(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記処理容器は、天壁、側壁及び底壁を有し、前記ガス導入部が、前記側壁において、前記原料支持部の上面の高さより上方であって、前記基板ホルダに保持された基板よりも下方の高さ位置に設けられ、かつ、前記排気部が、前記天壁に設けられている請求項1に記載の成膜装置。
前記成膜装置は、前記処理容器が、天壁、側壁及び底壁を有し、前記ガス導入部が、前記側壁において、前記原料支持部の上面の高さより上方であって、前記基板ホルダに保持された基板よりも下方の高さ位置に設けられ、かつ、前記排気部が、前記天壁に設けられている請求項7に記載の成膜方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、固体原料を用いて成膜を行う場合に、成膜原料ガスを安定的かつ効率的に基板の表面へ供給することが可能であり、かつパーティクル汚染や膜中への不純物混入の可能性が低減された成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点の成膜装置は、
基板を収容する処理容器と、
基板を前記処理容器内の上部に保持する基板ホルダと、
前記基板ホルダに保持された基板を加熱する第1のヒーターと、
前記基板ホルダに保持された基板に対向してその下方に配置された原料支持部と、
前記原料支持部に支持された固体原料を加熱する第2のヒーターと、
前記処理容器内に、前記固体原料と反応して成膜原料ガスを生成する気化促進ガスを供給するためのガス供給手段と、
前記処理容器内を真空に保持するための排気手段と、
を備え、
前記処理容器内で生成させた前記成膜原料ガスを基板表面で熱分解させて成膜を行うものである。
【0007】
また、本発明の第2の観点の成膜装置は、
基板を収容する処理容器と、
基板を前記処理容器内の上部に保持する基板ホルダと、
前記基板ホルダに保持された基板を加熱する第1のヒーターと、
前記基板ホルダに保持された基板に対向してその下方に配置された原料支持部と、
前記原料支持部に支持された固体原料を加熱する第2のヒーターと、
前記処理容器内を真空に保持するための排気手段と、
を備え、
前記固体原料を加熱することにより前記処理容器内で生成させた気化ガスを基板表面で熱分解させて成膜を行うものである。
【0008】
本発明の第1及び第2の観点の成膜装置において、前記基板ホルダは、基板の下面が成膜処理を行う被処理面になるように基板を保持することが好ましい。
【0009】
また、本発明の第1及び第2の観点の成膜装置において、前記固体原料は前記原料支持部において上方が開放した皿型容器内に収容されて支持されることが好ましい。
【0010】
また、本発明の第1及び第2の観点の成膜装置は、前記処理容器の上部に、前記排気手段に接続する排気部が設けられていることが好ましい。この場合、前記処理容器の下部又は側部に、前記ガス供給手段に接続するガス導入部が設けられていてもよい。
【0011】
本発明の第3の観点の成膜方法は、基板を収容する処理容器と、
基板を前記処理容器内の上部に保持する基板ホルダと、
前記基板ホルダに保持された基板を加熱する第1のヒーターと、
前記基板ホルダに保持された基板に対向してその下方に配置された原料支持部と、
前記原料支持部に支持された固体原料を加熱する第2のヒーターと、
前記処理容器内にガスを供給するためのガス供給手段と、
前記処理容器内を真空に保持するための排気手段と、
を備えた成膜装置を用い、
前記処理容器内に固体原料を搬入し、前記原料支持部に配置する工程と、
前記処理容器内に基板を搬入して前記基板ホルダにより保持する工程と、
前記原料支持部によって支持された固体原料を、前記第2のヒーターにより加熱しながら、前記ガス供給手段により前記処理容器内に導入された気化促進ガスと反応させ、生成した成膜原料ガスを前記基板の表面に供給し、熱分解させて成膜を行う工程と、
を有している。
【0012】
また、本発明の第4の観点の成膜方法は、基板を収容する処理容器と、
基板を前記処理容器内の上部に保持する基板ホルダと、
前記基板ホルダに保持された基板を加熱する第1のヒーターと、
前記基板ホルダに保持された基板に対向してその下方に配置された原料支持部と、
前記原料支持部に支持された固体原料を加熱する第2のヒーターと、
前記処理容器内にガスを供給するためのガス供給手段と、
前記処理容器内を真空に保持するための排気手段と、
を備えた成膜装置を用い、
前記処理容器内に固体原料を搬入し、前記原料支持部に配置する工程と、
前記処理容器内に基板を搬入して前記基板ホルダにより保持する工程と、
前記原料支持部によって支持された固体原料を前記第2のヒーターにより加熱して気化させるとともに該気化ガスを前記基板の表面に供給し、熱分解させて成膜を行う工程と、
を有している。
【0013】
本発明の第3及び第4の観点の成膜方法は、前記基板ホルダに保持された基板の下面に成膜を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の成膜装置及び成膜方法では、固体原料を処理容器内の原料支持部に配置するので、固体原料が気化促進ガスと反応して生成する成膜原料ガス、又は固体原料の気化ガス(これらを、単に「成膜原料ガス」と総称することがある)を処理容器内で生成させることができる。このように、固体原料と成膜対象となる基板表面との間に配管が存在しないため、成膜原料ガスが途中でトラップされることがなく、成膜原料ガスを基板表面へ安定して供給できる。また、基板の被処理面よりも、原料支持部に配置された固体原料が下方に配置されることにより、成膜が効率的に行われるとともに、パーティクルが基板の被処理面に付着しにくくなる。また、固体原料をガス化させる際に溶剤を用いずにすむため、不純物が混入しにくく、液体気化器を必要としないため装置構成が簡便になる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態にかかる成膜装置100について説明する。まず、
図1及び
図2を参照しながら成膜装置100の構成について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る成膜装置100の概略構成を示す断面図であり、
図2はその制御系統の構成例を示す図である。この成膜装置100は、主要な構成として、被処理基板としての半導体ウエハ(以下、「ウエハW」と記す)を収容する処理容器1と、第1のヒーターとしての基板ヒーター11と、ウエハWを保持する保持部材21と、原料支持部としてのステージ31と、第2のヒーターとしての原料ヒーター41と、を備えている。さらに、成膜装置100は、処理容器1内を真空に保持するための排気手段としての排気装置51と、処理容器1内にガスを供給するためのガス供給手段としてのガス供給装置71と、成膜装置100を制御する制御部90と、を備えている。なお、半導体ウエハには、シリコン基板のほか、例えばGaAs、SiC、GaNなどの化合物半導体基板も含まれる。
【0017】
<処理容器>
処理容器1は、略円筒状をなし、例えばアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムなどの材質で形成されている。処理容器1は、天壁1a、側壁1b及び底壁1cを有している。
【0018】
処理容器1の側壁1bには、この処理容器1内に対してウエハW及び後述する原料トレー33を搬入、搬出するための開口61が設けられている。開口61の外側には、開口61を開閉するためのゲートバルブ62が設けられている。なお、
図1では、ウエハW及び原料トレー33を一つの開口61から搬入出する構成としているが、ウエハWを搬入出する開口と、原料トレー33を搬入出する開口を別々に設けてもよい。
【0019】
また、処理容器1を構成する各部材の接合部分には、該接合部分の気密性を確保するために、シール部材としてのOリングが配備されている。例えば
図1では、代表的に、天壁1aと側壁1bとの接合部分に配備した環状のOリング81を図示している。なお、他の部位にもOリングを配備することが可能であるが、ここでは図示及び説明を省略する。
【0020】
<基板ヒーター>
ウエハWを加熱する第1のヒーターとしての基板ヒーター11は、処理容器1内の上部に配置されている。本実施の形態において、基板ヒーター11は、伝熱プレート12に埋設された抵抗加熱ヒーターである。基板ヒーター11は、給電線13を介してヒーター電源(PS)14に接続されている。基板ヒーター11は、保持部材21に保持されたウエハWを伝熱プレート12に当接させた状態で、例えば300℃程度まで加熱できるように構成されている。なお、
図1では、処理容器1の天壁1aに伝熱プレート12を当接させているが、離間させてもよい。
【0021】
伝熱プレート12は、ウエハWの形状と同様に円盤状をなし、耐熱性かつ熱伝導性の材質、例えばセラミックスなどにより形成されている。伝熱プレート12には、温度計測手段としての熱電対(図示せず)が配備されており、基板ヒーター11の温度をリアルタイムで計測できるようになっている。なお、ウエハWの加熱温度や処理温度は、特に断りのない限り、伝熱プレート12の温度を意味する。
【0022】
本実施の形態において、基板ヒーター11及び伝熱プレート12は、基板加熱手段を構成している。
【0023】
<保持部材>
基板ホルダとしての保持部材21は、昇降自在に設けられており、ウエハWを伝熱プレート12に近接もしくは当接した状態に保持する。保持部材21は、例えば全体としてほぼ円環状に配設されており、耐熱性の材質、例えばセラミックス、耐熱性樹脂等により形成されている。保持部材21は、ウエハWのエッジ(周縁の角部)から数mmの幅でウエハWの下面に当接し、ウエハWを下から支持する。このように保持部材21でウエハWの周縁部を覆うことによって、ウエハWのベベル部においてパーティクル原因となる膜の堆積を抑制することができる。なお、保持部材21は複数の部材に分割されていてもよい。
【0024】
保持部材21は、複数の吊り支柱22(
図1では2本のみ図示)によって、処理容器1の外部上方に設けられたリング状の可動部材23に吊り下げられるように支持されている。吊り支柱22は、処理容器1の天壁1aを貫通しており、その周囲には、処理容器1内の気密状態を保持するために伸縮可能なベローズ24が設けられている。処理容器1の外部には、図示しないアクチュエータを備えた駆動部25と、シャフト26が設けられており、該シャフト26に可動部材23が連結されている。可動部材23は、駆動部25を作動させることによりシャフト26を介して上下に変位し、吊り支柱22を介して保持部材21を昇降変位させる。そして、保持部材21に保持したウエハWを伝熱プレート12の下面に当接させた状態と、該下面から離間させた状態との間で切り替える。成膜処理の間は、保持部材21を上昇させ、伝熱プレート12の下面にウエハWを当接させた状態で保持する。図示しない搬送装置との間のウエハWの受け渡しは、保持部材21を下降させた状態で行う。なお、基板ホルダとしての保持部材21を昇降させる機構として、吊り支柱22、可動部材23、駆動部25、シャフト26等を備えた
図1の構成は、あくまでも例示であり、これに限定されるものではない。
【0025】
<ステージ>
原料支持部としてのステージ31は、基板ヒーター11に対向して処理容器1内の下部に配置されている。ステージ31は、支柱32により支持されている。ステージ31において、固体原料Aは原料トレー33内に収容されて載置されている。原料トレー33は、上方が開放した皿型容器であり、固体原料Aと反応性を有しておらず、耐熱性かつ熱伝導率の高い材料、例えば石英、セラミックス等の材質により構成されている。
【0026】
固体原料Aは、2つの種類が考えられる。一つは、固体原料A自体は加熱しても気化しないが、気化促進ガスBを導入すると反応して、蒸気圧が高い成膜原料ガスCを生成するものである。もう一つの固体原料Aとしては、蒸気圧は低いが、加熱するとある程度気化する物質である。この場合は固体原料Aが気化した気化ガスが「成膜原料ガス」となる。
【0027】
ステージ31には、複数箇所(例えば3カ所;
図1では2箇所を図示した)に開口部31aが設けられ、各開口部31aには原料トレー33を昇降させるためのリフトピン34が挿入されている。各リフトピン34は、ステージ31の下部に設けられたリング状の可動部材35に固定されている。処理容器1の外部下方には、図示しないアクチュエータを備えた駆動部36と、シャフト37が設けられており、該シャフト37に可動部材35が連結されている。シャフト37は、処理容器1の底壁1cを貫通しており、その周囲には、処理容器1内の気密状態を保持するために伸縮可能なベローズ38が設けられている。可動部材35は、駆動部36を作動させることによりシャフト37を介して上下に変位し、複数のリフトピン34を同期させて昇降させる。そして、リフトピン34がステージ31の上面から突出した状態と上面とより下に退避した状態との間で切り替えることができる。成膜処理の間は、リフトピン34をステージ31の上面から突出しない位置に保持し、原料トレー33をステージ31に密着させてステージ31の熱が効率良く原料トレー33内の固体原料に伝わるようにする。原料トレー33の受け渡しの際には、リフトピン34を上昇させ、ステージ31の上面から突出させた位置に保持し、搬送装置(図示省略)との間で原料トレー33の受け渡しを行う。なお、リフトピン34を設けずに、図示しない搬送装置とステージ31との間で原料トレー33を直接受け渡す構成としてもよい。
【0028】
<原料ヒーター>
原料ヒーター41は、ステージ31に載置された原料トレー33内の固体原料Aを加熱する。本実施の形態において、原料ヒーター41は抵抗加熱ヒーターであり、ステージ31に埋設されている。原料ヒーター41は、給電線42を介してヒーター電源(PS)43に接続されている。原料ヒーター41は、固体原料Aを例えば300℃程度まで加熱できるように構成されている。この原料ヒーター41は、固体原料Aを気化させるための熱エネルギーを供給する原料加熱手段を構成している。
【0029】
ステージ31には、温度計測手段としての熱電対(図示せず)が配備されており、ステージ31の温度をリアルタイムで計測できるようになっている。なお、原料の加熱温度や処理温度は、特に断りのない限り、ステージ31の温度を意味する。
【0030】
<排気装置>
本実施の形態の成膜装置100は、処理容器1内を真空に保持するための減圧排気を行う排気手段としての排気装置51を備えている。排気装置51は、例えば自動圧力調整弁や高速真空ポンプ(図示省略)などを備えており、処理容器1内の排気を行って処理容器1内を真空引きできるように構成されている。処理容器1の上部には、排気装置51に接続される排気部である排気口52が設けられている。排気口52をウエハWに近接した処理容器1の上部に設けることによって、成膜効率を高めることができる。ここで、「処理容器1の上部」とは、固体原料Aを収容する原料トレー33を支持するステージ31の上面よりも上方位置を意味する。従って、排気口52は処理容器1の側壁1bに設けてもよい。ただし、処理容器1内で成膜原料ガスのスムーズな流れが形成されるように、保持部材21に保持されたウエハWよりも上方位置に排気口52を設けることが好ましい。
図1の成膜装置100では、排気口52は天壁1aに設けられている。排気口52には排気管53を介して排気装置51が接続されている。なお、本実施の形態において、排気装置51は、成膜装置100の一構成部をなすが、成膜装置100とは別に外付けの排気装置を装着して用いることもできる。
【0031】
処理容器1内の上部には、均一な排気を行うためのバッフル板54が設けられている。バッフル板54は、伝熱プレート12の周囲にほぼ環状に設けられている。また、バッフル板54は、保持部材21によって支持されたウエハWの下面(被処理面)とほぼ面一になるように配置されている。バッフル板54は、多数の貫通孔54aを有しており、排気口52へ向かう気流を整え、処理容器1内が均等に排気されるようにする。
【0032】
<ガス供給装置>
本実施の形態の成膜装置100は、さらに、処理容器1内に気化促進ガスを供給するガス供給手段としてのガス供給装置71を備えている。処理容器1の下部には、ガス供給装置71に接続されるガス導入部であるガス導入口72が設けられている。ここで、「処理容器1の下部」とは、固体原料Aを収容する原料トレー33を支持するステージ31の上面よりも下方位置を意味する。ガス導入口72を処理容器1の下部に設けることによって、処理容器1内で成膜原料ガスのスムーズな流れが形成される。従って、ガス導入口72は処理容器1の側壁1bに設けてもよいが、
図1の成膜装置100のように、底壁1cに設けることが好ましい。ガス導入口72には、ガス供給管73を介してガス供給装置71が接続されている。
【0033】
ガス供給装置71は、図示しない一つ以上のガス供給源、流量制御装置、バルブ、気化器、溶剤タンク等を有することができるが、ここでは図示及び説明を省略する。ガス供給源は、固体原料Aとの反応性を有する気化促進ガスや、成膜原料ガスと反応する成膜促進ガスの供給源を含むことができるし、さらに、例えば希ガスや、処理容器1内をクリーニングするためのクリーニングガス、処理容器1内の雰囲気置換をするためのパージガスなどの供給源を含むことができる。これらのガスは、ガス供給管73及びガス導入口72を介して処理容器1内へ供給される。なお、
図1では1本のガス供給管73を描いているが、複数本でもよい。気化促進ガスは、固体原料Aと反応して成膜原料ガスを生成するガスであり、例えばギ酸(HCOOH)、一酸化炭素(CO)、三フッ化リン(PF
3)、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオン(H(hfac))等のガスを用いることが好ましい。なお、ここでhfacは1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオネートである。成膜促進ガスは、固体原料Aとは反応しないが、成膜原料ガスと反応して成膜を促すガスであり、例えばH
2が挙げられる。本実施の形態において、ガス供給装置71は、成膜装置100の一構成部をなすが、成膜装置100とは別に外付けのガス供給装置を装着して用いることもできる。
【0034】
<制御部>
成膜装置100を構成する各構成部(例えば、ヒーター電源14、ヒーター電源43、排気装置51、ガス供給装置71など)は、制御部90に接続されて制御される構成となっている。成膜装置100における制御系統の構成例を
図2に示した。コンピュータである制御部90は、CPUを備えたコントローラ91と、このコントローラ91に接続されたユーザーインターフェース92および記憶部93を備えている。ユーザーインターフェース92は、工程管理者が成膜装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードやタッチパネル、成膜装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を有している。記憶部93には、成膜装置100で実行される各種処理をコントローラ91の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウェア)や処理条件データ等が記録されたレシピが保存されている。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース92からの指示等にて任意の制御プログラムやレシピを記憶部93から呼び出してコントローラ91に実行させることで、コントローラ91の制御下で、成膜装置100の処理容器1内で所望の処理が行われる。
【0035】
なお、前記制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体94に格納された状態のものを記憶部93にインストールすることによっても利用できる。コンピュータ読み取り可能な記録媒体94としては、特に制限はないが、例えばCD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリ、DVDなどを使用できる。また、前記レシピは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0036】
<成膜処理の手順と成膜方法>
次に、成膜装置100における成膜処理の手順と成膜方法について説明する。成膜装置100では、制御部90の制御に基づき、成膜処理が行われる。具体的には、まず、ゲートバルブ62を開放した状態で、図示しない搬送装置により、開口61から固体原料Aを収納した原料トレー33をステージ31から突出した状態のリフトピン34に受け渡し、次いでリフトピン34を下降させて原料トレー33をステージ31上に載置する。これにより、固体原料Aがステージ31にセットされる。また、ゲートバルブ62を開放した状態で、図示しない搬送装置により開口61からウエハWを処理容器1内に搬入し、保持部材21に受け渡す。次に、保持部材21を上昇させ、ウエハWの周縁部をクランプして基板ヒーター11が内蔵された伝熱プレート12にウエハWを密着させた状態に固定する。
【0037】
次に、ゲートバルブ62を閉じ、排気装置51を作動させて処理容器1内を真空にする。この際、原料トレー33内の固体原料Aが飛散しないように、徐々に真空引きを行う。そして、基板ヒーター11によりウエハWを加熱するとともに、原料ヒーター41により原料トレー33内の固体原料Aを加熱する。
【0038】
(成膜方法)
ここで、本実施の形態の成膜装置100を使用して行われる二通りの典型的な成膜方法について、
図3及び
図4を参照しながら説明する。なお、
図3及び
図4は、成膜装置100の一部の構成のみを簡略化して示している。
【0039】
(第1の方法;化学反応気化方法)
第1の方法は、固体原料Aの蒸気圧が極めて低く、加熱するだけではほとんど気化しない場合に有効である。この方法は、
図3に示したように、固体原料Aを加熱しながら、ガス供給装置71からガス導入口72を介して固体原料Aと反応性を有する気化促進ガスBを供給する。そして、固体原料Aと気化促進ガスBとの反応によって、成膜原料ガスCを生成させる。この成膜原料ガスCをウエハWの被処理面で反応させて薄膜を生成させる。この場合のウエハW表面での反応は主に熱分解反応である。すなわち、成膜原料ガスCが基板ヒーター11によって高温に熱せられたウエハWの被処理面で熱分解し、薄膜を形成する反応である。このような反応の代表的な例として、固体原料Aが無水第二ギ酸銅(Cu(HCOO)
2)、気化促進ガスBがギ酸(HCOOH)、成膜原料ガスCが第一ギ酸銅(Cu(HCOO))である場合を挙げることができる。さらに、他の組み合わせとして、例えば、
(1)固体原料Aがニッケル金属粉末、気化促進ガスBが一酸化炭素(CO)、成膜原料ガスCがNi(CO)
4である場合;
(2)固体原料Aがタングステン金属粉末、気化促進ガスBが一酸化炭素(CO)、成膜原料ガスCがW(CO)
6である場合;
(3)固体原料Aがルテニウム金属粉末、気化促進ガスBが一酸化炭素(CO)、成膜原料ガスCがRu
3(CO)
12である場合;
(4)固体原料Aがプラチナ金属粉末、気化促進ガスBが三フッ化リン(PF
3)、成膜原料ガスCがPt(PF
3)
4である場合等を挙げることができる。
【0040】
(第2の方法;単純加熱気化方法)
第2の方法は、固体原料Aの蒸気圧が低いが、加熱によって気化させることができる場合に有効である。この方法は、
図4に例示したように、固体原料Aを加熱して気化ガスA’を生成させ、この気化ガスA’を保持部材21に保持されたウエハWの下面(被処理面)に供給し、ウエハWの表面で反応させて薄膜を成膜させる。この場合の反応は、主に高温に加熱されたウエハWの表面で生じる熱分解反応である。すなわち、ステージ31の固体原料Aが原料ヒーター41によって加熱されて生成した気化ガスA’が成膜原料ガスであり、基板ヒーター11によって熱せられたウエハWの被処理面で熱分解し、薄膜を形成する。このような熱分解による成膜を行う固体原料としては、例えばタングステンカルボニル(W(CO)
6)、コバルトカルボニル(Co
2(CO)
8)などの金属カルボニル化合物、ニッケルジヘキサフルオロアセチルアセトン(Ni(hfac)
2)を挙げることができる。
【0041】
図1の成膜装置100では、処理容器1の底壁1cにガス導入口72を、処理容器1の天壁1aにガス排気口52を、それぞれ設け、ガス供給装置71、排気装置51に接続する構成とした。このような配置によって、上記第1の方法(
図3)では、固体原料Aと反応させる相手方である、ガス供給装置71からガス導入口72を介して供給される気化促進ガスBの流れ方向が、全体的に下から上へ向かう方向になる。そのため、固体原料Aと気化促進ガスBとの反応により生成する成膜原料ガスCの流れもほぼ同方向となり、排気口52の近くに配置されたウエハWの表面へ成膜原料ガスCを効率的に供給できる。また、上記第2の方法(
図4)では、原料トレー33の固体原料Aからの気化ガスA’の上昇流が、そのまま排気口52へ向かうガスの流れを形成するので、ガスの流れに乱れを生じさせることなく、排気口52の近くに配置されたウエハWへ向けて効率的に成膜原料ガスである気化ガスA’を供給することができる。
【0042】
以上のようにして、保持部材21に保持されたウエハWの下面に所望の薄膜を形成することができる。成膜処理が終了したら、原料トレー33内の固体原料Aが飛散しないように、処理容器1内の圧力を徐々に上昇させていき、所定圧力に達した段階でゲートバルブ62を開放し、図示しない搬送装置によって開口61からウエハWを搬出する。成膜装置100における成膜処理は、制御部90の記憶部93に保存されたレシピに基づき行われる。そして、コントローラ91がそのレシピを読み出して成膜装置100の各構成部へ制御信号を送出することにより、所望の条件で成膜処理が行われる。
【0043】
<作用>
本実施の形態の成膜装置100では、固体原料Aを処理容器1内のステージ31上に配置するので、成膜原料ガス(固体原料Aが気化促進ガスBと反応して生成する成膜原料ガスC、又は固体原料Aの気化ガスA’)を処理容器内で生成させることができる。このように、固体原料Aと成膜対象となるウエハWとの間に配管が存在しないため、成膜原料ガスC又は気化ガスA’が輸送途中でトラップされることがなく、これらをウエハWの表面へ安定して供給できる。また、固体原料Aをガス化させるための溶剤を用いずにすむため、膜中への不純物の混入が生じにくく、液体気化器を必要としないため装置構成も簡略化できる。さらに、成膜装置100では、原料トレー33を用いて固体原料Aを収容するため、固体原料Aを、ウエハWを搬送する通常の搬送装置で搬入、搬出することが可能であり、固体原料Aの交換も容易である。
【0044】
また、本実施の形態の成膜装置100では、ウエハWの成膜対象面(被処理面)が下を向いてステージ31に配置された固体原料Aの上方に対向して配置されることにより、成膜原料ガスCや固体原料Aの気化ガスA’による成膜が効率的に行われ、ウエハWの面内での処理の均一性が向上する。また、ウエハWの被処理面が下を向いているため、パーティクルがウエハWの被処理面に付着することも抑制できる。
【0045】
[変形例]
次に、
図5〜8を参照しながら、成膜装置100の変形例について説明する。なお、
図5〜8では、説明の便宜上、各変形例の特徴部分以外の構成は適宜省略している。また、
図1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
図5の成膜装置100Aは、ガス導入部としてのガス導入口72を処理容器1の側部に設けた第1の変形例である。ここで、「処理容器1の側部」とは、側壁1bの高さ方向の中央付近を意味し、具体的には、側壁1bにおいて、固体原料Aを収容する原料トレー33を支持するステージ31の上面よりも上方であり、かつ保持部材21に保持されたウエハWよりも下方の位置を意味する。このようにガス導入口72を側壁1bに設けた成膜装置100Aにおいて、排気口52は
図1と同様に天壁1aに設けている。一方、
図6の成膜装置100Bは、排気口52を底壁1cに設け、ガス導入口72を
図5と同様に処理容器1の側部に設けた第2の変形例である。
図6では、バッフル板54をステージ31の上面とほぼ面一に設けている。
図5及び
図6に例示したように、ガス導入口72を処理容器1の側部に設けることによって、上記第1の方法(化学反応気化方法)を行う場合に、ガス導入口72から導入される気化促進ガスBを原料トレー33に収容された固体原料Aに容易に接触させることができるので有利である。このように、成膜装置100におけるガス導入部と排気部の配置は、種々の変形が可能である。成膜効率を高めるためには、排気口52はウエハWに近接して設けることが好ましい。また、特に上記第1の方法(化学反応気化方法)を行う場合は、例えば
図1、
図5、
図6に示したように、ウエハWと固体原料Aとの対向空間を内側に挟み込むようにガス導入口72と排気口52とを配置し、該対向空間に気化促進ガスBの流れが通過するように構成することが好ましい。なお、
図5及び
図6の変形例においては、ガス導入口72が側壁1bを貫通する開口となっているが、ガス導入部に例えばノズルを設けてもよく、さらに、該ノズルを環状に配置して側壁1bの内周全体から均等にガス導入を行うこともできる。
【0047】
図7の成膜装置100Cは、固体原料Aを収容した原料トレー33を載置した状態でステージ31を水平方向に回転させる駆動機構を備えた第3の変形例である。この成膜装置100Cでは、支柱32に例えばモータなどを有する回転駆動部39が連結されており、支柱32を回転軸としてステージ31を水平方向に回転させることができる。ステージ31を回転させることにより、固体原料Aと気化促進ガスBとの反応により生じた成膜原料ガスCや、固体原料Aから発生した気化ガスA’の流れが、処理容器1内で偏ることがなくなる。その結果、保持部材21に保持されたウエハWの下面に成膜原料ガスCや気化ガスA’を均等に供給することができる。従って、ウエハWの面内での成膜膜厚の均一性を高めることができる。
【0048】
図8の成膜装置100Dは、ステージ31に載置された原料トレー33と保持部材21に支持されたウエハWとの間に、シャッター110を設けた第4の変形例である。例えば、上記第1の方法(化学反応気化方法)では、ガス供給装置71からの気化促進ガスBの導入時間によって、成膜原料ガスCがウエハWの表面に供給される時間(つまり、成膜反応が生じる時間)を制御することが可能であるが、より厳密な時間管理が求められる場合もある。また、上記第2の方法(単純加熱気化方法)では、固体原料Aは、ステージ31で加熱されると、徐々に気化して気化ガスA’を発生させていく。そのため、気化ガスA’がウエハWの表面に供給される時間を正確に管理することが難しい場合がある。以上のことから、成膜原料ガスCや固体原料Aからの気化ガスA’をウエハWの表面に供給する時間をコントロールできるようにすることが好ましい。そこで、
図8の成膜装置100Dでは、シャッター110を設け、シャッター110が閉じた状態では、成膜原料ガスCや気化ガスA’が遮られ、実質的にウエハWに供給されないようにしている。
【0049】
シャッター110は、多段(例えば2段)に設けられたスライド板111(111A,111B)と、このスライド板111を進出・退避させる駆動部112と、を備えている。駆動部112を作動させることによって、スライド板111A及び111Bは、処理容器1内の原料トレー33の上方位置へ進出し、あるいは当該位置から退避する。なお、スライド板111は1枚板により構成してもよい。スライド板111は、処理容器1の側壁1bを貫通しており、その周囲には、処理容器1内の気密状態を保持するために伸縮可能なベローズ113が設けられている。成膜装置100Dでは、シャッター110を閉じた状態でゲートバルブ62を開放して処理容器1内にウエハWを搬入する。次に、ゲートバルブ62を閉じ、ウエハWを保持部材21に保持して伝熱プレート12内の基板ヒーター11によって予備加熱する。また、ステージ31の原料トレー33内の固体原料Aを原料ヒーター41により加熱する。そして、上記第1の方法(化学反応気化方法)では、ガス供給装置71からの気化促進ガスBと固体原料Aとの反応により生成する成膜原料ガスCが所定の濃度に達するまではシャッター110を閉じておき、所定の濃度に達した段階で一定時間シャッター110を開放して成膜原料ガスCをウエハWの表面に供給する。また、上記第2の方法(単純加熱気化方法)では、固体原料Aからの気化ガスA’が所定の濃度に達するまではシャッター110を閉じておき、所定の濃度に達した段階で一定時間シャッター110を開放して、固体原料Aからの気化ガスA’をウエハWの表面に供給する。そして、いずれの場合も、所定時間の経過後、シャッター110を閉じ、ゲートバルブ62を開けてウエハWを搬出することにより、1枚のウエハWに対する成膜処理が終了する。このように、シャッター110の開閉により、成膜原料ガスCや固体原料Aからの気化ガスA’のウエハW表面への供給時間及び供給総量を精密に制御することができる。
【0050】
以上のように、本実施の形態の成膜装置は、種々の変形が可能である。また、上記の各変形例は、発明の効果を損なわない範囲で組み合わせることができる。例えば、
図5及び
図6に例示した変形例において、
図7に示した変形例のようにステージ31を回転させてもよいし、
図8に示した変形例のようにシャッター110を設けてもよい。さらに、
図8に示した変形例において、
図7に示した変形例のようにステージ31を回転させてもよい。
【0051】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図9は、第2の実施の形態に係る成膜装置101の概略構成を示す断面図である。本実施の形態では、固体原料Aを加熱する手段として、ランプヒーターを使用する。なお、以下の説明では、
図9の成膜装置101の特徴的構成を中心に説明し、成膜装置101において、
図1の成膜装置100と同様の構成には同じ符号を付して説明を省略する。
【0052】
本実施の形態の成膜装置101は、原料支持部として、例えばリング状をした昇降可能な可動部材121と、この可動部材121から立設され、原料トレー33の底面に当接して支持する複数(2本のみ図示)の支持突起122と、可動部材121を昇降させるシャフト123と、シャフト123を駆動する駆動部124と、を備えている。可動部材121及び支持突起122は、いずれも熱線を透過する材料、例えば石英により構成されている。駆動部124は、処理容器1の外部下方に設けられている。可動部材121と駆動部124はシャフト123により連結されている。シャフト123は、処理容器1の底壁1cを貫通しており、その周囲には、処理容器1内の気密状態を保持するために伸縮可能なベローズ125が設けられている。シャフト123を介して駆動部124により可動部材121を上下させることにより、支持突起122によって原料トレー33を保持する高さを調節できる。従って、例えば図示しない搬送装置との間での原料トレー33の受け渡しを行ったり、成膜処理中の原料トレー33中の固体原料AとウエハWとの間隔(ギャップG)を任意に調節できるように構成されている。
【0053】
また、可動部材121の直下の処理容器1の底には、ランプユニット131が設けられている。ランプユニット131は、その外延を画す仕切り壁132と、仕切り壁132に支持された例えば石英などの熱線を透過させる材料よりなる透過窓133と、透過窓133の下方に配置された原料加熱手段としての複数の加熱ランプ134と、を備えている。加熱ランプ134より放出された熱線は、透過窓133を透過して原料トレー33の下面に照射され、原料トレー33に収容された固体原料Aを加熱できるようになっている。
【0054】
本実施の形態の成膜装置101では、オン/オフの切り換えによる加熱/降温の応答性に優れた加熱ランプ134を有するランプユニット131を用いて固体原料Aの加熱を行うため、原料の昇温速度が速く、短時間で固体原料Aを加熱することができる。従って、成膜処理全体のスループットを向上させることができるとともに、固体原料Aの加熱温度の制御も容易になる。また、本実施の形態の成膜装置101では、昇降変位可能に設けられた可動部材121の複数の支持突起122が、原料トレー33を支持する原料支持部としての機能と、搬送装置(図示省略)との間で原料トレー33の受け渡しを行う際のリフトピンとしての機能を兼ね備えているため、部品点数を削減し、装置構成を簡素化することが可能である。
【0055】
また、成膜装置101では、可動部材121の支持突起122により、原料トレー33を点接触の状態で支持することによって、ランプユニット131からの熱を直接原料トレー33の裏面に伝えることが可能であり、固体原料Aの加熱効率を高めることができる。
【0056】
また、成膜装置101では、成膜処理中の可動部材121の支持突起122の高さ位置の設定を変えることにより、ギャップGを任意に設定できる。従って、固体原料Aの種類、気化促進ガスB(必要な場合)の種類や流量、処理圧力などの他の成膜条件に応じてギャップGを微調整して最適化することにより、成膜効率を高めたり、ウエハWの面内/面間での処理の均一性を改善したりすることができる。
【0057】
[変形例]
次に、
図10を参照しながら、成膜装置101の変形例について説明する。なお、
図10では、
図9と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図9の成膜装置101では、伝熱プレート12に抵抗加熱型の基板ヒーター11を内蔵させてウエハWを加熱するように構成したが、抵抗加熱型の基板ヒーター11に替えて、
図10に示す成膜装置101Aのように、ランプユニット141を設けてもよい。ランプユニット141は、その外延を画す仕切り壁142と、仕切り壁142に支持された例えば石英などの熱線を透過させる材料よりなる透過窓143と、透過窓143の上方に配置された原料加熱手段としての複数の加熱ランプ144と、を備えている。加熱ランプ144より放出された熱線は、透過窓143を透過してウエハWの上面(裏面)に照射され、ウエハWを所定温度に加熱できるようになっている。なお、
図10では、保持部材21によってウエハWを透過窓143に接触させた状態で保持しているが、保持部材21の高さを調節してウエハWが透過窓143から離間させた状態に保持することもできる。
【0058】
本実施の形態の成膜装置101,101Aにおける他の構成及び効果は、第1の実施の形態と同様である。なお、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に例えば
図5、
図6及び
図8に例示したような変形例の適用が可能であり、上述した効果が得られる。
【0059】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図11は、第3の実施の形態に係る成膜装置102の概略構成を示す断面図である。なお、以下の説明では、
図11の成膜装置102の特徴的構成を中心に説明し、成膜装置102において、
図1の成膜装置100と同様の構成には同じ符号を付して説明を省略する。本実施の形態の成膜装置102では、静電吸着機構によってウエハWを保持する。処理容器1内の上部に配置された伝熱プレート12内には、基板ホルダとしての静電チャック151が埋設されている。静電チャック151は、図示しない電極層を誘電体層の間に挟みこんだ構造を有しており、該電極層は、給電線152を介して直流電源153に接続されている。そして、静電チャック151に直流電圧を印加することによって、静電チャック151はクーロン力によってウエハWを静電吸着して伝熱プレート12の下面に固定する。また、直流電源153から静電チャック151への電圧の印加を停止することにより、ウエハWの固定を解除することができる。
【0060】
以上のように、本実施の形態では、基板ホルダとして静電チャック151を備えていることにより、簡易な構成でウエハWを保持できる。
【0061】
なお、
図12に例示した成膜装置102Aのように、静電チャック151に加え、さらに
図1と同様に保持部材21、吊り支柱22、可動部材23、駆動部25等を有する保持機構を設けてもよい。すなわち、成膜装置102Aでは、基板ホルダとして、静電チャック151と保持部材21とを有している。この場合、静電チャック151を主とし、保持部材21を従(補助)として、ウエハWを保持してもよいし、保持部材21を主とし、静電チャック151を従(補助)としてウエハWを保持してもよい。
【0062】
本実施の形態の成膜装置102,102Aにおける他の構成及び効果は、第1の実施の形態と同様である。なお、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、例えば
図5、
図6、
図7及び
図8に例示したような変形例の適用が可能であり、上述した効果が得られる。また、成膜装置102,102Aにおいて、第2の実施の形態と同様にランプユニットを配備することもできる。
【実施例】
【0063】
次に、実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
実施例1
固体原料Aとして、無水第二ギ酸銅(Cu(HCOO)
2)のパウダーを使用した。
図6と同様の構成の成膜装置100Bを用い、ガス供給装置71からガス導入口72を介して処理容器1にパージガスとしてN
2ガスを100mL/min(sccm)の流量で導入し、APC (Auto Pressure Controller)によって圧力を13.3Pa(100mTorr)に調整してから、ステージ31上の原料トレー33に収容された固体原料Aを130℃に加熱した。同時に、伝熱プレート12に密着させた状態で保持部材21に保持されたシリコン基板を150℃まで加熱しておいた。その後、N
2ガスの供給を止め、ガス供給装置71からガス導入口72を介して気化促進ガスBであるギ酸(HCOOH)ガスを100mL/min(sccm)の流量で導入した。この間、圧力は13.3Pa(100mTorr)に保った。HCOOHガスを10分間流し、その後シリコン基板を取り出すと、シリコン基板の表面に金属銅膜が100nm程度の膜厚で成膜していた。金属銅膜は、固体原料Aの無水第二ギ酸銅(Cu(HCOO)
2)が気化促進ガスBのギ酸(HCOOH)と反応して成膜原料ガスCとしての第一ギ酸銅(Cu(HCOO))を生成し、この第一ギ酸銅(Cu(HCOO))がシリコン基板の表面で熱分解することによって成膜されたものである。このように、成膜装置100Bにより、固体原料Aを用いて効率よく金属銅膜を成膜できることが確認された。本実施例では、固体原料Aを処理容器1内のステージ31で加熱するため、原料供給中の固化によるトラップや金属銅膜への溶剤の混入は発生せず、パーティクル汚染も生じなかった。
【0064】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。当業者は本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を成し得、それらも本発明の範囲内に含まれる。例えば、上記実施の形態では、半導体ウエハを処理対象とする成膜装置を例に挙げて説明したが、液晶表示装置に用いるガラス基板やセラミック基板等を処理対象とする成膜装置にも本発明を適用できる。