【実施例】
【0023】
(実施例1:ポリマー1の合成)
【化29】
以下のスキーム1は、ベンゾ[1,2,5]チアジアゾールから出発する4,7−ジブロモ−5,6−ジアミン−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール4の合成を図示する。
【化30】
【0024】
ベンゾチアジアゾール(10.0g、73.4mmol)とHBr(150mL、48%)とを500mLの三つ口丸底フラスコに添加した。HBr(100mL)中にBr
2(35.2g、220.3mmol)を含有する溶液を、極めてゆっくりと滴下して添加した。Br
2をすべて添加した後、この溶液を一晩加熱還流した。暗い橙色の固体の沈殿が認められた。この混合物を室温まで冷却し、十分な量のNaHSO
3飽和溶液を添加して、余分なBr
2を完全に消費した。この混合物を真空下で濾過し、水で徹底的に洗浄し、真空下で乾燥し、二臭素化生成物2を生じた。これは、それから得た以下の核磁気共鳴(NMR)データによって確認した。
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.75 (s, 2H) ppm
【0025】
4,7−ジブロモベンゾ[1,2,5]チアジアゾール2(40g、137mmol)を、発煙硫酸(200ml)と発煙硝酸(200ml)との混合物に、0°Cで少量ずつ添加し、次いで反応混合物を室温で72時間撹拌した。72時間後、この混合物を氷水中に注ぎ、固形物を濾過し、水で数回洗浄し、次いでエタノールで再結晶させ、化合物3を淡黄色の固体として得た。
【0026】
4,7−ジブロモ−5,6−ジニトロ−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール3(10g、26mmol)と微細鉄粉(10g、178mmol)との混合物の酢酸溶液を、薄層クロマトグラフィ(TLC)によって監視して、化合物3が完全に消失するまで80°Cで撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、次いで、NaOHの5%溶液で沈殿させた。この固体を濾過し、水で数回洗浄した。得られた濾過ケークを、温酢酸エチル(EtOAc)に溶解し、次いで濾過して未反応の鉄を除去し、濾液をロータリーエバポレーターで蒸発させて溶媒を除去し、4,7−ジブロモ−5,6−ジアミン−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール4を黄色の固体として得た。これは、それから得た以下の核磁気共鳴(NMR)データによって確認した。
1H NMR (500 MHz, DMSO): δ 3.31 (s, 4H) ppm.
【0027】
以下のスキーム2は、1,2−ビス(4−メトキシフェニル)エタン−1,2−ジオンから出発する1,2−ビス(4−(3−ブロモプロポキシ)−フェニル)エタン−1,2−ジオン6の合成を示す。
【化31】
【0028】
1,2−ビス(4−メトキシフェニル)エタン−1,2−ジオン(5g、18.52mmol)をCH
2Cl
2に溶解し、−78°Cに冷却した(再び固形物が生じた)。BBr
3(8.3m、87.82mmol)を添加し、混合物を放置して室温まで加温し、15時間撹拌した。TLCで調べると、1,2−ビス(4−メトキシフェニル)エタン−1,2−ジオンが完全に消失したことが示された。この反応混合物を氷中に注ぎ、EtOAcにより抽出し、NaCl溶液で洗浄し、MgSO
4上で乾燥した。溶媒を真空により除去し、残留物をカラムクロマトグラフィにより精製し、化合物5、すなわち1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ジオンを得た。これは、それから得た以下の核磁気共鳴(NMR)データによって確認した。
1H NMR (500 MHz, DMSO): δ 10.8 (s, 2H), 7.71 (d, J=8.8 MHz, 4H), 6.90 (d, J=8.8 MHz, 4H) ppm.
【0029】
1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ジオン(2.6g、10.74mmol)をDMFに溶解し、K
2CO
3(5.9g、42.7mmol)を添加し、100mmolの1,3−ジブロモプロパンと、触媒量のKIとを次いで添加した。この混合物を80℃に加熱し、3日間撹拌した。TLCで調べると、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ジオンが消失したことが示された。ジメチルホルムアミド(DMF)を除去し、水を添加し、EtOAcにより抽出し、ブラインで洗浄し、MgSO
4上で乾燥した。溶媒を除去し、残留物をカラムクロマトグラフィにより精製し、1,2−ビス(4−(3−ブロモプロポキシ)フェニル)エタン−1,2−ジオン6を淡黄色の固体として得た。これは、それから得た以下の核磁気共鳴(NMR)データによって確認した。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3): δ 7.94 (d, J=8.8 MHz, 4H), 6.99 (d, J=8.8 MHz, 4H), 4.20 (t, J=6.2 MHz, 4H), 3.61(t, J=6.2 MHz, 4H), 2.34 (m, 4H) ppm.
【0030】
以下のスキーム3は、モノマー1、すなわち4,9−ジブロモ−6,7−ビス(4−(3−ブロモプロポキシ)フェニル)−[1,2,5]チアジアゾロ[3,4−g]キノキサリンの合成を示す。
【化32】
【0031】
4,7−ジブロモ−5,6−ジアミン−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール4(0.6g、1.23mmol)と1,2−ビス(4−(3−ブロモプロポキシ)フェニル)エタン−1,2−ジオン6(0.4g、1.23mmol)とを反応フラスコ中に入れ、AcOHを添加した。反応混合物を125℃に加熱し、3.5時間撹拌した。TLCで調べると、化合物4および6がいずれも消失したことが示された。この混合物を室温まで冷却し、水中に注ぎ、次いでEtOAcにより抽出し、ブラインで洗浄し、MgSO
4上で乾燥した。残留物をカラムクロマトグラフィにより精製し、モノマー1、すなわち4,9−ジブロモ−6,7−ビス(4−(3−ブロモプロポキシ)フェニル)−[1,2,5]チアジアゾロ[3,4−g]キノキサリンを橙色の固体として得た。これは、それから得た以下の核磁気共鳴(NMR)データによって確認した。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3): δ 7.77 (d, J=8.8 MHz, 4H), 6.95 (d, J=8.8 MHz, 4H), 4.19 (t, J=6.2 MHz, 4H), 3.64(t, J=6.3 MHz, 4H), 2.37 (m, 4H) ppm.
【0032】
以下のスキーム4は、ポリマー1を生成するための、モノマー1とチオフェン−2,5−ジボロン酸との共重合を示す。
【化33】
【0033】
0.2mmolのモノマー1と、0.2mmolの2,5−チオフェン−ジボロン酸、Pd(PPh
3)
4(8mg)、K
2CO
3(0.25g)とを三つ口フラスコに入れ、脱気し、次いでN
2を再充填した。テトラヒドロフラン(THF)20mlと水8mlとを添加し、反応混合物を5℃に加熱し、24時間撹拌した。反応物を室温まで冷却し、CH
3OH中に注いだ。収集したポリマー1をCH
3OHで数回洗浄し、真空により乾燥し、暗色の固体を得た。
【0034】
ポリマー1の吸収を測定した。そのスペクトルを
図1に示す。ポリマー1によるエネルギーの吸収極大波長(maximum wavelength absorption)は1008nmに達することができる。
【0035】
(実施例2:ポリマー2および水溶性グルコース機能化ポリマー2の合成)
【化34】
スキーム5は、化合物7、すなわち1,2−ビス(4−(2−(2−(2−(2−ブロモエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)エタン−1,2−ジオンの合成を示す。
【化35】
【0036】
1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ジオン(2.6g、10.74mmol)をアセトンに溶解し、K
2CO
3(5.9g、42.7mmol)を添加し、次いで80mmolの1−ブロモ−2−(2−(2−(2−ブロモエトキシ)エトキシ)エトキシ)エタンを添加した。この混合物を80℃に加熱して、24時間撹拌した。TLCで調べると、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ジオンが消失したことが示された。アセトンを除去し、水を添加し、EtOAcにより抽出し、ブラインで洗浄し、MgSO
4上で乾燥した。溶媒を除去し、残留物をカラムクロマトグラフィにより精製し、1,2−ビス(4−(2−(2−(2−(2−ブロモエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)エタン−1,2−ジオン7を淡黄色の油として得た。これは、それから得た以下の核磁気共鳴(NMR)データによって確認した。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3): δ 7.94 (d, J=8.8 MHz, 4H), 6.99 (d, J=8.8 MHz, 4H), 4.21 (t, J=4.8 MHz, 4H), 3.88(t, J=4.8 MHz, 4H), 3.80 (t, J= 6.3 MHz, 4H), 3.78-3.66 (m, 16H), 3.46 (t, J=6.3 MHz, 4H) ppm.
【0037】
以下のスキーム6は、モノマー2、すなわち4,9−ジブロモ−6,7−ビス(4−(2−(2−(2−(2−ブロモエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−[1,2,5]チアジアゾロ[3,4−q]キノキサリンの合成を示す。
【化36】
【0038】
4,7−ジブロモ−5,6−ジアミン−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾール4(0.6g、1.23mmol)と1,2−ビス(4−(2−(2−(2−(2−ブロモエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)エタン−1,2−ジオン7(0.89g、1.23mmol)とを反応フラスコに入れ、AcOHを添加した。反応混合物を125℃に加熱し、3.5時間撹拌した。TLCで調べると、化合物4および7がいずれも消失したことが示された。この混合物を室温まで冷却し、水中に注ぎ、次いでEtOAcにより抽出し、ブラインで洗浄し、MgSO
4上で乾燥した。残留物をカラムクロマトグラフィにより精製し、モノマー2、すなわち4,9−ジブロモ−6,7−ビス(4−(2−(2−(2−(2−ブロモエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)−フェニル)−[1,2,5]チアジアゾロ[3,4−g]キノキサリンを橙色の粘着性の油として得た。これは、それから得た以下の核磁気共鳴(NMR)データによって確認した。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3): δ 7.75 (d, J=8.8 MHz, 4H), 6.94 (d, J=8.8 MHz, 4H), 4.20 (t, J=4.8 MHz, 4H), 3.90(t, J=4.8 MHz, 4H), 3.82 (t, J= 6.3 MHz, 4H), 3.76-3.69 (m, 16H), 3.47 (t, J=6.3 MHz, 4H) ppm.
【0039】
以下のスキーム7は、ポリマー2を生成するための、モノマー2とチオフェン−2,5−ジボロン酸との共重合を示す。
【化37】
【0040】
0.2mmolのモノマー2と0.2mmolの2,5−ビス(トリブチルスタンニル)チオフェン、Pd(PPh
3)
2Cl
2(またはPd(PPh
3)
4)(8mg)を二つ口フラスコに入れ、脱気し、次いでN
2を再充填した。THF(またはトルエン)20mlを添加し、反応混合物を85℃に加熱し、24時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、次いでCH
3OH中に注いだ。収集した沈殿物をCH
3OHで数回洗浄し、CH
2Cl
2/CH
3OHから再結晶させ、再びCH
3OHで洗浄し、次いで真空により乾燥し、ポリマー2を黒色の固体として得た。
【0041】
以下のスキーム8は、グルコースをポリマー2に結合させることによる、ポリマー2の生体分子誘導体化水溶性ポリマーへの変換の例を示す。
【化38】
【0042】
25mLの一口丸底フラスコ中で、0.2gのポリマー2をDMF8mlに溶解した。0.2gの1−チオ−β−D−グルコース、続いて0.5gの無水K
2CO
3を添加した。反応混合物を室温で30時間撹拌し、次いで透析管に移し入れ、水に対して2日間透析した(水交換8回)。透析管中に得られた溶液を、次いで一口丸底フラスコに移し入れた。水を除去した後、グルコース機能化ポリマー2が黒色の固体として得られた。
【0043】
図2に示すように、グルコース機能化ポリマー2は極めて良好な水溶性を有する。左に示すのは、モノマー2のCH
2Cl
2溶液である。中央に示すのは、上層が水、および下層がポリマー2のCH
2Cl
2溶液である。右に示すのは、上層がグルコース機能化ポリマー2の水溶液、および下層がCH
2Cl
2である。
【0044】
(実施例3:ポリマー3の合成)
以下のスキーム9は、ポリマー3を生成するための、モノマー3とチオフェン−2,5−ジボロン酸との共重合を示す。
【化39】
【0045】
0.15mmolのモノマー3と0.15mmolの2,5−チオフェン−ジボロン酸、Pd(PPh
3)
4(8mg)、K
2CO
3(0.25g)とを二つ口フラスコに入れ、脱気し、次いでN
2を再充填した。THF10mlと水5mlとを添加し、反応混合物を85℃に加熱し、24時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、水相を抽出して透析管に移し入れ、水に対して2日間透析した。次いで、透析管中の水溶液を一口丸底フラスコに移し入れ、水を除去し、ポリマー3を暗色の固体として得た。ポリマー3は極めて良好な水溶性を有する。
【0046】
(実施例4:ポリマー4の合成)
以下のスキーム10は、モノマー2から出発する、モノマー4、すなわち6,7−ビス(4−(2−(2−(2−(2−ブロモエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4,9−ビス(5−ブロモチオフェン−2−イル)−[1,2,5]チアジアゾロ[3,4−g]キノキサリンの合成を図示する。
【化40】
【0047】
2.0g(1.98mmol)のモノマー2と40mgのジクロロビス−(トリフェニルホスフィン)パラジウムとを50mLの二つ口丸底フラスコに入れ、脱気し、N
2を再充填した。無水THF、続いて2−(トリブチルスタンニル)チオフェン(2.3g、4.96mmol)を添加した。この混合物を加熱還流した。4時間撹拌した後、反応混合物を室温まで冷却し、水中に注ぎ、EtOAcで抽出した。合わせたEtOAc層を水で洗浄し、無水MgSO
4上で乾燥した。溶媒を除去し、残留物をクロマトグラフィにより精製し、モノマーa、すなわち6,7−ビス(4−(2−(2−(2−(2−ブロモエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4,9−ジ(チオフェン−2−イル)−[1,2,5]チアジアゾロ[3,4−g]キノキサリンを暗青色の粘着性の油として得た。これは、それから得た以下の核磁気共鳴(NMR)データによって確認した。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3):δ 9.01 (d, J= 4.0 MHz, 2H), 7.81 (d, J=8.8 MHz, 4H), 7.71 (d, J = 5.0 MHz, 2H), 7.34 (m, 2H), 6.98 (d, J=8.8 MHz, 4H), 4.23 (t, J=4.8 MHz, 4H), 3.94(t, J=4.8 MHz, 4H), 3.85 (t, J= 6.3 MHz, 4H), 3.80-3.72 (m, 16H), 3.49 (t, J=6.3 MHz, 4H) ppm.
【0048】
モノマーa(1.2g、1.19mmol)を、クロロホルムと酢酸の1:1混合液に溶解し、N−ブロモスクシンイミド(0.43g、2.42mmol)を添加した。反応混合物を暗所にて室温で3時間撹拌した。TLCで調べると完全に反応したことが示され、この混合物を水中に注ぎ、EtOAcで抽出した。合わせた有機層をブライン溶液で洗浄し、無水MgSO
4上で乾燥した。溶媒の除去後、残留物をクロマトグラフィにより精製し、モノマー4、すなわち6,7−ビス(4−(2−(2−(2−(2−ブロモエトキシ)エトキシ)−エトキシ)エトキシ)フェニル)−4,9−ビス(5−ブロモチオフェン−2−イル)−[1,2,5]チアジアゾロ[3,4]キノキサリンを、暗色の粘着性の油としてもたらした。これは、それから得た以下の核磁気共鳴(NMR)データによって確認した。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3): δ 8.98 (d, J= 4.0 MHz, 2H), 7.74 (d, J=8.8 MHz, 4H), 7.25 (m, 2H), 6.99 (d, J=8.8 MHz, 4H), 4.24 (t, J=4.8 MHz, 4H), 3.94(t, J=4.8 MHz, 4H), 3.82 (t, J= 6.3 MHz, 4H), 3.78-3.71 (m, 16H), 3.47 (t, J=6.3 MHz, 4H) ppm.
【0049】
モノマー4は、他の異なる経路によって合成することもできる。
【0050】
以下のスキーム11は、ポリマー4を生成するための、モノマー4と1,4−フェニレンジボロン酸との共重合を示す。
【化41】
【0051】
0.2mmolのモノマー4と、0.2mmolの1,4−フェニレンジボロン酸、Pd(PPh
3)
4(8mg)、K
2CO
3(0.25g)とを二つ口フラスコに入れ、脱気し、次いでN
2を再充填した。THF20mlと水8mlとを添加し、反応混合物を85℃に加熱し、24時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、次いでCH
3OH中に注いだ。収集した沈殿物をCH
3OHで数回洗浄し、CH
2Cl
2/CH
3OHから再結晶させ、再度CH
3OHで洗浄し、次いで真空により乾燥し、ポリマー4を黒色の固体として得た。
【0052】
以下のスキーム12は、ポリマー4にグルコースを結合させることによる、ポリマー4の生体分子誘導体化水溶性ポリマーへの変換の例を示す。
【化42】
【0053】
25mLの一口丸底フラスコ中で、0.2gのポリマー4をDMF8mlに溶解した。0.2gの1−チオ−β−D−グルコース、続いて0.5gの無水K
2CO
3を添加した。反応混合物を室温で30時間撹拌し、次いで透析管に移し入れ、水に対して2日間透析した(水交換10回)。透析管中に得られた溶液を、次いで一口丸底フラスコに移し入れた。水の除去後、グルコース機能化ポリマー4を黒色の固体として得た。
【0054】
グルコース機能化ポリマー4は、
図3に示すように良好な水溶性を有する。左は、上層が水相(水)、下層がポリマー4のCH
2Cl
2溶液である。右は、上層がグルコース機能化ポリマー4の水溶液、下層がCH
2Cl
2である。
【0055】
(実施例5:COOH官能化ポリマー5の合成)
以下のスキーム13は、ポリマー2をポリマー5に変換し、続いてポリマー5をカルボン酸基で官能化して水溶性のCOOH官能化ポリマー5を作製する例を示す。
【化43】
【0056】
25mLの一口丸底フラスコ中で、0.3gのポリマー2をTHF8mlに溶解し、0.4gのK
2CO
3、続いてチオグリコール酸エチル0.5mlを添加した。室温で30時間撹拌した後、全混合物を水中に注ぎ、次いで濾過した。得られた固体を水で2回洗浄し、次いでCH
3OHで数回洗浄してポリマー5を生じた。得られたポリマー5を、さらなる精製を行うことなく直接使用して、以下に記述する次のステップ、加水分解を行った。
【0057】
ポリマー5をTHF10mlに溶解し、水1mlにNaOH(2.7g)を含む溶液を添加した。NaOH溶液を添加した後、数秒後に反応混合物中に多量の暗色の沈殿物が生じた。この混合物を約5分間撹拌し、次いで透析管に移し入れ、水に対して透析した。透析管中で、暗色の沈殿物はすぐに完全に水に溶解し、この混合物を水に対して2日間透析した(水交換8回)。透析管中の溶液を、次いで一口丸底フラスコに移し入れ、凍結乾燥により乾燥し、COOH官能化ポリマー5を暗色の固体として得た。
【0058】
COOH官能化ポリマー5は極めて良好な水溶性を有しており、水中でその吸収を測定し、そのスペクトルを
図4に示す。COOH官能化ポリマー5によるエネルギーの吸収極大波長は、約950nmに達することができる。COOH官能化ポリマー5は、可視領域内である約700nmから始まる広範囲の吸収を示す。吸収は1100nmを超すまで続き、それは十分にNIR領域内である。
【0059】
(実施例6:COOH官能化ポリマー5へのビオチンの固定化)
以下のスキーム14は、COOH官能化ポリマー5をビオチン固定化ポリマー5へ変換する例を示す。
【化44】
【0060】
2.0mgのCOOH官能化ポリマー5を0.1M MES緩衝液0.2mlに溶解した。1.0mgのEDCを脱イオン水0.1mLに溶解した。1.0mgのsulf−NHSを脱イオン水0.1mLに溶解した。次いで、このEDC溶液27μlと、このsulf−NHS溶液50μlとをステップ1)の溶液に添加し、全混合物を30分間インキュベートした。ビオチン1.0mgをDMSO 0.1mlに溶解した。この溶液25μlをステップ2)の混合物に添加した。全混合物を穏やかに撹拌しながら一晩インキュベートした。
【0061】
次いで、この混合物を透析管に移し入れ、水に対して12時間透析した(水交換2回)。透析後、この溶液をバイアルに移し入れ、凍結乾燥によって乾燥し、ビオチン固定化ポリマー5を得た。
【0062】
(ビオチン固定化ポリマー5とストレプトアビジン被覆磁気ビーズとの結合試験)
上のビオチン固定化ポリマー5を使用して、報告されている手順に従ってストレプトアビジン被覆磁気ビーズと共にインキュベートした。肉眼で観察した、その結果を
図5に示す。左(
図5A)に、ビオチン固定化ポリマー5を加えたストレプトアビジン被覆磁気ビーズについての結合試験結果を示す。中央(
図5B)に、COOH官能化ポリマー5を加えたストレプトアビジン被覆磁気ビーズについての対照試験結果を示す。右(
図5C)に、ストレプトアビジン被覆磁気ビーズのみを示す。
【0063】
上述のストレプトアビジン被覆磁気ビーズとビオチン固定化ポリマー5との結合試験および対照試験は、同一条件下で行った。インキュベーション後に、すべてのビーズをカップリング緩衝液で4回洗浄した。
図5の結果は、4回洗浄した後にトリス緩衝液で再懸濁させたビーズについて示している。結合を見るためのシグナルとして蛍光を使用しなくても、結合後に色の変化を目で見ることができる。
【0064】
比較するために、市販のNIR色素標識化ビオチンである、atto 680−biotinを使用して同一の試験を行った。結合試験に使用したatto 680−biotinは、結合に使用したビオチン固定化ポリマー5と同一の濃度および量である。
図6は、atto 680−biotinと結合しているビーズの結果を示す。左(
図6A)に、atto 680−biotinのみを示す。中央(
図6B)に、ストレプトアビジン被覆磁気ビーズとatto 680−biotinとの結合を示す。右(
図6C)に、ストレプトアビジン被覆磁気ビーズを示す。
【0065】
図7は、ビオチン固定化ポリマー5、およびatto 680−biotinと結合する磁気ビーズの比較結合試験結果を示す。左(
図7A)に、ビオチン固定化ポリマー5を加えたストレプトアビジン被覆磁気ビーズについての結合を示す。中央(
図7B)に、atto 680−biotinを加えたストレプトアビジン被覆磁気ビーズについての結合を示す。右(
図7C)にストレプトアビジン被覆磁気ビーズを示す。
【0066】
ポリマーの水溶性、およびNIR範囲におけるその光学特性から、こうしたポリマーは、ライフサイエンス、診断検査市場、製薬市場、ならびに環境試験および生物兵器検出市場において、多くのバイオ関連用途で蛍光シグナル試薬として使用することができる。
【0067】
上の水溶性ポリマーは、水溶液中ではるかに低い電位を印加することによって薄膜を形成するために使用することもできる。
【0068】
これらのポリマーは、多くの場合、バンドギャップが低い導電性ポリマーにかかわることができる。水溶性と導電性の両方によって、こうしたポリマーは、例えば生体起源または他の電気信号の導体として、幾つもの用途のための生体関連システムに使用することができる。
【0069】
本明細書で使用される成分、構成要素、反応条件などの数量を表す数はいずれも、すべての例において「約」という用語によって改変されると理解されたい。本明細書に提示される広範な主題を明記する数値の範囲およびパラメーターは近似値であるにもかかわらず、明記される数値は可能な限り正確に示される。しかし、いかなる数値も、それらのそれぞれの測定技法に標準偏差が見られることから明白であるように、本質的にある種の誤差または不正確さを含有する。本明細書に説明する特徴はいずれも、用語「手段(means)」が明示的に使用されていなければ、米国特許法第112条第6段落を発動するものとして解釈されるべきではない。
【0070】
本発明をその好ましい実施形態に関連して記述してきたが、明確には記述していない追加、削除、変更および置換を、本発明の精神および範囲から逸脱することなく為すことができることが、当業者であれば理解されよう。