特許第5791866号(P5791866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791866
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】ワーク分割装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   H01L21/78 X
   H01L21/78 M
   H01L21/78 P
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2009-53105(P2009-53105)
(22)【出願日】2009年3月6日
(65)【公開番号】特開2010-206136(P2010-206136A)
(43)【公開日】2010年9月16日
【審査請求日】2012年2月7日
【審判番号】不服2014-10760(P2014-10760/J1)
【審判請求日】2014年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】川口 吉洋
(72)【発明者】
【氏名】服部 篤
(72)【発明者】
【氏名】長尾 隆志
(72)【発明者】
【氏名】稲岡 達也
(72)【発明者】
【氏名】松山 央
【合議体】
【審判長】 栗田 雅弘
【審判官】 西村 泰英
【審判官】 原 泰造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−189057(JP,A)
【文献】 特開平9−266182(JP,A)
【文献】 特開2007−149860(JP,A)
【文献】 特開2007−27562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のフレームの開口部に、該フレームに貼着された粘着テープを介して支持された板状のワークを、前記粘着テープを拡張することにより、該ワークに形成された分割予定ラインに沿って分割するワーク分割装置であって、
前記粘着テープを介して前記ワークを支持した状態のフレームであるワーク付きフレームを複数収容するカセットが着脱可能に載置されるカセット載置部と、
該カセット載置部に載置された前記カセットから取り出された前記ワーク付きフレームの前記フレームを保持し、該フレームと前記ワークとを、該ワークの表面に直交する方向に離反させて前記粘着テープを拡張させることにより、該ワークを、前記分割予定ラインに沿って分割する分割手段と、
該分割手段で拡張されることにより弛みが生じた前記粘着テープの弛みを、該粘着テープを加熱することにより除去する加熱手段と、
前記ワーク付きフレームを回転させながら前記ワークに洗浄液を供給することにより該ワークを洗浄する洗浄手段と、
前記分割手段と前記加熱手段との間に設けられた中継ステージと、
前記カセット載置部に載置された前記カセットから前記ワーク付きフレームを引き出したり収納したりする第1搬送手段と、
前記中継ステージから前記加熱手段へ、および前記加熱手段から前記洗浄手段へ、旋回動作により前記ワーク付きフレームを搬送する第2搬送手段と、
前記中継ステージと前記分割手段との間で前記ワーク付きフレームを搬送する第3搬送手段と、
を備え、
前記分割手段は、前記粘着テープを前記ワークの表面に直交する方向に突き上げる円筒状の突き上げ部材を有し、該突き上げ部材には、粘着テープ突き上げ時に該粘着テープとの摩擦を緩和するコロ部材が取り付けられていること
を特徴とするワーク分割装置。
【請求項2】
前記分割手段に、前記ワークを冷却する冷却手段が具備されていることを特徴とする請求項1に記載のワーク分割装置。
【請求項3】
前記粘着テープは紫外線硬化型の粘着テープであり、
前記洗浄手段で洗浄されたワークに貼着されている該粘着テープに紫外線を照射する紫外線照射手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載のワーク分割装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体ウェーハ等の薄板状のワークを多数の半導体チップに分割する際などに用いて好適なワーク分割装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、円板状の半導体ウェーハの表面に格子状の分割予定ラインによって多数の矩形領域を区画し、これら矩形領域の表面にICやLSI等の電子回路を形成し、次いで裏面を研削した後に研磨するなど必要な処理をしてから、全ての分割予定ラインを切断する、すなわちダイシングして、多数の半導体チップを得ている。このようにして得られた半導体チップは、裏面にエポキシ樹脂等からなる厚さが例えば数μm〜100μm程度のDAF(Die Attach Film)と称されるダイボンディング用のフィルム状接着剤が貼着され、このDAFを介して、半導体チップを支持するダイボンディングフレームに対し加熱することによりボンディングされる。
【0003】
一方、半導体ウェーハ等の板状の被加工物を分割する方法として、近年にあっては、レーザ光線を、被加工物の内部に集光点を合わせて照射するレーザ加工方法が試みられている。このレーザ加工方法を用いた分割方法は、透過性を有する赤外光領域のパルスレーザ光線を被加工物の一方の面側から内部に集光点を合わせて照射して、被加工物の内部に分割予定ラインに沿った変質層を連続的に形成し、この変質層で強度が低下した分割予定ラインに外力を加えることによって被加工物を分割するものである(特許文献1参照)。外力を加える手段としては、被加工物の裏面に貼着した保護テープ等の粘着テープを拡張することにより半導体ウェーハも同時に拡張させるといった手段が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3408805号公報
【特許文献2】特開2007−27250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粘着テープの拡張とともに半導体ウェーハを拡張して多数のチップに分割した場合、各チップを上記のようにボンディングする工程までの間には、さらに複数の工程を要している。例えば、分割されて離間したチップどうしが搬送中に接触して損傷することを防止するために拡張された粘着テープの弛みを除去したり、分割によって生じた破片を洗い流すために分割状態の半導体ウェーハを洗浄したりといった工程が挙げられる。
【0006】
従来は、これらの工程を行う装置を用意し、多数のチップに分割された状態の半導体ウェーハを各装置に搬送しながら、各工程を行っていた。しかしながらこのような処理形態では、工程ごとに装置を用意するため、コストが高くなるとともに作業スペースも大きくなり、また、装置間の搬送に時間がかかるなど作業が煩雑になることもあいまって、きわめて非効率的であった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、粘着テープを拡張して半導体ウェーハを多数のチップに分割してからチップのボンディング工程に至るまでの間に要する複数の工程を、円滑に、かつ、比較的省スペースで遂行することができるとともに、コストの低減も図ることができ、全体として効率的に作業を行うことが可能となるワーク分割装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のワーク分割装置は、環状のフレームの開口部に、該フレームに貼着された粘着テープを介して支持された板状のワークを、粘着テープを拡張することにより、該ワークに形成された分割予定ラインに沿って分割するワーク分割装置であって、粘着テープを介してワークを支持した状態のフレームであるワーク付きフレームを複数収容するカセットが着脱可能に載置されるカセット載置部と、該カセット載置部に載置されたカセットから取り出されたワーク付きフレームのフレームを保持し、該フレームとワークとを、該ワークの表面に直交する方向に離反させて粘着テープを拡張させることにより、該ワークを、分割予定ラインに沿って分割する分割手段と、該分割手段で拡張されることにより弛みが生じた粘着テープの弛みを、該粘着テープを加熱することにより除去する加熱手段と、ワーク付きフレームを回転させながらワークに洗浄液を供給することにより該ワークを洗浄する洗浄手段と、前記分割手段と前記加熱手段との間に設けられた中継ステージと、前記カセット載置部に載置された前記カセットから前記ワーク付きフレームを引き出したり収納したりする第1搬送手段と、前記中継ステージから前記加熱手段へ、および前記加熱手段から前記洗浄手段へ、旋回動作により前記ワーク付きフレームを搬送する第2搬送手段と、前記中継ステージと前記分割手段との間で前記ワーク付きフレームを搬送する第3搬送手段と、を備え、前記分割手段は、前記粘着テープを前記ワークの表面に直交する方向に突き上げる円筒状の突き上げ部材を有し、該突き上げ部材には、粘着テープ突き上げ時に該粘着テープとの摩擦を緩和するコロ部材が取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明のワーク分割装置では、分割手段でワークが複数のチップに分割された後、粘着テープの弛み除去工程とワーク洗浄工程とが、それぞれ加熱手段と洗浄手段とによって連続して行われる。これら工程を経たワークは、例えばチップのボンディング等、次の工程に移される。
【0010】
本発明によれば、粘着テープの弛み除去工程とワーク洗浄工程を行う専用の装置をそれぞれ別途用意する必要がなくなる。このため、工程間でワークを搬送するといった煩雑な作業から解放され、各工程を円滑に遂行することができる。また、コストの低減、ならびに省スペース化が図られる。
【0011】
ところで、ワークの裏面に上記DAFが貼着されている場合、あるいはワークがDAF自体である場合などには、本発明の上記分割手段にワークを冷却する冷却手段が具備されている形態は好ましいものとされる。これは、該ワークを分割手段で分割する際に冷却手段で該ワークを冷却しておくと、DAFが硬化して分割されやすいからである。
【0012】
また、本発明は、上記粘着テープは紫外線硬化型の粘着テープであり、上記洗浄手段で洗浄されたワークに貼着されている該粘着テープに紫外線を照射する紫外線照射手段を有する形態を含む。この形態では、洗浄手段でワークが洗浄された後に、紫外線照射手段で粘着テープに紫外線を照射して粘着テープの粘着層を硬化することにより、分割されたワークを粘着テープから剥離させやすくなる。したがって、例えばチップのボンディング作業を円滑に進めることが可能となるといった効果を得ることができる。
【0013】
なお、本発明で言うワークは特に限定はされないが、例えばシリコンウェーハ等の半導体ウェーハや、チップ実装用としてウェーハの裏面に設けられる上記DAF等の粘着部材、あるいは半導体製品のパッケージ、セラミックやガラス系あるいはサファイア(Al)系の無機材料基板、液晶表示装置を制御駆動するLCDドライバ等の各種電子部品、さらには、ミクロンオーダーの精度が要求される各種加工材料等が挙げられる。また、半導体ウェーハ等であって、多数のチップに区画する分割予定ラインに溝や内部変質層が形成されたもの(先に溝加工され、後に研削により薄化されるものを含む)、またはこのようなウェーハに上記DAFが貼着されたもの、さらにこのようなウェーハであって分割予定ラインがフルカットされていてDAFがハーフカット(厚さの途中までカットされている状態)のものなども含まれる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、粘着テープを拡張して例えば半導体ウェーハを多数のチップに分割してからチップのボンディング工程に至るまでの間に要する複数の工程を、円滑に、かつ、比較的省スペースで遂行することができるとともに、コストの低減も図ることができ、全体として効率的に作業を行うことが可能となって生産性が向上するといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るワーク分割装置で分割される半導体ウェーハがテープを介してフレームに支持されている状態を示す(a)平面図、(b)断面図である。
図2】一実施形態に係るワーク分割装置の全体斜視図である。
図3】同ワーク分割装置が備える分割手段を示す斜視図である。
図4】同分割手段でウェーハを分割する過程を(a)〜(d)の順に示す断面図である。
図5】一実施形態のワーク分割装置が備える加熱手段を示す斜視図である。
図6】同加熱手段が備える吸着テーブルの断面図である。
図7】同加熱手段により粘着テープの弛み領域を収縮させる過程の一部を(a)〜(c)の順に示す断面図である。
図8図7の続きを(a),(b)の順に示す断面図である。
図9】一実施形態のワーク分割装置が備えるUV照射手段を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
(1)ウェーハ
図1の符号1は一実施形態でのワークである円板状の半導体ウェーハ(以下、ウェーハと略称)を示している。このウェーハ1はシリコンウェーハ等であって、厚さが例えば100〜700μm程度であり、外周部の一部には結晶方位を示すマークとしてオリエンテーションフラット1aが形成されている。ウェーハ1の表面には、格子状に形成された分割予定ライン2により多数の矩形状の半導体チップ(以下、チップと略称)3が区画されている。各チップ3の表面には、図示せぬICやLSI等の電子回路が形成されている。図1(b)に示すように、ウェーハ1の裏面にはダイボンディング用のDAF4が貼着されている。
【0017】
裏面にDAF4が貼着されたウェーハ1は、環状のフレーム5の内側の開口部5aに同心状に配設され、DAF4側に貼着された粘着テープ(以下、テープと略称)6を介してフレーム5に一体に支持されている。テープ6の、ウェーハ1の外縁とフレーム5の内縁との間の環状の領域は、弛み領域6aとされる。なお、以下の説明では、図1で示したようにテープ6を介してウェーハ1を支持しているフレーム5をウェーハ付きフレーム7と称する。
【0018】
ウェーハ1はこのようにフレーム5に支持された状態で、分割予定ライン2にダイシング加工が施された後、放射方向に拡張されることにより分割予定ライン2に沿って分断され、各チップ3に分割される。この場合のダイシング加工は、ウェーハ1を個々のチップ3に分割するための予備加工であり、切削加工やレーザ加工といった手段が採用される。
【0019】
ダイシング加工のうちの切削加工としては、表面側の分割予定ライン2に溝を形成するハーフカットや、DAF4を残してウェーハ1のみを表面側から完全に切断する加工、あるいはDAF4をハーフカット状態としてウェーハ1を完全に切断する加工等が考えられる。なお、ウェーハ1の分割予定ライン2を表面側からハーフカットしてから裏面を研削する先ダイシング加工を行う場合もある。
【0020】
一方、レーザ加工は、透過性を有するパルスレーザ光線をウェーハ1の内部に集光点を合わせて照射することにより、分割予定ライン2に沿って変質層を形成して分割予定ライン2の強度を低下させる加工や、分割予定ライン2に沿ったアブレーション加工等が挙げられる。
【0021】
上記テープ6は、常温では伸縮性を有し、かつ、所定温度(例えば70℃)以上に加熱されると収縮する性質を有する基材の片面に、粘着層が形成されたものが用いられる。基材としては、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン等の合成樹脂シートが挙げられる。また、粘着層を形成する粘着材は、紫外線の照射を受けることにより硬化する紫外線硬化型の樹脂が用いられる。すなわちテープ6は紫外線硬化型の粘着テープである。
【0022】
上記ダイシング加工が施されたウェーハ1は、次に説明するワーク分割装置10で上記のようにテープ6が拡張されることにより、分割予定ライン2が切断されて個々のチップ3に分割されるとともに、DAF4もチップ3ごとに破断される。これにより、裏面にDAF4が貼着された多数のチップ3(DAF付きチップ)が得られる。
【0023】
(2)ワーク分割装置の構成および動作
以下、図2図9を参照して、ワーク分割装置10の構成および動作を説明する。
図2はワーク分割装置10の全体を示しており、符号15で示す装置台上には、カセット台20、分割手段30、加熱手段40、洗浄手段50、UV(紫外線)照射手段60が所定箇所に配設されている。また、装置台15上には、ウェーハ付きフレーム7を搬送する第1〜第3搬送手段71〜73も配設されている。
【0024】
ウェーハ付きフレーム7は、図2に示すカセット21内に、ウェーハ1を上側にしてチップ3の表面を露出した状態で収納される。カセット21には、多数のウェーハ付きフレーム7が水平な状態で上下方向に積層されて収納される。多数のウェーハ付きフレーム7が収納されたカセット21は、カセット台20に着脱可能にセットされる。カセット台20は昇降可能なエレベータ式であり、昇降することによってカセット21内の1つのウェーハ付きフレーム7が所定の搬出位置に位置付けられるようになっている。
【0025】
該搬出位置に位置付けられたウェーハ付きフレーム7のフレーム5は第1搬送手段71によってY方向奥側に引き出され、一対のY方向に延びる断面L字状の第1ガイドレール11上に架け渡された状態で載置される。第1搬送手段71はクランプでフレーム5を把持し、Y方向に移動することでウェーハ付きフレーム7を第1ガイドレール11上に搬送する。第1ガイドレール11はX方向に同期して互いに近付いたり離れたりするように動き、ウェーハ付きフレーム7が載置されてから互いに近付くことにより、フレーム5の端縁に係合してウェーハ付きフレーム7を所定の搬送開始位置に位置決めするものである。
【0026】
第1ガイドレール11で搬送開始位置に位置決めされたウェーハ付きフレーム7は、次いで、水平旋回するアーム72aの先端に複数の負圧吸着式の吸着パッド72bが取り付けられた第2搬送手段72により、中継ステージ16に設けられたもう一方の一対の第2ガイドレール12上に載置される。第2搬送手段72では、吸着パッド72bの下面にフレーム5が吸着、保持され、アーム72aが旋回することにより、ウェーハ付きフレーム7が第2ガイドレール12上に移される。第2ガイドレール12上でウェーハ付きフレーム7はX方向の位置決めがなされ、次いでウェーハ付きフレーム7は、第1搬送手段71と同様の構成の第3搬送手段73によって、分割手段30に搬送される。
【0027】
(2−1)分割手段による分割工程
分割手段30は、図2のカバー30A内に配設されており、図3および図4に示すように、上下に配された水平なフレーム押さえプレート31およびフレーム載置プレート32と、円筒状の突き上げ部材33とを備えている。各プレート31,32は正方形状であって、中央には、径が等しい円形状の開口部31a,32aが互いに同心状に形成されている。これら開口部31a,32aの径は、フレーム5の内径程度に設定されている。フレーム押さえプレート31は固定状態とされており、一方、フレーム載置プレート32は、複数のエアシリンダ34によって昇降させられる。エアシリンダ34は上下方向に伸縮するピストンロッド34aを有しており、これらピストンロッド34aの先端に、フレーム載置プレート32が固定されている。
【0028】
突き上げ部材33は、上記各開口部31a,32aと同心状に配設されている。この突き上げ部材33は、フレーム5や開口部31a,32aの内径よりも小さく、かつ、テープ6の弛み領域6aに対応する径寸法を有する円筒状のもので、昇降機構35により軸方向に沿って昇降するようになされている。昇降機構35は、図4に示すようにエアシリンダ36を有しており、このエアシリンダ36が作動することにより突き上げ部材33が昇降する。エアシリンダ36によって突き上げ部材33が上昇した際に、テープ6が上方に突き上げられるようになっている。突き上げ部材33の上端縁には、テープ突き上げ時にテープ6との摩擦を緩和する複数のコロ部材33aが回転自在に取り付けられている。
【0029】
また、図3に示すように、フレーム載置プレート32のY方向奥側には、ウェーハ1の裏面に貼着されているDAF4を冷却するための冷却ノズル(冷却手段)37が配設されている。この冷却ノズル37は、Y方向に伸縮するように設けられたパイプ38の先端に設けられている。パイプ38が縮小している時には、冷却ノズル37はフレーム載置プレート32の外側に位置付けられる。そしてパイプ38が伸びると、冷却ノズル37は突き上げ部材33の直上を移動して該突き上げ部材33の中心上方である冷却位置に位置付けられる。パイプ38は、例えば10℃以下に冷却されたエア等の冷却流体の供給源に接続されており、該冷却流体が冷却ノズル37から上方に噴出するようになっている。
【0030】
上記構成の分割手段30により、次のようにしてウェーハ1が多数のチップ3に分割される。
まず、図4(a)に示すように、フレーム載置プレート32はフレーム押さえプレート31から下方に離れた受け取り位置に位置付けられており、このフレーム載置プレート32に、上記第3搬送手段73からウェーハ付きフレーム7のフレーム5が載置される。フレーム5は開口部32aと同心状に載置され、ウェーハ1は開口部32aの中で浮いた状態となる。
【0031】
次に、図4(b)に示すように、フレーム載置プレート32が上昇してフレーム5がフレーム押さえプレート31とフレーム載置プレート32に挟まれ、その高さ位置に保持される。そして、縮小していた上記パイプ38が伸びて冷却ノズル37が冷却位置に位置付けられる。冷却位置に位置付けられた冷却ノズル37はテープ6の下面に対向し、この状態で、冷却ノズル37から冷却流体を上方に噴出させる。すると、テープ6とともにDAF4の全体が冷却され、硬化した状態になる。続いて、図4(c)に示すように、突き上げ部材33が上昇して、コロ部材33aが回転しながらテープ6の弛み領域6aを押し上げることにより、ウェーハ1がテープ6とともに所定の拡張位置まで突き上げられる。テープ6の突き上げ方向はウェーハ1の表面に直交する上方であり、ウェーハ1は固定状態のフレーム5から上方に離反する。
【0032】
拡張位置まで突き上げられたテープ6は、放射方向に引っ張られる力を受けて拡張する。そしてテープ6が放射方向に拡張するに伴い、ウェーハ1は、ダイシング加工が施されている分割予定ライン2に沿って分断され、個々のチップ3に分割される。また、ウェーハ1の裏面に貼着されているDAF4も、個々のチップ3に貼着した状態で、チップ3ごとに破断される。したがってテープ6上には、多数のDAF付きのチップ3が、互いに僅かに離間した状態で貼着した状態となっている。DAF4は、粘性があって分割しにくいものであるが、上記のように冷却ノズル37から噴出された冷却流体により冷却されて硬化した状態で拡張されるため、破断しやすく、確実に分割される。
【0033】
(2−2)加熱手段によるテープ弛み領域の収縮処理工程
ウェーハ1が多数のチップ3に分割されたら、図4(d)に示すように突き上げ部材33が下降する。そしてフレーム載置プレート32が図4(a)に示す受け取り位置まで下降し、続いて、ウェーハ付きフレーム7は、第3搬送手段73によってフレーム載置プレート32から上記第2ガイドレール12上に引き出され、次いで第2搬送手段72によって加熱手段40に搬送される。
【0034】
加熱手段40は、図5および図7に示すように、水平に配設されるフレーム載置プレート42と、上記中継ステージ16の下方に形成された空間17に収容されるフレーム押さえプレート41と、負圧吸着式の吸着テーブル48と、円筒状の突き上げ部材43と、ヒータ49とを備えている。
【0035】
正方形状のフレーム載置プレート42は、上記分割手段30のフレーム載置プレート32と同様の構成であって、フレーム5の内径と同等の径の開口部42aを有しており、エアシリンダ44のピストンロッド44aが伸縮することによって昇降するようになっている。第2搬送手段72によって加熱手段40に搬送されたウェーハ付きフレーム7のフレーム5は、フレーム載置プレート42に載置される。フレーム載置プレート42の上面の四隅には、X方向に動くことによってフレーム5の位置を調整して、ウェーハ1を後述する吸着テーブル48の吸着部482と同心状に位置付けるセンタリングガイド42bが設けられている。
【0036】
突き上げ部材43は、フレーム載置プレート42の開口部42aと同心状に配設されている。この突き上げ部材43は、上記分割手段30の突き上げ部材33と同様の構成であって、テープ6の弛み領域6aに対応する径寸法を有しており、昇降機構45が備えるエアシリンダ46(図7参照)により、軸方向に沿って昇降するようになされている。突き上げ部材43の上端縁には、テープ突き上げ時にテープ6との摩擦を緩和する複数のコロ部材43aが回転自在に取り付けられている。
【0037】
突き上げ部材43の内側に、円板状の吸着テーブル48が同心状に配設されている。この吸着テーブル48は、図6に示すように、ステンレス等の中実材料からなる円板状の枠体481と、内部に無数の気孔を有する多孔質体からなる吸着部482とを備えている。枠体481の上面の大部分は、外周縁部481aを残して円形の凹所481bが同心状に形成されており、この凹所481bに吸着部482が嵌合されている。吸着部482は、ウェーハ1とほぼ同径で、水平な上面は枠体481の外周縁部481aの上面と面一となっており、この吸着部482の上面に、ウェーハ1がテープ6を介して同心状に載置される。
【0038】
枠体481の中心には、吸着部482に連通して下面に開口する空気通路481cが形成されており、この空気通路481cの開口には、配管483を介して、空気を吸引する真空ポンプ等からなる吸引源484が接続されている。吸引源484が運転されると吸着部482内が負圧となり、吸着部482に載置されるウェーハ1がテープ6を介して吸着部482に吸着して保持されるようになっている。
【0039】
吸着テーブル48は、上記昇降機構45によって昇降させられる。この昇降機構45は、図7に示すように、突き上げ部材43を昇降させる上記エアシリンダ46の他に、吸着テーブル48を昇降させる複数のエアシリンダ47を備えており、上下方向に伸縮するピストンロッド47aの先端に、吸着テーブル48が固定されている。
【0040】
フレーム押さえプレート41はフレーム載置プレート42とほぼ同寸法の矩形状であって、中央には、フレーム載置プレート42の開口部42aと同寸法の円形状の開口部41aが形成されている。図5に示すように、フレーム押さえプレート41は、通常は中継ステージ16の下方の空間17に収容されており、エアシリンダ411のピストンロッド411aの伸縮作用により、空間17の開口部17aを通過して、フレーム載置プレート42の上方に対して進退するように設けられている。フレーム押さえプレート41が進出した時、該フレーム押さえプレート41は、フレーム載置プレート42の上方に、該フレーム載置プレート42と平行で、開口部41aが開口部42aと同心状になるよう位置付けられる。フレーム押さえプレート41の四隅には、上記センタリングガイド42bが挿入される長孔41bが形成されている。
【0041】
ヒータ49は、吸着テーブル48の上方に配設されている。このヒータ49は、上下方向に延び、図示せぬエアシリンダで上下方向に伸縮するロッド491と、このロッド491の下端に固定されたフランジ部492と、このフランジ部492の下面の外周縁部に固定された環状の加熱体493とを有するものである。加熱体493はテープ6の弛み領域6aに対応した径寸法を有しており、吸着テーブル48と同心状に配設されている。加熱体493は、例えば赤外線を下方に向けて照射して加熱する形式のものが好適に用いられる。
【0042】
上記構成の加熱手段40により、次のようにしてテープ6の弛み領域6aが収縮処理される。
まず、第2搬送手段72からウェーハ付きフレーム7のフレーム5がフレーム載置プレート42に載置され、センタリングガイド42bが作動してウェーハ1(以下のウェーハ1とは多数のチップ3に分割済みのウェーハのことである)が吸着テーブル48と同心状に位置付けられる。次いで、フレーム押さえプレート41がフレーム載置プレート42の上方に進出した後、フレーム載置プレート42が上昇し、図7(a)に示すようにフレーム5がフレーム押さえプレート41とフレーム載置プレート42に挟まれて固定される。この時、センタリングガイド42bはフレーム押さえプレート41の長孔41bを通過してフレーム押さえプレート41に干渉せず、フレーム5を確実に挟むことができる。
【0043】
次に、図7(b)に示すように、突き上げ部材43と吸着テーブル48が、コロ部材43aと吸着部482の上面の高さ位置を一致させた状態で同期して上昇し、これによってウェーハ1がテープ6とともに所定の拡張位置まで突き上げられる。なお、この時のテープ6の拡張は突き上げ部材43のみを上昇させて行ってもよい。
【0044】
拡張位置まで突き上げられたテープ6は、放射方向に引っ張られる力を受け、ウェーハ1とともに再び拡張させられる。続いて吸引源484を運転して、テープ6の裏面に接触している吸着部482を負圧とする。すると、拡張状態のウェーハ1がテープ6を介して吸着部482に吸着して保持される。
【0045】
次に、図7(c)に示すように突き上げ部材43が下降してテープ6から離れ、また、吸着テーブル48が、フレーム5を保持している吸着部482の上面がフレーム5とほぼ同じ高さ位置になるまで下降する。これにより、テープ6の弛み領域6aは弛んだ状態となる。次いで、図8(a)に示すようにヒータ49を下降させて加熱体493を弛み領域6aの直上に近接させ、該加熱体493を発熱させて弛み領域6aを加熱する。このようにしてヒータ49により加熱された弛み領域6aは、図8(b)に示すように収縮する。弛み領域6aの加熱は、拡張されたテープ6を吸着テーブル48の吸着部482に吸着して保持した状態のまま行われる。したがって、テープ6の、吸着部482に保持されている部分、すなわち弛み領域6aの内側のウェーハ1が貼着されている円形部分は収縮が生じない。このため、テープ6の拡張によって分割されたDAF付きチップ3の間隔が確保され、隣り合うチップ3やDAF4どうしが接触することが起こらない。
【0046】
テープ6の弛み領域6aが十分に収縮する所定加熱時間が経過したら、加熱体493の発熱を停止し、ヒータ49を上昇させてテープ6から退避させ、また、吸引源484の運転を停止する。吸引源484が停止しても弛み領域6aが収縮しているので、テープ6の吸着部482に保持されていた拡張部分、およびウェーハ1は、そのまま拡張状態が保持される。
【0047】
加熱手段40では、この後、フレーム載置プレート42が下降し、フレーム押さえプレート41が中継ステージ16の下方の空間17に退避する。また、必要に応じて吸着テーブル48が下降してテープ6から離れてもよい。
【0048】
(2−3)洗浄手段によるスピン洗浄工程
上記のようにしてテープ6の弛み領域6aが収縮させられたウェーハ付きフレーム7は、次に、第2搬送手段72によって洗浄手段50に搬送され、該洗浄手段50で水洗、乾燥処理される。
【0049】
洗浄手段50は、図示せぬ回転駆動機構によって回転させられる負圧吸着式のスピンナテーブル51を備えている。ウェーハ付きフレーム7は、テープ6側がスピンナテーブル51に吸着、保持され、ウェーハ1が露出した状態とされる。スピンナテーブル51の外周部には、複数のクランプ52が、周方向等分箇所に配設されている。これらクランプ52は、スピンナテーブル51が所定回転数で回転した時、遠心力によってフレーム5を把持するように作動する。また、洗浄手段50は、スピンナテーブル51に保持されたウェーハ1に、洗浄水および乾燥エアを噴出する噴出部(図示略)を有している。
【0050】
この洗浄手段50では、ウェーハ付きフレーム7を吸着、保持したスピンナテーブル51が所定の洗浄速度で回転し、回転するウェーハ1に上記噴出部から洗浄水が噴出されてウェーハ1が水洗される。所定の水洗時間が経過したら洗浄水の供給が停止されるが、スピンナテーブル51の回転は続行され、ウェーハ1から水分が遠心力で吹き飛ばされるとともに乾燥エアが噴出部から吹き付けられ、ウェーハ1が乾燥処理される。所定の乾燥時間が経過したら、スピンナテーブル51の回転および乾燥エアの噴出が停止される。
【0051】
(2−4)UV照射工程
ウェーハ1の洗浄、乾燥を終えたら、ウェーハ付きフレーム7は、第2搬送手段72によって第1ガイドレール11上に載置されてから、第1搬送手段71によってUV照射手段60に搬送される。
【0052】
UV照射手段60は、図2のカバー60A内に配設されており、図9に示すように、ガラス台61と、このガラス台61の下方に配設された複数のUVランプ62とを備えている。ウェーハ付きフレーム7は、第1ガイドレール11上から、第1搬送手段71によりY方向奥側に押されてガラス台61上に載置される。ウェーハ付きフレーム7がガラス台61上に載置されるとテープ6の下面にUVランプ62から紫外線(紫外光)が照射され、テープ6の、紫外線硬化型樹脂からなる粘着層が硬化する。このように粘着層を硬化させると、分割された多数のチップ3をテープ6から剥離させやすくなり、後の工程で行われるチップ3のボンディング作業を円滑に進めることが可能となる。
【0053】
紫外線照射によりテープ6の粘着層が硬化されたら、ウェーハ付きフレーム7は第1搬送手段71で把持されて第1ガイドレール11上に引き出され、一旦第1ガイドレール11上に載置される。次いで第1搬送手段71がやや上昇してからUV照射手段60側へ戻り、この第1搬送手段71によってウェーハ付きフレーム7は押されて、カセット21内に収納される。
【0054】
(3)実施形態の作用効果
以上がワーク分割装置10の動作であり、この一連の動作が、カセット21内の全てのウェーハ付きフレーム7に対して順次遂行される。そして、カセット21内のウェーハ1が全て分割済みのものになったら、カセット21が次のボンディング工程に移される。ボンディング工程では各チップ3がテープ6から剥離され、ダイボンディングフレームに対し加熱することによりボンディングされる。
【0055】
上記実施形態のワーク分割装置10によれば、分割手段30でウェーハ1を分割してから行うテープ6の弛み除去工程、ウェーハ1の洗浄工程、およびUV照射工程を、それぞれ加熱手段40、洗浄手段50およびUV照射手段60で行うことができる。従来では、テープ6の弛み除去工程、ウェーハ1の洗浄工程、およびUV照射工程をそれぞれ行う専用の装置を別途用意し、各装置間でウェーハ付きフレーム7を搬送していた。
【0056】
しかしながら本装置10では、これら工程を一連の動作で次々と行うことができるため、それら専用の装置を別途用意する必要がなくなる。このため、工程間でウェーハ付きフレーム7を搬送するといった煩雑な作業から解放され、各工程を円滑に遂行することができ、効率的に作業を行うことが可能となって生産性が向上する。また、省スペース化が図られるとともに、コストの低減にも寄与する。
【0057】
なお、上記実施形態では、DAF4を分割しやすくするための冷却ノズル37を備えた分割手段30でウェーハ1を分割しているが、裏面にDAF4が貼着されておらず冷却の必要がないウェーハ1を分割する場合もある。その場合には、分割手段30への搬送を省略して、加熱手段40により、ウェーハ1の分割とテープ6の弛み領域6aの加熱収縮の両方を行ってもよい。加熱手段40によるウェーハ1の分割は、図4(a)〜(b)に示すように、フレーム押さえプレート41とフレーム載置プレート42でウェーハ付きフレーム7のフレーム5を固定した状態から、突き上げ部材43を上昇させてテープ6を突き上げて拡張することにより行うことができる。
【0058】
また、分割手段30に設ける冷却ノズル37の配設形態は任意であり、上記のように水平移動して突き上げ部材33の上方に対し進退するように設ける他には、例えば突き上げ部材33の内部の中央部に固定するなどが考えられる。また、DAF4の冷却方法としては、ノズルから冷却流体を吹き付ける形式ではなく、熱伝導等による冷却方法を採用してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…ウェーハ(ワーク)、2…分割予定ライン、3…チップ、5…フレーム、5a…フレームの開口部、6…粘着テープ、7…ウェーハ付きフレーム、10…ワーク分割装置、20…カセット台(カセット載置部)、21…カセット、30…分割手段、33…突き上げ部材、33a…コロ部材、37…冷却ノズル(冷却手段)、40…加熱手段、50…洗浄手段、60…UV照射手段。
図1
図2
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図9