、炭素数2〜4のα−オレフィンと、α−オレフィンと共重合可能なその他のモノマーと、重合開始剤とを加え、得られた混合物を攪拌しながら昇温して重合することが好ましい。
乳化剤と水との混合物は、さらに還元剤を含んでもよい。還元剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、塩化第1鉄等が挙げられる。
具体的には、還元剤、乳化剤、水、及び必要に応じて重合に用いる炭素数2〜4のα−オレフィンを、耐圧の反応器に加え、次いで反応器内を窒素で置換し、5〜150気圧に加圧し、残りの炭素数2〜4のα−オレフィン及びα−オレフィンと共重合可能なその他のモノマーとを逐次追加するとともに、酸化剤を水溶液の状態で逐次圧入しながら10〜80℃で攪拌する方法等を挙げることができる。酸化剤としては、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
乳化剤として作用する界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、アルキルスルホサクシネート等のアニオン性界面活性剤;スルホ基を有していてもよいポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンアルキルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤;ヒドロキシエチルセルロースの等の水溶性高分子;等が挙げられる。好ましくは、アニオン性界面活性剤及びノニオン系界面活性剤であり、よりこ好ましくはノニオン系界面活性剤である。
重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等が挙げられる。
<積層体>
本発明の積層体(本明細書中「本積層体」と記載することがある)とは、本層と、セパレータ又は電極とを含むものであり、好ましくはセパレータと本層とからなるものである。
セパレータ及び電極としては、上記したものと同じものが挙げられる。
本積層体の透気抵抗度は、通常100〜400sec/100mlであり、好ましくは150〜350sec/100mlであり、さらに好ましくは200〜300sec/100mlである。
(積層体の製造方法)
本積層体は通常、本組成物をセパレータ又は電極に塗布して、乾燥し、セパレータ又は電極の表面に本層を作製することにより製造される。
(塗布)
本組成物の塗布面積は、好ましくは5〜100%である。塗布面積とは、セパレータ又は電極の表面を本組成物が被覆している面積の割合をいう。塗布面積は、マイクロスコープを用いて1〜1000倍の視野で観察することにより、求めることができる。本組成物がセパレータ又は電極の表面に略均一に塗布された状態(以下「均一塗布」と記載することがある)と、セパレータ又は電極の表面に本組成物が塗工されている部分と塗工されていない部分とが存在する状態(以下「不連続塗布」と記載することがある)とでは、好ましい塗布面積の範囲が異なる。具体的には以下のとおりである。
均一塗布によって得られる本積層体の場合、セパレータ又は電極の塗布面全体に対する本組成物の塗布面積は、30〜100%であることが好ましく、50〜100%であることがより好ましく、70〜100%であることがさらに好ましい。均一塗布には、好ましくはエマルションの本組成物が使用される。
不連続塗布によって得られる本積層体の場合、セパレータ又は電極の塗布面全体に対する本組成物の塗布面積は、5〜80%であることが好ましく、10〜70%であることがより好ましく、10〜60%であることがさらに好ましい。不連続塗布には、好ましくは均一溶液の本組成物が使用される。
本組成物をセパレータ又は電極に塗布する方法としては、スロットダイコート法、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、キスコート法、エクストルージョン法、ビード法、カーテンコート法、ドット法、ポーラスコート法、スロットコート法、スプレー法、スパイラルスプレー法、サミットスプレー法、浸漬及びハケ塗り等が挙げられる。これらの方法のうち、均一塗布はいずれの方法でも可能である。不連続塗布を行う場合の塗布方法としては、グラビア法、カーテンコート法、ドット法、ポーラスコート法、スプレー法、スパイラルスプレー法及びサミットスプレー法等が挙げられる。
塗布する方法は、好ましくはドクターブレード法、グラビア法、キスコート法、カーテンコート法、ドット法、ポーラスコート法、スロットコート法、スプレー法、スパイラルスプレー法及びサミットスプレー法であり、より好ましくはドクターブレード法、グラビア法、キスコート法、ポーラスコート法、スプレー法、スパイラルスプレー法及びサミットスプレー法である。
(乾燥方法)
塗布された本組成物は、さらに乾燥させることが好ましい。本発明において「乾燥」とは、上記塗布された本組成物から有機溶剤及び水を除去することを表す。かかる乾燥方法としては、温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥並びに(遠)赤外線及び電子線等の照射による乾燥等が挙げられる。乾燥温度は、30〜200℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。
<二次電池用部材>
本明細書において「二次電池用部材」とは、接着層を介して電極とセパレータとが配置された部材を表す。
かかる二次電池用部材としては、例えば、負極、接着層及びセパレータがこの順で配置された部材(図2参照);正極、接着層及びセパレータがこの順で配置された部材;負極、接着層、セパレータ、接着層及び正極がこの順で配置された部材;それぞれ複数の負極、セパレータ及び正極がそれぞれ接着層を介して負極、セパレータ、正極、セパレータの順で繰り返し配置された部材(ただし、2つの最表面は負極及び正極である。;図3参照)が挙げられる。
電極、接着層及びセパレータがこの順で配置された部材の、電極とセパレータとの剥離強度は、通常0.1〜50N/mであり、好ましくは0.5〜30N/mであり、より好ましくは1〜10N/mであり、さらに好ましくは2〜5N/mである。
<二次電池用部材の製造方法>
本発明の二次電池用部材の製造方法の第1の態様は、下記(a)、(b)及び(c)を含む。
(a)組成物を、二次電池用セパレータに塗布する工程
(b)塗布された組成物を乾燥して、層と二次電池用セパレータとを含む積層体を得る工程、並びに、
(c)前記層と二次電池用電極とを圧着させる工程
本発明の二次電池用部材の製造方法の第2の態様は、下記(a’)、(b’)及び(c’)を含む。
(a’)組成物を、二次電池用電極に塗布する工程
(b’)塗布された組成物を乾燥して、層と二次電池用電極とを含む積層体を得る工程、並びに、
(c’)前記積層体と二次電池用セパレータとを圧着させる工程
かかる(a)工程、(b)工程、(a’)工程及び(b’)工程は、上記組成物の塗布方法及び乾燥方法にそれぞれ記載した方法により実施される。
上記(c)工程及び(c’)工程における圧着は、加圧による圧着でも減圧による圧着でもよい。
圧着時の温度は通常25℃以上であり、好ましくは30℃〜200℃であり、より好ましくは40℃〜150℃であり、さらに好ましくは50℃〜120℃である。
圧着することにより、セパレータと電極との間に接着層が配置された二次電池用部材が得られる。
図3のようにそれぞれ複数の負極、セパレータ及び正極がそれぞれ接着層を介して配置された二次電池用部材を得るには、第1の態様のみを繰り返してもよいし、第2の態様のみを繰り返してもよいし、第1の態様と第2の態様とを組み合わせてもよい。
<二次電池>
二次電池用部材と電解液とを有する二次電池のうち、代表的なものとしてリチウムイオン二次電池について以下に説明する。リチウムイオン二次電池は、正極及び負極の両極においてリチウムの酸化及び還元が行われ、電気エネルギーを貯蔵及び放出する電池である。
(電解液)
リチウムイオン二次電池に用いられる電解液としては、例えばリチウム塩を有機溶媒に溶解させた非水電解液などが挙げられる。リチウム塩としては、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiBF、LiCFSO、LiN(SOCF、LiC(SOCF、Li10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlClなどのうち1種または2種以上の混合物が挙げられる。
中でも、リチウム塩としては、フッ素原子を含むリチウム塩が好ましく、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、およびLiC(CFSOからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
電解液に用いる有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン及び1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタンなどのカーボネート類;
1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン及び2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;
ギ酸メチル、酢酸メチル及びγ−ブチロラクトンなどのエステル類;
アセトニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;
3−メチル−2−オキサゾリドンなどのカーバメート類;
スルホラン、ジメチルスルホキシド及び1,3−プロパンサルトンなどの含硫黄化合物;及び上記有機溶媒にフッ素置換基を導入したものが挙げられ、通常、これらのうちの2種以上を混合したものが用いられる。
【実施例】
【0009】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されない。
実施例1(組成物、層および積層体の製造)
エチレン−酢酸ビニル共重合体(最低造膜温度;69℃)1質量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.5質量部及び水83.5質量部の混合物に、イソプロピルアルコール(沸点:82℃)10質量部及び1−ブタノール(沸点:117℃)5質量部を添加し、メカニカルスターラーで5分間攪拌(室温下、300rpm)してエマルション状の組成物(1)を得た。
レーザ回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、SALD−2200)で組成物(1)を分析したところ、数平均粒子径:1.3μm、粒子径標準偏差:0.32、粒子径0.6μm未満の粒子の数:4%であった。
厚さ19μm、空隙率52%の多孔質ポリエチレン(セパレータ)上に、組成物(1)をグラビアコーター(グラビア法)を用いて均一に塗布し、60℃の乾燥機で乾燥し、多孔質ポリエチレンと層とを有する積層体(1)を得た。層に含まれる前記エチレン−酢酸ビニル共重合体は0.11g/mであった。該積層体の層における前記エチレン−酢酸ビニル共重合体の占有面積を、走査電子顕微鏡(株式会社 日立ハイテクノロジーズ製、SU1510、倍率:5000倍)で観察し、画像解析ソフトImage J(アメリカ国立衛星研究所製)にて計測したところ、層における前記エチレン−酢酸ビニル共重合体の占有面積は18%であった。
実施例2(組成物、層および積層体の製造)
エチレン−酢酸ビニル共重合体(最低造膜温度;69℃)を5質量部とし、水を78.5質量部とした以外は実施例1と同様にして組成物(2)を得た。さらに、組成物(1)を組成物(2)とした以外は実施例1と同様にして、積層体(2)を得た。
実施例3(組成物、層および積層体の製造)
エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体1質量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.5質量部及び水83.5質量部の混合物に、イソプロピルアルコール10質量部及び1−ブタノール5質量部を添加し、得られた混合物を自転・公転ミキサー「あわとり練太郎」(株式会社シンキー製;登録商標)で30秒間攪拌(室温下、2000rpm)してエマルション状の組成物(3)を得た。
厚さ16μm、空隙率51%の多孔質ポリエチレン上に、組成物(3)をドクターブレード法により均一に塗布し、65℃で5分間乾燥させて、多孔質ポリエチレンと層とを有する積層体(3)を得た。
実施例4(組成物、層および積層体の製造)
エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体1質量部を用いた以外は実施例3と同様の操作を行い、多孔質ポリエチレンと層とを有する積層体(4)を得た。
試験例1(透気抵抗度)
JIS P8117に準拠して、積層体(1)〜(4)、厚さ19μm、空隙率52%の多孔質ポリエチレン(参考例1)、及び、厚さ16μm、空隙率51%の多孔質ポリエチレン(参考例2)の透気抵抗度を測定した。結果を表1に示す。
【表1】
積層体の透気抵抗度が高いほど、該積層体から得られる二次電池の内部抵抗は上昇するが、上記積層体の透気抵抗度と、多孔質ポリエチレン単独の透気抵抗度とに大きな差異はなかったため、上記積層体から製造される二次電池の内部抵抗は大幅には上昇しない。
実施例5(接着層の製造)
積層体(1)が有する層上に、短冊状に切断した剥離紙を重ね合わせ、ロールタイプラミネーター(フジプラ株式会社製、フジラミパッカー LPP6512)を用いて、70℃で4往復熱圧着させた後、剥離紙を分離して、接着層を有する多孔質ポリエチレンを得た。走査電子顕微鏡(株式会社 日立ハイテクノロジーズ製、SU1510)を用いて、該接着層を3000倍の倍率で観察し、画像解析ソフトImage J(アメリカ国立衛星研究所製)にて計測したところ、接着層におけるエチレン−酢酸ビニル共重合体の占有面積は56%であった。
前記剥離紙は、二次電池用電極を模擬したものであり、多孔質ポリエチレンとの分離を容易にし、接着層の分析をし易くするために使用した。剥離紙を用いて製造した接着層における、エチレン−酢酸ビニル共重合体の占有面積は、剥離紙の代わりに二次電池用電極を用いた場合と同等であると想定する。
参考例3
厚さ19μm、空隙率52%の多孔質ポリエチレンを、実施例5と同様にロールタイプラミネーター(フジプラ株式会社製、フジラミパッカー LPP6512)を用いて、70℃で4往復熱処理をすることにより、熱処理後の多孔質ポリエチレンを得た。
試験例2(透気抵抗度)
JIS P8117に準拠して、前記接着層を有する多孔質ポリエチレン及び前記熱処理後の多孔質ポリエチレンの透気抵抗度を測定した。結果を表2に示す。
【表2】
セパレータ透気抵抗度が高いほど、該セパレータから得られる二次電池の内部抵抗は上昇するが、上記接着層を有する多孔質ポリエチレンの透気抵抗度と、熱処理のみを施し接着層を有さない多孔質ポリエチレンの透気抵抗度とに大きな差異はなかったため、上記接着層を有する二次電池の内部抵抗は大幅には上昇しない。
実施例6(二次電池用部材の製造)
積層体(1)が有する層上に、短冊状に切断した負極〔黒鉛/スチレン−1,3−ブタジエン共重合体/カルボキシメチルセルロースナトリウム(重量比100/1.5/1)を銅箔に塗布することにより製造された市販の負極〕を重ね合わせ、ロールタイプラミネーター(フジプラ株式会社製、フジラミパッカー LPP6512)を用いて、70℃で4往復熱圧着することにより、多孔質ポリエチレンと接着層と負極とをこの順に有する二次電池用部材(1)を得た。
実施例7(二次電池用部材の製造)
積層体(2)について、実施例6と同様の操作により、多孔質ポリエチレンと接着層と負極とをこの順に有する二次電池用部材(2)を得た。
実施例8(二次電池用部材の製造)
積層体(3)について、実施例6と同様の操作により、多孔質ポリエチレンと接着層と負極とをこの順に有する二次電池用部材(3)を得た。
実施例9(二次電池用部材の製造)
積層体(4)について、実施例6と同様の操作により、多孔質ポリエチレンと接着層と負極とをこの順に有する二次電池用部材(4)を得た。
参考例4
厚さ19μm、空隙率52%の多孔質ポリエチレンと、短冊状に切断した負極〔黒鉛/スチレン−1,3−ブタジエン共重合体/カルボキシメチルセルロースナトリウム(重量比100/1.5/1)を銅箔に塗布することにより製造された市販の負極〕とを重ね合わせ、ロールタイプラミネーター(フジプラ株式会社製、フジラミパッカー LPP6512)を用いて、70℃で4往復熱圧着することにより、二次電池用部材(5)を得た。
試験例3(剥離強度)
二次電池用部材(1)〜(5)の電極側表面と、ガラスエポキシ樹脂板とを両面接着テープで貼り付けて測定用試料を作製した。該測定用試料を剥離強度測定器に固定し、小型卓上試験機(島津製、EZ Test EZ−L)を用いて厚み方向に剥離させて、二次電池用部材に含まれる電極と多孔質ポリエチレンとを剥離させるのに要する力の大きさを測定した。この力の大きさを二次電池用部材に含まれる多孔質ポリエチレンの幅(2cm)で除した値を剥離強度(N/m)とした。結果を表3に示す。
【表3】
二次電池用部材における剥離強度は十分に高かったため、二次電池を組立てる時の作業性は向上する。
参考例5
実施例6で得られた二次電池用部材を真空乾燥させた後、CR2032型(IEC/JIS規格)のコインセルに、該二次電池用部材と、正極としてリチウム箔と、電解液として濃度1.0モル/リットルのLiPF/エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートの混合溶媒とを用いて2極式セルを組み立てる。
参考例6
実施例6で得られた二次電池用部材に替えて、実施例7で得られた二次電池用部材を用いる以外は、参考例5と同様にして2極式セルを組み立てる。
参考例7
実施例5で得られた二次電池用部材に替えて、実施例8で得られた二次電池用部材を用いる以外は、参考例5と同様にして2極式セルを組み立てる。
参考例8
実施例5で得られた二次電池用部材に替えて、実施例9で得られた二次電池用部材を用いる以外は、参考例5と同様にして2極式セルを組み立てる。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明の接着層によれば、二次電池部材に含まれる二次電池用セパレータと二次電池用電極とを十分な強度で接着させることができ、二次電池組立時の作業性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0011】
a:負極
b:本発明の接着層
c:セパレータ
d:正極
図1
図2
図3