特許第5792275号(P5792275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792275
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】ポリマー材料
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20150917BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20150917BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   C08G61/12
   C08L65/00
   C09K11/06
【請求項の数】7
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2013-501255(P2013-501255)
(86)(22)【出願日】2011年3月28日
(65)【公表番号】特表2013-523912(P2013-523912A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】US2011000557
(87)【国際公開番号】WO2011119239
(87)【国際公開日】20110929
【審査請求日】2012年12月27日
(31)【優先権主張番号】61/318,114
(32)【優先日】2010年3月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500294958
【氏名又は名称】ヒタチ ケミカル リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】シュエ,ツイホワ
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0017571(US,A1)
【文献】 米国特許第06350431(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0221762(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/00−61/12
C08L 65/00−65/04
C09K 11/00−11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のモノマー(1)、(2)、または(3)と、
第2のモノマー(4)、(5)、(6)、または(7)と
のコポリマーを含み、
前記第1のモノマー(1)が次式で表される化合物
【化1】

を含み、
前記第1のモノマー(2)が次式で表される化合物
【化2】

を含み、
前記第1のモノマー(3)が次式で表される化合物
【化3】

を含み、
はOH、Br、I、Cl、SH、COOH、NH、N(R(Rは同一であっても異なっていてもよい)、SR、SRCOOH、SRNH、SRSOH、SRSH、SROH、マレミド、またはNHSエステルであり、
XはC〜Cアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールであり、
はアルキル、アリールまたはヘテロアリール、置換アリールまたは置換ヘテロアリールであり、
nが0、1、または1より大きい整数であり、
前記第2のモノマー(4)が次式で表される化合物
【化4】

を含み、
前記第2のモノマー(5)が次式で表される化合物
【化5】

を含み、
前記第2のモノマー(6)が次式で表される化合物
【化6】

を含み、
前記第2のモノマー(7)が次式で表される化合物
【化7】

を含み、
前記化学式4〜7中、RおよびRは、次式で表される化合物
【化8】

である、ポリマー材料。
【請求項2】
次式
【化9】

(式中、RおよびRは、Hまたは次式で表される化合物
【化10】

である。)
で表される第3のモノマー(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)、(17)、(18)、または(19)をさらに含む、請求項1に記載のポリマー材料。
【請求項3】
少なくとも1つの機能性単位をさらに含む、請求項1又は2に記載のポリマー材料。
【請求項4】
少なくとも1つの前記機能性単位が、炭水化物、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、抗体、抗原、酵素、細菌、レドックス分子、ホスト分子、ゲスト分子、ハプテン、脂質、微生物、糖、およびアプタマーのうちの1種または複数を含む、請求項に記載のポリマー材料。
【請求項5】
次式で表される化合物:
【化11】

(式中、
はOH、Br、I、Cl、SH、COOH、NH、N(R(Rは同一であっても異なっていてもよい)、SR、SRCOOH、SRNH、SRSOH、SRSH、SROH、マレミド、またはNHSエステルであり、
XはC〜Cアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールであり、
はアルキル、アリールまたはヘテロアリール、置換アリール、置換ヘテロアリールであり、
Yは炭水化物、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、抗体、抗原、酵素、細菌、レドックス分子、ホスト分子、ゲスト分子、ハプテン、脂質、微生物、糖、およびアプタマーのうちの1種または複数である。)
のうち少なくとも1つを含む、請求項に記載のポリマー材料。
【請求項6】
請求項1又は2に定義されたモノマー(1)〜(19)のうちの1つの自己重合生成物を含む、ポリマー材料。
【請求項7】
前記ポリマー材料の吸収スペクトルが、少なくとも600nmの吸収極大波長を含む、請求項に記載のポリマー材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、米国特許法第119条の下で、全内容が参照により本明細書に組み込まれる、2010年3月26日に出願されたWATER SOLUBLE NEAR INFRARED SENSING POLYMERS WITH LOW BAND GAPSと題する米国仮特許出願第61/318,114号の優先権を主張する。
【0002】
[発明の分野]
本開示は、ポリマー組成物、ならびに関連する方法および使用に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書において、文書、行為または知識項目に言及またはそれを考察する場合、こうした言及または考察は、文書、行為、もしくは知識項目、またはこれらの任意の組み合わせが、優先日において、公的に利用可能であり、もしくは公知であり、もしくは一般常識の一部であったこと、さもなければ、適用可能な法規定の下で先行技術を構成していること、あるいは、本明細書が係るいずれかの問題を解決するための試みに関連していることが既知であることを認めるものではない。
【0004】
近赤外(NIR)蛍光色素が、近年注目を集めている。しかし、NIR範囲におけるポリマーおよびその使用の利点にもかかわらず、現在利用できるNIR色素はすべて単一の反応部位を有する小分子である。NIRポリマー、特に、複数の反応部位および低バンドギャップを有する水溶性のNIRポリマーは、いまだに不足している。水溶性は、多くの用途に使用される色素にとって有益な特性である。NIRポリマーをかかる用途に使用することが、水溶性の欠如によって阻まれている。
【0005】
水溶性の分子を作製する従来の方法は、その分子構造に電荷を導入することである。電荷を導入することによって、荷電分子であるすべての市販の水溶性色素のように、分子の水溶性は相当に向上する。しかし、分子に電荷が存在すると、複雑な生物試料において、非特異的な静電相互作用に起因する潜在的な干渉反応が起こる可能性がある。
【0006】
よって、当分野には、全体的な電荷的中性、水溶性および機能性を示す、低バンドギャップのNIRポリマーが必要である。
【0007】
本発明の開示を容易にするために、従来技術の特定の側面を考察してきたが、出願人はこうした技術的側面を否定するものでは決してなく、特許請求する本発明が、本明細書で考察する従来の技術的側面のうちの1つまたは複数を包含する、または含むことができることを企図している。
【発明の概要】
【0008】
本発明のある種の態様によれば、低バンドギャップ、電荷的中性、水溶性、および機能性を一体化したNIRポリマーが開発された。こうしたポリマーは、そのNIR光学特性および中性を保持しながら極めて良好な水溶性を有し、それにより、こうしたポリマーは、高親水性または水溶性が必要とされる多くの用途での使用に適するものとなる。
【0009】
ある種の態様によれば、本発明は、NIR色素の利点およびポリマーの多価結合機能、ならびに高水溶性を一体化した新規材料を提供し、よって、数々の用途での使用に適する汎用的かつ強力なプラットフォーム(platform)をもたらす。本発明の材料は、約0.8eVから約1.7eVの間の低バンドギャップ、およびNIR光学特性も特徴とすることができる。
【0010】
一態様によれば、本発明は、以下に示す一般式
【化1】
(式中、
は置換もしくは非置換の、共役モノマー、短鎖共役ブロックオリゴマー、アルケン、またはアルキンであり、
は側鎖の有無を問わず、置換もしくは非置換の、モノマー、短鎖共役ブロックオリゴマー、アルケン、またはアルキンであり、
次式
【化2】
で表される構造はオリゴ−もしくはポリ−エチレングリコール、分岐の有無を問わずアルキル鎖、置換基の有無を問わず共役鎖であり、
次式
【化3】
で表される構造は単結合、二重結合、または三重結合であり、
nは1より大きい任意の整数であり、
およびRは任意の官能基、例えば、限定はされないが、H、CH、アルケン、アルキン、OH、Br、Cl、I、F、SH、COOH、NH、CHO、マレイミド、NHSエステル、金属錯体を形成できる任意の複素環化合物、他の適用可能な官能基、および生体分子、例えば、限定はされないが、炭水化物、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、抗体、抗原、酵素、細菌、レドックス分子、ホスト分子、ゲスト分子、ハプテン、脂質、微生物、アプタマー、糖などであり、
モノマーMおよびMは、限定はされないが、次式
【化4】
で表される0個、1個、もしくは複数の側鎖を有することができ、
およびMにおける次式
【化5】
で表される側鎖は、限定はされないが、同一であっても異なっていてもよく、または、一方の側鎖が少なくとも1つの反応性基を有し、かつ他方の側鎖が反応性基を有しておらず、
およびRは、限定はされないが、同一であっても異なっていてもよく、または、一方は官能基であり、かつ他方は非官能基である。)
の新規材料を提供する。
【0011】
一態様によれば、本発明は
第1のモノマー(1)、(2)、または(3)と、
第2のモノマー(4)、(5)、(6)、または(7)と
のコポリマーを含み、
前記第1のモノマー(1)が次式で表される化合物
【化6】
を含み、
前記第1のモノマー(2)が次式で表される化合物
【化7】
を含み、
前記第1のモノマー(3)が次式で表される化合物
【化8】
を含み、
前記化学式6〜8中、RはOH、Br、I、Cl、SH、COOH、NH、N(R(Rは同一であっても異なっていてもよい)、SR、SRCOOH、SRNH、SRSOH、SRSH、SROH、マレミド、またはNHSエステルであり、
XはC〜Cアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールであり、
はアルキル、アリールまたはヘテロアリール、置換アリールまたは置換ヘテロアリールであり、
前記第2のモノマー(4)が次式で表される化合物
【化9】
を含み、
前記第2のモノマー(5)が次式で表される化合物
【化10】
を含み、
前記第2のモノマー(6)が次式で表される化合物
【化11】
を含み、
前記第2のモノマー(7)が次式で表される化合物
【化12】
を含み、
前記化学式9〜12中、RおよびRは、Hまたは次式で表される化合物
【化13】
である、ポリマー材料を提供する。
【0012】
さらなる態様によれば、本発明は、直前に記述したポリマー材料を含み、かつ、次式
【化14】
(式中、RおよびRは、Hまたは次式で表される化合物
【化15】
である。)
で表される第3のモノマー(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)、(17)、(18)、または(19)をさらに含むポリマーを提供する。
【0013】
別の態様によれば、本発明は
第1のモノマー(8)、(9)、または(10)と、
第2のモノマー(4)、(5)、(6)、または(7)と
のコポリマーを含み、
前記第1のモノマー(8)が次式で表される化合物
【化16】
を含み、
前記第1のモノマー(9)が次式で表される化合物
【化17】
を含み、
前記第1のモノマー(10)が次式で表される化合物
【化18】
を含み、
前記化学式16〜18中、RはOH、Br、I、Cl、SH、COOH、NH、N(R(Rは同一であっても異なっていてもよい)、SR、SRCOOH、SRNH、SRSOH、SRSH、SROH、マレミド、またはNHSエステルであり、
XはC〜Cアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールであり、
R'はアルキル、アリール、ヘテロアリール、置換アリール、または置換ヘテロアリールであり、
前記第2のモノマー(4)が次式で表される化合物
【化19】
を含み、
前記第2のモノマー(5)が次式で表される化合物
【化20】
を含み、
前記第2のモノマー(6)が次式で表される化合物
【化21】
を含み、
前記第2のモノマー(7)が次式で表される化合物
【化22】
を含み、
前記化学式19〜22中、RおよびRは、Hまたは次式で表される化合物
【化23】
である、ポリマー材料を提供する。
【0014】
さらに別の態様によれば、本発明は
第1のモノマー(8)、(9)、または(10)と、
第2のモノマー(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)、(17)、(18)または(19)と
のコポリマーを含み、
前記第1のモノマー(8)が次式で表される化合物
【化24】
を含み、
前記第1のモノマー(9)が次式で表される化合物
【化25】
を含み、
前記第1のモノマー(10)が次式で表される化合物
【化26】
を含み、
前記化学式24〜26中、RはOH、Br、I、Cl、SH、COOH、NH、N(R(Rは同一であっても異なっていてもよい)、SR、SRCOOH、SRNH、SRSOH、SRSH、SROH、マレミド、またはNHSエステルであり、
XはC〜Cアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールであり、
はアルキル、アリール、ヘテロアリール、置換アリールまたは置換ヘテロアリールであり、
前記第2のモノマー(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)、(17)、(18)または(19)が次式
【化27】
(式中、RおよびRは、Hまたは次式で表される化合物
【化28】
である。)
で表される、ポリマー材料を提供する。
【0015】
本発明は、上で考察した先行技術の問題および不具合の1つまたは複数に対処することができる。しかし、本発明は、幾つもの技術分野において、他の問題および不具合への対処に有用であることを実証することができる、または利益および利点をもたらすことができることを企図している。したがって、特許請求される本発明は、本明細書に考察される問題および不具合のいずれかに対処することに限られると必ずしも解釈されるべきではない。
【0016】
本発明のこれらのおよび他の特徴を、ある種の実施形態の図面を参照してこれから記述するが、これらの図面は、本発明を図示することを意図しており、限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の原理に従って形成されたポリマー材料の、様々な波長でのエネルギー吸収レベルを示す図である。
図2】本発明の原理に従って形成されたポリマー材料の溶解性を示す図である。
図3】本発明の原理に従って形成された別のポリマー材料の溶解性を示す図である。
図4】本発明の原理に従って形成されたポリマー材料の、様々な波長でのエネルギー吸収レベルを示す図である。
図5】本発明の原理に従って形成されたポリマー材料の、磁気ビーズとのインキュベーションの結果を示す図である。
図6】比較材料の、磁気ビーズとのインキュベーションの結果を示す図である。
図7】本発明の原理に従って形成された材料と比較ポリマー材料の、磁気ビーズとのインキュベーションの結果を合わせて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のさらなる態様、特徴および利点は、以降の詳細な記述から明らかとなろう。
【0019】
本発明のポリマーまたはポリマー前駆物質は、幾つかの代替法に従って構成または合成されてもよい。例えば、表1のモノマーのうちの1つと、表2のモノマーのうちの1つとを共重合させることによって、ポリマーを形成することができる。また、表1のモノマーのうちの1つと、表2のモノマーのうちの1つと、表4のモノマーのうちの1つとを共重合させることによって、ポリマーを形成することができる。ポリマー前駆物質も、表3のモノマーのうちの1つ、表2のモノマーのうちの1つおよび/または表4のモノマーのうちの1つを共重合させることによって合成することができる。あるいは、ポリマー前駆物質は、表1、表2、表3、または表4からのモノマーを自己重合させることによって合成することができる。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0020】
上述のポリマー前駆物質は、生体分子などの任意の適切な機能性単位をその反応部位に結合させることによって、機能化することができる。該ポリマーは、前駆物質の状態であっても、あるいは機能化後であっても、水溶性である。機能化に適した生体分子の例には、限定はされないが、炭水化物、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、抗体、抗原、酵素、細菌、レドックス分子、ホスト分子、ゲスト分子、ハプテン、脂質、微生物、アプタマー、糖などを挙げることができる。ポリマー前駆物質および適切な生体分子を有する機能化ポリマーの具体例を幾つか表5に示す。
【表5】
【0021】
該ポリマーによって吸収されるエネルギーの波長は、約700〜1100nmまたは約1100nmを超え、吸収は、重合度を調整することによって調整することができる。該ポリマーのバンドギャップは、概して約0.8eVから約1.7eVの間である。幾つかの場合では、バンドギャップは、約1.1eVから約1.4eVの間である。
【0022】
本発明の概念を、特定のポリマーおよびその形成のための典型的技法の、以下の非限定的例を参照することによってこれよりさらに記述する。さらなるポリマーおよびさらなる形成技法も本発明によって包含されると理解されたい。
【実施例】
【0023】
(実施例1:ポリマー1の合成)
【化29】
以下のスキーム1は、ベンゾ[1,2,5]チアジアゾールから出発する4,7−ジブロモ−5,6−ジアミン−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール4の合成を図示する。
【化30】
【0024】
ベンゾチアジアゾール(10.0g、73.4mmol)とHBr(150mL、48%)とを500mLの三つ口丸底フラスコに添加した。HBr(100mL)中にBr(35.2g、220.3mmol)を含有する溶液を、極めてゆっくりと滴下して添加した。Brをすべて添加した後、この溶液を一晩加熱還流した。暗い橙色の固体の沈殿が認められた。この混合物を室温まで冷却し、十分な量のNaHSO飽和溶液を添加して、余分なBrを完全に消費した。この混合物を真空下で濾過し、水で徹底的に洗浄し、真空下で乾燥し、二臭素化生成物2を生じた。これは、それから得た以下の核磁気共鳴(NMR)データによって確認した。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.75 (s, 2H) ppm
【0025】
4,7−ジブロモベンゾ[1,2,5]チアジアゾール2(40g、137mmol)を、発煙硫酸(200ml)と発煙硝酸(200ml)との混合物に、0°Cで少量ずつ添加し、次いで反応混合物を室温で72時間撹拌した。72時間後、この混合物を氷水中に注ぎ、固形物を濾過し、水で数回洗浄し、次いでエタノールで再結晶させ、化合物3を淡黄色の固体として得た。
【0026】
4,7−ジブロモ−5,6−ジニトロ−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール3(10g、26mmol)と微細鉄粉(10g、178mmol)との混合物の酢酸溶液を、薄層クロマトグラフィ(TLC)によって監視して、化合物3が完全に消失するまで80°Cで撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、次いで、NaOHの5%溶液で沈殿させた。この固体を濾過し、水で数回洗浄した。得られた濾過ケークを、温酢酸エチル(EtOAc)に溶解し、次いで濾過して未反応の鉄を除去し、濾液をロータリーエバポレーターで蒸発させて溶媒を除去し、4,7−ジブロモ−5,6−ジアミン−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール4を黄色の固体として得た。これは、それから得た以下の核磁気共鳴(NMR)データによって確認した。1H NMR (500 MHz, DMSO): δ 3.31 (s, 4H) ppm.
【0027】
以下のスキーム2は、1,2−ビス(4−メトキシフェニル)エタン−1,2−ジオンから出発する1,2−ビス(4−(3−ブロモプロポキシ)−フェニル)エタン−1,2−ジオン6の合成を示す。
【化31】
【0028】
1,2−ビス(4−メトキシフェニル)エタン−1,2−ジオン(5g、18.52mmol)をCHClに溶解し、−78°Cに冷却した(再び固形物が生じた)。BBr(8.3m、87.82mmol)を添加し、混合物を放置して室温まで加温し、15時間撹拌した。TLCで調べると、1,2−ビス(4−メトキシフェニル)エタン−1,2−ジオンが完全に消失したことが示された。この反応混合物を氷中に注ぎ、EtOAcにより抽出し、NaCl溶液で洗浄し、MgSO上で乾燥した。溶媒を真空により除去し、残留物をカラムクロマトグラフィにより精製し、化合物5、すなわち1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ジオンを得た。これは、それから得た以下の核磁気共鳴(NMR)データによって確認した。1H NMR (500 MHz, DMSO): δ 10.8 (s, 2H), 7.71 (d, J=8.8 MHz, 4H), 6.90 (d, J=8.8 MHz, 4H) ppm.
【0029】
1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ジオン(2.6g、10.74mmol)をDMFに溶解し、KCO(5.9g、42.7mmol)を添加し、100mmolの1,3−ジブロモプロパンと、触媒量のKIとを次いで添加した。この混合物を80℃に加熱し、3日間撹拌した。TLCで調べると、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ジオンが消失したことが示された。ジメチルホルムアミド(DMF)を除去し、水を添加し、EtOAcにより抽出し、ブラインで洗浄し、MgSO上で乾燥した。溶媒を除去し、残留物をカラムクロマトグラフィにより精製し、1,2−ビス(4−(3−ブロモプロポキシ)フェニル)エタン−1,2−ジオン6を淡黄色の固体として得た。これは、それから得た以下の核磁気共鳴(NMR)データによって確認した。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.94 (d, J=8.8 MHz, 4H), 6.99 (d, J=8.8 MHz, 4H), 4.20 (t, J=6.2 MHz, 4H), 3.61(t, J=6.2 MHz, 4H), 2.34 (m, 4H) ppm.
【0030】
以下のスキーム3は、モノマー1、すなわち4,9−ジブロモ−6,7−ビス(4−(3−ブロモプロポキシ)フェニル)−[1,2,5]チアジアゾロ[3,4−g]キノキサリンの合成を示す。
【化32】
【0031】
4,7−ジブロモ−5,6−ジアミン−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール4(0.6g、1.23mmol)と1,2−ビス(4−(3−ブロモプロポキシ)フェニル)エタン−1,2−ジオン6(0.4g、1.23mmol)とを反応フラスコ中に入れ、AcOHを添加した。反応混合物を125℃に加熱し、3.5時間撹拌した。TLCで調べると、化合物4および6がいずれも消失したことが示された。この混合物を室温まで冷却し、水中に注ぎ、次いでEtOAcにより抽出し、ブラインで洗浄し、MgSO上で乾燥した。残留物をカラムクロマトグラフィにより精製し、モノマー1、すなわち4,9−ジブロモ−6,7−ビス(4−(3−ブロモプロポキシ)フェニル)−[1,2,5]チアジアゾロ[3,4−g]キノキサリンを橙色の固体として得た。これは、それから得た以下の核磁気共鳴(NMR)データによって確認した。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.77 (d, J=8.8 MHz, 4H), 6.95 (d, J=8.8 MHz, 4H), 4.19 (t, J=6.2 MHz, 4H), 3.64(t, J=6.3 MHz, 4H), 2.37 (m, 4H) ppm.
【0032】
以下のスキーム4は、ポリマー1を生成するための、モノマー1とチオフェン−2,5−ジボロン酸との共重合を示す。
【化33】
【0033】
0.2mmolのモノマー1と、0.2mmolの2,5−チオフェン−ジボロン酸、Pd(PPh(8mg)、KCO(0.25g)とを三つ口フラスコに入れ、脱気し、次いでNを再充填した。テトラヒドロフラン(THF)20mlと水8mlとを添加し、反応混合物を5℃に加熱し、24時間撹拌した。反応物を室温まで冷却し、CHOH中に注いだ。収集したポリマー1をCHOHで数回洗浄し、真空により乾燥し、暗色の固体を得た。
【0034】
ポリマー1の吸収を測定した。そのスペクトルを図1に示す。ポリマー1によるエネルギーの吸収極大波長(maximum wavelength absorption)は1008nmに達することができる。
【0035】
(実施例2:ポリマー2および水溶性グルコース機能化ポリマー2の合成)
【化34】
スキーム5は、化合物7、すなわち1,2−ビス(4−(2−(2−(2−(2−ブロモエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)エタン−1,2−ジオンの合成を示す。
【化35】
【0036】
1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ジオン(2.6g、10.74mmol)をアセトンに溶解し、KCO(5.9g、42.7mmol)を添加し、次いで80mmolの1−ブロモ−2−(2−(2−(2−ブロモエトキシ)エトキシ)エトキシ)エタンを添加した。この混合物を80℃に加熱して、24時間撹拌した。TLCで調べると、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ジオンが消失したことが示された。アセトンを除去し、水を添加し、EtOAcにより抽出し、ブラインで洗浄し、MgSO上で乾燥した。溶媒を除去し、残留物をカラムクロマトグラフィにより精製し、1,2−ビス(4−(2−(2−(2−(2−ブロモエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)エタン−1,2−ジオン7を淡黄色の油として得た。これは、それから得た以下の核磁気共鳴(NMR)データによって確認した。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.94 (d, J=8.8 MHz, 4H), 6.99 (d, J=8.8 MHz, 4H), 4.21 (t, J=4.8 MHz, 4H), 3.88(t, J=4.8 MHz, 4H), 3.80 (t, J= 6.3 MHz, 4H), 3.78-3.66 (m, 16H), 3.46 (t, J=6.3 MHz, 4H) ppm.
【0037】
以下のスキーム6は、モノマー2、すなわち4,9−ジブロモ−6,7−ビス(4−(2−(2−(2−(2−ブロモエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−[1,2,5]チアジアゾロ[3,4−q]キノキサリンの合成を示す。
【化36】
【0038】
4,7−ジブロモ−5,6−ジアミン−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール4(0.6g、1.23mmol)と1,2−ビス(4−(2−(2−(2−(2−ブロモエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)エタン−1,2−ジオン7(0.89g、1.23mmol)とを反応フラスコに入れ、AcOHを添加した。反応混合物を125℃に加熱し、3.5時間撹拌した。TLCで調べると、化合物4および7がいずれも消失したことが示された。この混合物を室温まで冷却し、水中に注ぎ、次いでEtOAcにより抽出し、ブラインで洗浄し、MgSO上で乾燥した。残留物をカラムクロマトグラフィにより精製し、モノマー2、すなわち4,9−ジブロモ−6,7−ビス(4−(2−(2−(2−(2−ブロモエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)−フェニル)−[1,2,5]チアジアゾロ[3,4−g]キノキサリンを橙色の粘着性の油として得た。これは、それから得た以下の核磁気共鳴(NMR)データによって確認した。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.75 (d, J=8.8 MHz, 4H), 6.94 (d, J=8.8 MHz, 4H), 4.20 (t, J=4.8 MHz, 4H), 3.90(t, J=4.8 MHz, 4H), 3.82 (t, J= 6.3 MHz, 4H), 3.76-3.69 (m, 16H), 3.47 (t, J=6.3 MHz, 4H) ppm.
【0039】
以下のスキーム7は、ポリマー2を生成するための、モノマー2とチオフェン−2,5−ジボロン酸との共重合を示す。
【化37】
【0040】
0.2mmolのモノマー2と0.2mmolの2,5−ビス(トリブチルスタンニル)チオフェン、Pd(PPhCl(またはPd(PPh)(8mg)を二つ口フラスコに入れ、脱気し、次いでNを再充填した。THF(またはトルエン)20mlを添加し、反応混合物を85℃に加熱し、24時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、次いでCHOH中に注いだ。収集した沈殿物をCHOHで数回洗浄し、CHCl/CHOHから再結晶させ、再びCHOHで洗浄し、次いで真空により乾燥し、ポリマー2を黒色の固体として得た。
【0041】
以下のスキーム8は、グルコースをポリマー2に結合させることによる、ポリマー2の生体分子誘導体化水溶性ポリマーへの変換の例を示す。
【化38】
【0042】
25mLの一口丸底フラスコ中で、0.2gのポリマー2をDMF8mlに溶解した。0.2gの1−チオ−β−D−グルコース、続いて0.5gの無水KCOを添加した。反応混合物を室温で30時間撹拌し、次いで透析管に移し入れ、水に対して2日間透析した(水交換8回)。透析管中に得られた溶液を、次いで一口丸底フラスコに移し入れた。水を除去した後、グルコース機能化ポリマー2が黒色の固体として得られた。
【0043】
図2に示すように、グルコース機能化ポリマー2は極めて良好な水溶性を有する。左に示すのは、モノマー2のCHCl溶液である。中央に示すのは、上層が水、および下層がポリマー2のCHCl溶液である。右に示すのは、上層がグルコース機能化ポリマー2の水溶液、および下層がCHClである。
【0044】
(実施例3:ポリマー3の合成)
以下のスキーム9は、ポリマー3を生成するための、モノマー3とチオフェン−2,5−ジボロン酸との共重合を示す。
【化39】
【0045】
0.15mmolのモノマー3と0.15mmolの2,5−チオフェン−ジボロン酸、Pd(PPh(8mg)、KCO(0.25g)とを二つ口フラスコに入れ、脱気し、次いでNを再充填した。THF10mlと水5mlとを添加し、反応混合物を85℃に加熱し、24時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、水相を抽出して透析管に移し入れ、水に対して2日間透析した。次いで、透析管中の水溶液を一口丸底フラスコに移し入れ、水を除去し、ポリマー3を暗色の固体として得た。ポリマー3は極めて良好な水溶性を有する。
【0046】
(実施例4:ポリマー4の合成)
以下のスキーム10は、モノマー2から出発する、モノマー4、すなわち6,7−ビス(4−(2−(2−(2−(2−ブロモエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4,9−ビス(5−ブロモチオフェン−2−イル)−[1,2,5]チアジアゾロ[3,4−g]キノキサリンの合成を図示する。
【化40】
【0047】
2.0g(1.98mmol)のモノマー2と40mgのジクロロビス−(トリフェニルホスフィン)パラジウムとを50mLの二つ口丸底フラスコに入れ、脱気し、Nを再充填した。無水THF、続いて2−(トリブチルスタンニル)チオフェン(2.3g、4.96mmol)を添加した。この混合物を加熱還流した。4時間撹拌した後、反応混合物を室温まで冷却し、水中に注ぎ、EtOAcで抽出した。合わせたEtOAc層を水で洗浄し、無水MgSO上で乾燥した。溶媒を除去し、残留物をクロマトグラフィにより精製し、モノマーa、すなわち6,7−ビス(4−(2−(2−(2−(2−ブロモエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4,9−ジ(チオフェン−2−イル)−[1,2,5]チアジアゾロ[3,4−g]キノキサリンを暗青色の粘着性の油として得た。これは、それから得た以下の核磁気共鳴(NMR)データによって確認した。1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ 9.01 (d, J= 4.0 MHz, 2H), 7.81 (d, J=8.8 MHz, 4H), 7.71 (d, J = 5.0 MHz, 2H), 7.34 (m, 2H), 6.98 (d, J=8.8 MHz, 4H), 4.23 (t, J=4.8 MHz, 4H), 3.94(t, J=4.8 MHz, 4H), 3.85 (t, J= 6.3 MHz, 4H), 3.80-3.72 (m, 16H), 3.49 (t, J=6.3 MHz, 4H) ppm.
【0048】
モノマーa(1.2g、1.19mmol)を、クロロホルムと酢酸の1:1混合液に溶解し、N−ブロモスクシンイミド(0.43g、2.42mmol)を添加した。反応混合物を暗所にて室温で3時間撹拌した。TLCで調べると完全に反応したことが示され、この混合物を水中に注ぎ、EtOAcで抽出した。合わせた有機層をブライン溶液で洗浄し、無水MgSO上で乾燥した。溶媒の除去後、残留物をクロマトグラフィにより精製し、モノマー4、すなわち6,7−ビス(4−(2−(2−(2−(2−ブロモエトキシ)エトキシ)−エトキシ)エトキシ)フェニル)−4,9−ビス(5−ブロモチオフェン−2−イル)−[1,2,5]チアジアゾロ[3,4]キノキサリンを、暗色の粘着性の油としてもたらした。これは、それから得た以下の核磁気共鳴(NMR)データによって確認した。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 8.98 (d, J= 4.0 MHz, 2H), 7.74 (d, J=8.8 MHz, 4H), 7.25 (m, 2H), 6.99 (d, J=8.8 MHz, 4H), 4.24 (t, J=4.8 MHz, 4H), 3.94(t, J=4.8 MHz, 4H), 3.82 (t, J= 6.3 MHz, 4H), 3.78-3.71 (m, 16H), 3.47 (t, J=6.3 MHz, 4H) ppm.
【0049】
モノマー4は、他の異なる経路によって合成することもできる。
【0050】
以下のスキーム11は、ポリマー4を生成するための、モノマー4と1,4−フェニレンジボロン酸との共重合を示す。
【化41】
【0051】
0.2mmolのモノマー4と、0.2mmolの1,4−フェニレンジボロン酸、Pd(PPh(8mg)、KCO(0.25g)とを二つ口フラスコに入れ、脱気し、次いでNを再充填した。THF20mlと水8mlとを添加し、反応混合物を85℃に加熱し、24時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、次いでCHOH中に注いだ。収集した沈殿物をCHOHで数回洗浄し、CHCl/CHOHから再結晶させ、再度CHOHで洗浄し、次いで真空により乾燥し、ポリマー4を黒色の固体として得た。
【0052】
以下のスキーム12は、ポリマー4にグルコースを結合させることによる、ポリマー4の生体分子誘導体化水溶性ポリマーへの変換の例を示す。
【化42】
【0053】
25mLの一口丸底フラスコ中で、0.2gのポリマー4をDMF8mlに溶解した。0.2gの1−チオ−β−D−グルコース、続いて0.5gの無水KCOを添加した。反応混合物を室温で30時間撹拌し、次いで透析管に移し入れ、水に対して2日間透析した(水交換10回)。透析管中に得られた溶液を、次いで一口丸底フラスコに移し入れた。水の除去後、グルコース機能化ポリマー4を黒色の固体として得た。
【0054】
グルコース機能化ポリマー4は、図3に示すように良好な水溶性を有する。左は、上層が水相(水)、下層がポリマー4のCHCl溶液である。右は、上層がグルコース機能化ポリマー4の水溶液、下層がCHClである。
【0055】
(実施例5:COOH官能化ポリマー5の合成)
以下のスキーム13は、ポリマー2をポリマー5に変換し、続いてポリマー5をカルボン酸基で官能化して水溶性のCOOH官能化ポリマー5を作製する例を示す。
【化43】
【0056】
25mLの一口丸底フラスコ中で、0.3gのポリマー2をTHF8mlに溶解し、0.4gのKCO、続いてチオグリコール酸エチル0.5mlを添加した。室温で30時間撹拌した後、全混合物を水中に注ぎ、次いで濾過した。得られた固体を水で2回洗浄し、次いでCHOHで数回洗浄してポリマー5を生じた。得られたポリマー5を、さらなる精製を行うことなく直接使用して、以下に記述する次のステップ、加水分解を行った。
【0057】
ポリマー5をTHF10mlに溶解し、水1mlにNaOH(2.7g)を含む溶液を添加した。NaOH溶液を添加した後、数秒後に反応混合物中に多量の暗色の沈殿物が生じた。この混合物を約5分間撹拌し、次いで透析管に移し入れ、水に対して透析した。透析管中で、暗色の沈殿物はすぐに完全に水に溶解し、この混合物を水に対して2日間透析した(水交換8回)。透析管中の溶液を、次いで一口丸底フラスコに移し入れ、凍結乾燥により乾燥し、COOH官能化ポリマー5を暗色の固体として得た。
【0058】
COOH官能化ポリマー5は極めて良好な水溶性を有しており、水中でその吸収を測定し、そのスペクトルを図4に示す。COOH官能化ポリマー5によるエネルギーの吸収極大波長は、約950nmに達することができる。COOH官能化ポリマー5は、可視領域内である約700nmから始まる広範囲の吸収を示す。吸収は1100nmを超すまで続き、それは十分にNIR領域内である。
【0059】
(実施例6:COOH官能化ポリマー5へのビオチンの固定化)
以下のスキーム14は、COOH官能化ポリマー5をビオチン固定化ポリマー5へ変換する例を示す。
【化44】
【0060】
2.0mgのCOOH官能化ポリマー5を0.1M MES緩衝液0.2mlに溶解した。1.0mgのEDCを脱イオン水0.1mLに溶解した。1.0mgのsulf−NHSを脱イオン水0.1mLに溶解した。次いで、このEDC溶液27μlと、このsulf−NHS溶液50μlとをステップ1)の溶液に添加し、全混合物を30分間インキュベートした。ビオチン1.0mgをDMSO 0.1mlに溶解した。この溶液25μlをステップ2)の混合物に添加した。全混合物を穏やかに撹拌しながら一晩インキュベートした。
【0061】
次いで、この混合物を透析管に移し入れ、水に対して12時間透析した(水交換2回)。透析後、この溶液をバイアルに移し入れ、凍結乾燥によって乾燥し、ビオチン固定化ポリマー5を得た。
【0062】
(ビオチン固定化ポリマー5とストレプトアビジン被覆磁気ビーズとの結合試験)
上のビオチン固定化ポリマー5を使用して、報告されている手順に従ってストレプトアビジン被覆磁気ビーズと共にインキュベートした。肉眼で観察した、その結果を図5に示す。左(図5A)に、ビオチン固定化ポリマー5を加えたストレプトアビジン被覆磁気ビーズについての結合試験結果を示す。中央(図5B)に、COOH官能化ポリマー5を加えたストレプトアビジン被覆磁気ビーズについての対照試験結果を示す。右(図5C)に、ストレプトアビジン被覆磁気ビーズのみを示す。
【0063】
上述のストレプトアビジン被覆磁気ビーズとビオチン固定化ポリマー5との結合試験および対照試験は、同一条件下で行った。インキュベーション後に、すべてのビーズをカップリング緩衝液で4回洗浄した。図5の結果は、4回洗浄した後にトリス緩衝液で再懸濁させたビーズについて示している。結合を見るためのシグナルとして蛍光を使用しなくても、結合後に色の変化を目で見ることができる。
【0064】
比較するために、市販のNIR色素標識化ビオチンである、atto 680−biotinを使用して同一の試験を行った。結合試験に使用したatto 680−biotinは、結合に使用したビオチン固定化ポリマー5と同一の濃度および量である。図6は、atto 680−biotinと結合しているビーズの結果を示す。左(図6A)に、atto 680−biotinのみを示す。中央(図6B)に、ストレプトアビジン被覆磁気ビーズとatto 680−biotinとの結合を示す。右(図6C)に、ストレプトアビジン被覆磁気ビーズを示す。
【0065】
図7は、ビオチン固定化ポリマー5、およびatto 680−biotinと結合する磁気ビーズの比較結合試験結果を示す。左(図7A)に、ビオチン固定化ポリマー5を加えたストレプトアビジン被覆磁気ビーズについての結合を示す。中央(図7B)に、atto 680−biotinを加えたストレプトアビジン被覆磁気ビーズについての結合を示す。右(図7C)にストレプトアビジン被覆磁気ビーズを示す。
【0066】
ポリマーの水溶性、およびNIR範囲におけるその光学特性から、こうしたポリマーは、ライフサイエンス、診断検査市場、製薬市場、ならびに環境試験および生物兵器検出市場において、多くのバイオ関連用途で蛍光シグナル試薬として使用することができる。
【0067】
上の水溶性ポリマーは、水溶液中ではるかに低い電位を印加することによって薄膜を形成するために使用することもできる。
【0068】
これらのポリマーは、多くの場合、バンドギャップが低い導電性ポリマーにかかわることができる。水溶性と導電性の両方によって、こうしたポリマーは、例えば生体起源または他の電気信号の導体として、幾つもの用途のための生体関連システムに使用することができる。
【0069】
本明細書で使用される成分、構成要素、反応条件などの数量を表す数はいずれも、すべての例において「約」という用語によって改変されると理解されたい。本明細書に提示される広範な主題を明記する数値の範囲およびパラメーターは近似値であるにもかかわらず、明記される数値は可能な限り正確に示される。しかし、いかなる数値も、それらのそれぞれの測定技法に標準偏差が見られることから明白であるように、本質的にある種の誤差または不正確さを含有する。本明細書に説明する特徴はいずれも、用語「手段(means)」が明示的に使用されていなければ、米国特許法第112条第6段落を発動するものとして解釈されるべきではない。
【0070】
本発明をその好ましい実施形態に関連して記述してきたが、明確には記述していない追加、削除、変更および置換を、本発明の精神および範囲から逸脱することなく為すことができることが、当業者であれば理解されよう。
図1
図4
図2
図3
図5
図6
図7