特許第5791031号(P5791031)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5791031二次電池用電極バインダー及びこれを用いた二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791031
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】二次電池用電極バインダー及びこれを用いた二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20150917BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20150917BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20150917BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20150917BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20150917BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20150917BHJP
【FI】
   H01M4/62 Z
   H01M4/13
   H01M4/36 A
   H01M4/48
   H01M4/66 A
   H01M10/0566
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-553963(P2011-553963)
(86)(22)【出願日】2010年3月16日
(65)【公表番号】特表2012-519948(P2012-519948A)
(43)【公表日】2012年8月30日
(86)【国際出願番号】KR2010001621
(87)【国際公開番号】WO2010107229
(87)【国際公開日】20100923
【審査請求日】2011年9月7日
(31)【優先権主張番号】10-2009-0022143
(32)【優先日】2009年3月16日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チェ、スンユン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジェヤン
(72)【発明者】
【氏名】オー、ビュン、フン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヨンジュ
(72)【発明者】
【氏名】ウーム、インスン
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−339092(JP,A)
【文献】 特開2008−288059(JP,A)
【文献】 特開2008−218385(JP,A)
【文献】 特表2008−546135(JP,A)
【文献】 特表2008−537841(JP,A)
【文献】 特開2001−006682(JP,A)
【文献】 特開2008−186732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池用アノードであって、
リチウムを可逆的に吸蔵及び放出することができるアノード活物質と、
高分子を含む二次電池のアノード用バインダーと、
電極集電体とを備え、
前記高分子が、前記アノード活物質との結着力(cohesion force)が100gf/cm以上であり、
電極集電体との接着力(adhesion force)が0.1〜70gf/mmであり、
重量平均分子量が150,000〜5,000,000であるポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)であり、
前記アノード活物質が、SiOx(0<x<2)と炭素材との複合体であり、
前記電極集電体は銅箔であることを特徴とする、二次電池アノー
【請求項2】
前記炭素材が、カーボン、石油コーク、活性化カーボン、カーボンナノチューブ、黒鉛及び炭素纎維からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池アノー
【請求項3】
前記二次電池のアノード用バインダー及び前記アノード活物質が、二次電池のアノード用バインダー:前記アノード活物質=3〜20重量部:80〜97重量部の割合で含まれることを特徴とする、請求項1または2に記載の二次電池用アノード。
【請求項4】
前記二次電池用アノードが、パッキング密度(packing density)が1.2〜1.6g/ccであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の二次電池用アノード。
【請求項5】
二次電池であって、
カソードと、アノードと、分離膜と、及び電解液を備えてなり、
前記アノードが、請求項1から4の何れか一項に記載の次電池用アノードであることを特徴とする、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用電極バインダー、これを含む電極及び前記電極を含む二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、リチウムイオンの挿入及び脱離が可能な物質をアノード及びカソードに用い、カソードとアノードの間に有機電解液又はポリマー電解液を充填させて製造し、リチウムイオンがカソード及びアノードで挿入及び脱離される時の酸化反応、還元反応により電気的エネルギーを生成する。
【0003】
現在、リチウム二次電池のアノードを構成する電極活物質には炭素質材料が主に用いられている。しかし、リチウム二次電池の容量をさらに向上させるためには、高容量の電極活物質の使用が必要である。ここに近来に至ってはシリコン、錫などの金属系材料等がリチウムとの化合物の形成反応を介し多量のリチウムを可逆的に吸蔵、放出できることが知られながら、これに対する幾多の研究が行われている。
【0004】
しかし、このような金属系材料等は、充/放電時にリチウムとの反応による体積の変化が非常に大きいので、継続的な充/放電時にアノード活物質が集電体(例:Cu foil)から脱離されるか、又はアノード活物質の相互間に接触界面の抵抗が増加し、これによりサイクルの進行時に容量が急激に低下し、サイクルの寿命が短くなるとの問題がある。
【0005】
したがって、このような金属系材料を適用した電極の製造時に、充/放電に伴う大きな体積の変化に耐えられ得るよう優れた接着力及び機械的特性を有するバインダーの適用が重要である。
【0006】
既存の黒鉛系アノード活物質用バインダー、即ち、PVdF(polyvinylidene fluoride)、SBR(styrene butadiene rubber)などを金属系材料にそのまま用いる場合は、充/放電時に活物質とバインダーの界面及びバインダー内で亀裂が発生し(Cohesive failure)、集電体から活物質の脱離が起こることになる(Adhesive failure)。その反面、優れた接着力を有するものと知られているPI(poly imide)を用いた場合は電極内の亀裂は減少するものの、バインダーと集電体の結着が非常に強いため、充/放電後集電体が伸びるかしわばむなど、電極の形態が変形するとの問題点がある。
【発明の概要】
【技術的課題】
【0007】
本発明は、電極内活物質との結着力(cohesion force:凝集力、結合力)及び電極集電体との接着力(adhesion force)を向上させることができ、このような特性の向上を介し集電体から電極活物質の脱離を抑制することができ、集電体の変形を抑制することができる二次電池用電極バインダーを提供しようとする。
【0008】
さらに、本発明は、前記二次電池用電極バインダーを含む二次電池用電極、及び前記電極を含んで寿命特性が改善され、充/放電に伴う電極厚さの増加が抑制され得る二次電池を提供しようとする。
【技術的解決方法】
【0009】
本発明は、リチウムを可逆的に吸蔵及び放出することができる(準)金属系電極活物質との結着力(cohesion force)が100gf/cm以上であり、電極集電体との接着力(adhesion force)が0.1〜70gf/mmである高分子を含み、前記高分子はポリアミドイミド(polyamide imide)、ポリアミド(polyamide)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリアクリル酸(polyacrylic acid)及びポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)でなる群から1種以上選択されることが特徴である二次電池用電極バインダーを提供する。好ましくは、本発明で前記(準)金属系電極活物質は(準)金属系アノード活物質であって、前記電極集電体はアノード集電体であり、本発明に係る二次電池用電極バインダーは二次電池用アノードバインダーである。
【0010】
さらに、本発明は、前記本発明に係る二次電池用電極バインダー;(準)金属系電極活物質;及び電極集電体を含む二次電池用電極を提供する。好ましくは、本発明に係る二次電池用電極は二次電池用アノードである。
【0011】
さらに、本発明はカソード、アノード、分離膜、及び電解液を含む二次電池において、前記カソード又はアノードは、本発明に係る二次電池用電極バインダー;(準)金属系電極活物質;及び電極集電体を含む二次電池用電極であることが特徴である二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、充/放電時に(準)金属系電極活物質と本発明の電極バインダーとの間の亀裂を抑制することができ、(準)金属系電極活物質間の距離の増加を抑制することができ、本発明の電極バインダーと電極集電体との間の適正な接着力(adhesion force)により安定的な電極を構成することができる。これに伴い、本発明に係る二次電池は、寿命特性が改善され、サイクル中に充/放電に伴う電極の厚さの増加が抑制されるとの利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1の180°ピールテスト(Peel test)を示す断面図である。
図2】実施例2に基づき、ポリアクリロニトリル(PAN)バインダーを適用した二次電池を50回充/放電し分解した後のアノード断面のSEM写真である。
図3】比較例3に基づき、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)バインダーを適用した二次電池を50回充/放電し分解した後のアノード断面のSEM写真である。
図4】比較例4に基づき、ポリイミド(PI)バインダーを適用した二次電池を50回充/放電し分解した後のアノード写真である。
【発明を実施のための最良の形態】
【0014】
本発明に係る二次電池用電極バインダーは、(準)金属系電極活物質との結着力(cohesion force)が100gf/cm以上であり、電極集電体との接着力(adhesion force)が0.1gf/mm乃至70gf/mmである高分子を含む。好ましくは、本発明に係る二次電池用電極バインダーは、前記結着力及び接着力の特性を有する高分子である。このとき、前記(準)金属系電極活物質はリチウムを可逆的に吸蔵及び放出することができる電極活物質である。
【0015】
さらに、本発明に係る二次電池用電極バインダーは、(準)金属系電極活物質との結着力が100gf/cm以上であり、電極集電体との接着力が0.1gf/mm乃至70gf/mmである高分子を単独で含むか、又は2種以上混合して含むことができる。好ましくは、前記(準)金属系電極活物質は(準)金属系アノード活物質であって、前記電極集電体はアノード集電体であり、本発明に係る二次電池用電極バインダーは二次電池用アノードバインダーである。
【0016】
本発明に係る二次電池用電極バインダーにおいて、前記高分子と電極集電体との接着力(adhesion force)は0.1gf/mm乃至70gf/mmであるのが好ましく、5gf/mm乃至50gf/mmであるのがより好ましい。前記高分子と電極集電体との接着力(adhesion force)が70gf/mmより大きい場合、(準)金属系電極活物質の充/放電時に伴われる体積膨張により集電体を含む電極自体が変形し、このような場合、寿命特性の劣化と電極変形に伴う安全性の問題が惹起され得る。その反面、接着力が0.1gf/mm未満の場合、サイクル中に電極活物質が集電体から脱離され活物質の充/放電ができなくなる。
【0017】
さらに、本発明に係る二次電池用電極バインダーにおいて、前記高分子と(準)金属系電極活物質との結着力(cohesion force)は100gf/cm以上であるのが好ましく、100gf/cm乃至1,000,000gf/cmであるのがより好ましい。
【0018】
前記高分子と(準)金属系電極活物質との結着力(cohesion force)が100gf/cm未満の場合、充/放電時に電極内の電極活物質の間に亀裂が発生し、このような亀裂は、サイクルが進められるほど深化し、活物質間の距離が遠くなることになる。このような相互間接触界面の大きな変化に伴う抵抗の増加により、電極内の電気伝導性が低下して寿命の特性が低下し、サイクル後電極の厚さが著しく増加することになる。
【0019】
前記高分子と(準)金属系電極活物質との結着力が100gf/cm以上と大きい場合は、電極内の亀裂が緩和され、電極の厚さ膨張も抑制され容量及び寿命の特性が改善され、電極の厚さの増加率が小さいため電池構造の設計が容易であり、サイクル後単位体積当りの容量を増加させるとの効果がある。
【0020】
本発明において二次電池用電極バインダーとしての高分子は、(準)金属系電極活物質との結着力が100gf/cm以上であり、電極集電体との接着力が0.1gf/mm乃至70gf/mmの高分子としてポリアミドイミド(polyamide imide)、ポリアミド(polyamide)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリアクリル酸(polyacrylic acid)及びポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)でなる群から選択され、これら高分子等は、単独に又は2種以上混合して用いることができる。さらに、2種以上混合された高分子が「(準)金属系電極活物質との結着力(cohesion force)が100gf/cm以上であり、電極集電体との接着力(adhesion force)が0.1gf/mm乃至70gf/mm」である特性を満足する場合も本発明の二次電池用電極バインダーとして用いることができる。
【0021】
前記高分子の中でも、本発明の二次電池用電極バインダーとしての高分子は、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)であるのが好ましい。ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)は接着力に非常に優れ、ポリイミド(polyimide)のようにイミド化(imidization)のための高温での熱処理過程がさらに必要ではないので、電極の製造工程の効率を向上させることができるためである。
【0022】
このようなポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)の重量平均分子量は特に限定されないが、150,000乃至5,000,000であるのが好ましく、200,000乃至3,000,000であるのがより好ましい。重量平均分子量が150,000未満のポリアクリロニトリルを電極バインダーとして用いる場合は、(準)金属系電極活物質との接着力が弱化し、カーボネイト系電解液に溶解又は膨潤され集電体から電極の脱離が発生し得る。さらに、重量平均分子量が5,000,000を超過するポリアクリロニトリルを電極バインダーとして用いる場合は、電極内の電気抵抗が増加することになり、スラリーの粘度が高くなって電極の製造が難しくなり得る。
【0023】
具体的に、前記ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)の重量平均分子量が200,000乃至3,000,000の場合は、(準)金属系電極活物質との結着力が800gf/cm乃至2000gf/cmを示し、電極集電体との接着力は10gf/mm乃至30gf/mmを示して安定的な電極を構成することができ、これに伴い二次電池の性能(寿命及び充/放電特性)を向上させることができる。
【0024】
本発明において前記(準)金属系電極活物質は、当業界に周知の通常の(準)金属系アノード活物質が用いられ得、例えば(i)Si、Al、Sn、Sb、Bi、As、Ge、Pb、Zn、Cd、In、Tl及びGaでなる群から選択される金属又は準金属;(ii)前記金属又は準金属の酸化物;(iii)前記金属又は準金属の合金;(iv)前記金属又は準金属と炭素材の複合体;及び(v)前記金属又は準金属の酸化物と炭素材の複合体;でなる群から選択される1種以上であり得るが、これらに限定されない。
【0025】
前記金属又は準金属の酸化物は、より具体的にSiOx、AlOx、SnOx、SbOx、BiOx、AsOx、GeOx、PbOx、ZnOx、CdOx、InOx、TlOx及びGaOx(この時、0<x<2)でなる群から選択され得るが、これに限定されない。
【0026】
本発明において炭素材は、カーボン、石油コーク、活性化カーボン、カーボンナノチューブ、黒鉛及び炭素纎維でなる群から選択される1種以上が用いられ得、前記黒鉛は天然黒鉛又は人造黒鉛が用いられ得るが、炭素材が前記例示されたものなどに限定されない。
【0027】
本発明において電極集電体は、前記(準)金属系電極活物質及び本発明の電極バインダーが容易に接着され得ながら伝導性の高い金属材料であって、電池の電圧範囲で反応性がないものであれば何れでも使用可能である。好ましくは、前記電極集電体は当業界に周知の通常のアノード集電体が用いられ得、代表的な例として銅、アルミニウム、金、ニッケル、又はこれらの合金又は組合せにより製造されるメッシュ(mesh)、ホイル(foil)などがあるが、これに限定されない。好ましくは、銅箔が用いられ得る。
【0028】
本発明は、前記二次電池用電極バインダーを用いた二次電池用電極を提供する。具体的に、本発明の二次電池用電極は、本発明に係る二次電池用電極バインダー;(準)金属系電極活物質;及び電極集電体を含むことが特徴である。好ましくは、本発明に係る二次電池用電極バインダーは二次電池用アノードバインダーであって、前記(準)金属系電極活物質は(準)金属系アノード活物質であり、前記電極集電体はアノード集電体であり、本発明の二次電池用電極は二次電池用アノードである。
【0029】
本発明の二次電池用電極は、本発明に係る二次電池用電極バインダーを用いることを除き、当分野に周知の通常の方法で製造することができる。例えば、(準)金属系電極活物質に本発明の二次電池用電極バインダーを混合し、必要に応じて溶媒、導電剤、分散剤を混合及び攪拌して電極用スラリーを製造した後、これを金属材料の電極集電体に塗布し圧縮した後、乾燥して電極を製造することができる。
【0030】
本発明の二次電池用電極において、前記二次電池用電極バインダー及び(準)金属系電極活物質は、二次電池用電極バインダー:(準)金属系電極活物質=3〜20重量部:80〜97重量部の割合で含まれ得る。前記(準)金属系電極活物質の含量が80重量部未満であれば高容量の電極を製造することができないとの問題があり、97重量部を超過すれば電極内バインダーの含量が足りず(準)金属系電極活物質が電極集電体で剥離されるので、電極の形成が困難である。さらに、本発明の電極バインダーの含量が20重量部より大きければ高容量電極の具現が困難であり、3重量部未満の場合バインダーの含量が小さいため電極の製造が難しい。
【0031】
さらに、本発明の二次電池用電極において、電極集電体の単位面積当り粘着される電極活物質と電極バインダーの量は特に限定されない。非制限的な例を挙げると、本発明の二次電池用電極において(準)金属系電極活物質と電極バインダーは、電極集電体上に2.3〜3.0mg/cm2に塗布し、電極の製造後15〜25μmの厚さになるようプレスしてパッキング密度(packing density)を1.2〜1.6g/ccで構成することができる。(準)金属系電極活物質と電極バインダーの量が2.3mg/cm2未満であれば、高容量の電極を製造することができないとの問題がある。さらに、PVdFのように接着特性の不良なバインダーを適用する場合、プレスを介し(準)金属系電極活物質とバインダー、電極集電体の接触面積を高めれば充/放電特性が改善されるので、パッキング密度が1.2g/cc以上になるようにプレスするのがよい。
【0032】
導電剤は、二次電池で化学変化を発生しない電子伝導性物質であれば特別な制限がない。一般に、カーボンブラック(carbon black)、黒鉛、炭素纎維、カーボンナノチューブ、金属粉末、導電性金属酸化物、有機導電剤などを用いることができ、現在導電剤として市販されている商品には、アセチレンブラック系列(シェブロン・ケミカル・カンパニー(Chevron Chemical Company)又はガルフ・オイル・カンパニー(Gulf Oil Company)製品など)、ケッチェンブラック(Ketjen Black)EC系列(アーマク・カンパニー(Armak Company)製品)、バルカン(Vulcan)XC-72(カボット・カンパニー(Cabot Company)製品)及びスーパーP(エム・エム・エム(MMM)社製品)などがある。さらに、電極活物質に対し導電剤は、1〜30重量比で適宜用いることができる。
【0033】
電極用スラリーの製造に用いられる前記溶媒の非制限的な例には、NMP(N-メチルピロリドン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、アセトン、ジメチルアセトアミドなどの有機溶媒又は水などがあり、これら溶媒は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造収率を考慮し、前記電極活物質、電極バインダー、導電剤を溶解及び分散させることができる程度であれば十分である。
【0034】
本発明の二次電池はカソード、アノード、分離膜及び電解液を含み、前記カソード又はアノードは、本発明の二次電池用電極、即ち本発明に係る二次電池用電極バインダー;(準)金属系電極活物質;及び電極集電体を含む二次電池用電極であることが特徴である。このとき、前記二次電池用電極はアノードであるのが好ましい。さらに、本発明の二次電池はリチウム二次電池であるのが好ましく、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池又はリチウムイオンポリマー二次電池などを含む。
【0035】
本発明の二次電池は、本発明に係る電極バインダーを用いて製造した電極を含み、当技術分野に周知の通常の方法で製造することができる。例えば、カソードは当業界に通常周知のカソードを用い、アノードは本発明の二次電池用電極を用い、前記カソードとアノードの間に多孔性の分離膜を入れ電解液を投入して製造することができる。
【0036】
本発明の二次電池において、アノードとして本発明に係る電極が用いられる場合カソードは特に制限されず、当業界に周知の通常の方法に従いカソード活物質がカソード集電体に結着された形に製造することができる。
【0037】
カソード活物質は、従来二次電池のカソードに用いられ得る通常のカソード活物質が使用可能であり、これの非制限的な例にはLiMxOy(M=Co、Ni、Mn、CoaNibMnc)のようなリチウム転移金属複合酸化物(例えば、LiMn2O4などのリチウムマンガン複合酸化物、LiNiO2などのリチウムニッケル酸化物、LiCoO2などのリチウムコバルト酸化物、リチウム鉄酸化物及びこれら酸化物のマンガン、ニッケル、コバルト、鉄の一部を他の転移金属などに置き換えたもの、又はリチウムを含有した酸化バナジウムなど)、又はカルコゲン化合物(例えば、二酸化マンガン、二硫化チタン、二硫化モリブデンなど)などが使用可能である。好ましくは、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、Li(NiaCobMnc)O2(0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi1-YCoYO2、LiCo1-YMnYO2、LiNi1-YMnYO2(ここで、0≦Y<1)、Li(NiaCobMnc)O4(0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn2-zNizO4、LiMn2-zCozO4(ここで、0<Z<2)、LiCoPO4、LiFePO4又はこれらの混合物などを用いることができる。
【0038】
カソードの製造時に使用可能なバインダーは、当業界に周知の通常のバインダー、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)などを用いることができ、その他にも、本発明に係る二次電池用電極バインダーを用いることもできる。さらに、カソード集電体の非制限的な例にはアルミニウム、ニッケル又はこれらの組合せにより製造されるメッシュ、ホイルなどがある。
【0039】
電解液は、当業界に周知の通常の電解液成分、例えば、電解質塩と電解液溶媒を含む。
【0040】
前記電解液溶媒は、通常電解液用有機溶媒として用いているものであれば特に制限せず、環形カーボネイト、線形カーボネイト、ラクトン、エーテル、エステル、アセトニトリル、ラクタム、ケトン及び/又はこれらのハロゲン誘導体を用いることができる。
【0041】
前記環形カーボネイトの非制限的な例にはエチレンカーボネイト(EC)、プロピレンカーボネイト(PC)、ブチレンカーボネイト(BC)、フルオロエチレンカーボネイト(FEC)などがあり、前記線形カーボネイトの非制限的な例にはジエチルカーボネイト(DEC)、ジメチルカーボネイト(DMC)、ジプロピルカーボネイト(DPC)、エチルメチルカーボネイト(EMC)及びメチルプロピルカーボネイト(MPC)などがある。前記ラクトンの非制限的な例にはガンマブチロラクトン(GBL)があり、前記エーテルの非制限的な例にはジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタンなどがある。前記エステルの非制限的な例にはメチルホルマート、エチルホルマート、プロピルホルマート、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、ブチルプロピオネート、メチルピバレートなどがある。さらに、前記ラクタムの非制限的な例にはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などがあり、前記ケトンの非制限的な例にはポリメチルビニルケトンがある。さらに、これら有機溶媒は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0042】
電解質塩は、通常電解液用電解質塩に用いているものであれば特に制限しない。電解質塩の非制限的な例はA+B-のような構造の塩であって、A+はLi+、Na+、K+のようなアルカリ金属カチオン又はこれらの組合せでなるイオンを含み、B-はPF6-、BF4-、Cl-、Br-、I-、ClO4-、AsF6-、CH3CO2-、CF3SO3-、N(CF3SO22-、C(CF2SO23-のようなアニオン、又はこれらの組合せでなるイオンを含む塩である。特に、リチウム塩が好ましい。これら電解質塩は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0043】
本発明の二次電池は分離膜を含むことができる。使用可能な分離膜は特別な制限がないが、多孔性分離膜を用いるのが好ましく、非制限的な例にはポリプロピレン系、ポリエチレン系、又はポリオレフィン系多孔性分離膜などがある。
【0044】
本発明の二次電池は外形に制限がないが、缶を用いた円筒状、角形、ポーチ(pouch)形又はコイン(coin)形などになり得る。
【0045】
以下、本発明を実施例を介し詳しく説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するものであるだけで、本発明が下記実施例により限定されるものではない。
【0046】
[実施例1]接着力及び結着力の測定
ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile、PAN)をバインダーとして用い、下記の接着力及び結着力の測定試験を行った。
【0047】
1. バインダーと集電体の間の接着力(adhesion force)の測定
重量平均分子量が1,150,000であるポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile、PAN)バインダーをN-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone:NMP)に溶解させて電極バインダー溶液を得た後、銅箔フィルム上に塗布し、120℃で大凡6時間の間乾燥させてバインダーフィルムを得た。前記方法でバインダーコーティングされた銅箔を5mm間隔に裁断した後、図1に示すように180°ピールテスト(peel test)を行ってバインダーと銅箔の接着力(adhesion force)を測定しており、その結果を表1に示した。
【0048】
2. 電極内活物質及びバインダー間の結着力(cohesion force)の測定
重量平均分子量が1,150,000であるポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile、PAN)バインダーに、金属酸化物系SiO-C複合体のアノード粉末をバインダー:アノード粉末=10重量部:90重量部の割合で混合し、これらを溶媒のNMPに入れ混合して均一なスラリーを製造した。その後、前記スラリーを銅箔に3.78mg/cm2で塗布し、18μmの厚さになるようロールプレス(roll press)してアノード電極を得た。製作されたそれぞれのアノードを1cm間隔に裁断した後、スコッチテープ(Scotch Tape)を利用して180°ピールテストを進めており、その結果を表1に記載した。
【0049】
[比較例1及び2]接着力及び結着力の測定
ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile、PAN)に代えて、比較例1はポリビニリデンフルオリド(polyvinylidene fluoride、PVdF)をバインダーとして用い、比較例2は4,4'-ビフタル酸無水物(Biphthalic anhydride、BPDA)と4,4'-オキシジフェニレンジアミン(oxydiphenylene diamine、ODA)を縮重合して得たポリイミド(polyimide、PI)をバインダーとして用いたことを除いては、実施例1と同一の方法で接着力及び結着力の測定試験を行った。なお、その結果を下記表1に記載した。
【表1】
【0050】
表1を検討してみれば、本発明に係る高分子のポリアクリロニトリル(PAN)を用いた実施例1は、結着力及び接着力の結果が本発明の範囲内に測定されることを確認することができた。しかし、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)を用いた比較例1は、結着力及び接着力の結果が本発明の範囲内に含まれず、ポリイミド(PI)を用いた比較例2は、接着力が本発明の範囲内に含まれず過度であるのに従い、電極に適用時に電極の変形を起こすことを確認することができた。
【0051】
[実施例2]二次電池の製造
エチレンカーボネイト(EC)及びジエチルカーボネイト(DEC)を体積比3:7で混合した非水電解液溶媒に、1MのLiPF6を添加して非水電解液を製造した。
【0052】
アノード活物質として金属酸化物系SiO-C複合体のアノード粉末と、バインダーとして前記実施例1で用いられたポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile、PAN)を、アノード粉末:バインダー=90重量部:10重量部の割合で混合し、これらをNMPに添加してアノードスラリーを製造した後、銅箔集電体上にコーティングしてアノードを製造した。
【0053】
前記の方法で製作したアノードを面積1.4875cm2の円形に開けてこれを作用極(アノード)にし、円形に開けた金属リチウム(lithium)箔を対極(カソード)にしてコイン(coin)形ハーフセル(half cell)を製作した。作用極と対極の間には、多孔質ポリオレフィン分離膜を介在させた後リチウム二次電池を製造した。
【0054】
[実施例3]二次電池の製造
重量平均分子量が150,000のポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile、PAN)を用いたことを除いては、実施例2と同一の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0055】
[比較例3及び4]二次電池の製造
ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile、PAN)に代えて、比較例3は前記比較例1で用いられたポリビニリデンフルオリド(polyvinylidene fluoride、PVdF)をバインダーとして用い、比較例4は前記比較例2で用いられた4,4'-ビフタル酸無水物(Biphthalic anhydride、BPDA)と4,4'-オキシジフェニレンジアミン(oxydiphenylene diamine、ODA)を縮重合して得たポリイミド(polyimide、PI)をバインダーとして用いたことを除いては、実施例2と同一の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0056】
[実験例1]二次電池の性能評価
前記実施例2、3及び比較例3、4で製造された二次電池を25℃で5mVまで0.1Cの速度で充電し、5mVで0.005Cの電流となるまで充電し、1Vまで0.1Cの速度で放電して2回充/放電した後、同一の方法で、0.5C/0.5Cの速度で充/放電した。50サイクル後、電池の寿命特性、電池の厚さ増加率を下記のように測定しており、その結果を下記表2に示した。
* 寿命特性(%)= 50th放電容量(mAh)/1st放電容量(mAh)x 100
* 電池の厚さ増加率(%)=(50th充電状態の電極の厚さ−サイクル前の電極の厚さ)/サイクル前の電極の厚さ x 100
【表2】
【0057】
表2、図2及び図3を検討してみれば、バインダーとしてポリアクリロニトリル(PAN)を用いて製造した電池(実施例2及び3)が、バインダーとしてポリビニリデンフルオリド(PVdF)を適用した電池(比較例3)に比べ寿命特性及び厚さの制御能力が向上されたが、これは実施例2及び3の電池の場合、充/放電サイクルの間アノード活物質とアノード集電体の接着(adhesion)が安定的に維持され、アノード活物質粒子間の結着(cohesion)が向上されることによりアノード内の亀裂が緩和され、全体的なアノードの厚さが抑制されたためである。
【0058】
さらに、バインダーとしてポリイミド(PI)を適用した電池(比較例4)の場合、50thサイクル後電池の分解時に電極(アノード)自体にしわばむ現象があったが(図4を参照)、このような電極の変形は、バインダーと集電体の間の必要以上の過度な接着力のためであると判断される。このような場合、サイクルに伴う電極の変形で、電池の厚さの増加及び安全性の面でよくない。
【0059】
一方、重量平均分子量が150,000のポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile、PAN)を適用した電池(実施例3)の場合、重量平均分子量が1,150,000のポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile、PAN)を適用した電池(実施例2)に比べ寿命特性及び厚さの制御能力が多少低下したが、これはポリアクリロニトリルの分子量が接着力及び耐電解液性に影響を及ぼすことが分かる。
図1
図2
図3
図4