特許第5791697号(P5791697)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5791697ポリアリーレンエーテルとポリアリーレンスルフィドとからなる改善されたブレンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791697
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】ポリアリーレンエーテルとポリアリーレンスルフィドとからなる改善されたブレンド
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/12 20060101AFI20150917BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20150917BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20150917BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20150917BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20150917BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20150917BHJP
   B29C 47/00 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   C08L71/12
   C08L81/02
   C08L69/00
   C08L67/00
   C08J5/18CEZ
   B29C45/00
   B29C47/00
【請求項の数】23
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2013-500443(P2013-500443)
(86)(22)【出願日】2011年3月18日
(65)【公表番号】特表2013-522429(P2013-522429A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】EP2011054132
(87)【国際公開番号】WO2011117153
(87)【国際公開日】20110929
【審査請求日】2014年3月17日
(31)【優先権主張番号】10157281.6
(32)【優先日】2010年3月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヴェーバー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン マレツコ
(72)【発明者】
【氏名】ズザンネ ツァイアー
(72)【発明者】
【氏名】マルク フェルケル
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト ギュンターベルク
(72)【発明者】
【氏名】リューディガー ブルーム
(72)【発明者】
【氏名】ベアント ブルフマン
【審査官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−258536(JP,A)
【文献】 特開平11−158376(JP,A)
【文献】 特表2008−516024(JP,A)
【文献】 特表2009−501255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 71/12
B29C 45/00
B29C 47/00
C08J 5/18
C08L 67/00
C08L 69/00
C08L 81/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分:
(A1)重合体鎖1個当たり平均で最大0.5個のフェノール系末端基を有する少なくとも1つのポリアリーレンエーテル、
(A2)場合により、重合体鎖1個当たり平均で少なくとも1.5個のフェノール系末端基を有する少なくとも1つのポリアリーレンエーテル、
(B)少なくとも1つのポリアリーレンスルフィド、
(C)超分枝鎖状ポリカーボネートおよび超分枝鎖状ポリエステルから選択された、少なくとも1つの超分枝鎖状重合体、
(D)場合により、カルボキシル基を含む、少なくとも1つの官能化されたポリアリーレンエーテル、
(E)場合により、少なくとも1つの繊維状または粒子状の充填剤および
(F)場合により、他の添加剤および/または加工助剤を含有する熱可塑性成形材料。
【請求項2】
成分(A1)20〜89.9質量%、成分(A2)0〜10質量%、成分(B)5〜65質量%、成分(C)0.1〜5質量%、成分(D)0〜15質量%、成分(E)5〜70質量%および成分(F)0〜40質量%を含有し、この場合成分(A)〜(F)の質量%の総和は、成分(A)〜(F)の成分の全体量に対して100質量%をもたらす、請求項1記載の熱可塑性成形材料。
【請求項3】
成分(A1)20〜83.9質量%、成分(A2)1〜10質量%、成分(B)5〜65質量%、成分(C)0.1〜5質量%、成分(D)0〜15質量%、成分(E)10〜70質量%および成分(F)0〜40質量%を含有し、この場合成分(A)〜(F)の質量%の総和は、成分(A)〜(F)の成分の全体量に対して100質量%をもたらす、請求項1または2記載の熱可塑性成形材料。
【請求項4】
ポリアリーレンエーテル(A1)は、重合体鎖1個当たり平均で最大0.1個のフェノール性末端基を有し、ポリアリーレンエーテル(A2)は、重合体鎖1個当たり平均で少なくとも1.8個のフェノール性末端基を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項5】
成分(C)は、DIN 53240による1〜600mg KOH/gポリカーボネートのOH価を有する少なくとも1つの超分枝鎖状ポリカーボネートを含有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項6】
成分(C)は、xが少なくとも1であり、かつyが少なくとも2であるタイプAxyの少なくとも1つの超分枝鎖状ポリエステルを含有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項7】
成分(A1)および場合により(A2)のポリアリーレンエーテルは、互いに無関係に一般式I:
【化1】
〔式中、
t、qは、互いに無関係に0、1、2または3を表わし、
Q、T、Yは、互いに無関係にそれぞれ1つの化学結合または−O−、−S−、−SO2−、S=O、C=O、−N=N−および−CRabから選択された基を表わし、この場合RaおよびRbは、互いに無関係にそれぞれ水素原子、またはC1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシ基またはC6〜C18アリール基を表わし、この場合Q、TおよびYからの少なくとも1つは、−SO2−を表わし、および
ArおよびAr1は、互いに無関係にC6〜C18アリーレン基を意味する〕で示される単位から形成されている、請求項1から6までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項8】
ポリアリーレンエーテル(A1)および(A2)は、一般式Iによる同じ単位から形成されている、請求項7記載の熱可塑性成形材料。
【請求項9】
式(I)中のQ、TおよびYが互いに無関係に−O−および−SO2−から選択され、Q、TおよびYからの少なくとも1つが−SO2−を表わす、請求項7または8に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項10】
式(I)中のArおよびAr1は、互いに無関係に1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、ナフチレンおよび4,4’−ビスフェニレンからなる群から選択されている、請求項7から9までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項11】
25℃でN−メチル−2−ピロリドン中の1質量%の溶液中で測定した、45〜65ml/gのDIN EN ISO 1628−1による粘度数を有するカルボキシル基を含む、少なくとも1つの官能化されたポリアリーレンエーテルを成分(D)として含有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項12】
カルボキシル基を含む、官能化されたポリアリーレンエーテルは、請求項5から8までのいずれか1項に規定された一般式Iの単位ならびに一般式IV:
【化2】
〔式中、
nは、0〜6の整数を表わし、および
1は、H、C1〜C6アルキルまたは−(CH2n−COOHを表わし、
Ar2およびAr3は、互いに無関係にC6〜C18アリーレン基を表わし、および
Yは、化学結合、または−O−、−S−、−SO2−、S=O、C=O、−N=N−および−CRab−から選択された基を表わし、この場合RaおよびRbは、互いに無関係にそれぞれ水素原子、またはC1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシ基またはC6〜C18アリール基を表わす〕で示される単位を含有する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項13】
一般式(IV)に記載の単位の割合は、式(I)および式(IV)に記載の単位の総和に対して0.5〜2モル%である、請求項12記載の熱可塑性成形材料。
【請求項14】
一般式(IV)に記載の単位の割合は、0.7〜1.5モル%である、請求項13記載の熱可塑性成形材料。
【請求項15】
nは、2であり、およびR1は、メチルである、請求項12から14までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項16】
Ar2とAr3は、それぞれ1,4−フェニレンであり、およびYは,−SO2−である、請求項12から15までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項17】
成分(B)のポリアリーレンスルフィドは、一般式−Ar−S−〔式中、−Ar−は、6〜18個の炭素原子を有するアリーレン基を表わす〕で示される繰返し単位30〜100質量%から成る、請求項1から16までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項18】
成分(B)は、ポリフェニレンスルフィドである、請求項1から17までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項19】
成分(B)は、ポリ(1,4−フェニレンスルフィド)である、請求項18に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項20】
成分(E)は、ガラス繊維から成る、請求項1から19までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項21】
混合装置中で成分(A)〜(F)を混合することを含む、請求項1から20までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料を製造する方法。
【請求項22】
成形品、繊維、フォームまたはフィルムを製造するための、請求項1から20までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料の使用。
【請求項23】
請求項1から20までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料を含有する成形品、繊維、フォームまたはフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次の成分:
(A1)重合体鎖1個当たり平均で最大0.5個のフェノール性末端基を有する少なくとも1つのポリアリーレンエーテル、
(A2)場合により、重合体鎖1個当たり平均で少なくとも1.5個のフェノール性末端基を有する少なくとも1つのポリアリーレンエーテル、
(B)少なくとも1つのポリアリーレンスルフィド、
(C)超分枝鎖状ポリカーボネートおよび超分枝鎖状ポリエステルから選択された、少なくとも1つの超分枝鎖状重合体、
(D)場合により、カルボキシル基を含む、少なくとも1つの官能化されたポリアリーレンエーテル、
(E)場合により、少なくとも1つの繊維状または粒子状の充填剤および
(F)場合により、他の添加剤および/または加工助剤を含有する熱可塑性成形材料に関する。
【0002】
更に、本発明は、本発明による熱可塑性成形材料の製造法、成形品、繊維、フォームまたはフィルムを製造するための該熱可塑性成形材料の使用ならびにこうして得られた成形品、繊維、フォームおよびフィルムに関する。
【0003】
ポリアリーレンエーテルは、エンジニアリングサーモプラスチックのグループに属し、高い熱成形安定性および耐化学薬品性のために高度な要求が課された用途に使用される。ポリアリーレンエーテルは、非晶質であり、したがって、しばしば攻撃的媒体に対して不十分な安定性を有する。更に、またポリアリーレンエーテルは、高い溶融粘度を有し、このことは、特に射出成形による大型の成形品への加工を損なう。殊に、高い溶融粘度は、高い充填物負荷量または繊維負荷量を有する成形材料の製造の際に不利である。
【0004】
高温安定性のポリアリーレンエーテルとポリアリーレンスルフィドとからなる混合物は、自体公知であり、個別成分と比較して、例えば改善された機械的性質および高い耐化学薬品性を有する。
【0005】
欧州特許出願公開第673973号明細書の記載から、OH末端基少なくとも0.03質量%を有するポリアリーレンエーテル、OH末端基0.03質量%未満を有するポリアリーレンエーテルおよびポリフェニレンスルフィドを含有する、ガラス繊維により充填された重合体混合物は、公知である。欧州特許出願公開第673973号明細書の熱可塑性成形材料は、全ての用途に対して十分な機械的性質、殊に十分な、引裂時の伸び、引裂強さおよび耐衝撃性ならびに十分な弾性率を有する。殊に、流動性は、不満足なものである。
【0006】
欧州特許出願公開第855428号明細書の記載から、カルボキシル基含有官能化ポリアリーレンエーテルを含有するゴム含有ポリアリーレンエーテルは、公知である。欧州特許出願公開第855428号明細書に記載の熱可塑性成形材料は、全ての用途にとって十分な機械的性質を有しない。殊に、流動性は、不満足なものである。
【0007】
欧州特許出願公開第903376号明細書の対象は、ポリアリーレンエーテル、ポリアリーレンスルフィドおよびゴムを含有する熱可塑性成形材料であり、これらポリアリーレンエーテル、ポリアリーレンスルフィドおよびゴムは、同様に付加的に官能化されたポリアリーレンエーテルを含有する。欧州特許出願公開第903376号明細書中で使用される、官能化されたポリアリーレンエーテルは、強化された成形品に対する適性に関連してしばしば不十分である。このような製品の使用は、充填された、殊に繊維強化された成形材料中で、しばしば不十分な機械的性質、殊に不十分な靭性および引裂強さならびに不十分な流動性をまねく。
【0008】
更に、公知技術水準は、数多くの用途にとって不十分な剛性および剛性に関連する高度な異方性(弾性率)を有する。
【0009】
従って、本発明の課題は、前記欠点を有しないかまたは僅かな程度有する、ポリアリーレンエーテルをベースとする熱可塑性成形材料を提供することであった。殊に、熱可塑性成形材料は、改善された流動性を有するべきである。同時に、熱可塑性成形材料は、良好な機械的性質、殊に高い剛性(弾性率)、高い衝撃強さ、高い引裂時の伸びおよび高い引裂強さを有するべきである。更に、剛性に関連して異方性を改善すべきである。
【0010】
前記課題は、本発明による熱可塑性成形材料によって解決される。好ましい実施態様は、特許請求の範囲および次の明細書中に記載から確認することができる。好ましい実施態様の組合せは、本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0011】
本発明による熱可塑性成形材料は、次の成分:
(A1)重合体鎖1個当たり平均で最大0.5個のフェノール性末端基を有する少なくとも1つのポリアリーレンエーテル、
(A2)場合により、重合体鎖1個当たり平均で少なくとも1.5個のフェノール性末端基を有する少なくとも1つのポリアリーレンエーテル、
(B)少なくとも1つのポリアリーレンスルフィド、
(C)超分枝鎖状ポリカーボネートおよび超分枝鎖状ポリエステルから選択された、少なくとも1つの超分枝鎖状重合体、
(D)場合により、カルボキシル基を含む、少なくとも1つの官能化されたポリアリーレンエーテル、
(E)場合により、少なくとも1つの繊維状または粒子状の充填剤および
(F)場合により、他の添加剤および/または加工助剤を含有する。
【0012】
特に、本発明の熱可塑性成形材料は、次の成分:
(A1)重合体鎖1個当たり平均で最大0.5個のフェノール性末端基を有する少なくとも1つのポリアリーレンエーテル、
(A2)場合により、重合体鎖1個当たり平均で少なくとも1.5個のフェノール性末端基を有する少なくとも1つのポリアリーレンエーテル、
(B)少なくとも1つのポリアリーレンスルフィド、
(C)超分枝鎖状ポリカーボネートおよび超分枝鎖状ポリエステルから選択された、少なくとも1つの超分枝鎖状重合体、
(D)場合により、カルボキシル基を含む、少なくとも1つの官能化されたポリアリーレンエーテル、
(E)少なくとも1つの繊維状または粒子状の充填剤および
(F)場合により、他の添加剤および/または加工助剤を含有する。
【0013】
本発明の熱可塑性成形材料は、特に成分(A1)を90〜99.9質量%および成分(C)を0.1〜10質量%含有し、この場合成分(A)および(C)の全体量に対する成分(A)および(C)の質量%の総和は、100質量%になる。
【0014】
熱可塑性成形材料は、特に有利に
成分(A1)を20〜89.9質量%、殊に20〜79.5質量%、
成分(A2)を0〜10質量%、
成分(B)を5〜65質量%、殊に5〜45質量%、
成分(C)を0.1〜5質量%、殊に0.5〜3質量%、
成分(D)を0〜15質量%、殊に0〜10質量%、
成分(E)を5〜70質量%、殊に15〜70質量%および
成分(F)を0〜40質量%、殊に0〜20質量%含有し、この場合成分(A)および(F)の全体量に対する成分(A)および(F)の質量%の総和は、100質量%になる。
【0015】
本発明の熱可塑性成形材料は、殊に有利に
成分(A1)を20〜83.9質量%、殊に20〜73.5質量%、
成分(A2)を1〜10質量%、
成分(B)を5〜65質量%、殊に5〜45質量%、
成分(C)を0.1〜5質量%、殊に0.5〜3質量%、
成分(D)を0〜15質量%、殊に0〜10質量%、
成分(E)を10〜70質量%、殊に20〜70質量%および
成分(F)を0〜40質量%、殊に0〜20質量%含有し、この場合成分(A)および(F)の全体量に対する成分(A)および(F)の質量%の総和は、100質量%になる。
【0016】
個々の成分は、次に詳説される。
【0017】
成分A1およびA2
本発明によれば、熱可塑性成形材料は、重合体鎖1個当たり平均で最大0.5個のフェノール性末端基を有する少なくとも1つのポリアリーレンエーテル(A1)およびさらに好ましい実施態様によれば、重合体鎖1個当たり平均で少なくとも1.5個のフェノール性末端基を有するポリアリーレンエーテル(A2)を含有する。この場合、"平均で"の表現は、平均数を意味する。成分(A1)および(A2)は、共通して成分(A)と呼称される。
【0018】
当業者にとって、フェノール性末端基が反応性であり、熱可塑性成形材料中に少なくとも部分的に反応された形で存在していてよいことは、周知のことである。熱可塑性成形材料は、特に配合によって、すなわち成分を流動可能な状態で混合することによって製造される。相応して、配合物には、"次の成分を含有する熱可塑性成形材料"を、特に"次の成分を配合することによって得られる熱可塑性成形材料"と同様に添加することができる。
【0019】
フェノール性末端基は、本発明の範囲内で、芳香核に結合した、場合によっては脱プロトン化されて存在していてもよいヒドロキシ基である。当業者には、フェノール性末端基がプロトンの分離によって塩基の作用のためにいわゆるフェノラート末端基として存在していてもよいことは、公知である。従って、フェノール性末端基の概念は、明らかに芳香族OH基ならびにフェノラート基を含む。
【0020】
フェノール性末端基の割合は、特に電位差滴定によって測定される。このために、重合体は、ジメチルホルムアミド中に溶解され、トルエン/メタノール中のテトラブチルアンモニウムヒドロキシドの溶液で滴定される。最終点の検出は、電位差計を用いて行なわれる。ハロゲン末端基の割合は、特に原子吸光法により測定される。
【0021】
重合体の全質量に対するフェノール性末端基の質量割合(mOH)および数平均分子量(Mnp)から、当業者は、公知方法により、次の式による厳密に直線状の重合体鎖を取りながら重合体鎖1個当たりのフェノール性末端基の平均数(nOH)を算出することができる:nOH=mOH[質量%で]/100*Mnp[g/molで]*1/17
【0022】
他の選択可能な方法によれば、重合体鎖1個当たりのフェノール性末端基の平均数(nOH)は、厳密に直線状の重合体鎖の前提下に、同時にCl末端基の質量割合(mcl)を認識して専らOH末端基およびCl末端基が存在することを想定しながら次のように算出することができる:nOH=2/(1+(17/35,45*mcl/mOH))当業者には、Clとは別の末端基の場合に如何なる算出方法が適しているかは、公知である。
【0023】
成分(A2)は反応性のフェノール性末端基の高い含量のために成分(A)〜(E)のための相容性助剤として使用されることが制限なしに想定される。更に、不活性の末端基の高い含量を有する成分(A1)は、本発明による熱可塑性成形材料の特性プロフィールをさらに改善し、したがって一面でフェノール性末端基のポリアリーレンエーテルの存在、他面不活性の末端基を有するポリアリーレンエーテルの存在は、成分(C)および(D)と相乗的な作用を生じる。
【0024】
末端基を同時に制御する際のポリアリーレンエーテルの製造は、当業者に公知であり、さらに下記に詳細に記載される。公知のポリアリーレンエーテルは、通常、ハロゲン基、殊に−Fまたは−Cl、またはフェノール性OH末端基またはフェノラート末端基を有し、この場合最後のフェノラート末端基は、それ自体存在していてよいか、または反応された形、殊に−OCH3末端基の形で存在していてよい。
【0025】
特に、ポリアリーレンエーテル(A1)は、成分(A1)の全質量に対してフェノール性末端基を最大0.01質量%、特に有利に最大0.005質量%有する。特に、ポリアリーレンエーテル(A2)は、それぞれOHの全質量として計算した、成分(A2)の全体量に対してフェノール性末端基を少なくとも0.15質量%、殊に少なくとも0.18質量%、特に有利に少なくとも0.2質量%有する。
【0026】
成分(A)または(A2)中のフェノール性末端基の含量に対するそれぞれの上限は、1分子当たりの有用な末端基の数(直鎖状ポリアリーレンエーテルの場合に2個)および数平均鎖長からもたらされる。相応する計算は、当業者に公知である。
【0027】
特に、重合体鎖1個当たりの成分(A1)のフェノール性末端基の平均数は、0〜0.2、殊に0〜0.1、特に有利に0〜0.05、殊に有利に0〜0.02、とりわけ有利に最大0.01である。
【0028】
本発明による熱可塑性成形材料がポリアリーレンエーテル(A2)を含有する限り、成分A1の成分A2に対する質量比は、特に50:1〜2:1、殊に25:1〜5:1、特に有利に20:1〜10:1である。
【0029】
特に、重合体鎖1個当たりの成分(A2)のフェノール性末端基の平均数は、1.6〜2、殊に1.7〜2、特に有利に1.8〜2、殊に有利に1.9〜2である。
【0030】
本発明によれば、ポリアリーレンエーテル(A1)および(A2)は、これらがなお互いに完全に混合可能である場合には、末端基を除いて、同一であってもよいし、異なる成分から形成されていてもよく、および/または異なる分子量を有していてもよい。
【0031】
本発明による熱可塑性成形材料がポリアリーレンエーテル(A2)を含有する限り、成分(A1)および(A2)が構造的に十分な一致を有し、殊に同一の単位から形成されており、および同様の分子量を有し、殊に1つの成分の数平均分子量が別の成分よりも最大30%大きいことは、有利である。
【0032】
ポリアリーレンエーテルは、当業者に重合体クラスとして公知である。原理的に、当業者に公知の全てのポリアリーレンエーテルおよび/または公知方法により製造可能な全てのポリアリーレンエーテルは、成分(A1)および場合により(A2)としてこれに該当する。相応する方法は、さらに下記に詳説される。
【0033】
好ましいポリアリーレンエーテル(A1)および場合によっては(A2)は、互いに無関係に一般式I:
【化1】
〔式中、符号t、q、Q、T、Y、ArおよびAr1は、次の意味を有する:
t、qは、互いに無関係に0、1、2または3を表わし、
Q、T、Yは、互いに無関係にそれぞれ1つの化学結合または−O−、−S−、−SO2−、S=O、C=O、−N=N−および−CRabから選択された基を表わし、この場合RaおよびRbは、互いに無関係にそれぞれ水素原子、またはC1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシ基またはC6〜C18アリール基を表わし、この場合Q、TおよびYからの少なくとも1つは、−SO2−を表わし、および
Ar、Ar1は、互いに無関係に6〜18個の炭素原子を有するアリーレン基を表わす〕で示される単位から形成されている。
【0034】
Q、TおよびYが上記の前提条件下で1つの化学結合である場合には、左側に隣接した基と右側に隣接した基とは、直接互いに1つの化学結合により結合して存在するものと理解すべきである。
【0035】
しかし、好ましくは、式I中のQ、TおよびYは、互いに無関係に−O−および−SO2−から選択され、但し、この場合Q、TおよびYからなるグループからの少なくとも1つは、−SO2−を表わす。
【0036】
Q、TおよびYが−CRab−である場合には、RaおよびRbは、互いに無関係にそれぞれ水素原子、またはC1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシ基またはC6〜C18アリール基を表わす。
【0037】
好ましいC1〜C12アルキル基は、1〜12個の炭素原子を有する直鎖状および分枝鎖状の飽和アルキル基を含む。殊に、次の基を挙げることができる:C1〜C6アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、第二ブチル、2−または3−メチル−ペンチルおよび長鎖状基、例えば非分枝鎖状ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ラウリルおよびこれらのモノまたはポリ分枝鎖状類似体。
【0038】
前記の使用可能なC1〜C12アルコキシ基中のアルキル基としては、さらに上記に定義された、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基がこれに該当する。特に使用可能なシクロアルキル基は、殊にC3〜C12シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロプロピルメチル、シクロプロピルエチル、シクロプロピルプロピル、シクロブチルメチル、シクロブチルエチル、シクロペンチルエチル、−プロピル、−ブチル、−ペンチル、−ヘキシル、シクロヘキシルメチル、−ジメチル、および−トリメチルを含む。
【0039】
ArおよびAr1は、互いに無関係にC6〜C18アリーレン基を意味する。更に、下記された出発生成物から出発して、Arは、特に求電子攻撃に対して直ちに影響を受ける芳香族物質に由来し、この芳香族物質は、好ましくはヒドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシナフタリン、殊に2,7−ジヒドロキシナフタリンおよび4,4’−ビスフェノールからなるグループから選択される。特に、Ar1は、置換されていないC6アリーレン基またはC12アリーレン基である。
【0040】
6〜C18アリーレン基ArおよびAr1としては、殊にフェニレン基、例えば1,2−フェニレン、1,3−フェニレンおよび1,4−フェニレン、ナフチレン基、例えば1,6−ナフチレン、1,7−ナフチレン、2,6−ナフチレンおよび2,7−ナフチレン、ならびにアントラセン、フェナントレンおよびナフタセンに由来するアリーレン基がこれに該当する。
【0041】
特に、ArおよびAr1は、式Iによる好ましい実施態様において、互いに無関係に1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、ナフチレン、殊に2,7−ジヒドロキシナフタリンおよび4,4’−ビスフェニレンからなるグループから選択される。
【0042】
好ましいポリアリーレンエーテル(A1)および(A2)は、繰返し構造単位としての次の単位Ia〜Io:
【化2】
【0043】
【化3】
の少なくとも1つを含有するものである。
【0044】
好ましい単位Ia〜Ioに加えて、ヒドロキノンに由来する1つ以上の1,4−フェニレン単位がレゾルシンに由来する1,3−フェニレン単位によって、またはジヒドロキシナフタリンに由来するナフチレン単位によって置換されている単位も好ましい。
【0045】
一般式Iの単位として、特に好ましいのは、単位Ia、IgおよびIkである。更に、成分(A)のポリアリーレンエーテルおよび場合により(A2)が本質的に一般式Iの単位の1つのタイプ、殊にIa、IgおよびIkから選択された単位から形成されていることは、特に好ましい。
【0046】
特に好ましい実施態様において、Arは、1,4−フェニレンであり、tは、1であり、qは、0であり、Tは、化学結合であり、およびYは、SO2である。前記の繰返し単位から形成された、特に好ましいポリアリーレンエーテルスルホン(A1)または(A2)は、ポリフェニレンスルホン(PPSU)と呼称される。
【0047】
更に、特に好ましい実施態様において、Arは、1,4−フェニレンであり、tは、1であり、qは、0であり、Tは、C(CH32であり、およびYは、SO2である。前記の繰返し単位から形成された、特に好ましいポリアリーレンエーテルスルホン(A1)または(A2)は、ポリスルホン(PSU)と呼称される。
【0048】
更に、特に好ましい実施態様において、Arは、1,4−フェニレンであり、tは、1であり、qは、0であり、TおよびYは、それぞれSO2である。前記の繰返し単位から形成された、特に好ましいポリアリーレンエーテルスルホン(A1)または(A2)は、ポリエーテルスルホン(PESU)と呼称される。この実施態様は、殊に好ましい。
【0049】
略符号、例えばPPSU、PESUおよびPSUは、本発明の範囲内でDIN EN ISO 1043−1:2001に対応する。
【0050】
一般に、好ましいポリアリーレンエーテル(A1)および場合によっては(A2)は、5000〜60000g/molの範囲内の平均分子量Mn(数平均)および0.20〜0.95dl/gの相対粘度を有する。ポリアリーレンエーテルの相対粘度は、1質量%のN−メチル基ピロリドン溶液中で25℃でDIN EN ISO 1628−1により測定される。
【0051】
本発明によるポリアリーレンエーテル(A1)および場合によっては(A2)は、特にゲル浸透クロマトグラフィーにより、ジメチルアセトアミドの溶剤中で標準物質としての狭く分配されたポリメチルメタクリレートに対して測定した、10000〜150000g/mol、殊に15000〜120000g/mol、特に有利に18000〜100000g/molの質量平均分子量Mwを有する。
【0052】
前記のポリアリーレンエーテルを生じる製造法は、当業者に公知であり、例えばHerman F.Mark,"Encyclopedia of Polymer Science and Technology",第3版,第4巻,2003,章"Polysulfones"、第2〜8頁ならびにHans R.Kricheldorf,Handbook of Polymer Systhesis,第2版,2005,第427〜443頁中の"Aromatic Polyethers"に記載されている。
【0053】
特に好ましいのは、2個のハロゲン置換基を有する少なくとも1つの芳香族化合物および前記のハロゲン置換に対して反応性である2個の官能基を有する少なくとも1つの芳香族化合物を、非プロトン性の極性溶剤中で無水アルカリ金属炭酸塩、殊に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムまたはこれらの混合物の存在下で反応させることであり、この場合炭酸カリウムが特に好ましい。特に好ましい組合せは、溶剤としてのN−メチルピロリドンと塩基としての炭酸カリウムである。
【0054】
特に、ポリアリーレンエーテル(A1)は、ハロゲン末端基、殊に塩素末端基、またはエーテル化末端基、殊にアルキルエーテル末端基を有し、このエーテル化末端基は、OH末端基またはフェノラート末端基を適当なエーテル化剤と反応させることによって得られる。
【0055】
適当なエーテル化剤は、例えば一官能性アルキルハロゲン化物またはアリールハロゲン化物、例えばC1〜C6アルキルクロリド、C1〜C6ブロミドまたはC1〜C6ヨージド、有利に塩化メチルまたは塩化ベンジル、臭化ベンジルまたは沃化ベンジル、またはこれらの混合物である。成分(A1)のポリアリーレンエーテルの範囲内の好ましい末端基は、ハロゲン、殊に塩素、アルコキシ、殊にメトキシ、アリールオキシ、殊にフェノキシ、またはベンジルオキシである。
【0056】
以下、ポリアリーレンエーテル(A2)の製造について議論する。成分(A2)のポリアリーレンエーテルを製造するのに好ましい方法は、次に記載され、順序a−b−cで次の工程を含む:
(a)フェノール性末端基の相応する含量の望ましい成分(A2)の1つを有する溶剤(L)の存在下で少なくとも1つのポリアリーレンエーテル(A2*)を準備し、この場合このフェノール性末端基は、フェノラート末端基として存在し、および上記に定義されたように、特に一般式Iの単位から形成されており、
(b)少なくとも1つの酸、特に少なくとも1つの多官能性カルボン酸を添加し、および
(c)固体としての成分(A2)のポリアリーレンエーテルを取得する。
【0057】
この場合、ポリアリーレンエーテル(A2*)は、有利に溶剤(L)中の溶液の形で準備される。
【0058】
記載されたポリアリーレンエーテル(P)は、原理的に種々の方法で準備することができる。例えば、相応するポリアリーレンエーテル(A2*)は、直接に適当な溶剤と接触させることができ、直接に、即ち後反応なしに本発明による方法に使用されることができる。他の選択可能な方法によれば、ポリアリーレンエーテルのプレ重合体が使用されてよく、溶剤の存在下で反応にもたらされ、この場合記載されたポリアリーレンエーテル(A2*)は、溶剤の存在下で生じる。
【0059】
しかし、工程(a)において、単数のポリアリーレンエーテルまたは複数のポリアリーレンエーテル(A2*)は、特に構造式X−Ar−Yで示される少なくとも1つの出発化合物(s1)と構造式HO−Ar1−OHで示される少なくとも1つの出発化合物(s2)とを、溶剤(L)および塩基(B)の存在下で反応させることによって準備され、この場合
Yは、ハロゲン原子であり、
Xは、ハロゲン原子およびOHから選択され、および
ArおよびAr1は、互いに無関係に6〜18個の炭素原子を有するアリーレン基を表わす。
【0060】
この場合、(s1)および(s2)の割合は、フェノール性末端基の望ましい含量が生じるように選択される。適当な出発化合物は、当業者に公知であるかまたは公知方法により製造されてよい。
【0061】
ヒドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシナフタリン、殊に2,7−ジヒドロキシナフタリン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビスフェノールAおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニルは、出発化合物(s2)として特に好ましい。
【0062】
しかし、三官能性化合物を使用することも可能である。この場合には、分枝鎖状構造が生じる。三官能性出発化合物(s2)が使用される場合には、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0063】
使用すべき量比は、原理的に塩化水素の計算された量の除去を伴って進行する重縮合反応の化学量論的量からもたらされ、当業者によって公知方法で調節される。しかし、フェノール性OH末端基の数を上昇させるために、(s2)の過剰量は、好ましい。
【0064】
特に好ましくは、前記の実施態様におけるモル比(s2)/(s1)は、1.005〜1.2、殊に1.01〜1.15、殊に有利に1.02〜1.1である。
【0065】
他の選択可能な方法によれば、XがハロゲンでありかつYがOHである出発化合物(s1)が使用されてもよい。この場合には、出発化合物(s2)を添加することによってヒドロキシ基の過剰量は、調節される。この場合には、使用されたフェノール性末端基のハロゲンに対する比は、特に1.01〜1.2、殊に1.03〜1.15、殊に有利に1.05〜1.1である。
【0066】
特に、重縮合の場合の変換率は、少なくとも0.9であり、それによって十分に高い分子量が保証される。ポリアリーレンエーテルの前駆体としてプレ重合体が使用される場合には、重合度は、実際のモノマーの数に関連する。
【0067】
好ましい溶剤(L)は、非プロトン性の極性溶剤である。更に、適当な溶剤は、80〜320℃、殊に100〜280℃、有利に150〜250℃の範囲内の沸点を有する。適当な非プロトン性の極性溶剤は、例えば高沸点エーテル、エステル、ケトン、不斉ハロゲン化炭化水素、アニソール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N−エチル−2−ピロリドンおよびN−メチル−2−ピロリドンである。
【0068】
特に、出発化合物(s1)および(s2)の反応は、記載された非プロトン性の極性溶剤(L)中、殊にN−メチル−2−ピロリドン中で行なわれる。
【0069】
当業者にとって、フェノール性OH基の反応が特に塩基(B)の存在下で行なわれ、出発化合物(s1)のハロゲン置換基に対して反応性が上昇させることは、自体公知である。
【0070】
特に、塩基(B)は、無水である。適当な塩基は、殊に無水アルカリ金属炭酸塩、特に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムまたはこれらの混合物であり、この場合炭酸カリウムが殊に好ましい。
【0071】
特に好ましい組合せは、溶剤(L)としてのN−メチルピロリドンと塩基(B)としての炭酸カリウムである。
【0072】
適当な出発化合物(s1)と(s2)との反応は、80〜250℃、有利に100〜220℃の温度で実施され、この場合この温度の上限は、溶剤の沸点によって制限される。反応は、特に2〜12時間、殊に3〜8時間の時間間隔で行なわれる。
【0073】
工程(a)に続いて、および工程(b)の実施前に、重合体溶液の濾過を実施することは、好ましいことが証明された。それによって、重縮合の際に形成される塩含量ならびに場合により形成されるゲル体は、除去される。
【0074】
その上、工程(a)の範囲内でポリアリーレンエーテル(A2*)と溶剤(L)との混合物の全体量に対してポリアリーレンエーテル(A2*)の量が、10〜70質量%、特に15〜50質量%に調節されることは、好ましいことが証明された。
【0075】
工程(b)の範囲内で、少なくとも1つの酸、特に少なくとも1つの多官能性カルボン酸は、工程(a)からのポリアリーレンエーテル(A2*)、特に溶剤(L)中のポリアリーレンエーテル(A2*)の溶液に添加される。
【0076】
"多官能性"とは、少なくとも2の官能性を意味する。この官能価は、1分子当たりのCOOHの(場合によっては平均)数である。多官能性とは、2またはそれ以上の官能価を意味する。本発明の範囲内で、好ましいカルボン酸は、二官能性カルボン酸および三官能性カルボン酸である。
【0077】
多官能性カルボン酸は、種々の方法で、殊に固体または液体の形、または特に溶剤(L)と混合しうる溶剤中での溶液の形で添加される。
【0078】
特に、多官能性カルボン酸は、最大1500g/mol、殊に最大1200g/molの数平均分子量を有する。同時に、多官能性カルボン酸は、特に少なくとも90g/molの数平均分子量を有する。
【0079】
適当な多官能性カルボン酸は、殊に一般構造式II:
HOOC−R−COOH (II)
〔式中、Rは、2〜20個の炭素原子を有する炭化水素基を表わし、この炭化水素基は、場合によっては特にOHおよびCOOHから選択された他の官能基を含有する〕で示されるものである。
【0080】
好ましい多官能性カルボン酸は、C4〜C10ジカルボン酸、殊に琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸およびトリカルボン酸、殊にクエン酸である。特に好ましい多官能性カルボン酸は、琥珀酸およびクエン酸である。
【0081】
フェノール性末端基へのフェノラート末端基の十分な変換を保証するために、使用される多官能性カルボン酸または多官能性カルボン酸の量をフェノラート末端基の量に対して調節することは、好ましいことが証明された。
【0082】
工程(b)において多官能性カルボン酸をフェノール性末端基の物質量に対してカルボキシル基25〜200モル%、特にカルボキシル基50〜150モル%、特に有利にカルボキシル基75〜125モル%の量で添加することは、好ましい。
【0083】
添加される酸の量が少なすぎる場合には、重合体溶液の沈殿挙動は、不十分であり、他方、添加される量が顕著に多すぎる場合には、後加工中に生成物の変色が起こりうる。
【0084】
工程(c)において、ポリアリーレンエーテル(A2)は、固体として取得される。原則的に固体として取得するための種々の方法が当てはまる。しかし、好ましいのは、沈殿による重合体組成物の取得である。
【0085】
好ましい沈殿は、殊に溶剤(L)を低品質の溶剤(L’)と混合することによって行なうことができる。低品質の溶剤は、重合組成物が溶解しない溶剤である。このような低品質の溶剤は、特に非溶剤と1つの溶剤との混合物である。好ましい非溶剤は、水である。溶剤と非溶剤との好ましい混合物(L’)は、特に溶剤(L)、殊にN−メチル−4−ピロリドンと水との混合物である。工程(b)からの重合体溶液を低品質の溶剤(L’)に添加することは、好ましく、このことは、重合体組成物の沈殿を生じる。この場合には、特に過剰量の低品質の溶剤が使用される。特に好ましくは、工程(a)からの重合体溶液は、微細に分配される形、殊に液滴の形で添加される。
【0086】
低品質の溶剤(L’)として、溶剤(L)、殊にN−メチル−2−ピロリドンと非溶剤、殊に水との混合物を使用する場合には、溶剤:非溶剤の混合比は、1:2〜1:100、殊に1:3〜1:50が好ましい。
【0087】
低品質の溶剤(L’)としては、水とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)との混合物が溶剤(L)としてのN−メチル−2−ピロリドンとの組合せで好ましい。1:3〜1:50、殊に1:30の比のNMP/水混合物は、低品質の溶剤(L’)として特に好ましい。
【0088】
重合体組成物と溶剤(L)との混合物の全体量に対して溶剤(L)中の重合体組成物の含量が10〜50質量%、特に15〜35質量%である場合に、沈殿は、特に効率的に行なわれる。
【0089】
成分(A2)は、特に最大600ppmのカリウム含量を有する。カリウム含量は、原子吸光法により測定される。
【0090】
成分B
本発明による成形材料は、成分(B)として少なくとも1つのポリアリーレンスルフィドを含有する。成分(B)としては、原理的に全てのポリアリーレンスルフィドがこれに該当する。
【0091】
成分(B)は、本発明による熱可塑性成形材料中に、それぞれ成分(A)〜(F)の全体量に対して、特に5〜65質量%、特に有利に5〜45質量%、殊に5〜30質量%、殊に有利に10〜20質量%の量で存在する。
【0092】
特に、成分(B)のポリアリーレンスルフィド30〜100質量%は、一般式−Ar−S−〔式中、−Ar−は、6〜18個の炭素原子を有するアリーレン基を表わす〕で示される繰返し単位からなる。
【0093】
全ての繰返し単位の全質量に対して繰返し単位III:
【化4】
を少なくとも30質量%、殊に少なくとも70質量%含有するポリアリーレンスルフィドは、好ましい。
【0094】
全ての繰返し単位の全質量に対して*(削除)適当な他の繰返し単位は、殊に
【化5】
であり、この場合Rは、C1〜C10アルキル、有利にメチルを表わす。ポリアリーレンスルフィドは、単独重合体、ランダム共重合体またはブロック共重合体であることができ、この場合単独重合体(同一の繰返し単位)が好ましい。殊に好ましいポリアリーレンスルフィドは、100質量%が一般式IIIで示される繰返し単位からなる。従って、特に好ましくは、成分(B)は、ポリフェニレンスルフィド、殊にポリ(1,4−フェニレンスルフィド)である。
【0095】
本発明により使用されるポリアリーレンスルフィドの末端基として、殊にハロゲン、チオールまたはヒドロキシ、有利にハロゲンがこれに該当する。
【0096】
成分(B)のポリアリーレンスルフィドは、分枝鎖状であってもよいし、非分枝鎖状であってもよい。特に、成分(B)のポリアリーレンスルフィドは、直鎖状であり、すなわち非分枝鎖状である。
【0097】
成分(B)のポリアリーレンスルフィドは、特に5000〜100000g/molの質量平均分子量を有する。
【0098】
この種のポリアリーレンスルフィドは、自体公知であるか、または公知方法により製造されてよい。相応する製造方法は、例えばHandbook of Polymer Synthesis,第2版,2005,第486〜492中のHans R.Kricheldorf,"Aromatic Polyethers"に記載されている。
【0099】
殊に、このポリアリーレンスルフィドは、米国特許第2513188号明細書の記載と同様に、ハロゲン芳香族化合物を硫黄または金属硫化物と反応させることによって製造されてよい。同様に、ハロゲン置換されたチオフェノールの金属塩を加熱することは、可能である(英国特許第962941号明細書参照)。ポリアリーレンスルフィドの好ましい合成には、例えば米国特許第3354129号明細書の記載から確認することができるように、溶液中でのアルカリ金属硫化物とハロゲン芳香族化合物との反応が含まれる。他の方法は、米国特許第3699087号明細書および米国特許第4745826号明細書中に記載されている。
【0100】
成分C
本発明によれば、熱可塑性成形材料は、成分(C)として超分枝鎖状ポリカーボネートおよび超分枝鎖状ポリエステルから選択された少なくとも1つの超分枝鎖状重合体を含有する。
【0101】
本発明による成形材料は、成分(A)〜(F)の全体量に対して成分(C)を特に0.1〜10質量%、殊に0.1〜5質量%、特に有利に0.5〜3質量%含有する。
【0102】
"超分枝鎖状"の概念は、本発明の範囲内で、DB(%)=100×(T+Z)/(T+Z+L)として定義された、当該重合体の分枝化度DB(枝分かれ度)が10〜99%、有利に25〜90%、特に有利に30〜80%であることを意味し、この場合Tは、末端に結合された単量体単位の平均数を意味し、Zは、分枝化を形成する単量体単位の平均数を意味し、Lは、それぞれの物質のマクロ分子中で直線状に結合された単量体単位の平均数を意味する。"超分枝鎖状"の概念は、本発明の範囲内で"高度に枝分かれした"と同義に使用される。超分枝鎖状重合体は、デンドリマーとは区別することができる。"枝分かれ度"の定義に関しては、H.Frey et al.,Acta Polym.1997,48,30を参照のこと。"超分枝鎖状"の定義に関しては、Sunder et al.,Chem.Eur.J.2000,6(14),2499−2506を参照のこと。
【0103】
デンドリマーは、完全な対称構造を有する重合体であり、中心分子から出発してそれぞれ2個またはそれ以上の二価または多価の単量体と全ての既に結合された単量体との制御された段階的な結合によって製造することができる。この場合には、全ての結合工程で単量体末端基の数(ひいては、結合数)は増加し、樹木状の構造を有する重合体を得ることができ、理想的な場合には、枝がそれぞれ正確に単量体単位と同一の数を有する球状の構造を有する重合体を得ることができる。前記の完全な構造のために、重合体特性は多くの場合に好ましいものであり、例えば球表面上の官能基の高い数のために、低い粘度及び高い反応性が観察される。但し製造は複雑化され、それというのも、全ての結合工程で保護基が導入されかつ再び除去されなければならず、そして精製操作が必要とされるからであり、このためにデンドリマーは通常実験室規模でのみ製造される。
【0104】
しかし、超分枝鎖状重合体は、大工業的方法で製造することができる。この超分枝鎖状重合体は、完全な樹枝状構造の他に、線状の重合体鎖および不均一な重合体枝をも有するが、しかし、このことは、完全なデンドリマーの重合体特性と比較して重合体特性を実質的に劣化させるものではない。超分枝鎖状重合体は、殊に2つの合成方法により製造することができ、この場合これらの合成方法は、AB2およびAx+Byとして公知である。その中で、AおよびBは、種々の単量体単位を表わし、係数xおよびyは、AまたはB中に含まれている反応性の官能基の数、即ちAまたはBの官能価を表わす。AB2法の場合、三官能性単量体は、1個の反応基Aおよび2個の反応基Bと反応され、高度に枝分かれしたかまたは超分枝化された重合体に変わる。A2+B3合成の例で示されるAx+By合成の場合、二官能性単量体A2は、三官能性単量体B3と反応される。この場合には、最初に平均で1個の官能基A及び2個の官能基Bを有するAとBとからなる1:1付加物が生成され、次に、この付加物は、同様に反応して超分枝鎖状重合体に変わる。
【0105】
上記に定義された枝分かれ度によって、本発明により使用される(デンドリマーではない)超分枝鎖状重合体は、デンドリマーと区別されるが、枝分かれ度DBが99.9〜100%である場合には、"デンドリマー"は、本発明との関連で重合体である。従って、デンドリマーは、高度に対称の構造によってのみ達成されうる枝分かれ箇所の可能な最大数を有する。
【0106】
好ましい超分枝鎖状ポリカーボネートは、ポリカーボネート1〜600mg KOH/g、特に10〜550mg KOH/g、殊に50〜550mg KOH/gのOH価(DIN 53240、第2部による)を有し、以下、超分枝鎖状ポリカーボネートC1)と呼称される。
【0107】
好ましい超分枝鎖状ポリエステルは、タイプAxyのものであり、この場合AおよびBは、異なる単量体単位を示し、xは、少なくとも1、殊に少なくとも1.1であり、ならびにyは、少なくとも2、殊に少なくとも2.1であり、以下、超分枝鎖状ポリエステルC2)と呼称される。
【0108】
超分枝鎖状ポリカーボネートC1)とは、本発明の範囲内で構造的ならびに分子的に不均等である、ヒドロキシル基およびカーボネート基を有する架橋されていないマクロ分子であると解釈される。この超分枝鎖状ポリカーボネートは、一方ではデンドリマーと同様に中心分子から出発して、但し枝の均一でない鎖長で形成されていてよい。前記の超分枝鎖状ポリカーボネートは、他方では線状に、官能性の側基で構成されていてもよいし、またはこれらの両極端の組合せとして、線状であってかつ枝分かれした分子部分を有していてもよい。
【0109】
特に、好ましい超分枝鎖状ポリカーボネートC1)は、100〜15000g/mol、特に200〜12000g/mol、殊に500〜10000g/molの分子量Mnの平均値を有する(GPC、標準PMMA)。ガラス転移温度Tgは、有利には−80℃〜+140℃、有利には−60℃〜120℃である(DSC、DIN 53765による)。殊に、23℃での粘度(DIN 53019による)は、50〜200000mPas、殊に100〜150000mPas、殊に有利に200〜100000mPasである。
【0110】
超分枝鎖状ポリカーボネートは、自体公知であるか、または自体公知の方法により製造されてよい。
【0111】
超分枝鎖状ポリカーボネートC1)は、特に少なくとも次の工程を含む方法によって得ることができる:
他の選択可能な方法aa)一般式RO[(CO)]nORの少なくとも1つの有機カーボネート(G)を、少なくとも3個のOH基を有する少なくとも1つの脂肪族、脂肪族/芳香族または芳香族のアルコール(H)と、アルコールROHの除去下に、1つ以上の縮合生成物(K)へと反応させる工程、この場合Rは、それぞれ互いに無関係に1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝鎖状の脂肪族、芳香族/脂肪族または芳香族の炭化水素基であり、および基Rは、環の形成下に互いに結合されていてもよく、かつnは、1〜5の整数を表わす、或いは
他の選択可能な方法ab)ホスゲン、ジホスゲンまたはトリホスゲンを上記のアルコール(H)と塩化水素の除去下に反応させ、ならびにaa)またはab)に引き続いて
縮合生成物(K)の多官能性の高度に枝分かれした、または超分枝鎖状のポリカーボネートへと分子間反応させる工程、
この場合、OH基のカーボネートに対する量比は、反応混合物中で、縮合生成物(K)が平均で1個のカーボネート基および1個を上廻るOH基または1個のOH基および1個を上廻るカーボネート基を有するように選択される。
【0112】
出発材料として、ホスゲン、ジホスゲンまたはトリホスゲンを使用することができ、この場合有機カーボネートが好ましい。
【0113】
出発材料として使用される、一般式RO(CO)nORの有機カーボナート(A)の基Rは、それぞれ互いに無関係に1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝鎖状の脂肪族、芳香族/脂肪族または芳香族の炭化水素基である。両方の基Rは、環の形成下に互いに結合されていてもよい。脂肪族炭化水素基が有利であり、特に1〜5個のC原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基または置換または非置換のフェニル基が有利である。
【0114】
殊に、式RO(CO)nORの簡単なカーボネートが使用され、nは、特に1〜3、殊に1である。
【0115】
相応するジアルキルカーボネートまたはジアリールカーボネートは、公知であり、例えば脂肪族、芳香脂肪族または芳香族のアルコール、特にモノアルコールをホスゲンと反応させることにより製造されてよい。更に、前記カーボネートは、アルコールまたはフェノールをCOを用いて貴金属、酸素またはNOxの存在下で酸化カルボニル化することにより製造されてもよい。ジアリールカーボネートまたはジアルキルカーボネートの製造法については、"Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry", 第6版, 2000 Electronic Release,Verlag Wiley−VCHも参照のこと。
【0116】
適当なカーボネートの例は、脂肪族、芳香族/脂肪族または芳香族のカーボネート、例えばエチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネートまたは1,3−プロピレンカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ジキシリルカーボネート、ジナフチルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジベンジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、ジデシルカーボネートまたはジドデシルカーボネートを含む。
【0117】
nが1より大きいカーボネートの例は、ジアルキルジカーボネート、例えばジ(t−ブチル)ジカーボネートまたはジアルキルトリカーボネート、例えばジ(t−ブチル)トリカーボネートを含む。
【0118】
好ましくは、脂肪族カーボネート、殊に基が1〜5個のC原子を含む脂肪族カーボネート、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネートまたはジイソブチルカーボネートが使用される。
【0119】
有機カーボネート(G)は、少なくとも3個のOH基を有する少なくとも1つの脂肪族アルコール(H)または2つ以上の異なるアルコールの混合物と反応される。
【0120】
少なくとも3個のOH基を有する化合物の例は、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミン、トリス(ヒドロキシエチル)アミン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミン、ペンタエリトリット、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ビス(トリメチロールプロパン)、トリス(ヒドロキシメチル)イソシアヌレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、フロログルシノール(Phloroglucinol)、トリヒドロキシトルエン、トリヒドロキシジメチルベンゼン、フロログルシド(Phloroglucide)、ヘキサヒドロキシベンゼン、1,3,5−ベンゼントリメタノール、1,1,1−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、または糖、例えばグルコース、三官能性または多官能性のアルコールおよび酸化エチレン、酸化プロピレンまたは酸化ブチレンをベースとする三官能性または多官能性のポリエーテルオール、またはポリエステルオールを含む。この場合には、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリトリット、ならびにこれらの、酸化エチレンまたは酸化プロピレンをベースとするポリエーテロールが特に好ましい。
【0121】
この多官能性アルコールは、二官能性アルコール(H’)との混合物で使用されてもよく、この場合、使用される全てのアルコールの平均OH官能価は、全部で2よりも大きい。2個のOH基を有する適当な化合物の例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオールおよび1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオールおよび1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、レソルシノール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシフェニル、ビス−(4−ビス(ヒドロキシフェニル))スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、ビス(ヒドロキシメチル)トルエン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ジヒドロキシベンゾフェノン、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレンまたはこれらの混合物をベースとする二官能性ポリエーテルポリオール、ポリテトラヒドロフラン、ポリカプロラクトンまたはジオールおよびジカルボン酸をベースとするポリエステロールを含む。
【0122】
ジオールは、ポリカーボネートの特性を細かく調節するために使用される。二官能性アルコールを使用する場合には、二官能性アルコールH’)と少なくとも三官能性のアルコール(H)との比は、当業者によってポリカーボナートの望ましい性質に応じて確定される。一般に、1つまたは複数のアルコール(H’)の量は、全てのアルコール(H)と(H’)とが一緒になった全体量に関連して0〜39.9モル%である。有利には、この量は、0〜35モル%、特に有利には0〜25モル%、特にとりわけ有利には0〜10モル%である。
【0123】
ホスゲン、ジホスゲンまたはトルホスゲンとアルコールまたはアルコール混合物との反応は、一般に塩化水素を除去しながら行なわれ、本発明による多官能性の超分枝鎖状ポリカーボネートへのカーボネートとアルコールまたはアルコール混合物との反応は、一官能性アルコールまたはフェノールをカーボネート分子から除去しながら行なわれる。
【0124】
前記の好ましい方法により形成された多官能性の超分枝鎖状ポリカーボネートC1)は、この反応後に、すなわち更なる変性なしに、ヒドロキシル基および/またはカーボネート基で末端を形成している。このポリカーボネートは、種々の溶剤中、例えば水、アルコール、例えばメタノール、エタノール、ブタノール、アルコール/水混合物、アセトン、2−ブタノン、酢酸エステル、酢酸ブチル、酢酸メトキシプロピル、酢酸メトキシエチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート中で良好に溶解する。
【0125】
多官能性ポリカーボネートは、本発明の範囲内で、重合体骨格を形成するカーボネート基と共に、末位または側位にさらに少なくとも3個、有利に少なくとも6個、さらに好ましくは少なくとも10個の官能基を有する生成物である。官能基は、カーボネート基および/またはOH基である。末端位または側位の官能基の数は、原則として上限はないが、しかし、極めて大きな数の官能基を有する生成物は、望ましくない特性、例えば高い粘度または劣悪な溶解性を有する。本発明の多官能性のポリカーボネートは、多くの場合に末端位または側位の官能基500個以下、有利に末端位または側位の官能基100個以下を有する。
【0126】
多官能性のポリカーボネートB1)を製造する場合には、OH基含有化合物のホスゲンまたはカーボネートに対する比を、生じる最も簡単な縮合生成物(以下、縮合生成物(K)と呼称する)が平均で1個のカーボネート基またはカルバモイル基および1個より多いOH基または1個のOH基および1個より多いカーボネート基またはカルバモイル基を含有するように調節することが必要である。この場合、カーボネート(G)とジアルコールまたはポリアルコールとからなる縮合生成物(K)の最も簡単な構造は、配置XYnまたはYnXを生じ、この場合Xは、カーボネート基を表わし、Yは、ヒドロキシル基を表わし、nは、一般に1〜6、特に1〜4、特に有利に1〜3の数を表わす。この場合、個々の基として生じる反応性基は、以下、一般に、「フォーカス基(fokale Gruppe)」と呼称する。
【0127】
種々の反応比で、場合により連鎖延長剤としての付加的な二官能性化合物の存在下での、カーボネート(G)とジアルコールまたはポリアルコールとの相応する反応は、公知であり、例えばWO 2008/074687、第13頁、第29行〜第18頁第12行に開示されており、この場合この刊行物の記載内容は、参考のために引用されている。
【0128】
縮合生成物(K)の性質に基づき、縮合反応から、分枝鎖を有するが、架橋を有しない異なる構造を有する重縮合生成物(P)を生じうることが可能である。更に、重縮合生成物(P)は、理想的な場合にフォーカス基としての1個のカーボネート基および2個より多いOH基を有するかまたはフォーカス基としての1個のOH基および2個より多いカーボネート基を有する。この場合、反応性基の数は、使用された縮合生成物(K)の性質および重縮合度から生じる。
【0129】
更に、好ましい1つの実施態様において、好ましいポリカーボネートは、既に反応によって得られた官能基の他に、さらなる官能基を得ることができる。この場合、官能化は、分子量の増大中にかまたは事後に、即ち本来の重縮合の終結後に行なうことができる。
【0130】
分子量の増大前または分子量の増大中に、ヒドロキシル基またはカーボネート基の他に、他の官能基または官能性要素を有する成分を添加する場合に、ランダムに分布された、カーボネート基またはヒドロキシル基とは異なる官能価を有するポリカーボネート−重合体を得ることができる。
【0131】
この種の効果は、例えばヒドロキシル基、カーボネート基またはカルバモイル基の他に、他の官能基または官能性要素、例えばメルカプト基、第一アミノ基、第二アミノ基または第三アミノ基、エーテル基、カルボン酸の誘導体、スルホン酸の誘導体、ホスホン酸の誘導体、シラン基、シロキサン基、アリール基または長鎖アルキル基を有する化合物の添加によって重縮合中に達成することができる。カルバメート基を用いての変性のために、例えばエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、2−(ブチルアミン)エタノール、2−(シクロヘキシルアミノ)エタノール、2−アミノ−1−ブタノール、2−(2’−アミノエトキシ)エタノールまたはアンモニアを高級アルコキシル化した生成物、4−ヒドロキシピペリジン、1−ヒドロキシエチルピペラジン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノメタン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンまたはイソホロンジアミンを使用することができる。
【0132】
メルカプト基での変性のために、例えばメルカプトエタノールを使用することができる。第三級アミノ基は、例えばN−メチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミンまたはN,N−ジメチルエタノールアミンを組み入れることによって製造することができる。エーテル基は、例えば二官能性ポリエーテロールまたは多官能性ポリエーテロールを縮合導入することによって発生させることができる。長鎖アルカンジオールとの反応によって、長鎖アルキル基を導入することができ、アルキルジイソシアネートまたはアリールジイソシアネートを用いた反応は、アルキル基、アリール基およびウレタン基または尿素基を有するポリカーボネートを生じさせる。エステル基は、ジカルボン酸、トリカルボン酸、例えばテレフタル酸ジメチルエステルまたはトリカルボン酸エステルを添加することによって形成することができる。
【0133】
事後の官能化は、得られた多官能性の超分枝鎖状ポリカーボネートを付加的な処理工程(工程c)で、ポリカーボネートのOH基および/またはカーボネート基またはカルバモイル基と反応することができる適した官能化試薬と反応させることにより得ることができる。
【0134】
ヒドロキシル基を含有する多官能性の超分枝鎖状ポリカーボネートは、例えば、酸基またはイソシアネート基を含有する分子の添加によって変性されてよい。例えば、酸基を含有するポリカーボネートは、無水物基を含有する化合物との反応によって得ることができる。
【0135】
更に、ヒドロキシル基を含有する多官能性ポリカーボネートは、アルキレンオキシド、例えば酸化エチレン、酸化プロピレンまたは酸化ブチレンとの反応によって多官能性ポリカーボネート−ポリエーテルポリオールに変換されてもよい。
【0136】
本発明による成形材料は、好ましい超分枝鎖状重合体としてタイプAxyの少なくとも1つの超分枝鎖状ポリエステルC2)を含有することができ、この場合xは、少なくとも1、殊に少なくとも1.1、特に少なくとも1.3、特に有利に少なくとも2であり、かつyは、少なくとも2、殊に少なくとも2.1、特に少なくとも2.5、特に有利に少なくとも3である。
【0137】
タイプAxyのポリエステルとは、x官能性分子Aおよびy官能性分子Bから形成されている縮合物であると解釈される。例えば、分子A(x=2)としてのアジピン酸と分子B(y=3)としてのグリセリンとからなるポリエステルが挙げられる。
【0138】
超分枝鎖状ポリエステルC2)とは、本発明の範囲内で、構造的ならびに分子的に不均等である、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を有する架橋されていないマクロ分子であると解釈される。この超分枝鎖状ポリエステルは、一方ではデンドリマーと同様に中心分子から出発して、但し枝の均一でない鎖長で形成されていてよい。前記の超分枝鎖状ポリエステルは、他方では線状に、官能性の側基で構成されていてもよいし、またはこの両極端の組合せとして、線状であってかつ枝分かれした分子部分を有していてもよい。
【0139】
超分枝鎖状ポリエステルC2)は、特にGPC、標準PMMA、展開剤のジメチルアセトアミドにより測定された、300〜30000g/mol、殊に400〜25000g/mol、特に有利に500〜20000g/molのMnを有する。
【0140】
有利には、超分枝鎖状ポリエステルC2)は、DIN 53240による、OH価、0〜600mg KOH/g ポリエステル、有利には1〜500mg KOH/g ポリエステル、特に20〜500mg KOH/g ポリエステルを有し、ならびに有利には、COOH価、0〜600mg KOH/g ポリエステル、有利には1〜500mg KOH/g ポリエステル、特に2〜500mg KOH/g ポリエステルを有する。Tgは、有利には−50℃〜140℃、特に−50℃〜100℃である(DSCを用いて、DIN 53765による)。
【0141】
殊に、少なくとも一方のOH価またはCOOH価が0より大きく、特に0.1より大きく、殊に0.5より大きい超分枝鎖状ポリエステルC2)が好ましい。
【0142】
好ましい超分枝鎖状ポリエステルC2)は、特に、
(a)1つ以上のジカルボン酸または該カルボン酸の1つ以上の誘導体と1つ以上の少なくとも三官能性のアルコールとを、または
(b)1つ以上のトリカルボン酸または高級ポリカルボン酸、または該カルボン酸の1つ以上の誘導体と1つ以上のジオールとを、溶剤の存在下に、および場合により無機触媒、金属有機触媒または低分子量の有機触媒、または酵素の存在下に反応させることにより、得ることができる。溶剤中の反応は、有利な製造法である。
【0143】
本発明の範囲内の高官能性の超分枝鎖状ポリエステルC2)は、分子的および構造的に不均等である。この高官能性の超分枝鎖状ポリエステルは、デンドリマーの分子的な不均等性とは区別され、従って著しく僅かな費用で製造することができる。
【0144】
殊に、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピペリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン−α,ω−ジカルボン酸、ドデカン−α,ω−ジカルボン酸、シス−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸およびトランス−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、シス−シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸およびトランス−シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シス−シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸およびトランス−シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、シス−シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸およびトランス−シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ならびにシス−シクロペンタン−1,3−ジカルボン酸およびトランス−シクロペンタン−1,3−ジカルボン酸は、変法(a)により変換可能なジカルボン酸に属し、この場合上記のジカルボン酸は、
1〜C10アルキル、有利にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、第二ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、第二ヘキシル、n−ヘプチル、イソヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニルまたはn−デシル、
3〜C12シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシルおよびシクロドデシル、好ましくは、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル、
アルキレン基、例えばメチレンまたはエチリデン、または
6〜C14−アリール基、例えばフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリル、1−フェナントリル、2−フェナントリル、3−フェナントリル、4−フェナントリルおよび9−フェナントリル、有利にフェニル、1−ナフチルおよび2−ナフチル、特に有利にフェニルから選択された1個以上の基で置換されていてよい。
【0145】
置換されたジカルボン酸の適当な代表例とは、次のものが挙げられる:2−メチルマロン酸、2−エチルマロン酸、2−フェニルマロン酸、2−メチルコハク酸、2−エチルコハク酸、2−フェニルコハク酸、イタコン酸、3,3−ジメチルグルタル酸。
【0146】
更に、変法(a)により変換可能なジカルボン酸には、エチレン系不飽和酸、例えばマレイン酸およびフマル酸ならびに芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸またはテレフタル酸が属する。更に、前記代表例の2つまたはそれ以上の混合物を使用することができる。ジカルボン酸は、それ自体として、または誘導体の形で使用されることができる。
【0147】
誘導体とは、有利に次のものであると解釈される:
単量体または重合体の形の該当する無水物、
モノアルキルエステルまたはジアルキルエステル、有利にモノメチルエステルまたはジメチルエステル、または相応するモノエチルエステルまたはジエチルエステル、他に高級アルコール、例えばn−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第三ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノールに由来するモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、さらに
モノビニルエステルおよびジビニルエステルならびに
混合されたエステル、有利にはメチルエチルエステル。
【0148】
有利な製造の範囲内で、ジカルボン酸と1つ以上のその誘導体とからなる混合物を使用することも可能である。同様に、1つ以上のジカルボン酸の多数の異なる誘導体の混合物を使用することも可能である。
【0149】
特に有利に、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸またはこれらのモノメチルエステルまたはジメチルエステルが使用される。特にとりわけ有利には、アジピン酸が使用される。
【0150】
少なくとも三官能性のアルコールとして、例えば次のものを反応させることができる:グリセリン、ブタン−1,2,4−トリオール、n−ペンタン−1,2,5−トリオール、n−ペンタン−1,3,5−トリオール、n−ヘキサン−1,2,6−トリオール、n−ヘキサン−1,2,5−トリオール、n−ヘキサン−1,3,6−トリオール、トリメチロールブタン、トリメチロールプロパンまたはジ−トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリットまたはジペンタエリトリット;糖アルコール、例えばメソエリトリット、トレイトール、ソルビット、マンニットまたは前記の少なくとも三官能性のアルコールの混合物。好ましくは、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンおよびペンタエリトリットが使用される。
【0151】
変法(b)により変換可能なトリカルボン酸またはポリカルボン酸は、例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ならびにメリット酸である。トリカルボン酸またはポリカルボン酸は、本発明による反応において、それ自体として、または誘導体の形で使用されることができる。
【0152】
誘導体とは、有利に
単量体の形または重合体の形の当該無水物、
モノアルキルエステル、ジアルキルエステルまたはトリアルキルエステル、有利にモノメチルエステル、ジメチルエステルまたはトリメチルエステル、または相応するモノエチルエステル、ジエチルエステルまたはトリエチルエステル、他に高級アルコール、例えばn−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第三ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノールに由来するモノエステル、ジエステルおよびトリエステル、さらに
モノビニルエステル、ジビニルエステルまたはトリビニルエステルならびに
混合されたメチルエチルエステルである。
【0153】
本発明の範囲内で、トリカルボン酸またはポリカルボン酸と1つ以上のその誘導体とからなる混合物を使用することも可能である。同様に、本発明の範囲内で、成分C2)を得るために、1つ以上のトリカルボン酸またはポリカルボン酸の多数の異なる誘導体の混合物を使用することも可能である。
【0154】
好ましい方法の変法(b)のためのジオールとしては、例えばエチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,2−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ブタン−2,3−ジオール、ペンタン−1,2−ジオール、ペンタン−1,3−ジオール、ペンタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ペンタン−2,3−ジオール、ペンタン−2,4−ジオール、ヘキサン−1,2−ジオール、ヘキサン−1,3−ジオール、ヘキサン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ヘキサン−2,5−ジオール、ヘプタン−1,2−ジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−デカンジオール、1,12−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,5−ヘキサンジエン−3,4−ジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサン−ジオール、イノシトールおよび誘導体、(2)−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ピナコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールHO(CH2CH2O)n−HまたはポリプロピレングリコールHO(CH[CH3]CH2O)n−Hまたは前記化合物の2つ以上の代表例の混合物が使用され、この場合nは、整数であり、nは、4〜25である。この場合、1個または2個のヒドロキシル基は、前記ジオール中でSH基によって置換されていてもよい。有利には、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオールならびにジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールである。
【0155】
変法(a)および(b)の場合のAxy−ポリエステル中の分子A対分子Bのモル比は、4:1〜1:4、殊に2:1〜1:2である。
【0156】
前記方法の変法(a)により変換された少なくとも三官能性のアルコールは、それぞれ同じ反応性のヒドロキシル基を有することができる。この場合には、OH基が最初に同じ反応性である少なくとも三官能性のアルコールも有利であるが、少なくとも1つの酸基との反応によって、立体的または電子的な影響により条件付けられた反応性の減少が残りのOH基で引き起こされる。これは、例えばトリメチロールプロパンまたはペンタエリトリットを使用する場合である。
【0157】
しかし、変法(a)により変換された少なくとも三官能性のアルコールは、少なくとも2つの、化学的に異なる反応性を有するヒドロキシル基を有していてもよい。
【0158】
この場合、官能基の異なる反応性は、化学的原因(例えば、第一級OH基/第二級OH基/第三級OH基)または立体的原因に基づきうる。例えば、トリオールは、第一級ヒドロキシル基および第二級ヒドロキシル基を有するトリオールであってよく、有利な例はグリセリンである。
【0159】
変形(a)による本発明による反応の実施の際に、有利にはジオールおよび単官能性アルコールの非存在下で作業する。変法(b)による本発明による反応を実施する場合、有利には、モノジカルボン酸またはジカルボン酸の不在下で行なわれる。
【0160】
本発明によれば、好ましい超分枝鎖状ポリエステルC2)の製造は、公知であり、例えばWO 2007/074687、第24頁、第37行〜第28頁、第33行に開示されており、この場合この刊行物の記載内容は、参考のために引用されている。
【0161】
好ましい超分枝鎖状ポリエステルC2)は、500〜50000g/mol、有利に1000〜20000g/mol、特に有利に1000〜19000g/molの分子量Mwを有する。多分散度は、1.2〜50、有利に1.4〜40、特に有利に1.5〜30、特にとりわけ有利に1.5〜10である。このポリエステルは、通常、良好に溶解性であり、即ち、テトラヒドロフラン(THF)、n−ブチルアセテート、エタノールおよび数多くの別の溶剤中に本発明によるポリエスエル50質量%まで、若干の場合には、80質量%までをも有する澄明な溶液を、裸眼でゲル粒子を検出することなしに製出することができる。
【0162】
特に、高官能性の超分枝鎖状ポリエステルC2)は、カルボキシ基を末端に有し、カルボキシ基およびヒドロキシル基を末端に有し、特に有利にヒドロキシル基を末端に有する。
【0163】
タイプC1)およびC2)の超分枝鎖状重合体が混合物で使用される限り、成分C1)対C2)の質量比は、特に1:20〜20:1、殊に1:15〜15:1、殊に有利に1:5〜5:1である。
【0164】
使用される超分枝鎖状ポリカーボネートC1)およびポリエステルC2)は、それぞれ特に20〜500nm、殊に30〜400nm、特に有利に50〜300nmの寸法を有する粒子である。このナノ粒子は、重合体ブレンド中で微細に分布して存在し、前記粒子のコンパウンド中での寸法は、20〜500nm、有利には50〜300nmである。
【0165】
成分D
特に、熱可塑性成形材料は、カルボキシル基を含む、少なくとも1つの官能化されたポリアリーレンエーテル、殊に25℃でN−メチル−2−ピロリドン中の1質量%の溶液中で測定した、45〜65ml/gのDIN EN ISO 1628−1に記載の粘度数を有するものを含有する。25℃でN−メチル−2−ピロリドン中の1質量%の溶液中で測定した、成分(D)の官能化されたポリアリーレンエーテルのDIN EN ISO 1628−1に記載の粘度数は、特に少なくとも46ml/g、特に有利に少なくとも47ml/g、殊に少なくとも48ml/gである。従って、成分Dは、成分Dが成分Aとは異なりカルボキシル基で官能化されていることによって成分Aと区別される。
【0166】
25℃でN−メチル−2−ピロリドン中の1質量%の溶液中で測定した、65ml/gを上廻るDIN EN ISO 1628−1に記載の粘度数を有する、カルボキシル基を含むポリアリーレンエーテルの使用は、一般に、機械的性質のさらなる改善が得られることなし、流動能の不利な減少をまねく。それに応じて、成分(D)のポリアリーレンエーテルのDIN EN ISO 1628−1に記載の粘度数は、特に上向きに制限されており、有利にそれぞれ25℃でN−メチル−2−ピロリドン中の1質量%の溶液中で測定した、最大65ml/g、特に有利に最大61ml/g、殊に最大57ml/gである。
【0167】
記載された範囲内の粘度数は、粒子状または繊維状の充填剤を含有する、ポリアリーレンエーテルおよびポリアリーレンスルフィドをベースとする熱可塑性成形材料中で、本発明による成分(C)と組み合わされて改善された機械的性質および特に有利な流動能を生じる。制限しようとすることなしに、成分(D)の官能化されたポリアリーレンエーテルは、化学構造および定義された粘度数に基づいて充填剤、殊にガラス繊維と共同で相乗作用を生じることが考えられる。
【0168】
特に、本発明による熱可塑性成形材料は、成分(D)として、成分(A1)または(A2)の範囲内で定義されたような一般式Iの単位ならびに一般式IV:
【化6】
[式中、
nは、0、1、2、3、4、5または6であり;
1は、水素、C1〜C6アルキル基、または−(CH2n−COOHを表わし;
Ar2およびAr3は、同一でも異なっていてもよく、互いに無関係にC6〜C18アリーレン基を表わし、および
Yは、化学結合、または−O−、−S−、−SO2−、S=O、C=O、−N=N−および−CRab−から選択された基を表わし、この場合RaおよびRbは、同一でも異なっていてもよく、互いに無関係にそれぞれ水素原子、またはC1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシ基またはC6〜C18アリール基を表わす〕で示される単位を含有する、少なくとも1つの官能化されたポリアリーレンエーテルを含有する。
【0169】
特に、一般式IVに記載の単位の割合は、式Iおよび式IVに記載の単位の総和に対して0.5〜3モル%、特に0.6〜2モル%、特に有利に0.7〜1.5モル%である。
【0170】
式Iおよび式IVに記載の単位の総和に対する一般式IVに記載の単位の割合は、本発明の範囲内で原則的に1H−NMR分光分析法により内部標準として定義された量の1,3,5−トリメトキシベンゼンで測定される。質量%からモル%への換算は、当業者に公知である。
【0171】
一般式IVの範囲内で、nは、2であり、およびR1は、メチルである。その上、一般式IVの範囲内で特にAr2とAr3は、それぞれ1,4−フェニレンであり、およびYは、−SO2−である。
【0172】
本発明による成形材料中で使用される、官能化されたポリアリーレンエーテル(成分D)は、自体公知であるか、または公知方法により製造可能である。
【0173】
例えば、成分(D)の官能化されたポリアリーレンエーテルは、欧州特許出願公開第0185237号明細書の記載に依拠して、ならびにI,W,Parsosns et.al.,Polymer,34,2836(1993)およびT.Koch,H.Ritter,Macromol.Phys.195,1709(1994)の記載により入手可能である。
【0174】
それに応じて、ポリアリーレンエーテルは、殊に、一般式V:
【化7】
〔式中、R1およびnは、上記の意味を有する〕で示される化合物を、一般式Vの化合物と比較して反応性の芳香族化合物、例えば殊に4,4’−ジクロロジフェニルスルホンおよび場合により他のヒドロキシ官能化された化合物、例えばビスフェノールAおよび/またはビスフェノールSおよび/または4,4’−ジヒドロキシビフェニルと重縮合させることによって得ることができる。適当な反応成分は、当業者に一般に公知である。
【0175】
成分(D)の官能化されたポリアリーレンエーテルを製造するために、原理的に成分(A1)のポリアリーレンエーテルのために使用される方法が使用されてもよく、この場合には、同様に塩基性作用下で双極性の非プロトン性溶剤中での溶液重合が好ましい。
【0176】
一般式Iの好ましい構造要素の点で成分(A1)に関連する実施は、相応して成分(D)の官能化されたポリアリーレンエーテルにも当てはまる。
【0177】
殊に、成分(A1)および(D)ポリアリーレンエーテルが構造的に類似し、殊に同じ単量体単位をベースとし、および単に一般式IVの単位に関連して成分(D)の範囲内で区別されることは、好ましい。特に、成分(A1)ならびに成分(D)が上記の定義と同様にタイプPESUの単位をベースとするか、または成分(A1)ならびに成分(D)が上記の定義と同様にタイプPPSUの単位をベースとするか、または成分(A1)ならびに成分(D)が上記の定義と同様にタイプPSUの単位をベースとすることは、好ましい。"ベースとする"とは、これに関連して、成分(A1)ならびに成分(D)が同じ単位から形成されており、および単に、成分(D)が付加的に官能化されており、および特に一般式IVの単量体単位が上記の定義と同様に含有されていることと解釈される。特に有利には、成分(A1)のポリアリーレンエーテルおよび成分(D)の官能化されたポリアリーレンエーテルは、それぞれ一般式Iの同じ単位を含有する。
【0178】
一般式IVの範囲内で適当な単位は、殊に次のものである:
【化8】
【0179】
上記式中、nは、それぞれ0〜4の整数を表わす。単位VIは、殊に好ましい。
【0180】
成分E
本発明の熱可塑性成形材料は、成分(E)として、特に少なくとも1つの繊維状または粒子状の充填剤を、特に有利に成分(A)〜(F)の全100質量%に対して5〜70質量%、殊に有利に15〜70質量%、殊に15〜65質量%の量で含有する。
【0181】
本発明による成形材料は、殊に粒子状または繊維状の充填剤を含有することができ、この場合繊維状の充填剤が特に好ましい。
【0182】
好ましい繊維状の充填剤は、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、アラミド繊維および特に有利にガラス繊維である。ガラス繊維を使用する場合、このガラス繊維は、マトリックス材料との相容性を改善するために、サイズ剤、好ましくはポリウレタンサイズ剤および付着助剤を備えていてよい。一般に、使用される炭素繊維およびガラス繊維は、6〜20μmの範囲内の直径を有する。従って、成分(E)は、特に有利にガラス繊維からなる。
【0183】
ガラス繊維の混和は、短いガラス繊維の形ならびに連続ストランド(ロービング)の形で行なうことができる。完成された射出成形品において、ガラス繊維の平均長さは、特に0.08〜0.5mmの範囲内にある。
【0184】
炭素繊維またはガラス繊維は、織物、マットまたはガラスシルクロービングの形で使用されてもよい。
【0185】
粒子状充填剤としては、非晶質珪酸、カーボネート、例えば炭酸マグネシウムおよび白亜、粉末状石英、雲母、多種多様の珪酸塩、例えば粘土、白雲母、黒雲母、スゾイト(Suzoit)、錫マレタイト(tin maletite)、タルク、緑泥岩、軟質雲母、長石、珪酸カルシウム、例えば珪灰石、または珪酸アルミニウム、例えばカオリン、特に焼成カオリンが適している。
【0186】
好ましい粒子状の充填剤は、粒子の少なくとも95質量%、特に少なくとも98質量%が完成製品について測定した、直径(最大寸法)45μm未満、有利に40μm未満および完成製品について測定した、1〜25の範囲内、有利に2〜20の範囲内のいわゆるアスペクト比を有する、粒子状の充填剤である。アスペクト比は、厚さに対する粒子直径の比である(それぞれ幾何学的中心を通る、最小の拡がりに対する最大の拡がり)。
【0187】
この場合、粒子直径は、例えば重合体混合物の薄手の断面を電子顕微鏡撮影し、少なくとも25個、有利に少なくとも50個の充填剤粒子を評価のために採用することによって、測定されてよい。同様に、粒径の測定は、Transactions of ASAE,第491頁(1983)の記載により、沈降分析により行なうことができる。直径が40μm未満である充填剤の質量による割合は、篩分析により測定されてもよい。
【0188】
特に好ましいのは、粒子状充填剤として、タルク、カオリン、例えば焼成カオリンまたは珪灰石、またはこれらの充填剤の2つまたは全部からなる混合物である。これらの中で、それぞれ完成製品について測定した、40μm未満の直径および1.5〜25のアスペクト比を有する粒子少なくとも95質量%の割合を有するタルクは、特に好ましい。カオリンは、有利にそれぞれ完成製品について測定した、20μm未満の直径および1.2〜20のアスペクト比を有する粒子少なくとも95質量%の割合を有する。
【0189】
更に、熱可塑性成形材料は、他の添加剤および/または加工助剤を成分Fとして含有することができる。
【0190】
成分F
本発明による成形材料は、成分(F)として、助剤、殊に加工助剤、顔料、安定剤、難燃剤または異なる添加剤の混合物を含有することができる。通常の添加剤は、例えば酸化遅延剤、熱分解および紫外線による分解に抗する薬剤、滑剤および離型剤、染料および可塑剤でもある。
【0191】
本発明による成形材料中の成分(F)の割合は、殊に、成分(A)〜(E)の全質量に対して0〜30質量%、特に0〜20質量%、殊に0〜15質量%である。成分Eが安定剤を含む場合には、この安定剤の割合は、成分(A)〜(E)の質量%の総和に対して、通常、2質量%まで、特に0.01〜1質量%、殊に0.01〜0.5質量%である。
【0192】
顔料および染料は、一般に成分(A)〜(F)の質量%の総和に対して0〜6質量%、有利に0.05〜5質量%、殊に0.1〜3質量%の量で含有されている。
【0193】
熱可塑性樹脂を着色するための顔料は、一般に公知である。例えば、R.Gaechter und H.Mueller,Taschenbuch der Kunststoffadditive,Carl Hanser Verlag,1983,第494〜510頁参照。顔料の第1の好ましいグループとしては、白色顔料、例えば酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白[2PbCO3−Pb(OH)2]、リトポン、アンチモン白および二酸化チタンを挙げることができる。二酸化チタンの2つの常用の結晶変態(ルチル型およびアナターゼ型)の中から、殊に本発明による成形材料の白色の着色のためにルチル型が使用される。本発明により使用されてよい黒色の有色顔料は、酸化鉄黒(Fe34)、スピネル黒[Cu(Cr,Fe)24]、マンガン黒(二酸化マンガンと二酸化珪素と酸化鉄とからなる混合物)、コバルト黒およびアンチモン黒ならびに特に有利には多くの場合にファーネスカーボンブラックまたはガスカーボンブラックの形で使用されるカーボンブラックである。このために、G.Benzing,Pigmente fuer Anstrichmittel,Expert−Verlag(1988),第78頁以降参照のこと。
【0194】
特定の色調に調節するために、無機有彩顔料、例えば酸化クロム緑または有機有彩顔料、例えばアゾ顔料またはフタロシアニンが使用されてよい。この種の顔料は、当業者に公知である。
【0195】
本発明による熱可塑性材料に添加することができる、酸化遅延剤および熱安定剤は、例えば周期律表の第I族の金属のハロゲン化物、例えばナトリウムハロゲン化物、カリウムハロゲン化物、リチウムハロゲン化物、例えば塩化物、臭化物または沃化物である。更に、弗化亜鉛および塩化亜鉛が使用されてよい。更に、立体障害フェノール、ヒドロキノン、前記グループの置換された代表例、第二芳香族アミン、場合によっては燐含有酸またはその塩との化合物で、および前記化合物の混合物は、特に成分(A)〜(F)の質量%の総和に対して、特に1質量%までの濃度で使用可能である。
【0196】
UV安定剤の例は、種々の置換レゾルシン、サリチレート、ベンゾトリアゾールおよびベンゾフェノンであり、これらは、一般に2質量%までの量で使用される。
【0197】
一般に成分(A)〜(F)の質量%の総和に対して1質量%までの量で添加される、滑剤および離型剤は、ステアリールアルコール、ステアリン酸アルキルエステルおよびステアリン酸アルキルアミドならびにペンタエリトリットと長鎖状脂肪酸とのエステルである。ジアルキルケトン、例えばジステアリールケトンが使用されてもよい。
【0198】
本発明による成形材料は、好ましい成分として(成分(A)〜(F)の質量%の総和に対して)ステアリン酸および/またはステアレート0.1〜2質量%、有利に0.1〜1.75質量%、特に有利に0.1〜1.5質量%、殊に0.1〜0.9質量%を含有する。原理的に、別のステアリン酸誘導体、例えばステアリン酸のエステルが使用されてもよい。
【0199】
ステアリン酸は、好ましくは脂肪を加水分解することによって製造される。この場合に得られる生成物は、通常、ステアリン酸とパルミチン酸との混合物である。従って、このような生成物は、生成物の組成に応じて幅広い軟化範囲、例えば50〜70℃の軟化範囲を有する。好ましくは、20質量%を上廻る、特に有利に25質量%を上廻るステアリン酸含量を有する生成物が使用される。純粋なステアリン酸(98%超)が使用されてもよい。
【0200】
更に、成分(F)は、ステアレートを含んでいてもよい。ステアレートは、相応するナトリウム塩と金属塩溶液(例えば、CaCl2、MgCl2、アルミニウム塩)との反応によって製造されてよいか、または脂肪酸と金属水酸化物とを直接に反応させることによって製造されてよい(例えば、Baerlocher Additives,2005)。好ましくは、アルミニウムトリステアレートが使用される。
【0201】
更に、添加剤として、いわゆる成核剤、例えばタルクもこれに該当する。
【0202】
成分(A)〜(F)が混合される順序は、任意である。
【0203】
本発明による成形材料は、自体公知の方法、例えば押出法により製造されてよい。本発明による成形材料は、例えば出発成分を常用の混合装置中、例えばスクリュー押出機、特に二軸押出機、ブラベンダーミキサー、バンバリーミキサーまたは混練機中で混合され、引続き押出される。押出の後に、この押出物を冷却され、および微粉砕される。前記成分の混合の順序は、変動することができる。相応して、2つまたは2つを上廻る成分が予め混合されてよいが、しかし、全ての成分が一緒に混合されてもよい。
【0204】
できるだけ均質な混合を得るために、強力な混合が好ましい。そのために、一般に290〜380℃、有利に300〜370℃の温度で0.2〜30分間の平均混合時間が必要とされる。押出の後に、この押出物は、冷却され、および微粉砕される。
【0205】
本発明による熱可塑性成形材料は、好ましくは成形品、繊維、フォームまたはフィルムの製造に使用されてよい。殊に、本発明による成形材料は、家庭用品のための成形品、電気的または電子的構成部品の製造ならびに乗り物分野、殊に自動車のための成形部品の製造に適している。
【0206】
次の実施例は本発明を詳細に説明するものであるが、それにより本発明は制限されるものではない。
【実施例】
【0207】

試料の弾性率、引裂き強度および引裂時の伸びを、ISO 527による引張試験においてダンベル形試験片につき測定した。
【0208】
ガラス繊維を含有する製品の衝撃強さをISO 179 1eUによるISO試験片につき測定した。強化されていない製品のノッチ付衝撃強さをISO 179 1eBにより測定した。強化されていない製品の場合には、引裂き強度の代わりにISO 527による引張強さを測定した。
【0209】
流動能を溶融粘度につき評価した。溶融液安定性をキャピラリーレオメーターにより測定した。この場合、350℃での見掛けの粘度を、長さ30mmの円形毛管、0.5mmの半径、180°のノズルの供給角度、12mmの溶融液の貯蔵容器の直径および5分間の予熱時間を有する毛管粘度計(Goettfert Kapillarviskosimeter Rheograph 2003)中での剪断速度の関数として測定した。1000Hzで測定された値を記載した。
【0210】
剛性の異方性をプレートにつき次のように測定した:フィルムゲートを備えた金型内で寸法150*150*3mm3の複数のプレートを製造した。これらのプレートからそれぞれ5本の引張棒を高速フライス盤を用いて仕上げ加工した。試験体を流動方向(y軸方向)に、またはこれに対して垂直方向(x軸方向)に取り出した。これらの試験体について、弾性率を流動方向に、またはこの流動方向に対して垂直方向に測定した。
【0211】
ポリアリーレンエーテルの粘度数をN−メチル−ピロリドンの1%溶液中で25℃でDIN EN ISO 1628−1により測定した。
【0212】
成分A1
成分A−1として、49.0ml/gの粘度数を有するタイプPESUのポリエーテルスルホン(BASF SE社のUltrason(登録商標)E 1010)を使用した。使用された生成物は、Cl末端基0.16質量%およびOCH3末端基0.21質量%を有していた。
【0213】
成分A2
成分A−2として、55.6ml/gの粘度数を有するポリエーテルスルホンを使用し、このポリエーテルスルホンは、OH末端基0.20質量%およびCl末端基0.02質量%を有していた。
【0214】
成分B
成分B−1として、330℃で145Pa*sの溶融粘度および1000Hzの剪断速度を有するポリフェニレンスルフィドを使用した。
【0215】
成分C
成分C−1として超分枝鎖状ポリカーボネートを使用し、この超分枝鎖状ポリカーボネートは、次のように製造された:
多官能性アルコール、ジエチルカーボネートおよび触媒としての炭酸カリウム0.15質量%(アルコールの量に対する量)を第1表に記載のバッチ量により、攪拌機、還流冷却器および内部温度計を装備した三口フラスコ中に予め装入し、この混合物を140℃に加熱し、およびこの温度で2時間攪拌した。この場合には、反応時間の経過と共に、反応混合物の温度が、遊離されたエタノールの開始させる沸騰冷却に依存して減少した。還流冷却器を降下型冷却器と交換し、当量の触媒に対して当量の燐酸を添加すると、エタノールは留去され、反応混合物の温度は、徐々に160℃にまで上昇した。留去されたアルコールを冷却された丸底フラスコ中で捕集し、秤量し、こうして理論的に可能な完全変換率に対して変換率を百分率で算出した(第1表参照)。
【0216】
引続き、なお存在する残存量の単量体を除去するために、160℃で1時間に亘って乾燥窒素を反応混合物に導通した。その後に、反応混合物を室温に冷却した。
【0217】
本発明によるポリカーボネートの分析
このポリカーボネートを、検出器としての屈折計を用いたゲル浸透クロマトグラフィーによって分析した。移動相としてジメチルアセトアミドを使用し、分子量を測定するための標準物質としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を使用した。
【0218】
OH価をDIN 53240、第2部の記載により測定した。
【0219】
【表1】
【0220】
その中で、"TMP×1,2PO"の表記は、トリメチロールプロパン1モル宛が酸化プロピレン平均で1.2モルと反応された生成物を示す。
【0221】
成分D
成分D−1として、次のように製造された、官能化されたポリエーテルスルホンが使用された:
窒素雰囲気下でジクロロジフェニルスルホン577.03g、ジヒドロキシジフェニルスルホン495.34gおよび4,4’−ビス−ヒドロキシフェニル吉草酸5.73g("DPA")をNMP1053ml中に溶解し、および無水炭酸カリウム297.15gを添加した。この反応混合物を190℃に加熱し、この温度で6時間維持した。引続き、このバッチ量をNMP1947mlで希釈した。T80℃未満に冷却した後に、該懸濁液を排出した。更に、濾過によって不溶性成分を分離した。次に、得られた溶液を水中で沈殿させた。次に、得られた白色粉末を数回熱水で抽出し、引続き140℃で真空中で乾燥させた。DPA単位の割合を1H−NMR分光分析法により内部標準としての1,3,5−トリメトキシベンゼンで0.9モル%と測定し、生成物の粘度数は、46.9ml/gであった。
【0222】
成分E
成分E−1として、4.5mmのステープル長さおよび10μmの繊維直径を有するチョップトグラスファイバーを使用し、このチョップトグラスファイバーは、ポリウレタンサイズ剤を備えていた。
【0223】
【表2】
【0224】
本発明による成形材料は、第2表によれば、改善された流動能と同時に良好な機械的性質を示す。本発明による成形材料は、殊に高い剛性を有し、その異方性は、僅かである。更に、衝撃強さは、改善されている。
【0225】
【表3】
【0226】
強化されていない本発明による成形材料は、公知技術水準と比較して明らかに改善された流動能ならびに明らかに改善されたノッチ付衝撃強さを有する。