特許第5791230号(P5791230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5791230移動体駆動方法及び装置、露光方法及び装置、パターン形成方法及び装置、並びにデバイス製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791230
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】移動体駆動方法及び装置、露光方法及び装置、パターン形成方法及び装置、並びにデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20150917BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20150917BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20150917BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   H01L21/30 516B
   H01L21/30 516E
   G01B11/00 G
   G03F7/20 521
   H01L21/68 F
【請求項の数】24
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2009-547898(P2009-547898)
(86)(22)【出願日】2008年12月25日
(86)【国際出願番号】JP2008003960
(87)【国際公開番号】WO2009084203
(87)【国際公開日】20090709
【審査請求日】2011年8月22日
【審判番号】不服2014-6995(P2014-6995/J1)
【審判請求日】2014年4月16日
(31)【優先権主張番号】特願2007-340537(P2007-340537)
(32)【優先日】2007年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100102901
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 篤司
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 祐一
【合議体】
【審判長】 森林 克郎
【審判官】 伊藤 昌哉
【審判官】 山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−274881(JP,A)
【文献】 特開昭63−131008(JP,A)
【文献】 特開平8−124835(JP,A)
【文献】 特開2008−294443(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/097379(WO,A1)
【文献】 特開平2−110319(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/142351(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定平面内で移動体を駆動する移動体駆動方法であって、
前記移動体と該移動体の外部との一方に設置された計測面に、計測ビームを照射する前記移動体と該移動体の外部との他方に設置されたヘッドを備える位置計測系を用い、前記計測ビームの前記計測面からの戻りビームの受光結果に基づいて前記移動体の位置を計測し、その計測結果に基づいて前記移動体を駆動する工程と;
前記計測ビームの照射によって前記計測面に所定量を超える熱が蓄積されないように前記計測ビームの前記計測面上への照射量を調整する工程と;
を含み、
前記所定量は、前記計測ビームの照射に起因して、前記位置の計測誤差が無視できないレベルで前記計測面が変形し得る熱の量である移動体駆動方法。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体駆動方法において、
前記調整する工程では、前記移動体を駆動して、前記計測ビームの前記計測面上への照射量を調整する移動体駆動方法。
【請求項3】
請求項2に記載の移動体駆動方法において、
前記調整する工程では、前記移動体を、所定の範囲内で動かし続ける移動体駆動方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の移動体駆動方法において、
前記調整する工程では、前記移動体を、前記計測面によって吸収される前記計測ビームの量が一定量を超えない速度で駆動する移動体駆動方法。
【請求項5】
請求項4に記載の移動体駆動方法において、
前記一定量は、前記計測ビームを吸収することによって発生する前記計測面での熱応力及び変形量の少なくとも一方から定められる移動体駆動方法。
【請求項6】
所定平面内で移動体を駆動する移動体駆動方法であって
前記移動体と該移動体の外部との一方に設置された計測面に、計測ビームを照射する前記移動体と該移動体の外部との他方に設置されたヘッドを備える位置計測系を用い、前記計測ビームの前記計測面からの戻りビームの受光結果に基づいて前記移動体の位置を計測し、その計測結果に基づいて前記移動体を駆動する工程と;
前記計測ビームの照射によって前記計測面に所定量を超える熱が蓄積されないように前記計測ビームの前記計測面上への照射量を調整する工程と;
を含み、
前記所定量は、前記計測ビームの照射に起因して、前記位置の計測誤差が無視できないレベルで前記計測面が変形し得る熱の量であり、
前記調整する工程では、前記移動体を、前記計測ビームの照射点が前記計測面外に位置する領域に退避させる移動体駆動方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の移動体駆動方法において、
前記調整する工程では、前記計測面に対向するヘッドから前記計測ビームを間欠照射する移動体駆動方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の移動体駆動方法において、
前記調整する工程では、前記計測面に対向するヘッドから強度を落として前記計測ビームを照射する移動体駆動方法。
【請求項9】
エネルギビームを照射することによって物体上の区画領域にパターンを形成する露光方法であって、
前記区画領域にパターンを形成するために、請求項1〜8のいずれか一項に記載の移動体駆動方法を用いて、前記物体を保持する移動体を駆動する工程を含む露光方法。
【請求項10】
物体上にパターンを形成するパターン形成方法であって、
前記物体上にパターンを形成するために、請求項1〜8のいずれか一項に記載の移動体駆動方法を用いて、前記物体を保持する移動体を駆動する工程を含むパターン形成方法。
【請求項11】
請求項10に記載のパターン形成方法において、
前記物体は感応層を有し、
前記感応層にエネルギビームを照射することによって、前記パターンを形成するパターン形成方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載のパターン形成方法を用いて、物体上にパターンを形成する工程と;
前記パターンが形成された前記物体に処理を施す工程と;
を含むデバイス製造方法。
【請求項13】
所定平面内で移動体を駆動する移動体駆動装置であって、
前記移動体と該移動体の外部との一方に設置された計測面に、計測ビームを照射して前記計測ビームの前記計測面からの戻りビームを受光する前記移動体と該移動体の外部との他方に設置されたヘッドを用いて、前記移動体の位置を計測する位置計測系と;
前記移動体を、前記位置計測系の計測結果に基づいて、前記所定平面内で駆動する駆動装置と;
前記駆動装置を用いて前記移動体を駆動することによって、前記計測ビームの照射によって前記計測面に所定量を超える熱が蓄積されないように前記計測ビームの前記計測面上への照射量を調整する調整装置と;
を備え、
前記所定量は、前記計測ビームの照射に起因して、前記位置の計測誤差が無視できないレベルで前記計測面が変形し得る熱の量である移動体駆動装置。
【請求項14】
請求項13に記載の移動体駆動装置において、
前記調整装置は、前記移動体を、所定の範囲内で動かし続ける移動体駆動装置。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の移動体駆動装置において、
前記調整装置は、前記移動体を、前記計測面によって吸収される前記計測ビームの量が一定量を超えない速度で駆動する移動体駆動装置。
【請求項16】
請求項15に記載の移動体駆動装置において、
前記一定量は、前記計測ビームを吸収することによって発生する前記計測面での熱応力及び変形量の少なくとも一方から定められる移動体駆動装置。
【請求項17】
所定平面内で移動体を駆動する移動体駆動装置であって
前記移動体と該移動体の外部との一方に設置された計測面に、計測ビームを照射して前記計測ビームの前記計測面からの戻りビームを受光する前記移動体と該移動体の外部との他方に設置されたヘッドを用いて、前記移動体の位置を計測する位置計測系と;
前記移動体を、前記位置計測系の計測結果に基づいて、前記所定平面内で駆動する駆動装置と;
前記駆動装置を用いて前記移動体を駆動することによって、前記計測ビームの照射によって前記計測面に所定量を超える熱が蓄積されないように前記計測ビームの前記計測面上への照射量を調整する調整装置と;
を備え、
前記所定量は、前記計測ビームの照射に起因して、前記位置の計測誤差が無視できないレベルで前記計測面が変形し得る熱の量であり、
前記調整装置は、前記移動体を、前記計測ビームの照射点が前記計測面外に位置する領域に退避させる移動体駆動装置。
【請求項18】
請求項13〜17のいずれか一項に記載の移動体駆動装置において、
前記計測面には、前記所定平面内の第1軸と平行な方向を周期方向とする回折格子が形成され、
前記位置計測系は、前記計測面と該計測面に計測ビームを照射する前記ヘッドとの前記第1軸に平行な方向に関する相対位置を計測するエンコーダシステムを含む移動体駆動装置。
【請求項19】
請求項18に記載の移動体駆動装置において、
前記計測面には、さらに、前記所定平面内で前記第1軸と直交する第2軸に平行な方向を周期方向とする別の回折格子が形成され、
前記エンコーダシステムは、さらに、前記計測面と前記ヘッドとの前記第2軸に平行な方向に関する相対位置を計測する移動体駆動装置。
【請求項20】
請求項13〜19のいずれか一項に記載の移動体駆動装置において、
前記位置計測系は、前記計測ビームの照射点における、前記所定平面と直交する方向に関する前記計測面の位置を計測する面位置計測システムを含む移動体駆動装置。
【請求項21】
請求項13〜20のいずれか一項に記載の移動体駆動装置において、
前記位置計測系は、前記ヘッドを用いて前記計測面上のマークを検出するマーク検出系を含む移動体駆動装置。
【請求項22】
エネルギビームを照射することによって物体上の区画領域にパターンを形成する露光装置であって、
前記区画領域にパターンを形成するために、前記物体を保持する移動体を所定平面内で駆動する、請求項13〜21のいずれか一項に記載の移動体駆動装置を備える露光装置。
【請求項23】
物体にパターンを形成するパターン形成装置であって、
前記物体を保持して移動可能な移動体と;
前記物体上にパターンを形成するパターン生成装置と;
前記移動体を所定平面内で駆動する、請求項13〜21のいずれか一項に記載の移動体駆動装置と;
を備えるパターン形成装置。
【請求項24】
請求項23に記載のパターン形成装置において、
前記物体は感応層を有し、
前記パターン生成装置は、前記感応層にエネルギビームを照射することによって、前記パターンを形成するパターン形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体駆動方法及び装置、露光方法及び装置、パターン形成方法及び装置、並びにデバイス製造方法に係り、さらに詳しくは、移動体を所定平面に沿って駆動する移動体駆動方法及び移動体駆動装置、前記移動体駆動方法を利用する露光方法及び前記移動体駆動装置を備える露光装置、前記移動体駆動方法を利用するパターン形成方法及び前記移動体駆動装置を備えるパターン形成装置、並びに前記パターン形成方法を利用するデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子(集積回路等)、液晶表示素子等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、主として、ステップ・アンド・リピート方式の縮小投影露光装置(いわゆるステッパ)、あるいはステップ・アンド・スキャン方式の縮小投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが用いられている。
【0003】
この種の露光装置では、ウエハ又はガラスプレート等の基板(以下、ウエハと総称する)上の複数のショット領域にレチクル(又はマスク)のパターンを転写するために、ウエハを保持するウエハステージが、例えばリニアモータ等により2次元方向に駆動される。ウエハステージの位置は、一般的に、長期に渡って高い安定性を有するレーザ干渉計を用いて、計測されていた。
【0004】
しかし、近年、半導体素子の高集積化に伴うパターンの微細化に伴い、重ね合わせ精度の要求が厳しくなり、レーザ干渉計のビーム路上の雰囲気の温度変化や温度勾配の影響で発生する空気揺らぎに起因する計測値の短期的な変動がオーバレイバジェット中の大きなウエイトを占めるようになった。
【0005】
そこで、レーザ干渉計と同程度以上の計測分解能を有し、一般的に干渉計に比べて空気揺らぎの影響を受けにくいエンコーダを、ウエハステージの位置計測装置として採用する露光装置を、発明者は先に提案した(例えば、特許文献1参照)。発明者らが、種々の実験等を行った結果、エンコーダのヘッドから、回折格子が形成されたスケールに一定時間以上計測ビームを照射し続けると、スケールが熱膨張により微小変形し、この微小変形が無視できない程度の計測誤差の要因となり得ることが、最近になって判明した。
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/097379号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の観点からすると、所定平面内で移動体を駆動する移動体駆動方法であって、前記移動体と該移動体の外部との一方に設置された計測面に、計測ビームを照射する前記移動体と該移動体の外部との他方に設置されたヘッドを備える位置計測系を用い、前記計測ビームの前記計測面からの戻りビームの受光結果に基づいて前記移動体の位置を計測し、その計測結果に基づいて前記移動体を駆動する工程と;前記計測ビームの照射によって前記計測面に所定量を超える熱が蓄積されないように前記計測ビームの前記計測面上への照射量を調整する工程と;を含み、前記所定量は、前記計測ビームの照射に起因して、前記位置の計測誤差が無視できないレベルで前記計測面が変形し得る熱の量である移動体駆動方法である。
【0008】
これによれば、計測ビームの計測面上への照射量を調整することにより、計測面に与えられる照射熱を調整することができ、これにより、照射熱に起因する計測面の歪みを抑えることができる。従って、常に、高い位置計測精度を維持し、移動体の駆動精度を保障することが可能になる。
【0009】
本発明は、第2の観点からすると、エネルギビームを照射することによって物体上の区画領域にパターンを形成する露光方法であって、前記区画領域にパターンを形成するために、本発明の移動体駆動方法を用いて、前記物体を保持する移動体を駆動する工程を含む露光方法である。
【0010】
これによれば、物体上の区画領域にパターンを形成するために、本発明の移動体駆動方法を用いて、物体を保持する移動体が駆動される。これにより、精度良く、物体上の区画領域にパターンを形成することが可能になる。
【0011】
本発明は、第3の観点からすると、物体上にパターンを形成するパターン形成方法であって、前記物体上にパターンを形成するために、本発明の移動体駆動方法を用いて、前記物体を保持する移動体を駆動する工程を含むパターン形成方法である。
【0012】
これによれば、物体上にパターンを形成するために、本発明の移動体駆動方法を用いて、物体を保持する移動体が駆動される。これにより、精度良く、物体上にパターンを形成することが可能になる。
【0013】
本発明は、第4の観点からすると、本発明のパターン形成方法を用いて、物体上にパターンを形成する工程と;前記パターンが形成された前記物体に処理を施す工程と;を含むデバイス製造方法である。
【0018】
本発明は、第7の観点からすると、所定平面内で移動体を駆動する移動体駆動装置であって、前記移動体と該移動体の外部との一方に設置された計測面に、計測ビームを照射して前記計測ビームの前記計測面からの戻りビームを受光する前記移動体と該移動体の外部との他方に設置されたヘッドを用いて、前記移動体の位置を計測する位置計測系と;前記移動体を、前記位置計測系の計測結果に基づいて、前記所定平面内で駆動する駆動装置と;前記駆動装置を用いて前記移動体を駆動することによって、前記計測ビームの照射によって前記計測面に所定量を超える熱が蓄積されないように前記計測ビームの前記計測面上への照射量を調整する調整装置と;を備え、前記所定量は、前記計測ビームの照射に起因して、前記位置の計測誤差が無視できないレベルで前記計測面が変形し得る熱の量である移動体駆動装置である。
【0019】
これによれば、調整装置により、駆動装置を用いて移動体を駆動することによって、計測ビームの計測面上への照射量が調整される。このため、計測面に与えられる照射熱が調整され、その熱に起因する計測面の歪みを抑えることができる。従って、常に、高い位置計測精度を維持し、移動体の駆動精度を保障することが可能になる。
【0020】
本発明は、第8の観点からすると、エネルギビームを照射することによって物体上の区画領域にパターンを形成する露光装置であって、前記区画領域にパターンを形成するために、前記物体を保持する移動体を所定平面内で駆動する、本発明の移動体駆動装置を備える露光装置である。
【0021】
これによれば、物体上の区画領域にパターンを形成するために、本発明の移動体駆動装置により、物体を保持する移動体が所定平面内で駆動される。これにより、精度良く、物体上の区画領域にパターンを形成することが可能になる。
【0022】
本発明は、第9の観点からすると、物体にパターンを形成するパターン形成装置であって、前記物体を保持して移動可能な移動体と;前記物体上にパターンを形成するパターン生成装置と;前記移動体を所定平面内で駆動する、本発明の移動体駆動装置と;を備えるパターン形成装置である。
【0023】
これによれば、パターン生成装置により、物体上にパターンが形成される際、本発明の移動体駆動装置により、物体を保持する移動体が所定平面内で駆動される。これにより、精度良く、物体上にパターンを形成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】一実施形態に係る露光装置の構成を概略的に示す図である。
図2】ウエハステージを示す平面図である。
図3図1の露光装置が備えるステージ装置及び干渉計の配置を示す平面図である。
図4図1の露光装置が備えるステージ装置及びセンサユニットの配置を示す平面図である。
図5】エンコーダヘッド(Xヘッド、Yヘッド)とアライメント系の配置を示す平面図である。
図6】Zヘッドと多点AF系の配置を示す平面図である。
図7】一実施形態に係る露光装置の制御系の主要な構成を示すブロック図である。
図8】ウエハステージの第1待機位置(アンローディングポジション)を示す図である。
図9】ウエハステージの第2待機位置(ローディングポジション)を示す図である。
図10】スケール上の同一箇所へのエンコーダヘッド及びZヘッドからの計測ビームの連続照射を避けるためのステージ駆動方法の一例を説明するための図である。
図11】スケール上の同一箇所へのエンコーダヘッド及びZヘッドからの計測ビームの連続照射を避けるためのステージ駆動方法の他の一例を説明するための図である。
図12】スケール上の同一箇所へのエンコーダヘッド及びZヘッドからの計測ビームの連続照射を避けるためのステージ駆動方法の他の一例を説明するための図である。
図13】スケール上の同一箇所へのエンコーダヘッド及びZヘッドからの計測ビームの連続照射を避けるためのステージ駆動方法の他の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態について、図1図13に基づいて説明する。
【0029】
図1には、一実施形態の露光装置100の構成が概略的に示されている。露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では投影光学系PLが設けられており、以下においては、投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0030】
露光装置100は、照明系10、レチクルステージRST、投影ユニットPU、ウエハステージWSTを有するステージ装置50、及びこれらの制御系等を、備えている。図1では、ウエハステージWST上にウエハWが載置されている。
【0031】
照明系10は、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されるように、光源と、オプティカルインテグレータ等を含む照度均一化光学系、及びレチクルブラインド等(いずれも不図示)を有する照明光学系と、を含む。照明系10は、レチクルブラインド(マスキングシステム)で規定されたレチクルR上のスリット状の照明領域IARを、照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。照明光ILとして、一例として、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。
【0032】
レチクルステージRST上には、そのパターン面(図1における下面)に回路パターンなどが形成されたレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系11(図1では不図示、図7参照)によって、XY平面内で微小駆動可能であるとともに、走査方向(図1における紙面内左右方向であるY軸方向)に所定の走査速度で駆動可能となっている。
【0033】
レチクルステージRSTのXY平面(移動面)内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)116によって、移動鏡15(実際には、Y軸方向に直交する反射面を有するY移動鏡(あるいは、レトロリフレクタ)とX軸方向に直交する反射面を有するX移動鏡とが設けられている)を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計116の計測値は、主制御装置20(図1では不図示、図7参照)に送られる。
【0034】
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置され、不図示のメインフレームに支持されている。投影ユニットPUは、鏡筒40と、鏡筒40内に保持された投影光学系PLと、を含む。投影光学系PLとしては、例えば、Z軸方向と平行な光軸AXに沿って配列される複数の光学素子(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられている。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する。このため、照明系10からの照明光ILによってレチクルR上の照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PL(投影ユニットPU)を介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域IARに共役な領域(以下、露光領域とも呼ぶ)IAに形成される。そして、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動させることで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系10、及び投影光学系PLによってウエハW上にレチクルRのパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。
【0035】
ステージ装置50は、図1に示されるように、ベース盤12上に配置されたウエハステージWST、ウエハステージWSTの位置情報を計測する計測システム200(図7参照)、及びウエハステージWSTを駆動するステージ駆動系124(図7参照)等を備えている。計測システム200は、図7に示されるように、干渉計システム118、エンコーダシステム150及び面位置計測システム180などを含む。
【0036】
ウエハステージWSTは、不図示の非接触軸受、例えばエアベアリングなどにより、数μm程度のクリアランスを介して、ベース盤12上に支持されている。ウエハステージWSTは、ステージ本体91と、該ステージ本体91に搭載されたウエハテーブルWTBとを含む。ウエハテーブルWTB及びステージ本体91は、例えばリニアモータ等を含むステージ駆動系124によって駆動される。これにより、ウエハWはベース盤12上で6自由度方向(X,Y,Z,θx,θy,θz)に移動可能となっている。
【0037】
ウエハテーブルWTBの上面の中央には、ウエハWを真空吸着等によって保持するウエハホルダ(不図示)が設けられている。
【0038】
ウエハテーブルWTB上面のウエハホルダの+Y側には、計測プレート30が配置されている。計測プレート30には、その中央に基準マークFMが配置され、基準マークFMのX軸方向の両側には、一対の空間像計測スリットパターン(スリット状の計測用パターン)SLが、配置されている。そして、各空間像計測スリットパターンSLに対応して、ウエハステージWSTの内部には、光学系及び受光素子などが配置されている。すなわち、ウエハテーブルWTB上には、空間像計測スリットパターンSLを含む一対の空間像計測器45A,45B(図7参照)が設けられている。なお、ウエハステージWSTの内部には光学系の一部のみが配置され、熱源となる受光素子などはウエハステージWSTの外部に配置されていても良い。
【0039】
また、ウエハテーブルWTB上面には、後述するエンコーダシステムで用いられるスケールが形成されている。詳述すると、ウエハテーブルWTB上面のX軸方向(図2における紙面内左右方向)の一側と他側の領域には、それぞれYスケール39Y1,39Y2が形成されている。Yスケール39Y1,39Y2は、例えば、X軸方向を長手方向とする格子線38が所定ピッチでY軸方向に配列された、Y軸方向を周期方向とする反射型の格子(例えば回折格子)によって構成されている。
【0040】
同様に、ウエハテーブルWTB上面のY軸方向(図2における紙面内上下方向)の一側と他側の領域には、Yスケール39Y1及び39Y2に挟まれた状態で、Xスケール39X1,39X2がそれぞれ形成されている。Xスケール39X1,39X2は、例えば、Y軸方向を長手方向とする格子線37が所定ピッチでX軸方向に配列された、X軸方向を周期方向とする反射型の格子(例えば回折格子)によって構成されている。
【0041】
なお、格子線37,38のピッチは、例えば1μmと設定される。図2及びその他の図においては、図示の便宜上から、格子のピッチは実際のピッチよりも大きく図示されている。
【0042】
また、各回折格子を保護するために、各スケールを低熱膨張率のガラス板でカバーすることも有効である。ここで、ガラス板としては、厚さがウエハと同程度、例えば厚さ1mmのものを用いることができ、そのガラス板の表面がウエハ面と同じ高さ(面一)になるよう、ウエハテーブルWST(各スケール)の上面に設置される。
【0043】
また、ウエハテーブルWTBの−Y端面,−X端面には、図2に示されるように、後述する干渉計システムで用いられる反射面17a,反射面17bが形成されている。
【0044】
また、ウエハテーブルWTBの+Y端面には、図2に示されるように、国際公開第2007/097379号パンフレット(対応米国特許出願公開第2008/0088843号明細書)に開示されるCDバーと同様の、フィデューシャルバー(以下、「FDバー」と略述する)46がX軸方向に延設されている。FDバー46の長手方向の一側と他側の端部近傍には、ウエハテーブルWTBのセンターラインLLに関して対称な配置で、Y軸方向を周期方向とする基準格子(例えば回折格子)52がそれぞれ形成されている。また、FDバー46の上面には、複数の基準マークMが形成されている。各基準マークMとしては、後述するアライメント系によって検出可能な寸法の2次元マークが用いられている。本実施形態では、各スケールのカバーガラス板の表面、ウエハテーブルWTBの上面、計測プレート30の表面、後述のFDバー46の表面、及びウエハの表面が面一になっている。また、これら面の少なくとも一部は、撥液性を有していても良い。
【0045】
本実施形態の露光装置100では、図4及び図5に示されるように、投影光学系PLの光軸AXを通るY軸に平行な直線(基準軸)LV上で光軸AXから−Y側に所定距離隔てた位置に検出中心を有するプライマリアライメント系AL1が設けられている。プライマリアライメント系AL1は、前述のメインフレームの下面に固定されている。図5に示されるように、プライマリアライメント系AL1を挟んで、X軸方向の一側と他側には、基準軸LVに関してほぼ対称に検出中心が配置されるセカンダリアライメント系AL21,AL22と、AL23,AL24とがそれぞれ設けられている。セカンダリアライメント系AL21〜AL24は、可動式の支持部材を介してメインフレーム(不図示)の下面に固定されており、駆動機構601〜604図7参照)により、X軸方向に関してそれらの検出領域の相対位置が調整可能となっている。
【0046】
本実施形態では、アライメント系AL1,AL21〜AL24のそれぞれとして、例えば画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系が用いられている。アライメント系AL1,AL21〜AL24のそれぞれからの撮像信号は、不図示の信号処理系を介して主制御装置20に供給される。
【0047】
本実施形態では、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、主として、後述するエンコーダシステム150を用いて計測される。干渉計システム118は、ウエハステージWSTがエンコーダシステム150の計測領域外(例えば、アンローディングポジションUP(図8参照)及びローディングポジションLP(図9参照)付近)に位置する際に、使用される。また、エンコーダシステム150の計測結果の長期的変動(例えばスケールの経時的な変形などによる)を補正(較正)する場合などに補助的に使用される。従って、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のXY平面内の位置情報の計測のためには、干渉計システム118は、必ずしも設けなくても良い。この一方、干渉計システム118とエンコーダシステム150とを併用して、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)の位置情報を計測することとしても良い。
【0048】
本実施形態の露光装置100には、干渉計システム118とは独立に、ウエハステージWSTのXY平面内での位置(X,Y,θz)を計測するために、エンコーダシステム150を構成する複数のヘッドユニットが設けられている。
【0049】
図4に示されるように、投影ユニットPUの+X側、+Y側、−X側、及びプライマリアライメント系AL1の−Y側に、4つのヘッドユニット62A、62B、62C、及び62Dが、それぞれ配置されている。また、アライメント系AL1、AL21〜AL24のX軸方向の両外側にヘッドユニット62E、62Fが、それぞれ配置されている。これらのヘッドユニット62A〜62Fは、支持部材を介して、前述のメインフレームに吊り下げ状態で固定されている。
【0050】
ヘッドユニット62A及び62Cは、図5に示されるように、それぞれ複数(ここでは5つ)のYヘッド651〜655及びYヘッド641〜645を備えている。ここで、Yヘッド652〜655及びYヘッド641〜644は、基準軸LH上に間隔WDで配置されている。Yヘッド651及びYヘッド645は、基準軸LHから−Y方向に所定距離離れた投影ユニットPUの−Y側の位置に配置されている。Yヘッド651,652間、及びYヘッド644,645間のX軸方向の間隔もWDに設定されている。なお、Yヘッド651〜655とYヘッド645〜641は、基準軸LVに関して対称に配置されている。以下では、必要に応じて、Yヘッド651〜655及びYヘッド641〜645を、それぞれ、Yヘッド65及びYヘッド64とも記述する。
【0051】
ヘッドユニット62Aは、Yスケール39Y1を用いて、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のY軸方向の位置(Y位置)を計測する多眼(ここでは5眼)のYリニアエンコーダ70A(図7参照)を構成する。同様に、ヘッドユニット62Cは、Yスケール39Y2を用いて、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のY位置を計測する多眼(ここでは5眼)のYリニアエンコーダ70C(図7参照)を構成する。なお、以下では、Yリニアエンコーダを、適宜、「Yエンコーダ」又は「エンコーダ」と略述する。
【0052】
ここで、ヘッドユニット62A,62Cがそれぞれ備える5つのYヘッド65,64(より正確には、Yヘッド65,64が発する計測ビームのスケール上の照射点)のX軸方向の間隔WDは、Yスケール39Y1,39Y2のX軸方向の幅(より正確には、格子線38の長さ)より僅かに狭く設定されている。従って、例えば露光時などには、それぞれ5つのYヘッド65,64のうち、少なくとも1つのヘッドが、常に、対応するYスケール39Y1,39Y2に対向する(計測ビームを照射する)。
【0053】
ヘッドユニット62Bは、図5に示されるように、基準軸LV上に間隔WDで配置された複数(ここでは4つ)のXヘッド665〜668を備えている。また、ヘッドユニット62Dは、基準軸LV上に間隔WDで配置された複数(ここでは4つ)のXヘッド661〜664を備えている。以下では、必要に応じて、Xヘッド665〜668及びXヘッド661〜664をXヘッド66とも記述する。
【0054】
ヘッドユニット62Bは、Xスケール39X1を用いて、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のX軸方向の位置(X位置)を計測する、多眼(ここでは4眼)のXリニアエンコーダ70B(図7参照)を構成する。また、ヘッドユニット62Dは、Xスケール39X2を用いて、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のX位置を計測する多眼(ここでは4眼)のXリニアエンコーダ70D(図7参照)を構成する。なお、以下では、Xリニアエンコーダを、適宜、「エンコーダ」と略述する。
【0055】
ここで、ヘッドユニット62B,62Dがそれぞれ備える隣接するXヘッド66(より正確には、Xヘッド66が発する計測ビームのスケール上の照射点)のY軸方向の間隔WDは、Xスケール39X1,39X2のY軸方向の幅(より正確には、格子線37の長さ)よりも狭く設定されている。従って、例えば露光時又はアライメント時などには、ヘッドユニット62B,62Dが備える合計8つのXヘッド66のうち少なくとも1つのヘッドが、常に、対応するXスケール39X1,39X2に対向する(計測ビームを照射する)。
【0056】
なお、ヘッドユニット62Bの最も−Y側のXヘッド665とヘッドユニット62Dの最も+Y側のXヘッド664との間隔は、ウエハステージWSTのY軸方向の移動により、その2つのXヘッド間で切り換え(つなぎ)が可能となるように、ウエハテーブルWTBのY軸方向の幅よりも狭く設定されている。
【0057】
ヘッドユニット62Eは、図5に示されるように、複数(ここでは4つ)のYヘッド671〜674を備えている。ここで、3つのYヘッド671〜673は、セカンダリアライメント系AL21の−X側に、基準軸LA上に間隔WDとほぼ同一間隔で配置されている。Yヘッド674は、基準軸LAから+Y方向に所定距離離れたセカンダリアライメント系AL21の+Y側に配置されている。なお、Yヘッド673,674間のX軸方向の間隔もWDと設定されている。
【0058】
ヘッドユニット62Fは、複数(ここでは4つ)のYヘッド681〜684を備えている。これらのYヘッド681〜684は、基準軸LVに関して、Yヘッド674〜671と対称な位置に配置されている。すなわち、3つのYヘッド682〜684は、セカンダリアライメント系AL24の+X側に、基準軸LA上に間隔WDとほぼ同一間隔で配置されている。Yヘッド681は、基準軸LAから+Y方向に所定距離離れたセカンダリアライメント系AL24の+Y側に配置されている。なお、Yヘッド681,682間のX軸方向の間隔もWDと設定されている。以下では、必要に応じて、Yヘッド674〜671及びYヘッド681〜684を、それぞれYヘッド67及びYヘッド68とも記述する。
【0059】
アライメント計測の際には、少なくとも各1つのYヘッド67,68が、それぞれYスケール39Y2,39Y1に対向する。このYヘッド67,68(すなわち、これらYヘッド67,68によって構成されるYリニアエンコーダ70E,70F)によってウエハステージWSTのY位置(及びθz回転)が計測される。
【0060】
また、本実施形態では、セカンダリアライメント系のベースライン計測時などに、セカンダリアライメント系AL21,AL24にX軸方向で隣接するYヘッド673,682が、FDバー46の一対の基準格子52とそれぞれ対向し、その一対の基準格子52と対向するYヘッド673,682によって、FDバー46のY位置が、それぞれの基準格子52の位置で計測される。以下では、一対の基準格子52にそれぞれ対向するYヘッド673,682によって構成されるエンコーダをYリニアエンコーダ70E2,70F2図7参照)と呼ぶ。また、識別のため、Yスケール39Y2,39Y1に対向するYヘッド67,68によって構成されるYエンコーダを、Yエンコーダ70E1、70F1と呼ぶ。
【0061】
上述したリニアエンコーダ70A〜70Fの計測値は、主制御装置20に供給され、主制御装置20は、リニアエンコーダ70A〜70Dのうちの3つ、又はリニアエンコーダ70E1,70F1,70B及び70Dのうちの3つの計測値に基づいて、ウエハステージWSTのXY平面内の位置を制御するとともに、リニアエンコーダ70E2,70F2の計測値に基づいて、FDバー46(ウエハステージWST)のθz方向の回転を制御する。
【0062】
なお、各エンコーダヘッド(Yヘッド、Xヘッド)として、例えば、国際公開第2007/097379号パンフレットに開示されている干渉型のエンコーダヘッドを用いることができる。この種のエンコーダヘッドでは、2つの計測光を対応するスケールに照射し、それぞれの戻り光を1つの干渉光に合成して受光し、その干渉光の強度を光検出器を用いて計測する。その干渉光の強度変化より、スケールの計測方向(回折格子の周期方向)への変位を計測する。なお、各エンコーダヘッド(Yヘッド、Xヘッド)としては、上述した回折干渉方式に限らず、例えばいわゆるピックアップ方式など、種々の方式を用いることができる。
【0063】
干渉計システム118は、図3に示されるように、反射面17a又は17bにそれぞれ干渉計ビーム(測長ビーム)を照射し、その反射光を受光して、ウエハステージWSTのXY平面内の位置情報を計測するY干渉計16及び3つのX干渉計126,127,128を備えている。詳述すると、Y干渉計16は、基準軸LVに関して対称な一対の測長ビームB41,B42を含む少なくとも3つのY軸に平行な測長ビームを反射面17a、及び後述する移動鏡41に照射する。また、X干渉計126は、図3に示されるように、光軸AXと基準軸LVとに直交するX軸に平行な直線(基準軸LH)に関して対称な一対の測長ビームB51,B52を含む少なくとも3つのX軸に平行な測長ビームを反射面17bに照射する。また、X干渉計127は、アライメント系AL1の検出中心にて基準軸LVと直交するX軸に平行な直線(基準軸)LAを測長軸とする測長ビームB6を含む少なくとも2つのY軸に平行な測長ビームを反射面17bに照射する。また、X干渉計128は、Y軸に平行な測長ビームB7を反射面17bに照射する。
【0064】
干渉計システム118の上記各干渉計からの位置情報は、主制御装置20に供給される。主制御装置20は、例えばY干渉計16及びX干渉計126又は127の計測結果に基づいて、ウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)のX,Y位置に加え、θx方向の回転情報(すなわちピッチング)、θy方向の回転情報(すなわちローリング)、及びθz方向の回転情報(すなわちヨーイング)も算出することができる。
【0065】
干渉計システム118は、図1及び図3に示されるように、一対のZ干渉計43A,43Bをもさらに備えている。Z干渉計43A,43Bは、ステージ本体91の−Y側の側面に固定された凹形状の反射面を有する移動鏡41に対向して配置されている。ここで、移動鏡41は、図2からわかるように、X軸方向の長さがウエハテーブルWTBの反射面17aよりも、長く設計されている。
【0066】
Z干渉計43A,43Bは、移動鏡41を介して、例えば前述のメインフレームに固定された固定鏡47A,47Bにそれぞれ2つのY軸に平行な測長ビームB1,B2を照射し、それぞれの反射光を受光して、測長ビームB1,B2の光路長を計測する。その計測結果に基づいて、主制御装置20は、ウエハステージWSTの4自由度(Y,Z,θy,θz)方向の位置を算出する。
【0067】
さらに、本実施形態の露光装置100では、図4及び図6に示されるように、照射系90a及び受光系90bから成る多点焦点位置検出系(以下、「多点AF系」と略述する)が設けられている。多点AF系としては、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示されるものと同様の構成の斜入射方式を採用している。本実施形態では、一例として、前述のヘッドユニット62Eの−X端部の+Y側に照射系90aが配置され、これに対峙する状態で、前述のヘッドユニット62Fの+X端部の+Y側に受光系90bが配置されている。なお、多点AF系(90a,90b)は、前述のメインフレームの下面に固定されている。
【0068】
多点AF系(90a,90b)の複数の検出点は、被検面上でX軸方向に沿って所定間隔で配置される。本実施形態では、例えば1行M列(Mは検出点の総数)又は2行N列(N=M/2)のマトリックス状に配置される。図4及び図6では、それぞれ検出ビームが照射される複数の検出点が、個別に図示されず、照射系90a及び受光系90bの間でX軸方向に延びる細長い検出領域(ビーム領域)AFとして示されている。検出領域AFは、X軸方向の長さがウエハWの直径と同程度に設定されているので、ウエハWをY軸方向に1回スキャンするだけで、ウエハWのほぼ全面でZ軸方向の位置情報(面位置情報)を計測できる。
【0069】
図6に示されるように、多点AF系(90a,90b)の検出領域AFの両端部近傍に、基準軸LVに関して対称な配置で、面位置計測システム180の一部を構成する各一対のZ位置計測用のヘッド(以下、「Zヘッド」と略述する)72a,72b、及び72c,72dが設けられている。これらのZヘッド72a〜72dは、前述のメインフレームの下面に固定されている。なお、以下では、Zヘッド72a〜72dをまとめて、Zヘッド72とも記述する。
【0070】
Zヘッド72a〜72dとしては、例えば、CDドライブ装置などで用いられる光ピックアップと同様の光学式変位センサのヘッドが用いられている。Zヘッド72a〜72dは、ウエハテーブルWTBに対し上方から計測ビームを照射し、その反射光を受光して、照射点におけるウエハテーブルWTBの面位置を計測する。なお、本実施形態では、Zヘッドの計測ビームは、前述のYスケール39Y1,39Y2を構成する反射型回折格子によって反射される構成を採用している。
【0071】
さらに、前述のヘッドユニット62A,62Cは、図6に示されるように、それぞれが備える5つのYヘッド65j,64i(i,j=1〜5)と同じX位置に、ただしY位置をずらして、それぞれ5つのZヘッド76j,74i(i,j=1〜5)を備えている。ここで、ヘッドユニット62A,62Cのそれぞれに属する外側の3つのZヘッド763〜765,741〜743は、基準軸LHから+Y方向に所定距離隔てて、基準軸LHと平行に配置されている。また、ヘッドユニット62Aと62Cのそれぞれに属する最も内側のZヘッド761と745は投影ユニットPUの+Y側に、残りのZヘッド762と744はそれぞれYヘッド652と644の−Y側に、配置されている。そして、ヘッドユニット62A,62Cのそれぞれに属する5つのZヘッド76,74は、互いに基準軸LVに関して対称に配置されている。なお、各Zヘッド76,74としては、前述のZヘッド72a〜72dと同様の光学式変位センサのヘッドが採用されている。
【0072】
前述の如く、ヘッドユニット62A,62Cは、それぞれが備える5つのYヘッド65j,64iと同じX位置に、それぞれ5つのZヘッド76j,74i備えているので、例えば露光時などには、Yヘッド65,64と同様に、それぞれ5つのZヘッド76,74のうち、少なくとも1つのヘッドが、常に、対応するYスケール39Y1,39Y2に対向する。
【0073】
上述したZヘッド72a〜72d,741〜745,761〜765は、図7に示されるように、信号処理・選択装置170を介して主制御装置20に接続されており、主制御装置20は、信号処理・選択装置170を介してZヘッド72a〜72d,741〜745,761〜765の中から任意のZヘッドを選択して作動状態とし、その作動状態としたZヘッドで検出した面位置情報を信号処理・選択装置170を介して受け取る。本実施形態では、Zヘッド72a〜72d,741〜745,761〜765と、信号処理・選択装置170とを含んでウエハステージWSTのZ軸方向及びXY平面に対する傾斜方向(主としてθy方向)の位置情報を計測する面位置計測システム180が構成されている。
【0074】
図7には、露光装置100の制御系の主要な構成が示されている。この制御系は、装置全体を統括的に制御するマイクロコンピュータ(又はワークステーション)から成る主制御装置20を中心として構成されている。
【0075】
上述のようにして構成された本実施形態の露光装置では、例えば国際公開第2007/097379号パンフレットの実施形態中に開示されている手順と同様の手順に従って、ウエハステージWSTを用いた処理が、主制御装置20によって実行される。
【0076】
すなわち、図8に示されるアンローディングポジションUPにウエハステージWSTがあるときに、ウエハWがアンロードされ、図9に示されるローディングポジションLPに移動したときに、新たなウエハWがウエハテーブルWTB上にロードされる。アンローディングポジションUP、ローディングポジションLP近傍では、ウエハステージWSTの6自由度の位置は、干渉計システム118の計測値に基づいて制御されている。また、アンローディングポジションUP、ローディングポジションLP及び両者間の移動経路では、全てのエンコーダヘッド及びZヘッドが、スケール39Y1,39Y2,39X1,39X2のいずれにも対向することがない。すなわち、アンローディングポジションUP、ローディングポジションLP及び両者間の移動経路の領域は、すべてのエンコーダヘッド及びZヘッドの計測ビームの照射点がスケール外に位置する。
【0077】
ところで、本実施形態の露光装置100では、所定時間以上、エンコーダヘッド及びZヘッドの計測ビームがスケールの同一点に照射されないような(すなわち、熱応力が許容値を越えないような)シーケンスが採用されており、その1つとして、ウエハステージWSTを「待機位置」に退避させる方法が採用されている。従って、ウエハステージWSTを所定時間以上停止させる必要がある場合には、アンローディングポジションUP、ローディングポジションLPなどは、その待機位置として好適な位置となっている。なお、例えばローディングポジションLPにおいて、露光前のウエハWの周辺の一部にXヘッド661〜664の一部が対向することがあるが、ヘッドからの計測ビームは、ウエハW表面のレジストを感光させるおそれはないので特に支障はない。
【0078】
ローディング終了後、ウエハステージWSTを移動して、計測プレート30の基準マークFMをプライマリアライメント系AL1で検出するプライマリアライメント系AL1のベースラインチェック前半の処理が行われる。これと前後して、エンコーダシステム及び干渉計システムの原点の再設定(リセット)が行われる。
【0079】
その後、エンコーダシステム及びZヘッドを用いてウエハステージWSTの6自由度方向の位置を計測しつつ、アライメント系AL1,AL21〜AL24を用いて、ウエハW上の複数のサンプルショット領域のアライメントマークを検出するアライメント計測が実行され、これと並行して多点AF系(90a、90b)を用いてフォーカスマッピング(Zヘッド72a〜72dの計測値を基準とする、ウエハWの面位置(Z位置)情報の計測)が行われる。そして、これらアライメント計測及びフォーカスマッピングのためのウエハステージWSTの+Y方向への移動中に、計測プレート30が投影光学系PLの直下に達したとき、空間像計測器45A,45Bを用いてレチクルR上の一対のアライメントマークをスリットスキャン方式で計測する、プライマリアライメント系AL1のベースラインチェック後半の処理が行われる。
【0080】
その後、アライメント計測及びフォーカスマッピングが続行される。
【0081】
そして、アライメント計測及びフォーカスマッピングが終了すると、アライメント計測の結果から得られるウエハ上の各ショット領域の位置情報と、最新のアライメント系のベースラインとに基づいて、ステップ・アンド・スキャン方式でウエハW上の複数のショット領域が露光され、レチクルのパターンが転写される。露光動作中、フォーカスマッピングにより得られた情報に基づいて、ウエハWのフォーカスレベリング制御が行われる。なお、露光中のウエハのZ、θyは、Zヘッド74,76の計測値に基づいて制御されるが、θxは、Y干渉計16の計測値に基づいて制御される。
【0082】
なお、セカンダリアライメント系AL21〜AL24のベースライン計測は、適宜なタイミングで、国際公開第2007/097379号パンフレットに開示される方法と同様に、前述のエンコーダ70E2,70F2の計測値に基づいて、FDバー46(ウエハステージWST)のθz回転を調整した状態で、4つのセカンダリアライメント系AL21〜AL24を用いて、それぞれのセカンダリアライメント系の視野内にあるFDバー46上の基準マークMを同時に計測することで行われる。
【0083】
上述のようにして、ウエハステージWSTを用いた一連の処理が行われるが、何らかの原因により、ウエハステージWSTを用いた一連の処理を一時的に停止して、ウエハステージWSTを待機状態(アイドル状態)にしなければならない事態が生じることがある。
【0084】
例えば、ウエハ交換時に、新たなウエハが、露光装置100に例えばインラインにて接続されたコータ・デベロッパから送られてこないような場合であれば、主制御装置20は、ウエハステージWSTを前述した待機位置の1つであるローディングポジションLPに停止させて待機させることができる。
【0085】
一方、アンローディングポジションUP及びローディングポジションLPなどから離れた位置にウエハステージWSTがあるときにウエハステージWSTを短時間待機させる必要が生じた場合などには、主制御装置20は、ウエハステージWSTを所定範囲内で動かし続けることで、ウエハステージWST上の各スケールの同一箇所に、エンコーダのヘッド及びZヘッドからの計測ビームが照射され続ける事態が発生するのを防止する。この場合において、近くにアンローディングポジションUP及びローディングポジションLP以外の待機位置があれば、主制御装置20は、ウエハステージWSTを、動かし続ける代わりに、その待機位置に移動させても良い。
【0086】
この場合おいて、エンコーダのヘッド及びZヘッドからの計測ビームの射出を停止する、すなわちこれらのヘッドをOFFにすることも考えられなくもないが、これらのヘッドをOFFにすると、再度ONにしたときの計測ビームの射出状態が安定化するまでに長時間を要するので、好ましくない。
【0087】
かかる点に鑑みて、本実施形態では、主制御装置20は、上述のように、ウエハステージWSTを動かし続ける、あるいは待機位置に退避させることで、各スケールに対する計測ビームの照射量を制御し、これによって計測ビームの照射熱によるスケールの歪み(変形)及びそれに伴うエンコーダヘッド及びZヘッドの計測誤差の発生を回避する。主制御装置20は、ウエハステージWSTを動かし続ける場合、ウエハステージWSTを、連続移動に限らず、ステップ移動させても良い。本明細書では、かかるステップ移動をも含む概念として、「動かし続ける」なる用語を用いている。
【0088】
例えば、主制御装置20は、図10中に白抜き両矢印で示されるように、ウエハステージWSTを、所定の範囲内で往復駆動する。この場合において、主制御装置20は、ウエハステージWSTの駆動範囲(往復の移動距離)と駆動速度を、計測ビームの照射に伴って発生する熱の発生量と拡散量に応じて、スケールを歪ませ得るだけの熱応力が蓄積されない程度に、計測ビームの照射量を抑えるように定める。なお、図10では、ウエハステージWSTの往復駆動の方向がX軸方向である場合が例示されているが、ウエハステージWSTの往復駆動の方向は任意に設定することができる。
【0089】
あるいは、主制御装置20は、例えば、図11に中に白抜き両矢印で示されるように、ウエハステージWSTを、所定の範囲内で、ジグザグな軌道に沿って往復駆動することとしても良いし、図12中に白抜き矢印で示されるように、所定の範囲内で、停止位置を中心に旋回駆動することとしても良いし、図13中に白抜き矢印で示されるように、所定の範囲内で、周回駆動することとしても良い。また、主制御装置20は、これらの駆動方法を組み合わせても良い。これらの場合にも、主制御装置20は、ウエハステージWSTの駆動範囲と駆動速度は、計測ビームの照射に伴って発生する熱の発生量と拡散量に応じて、スケールを歪ませ得るだけの熱応力が蓄積されない程度に、計測ビームの照射量を抑えるように定める。要は、スケールを無視できないレベルで歪ませ得るだけの熱が蓄積されなければ、ウエハステージWSTの駆動範囲、駆動経路、駆動速度は、任意に設定して構わない。なお、オペレータが、上述のウエハステージWSTの駆動範囲、駆動経路、駆動速度の設定を行うことができるようにしても良い。
【0090】
なお、ウエハステージWSTを動かし続ける方法は、スケール上の同じ位置への計測ビームの照射量を抑えるための手段なので、短時間の露光装置100のアイドル中にのみ適用することとし、長時間のアイドル中にはウエハステージWSTを前述の待機位置へ退避させることが望ましい。また、図10図13の例では、上述の対応するスケールに対向しているエンコーダヘッド及びZヘッドの他に、ウエハテーブルWTB上面(ウエハW又はその周囲部分)に対向しているヘッドが幾つかある。そこで、主制御装置20は、計測ビームの照射を制御する方法を併用して、対応するスケールに対向していないヘッドからの計測ビームの照射を停止し、あるいは間欠照射しても良い。あるいは、そのヘッドから強度を落として計測ビームを照射しても良い。
【0091】
上述の方法に従ってスケールの熱変形を回避することにより、エンコーダシステム150(及び面位置センサシステム180)の計測精度が保障される。
【0092】
以上、詳細に説明したように、本実施形態の露光装置100には、ウエハステージWSTの位置を計測するために、エンコーダヘッド64〜68及びZヘッド72,74,76が設置されている。これらのヘッドから発せられる計測ビームが、ウエハステージWSTの上面に設けられているスケール39X1,39X2,39Y1,39Y2に照射される。そこで、主制御装置20は、ステージ駆動系124を用いてウエハステージWSTを駆動することによって、エンコーダヘッド64〜68及びZヘッド72,74,76から発せられる計測ビームのスケール39X1,39X2,39Y1,39Y2上への照射量を調整する。例えば、露光装置100のアイドル中には、主制御装置20は、前述のように、ウエハステージWSTを動かし続ける、あるいは計測ビームがスケール39X1,39X2,39Y1,39Y2上に当たらない領域に、ウエハステージWSTを退避させて、計測ビームのスケール39X1,39X2,39Y1,39Y2上への連続照射を回避する。そのため、スケールに与えられる照射熱が調整され、その熱によって発生する応力(熱応力)及び/又は熱膨張等によるスケールの歪みを抑えることができる。従って、常に、エンコーダヘッド64〜68(及びZヘッド72,74,76)の高い位置計測精度を維持し、ウエハステージWSTの駆動精度を保障することが可能になる。
【0093】
なお、本実施形態において、エンコーダヘッド(及びZヘッド)からスケールに照射される計測ビームの照射量を調整するため、次のa.、b.のような手法を採用しても良い。
a.主制御装置20は、エンコーダヘッドの計測ビームの強度から、上記の熱応力、スケールの変形量(及び歪み)などが許容値を越えないように、ウエハステージWSTの、連続移動での最低速度など、又はステップ移動での最長滞在時間及び/又はステップ距離を決定しても良い。勿論、主制御装置20は、強度を考慮することなく、単純にウエハステージWSTを移動させることとしても良い。
b.また、主制御装置20は、タイマーによる時間管理で上記シーケンス(ステージ移動、待機位置への退避など)を開始しても良い。あるいは、主制御装置20は、時間管理を行わず、露光シーケンス上、予め分かっている場合には上記シーケンスを自動的に開始しても良いし、エラーが発生した場合に上記シーケンスを開始するだけでも良い。
c.また、本実施形態において、エンコーダヘッド(及びZヘッド)からスケールに照射される計測ビームの照射量を調整するため、以下のc1.、c2のような手法により、計測ビームの強度を落とす、あるいは計測ビームを遮る、あるいはこれらを上記a.及びb.の少なくとも一方と組み合わせて実行しても良い。
c1. 計測ビームの強度を落とすため、例えば、エンコーダの光源を制御しても良いし、送光系に減光フィルタを挿入しても良い。
c2. また、計測ビームを遮るため、送光系あるいはヘッドの射出部近傍にシャッタを配置しても良いし、スケールを覆うカバー(庇)が設置された所定位置にウエハステージWSTを移動させても良い。後者では、その所定位置が、少なくとも1つの計測ビームがスケールに照射される位置でも良い。また、カバーは、スケール全面を覆わなくても良く、スケールと対向するヘッドのみに対してその計測ビームを遮るだけでも良い。
【0094】
なお、上記実施形態では、スケールを歪ませ得る計測ビームとして、主として、エンコーダヘッドとZヘッドから発せられる計測ビームを取り上げた。しかし、同様に、アライメント系AL1,AL21〜AL24と多点AF系(90a,90b)の計測ビームも、スケールを歪ませ得る。そこで、上記実施形態において、これらの計測ビームのスケールに対する照射量の調整をも、主制御装置20が、行い、その熱によって発生する応力によるスケールの歪みを抑えることが望ましい。この場合においても、上記a.、b.又はc.(c1.及びc2.)の照射調整手法は適用可能である。
【0095】
なお、上記実施形態では、主制御装置20は、一例として、新たなウエハが送られてこないなどのエラー発生時(異常時)に、ウエハステージWSTを待機位置に退避させるものとした。しかし、エラーなどの異常時だけでなく、通常の露光シーケンス中(例えば、ウエハステージWSTを使わない動作が行われるとき、あるいはその期間中など)にウエハステージWSTの退避、あるいは移動を行っても良い。
【0096】
なお、上記実施形態で説明したエンコーダシステムなどの各計測装置の構成は一例に過ぎず、本発明がこれに限定されないことは勿論である。例えば、上記実施形態では、エンコーダシステムの各ヘッドにより、ウエハステージWSTのX軸及びY軸方向の一方の位置を計測するものとしたが、これに限らず、エンコーダヘッドを、X軸及びY軸方向の一方の位置とZ軸方向の位置とを計測可能なヘッドとしても良い。
【0097】
また、上記実施形態で説明したエンコーダヘッド、Zヘッドの配置は、一例であり、ヘッドの配置は、これに限定されるものではない。また、上記実施形態では、ステージ装置50が、エンコーダシステム150(エンコーダヘッド)と面位置計測システム180(Zヘッド)とを備えるものとしたが、どちらか一方のみを備えていても良い。
【0098】
また、例えば、上記実施形態では、ウエハテーブル(ウエハステージ)上に格子部(Yスケール、Xスケール)を設け、これに対向してXヘッド、Yヘッドをウエハステージの外部に配置する構成のエンコーダシステムを採用した場合について例示したが、これに限らず、例えば米国特許出願公開第2006/0227309号明細書などに開示されているように、ウエハステージにエンコーダヘッドを設け、これに対向してウエハステージの外部に格子部(例えば2次元格子又は2次元に配置された1次元の格子部)を配置する構成(以下、便宜上、テーブルヘッド方式と呼ぶ)のエンコーダシステムを採用しても良い。この場合において、Zヘッドもウエハステージに設け、その格子部の面を、Zヘッドの計測ビームが照射される反射面としても良い。
【0099】
また、テーブルヘッド方式のエンコーダシステムを採用する場合にも、エンコーダヘッドを、X軸及びY軸方向の一方の位置とZ軸方向の位置とを計測可能なヘッドとしても良い。
【0100】
また、テーブルヘッド方式のエンコーダシステムを採用する場合にも、前述したa.、b.又はc.(c1.及びc2.)の照射調整手法を含み、上記実施形態及びその変形例を適用することができる。また、テーブルヘッド方式のエンコーダシステムを採用する場合には、少なくとも1つのヘッドがウエハステージの外部の格子部(天井スケール)と対向する位置にウエハステージを停止させても良く、この場合は、例えば、露光シーケンスの移動範囲内でウエハステージが移動されてもヘッドからの計測ビームが照射されない天井スケールの一部に、待機状態のウエハステージ上のヘッドからの計測ビームが照射されるようにその位置が決定される。また、その天井スケールの一部は、露光シーケンスで使用される領域であり、熱応力、変形が天井スケールの使用領域に影響を及ぼさない程度にその使用領域から離れていることが好ましい。
【0101】
また、上述の実施形態では、本発明が、液体(水)を介さずにウエハWの露光を行うドライタイプの露光装置に適用された場合について説明したが、これに限らず、例えば例えば国際公開第99/49504号パンフレット、欧州特許出願公開第1,420,298号明細書、国際公開第2004/055803号パンフレット、特開2004−289126号公報(対応米国特許第6,952,253号明細書)などに開示されているように、投影光学系とプレートとの間に照明光の光路を含む液浸空間を形成し、投影光学系及び液浸空間の液体を介して照明光でプレートを露光する露光装置にも本発明を適用することができる。例えば、上記実施形態の露光装置を、液浸型の露光装置とする場合、例えばノズル洗浄などの際にも、ウエハステージを前述した待機位置に退避させても良い。
【0102】
また、上記実施形態では、ステップ・アンド・スキャン方式等の走査型露光装置に本発明が適用された場合について説明したが、これに限らず、ステッパなどの静止型露光装置に本発明を適用しても良い。ステッパなどであっても、露光対象の物体が搭載されたステージの位置を上記実施形態と同様に、エンコーダを用いて計測することができるので、同様の効果を得ることができる。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置、プロキシミティー方式の露光装置、又はミラープロジェクション・アライナーなどにも本発明は適用することができる。さらに、例えば米国特許第6,590,634号明細書、米国特許第5,969,441号明細書、米国特許第6,208,407号明細書などに開示されているように、複数のウエハステージを備えたマルチステージ型の露光装置にも本発明を適用できる。
【0103】
例えば、2つのウエハステージを備えたツインステージ型の露光装置では、ウエハの露光が行われる露光ステーションとウエハのアライメントなどが行われる計測ステーションとがあり、露光ステーションでは上記実施形態及びその変形例を適用できるとともに、計測ステーションでも同様に適用できる。この場合、計測ステーションでエンコーダシステム(上記実施形態のタイプ、テーブルヘッド方式のいずれでも良い)による位置計測を行う構成であっても、エンコーダシステム以外で位置計測を行う構成であっても、上記実施形態及びその変形例を適用できる。後者では、アライメント系やAF系が配置され、上述の如くその対策としても有効だからである。
【0104】
また、例えば国際公開第2005/074014号パンフレット(対応米国特許出願公開第2007/0127006号明細書)などに開示されているように、ウエハステージとは別に、計測部材(例えば、基準マーク、及び/又はセンサなど)を含む計測ステージを備える露光装置にも本発明は適用が可能である。計測ステージにエンコーダシステムのスケール、又はヘッドを設ける場合にも、上記実施形態及びその変形例と同様の照射調整を含む、各種制御を行うことが好ましい。
【0105】
また、上記実施形態の露光装置における投影光学系は縮小系のみならず等倍および拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、その投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。また、前述の照明領域及び露光領域はその形状が矩形であるものとしたが、これに限らず、例えば円弧、台形、あるいは平行四辺形などでも良い。
【0106】
なお、上記実施形態の露光装置の光源は、ArFエキシマレーザに限らず、KrFエキシマレーザ(出力波長248nm)、F2レーザ(出力波長157nm)、Ar2レーザ(出力波長126nm)、Kr2レーザ(出力波長146nm)などのパルスレーザ光源、g線(波長436nm)、i線(波長365nm)などの輝線を発する超高圧水銀ランプなどを用いることも可能である。また、YAGレーザの高調波発生装置などを用いることもできる。この他、例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
【0107】
また、上記実施形態では、露光装置の照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。例えば、近年、70nm以下のパターンを露光するために、SORやプラズマレーザを光源として、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を発生させるとともに、その露光波長(例えば13.5nm)の下で設計されたオール反射縮小光学系、及び反射型マスクを用いたEUV露光装置の開発が行われている。この装置においては、円弧照明を用いてマスクとウエハを同期走査してスキャン露光する構成が考えられるので、かかる装置にも本発明を好適に適用することができる。この他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、本発明は適用できる。
【0108】
また、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。
【0109】
また、例えば干渉縞をウエハ上に形成することによって、ウエハ上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
【0110】
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも本発明を適用することができる。
【0111】
また、物体上にパターンを形成する装置は、前述の露光装置(リソグラフィシステム)に限られず、例えばインクジェット方式にて物体上にパターンを形成する装置にも本発明を適用することができる。
【0112】
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものではなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。
【0113】
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【0114】
なお、これまでの説明で引用した露光装置などに関する全ての公報、国際公開パンフレット、米国特許出願公開明細書及び米国特許明細書の開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
【0115】
半導体素子などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態の露光装置(パターン形成装置)によりレチクルのパターンをウエハに転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハを現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ウエハ上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の移動体駆動方法及び移動体駆動装置は、移動体を駆動するのに適している。また、本発明の露光方法及び露光装置は、エネルギビームを照射して物体上にパターンを形成するのに適している。また、本発明のパターン形成方法及びパターン形成装置は、物体上にパターンを形成するのに適している。また、本発明のデバイス製造方法は、半導体素子又は液晶表示素子などの電子デバイスを製造するのに適している。
図1
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図10
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図13