(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
反応容器内に水平に支持されたサセプタの載置面に半導体ウェーハを載置し、前記サセプタをサセプタ中心を回転軸として水平回転させつつ、前記反応容器の水平方向における一端側からエピタキシャル層形成用の原料ガスを供給して、前記半導体ウェーハ上にエピタキシャル層を気相成長させるエピタキシャルウェーハの製造装置において、
前記原料ガスの供給方向に向いた前記半導体ウェーハの周縁部における結晶方位の、前記サセプタの水平回転にともなう周期的な変化に応じて、前記サセプタをその載置面に対して垂直な方向に周期的に上下させることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造装置。
前記周縁部の結晶方位のうちファセット成長しやすい結晶方位である第1結晶方位が前記原料ガスの供給方向に向いたときに前記サセプタを前記垂直な方向に下げ、前記周縁部の結晶方位のうちファセット成長しにくい結晶方位である第2結晶方位が前記原料ガスの供給方向に向いたときに前記サセプタを前記垂直な方向に上げることを特徴とする請求項1に記載のエピタキシャルウェーハの製造装置。
反応容器内に水平に支持されたサセプタの載置面に半導体ウェーハを載置し、前記サセプタをサセプタ中心を回転軸として水平回転させつつ、前記反応容器の水平方向における一端側からエピタキシャル層形成用の原料ガスを供給して、前記半導体ウェーハ上にエピタキシャル層を気相成長させるエピタキシャルウェーハの製造方法において、
前記原料ガスの供給方向に向いた前記半導体ウェーハの周縁部における結晶方位の、前記サセプタの水平回転にともなう周期的な変化に応じて、前記サセプタをその載置面に対して垂直な方向に周期的に上下させることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
前記周縁部の結晶方位のうちファセット成長しやすい結晶方位である第1結晶方位が前記原料ガスの供給方向に向いたときに前記サセプタを前記垂直な方向に下げ、前記周縁部の結晶方位のうちファセット成長しにくい結晶方位である第2結晶方位が前記原料ガスの供給方向に向いたときに前記サセプタを前記垂直な方向に上げることを特徴とする請求項5に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の発明では、半導体ウェーハの周縁部の結晶方位に合わせて複雑な形状のサセプタを用意する必要があり、サセプタ加工コストの増大などの問題がある。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、半導体ウェーハの周縁部のエピタキシャル層の膜厚をより簡便な方法で均一化できるエピタキシャルウェーハの製造装置及び製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のエピタキシャルウェーハの製造装置は、反応容器内に水平に支持されたサセプタの載置面に半導体ウェーハを載置し、前記サセプタをサセプタ中心を回転軸として水平回転させつつ、前記反応容器の水平方向における一端側からエピタキシャル層形成用の原料ガスを供給して、前記半導体ウェーハ上にエピタキシャル層を気相成長させるエピタキシャルウェーハの製造装置において、
前記原料ガスの供給方向に向いた前記半導体ウェーハの周縁部における結晶方位の、前記サセプタの水平回転にともなう周期的な変化に応じて、前記サセプタをその載置面に対して垂直な方向に周期的に上下させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法は、反応容器内に水平に支持されたサセプタの載置面に半導体ウェーハを載置し、前記サセプタをサセプタ中心を回転軸として水平回転させつつ、前記反応容器の水平方向における一端側からエピタキシャル層形成用の原料ガスを供給して、前記半導体ウェーハ上にエピタキシャル層を気相成長させるエピタキシャルウェーハの製造方法において、
前記原料ガスの供給方向に向いた前記半導体ウェーハの周縁部における結晶方位の、前記サセプタの水平回転にともなう周期的な変化に応じて、前記サセプタをその載置面に対して垂直な方向に周期的に上下させることを特徴とする。
【0009】
エピタキシャル層を気相成長させるときにはサセプタが水平回転されて、その水平回転にともなって、原料ガスの供給方向に向く半導体ウェーハの周縁部の結晶方位が周期的に変化する。本発明では、その結晶方位の周期的な変化に応じて、サセプタを上下動させている。つまり、結晶方位の気相成長しやすさに応じてサセプタを上下動させるので、ガス供給方向に向いた周縁部周辺のガス供給の程度を、その周縁部の結晶方位に応じて変化させることができる。その結果、ガス供給方向に向いた周縁部周辺のエピタキシャル層の成長速度を簡単に制御できる。よって、半導体ウェーハの周縁部のエピタキシャル層の膜厚をより簡便に均一化できる。
【0010】
また、本発明において、前記周縁部の結晶方位のうちファセット成長しやすい結晶方位である第1結晶方位が前記原料ガスの供給方向に向いたときに前記サセプタを前記垂直な方向に下げ、前記周縁部の結晶方位のうちファセット成長しにくい結晶方位である第2結晶方位が前記原料ガスの供給方向に向いたときに前記サセプタを前記垂直な方向に上げる。
【0011】
これによれば、ファセット成長しやすい第1結晶方位の周縁部に対するガス供給を、ファセット成長しにくい第2結晶方位の周縁部に対するガス供給よりも抑えることができる。よって、第2結晶方位の周縁部周辺の成長速度を維持しつつ、第1結晶方位の周縁部周辺の成長速度を抑えることができる。その結果、第1結晶方位の周縁部周辺に形成されたエピタキシャル層の膜厚と、第2結晶方位の周縁部周辺に形成されたエピタキシャル層の膜厚とを近づけることができる。つまり、周縁部の膜厚を均一化できる。
【0012】
また、本発明において、前記半導体ウェーハはシリコンウェーハであり、前記サセプタが45度回転する毎に前記サセプタを前記垂直な方向に上げ又は下げる。
【0013】
半導体ウェーハがシリコンウェーハの場合には、第1結晶方位と第2結晶方位とが交互に45度周期で現れることが知られているので、サセプタが45度回転する毎にサセプタを上下動させることで、第1結晶方位と第2結晶方位の周期的な変化に連動してサセプタを上下動させることができる。
【0014】
また、本発明において、前記シリコンウェーハは結晶方位が(100)方位のウェーハであり、前記第1結晶方位は<110>方位であり、前記第2結晶方位は<100>方位である。
【0015】
結晶方位が(100)方位のシリコンウェーハにおいては、ファセット成長面(第1結晶方位)は<110>方位、非ファセット成長面(第2結晶方位)は<100>方位であることが知られている。そのシリコンウェーハに本発明を適用することで、<110>方位のファセット成長を抑えることができるので、周縁部の膜厚を均一化できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るエピタキシャルウェーハの製造装置及び製造方法の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明のエピタキシャルウェーハの製造装置としての枚葉式の気相成長装置1の側面断面図である。気相成長装置1は、
図1に示すように、水平方向における第一端部31側にガス供給口21が形成され、第一端部31と反対側の第二端部32側にガス排出口36が形成された反応容器2を有する。エピタキシャル層形成のための原料ガスGは、ガス供給管50からガス供給口21を経て反応容器2内に供給され、該反応容器2の内部空間5にて略水平に回転保持されるシリコンウェーハW(シリコン単結晶基板)の主表面に沿って流れた後、ガス排出口36から排出管7を経て排出されるように構成されている。つまり、原料ガスGは、ガス供給口21からガス排出口36へ向けて、略水平かつ一方向に流れる。
【0018】
原料ガスGは、上記のシリコンウェーハW上にエピタキシャル層としてのシリコン単結晶薄膜を気相成長させるためのものであり、SiHCl
3、SiCl
4、SiH
2Cl
2等のシリコン化合物の中から選択される。原料ガスGには、ドーパントガスとしてのB
2H
6あるいはPH
3や、希釈ガスとしてのH
2、N
2、Ar等が適宜配合される。また、薄膜の気相成長処理に先立って基板前処理(例えば自然酸化膜や付着有機物の除去処理)を行う際には、HCl、HF、ClF
3、NF
3等から適宜選択された腐蝕性ガスを希釈ガスにて希釈した前処理用ガスを反応容器2内に供給するか、又は、H
2雰囲気中で高温熱処理を施す。
【0019】
反応容器2は、下部ケース3と上部ケース4とから構成されている。下部ケース3の内周面に沿うように、ガス案内部材23が配置されている。そのガス案内部材23でサセプタ12が取り囲まれている。ガス案内部材23は、ガス案内部材23の上面23aが後述するサセプタ12の上面12a(ひいてはシリコンウェーハWの主表面)と略一致する位置関係にて配置される。なお、後述するようにサセプタ12は上下動可能となっているので、サセプタ12とガス案内部材23の位置関係は変化する。ガス供給口21及びガス排出口36は、ガス案内部材23の外周面23b(上面23aも含む)と、その外周面23bに対向する上部ケース4の面4aとから構成されている。
【0020】
内部空間5には、円盤状のサセプタ12が水平配置されている。そのサセプタ12は、例えば、C(カーボン)を基材として、その周りを高純度の炭化珪素(SiC)で覆われる形で形成されている。サセプタ12の上面12aにはザグリ12bが形成されている。そのザグリ12bの形状は、シリコンウェーハWより若干大きい円盤状となっている。シリコンウェーハWは、ザグリ12b内に配置される。シリコンウェーハWは、例えば直径が100mmあるいはそれ以上のものである。また、シリコンウェーハWの配置領域に対応して反応容器2の上下には、シリコンウェーハWを加熱のためのヒータ11(赤外線加熱ランプ、ハロゲンランプなど)が所定間隔にて配置されている。
【0021】
サセプタ12の裏面には、サセプタ12を支持する支持軸13が接続されている。その支持軸13には、モータ、歯車等で構成された回転機構14が接続されており、支持軸13はその回転機構14により自身の軸回りに回転可能となっている。そして、支持軸13の回転により、サセプタ12は、サセプタ12の中心軸O周りに水平回転可能となっている。
【0022】
また、支持軸13には、モータ、歯車等で構成された上下動機構15が接続されている。支持軸13はその上下動機構15により自身の軸方向(上下方向)に上下動できるようになっている。その支持軸13の上下動により、サセプタ12は、その載置面12cに対して垂直な方向に(上下方向に)上下動できるようになっている。
【0023】
回転機構14及び上下動機構15は制御装置16に接続されている。制御装置16は、CPUやモータを駆動する駆動回路等から構成され、シリコンウェーハW上にエピタキシャル層を気相成長させる際に、回転機構14によるサセプタ12の回転(回転速度など)及び上下動機構15によるサセプタ12の上下動(上下動のタイミング、振幅、速度など)を制御する。
【0024】
次に、
図1の気相成長装置1を用いて、シリコンエピタキシャルウェーハを製造する方法を説明する。先ず、シリコンウェーハWを用意する。ここで、
図2には、用意したシリコンウェーハWとして、結晶方位が(100)方位のシリコンウェーハWの平面図を示している。
図2に示すように、シリコンウェーハWの周縁部101(面取り部)では、周縁部101の周方向に沿って周期的に結晶方位が変化する。具体的には、<100>方位と<110>方位とが45度周期で交互に現れる。なお、
図2では、<100>方位と等価な結晶方位(例えば、[0T0]方位(なお、「T」は、いちバーを意味する。以下同じ)、[010]方位など)は<100>方位として図示している。同様に、
図2では、<110>方位と等価な結晶方位(例えば、[0T1]方位、[01T]方位など)は<110>方位として図示している。<110>方位はファセット成長面とされ、非ファセット成長面である<100>方位に比べて、エピタキシャル層が成長しやすくなっている。
【0025】
シリコンウェーハWを用意した後、ヒータ11により投入温度(例えば650℃)に調整した反応容器2内に
図2のシリコンウェーハWを投入し、その主表面が上を向くように、サセプタ12(ザグリ12b)に載置する。このとき、シリコンウェーハWの周縁部101のうち、ガス供給方向に配置された周縁部101a(
図1参照)の結晶方位を把握できるように、シリコンウェーハWをサセプタ12に載置する。なお、ガス供給方向とは、ガスの流れ方向を意味し、具体的にはガス供給口21の中央とガス排出口36の中央とを結ぶ直線に平行な方向を意味する。例えば、初期状態として、<110>方位の周縁部101がガス供給口21の側(以下、ガス供給側という)に配置されるようにする。この場合、ガス排出口36の側(以下、ガス排出側)の結晶方位も<110>方位となる。なお、周縁部101のそれぞれの位置における結晶方位は、オリエンテーションフラット又はノッチとの相対位置関係から把握できる。以下では、初期状態として、<110>方位の周縁部101がガス供給方向(ガス供給側21、ガス排出側36)に配置されたとし、その初期状態におけるサセプタ12の回転角度を0度とする。
【0026】
次に、ヒータ11により、シリコンウェーハWを水素熱処理温度(例えば1050℃〜1200℃)まで加熱する。次に、シリコンウェーハWの主表面に形成されている自然酸化膜を除去するための気相エッチングを行う。なお、この気相エッチングは、次工程である気相成長の直前まで行われる。
【0027】
次に、シリコンウェーハWを所望の成長温度(例えば1050℃〜1180℃)まで降温し、ガス供給口21を介してシリコンウェーハWの主表面上に原料ガスG(例えばトリクロロシラン)及びキャリアガス(例えば水素)をそれぞれ略水平に供給する。これにより、ウェーハ表面に原料ガスの熱分解(および還元)によって生成されたシリコンが析出し、ウェーハ表面に単結晶シリコンからなるエピタキシャル層が成長する。この気相成長の際に、制御装置16は、回転機構14を制御して、サセプタ12(シリコンウェーハW)を所定の回転速度にて水平回転させる。これにより、エピタキシャル層をシリコンウェーハW上に膜厚均一に成長させることができる。
【0028】
回転機構14によるシリコンウェーハWの回転により、ガス供給方向(ガス供給側21、ガス排出側36)の周縁部101aの結晶方位が周期的に変化する。制御装置16は、その結晶方位の周期的な変化に応じて、上下動機構15を制御してサセプタ12を周期的に上下動させる。ここで、
図3は、
図1のA部の拡大図であり、ガス供給方向(ガス供給側21、ガス排出側)の結晶方位に応じて、サセプタ12の上下位置が変化している様子を示している。詳細には、
図3(A)は、ガス供給方向の結晶方位が非ファセット成長面である<100>方位又は<100>方位に等価な結晶方位(
図3(A)ではガス供給側21が[0T0]方位、ガス排出側36が[010]方位)の場合における様子を示している。
図3(B)は、ガス供給方向の結晶方位がファセット成長面である<110>方位又は<110>方位に等価な結晶方位(
図3(B)ではガス供給側21が[0T1]方位、ガス排出側36が[01T]方位)の場合における様子を示している。
【0029】
図3(A)に示すように、<100>方位又は<100>方位に等価な結晶方位がガス供給方向に配置された場合には、制御装置16は、サセプタ12の上面12aがガス案内部材23の上面23aと略一致した位置となるように、サセプタ12の上下方向の位置を制御する。これに対し、
図3(B)に示すように、<110>方位又は<110>方位に等価な結晶方位がガス供給方向に配置された場合には、制御装置16は、
図3(A)の状態(標準状態)に対してサセプタ12を所定距離dだけ下降させる。つまり、
図3(B)の状態では、ガス案内部材23の上面23aに対してサセプタ12の上面12aが所定距離dだけ下がっている。なお、別の言い方をすると、
図3(A)の標準状態は、
図3(B)の状態からサセプタ12が所定距離dだけ上昇している。
【0030】
図2で説明したように、<100>方位と<110>方位は45度毎に交互に現れるので、制御装置16は、サセプタ12(シリコンウェーハW)が1回転する間に、<100>方位がガス供給方向に向いたときにサセプタ12の位置が最上点となるようにし(
図3(A)の状態)、<110>方位がガス供給方向に向いたときにサセプタ12の位置が最下点となるようにする。つまり、制御装置16は、サセプタ12が1回転する間に、4往復分、サセプタ12を上下動させる。
【0031】
図4、
図5は、サセプタ12の回転角度に対するサセプタ12の上下位置の推移を例示した図である。
図4、
図5の横軸はサセプタ12の回転角度(初期状態からの回転角度)及び各回転角度での結晶方位(ガス供給方向に向いた周縁部101aにおける結晶方位)を示している。
図4、
図5の縦軸は、サセプタ12の上下位置を示しており、上下位置=0は
図3(A)の状態、上下位置=−dは
図3(B)の状態に対応する。
図4では、サセプタ12の上下位置の推移形状が三角波状となっている。詳細には、ガス供給方向の結晶方位が<100>方位から<110>方位に変化するにしたがって、サセプタ12の上下位置を0から−dに徐々に(比例的に)下降させている。同様に、ガス供給方向の結晶方位が<110>方位から<100>方位に変化するにしたがって、サセプタ12の上下位置を−dから0に徐々に(比例的に)上昇させている。
【0032】
図5では、サセプタ12の上下位置の推移形状が矩形波状となっている。詳細には、ガス供給方向の結晶方位が<100>方位となる回転角度(=45度、135度、225度、315度)の前後22.5度の範囲では上下位置=0となっており、<110>方位となる回転角度(=0度、90度、180度、270度、360)の前後22.5度の範囲では上下位置=−dとなっている。
図4の態様、
図5の態様のどちらを採用しても良い。
【0033】
このように、ファセット成長面である<110>方位がガス供給方向に向いたときにはサセプタ12を下降させているので、その<110>方位の周縁部101a(ガス供給側21及びガス排出側36の周縁部101a)に原料ガスGを届きにくくすることができる。その結果、その周縁部101a周辺のエピタキシャル層の成長速度を抑えることができる。また、ガス供給方向に向いた周縁部101a以外の周縁部101は、周縁部101aに比べて、ガス供給方向から離れた位置に配置されることになるので、サセプタ12が下降したことによる影響(成長速度への影響)は少ない。つまり、周縁部101a周辺のみ、成長速度を抑えることができる。
【0034】
また、非ファセット成長面である<100>方位がガス供給方向に向いたときにはサセプタ12を上昇させているので、その<100>方位の周縁部101a周辺のエピタキシャル層の成長速度が低下するのを防止できる。
【0035】
以上より、<110>方位の周縁部101周辺のみ成長速度(ファセット成長)を抑えることができるので、<110>方位のエピタキシャル層の膜厚と、<100>方位のエピタキシャル層の膜厚の差を小さくできる。その結果、周縁部101の膜厚を均一化できる。
【0036】
最後に、エピタキシャルウェーハを取り出し温度(例えば、650℃)まで降温し、反応容器2外へと搬出する。
【実施例】
【0037】
本発明の効果を確認するために、以下の試験を行った。先ず、導電型がP型、直径300mm、抵抗率10Ωcm、厚さ775μm、結晶方位(100)、CZ法で製造されたシリコン単結晶基板の試料を準備した。エピタキシャル成長温度1130℃、流量9slmの原料ガスSiHCl
3の条件で、試料上に4μmのエピタキシャル層を成膜した。このとき、サセプタを15rpmの回転速度で水平回転させた。また、<110>方位がガス供給方向に向いたときにサセプタを−0.5mmの高さ(
図3(B)の状態)、<100>方位がガス供給方向に向いたときに標準のサセプタの高さ(
図3(A)の状態)になるように、サセプタ1回転でサセプタを上下に4往復させた。サセプタの上下動の態様は
図4の態様とし、1秒間でサセプタが上下に1往復するように、サセプタの上下動を制御した。
【0038】
比較例として、
図6(A)、(B)に示すように、サセプタの上下位置を固定とし、それ以外の条件は上記実施例と同一条件として、エピタキシャル層を成膜した。
図6(A)は、サセプタ12の上下位置を標準位置(
図3(A)の状態、サセプタ12の上面12aとガス案内部材23の上面23aの差d=0)で固定とした態様である(比較例1)。
図6(B)は、サセプタ12の上下位置を標準位置から−0.5mm下げた位置(
図3(B)の状態、サセプタ12の上面12aとガス案内部材23の上面23aの差d=−0.5mm)で固定とした態様である(比較例2)。
【0039】
そして、実施例、比較例1、2で得られたシリコンエピタキシャルウェーハの表面に対してZDD(FrontZDD)を評価した。今回は、ウェーハ中心から148mmの位置のFrontZDDを、ウェーハの周方向に亘って測定した。なお、ZDDは、ウェーハの高さをウェーハの半径方向の長さで2回微分を行ったものである。別の言い方をすると、ZDDは、ウェーハの表面変位量(nm)をウェーハの径方向の位置変化(mm)で微分したものである。FrontZDD=0は、表面変位量の傾きが変化していないことを示す。
【0040】
図7は、そのFrontZDDの測定結果を示しており、詳細には、周方向の位置(角度)に対するFrontZDDの変化を示している。▲のプロット点は実施例の結果を示し、◇のプロット点が比較例1の結果を示し、□のプロット点は比較例2の結果を示している。また、各角度での結晶方位は
図4や
図5の横軸と同じである。
図7に示すように、いずれの結果も、ファセット成長面(<110>方位)に対応する角度(=0度、90度、180度、270度、360度)でのFrontZDDが、非ファセット成長面(<100>方位)に対応する角度(=45度、135度、225度、315度)でのFrontZDDに比べて大きくなっている。しかし、実施例の結果では、比較例1、2に比べて、FrontZDDのレンジ(変化幅:最大のFrontZDDと最小のFrontZDDの差)が改善されている。具体的には、比較例1のFrontZDDのレンジは50.9nm/mm
2、比較例2でのFrontZDDのレンジは49.5nm/mm
2であり、それら比較例1、2の結果に対して、実施例でのFrontZDDのレンジは40.2nm/mm
2に改善(約20%の改善)された。これにより、周縁部の膜厚の均一性を向上できたことを示せた。なお、比較例2の結果で示されるように、サセプタの高さを単純に変えただけでは、FrontZDDのレンジは改善されない。これは、ファセット成長面(<110>方位)の成長速度に加えて、非ファセット成長面(<100>方位)の成長速度も抑えてしまうからである。
【0041】
なお、本発明に係るエピタキシャルウェーハの製造方法は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限度で種々の変更が可能である。例えば、(100)方位以外の結晶方位のシリコンウェーハやシリコンウェーハ以外の半導体ウェーハ上にエピタキシャル層を成膜するときにも本発明を適用することができる。