【文献】
Sorin Ivanovici, Herwig Peterlik, Claudia Feldgitscher,Michael Puchberger, and Guido Kickelbick,Atom Transfer Radical Polymerization of Complexes Based on TiAnd Zr Alkoxides Modified with β-Keto,Macromolecules,2008年,vol.41, No.4,p.1131−1139
【文献】
Takeshi Otsuka and Yoshiki Chujo,Highly stabilized luminescent polymer nanocomposites:Fluorescence emission from metal quinolate comp,Journal of Materials Chemistry,2010年12月21日,vol.20, No.47,p.10688−10695
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属酸化物粒子と、(i)高分子鎖に共有結合を介して結合され、かつ前記金属酸化物粒子の表面の金属原子に対して配位結合能を有する有機配位子を有する有機高分子化合物、または(ii)前記有機配位子を有する有機高分子化合物を形成する、モノマー又はオリゴマーと、を混合し、有機無機複合組成物を得る第1の工程と、
得られた有機無機複合組成物を硬化させることにより、請求項1から8のいずれか1項に記載の有機無機複合体を得る、第2の工程を含み、
前記第1の工程において、下記(a)〜(c)の少なくとも1つを満たすことを特徴とする有機無機複合体の製造方法。
(a)金属酸化物粒子が2種以上含まれる。
(b)金属酸化物粒子が複合粒子である。
(c)有機高分子化合物、又は、モノマーもしくはオリゴマーに結合された有機配位子が2種以上含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、有機無機複合体及び有機無機複合組成物並びにインクに関する。更に詳しくは、金属酸化物粒子の表面の金属原子を用いて錯体を形成することで、発光特性及び透明性を維持しつつ、2種類以上の発光色を混合した場合に各々の発光色を互いに独立させ、かつその発光色をそのまま保持することが可能な、有機無機複合体、及び有機無機複合組成物、並びに、この有機無機複合組成物を含有するインクに関するものである。
本発明の有機無機複合体及び有機無機複合組成物並びにインクを実施するための好ましい例について、以下に説明する。
なお、以下の例は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、省略、置換などが可能であり、また量、比率、およびその他の変更も可能である。
【0030】
「有機無機複合体」
まず、
図1について説明する。
図1は、本発明の基本構成となる、有機無機複合体を示す模式図である。この
図1では、金属酸化物粒子として酸化ジルコニウム粒子を、金属酸化物粒子の表面の金属原子に対して配位結合能を有する有機配位子として8−キノリノールを、有機高分子化合物としてポリメチルメタクリレート共重合体を用いた場合を例示してある。なお、酸化ジルコニウム粒子以外の金属酸化物粒子を用いる場合や、8−キノリノール以外の有機配位子を用いる場合や、ポリメチルメタクリレート共重合体以外の有機高分子化合物を用いる場合も、原理は上記例と同様である。
【0031】
この有機無機複合体1は、金属酸化物粒子2と、有機高分子化合物3とにより構成される。この有機高分子化合物3の高分子鎖4(高分子主鎖)には、共有結合を介して有機配位子5が結合されている。この有機配位子5は、金属酸化物粒子2の表面の金属原子と錯体6を形成し、このことにより、発光部位を形成するとともに、金属酸化物粒子2との結合がなされて複合化される。
高分子鎖4は任意で選択できるが、有機配位子含有モノマーを構成単位とする部分4aと、ビニル系モノマーを構成単位とする部分4bとを含む、共重合体であることが好ましい。なお目的が達成できる限り、
図1中のxとyの数は任意で選択でき、比率も任意に選択してよい。
【0032】
この有機無機複合体1では、金属酸化物粒子の表面の金属原子に対して配位結合能を有する有機配位子5が、高分子を形成していない配位子単独の状態ではない。有機配位子5は、高分子鎖4と共有結合を介して結合しており、さらに、金属酸化物粒子2の表面の金属原子、すなわちこの基本構成では酸化ジルコニウム中のZrと配位結合により強く結合されるとともに、Zrと共に錯体6を形成している。なお便宜上、互いに結合した有機配位子と金属酸化物粒子や、これらの間の発光部分や、互いに結合した有機配位子と金属酸化物粒子中にある有機配位子の配位結合部分と金属の組み合わせや、あるいは有機配位子の配位結合部分のみを、それぞれ錯体6又は錯体ということがある。したがって本発明のこの基本構成では、高分子鎖4と有機配位子5と金属酸化物粒子2とは、相互に結合して一体化されている。
この構成により、この有機無機複合体1は、次のような効果を有する。
【0033】
まず、発光の高効率化と発光特性の安定化が得られる。その理由は、次のとおりである。
一般に、有機分子における骨格(炭素骨格、及びヘテロ原子が骨格中に存在する骨格も含む)は、立体的な自由度が高いため、外部からのエネルギー付与により骨格が変形(熱振動運動)し易い。同様に、有機配位子により形成された錯体も、有機配位子の骨格が変形し易く、また、配位結合自体にこの骨格の変形を抑制する効果がほとんど無いため、錯体全体も変形し易い。
【0034】
ここで、錯体や錯体の一部が発光部位となる場合、発光させるためには、外部からのエネルギー付与により錯体内の電子のエネルギー準位の遷移や電荷移動遷移(以下、発光のための遷移と称する)を生じさせる必要がある。しかしながら、錯体や錯体の一部が変形し易い場合、外部から付与されたエネルギーの大半が錯体や錯体の一部の変形(熱振動運動)に費やされてしまい、発光のための遷移が生じ難くなる。これにより、発光が不安定になったり、発光効率が低下したり、あるいは、吸収波長や発光波長が変動するという問題が生じる。
【0035】
本基本構成の錯体6の場合においても、有機配位子5がポリマーに結合せずに単独で存在した状態で錯体を形成する場合には、同様に変形が起こり得る。しかしながら、本基本構成の有機無機複合体1は、高分子鎖4と有機配位子5と金属酸化物粒子2とが相互に結合して一体化され、さらに、発光部位である錯体6の両側が質量の大きい高分子鎖4と金属酸化物粒子2により挟まれた形である。よって、本基本構成では、錯体6の変形の自由度が大きく低下し、特定の立体的形状に固定されて安定化される。このように錯体6の形状が安定することで、錯体6に外部から付与されたエネルギーは、錯体の変形に殆ど費やされることなく、発光のための遷移に用いられるので、発光効率の低下を防ぐことができる。また、錯体6の立体形状が固定されているので、吸収波長や発光波長も一定となり、吸収波長の変動や発光の不安定さも無くすことができる。
【0036】
有機無機複合体1においては、マトリックス成分となる高分子鎖4中において、有機配位子5や無機成分である金属酸化物粒子2は、高分子鎖4と相分離や凝集を生じることなく均一かつ安定して分散する。
その理由は、高分子鎖4と有機配位子5と金属酸化物粒子2とが相互に結合して一体化された状態となっているので、高分子鎖4に対して有機配位子5や金属酸化物粒子2が分離や凝集を生じさせない状態が形成されているためと考えられる。
さらに、相分離や凝集を生じないので、有機物相と無機物相との分離や分解を防止することができ、よって経時的な劣化を抑えることができ、その結果、耐久性を向上させることができる。
【0037】
このように、本基本構成の有機無機複合体1では、有機高分子化合物3に導入された有機配位子5が金属酸化物粒子2の表面の金属原子と錯体6を形成した状態で金属酸化物粒子2と複合化している。よって、有機配位子5は高分子鎖4と金属酸化物粒子2により安定化され、よって、発光特性や耐久性を向上させることができる。
【0038】
次に、
図2について説明する。
図2は、本発明の一実施形態である、2種類の有機無機複合体が混合されている状態の有機無機複合体を示す模式図である。1つの発光色を呈することが可能な有機無機複合体1と、前記発光色とは異なる他の発光色を呈することが可能な有機無機複合体1’とが混合されている。有機無機複合体1の有機配位子5を含有する高分子鎖4は金属酸化物粒子2により結合され、さらに有機無機複合体1’の有機配位子5’を含有する高分子鎖4’は金属酸化物粒子2または他の金属酸化物粒子2’により結合されている。
図2においては、有機無機複合体1、1’の内部構造の模式図は、共に1つの複合体のみ記載しており、他の複合体の内部構造は記載を省略してある。
【0039】
この有機無機複合体1では、高分子鎖4に複数の有機配位子5が導入されており、かつ、この有機配位子5と金属酸化物粒子2の表面の金属原子とが錯体6を形成している。一方、他の発光色を呈することが可能な有機無機複合体1’においては、有機配位子5’を含有した高分子鎖4’と金属酸化物粒子2または他の金属酸化物粒子2’の表面の金属原子とが錯体6’を形成している。
これらの錯体6と錯体6’は、シングルナノメートルオーダー又はそれ以上の間隔を保持して離れているので、有機無機複合体1、1’間におけるエネルギー移動を抑制することが可能となる。そして結果として、各々の発光が単独の発光色を保持するとともに、発光特性を安定化することができる。
【0040】
図3について説明する。
図3は、本発明の他の一実施形態を示す。具体的には、互いに異なる発光色を呈することが可能な有機配位子を2種類有する有機無機複合体を示す模式図である。有機無機複合体1’’の高分子鎖4’’は、金属元素と錯体を形成することにより1つの発光色を呈することが可能な有機配位子5’’と、他の発光色を呈することが可能な有機配位子5’’’を含有している。この高分子鎖4’’が金属酸化物粒子2’’により結合されている。
【0041】
この有機無機複合体1’’においては、高分子鎖4’’に導入された有機配位子5’’及び5’’’が、それぞれ金属酸化物粒子2’’の表面の金属原子と錯体6’’、6’’’を形成し、それぞれが1つの発光色及び他の発光色を呈することが可能である。
これらの錯体6’’と錯体6’’’は、高分子鎖4’’および金属酸化物粒子2’’により固定されており、シングルナノメートルオーダー又はそれ以上の間隔を保持し離されている。このため、錯体6’’、6’’’間におけるエネルギー移動を抑制することが可能となり、結果として、各々の発光が単独の発光色を保持するとともに、発光特性を安定化することができる。
以上のように、本発明の有機無機複合体は、
図1に示されるような基本構成を有する有機無機複合体1を提供できる。この有機無機複合体1は、金属酸化物粒子2と、有機配位子含有モノマー4a及びビニル系モノマー4bを有する高分子鎖4に共有結合を介して結合された有機配位子5を有する有機高分子化合物3とを含むことができる。また、この有機高分子化合物3は、有機配位子5が金属酸化物粒子2の表面の金属原子と錯体6を形成することにより、金属酸化物粒子2と結合されている。
そして、本発明の有機無機複合体は、
図2及び
図3に示されるような複数種の発光部位を備えてる有機無機複合体1’ないしは1’’を提供できる。この複合体1’や1’’では、各々の発光色は、互いに独立しかつ保持されることができる。本発明の有機無機複合体は、発光色が異なる複数種の有機無機複合体の複合物や混合物であってもよい。
【0042】
次に、本発明の有機無機複合体に好ましく使用される成分等について詳細に説明する。
金属酸化物粒子は、有機無機複合体を形成できるならば、任意に選択することができる。金属酸化物粒子は好ましくは、金属酸化物または金属複合酸化物の粒子、あるいはこれらを成分として含む粒子である。粒子は1種、または2種以上の組み合わせで使用してよい。この金属酸化物の例としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化鉄、酸化銅、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化セリウム、酸化アンチモンの群から選択される、1種または2種以上が挙げられる。
また、金属複合酸化物としては、ATO(アンチモン添加酸化スズ)、ITO(スズ添加酸化インジウム)、IZO(亜鉛添加酸化インジウム)、AZO(アルミニウム添加酸化亜鉛)、GZO(ガリウム添加酸化亜鉛)の群から選択される、1種または2種以上が挙げられる。
【0043】
この金属酸化物粒子の平均粒子径は任意で選択できるが、1nm以上かつ100nm以下が好ましく、より好ましくは2nm以上かつ50nm以下である。
ここで、金属酸化物粒子の平均粒子径の好ましい例を1nm以上かつ100nm以下と限定した理由は、平均粒子径が1nm未満では、粒子径が小さすぎるために金属酸化物粒子の構造が不安定となり、有機無機複合体における発光特性が変動する可能性がある他、有機溶媒中にて分散不良を引き起こすために良好な有機無機複合体が得難くなる等の問題が生じる可能性があるからである。一方、平均粒子径が100nmを超えると、金属酸化物粒子が大きすぎるために光散乱を生じさせてしまい、その結果、光透過性が低下し、発光強度の低下を招く可能性があるからである。
【0044】
有機無機複合体における金属酸化物粒子の含有率は任意で選択されるが、1質量%以上かつ50質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上かつ20質量%以下である。
ここで、金属酸化物粒子の含有率の好ましい例を、1質量%以上かつ50質量%以下と限定した理由は、この範囲が金属酸化物粒子が良好な分散状態を取りうる範囲であるからである。すなわち、金属酸化物粒子の含有率が1質量%未満であると、有機無機複合体の発光特性が低下する可能性があり、また、50質量%を超えると、ゲル化や凝集沈澱が生じ、均質な有機無機複合体としての特徴を消失する可能性があるので、好ましくない。
【0045】
高分子鎖に共有結合を介して結合された有機配位子を有する有機高分子化合物は任意で選択可能である。しかしながら、分子内に不飽和基と前記金属原子に対して配位結合能を有する有機配位子とを有する有機配位子含有モノマーと、ビニル系モノマーとの、共重合体であることが好ましい。なお本発明では有機高分子とは一般的な意味に理解して良く、少なくとも炭素を含むこと、及び/または、無機元素だけで構成されていないことを意味する。
有機配位子は、金属酸化物粒子の表面の金属原子と錯体を形成するとともに、前記錯体が発光部位を形成するものであれば任意で選択可能であるが、共役系または複数の不飽和結合を有する環状構造を備え、同一配位子中に、孤立電子対を有する元素と水酸基とを有し、この孤立電子対の電子と水酸基の酸素原子とが同一の金属原子に配位することで、環状錯体を形成可能である有機配位子が好ましい。なお高分子鎖に結合する前の有機化合物も、これが高分子鎖に結合した後の基も、有機配位子という用語を用いて説明する場合がある。ここで、孤立電子対を有する元素としては特に限定はされず任意に選択できるが、有機化合物中に一般に含まれることが可能な元素である窒素、酸素、イオウ等が好ましい。これらの孤立電子対を有する元素は、例えば、有機配位子の環状構造中にヘテロ原子として存在して複素環を形成していてもよく、また環状構造に結合したカルボニル基の酸素のように、環状構造外に環状構造と近接して存在していてもよい。
【0046】
このような有機配位子の例としては、具体的には、(1)フェノール性水酸基と、窒素原子をヘテロ原子とする複素環を有し、前記水酸基と窒素とで錯体を形成することが可能な有機化合物、(2)フェノール性水酸基とカルボニル基とを有し、これらで錯体を形成することが可能な有機化合物、(3)β−ジケトン構造を有し、これで錯体を形成することが可能な有機化合物、のいずれかを用いることが好ましい。
【0047】
ここで、(1)フェノール性水酸基と、窒素原子をヘテロ原子とする複素環とで錯体を形成することが可能な有機化合物の例としては、8 − ヒドロキシキノリン及びその誘導体が挙げられる。この他の有機化合物としては、10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリン、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾール、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾール、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾイミダゾール誘導体、2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジン及びその誘導体等が挙げられる。さらに、キノキサリン系、フェナジン系、ナフチリジン系の化合物等も適用可能である。
【0048】
また、(2)フェノール性水酸基とカルボニル基とで錯体を形成することが可能な有機化合物の例としては、3−ヒドロキシフラボン、5−ヒドロキシフラボン等が挙げられる。また、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系の化合物等も適用可能である。
また、(3)β−ジケトン構造で錯体を形成することが可能な有機化合物の例としては、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、1,3−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオン等が挙げられる。
【0049】
なお、βジケトン構造は、下記の式(1)で表される構造であり、水酸基を有していないように見えるが、実際には、その下の化学式のように、分子内で絶えず構造変化(振動)しており、水酸基と孤立電子対を有する酸素原子が存在する構造となっている。
R
1−CO−CH
2−CO−R
2 …(1)
【化1】
【0050】
本発明の有機無機複合体においては、有機配位子中の孤立電子対の電子と水酸基の酸素原子とが、金属酸化物粒子中の同一の金属原子に配位して環状錯体を形成していることが好ましい。その理由は次のように考えられる。
ある種の錯体は、異なる原子間での電子の移動を伴う電荷移動遷移(CT遷移)を生じさせることで、発光することが知られている。本発明において、有機配位子が共役系または複数の不飽和結合を有する場合、この有機配位子が形成する環状錯体構造においては、有機配位子が有する共役系または複数の不飽和結合部が電子が豊富な部位となり、有機配位子から中心金属へ電子が移動し易い状態となっている。
【0051】
この状態を考慮すると、本発明の錯体は、外部からの光等のエネルギーを吸収することにより、有機配位子から中心金属へ電子が移動する遷移過程である、LMCT(Ligand to Metal Charge Transfer)遷移を生じさせて、発光すると考えられる。上記の環状錯体は、このようなLMCT遷移による発光を生じさせるための構造として、好適である。
なお、これら有機配位子の構造、成分、配位させる金属酸化物中の金属元素、及び錯体自体の構造等を選択することにより、発光波長を制御することができる。この発光波長は特に限定されるものではない。例えば、可視光線の領域で発光させるためには、380nm〜750nmの波長領域に発光スペクトルのピークを有することが好ましい。
また、外部からのエネルギーとしては、光のほか熱や電気等が選択可能だが、光エネルギーの付与、すなわち励起光を照射することにより発光させることが好ましい。
【0052】
本発明の有機無機複合体は2種以上の発光部位を備えることを特徴とする。従って、発光部位が上記のように錯体により形成される場合、錯体を形成する成分は、すなわち有機配位子と金属酸化物粒子表面の金属原子は、目的とする発光部位の種類の数だけの組み合わせを得られるように選択されることが好ましい。この組み合わせは特に限定されないが、例えば1種類の金属原子と複数種の有機配位子との組み合わせ、複数種の金属原子と1種類の有機配位子との組み合わせ、前記2種の組み合わせ、等を挙げることができる。このような組み合わせを用いることによって、発光スペクトルのピークが、複数のピークを有するようにすることが好ましい。また、複数の発光色が混合された後においても、低波長側の発光(高エネルギーの発光)が維持されることにより、複数の発光色が互いに保持されていることが特に好ましい。
このような有機配位子と金属酸化物粒子表面の金属原子との複数種の組み合わせを、本発明の有機無機複合体に導入する方法は任意に選択できる。例えば、前記
図2に示すように、複数種の有機無機複合体を混合することでもよく、
図3に示すように、高分子鎖に複数種の有機配位子を結合させる方法でもよい。また、金属酸化物粒子として金属複合酸化物粒子を用いれば、1酸化物粒子の表面に複数種の金属原子が存在することから、1種類の金属複合酸化物粒子と1種類の有機配位子とを組み合わせても、金属酸化物粒子表面の金属原子との複数種の組み合わせを有機無機複合体に導入することができる。さらには、これらの方法を組み合わせてもよい。
【0053】
次に、有機配位子含有モノマーについて説明する。
本発明の有機配位子は、有機配位子と結合した際に錯体を形成する部位を妨げないような立体構造を有するとともに重合性不飽和基を有するモノマーと、共有結合を介して結合させて、有機配位子含有モノマーを形成させて使用することが好ましい。例えば、有機配位子にアルキル基を導入し、これをエーテル結合やエステル結合等による有機化学的な手法で、重合性不飽和基を有するモノマーと結合させることにより、有機配位子含有モノマーを合成することが可能である。
このように、有機配位子を重合性不飽和基を有するモノマーに共有結合を介して結合させることにより、有機配位子が安定化し、発光特性が向上すると共に、有機配位子の劣化を抑制することができる。また、有機配位子と重合性不飽和基を有するモノマーは、共有結合を形成できればよく、その結合形態や方法は特に限定されず任意で選択できる。
【0054】
ここで、有機配位子が共有結合を介して結合する、重合性不飽和基を有する有機配位子含有モノマーは任意で選択されるが、その例としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、スチリル基等の重合性不飽和基を含むモノマーが挙げられる。これらモノマーは、金属酸化物粒子等との相性で適宜選択される。これらの重合性不飽和基を有するモノマーは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0055】
次に、上記の有機配位子含有モノマーと共重合して高分子鎖4を形成する、ビニル系モノマーについて説明する。
ビニル系モノマーは、重合可能な不飽和結合を有しているモノマーである。このビニル系モノマーは任意に選択できるが、その例としては、分子内にアクリロイル基またはメタクリロイル基を含有する(メタ)アクリル系モノマー、スチレン系モノマー、塩化ビニル系モノマー、アクリルアミド系モノマー、酢酸ビニル系モノマー、ブタジエンやイソプレン等のジエン系モノマー等が挙げられる。
特に(メタ)アクリル系モノマーは、透明性に優れているので、発光特性及び透明性が要求される有機無機複合体の材料として好適である。この(メタ)アクリル系モノマーとしては、単官能(メタ)アクリルモノマーが特に好ましく、必要に応じて多官能(メタ)アクリルモノマーを用いてもよい。また、この(メタ)アクリル系モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0056】
この単官能(メタ)アクリルモノマー及び多官能(メタ)アクリルモノマーそれぞれの具体例について次に挙げる。
(a)脂肪族単官能(メタ)アクリルモノマー:(メタ)アクリルモノマー、メチル(メタ)アクリルモノマー、エチル(メタ)アクリルモノマー、ブチル(メタ)アクリルモノマー、ラウリル(メタ)アクリルモノマー、ステアリル(メタ)アクリルモノマー等のアルキル(メタ)アクリルモノマー;メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリルモノマー、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリルモノマー等のアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリルモノマー;(メタ)アクリルアミドモノマー、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドモノマー等のN−置換アクリルアミドモノマー等。
【0057】
(b)脂肪族多官能(メタ)アクリルモノマー:1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリルモノマー、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリルモノマー、エチレングリコールジ(メタ)アクリルモノマー、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリルモノマー、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリルモノマー、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリルモノマー、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリルモノマー、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリルモノマー、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリルモノマー、ポリブタンジオールジ(メタ)アクリルモノマー等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリルモノマー;ペンタエリスリトールトリアクリルモノマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリルモノマー、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリルモノマー等のトリ(メタ)アクリルモノマー;ペンタエリスリトールテトラアクリルモノマー、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリルモノマー等のテトラ(メタ)アクリルモノマー;ジペンタエリスリトール(モノヒドロキシ)ペンタアクリルモノマー等のペンタ(メタ)アクリルモノマー等。
【0058】
(c)脂環式(メタ)アクリルモノマー:単官能型;シクロヘキシル(メタ)アクリルモノマー等。多官能型;ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリルモノマー等。
(d)芳香族(メタ)アクリルモノマー:単官能型;フェニル(メタ)アクリルモノマー、ベンジル(メタ)アクリルモノマー、フェノキシエチル(メタ)アクリルモノマー、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリルモノマー等。多官能型;ビスフェノールAジ(メタ)アクリルモノマー等のジアクリルモノマー類、ビスフェノールFジ(メタ)アクリルモノマー等。
【0059】
(e)ポリウレタン(メタ)アクリルモノマー:ポリウレタンエーテル(メタ)アクリルモノマー、ポリエステル(メタ)アクリルモノマー等。
(f)エポキシ(メタ)アクリルモノマー:ビスフェノールA型エポキシアクリルモノマー、ノボラック型エポキシアクリルモノマー等。
【0060】
これらのビニル系モノマーは、有機配位子含有モノマーと共に用いられ、好ましくは重合開始剤を用いて、共重合させることで、共重合体となり、本実施形態の有機高分子化合物を形成する。
有機配位子含有モノマーの全モノマーに対する割合は任意で選択可能であるが、0.01mol%以上かつ15mol%以下であることが好ましく、より好ましくは0.03mol%以上かつ1mol%以下である。
有機配位子含有モノマーの全モノマーに対する割合を0.01mol%以上かつ15mol%以下に限定することが好ましい理由は、この割合が0.01mol%未満では、有機配位子の量が少なすぎるために、発光特性が低下する可能性があるからである。一方、この割合が15mol%を超えると、有機配位子量が多すぎるために、有機高分子化合物としての成形性や加工性に乏しくなり、成膜できなくなる可能性があるからである。
【0061】
重合開始剤は、一般に用いられる化学反応を用いるものであれば任意に選択して使用できる。この他、熱、光(紫外線等)等によりラジカルを発生してモノマーの重合を開始させる光開始剤等を使用してもよい。
また、モノマーの重合を開始させるためにガンマ(γ)線や電子線を用いる場合は、重合開始剤を必要としなくてもよいので、有機高分子化合物の形成に有用である。
重合開始剤の例としては、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート等の過酸化物系重合開始剤、あるいは2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤が挙げられる。
【0062】
また、光開始剤の例としては、アセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、1,4−ジベンゾイルベンゼン、1,2−ジフェニルエタンジオン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン等が挙げられる。
重合開始剤の配合量は任意で選択できるが、有機配位子含有モノマー及びビニル系モノマーの合計量に対して0.1質量%以上かつ5質量%以下とするのが好ましい。
【0063】
「有機無機複合組成物」
本実施形態の有機無機複合組成物は、金属酸化物粒子と、(i)高分子鎖に共有結合を介して結合されかつ金属酸化物粒子の表面の金属原子に対して配位結合能を有する有機配位子を有する有機高分子化合物(以下、有機配位子含有有機高分子化合物とも称する)、または(ii)前記有機配位子を有する有機高分子化合物を形成することが可能な、モノマー又はオリゴマーと、を含有する組成物である。
この有機無機複合組成物は、さらに、有機溶媒を含有していてもよい。
【0064】
金属酸化物粒子と、有機配位子含有有機高分子化合物と、有機溶媒とを含有する有機無機複合組成物の、好ましい例について説明する。
本発明の有機無機複合組成物に含まれる、金属酸化物粒子と有機配位子含有有機高分子化合物の種類の数は、前記金属酸化物粒子表面の金属原子と、前記有機配位子含有有機高分子化合物における有機配位子との組み合わせの数が、前記有機無機複合組成物を硬化して得られる有機無機複合体が発光する発光色の数となるように選択することが好ましい。
以下に述べる本例の有機無機複合組成物には、2種類の金属原子と有機配位子との組み合わせが含まれている。具体的には、(A)表面に第1の金属原子を有する第1の金属酸化物粒子及び第1の有機配位子を有する第1の有機配位子含有有機高分子化合物が有機溶媒に分散及び/または溶解し、かつ、第1の有機配位子含有有機高分子化合物中の第1の有機配位子が第1の金属酸化物粒子の表面の第1の金属原子と錯体を形成することにより結合して、第1の発光色を呈することが可能な構造を有しているものと、(B)表面に第2の金属原子を有する第2の金属酸化物粒子及び第2の有機配位子を有する第2の有機配位子含有有機高分子化合物が有機溶媒に分散及び/又は溶解し、かつ、第2の有機配位子含有有機高分子化合物中の第2の有機配位子が第2の金属酸化物粒子の表面の第2の金属原子と錯体を形成することにより結合して、第2の発光色を呈することが可能な構造を有しているものと、が混合された状態である。
【0065】
なお、第1と第2の有機配位子含有有機高分子化合物(第1と第2の有機配位子)とが異なっていれば、第1と第2の金属酸化物粒子(第1と第2の金属原子)は同一であってもよい。逆に、第1と第2の金属酸化物粒子(第1と第2の金属原子)とが異なっていれば、第1と第2の有機配位子含有有機高分子化合物(第1と第2の有機配位子)は同一であってもよい。
また本発明においては、混合された、金属酸化物粒子と有機配位子含有有機高分子化合物との組み合わせは2種類に限定されることはない。3種類または4種類以上の金属酸化物粒子と有機配位子含有有機高分子化合物とを組み合わせてもよい。また、金属酸化物粒子として金属複合酸化物粒子を用いれば、1酸化物粒子の表面に複数種の金属原子が存在することから、1種類の金属複合酸化物粒子と1種類の有機配位子含有有機高分子化合物との組み合わせでもよい。
なお、以下の説明においては、第1、第2等の表示がないものは、そのもの全体を示すものとする。
【0066】
有機溶媒は、金属酸化物粒子を分散させることができ、かつ有機配位子含有有機高分子化合物を溶解することができる溶媒であれば、任意に選択できる。例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種のみ、または2種以上を混合して用いることができる。
【0067】
金属酸化物粒子を有機溶媒中に分散させるためには、この金属酸化物粒子の表面が有機溶媒に対して親液性を有することが必要である。そこで、その表面を親液性とするために、表面処理を施すことが好ましい。
この表面処理に用いられる表面処理剤の種類は、金属酸化物粒子及び有機溶媒の種類により適宜選択が可能である。特には、有機配位子(有機配位子含有有機高分子化合物中の有機配位子を含む)の存在下で、表面処理剤が前記有機配位子と容易に置換されることで、有機配位子が金属酸化物の表面の金属原子に配位することができ、かつ有機無機複合体形成後には表面処理剤が容易に除去できるものが好ましい。例えば、金属酸化−物粒子に弱く結合するカルボン酸等の有機酸が特に好ましい。
【0068】
金属酸化物粒子を有機溶媒に分散させるための手段の例としては、ジルコニアビーズを用いたビーズミル、ボールミル等が好適に用いられる。分散処理に要する時間としては、金属酸化物粒子が表面処理剤にて表面処理されるのに十分な時間であればよい。通常は1〜6時間である。これにより、金属酸化物粒子は、その表面が表面処理剤により処理が施された表面処理金属酸化物粒子となる。
【0069】
有機配位子含有有機高分子化合物は、重合性不飽和基を有するモノマーに共有結合を介して有機配位子が結合された有機配位子含有モノマーと、ビニル系モノマーとを含む溶液に、重合開始剤を加え、重合反応を行うことにより得られた、共重合体であることが好ましい。
重合反応を進行させる方法は任意で選択できるが、方法の例としては、例えば、加熱法、光照射により開始されるラジカル重合反応を用いた溶液重合法が挙げられる。このラジカル重合反応としては、熱による重合反応(熱重合)、紫外線等の光による重合反応(光重合)、ガンマ線による重合反応、あるいは、これらの複数を組み合わせた方法等が挙げられる。
【0070】
例えば、本発明の上記例の有機無機複合組成物を得るには、まず、第1の有機配位子含有モノマーとビニル系モノマーを有機溶媒に溶解させた溶液に重合開始剤を加え、重合反応を行う。重合後に得られた溶液では、第1の有機配位子を含有した共重合体が形成されている。この溶液から、エバポレータや分離器等により有機溶媒や未反応材料等の不要成分を除去や分離することで、第1の有機配位子含有有機高分子化合物を得ることができる。
【0071】
次いで、この第1の有機配位子含有有機高分子化合物を、第1の表面処理金属酸化物粒子を有機溶媒中に分散させた分散液に投入し、必要に応じて加温及び/又は攪拌し、第1の有機配位子含有有機高分子化合物を有機溶媒に溶解させる(混合工程)。この過程で、有機配位子と金属酸化物粒子中の金属元素とが錯体を形成し、第1の有機配位子含有有機高分子化合物と第1の金属酸化物粒子が結合する。またこの時、第1の表面処理金属酸化物粒子の表面の表面処理剤は、有機配位子と配位子交換等を行い、金属酸化物粒子表面から脱離する。この際、脱離した表面処理剤は有機溶媒中に残留する。この残留した表面処理剤は、これより後に行われる有機無機複合体の作製過程で、加熱、減圧又は、抽出操作等により、容易に除去が可能である。
このようにして、第1の有機配位子含有有機高分子化合物中の有機配位子が第1の金属酸化物粒子の表面の第1の金属原子と錯体を形成することにより結合しており、第1の発光色を呈することが可能な組成物を得ることができる。
なお問題がなければ、有機配位子含有有機高分子化合物を有機溶媒に先に溶かし、その後、金属酸化物粒子を分散させて、組成物を得てもよい。
【0072】
上記とは別に、原料である第1の有機配位子含有モノマーと第1の表面処理金属酸化物粒子を、第2の有機配位子含有モノマーと第2の表面処理金属酸化物粒子に変更した以外は、上記と同様の方法を用いて、第2の有機配位子含有有機高分子化合物中の有機配位子が第2の金属酸化物粒子の表面の金属原子と錯体を形成することにより結合しており、第2の発光色を呈することが可能な組成物を得る。
【0073】
次いで、上記の第1の発光色を呈することが可能な組成物と、第2の発光色を呈することが可能な組成物とを、任意の割合で混合する。このことにより、目的とする発光色に調整された有機無機複合組成物を作製する。
このとき、用いる金属酸化物粒子や有機配位子含有有機高分子、有機溶媒に限定はなく、目的に応じて調製することが可能である。
このようにして、本実施形態の有機無機複合組成物を得ることができる。
【0074】
次いで、この有機溶剤を含む有機無機複合組成物を用いて、本実施形態の有機無機複合体を作製する例について述べる。
ここでは、本発明の有機無機複合体が、膜状体及びバルク形状体の場合について説明する。
膜状体の場合、上記の有機無機複合組成物を、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、スピンコート法、ロールコート法等の任意で選択される塗工方法により基材上に塗工し、塗膜を得る(塗工工程)。
また、バルク形状体の場合、上記の有機無機複合組成物を任意の方法、例えば金型を用いて成形して、成形体を得る(成形工程)。あるいは、上記の組成物から溶媒の一部または大部分を除去した後に、金型内または容器内に充填したり、ポッティング法を用いて成形体を得ても良い。
【0075】
そして、この膜状体または成形体を得た後、その膜状体または成形体から有機溶媒を除去する(有機溶剤除去工程)。なお、膜状体または成形体の形成と同時に有機溶媒の一部又は全部を除去してもよい。すなわち、形成工程と有機溶媒除去工程を同時に行ってもよい。有機溶媒の除去方法としては、膜状体または成形体が変形や変質をしなければ任意の方法を採ることができるが、特に、大気中あるいは減圧下で加熱する方法が好適である。加熱方法としては、通常のヒーターを用いる場合の他、赤外線照射等が用いられる。
このようにして有機溶媒を除去することにより、本実施形態である膜状体及びバルク形状体の有機無機複合体を得ることができる。すなわち、固体形状の有機無機複合体を得ることができる。なお有機無機複合体の形状や形態は、使用目的や方法に応じて任意に選択してよい。
この例のようにして得られた有機無機複合体は、典型的には、
図2に示すような、第1の発光色を呈することが可能な有機無機複合体1と、第2の発光色を呈することが可能な有機無機複合体1’とが混合された形となっている。
【0076】
さらに、得られた有機無機複合体に加熱処理、紫外線、ガンマ線、電子線等の照射処理を行い、有機配位子含有高分子化合物の共重合を進行させることで、有機無機複合体をより硬化させてもよい。
このように共重合を進行させた有機無機複合体は、有機無機複合組成物に用いた有機溶媒に対しても溶解し難くなり、また、第1の発光色を呈することが可能な有機無機複合体と、第2の発光色を呈することが可能な有機無機複合体とが相互に結合することから、より安定した有機無機複合体を得ることができる。
【0077】
次に、金属酸化物粒子と、有機配位子を有する有機高分子化合物を形成するためのモノマー又はオリゴマーとを含有し、有機溶媒を含有しない、有機無機複合組成物の例について説明する。
この有機無機複合組成物は、さらに、有機溶媒を含有していてもよい。
以下の説明では、「モノマー又はオリゴマー」を「モノマー(オリゴマー)」とも表記する。
本発明の有機無機複合組成物に含まれる金属酸化物粒子やモノマーやオリゴマーの種類の数は、前記金属酸化物粒子表面の金属原子と、前記モノマーやオリゴマー中に含まれる有機配位子との組み合わせの数が、前記有機無機複合組成物を硬化して得られる有機無機複合体が発光する発光色の数となるように選択することが好ましい。
以下に述べる本例の有機無機複合組成物には、2種類の金属原子と有機配位子との組み合わせが含まれている。すなわち、1種類の金属酸化物粒子と、2種類の有機配位子含有モノマー(オリゴマー)と、1種類のビニル系モノマーが含まれている。
【0078】
本例の有機無機複合組成物は、より具体的には、表面に第1の金属原子を有する第1の金属酸化物粒子と;有機配位子含有有機高分子化合物を形成するための、重合性不飽和基を有するモノマーに共有結合を介して結合された第1の有機配位子を含有する第1の有機配位子含有モノマー(オリゴマー)と;重合性不飽和基を有するモノマーに共有結合を介して結合された第2の有機配位子を含有する第2の有機配位子含有モノマー(オリゴマー)と;ビニル系モノマー(オリゴマー)と、を少なくとも含んでいる。
ここで、第1の有機配位子含有モノマー(オリゴマー)、第2の有機配位子含有モノマー(オリゴマー)、ビニル系モノマー(オリゴマー)のうち少なくとも1種が液状であれば、これを溶媒(分散媒)としても使用することができる。その結果、有機溶媒を使用しないか、あるいは有機溶媒の使用量を減じることができる。
【0079】
また、本例では、金属酸化物粒子と有機配位子含有モノマー(オリゴマー)とを同時に含むことから、有機配位子含有モノマー(オリゴマー)自体が金属酸化物粒子と結合することにより表面処理剤としての効果を発現することで、金属酸化物粒子の表面処理が必要ではない場合がある。そのような場合は、金属酸化物粒子の表面処理を行わなくてもよい。
【0080】
本例の有機無機複合組成物においては、この段階では、有機配位子含有有機高分子化合物が形成されていない。その一方で、有機配位子含有モノマー(オリゴマー)は金属酸化物粒子表面の金属原子と無機酸化物粒子錯体を形成して結合している。本例では、第1の有機配位子含有モノマー(オリゴマー)と、第2の有機配位子含有モノマー(オリゴマー)と、ビニル系モノマー(オリゴマー)とを重合反応させて共重合体とし、さらに有機溶媒を含む場合にはこれを除去して、金属酸化物粒子を含む重合固化物を得ることにより、本実施形態の有機無機複合体を得ることができる。
【0081】
この重合反応を行うためは、必要に応じて重合開始剤を加えればよい。重合開始剤は任意で選択できる。重合反応を進行させる方法としては、例えば、加熱法、光照射により開始されるラジカル重合反応を用いた溶液重合法が挙げられる。
この例のようにして得られた有機無機複合体は、典型的には、
図3に示すような、1つの高分子鎖中に第1の発光色を呈することが可能な第1の有機無機複合領域と、第2の発光色を呈することが可能な第2の有機無機複合領域とを共に含む形を有する。
なお、本例における有機無機複合組成物から、膜状体または成形体である有機無機複合体を得る方法としては、前記の、金属酸化物粒子と、有機配位子含有有機高分子化合物と、有機溶媒とを含有する有機無機複合組成物の、好ましい例と同様であることから、詳細な説明は省略する。
【0082】
本発明の有機無機複合体では、有機高分子化合物の有機配位子が金属酸化物粒子の表面の金属原子と錯体を形成することで結合が行われ、発光部位が形成される。このため、金属酸化物粒子と有機配位子を有する有機高分子化合物とを化学的に結合することができる。
また、発光部位が金属酸化物粒子と有機高分子化合物に挟まれた位置に存在する構造を有している。この特徴により、発光強度や発光波長の安定化といった発光特性を高めることができるとともに、発光のエネルギー移動を抑制することができる。よって、各々単独の発光色を互いに独立して保持することができる。その結果、複数の発光部位を備えることで複数の発光色が混合された発光を有する有機無機複合体であっても、目的とする発光色を容易に提供することができる。
【0083】
また本発明では、有機無機複合組成物から、(a)有機溶媒を除去する、または(b)有機配位子含有モノマーやオリゴマーとビニル系モノマーやオリゴマーとを重合反応させて有機配位子含有有機高分子化合物を形成する、または(c)これらを併用することにより、本発明の有機無機複合体を容易に得ることができる。さらに、本発明の有機無機複合組成物から得られる有機無機複合体は、有機高分子化合物を金属酸化物粒子にて架橋した、無機分散相を容易に形成することができる。よって、熱特性や光特性や機械特性に優れた有機無機複合体を実現することができる。
また、この有機無機複合体は、金属酸化物粒子が有機高分子化合物中で均質に分散しているので、凝集による白濁等の不具合が生じる虞もない。
また、有機配位子は高分子鎖に共有結合を介して結合しているので、有機配位子が高分子効果により安定化し、発光特性を向上させると共に、有機配位子の劣化による退色を低減することができる。
【0084】
また本発明では、無機成分として金属酸化物粒子を用い、この金属酸化物粒子を有機高分子化合物中に均一に分散させる構造を形成できる。よって、有機高分子化合物の柔軟性や成形性を維持することができることから、フレキシブルかつフィルム形状の有機無機複合体を容易に得ることができる。
また、この有機高分子化合物はπ共役系高分子である必要はない。よって、製造工程も煩雑ではなく、製造コストが高くなる虞も無い。
また、粘土鉱物を使用していないので、粘土鉱物同士のスタッキングの影響による成膜不良や層間剥離材による発光部位の劣化などの虞も無い。
【0085】
さらに、本発明の有機無機複合体であれば、発光部位が金属酸化物粒子と有機高分子化合物に挟まれた構造を有することにより、発光のエネルギー移動を抑制することができる。よって、粘土鉱物を用いた場合に生じる層間での異種有機配位子へのエネルギー移動による発光色のズレや濃度消光等の虞も無い。
【0086】
本発明の有機無機複合組成物によれば、金属酸化物粒子と、(i)高分子鎖に共有結合を介して結合されかつ前記金属酸化物粒子の表面の金属原子に対して配位結合能を有する有機配位子を有する有機高分子化合物、または(ii)有機配位子を有する有機高分子化合物を形成するための、モノマー又はオリゴマーと、を含有する。よって、本発明の有機無機複合組成物から得られる有機無機複合体の発光特性及び透明性を高めることができ、有機配位子同士の凝集による濃度消光や発光色のズレを抑制することができる。
【0087】
また、有機配位子を含有する高分子鎖が金属酸化物粒子に結合されているので、金属酸化物粒子の分散を確保することができ、発光の安定化を図ることができる。
また、有機高分子化合物には、従来の金属錯体の合成の場合のような、金属アルコキシドを含まない。よって、通常の大気下での乾燥処理や熱処理を行うことができる。
したがって、通常の簡便な製造装置を用いて本発明の有機無機複合体を容易に作製することができる。
【0088】
「インク」
本発明のインクは、本発明の有機無機複合組成物と、有機溶媒とを含有したインクである。用途としては、印刷用の他、インクジェット用等に好適に用いられる。
このインクに含まれる金属酸化物粒子、有機高分子化合物及び有機溶媒については、上述した有機無機複合組成物における金属酸化物粒子、有機高分子化合物及び有機溶媒と同様であるから、説明を省略する。
【0089】
有機溶媒は、金属酸化物粒子の分散媒としての、及び、分子鎖に共有結合を介して結合されかつ金属酸化物粒子の表面の金属原子に対して配位結合能を有する有機配位子を有する有機高分子化合物のための溶媒や、有機配位子を有する有機高分子化合物を形成するためのモノマー又はオリゴマーの溶媒としての、作用を有する。しかしながら、効果としてはそれだけではなく、インクの粘度やチクソトロピー性等、インクとして使用することに適した特性の付与を行うためにも加えられている。さらに、印刷後のパターンのにじみや変形を防止するための乾燥性や、被印刷物に対するなじみ等も考慮する必要がある。したがって、有機溶媒の種類や量は、これら各種条件を勘案して決めることが好ましい。
本実施形態のインクにおいても、本実施形態の有機無機複合組成物と同様の作用、効果を奏することができる。また、このインクを印刷機による印刷またはインクジェットによる吐出によりパターン化や成形することで、所望の形状を有する有機無機複合体を容易に作製することができる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例及び比較例にて用いられる有機配位子含有モノマー及びその共重合体と、表面処理酸化ジルコニウム粒子とを、下記のようにして作製した。
【0091】
[有機配位子含有モノマー及びその共重合体の作製−1]
(フェノール性水酸基と、窒素原子をヘテロ原子とする複素環を有する有機配位子の例)
スターラーチップを備えた250mLの三つ口フラスコに、8−キノリノールを5.84g、濃塩酸を70mL、37%ホルムアルデヒドを6.4mL投入し、10時間反応を行った。次いで、析出した黄色結晶をフィルターにて濾過し、この黄色結晶を多量のアセトンで洗浄した。次いで、真空下、40℃にて12時間真空乾燥し、5−クロロメチル−8−キノリノール塩酸塩を得た。この塩酸塩の収率は92%であった。
【0092】
次いで、スターラーチップを備えた500mLの三つ口フラスコに、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを20g、p−メトキシフェノールを0.20g、酢酸ナトリウムを1.78g投入し、50℃にて1.5時間保持した。この後、上記の5−クロロメチル−8−キノリノール塩酸塩5.0gを加え、90℃にて2時間反応を行った。その後、この反応溶液を室温まで冷却した後、氷水中に投入し、アンモニア水で中和した。この後、析出した結晶を氷水で洗浄し、フィルターで回収し、石油エーテルから再結晶させることにより、5−メチル(2−メタクリロイルエチロイル)−8−キノリノール(有機配位子含有モノマー)5.2gを得た。
【0093】
次いで、得られた有機配位子含有モノマーについて、重クロロホルム中にて
1H−NMRの測定を行ったところ、8.78−7.08ppm(Ph−H)、6.03ppm(=CH
2)、5.52ppm(=CH
2)、4.87ppm(−CH
2−Ph)、4.27ppm、3.69ppm(−CH
2−O)、1.88(−CH
3)のピークが観測された。これにより、目的の有機配位子含有モノマーの単離が確認された。
【0094】
次いで、スターラーチップを備えた50mLの二つ口なす型フラスコに、トルエンを25mL、メチルメタクリレートを5.0g(50mmol)、上記の5−メチル(2−メタクリロイルエチロイル)−8−キノリノール(有機配位子含有モノマー)を0.29g(1mmol)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを0.083g(0.51mmol)投入し、窒素雰囲気下、60℃にて40時間攪拌し、重合反応を行った。
この反応溶液を室温まで冷却した後、メタノール中に投入し、共重合体を沈澱物として得た。その後、エバポレータにて溶媒を除去し、真空乾燥し、有機配位子含有共重合体Aを4.8g得た。
【0095】
この有機配位子含有共重合体Aの平均分子量は、GPC測定の結果から、数平均分子量(Mn)が20,000、重量平均分子量(Mw)が45,000であった。また、重クロロホルム中にて
1H−NMRの測定を行い、メチルメタクリレートのメチルプロトンと8−キノリノールの複素環のプロトンのピーク強度を比較したところ、メチルメタクリレート50molに対して5−メチル(2−メタクリロイルエチロイル)−8−キノリノール1molであった。これにより、投入比通りの有機配位子含有共重合体Aが形成されていることが確認された。
【0096】
[有機配位子含有モノマー及びその共重合体の作製−2]
(β−ジケトン構造を有する有機配位子の例)
スターラーチップを備えた250mLの三つ口フラスコに、4−ヒドロキシベンゾエートを10g、シクロヘキサノンを200mL、ヨウ化カリウムを5.50g、炭酸カリウムを18.1g投入し、窒素雰囲気下にて攪拌溶解を行った。次いで、2−クロロエタノール12mLを注射器にて滴下し、120℃にて1日間、反応を行った。
次いで、析出物をフィルターにて濾過した反応溶液を乾燥し、オイル状の生成物を得た。この生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、4−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸メチルエステルを得た。収率は85%であった。
【0097】
次いで、スターラーチップを備えた50mLの二つ口フラスコに、テトラヒドロフラン(THF)を10mL、60%NaHを2.40g投入し、さらに、4’−メトキシアセトフェノン4.60gをTHF6mLに溶解させた溶液を滴下した。次いで、40℃に昇温し、さらに、4−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸メチルエステル7.06gをTHF11mLに溶解させた溶液を滴下し、滴下終了後60℃に昇温して10時間反応を行った。
反応終了後、40℃に冷却し、水30mL、トルエン20mLを投入し、硫酸を用いてpHを3付近に調製した後、下層を分液した。次いで、上層のトルエン層を5mLの水で洗浄した後、このトルエン層をエバポレーターにて濃縮し、2−プロパノール(IPA)で再結晶を行い、白色結晶の4−メトキシ−4’−(2−ヒドロキシエトキシ)ジベンゾイルメタンを得た。収率は35%であった。
【0098】
次いで、スターラーチップ、ディーンスターク(水分留去器)を備えた100mLの二つ口フラスコに、トルエン45mL、4−メトキシ−4’−(2−ヒドロキシエトキシ)ジベンゾイルメタン4.72g、ヒドロキノン0.09g、メタクリル酸1.59g、p−トルエンスルホン酸−水和物0.27gを投入した。その後120℃に昇温し、この温度にて、環流下、発生する水を留去しながら反応を24時間行った。反応終了後、50℃に冷却し、水15mlを投入した後、水酸化ナトリウム水溶液でpH5付近に調製し、下層を分液した。次いで、上層のトルエン層を水5mLにて洗浄した後、このトルエン層をエバポレーターにて濃縮し、IPAで再結晶を行い、白色結晶の4−メトキシ−4’−メタクリロイルオキシエトキシジベンゾイルメタン(有機配位子含有モノマー)を得た。収率は33%であった。
【0099】
次いで、得られた有機配位子含有モノマーについて、重クロロホルム中にて
1H−NMRの測定を行ったところ、8.02−6.95ppm(Ph−H)、6.73ppm(−CH
2−)、6.15ppm、5.61ppm(=CH
2)、4.54ppm、4.30ppm(−CH
2−O)、3.89(−O−CH
3)、1.96(−CH
3)のピークが観測された。これにより、目的の有機配位子含有モノマーの単離が確認された。
【0100】
次いで、スターラーチップを備えた50mLの二つ口なす型フラスコに、トルエンを25mL、メチルメタクリレートを5.0g(50mmol)、上記の4−メトキシ−4’−メタクリロイルオキシエトキシジベンゾイルメタン(有機配位子含有モノマー)を0.39g(1mmol)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを0.083g(0.51mmol)投入し、窒素雰囲気下、60℃にて40時間攪拌し、重合反応を行った。
この反応溶液を室温まで冷却した後、メタノール中に投入し、共重合体を沈澱物として得た。その後、エバポレータにて溶媒を除去し、真空乾燥し、有機配位子含有共重合体Bを4.5g得た。
【0101】
この有機配位子含有共重合体Bの平均分子量は、GPC測定の結果から、数平均分子量(Mn)が21,000、重量平均分子量(Mw)が41,000であった。また、重クロロホルム中にて
1H−NMRの測定を行い、メチルメタクリレートのメチルプロトンと4−メトキシベンゾイルメタンの芳香環のプロトンのピーク強度を比較したところ、メチルメタクリレート50molに対して4−メトキシ−4’−メタクリロイルオキシエトキシジベンゾイルメタン1molであった。これにより、投入比通りの有機配位子含有共重合体Bが形成されていることが確認された。
【0102】
[表面処理酸化ジルコニウム粒子の作製]
酸化ジルコニウム粒子(正方晶型、平均粒径3nm)10gに、分散媒として水を100g、メタノールを100g、表面処理剤として酢酸を3.0g加えて混合し、次いで、直径が0.1mmのジルコニアビーズを用いたビーズミルにより分散処理を行い、酸化ジルコニウム粒子の表面処理を行った。
次いで、エバポレータを用いて、この溶液から溶媒を除去し、表面処理酸化ジルコニウム粒子Aを得た。この表面処理酸化ジルコニウム粒子Aの表面処理量は、熱重量分析(TGA)による有機成分の質量減少から、酸化物粒子と表面処理剤の合計質量に対して20質量%であった。
【0103】
[緑色発光性有機無機複合組成物Xの作製]
表面処理酸化ジルコニウム粒子A62mgをエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)4mLに投入し、撹拌、混合して透明分散体とした。この後、有機配位子含有共重合体A200mgを投入し、室温にて3時間、攪拌した。
有機配位子含有共重合体Aを投入し撹拌した際に、透明分散体の色調が黄色に変化した。これにより、酸化ジルコニウム粒子Aのジルコニウム原子と有機配位子含有共重合体Aの有機配位子とが錯体を形成していることが目視にて確認された。
【0104】
また、酸化ジルコニウム粒子Aの分散粒径を動的散乱法(DLS)により測定した。その結果、エチレングリコールモノエチルエーテル分散体中の、表面処理酸化ジルコニウム粒子Aの分散粒径が3nmであったのに対し、有機配位子含有共重合体Aを投入した後の、酸化ジルコニウム粒子Aの分散粒径が15nmへと増加した。これにより、有機配位子含有共重合体Aの有機配位子が酸化ジルコニウム粒子のジルコニウム原子と配位結合を生じることで、複数の有機配位子含有共重合体Aと複数の酸化ジルコニウム粒子を含む集合体が形成されていることが確認された。
【0105】
また、この有機無機複合組成物から有機溶媒を除去した後、得られた有機無機複合体をフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)にて測定したところ、1577cm
−1、1500cm
−1、1470cm
−1、1380cm
−1、1321cm
−1、1277cm
−1及び1107cm
−1に酸化ジルコニウム粒子の表面に8−キノリノールが二座配位した場合の特徴的な吸収ピークが観測された。
これにより、緑色発光性有機無機複合組成物Xが得られたことが確認された。
【0106】
[青色発光性有機無機複合組成物Yの作製]
表面処理酸化ジルコニウム粒子A62mgをエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)4mLに投入し、撹拌、混合して透明分散体とした。この後、有機配位子含有共重合体B200mgを投入し、室温にて5時間、攪拌した。
有機配位子含有共重合体Bを投入し撹拌した際に、透明分散体の色調が黄色に変化した。これにより、酸化ジルコニウム粒子Aと有機配位子含有共重合体Bの有機配位子とが錯体を形成していることが目視にて確認された。
【0107】
また、酸化ジルコニウム粒子Aの分散粒径を動的散乱法(DLS)により測定した。その結果、エチレングリコールモノエチルエーテル分散体中の表面処理酸化ジルコニウム粒子Aの分散粒径が3nmであったのに対し、有機配位子含有共重合体Bを投入した後の、酸化ジルコニウム粒子Aの分散粒径が12nmへと増加した。これにより、有機配位子含有共重合体Bの有機配位子が酸化ジルコニウム粒子のジルコニウム原子と配位結合を生じることで、複数の有機配位子含有共重合体Bと複数の酸化ジルコニウム粒子を含む集合体が形成されていることが確認された。
【0108】
また、この有機無機複合組成物から有機溶媒を除去した後、得られた有機無機複合体をフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)にて測定した。その結果、1590cm
−1、1530cm
−1及び1415cm
−1に酸化ジルコニウム粒子の表面に4−メトキシベンゾイルメタンが二座配位した場合の特徴的な吸収ピークが観測された。
これにより、青色発光性有機無機複合組成物Yが得られたことが確認された。
【0109】
[実施例1]
緑色発光性有機無機複合組成物Xを2.0g、青色発光性有機無機複合組成物Yを1.0g秤量し、混合及び攪拌することで、実施例1の有機無機複合組成物を得た。
次いで、この有機無機複合組成物をテフロン(登録商標)容器に充填し、次いで、120℃にて乾燥することにより、実施例1の有機無機複合体を得た。
この有機無機複合体をフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)にて測定したところ、酸化ジルコニウム粒子の表面に8−キノリノール及び4−メトキシベンゾイルメタンが二座配位した場合の特徴的な吸収ピークが確認された。これにより、本発明の有機無機複合組成物及び有機無機複合体が得られたことが確認された。
【0110】
[実施例2]
緑色発光性有機無機複合組成物Xを1.5g、青色発光性有機無機複合組成物Yを1.5gとした他は、実施例1に準じて実施例2の有機無機複合組成物及び有機無機複合体を得た。
この有機無機複合体をFT−IRにて測定したところ、実施例1の有機無機複合体と同様の吸収ピークが観測された。これにより、本発明の有機無機複合組成物及び有機無機複合体が得られたことが確認された。
【0111】
[実施例3]
緑色発光性有機無機複合組成物Xを1.0g、青色発光性有機無機複合組成物Yを2.0gとした他は、実施例1に準じて実施例3の有機無機複合組成物及び有機無機複合体を得た。
この有機無機複合体をFT−IRにて測定したところ、実施例1の有機無機複合体と同様の吸収ピークが観測された。これにより、本発明の有機無機複合組成物及び有機無機複合体が得られたことが確認された。
【0112】
[実施例4](インク組成物の製造)
実施例2の有機無機複合組成物にα−テルピネオール2mLを加え、さらにエチルセルロース(100cP)にて粘度が20,000cPとなるように調整し、実施例4の印刷用インク組成物を得た。
この印刷用インク組成物の色調は薄黄色であり、酸化ジルコニウム粒子Aと有機配位子含有共重合体Aの有機配位子とが錯体を形成していることが目視にて確認された。
【0113】
この印刷用インク組成物をスクリーン印刷に供し、ベタ膜を形成した後、120℃にて乾燥することにより、厚み20μmの印刷膜を形成した。
この印刷膜をFT−IRにて測定したところ、実施例1の有機無機複合体と同様の吸収ピークが観測された。これにより、本発明の印刷用インク組成物であることが確認された。
【0114】
[実施例5](インク組成物の製造)
スターラーチップを備えた50mLの二つ口なす型フラスコに、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)を25mL、アクリルアミドを2.8g(40mmol)、メチルメタクリレートを1.0g(10mmol)、5−メチル(2−メタクリロイルエチロイル)−8−キノリノール(有機配位子含有モノマー)を0.29g(1mmol)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを0.083g(0.51mmol)投入し、窒素雰囲気下、60℃にて40時間攪拌し、重合反応を行った。
この反応溶液を室温まで冷却した後、ヘキサン中に投入し、共重合体を沈澱物として得た。その後、エバポレーターにて溶媒を除去し、真空乾燥し、有機配位子含有共重合体A’を4.2g得た。
【0115】
この有機配位子含有共重合体A’の平均分子量は、GPC測定の結果から、数平均分子量(Mn)が19,000、重量平均分子量(Mw)が39,000であった。また、重クロロホルム中にて
1H−NMRの測定を行い、アクリルアミドのアミドプロトン及びメチルメタクリレートのメチルプロトンと8−キノリノールの複素環のプロトンのピーク強度を比較したところ、アクリルアミド40mol、メチルメタクリレート10molに対して5−メチル(2−メタクリロイルエチロイル)−8−キノリノール1molであった。これにより、投入比通りの有機配位子含有共重合体A’が形成されていることが確認された。
【0116】
次いで、スターラーチップを備えた50mLの二つ口なす型フラスコに、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)を25mL、アクリルアミドを2.8g(40mmol)、メチルメタクリレートを1.0g(10mmol)、4−メトキシ−4’−メタクリロイルオキシエトキシジベンゾイルメタン(有機配位子含有モノマー)を0.39g(1mmol)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを0.083g(0.51mmol)投入し、窒素雰囲気下、60℃にて40時間攪拌し、重合反応を行った。
この反応溶液を室温まで冷却した後、ヘキサン中に投入し、共重合体を沈澱物として得た。その後、エバポレーターにて溶媒を除去し、真空乾燥し、有機配位子含有共重合体B’を4.0g得た。
【0117】
この有機配位子含有共重合体B’の平均分子量は、GPC測定の結果から、数平均分子量(Mn)が20,000、重量平均分子量(Mw)が40,000であった。また、重クロロホルム中にて
1H−NMRの測定を行い、アクリルアミドのアミドプロトン及びメチルメタクリレートのメチルプロトンと8−キノリノールの複素環のプロトンのピーク強度を比較したところ、アクリルアミド40mol、メチルメタクリレート10molに対して4−メトキシ−4’−メタクリロイルオキシエトキシジベンゾイルメタン1molであった。これにより、投入比通りの有機配位子含有共重合体B’が形成されていることが確認された。
【0118】
表面処理酸化ジルコニウム粒子A62mgを水2mL、2−プロパノール1mL、ジエチレングリコール1mLに投入し、撹拌、混合して透明分散体とした。この後、有機配位子含有共重合体A’200mgを投入し、攪拌することにより、緑色発光用インク組成物X’を得た。
【0119】
上記とは別に、表面処理酸化ジルコニウム粒子A62mgを水2mL、2−プロパノール1mL、ジエチレングリコール1mLに投入し、撹拌、混合して透明分散体とした。この後、有機配位子含有共重合体B’200mgを投入し、攪拌することにより、青色発光用インク組成物Y’を作製した。
次いで、緑色発光用インク組成物X’を1.5g、青色発光用インク組成物Y’を1.5g秤量し、混合・攪拌することで、実施例5のインクジェット用インク組成物を得た。
【0120】
また、酸化ジルコニウム粒子Aの分散粒径を動的散乱法(DLS)により測定したところ、水−2−プロパノール分散体中の表面処理酸化ジルコニウム粒子Aの分散粒径が3nmであったのに対し、有機配位子含有共重合体A’及びB’を投入した後の酸化ジルコニウム粒子Aの分散粒径が23nmへと増加した。これにより、有機配位子含有共重合体A’及び 有機配位子含有共重合体B’の有機配位子が酸化ジルコニウム粒子とそれぞれ配位結合を生じることで、複数の有機配位子含有共重合体A’及び有機配位子含有共重合体B’と、複数の酸化ジルコニウム粒子を含む集合体が形成されていることが確認された。すなわち、本発明のインクである、インクジェット用インク組成物が形成されたことが確認された。
【0121】
次いで、ポリビニルブチラール樹脂 エスレックBX−10(積水化学工業社製)90gとシリカゾル10gからなるインク受容性塗料を、A4サイズ、膜厚125μmのPETフィルム ルミラーU−94(東レ社製)上にバーコーターを用いて塗布及び乾燥し、塗膜の厚みが10μmのインク受容層を有する透明基材を得た。
【0122】
次いで、上記のインクジェット用インク組成物を、インクジェット方式プリンター PM−2000C(セイコーエプソン社製)に充填し、これをインク受容層を有する透明フィルム基材上にベタ膜状パターンを形成した。
また、このインクジェット膜をFT−IRにて測定したところ、実施例1の有機無機複合体と同様の吸収ピークが観測された。これにより、本発明のインクである、インクジェット用インク組成物が形成されたことが確認された。
【0123】
[比較例1]
スターラーチップを備えた50mLの二つ口なす型フラスコに、トルエンを25mL、メチルメタクリレートを5.0g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを0.080g投入し、窒素雰囲気下、60℃にて30時間攪拌し、重合反応を行った。その後、この反応溶液を室温まで冷却し、メタノール中に投入して重合体を沈澱物として得た。次いで、この沈殿物中の溶媒をエバポレータにて除去し、その後、真空乾燥して、重合体Cを4.5g得た。
この重合体Cの平均分子量は、GPC測定の結果から、数平均分子量(Mn)が16,000、重量平均分子量(Mw)が39,000であった。
【0124】
次いで、表面処理酸化ジルコニウム粒子A62mgをエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)4mLに投入し、撹拌、混合して透明分散体とした。次いで、この透明分散体に、8−キノリノールを5.3mg、上記の重合体Cを195mg投入し、攪拌することにより、比較用の緑色発光有機無機複合組成物X’’を得た。
【0125】
上記とは別に、表面処理酸化ジルコニウム粒子A62mgをエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)4mLに投入し、撹拌、混合して透明分散体とした。次いで、この透明分散体に、1,3−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオンを10.5mg、上記の重合体Cを190mg投入し、攪拌することにより、比較用の青色発光有機無機複合組成物Y’’を作製した。
次いで、比較用の緑色発光有機無機複合組成物X’’を2.0g、比較用の青色発光有機無機複合組成物Y’’を1.0g秤量し、混合・攪拌することで、比較例1の有機無機複合組成物を得た。
次いで、この有機無機複合組成物をテフロン(登録商標)容器に充填し、次いで、120℃にて乾燥することにより、比較例1の有機無機複合体を作製した。
【0126】
次いで、この有機無機複合体をFT−IRにて測定した。その結果、酸化ジルコニウム粒子の表面に8−キノリノール及び4−メトキシベンゾイルメタンが二座配位した場合の特徴的な吸収ピークが確認され、本発明と同様、酸化ジルコニウム粒子の表面に2種類の配位子が結合した有機無機複合体であることが確認された。
また、この有機無機複合組成物では、8−キノリノール及び1,3−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオンを投入し撹拌することで、上記の組成物の色調が透明から黄色へと変化した。このことから、酸化ジルコニウム粒子Aと8−キノリノール及び1,3−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオンとが錯体を形成していることが目視にて確認された。
【0127】
一方、上記の有機無機複合組成物中の表面処理酸化ジルコニウム粒子Aの分散粒径をDLSにより測定したところ、3nm程度であり、重合体Cなどを投入する前と比べて、殆ど変化が無かった。
この結果により、酸化ジルコニウム粒子Aの表面に配位した8−キノリノール及び1,3−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオンと重合体Cとは互いに結合や相互作用が無く、したがって、有機配位子と有機高分子化合物の高分子鎖とは結合や相互作用が無く、有機配位子が単独で酸化ジルコニウム粒子Aの表面に配位していることが確認された。
【0128】
[比較例2]
比較用の緑色発光有機無機複合組成物X’’を1.5g、比較用の青色発光有機無機複合組成物Y’’を1.5gとした他は、比較例1に準じて比較例2の有機無機複合組成物及び有機無機複合体を得た。
【0129】
[比較例3]
比較用の緑色発光有機無機複合組成物X’’を1.0g、比較用の青色発光有機無機複合組成物Y’’を2.0gとした他は、比較例1に準じて比較例3の有機無機複合組成物及び有機無機複合体を得た。
【0130】
[比較例4](インク組成物の製造)
比較例2の有機無機複合組成物にα−テルピネオール2mLを加え、さらにエチルセルロース(100cP)にて粘度が20,000cPとなるように調整し、比較例4の印刷用インク組成物を得た。
この印刷用インク組成物の色調は薄黄色であり、酸化ジルコニウム粒子Aと8−キノリノール及び1,3−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオンとが錯体を形成していることが目視にて確認された。
【0131】
一方、この印刷用インク組成物を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察したところ、表面処理酸化ジルコニウム粒子Aの分散粒径が3nm程度であり、重合体Cなどを投入する前と比べて、殆ど変化が無かった。
これにより、酸化ジルコニウム粒子Aの表面に配位した8−キノリノール及び1,3−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオンと重合体Cとは結合や相互作用が無く、したがって、有機配位子と有機高分子化合物の高分子鎖とは結合や相互作用が無く、有機配位子が単独で酸化ジルコニウム粒子Aの表面に配位していることが確認された。
この印刷用インク組成物をスクリーン印刷に供し、ベタ膜を形成した後、120℃にて乾燥することにより、厚み20μmの印刷膜を形成した。
【0132】
[評価]
実施例1〜5及び比較例1〜4で得られた、有機無機複合体、印刷膜またはインクジェット膜各々について、可視光線透過率、吸光度、発光波長の極大値、発光波長の安定性の評価を下記の方法により行った。
ここでは、比較のために、酸化ジルコニウム粒子と有機配位子含有共重合体Aとの集合体が形成されている有機無機複合体を基準1とし、酸化ジルコニウム粒子と有機配位子含有共重合体Bとの集合体が形成されている有機無機複合体を基準2とした。
なお基準1の有機無機複合体は、緑色発光性有機無機複合組成物Xを乾燥したものである。基準2の有機無機複合体は、青色発光性有機無機複合組成物Yを乾燥したものである。基準1と基準2の有機無機複合体は、発光部位が1種類のみであり、本願発明の有機無機複合体の範囲に含まれない。
【0133】
(1)可視光線透過率
分光光度計V−570(日本分光社製)を用いて、波長350nm〜800nmの範囲で、可視光線の透過率を測定した。
ここでは、上記の有機無機複合体を約20μmの厚みのフィルムとし、石英基材の透過率を100%として測定した。
評価は、可視光線透過率が85%以上の場合を「○」(良)、85%未満の場合を「×」(不良)とした。
(2)吸光度
紫外可視分光光度計(島津製作所社製)を用いて、紫外可視吸収スペクトルを測定し、この紫外可視吸収スペクトルから吸収波長(nm)を求めた。
【0134】
(3)発光波長の極大値
紫外可視吸収スペクトルにて吸収が認められた波長で励起し、その発光波長の極大値を、蛍光分光光度計(堀場製作所社製)を用いて測定した。
発光スペクトルの測定結果を
図4及び
図5に示す。
(4)CIE値及びCIE図による色度曲線
紫外可視吸収スペクトルにて吸収が認められた波長で励起し、その発光色を、蛍光分光光度計(堀場製作所社製)を用いて測定し、CIE値を求めた。
実施例1〜3及び基準1、2各々の発光色をCIE図の色度曲線に表示した結果を
図6に示す。
【0135】
(5)発光波長の安定性
有機無機複合体の作製直後、及び作製後1週間後それぞれにおける発光波長の極大値を、蛍光分光光度計(堀場製作所社製)を用いて測定し、発光波長の安定性を評価した。
ここでは、作製後1週間後の発光波長の極大値の低下が、作製直後の発光波長の極大値に対して20%未満の場合を「○」(良)、20%以上の場合を「×」(不良)とした。
これらの結果を表1及び表2に示す。
【0136】
【表1】
【0137】
表1によれば、実施例1〜3の有機無機複合体は、比較例1〜3の有機無機複合体と比べて、可視光線透過率、発光波長の安定性共に優れており、発光特性及び透明性も向上していることが分かった。
また、
図6に示すように、CIE図の色度曲線によれば、実施例1〜3の有機無機複合体は、青、緑にそれぞれ発光を有する有機無機複合組成物を任意の割合で混合することにより、有機無機複合体の発光色を青から緑まで連続的にかつ容易に調整することが可能であることが分かった。
【0138】
また、
図4に示す発光スペクトルによれば、実施例1〜3の有機無機複合体では、基準1と基準2で示される、混合前の有機無機複合組成物からそれぞれ得られる有機無機複合体からの発光波長をともに含むとともに、両波長の発光強度比も両有機無機複合組成物の混合比と比例対応していることが分かった。
これから明らかなように、青色の発光色から緑色の発光色へのエネルギー移動が抑制され、効果的に発光部位が独立して複合化されていることが分かった。したがって、透明性を維持しつつ発光色を調整可能な均質な有機無機複合体を提供することができることが分かった。
【0139】
一方、比較例1〜3の有機無機複合体は、錯体を形成した酸化ジルコニウム粒子が、有機高分子に固定されていないために凝集してしまった結果、透明な複合体が得られなかった。また、有機配位子が高分子と結合を有していないので、得られた有機無機複合体は青色発光部位と緑色発光部位が凝集により近接した状態となって、エネルギー移動が生じ易くなっている。結果に示されるように、混合だけでは発光色の調整が困難であるとともに、経時変化で蛍光強度が著しく減少していることが分かった。このことは、
図5によっても明らかである。
【0140】
【表2】
【0141】
表2によれば、実施例4,5の印刷用インク及びインクジェット用インクにより得られた膜は、比較例4の印刷用インクにより得られた膜と比べて、可視光線透過率、発光波長の安定性共に優れており、発光特性及び透明性が向上していることが分かった。
また、表1及び表2に記載のCIE値が近似しているように、実施例2の有機無機複合体の色調と、実施例4及び実施例5で得られた膜の色調がほとんど同じであった。このことから、印刷用インク及びインクジェット用インクにおいても、青、緑にそれぞれ発光を有する有機無機複合組成物を任意の割合で混合することにより、得られる膜である有機無機複合体の発光色を青から緑まで連続的にかつ容易に調整することが可能であることが分かった。したがって、透明性を維持しつつ、発光色を調整可能な均質な印刷用インク及びインクジェット用インクを提供することができることが分かった。
【0142】
一方、比較例4の印刷用インクは、有機高分子に酸化ジルコニウム粒子が固定されていないために、錯体を形成した酸化ジルコニウム粒子が凝集してしまった。この結果、透明な印刷膜が得られなかった。また、有機配位子が高分子と結合を有していないので、印刷膜は光や熱に対する耐性が低く、経時変化で蛍光強度が著しく減少していることが分かった。また、発光色も目的とする発光色を実現することができなかった。