【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0031】
1−1.抗原領域の決定
以下の方法で、コイヘルペスウイルスTUMST1(KHV−TUMST1)株のゲノムDNAからファージライブラリーを作製し、コイヘルペスウイルス抗原領域のスクリーニングを行った。
【0032】
1−2.KHVゲノムDNAの調製
コイ鰭由来KF−1細胞を75cm
2フラスコ10本に培養し、90%程度のコンフルエントになった時点で、コイヘルペスウイルスTUMST1(KHV−TUMST1)株を接種し、細胞変性効果(cytopathic effect、CPE)が十分に現れるまで、25℃で約2週間培養を行った。続いて、Gilad et al. (2002)らの方法を参考に、以下の手順でコイヘルペスウイルスの精製、及びゲノムDNAの抽出を行った。コイヘルペスウイルスを接種しCPE形成されたKF−1細胞の培養フラスコを−80℃で24時間以上冷凍した後、室温で解凍して、10℃で20分間、3500×gで遠心分離を行い、ウイルスの含まれる上清を回収した。上清は、10℃で90分間、95300×gでさらに遠心分離し、得られたペレットを1mLのTNE buffer(50mM Tris−HCl、150mM NaCl、1mM EDTA、pH7.5)に懸濁し、ホモジナイズした後、10−60%のショ糖濃度で密度勾配遠心を行った。10℃で18時間、77000×gで遠心分離し、底面に近い2バンドを回収し、TNE bufferに溶解して、10℃で1時間、151000×gで遠心分離した。得られたウイルスペレットはTNE bufferに懸濁して、精製KHVとした。
【0033】
前記精製KHVを56℃で3時間、プロテイナーゼKにより処理した後、70℃で20分間の条件で失活させ、コイヘルペスウイルスのゲノムDNAをフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1)混合溶液により抽出した。続いて、0.1倍量の3M 酢酸ナトリウムと2.5倍量の95%エタノールを添加して、エタノール沈殿を行った。遠心分離後のペレットを70%エタノールで洗浄し、乾燥した後、TE bufferに懸濁して、精製ゲノムDNAとした。
【0034】
1−3.ファージライブラリーのスクリーニング
前記精製ゲノムDNAを、制限酵素Sau3AIを用いた部分消化により断片化した。得られた0.5〜2kbのDNA断片をファージミドベクターpBK−CMV(STRATAGENE社製)のBamHIサイトに挿入し、遺伝子発現ファージライブラリーを構築した。続いて、定法に従い、ファージDNAのパッケージングを行い、得られたファージを大腸菌に感染させて、プレート上にプラークを形成させ、形成したファージをニトロセルロース膜に転写して、抗KHVウサギ血清(東京海洋大学水族病理学研究室 福田教授より分与)と反応させた。得られた陽性ファージからDNAを単離して、陽性ファージがコードする抗原コード領域の塩基配列を定法により解析した。その結果、配列番号2及び配列番号4に示される塩基配列が特定され、KHV−ORF62の部分配列である配列番号1、及びKHV−ORF68の部分配列である配列番号3からなるKHV主要抗原領域が得られた。
【0035】
1−4.組換えタンパク質(抗原)の作製
KHV−ORF62、及びKHV−ORF68の部分からなる主要抗原領域のDNA断片を前記精製ゲノムDNAからPCRにより増幅して得た。KHV−ORF62の増幅には、BamHI認識配列を付加したPCRプライマーKHV_62expF(AAGGATCCCATATGGATCAGATTCCCCCCGTCCCAT;配列番号5)、及びEcoRI認識配列を付加したKHV_62expR(TTGAATTCTCACATCGCGGTGGCGTCAAACTT;配列番号6)を用い、KHV−ORF68の増幅には、BamHI認識配列を付加したPCRプライマーKHV_68expF(AAGGATCCCATATGGATCAGTTCAAGCAGACCACGG;配列番号7)、及びEcoRI認識配列を付加したKHV_68expR(TTGAATTCTCACTGCGACTCGAGCCTGGAGTT;配列番号8)を用いた。
【0036】
得られた増幅DNA断片を発現ベクターpET−28(Novagen社製)のBamHIサイトとEcoRIサイトとの間に挿入して組換えプラスミドベクターを作製し、それぞれpET−KHVORF62、pET−KHVORF68とした。続いて、pET−KHVORF62、及びpET−KHVORF68を用いて、大腸菌BL21株をそれぞれ形質転換し、1Lの2×YT培地(Bacto Tryptone 1.6%、Yeast Extract 1.0%、NaCl 0.5%)により37℃で振とう培養した。OD
600が0.8に達した時点で、最終濃度が1mMとなるようにIPTGを添加して組換えタンパク質の発現を誘導し、さらに、4時間振とう培養して組換えタンパク質(抗原)を産生させた。菌体内には、組換えタンパク質の高度凝集物である封入体が形成された。
【0037】
培養後の大腸菌BL21株を集菌し、超音波破砕して、封入体の不溶性画分に含まれる組換えタンパク質を回収した。得られた組換えタンパク質は、Ni−NTAアガロ−ス(nickel-nitrilotriacetic acid、Qiagen社製)を用いて精製した。精製された組換えタンパク質のサイズは、pET−KHVORF62を用いた組換えタンパク質では、60kDaであり、pET−KHVORF68を用いた組換えタンパク質では、56kDaであった。
【0038】
2−1.マウスポリクローナル抗体の作製
精製した組換えタンパク質2種をそれぞれ抗原(KHV−ORF62抗原、KHV−ORF68抗原)として、100μgで1回、150μgで2回、200μgで3回の計6回マウス(ICR系統、5周齢)の腹腔に接種して免疫し、62日後に採血し、4℃で10分間、5000rpmで遠心分離して血清を得た。得られた血清を抗KHV−ORF62マウスポリクローナル抗体、及び抗KHV−ORF68マウスポリクローナル抗体として、以下の解析に用いた。
【0039】
2−2.ウエスタンブロットによるポリクローナル抗体の特異性の確認
得られた抗KHV−ORF62マウスポリクローナル抗体、及び抗KHV−ORF68マウスポリクローナル抗体について、ウエスタンブロット解析による抗原特異性の確認を行った。
【0040】
前記の培養方法に準じて、KF−1細胞に、コイヘルペスウイルスTUMST1(KHV−TUMST1)株、コイ乳頭腫症ウイルス(CHV)をそれぞれ接種し、25℃で約2週間培養した後、細胞を回収して、lysis buffer(10mM Tris−HCl(pH7.5)、10mM NaCl、0.5% NP−40)で溶解した。続いて、遠心分離を行い、得られた可溶性画分を回収して、KHV感染KF−1細胞ライセート及びCHV感染KF−1細胞ライセートを得て、以下のウエスタンブロッティングに供した。
【0041】
1レーンあたりのタンパク質量を50μgとして、KHV感染KF−1細胞ライセート、CHV感染KF−1細胞ライセート、及び対照として未感染のKF−1細胞ライセートを、10%のアクリルアミドゲルでSDS−PAGEに供した後、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜上にタンパク質をブロッティングした。続いて、PVDF膜を3%スキムミルクを用いて45分間ブロッキングし、TBS bufferで10000倍希釈した抗KHV−ORF62マウスポリクローナル抗体、及び抗KHV−ORF68マウスポリクローナル抗体をそれぞれ添加し、室温で2時間振とうした。
【0042】
二次抗体として10000倍希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗マウスIgGヤギモノクローナル抗体を用いて、各ポリクローナル抗体の検出を行った。その結果を、
図1に示す。抗KHV−ORF62マウスポリクローナル抗体による解析の結果、KHV感染KF−1細胞ライセートで、約150kDaのタンパク質が検出された(
図1A)。また、抗KHV−ORF68マウスポリクローナル抗体による解析の結果、KHV感染KF−1細胞ライセートで、ORF68がコードすると考えられる約250kDaのタンパク質と、そのタンパク質がプロセッシングされて生じたと考えられる90kDa、70kDaのタンパク質が検出された(
図1B)。これに対し、抗KHV−ORF62マウスポリクローナル抗体、及び抗KHV−ORF62マウスポリクローナル抗体を用いたいずれの場合でも、未感染のKF−1細胞ライセート及びCHV感染KF−1細胞ライセートでは、タンパク質が検出されず、各ポリクローナル抗体は交差性を示さなかった。
【0043】
2−3.ELISAによるポリクローナル抗体の特異性の確認
得られた抗KHV−ORF62マウスポリクローナル抗体、及び抗KHV−ORF68マウスポリクローナル抗体について、ELISAによる抗原特異性の確認を行った。
【0044】
上記と同様に、コイヘルペスウイルスTUMST1株(KHV−TUMST1株)、及びコイ乳頭腫症ウイルス(CHV)をそれぞれ感染させたKF−1細胞を培養後、lysis buffer(10mM Tris−HCl(pH7.5)、10mM NaCl、0.5% NP−40)で溶解した。タンパク質濃度が20μg/mLとなるようにPBSで希釈したKHV感染KF−1細胞ライセート、CHV感染KF−1細胞ライセート、及び対照として未感染のKF−1細胞ライセートを、96ウェルマイクロタイタープレートにコーティングし、5%BSAでブロッキングしてELISAプレートを作製した。比較例とした市販の抗KHVモノクローナル抗体(AQUATIC diagnostic Ltd.製)と、抗KHV−ORF62マウスポリクローナル抗体、及び抗KHV−ORF68マウスポリクローナル抗体とをそれぞれ1:500、1:1000、1:2000、1:4000、及び1:8000に希釈し、作製したELISAプレートで2時間反応させた。
【0045】
反応後、SensoLyte
TM pNPP Alkaline PhosphataseELISAAssay Kit (ANASPEC社製)を用いて抗体価を測定した。吸光度の測定は405nmで行った。その結果を、
図2に示す。市販の抗KHVモノクローナル抗体では、最低希釈倍数の500倍希釈の場合においても検出感度が得られなかった(
図2A)。これに対し、抗KHV−ORF62マウスポリクローナル抗体、抗KHV−ORF68マウスポリクローナル抗体では、8000倍希釈においても十分な検出感度が得られ、また、CHV抗原との交差性も認められなかった(
図2B及びC)。
【0046】
3−1.モノクローナル抗体の作製
KHV−ORF62、及びKHV−ORF68の部分からなる主要抗原領域にコードされるペプチドを抗原として抗KHVモノクローナル抗体を作製した。脾臓細胞は、前記のKHV−ORF62、又はKHV−ORF68の部分からなる主要抗原領域にコードされるペプチドで免疫されたマウス(ICR系統、5周齢)から脾臓を摘出し、脾臓細胞を分離してPBSで洗浄して調製した。得られた脾臓細胞とミエローマ細胞株SP2とを混合し、遠心後上清を除去した。細胞融合はPEG法により行い、20%FBS RPMI1640培地に懸濁して所定濃度に希釈し、96ウェルマイクロタイタープレートに播種して、CO
2インキュベーターで7〜10日間培養してハイブリドーマを調製した。得られたハイブリドーマは、KHV抗原ペプチドを用いたELISAによりスクリーニングした。KHV−ORF62抗原及びKHV−ORF68抗原のそれぞれを96ウェルマイクロタイタープレートにコーティングし、5%BSAでブロッキングしてELISAプレートを作製し、プレートの各ウェルにハイブリドーマの培養上清を添加して室温(約23℃)で1〜2時間反応させた。各ハイブリドーマが産生したモノクローナル抗体のELISA抗体価は、SensoLyte
TM pNPP Alkaline PhosphataseELISAAssay Kit (ANASPEC社製)を用いて測定した。その結果、抗KHV−ORF62マウスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマとして、ハイブリドーマ4B7、ハイブリドーマ2A1、ハイブリドーマ10D10、ハイブリドーマ2E10、ハイブリドーマ4F12、ハイブリドーマ5G6の6種、抗KHV−ORF68マウスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマとして、ハイブリドーマ1F3、ハイブリドーマ5G5、ハイブリドーマ9C7、ハイブリドーマ10F9、ハイブリドーマ7C6、ハイブリドーマ8D10、ハイブリドーマ12A2、ハイブリドーマ10E6の8種が選抜された。
【0047】
3−2.モノクローナル抗体の交差性の確認
得られたハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体のKHV−ORF62及びKHV−ORF68に対する交差性をELISA抗体価に基づいて判定した。KHV−ORF62抗原で免疫して得られた各抗KHV−ORF62マウスモノクローナル抗体のKHV−ORF62抗原、KHV−ORF68抗原に対する抗体価を表1に、KHV−ORF68抗原で免疫して得られた各抗KHV−ORF68マウスモノクローナル抗体のKHV−ORF68抗原、KHV−ORF62抗原に対する抗体価を表2にそれぞれ示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
その結果、抗KHV−ORF62マウスモノクローナル抗体10D10は、交差反応性を示さず、KHV−ORF62抗原と反応するがKHV−ORF68抗原と反応しないモノクローナル抗体であると判定された。また、抗KHV−ORF68マウスモノクローナル抗体7C6、10E6は、交差反応性を示さず、KHV−ORF68抗原と反応するがKHV−ORF62抗原と反応しないモノクローナル抗体であると判定された。
【0051】
3−3.モノクローナル抗体のアイソタイプの確認
得られたモノクローナル抗体のアイソタイプを判定した。各アイソタイプ特異的抗体に対する抗KHV−ORF62マウスモノクローナル抗体のELISA値を表3に、抗KHV−ORF68マウスモノクローナル抗体のELISA値を表4にそれぞれ示す。
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
その結果、抗KHV−ORF62マウスモノクローナル抗体10D10は、IgMであると判定された。また、抗KHV−ORF68マウスモノクローナル抗体7C6及び10E6は、IgG1であると判定された。
【0055】
3−4.ウエスタンブロットによるモノクローナル抗体の特異性の確認
得られた抗KHV−ORF62モノクローナル抗体、及び抗KHV−ORF68モノクローナル抗体について、常法に従いウエスタンブロット解析による抗原特異性の確認を行った。KHV−ORF62抗原及びKHV−ORF68抗原のそれぞれを、1レーンあたりのタンパク質量を50μgとして10%のアクリルアミドゲルでSDS−PAGEに供した後、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜上にブロッティングした。続いて、PVDF膜を3%スキムミルクを用いて45分間ブロッキングし、TBS bufferで希釈した前記各抗KHV−ORF62マウスモノクローナル抗体、抗KHV−ORF68マウスモノクローナル抗体をそれぞれ添加し、室温で2時間振とうした。次いで、二次抗体としてHRP標識抗マウスIgGヤギ抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories社製)を用いて各モノクローナル抗体の検出を行った。抗KHV−ORF62モノクローナル抗体のKHV−ORF62抗原及びKHV−ORF68抗原に対する特異性をウエスタンブロットで解析した結果を
図3に、抗KHV−ORF68モノクローナル抗体のKHV−ORF68抗原及びKHV−ORF62抗原に対する特異性をウエスタンブロットで解析した結果を
図4に示す。
図3に示す結果から、抗KHV−ORF62マウスモノクローナル抗体10D10は、約60kDaのKHV−ORF62抗原を特異的に検出し、約56kDaのKHV−ORF68抗原を検出しないことが確認された。また、
図4に示す結果から、抗KHV−ORF68マウスモノクローナル抗体10E6及び7C6は、約56kDaのKHV−ORF68抗原を特異的に検出し、約60kDaのKHV−ORF62抗原を検出しないことが確認された。
【0056】
3−5.モノクローナル抗体によるウイルスの検出(ウエスタンブロット)
KHV−ORF62抗原及びKHV−ORF68抗原との間で交差反応性を示さないことが確認された抗KHV−ORF62マウスモノクローナル抗体10D10、並びに抗KHV−ORF68マウスモノクローナル抗体10E6及び7C6を用いて、コイヘルペスウイルスの特異的な検出の可否を確認するために、ウエスタンブロットによるウイルス抗原の検出を行った。試料としては、KF−1細胞に、コイヘルペスウイルスTUMST1(KHV−TUMST1)株、コイ乳頭腫症ウイルス(CHV)、Cyprinid herpes virus-2(CyHV−2)をそれぞれ接種し、25℃で約2週間培養した後、回収した細胞をlysis bufferで溶解した可溶性画分を用いた。KHV感染KF−1細胞、CHV感染KF−1細胞、及びCyHV−2感染KF−1細胞から調製した前記試料を、抗KHV−ORF62マウスモノクローナル抗体10D10、抗KHV−ORF68マウスモノクローナル抗体10E6及び7C6をそれぞれ用いて、常法に従いウエスタンブロットを行った。抗KHV−ORF68マウスモノクローナル抗体7C6についての結果を
図5に示す。KHV感染KF−1細胞(右レーン)では、ORF68がコードするタンパク質がプロセシングされて生じたと考えられる抗原による複数の強いバンドが確認されたのに対し、CHV感染KF−1細胞(左レーン)及びCyHV−2感染KF−1細胞(中央レーン)ではバンドは確認されなかった。なお、各レーンの50kDa付近のバンドは、ハイブリドーマ培養液に含まれるウシ胎児血清(FBS)に由来するものと確認された。
図5に示す結果から、抗KHV−ORF68マウスモノクローナル抗体7C6は、コイヘルペスウイルス(KHV)を特異的に検出し、コイ乳頭腫症ウイルス(CHV)及びCyprinid herpes virus-2(CyHV−2)を検出しないことが確認された。抗KHV−ORF68マウスモノクローナル抗体7C6を産生するハイブリドーマは、KHVハイブリドーマ細胞ORF68(7C6)と命名され、2010年3月24日付で独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託された(受
託番号 NITE
BP−919)。
【0057】
3−6.モノクローナル抗体によるウイルスの検出(蛍光抗体法)
抗KHV−ORF68マウスモノクローナル抗体7C6を用いて、蛍光抗体法により細胞中のコイヘルペスウイルスの検出確認を行った。試料としては、チャンバースライド(Lab-Tek chamber slide w/cover Permanox Slide sterile (NUNC社製))を用いてCCB細胞(common carp brain cell;コイ脳由来株化細胞)をあらかじめ培養し、コイヘルペスウイルスTUMST1(KHV−TUMST1)株、コイ乳頭腫症ウイルス(CHV)、Cyprinid herpes virus-2(CyHV−2)をそれぞれ接種し、20℃で7〜10日間培養したものを用い、対照としてウイルスを感染させていないCCB細胞を用いた。KHV感染CCB細胞、CHV感染CCB細胞、及びCyHV−2感染CCB細胞から調製した前記試料を、スライドに塗抹し、100%メタノールで固定した後、PBSで洗浄した。続いて、塗抹標本上にブロッキング溶液(PBS−T;50% スキムミルク,0.05% Tween−20)を添加し、37℃で30分間インキュベートした。1次抗体として抗KHV−ORF68マウスモノクローナル抗体7C6を添加し、37℃で1時間反応させた後洗浄した。次いで、2次抗体としてFITC標識抗マウスIgGヤギ抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories社製)を添加し、37℃で1時間反応させた後洗浄し、封入剤(10%グリセロール)を添加して蛍光顕微鏡により観察した。その結果を
図6に示す。非感染CCB細胞(A)、CHV感染CCB細胞(B)、CyHV−2感染CCB細胞(C)と比較して、KHV感染CCB細胞(D)において強い蛍光が認められたことから、抗KHV−ORF68マウスモノクローナル抗体7C6を用いることにより、コイヘルペスウイルスに感染した細胞或いは組織におけるコイヘルペスウイルス特異的な検出が可能であることが確認された。