特許第5792889号(P5792889)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5792889窒化ケイ素材料の選択的研磨のための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792889
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】窒化ケイ素材料の選択的研磨のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20150928BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20150928BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20150928BHJP
【FI】
   C09K3/14 550D
   C09K3/14 550Z
   H01L21/304 622D
   B24B37/00 H
【請求項の数】28
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-505325(P2014-505325)
(86)(22)【出願日】2012年4月13日
(65)【公表番号】特表2014-515777(P2014-515777A)
(43)【公表日】2014年7月3日
(86)【国際出願番号】US2012033463
(87)【国際公開番号】WO2012142374
(87)【国際公開日】20121018
【審査請求日】2014年11月26日
(31)【優先権主張番号】13/087,857
(32)【優先日】2011年4月15日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500397411
【氏名又は名称】キャボット マイクロエレクトロニクス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ワード
【審査官】 平塚 政宏
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0081281(US,A1)
【文献】 特開2010−087457(JP,A)
【文献】 特開2008−187191(JP,A)
【文献】 特開2005−175437(JP,A)
【文献】 特開2001−323256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
H01L 21/304
B24B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学機械研磨(CMP)プロセスでの窒化ケイ素含有基材の研磨に適した酸性の水性研磨組成物であって、
(a)0.01〜10質量%の粒子状焼成セリア研磨剤、
(b)(a)ポリ(ビニルピリジン)ポリマーおよび(b)ポリ(ビニルピリジン)ポリマーと四級アンモニウム置換ポリマーとの混合物からなる群から選ばれた、10〜100000ppmの少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(c)10〜200000ppmのポリオキシアルキレンポリマー、ならびに、
(d)それらのための水性キャリア
を含んでなり、該組成物が、3〜6の範囲のpHを有する、組成物。
【請求項2】
前記研磨剤が、前記組成物中に、0.05〜5質量%の範囲の濃度で存在している、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種のカチオン性ポリマーが、前記組成物中に、15〜10000ppmの範囲の濃度で存在している、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリオキシアルキレンポリマーが、前記組成物中に、200〜100000ppmの範囲の濃度で存在している、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリオキシアルキレンポリマーが、ポリ(エチレングリコール)ポリマー、ポリ(エチレングリコール)−コ−ポリ(プロピレングリコール)ブロック共重合体、またはそれらの組合わせを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリオキシアルキレンポリマーが、300〜1500の範囲の平均の数のエチレングリコールモノマー単位を含むポリ(エチレングリコール)ポリマーを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記四級アンモニウム置換ポリマーが、四級アンモニウム置換アクリレートまたはメタクリレートポリマーを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリ(ビニルピリジン)ポリマーが、ポリ(4−ビニルピリジン)を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリ(ビニルピリジン)ポリマーが、ポリ(2−ビニルピリジン)を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリ(ビニルピリジン)ポリマーが、少なくとも1種のビニルピリジンモノマー、ならびにノニオン性モノマーおよびカチオン性モノマーからなる群から選ばれた少なくとも1種のコモノマーを含む共重合体である、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種のカチオン性ポリマーが、ポリ(ビニルピリジン)ポリマーおよび四級アンモニウム置換アクリレートもしくはメタクリレートポリマーの組合わせを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種のカチオン性ポリマーが、10〜90ppmのポリ(ビニルピリジン)ポリマーおよび15〜100ppmのポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムハライド)ポリマーの組合わせを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
前記水性担体が、脱イオン水を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
基材の表面を研摩するための化学機械研磨(CMP)方法であって、該方法は、請求項1記載の組成物で該基材の該表面を研摩することを含み、該組成物が、使用の際に、0.01〜2質量%の前記セリア研磨剤、10〜1000ppmの前記少なくとも1種のカチオン性ポリマー、および10〜2000ppmの前記ポリオキシアルキレンポリマーを含んでいる、方法。
【請求項15】
前記基材の前記表面が、窒化ケイ素、多結晶シリコン、および二酸化ケイ素を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
化学機械研磨(CMP)プロセスにおいて多結晶シリコンに対する窒化ケイ素の選択的な除去に適する酸性の水性研磨組成物であって、該組成物が、
(a)0.05〜5質量%の粒子状焼成セリア研磨剤、
(b)(a)ポリ(ビニルピリジン)ポリマーおよび(b)ポリ(ビニルピリジン)ポリマーと四級アンモニウム置換ポリマーとの混合物からなる群から選ばれた、15〜10000ppmの少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(c)ポリ(エチレングリコール)ポリマー、ポリ(エチレングリコール)−コ−ポリ(プロピレングリコール)ブロック共重合体、またはそれらの組合わせから選ばれた、200〜100000ppmのポリオキシアルキレンポリマー、ならびに、
(d)それらのための水性キャリア
を含み、該組成物が3〜6の範囲のpHを有する組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1種のカチオン性ポリマーが、10〜90ppmのポリ(ビニルピリジン)ポリマーおよび15〜100ppmのポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムハライド)ポリマーの組合わせを含む、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記ポリ(エチレングリコール)ポリマーが、200〜2000の範囲の平均の数のエチレングリコールモノマー単位を含む、請求項16記載の組成物。
【請求項19】
基材の表面を研磨するための化学機械研磨(CMP)方法であって、該方法は、請求項16記載の組成物で該基材の該表面を研摩することを含み、該組成物は、使用の際に、0.05〜0.5質量%の前記セリア研磨剤、15〜100ppmの前記少なくとも1種のカチオン性ポリマー、および200〜1000ppmの前記ポリオキシアルキレンポリマーを含んでいる、方法。
【請求項20】
前記基材の前記表面が、窒化ケイ素、多結晶シリコン、および二酸化ケイ素を含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
基材の表面からの、多結晶シリコンの除去に優先しての窒化ケイ素の選択的な除去のための化学機械研磨方法であって、該方法は以下の工程、
(a)窒化ケイ素および多結晶シリコン含有基材の表面を、研磨パッドおよび酸性の水性CMP組成物に接触させる工程、および
(b)該CMP組成物の一部の、該パッドと該基材の間の該表面との接触を維持しながら、該基材から窒化ケイ素を研摩するのに十分な時間、該研磨パッドと該基材の間に相対的な動きを生じさせる工程
を含んでなり、該CMP組成物が、
(i)0.01〜2質量%の粒子状焼成セリア研磨剤、
(ii)(a)ポリ(ビニルピリジン)ポリマーおよび(b)ポリ(ビニルピリジン)ポリマーと四級アンモニウム置換ポリマーとの混合物からなる群から選ばれた、10〜1000ppmの少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(iii)10〜2000ppmのポリオキシアルキレンポリマー、ならびに、
(iv)それらのための水性キャリア
を含む、方法。
【請求項22】
前記CMP組成物の前記少なくとも1種のカチオン性ポリマーが、ポリ(ビニルピリジン)ポリマーおよび四級アンモニウム置換ポリマーの組合わせを含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記四級アンモニウム置換ポリマーが、四級アンモニウム置換アクリレートまたはメタクリレートポリマーを含む、請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記四級アンモニウム置換ポリマーが、ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムハライド)ポリマーを含む、請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記CMP組成物の前記少なくとも1種のカチオン性ポリマーが、ポリ(2−ビニルピリジン)ポリマー、ポリ(4−ビニルピリジン)ポリマー、ならびに少なくとも1種のビニルピリジンモノマーおよびノニオン性モノマーとカチオン性モノマーからなる群から選ばれた少なくとも1種のコモノマーを含む共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種のポリマーを含む、請求項21記載の方法。
【請求項26】
前記CMP組成物の前記ポリオキシアルキレンポリマーが、ポリ(エチレングリコール)ポリマー、ポリ(エチレングリコール)−コ−ポリ(プロピレングリコール)ブロック共重合体、またはそれらの組合わせを含む、請求項21記載の方法。
【請求項27】
前記CMP組成物が、3〜6の範囲のpHを有する、請求項21記載の方法。
【請求項28】
前記基材の前記表面が、更に二酸化ケイ素を含む、請求項21記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨組成物および方法に関する。より具体的には、本発明は、窒化ケイ素含有基材の研磨方法およびそのための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路用の半導体ウエハは、典型的には、基材、例えばケイ素またはガリウムヒ素、を含んでおり、その上に複数のトランジスタが形成される。トランジスタは、この基材中およびこの基材上の層中のパターン化された領域によって、この基材に、化学的および物理的に接続される。トランジスタおよび層は、主にいずれかの形態の酸化ケイ素(SiO)を含む層間誘電体(ILD)によって分離されている。トランジスタは、よく知られた多層配線の使用によって互いに連結される。典型的な多層配線は、1つまたは2つ以上の以下の材料、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、タンタル(Ta)、アルミニウム−銅(Al−Cu)、アルミニウム−ケイ素(Al−Si)、銅(Cu)、タングステン(W)、ドープ多結晶シリコン(poly-Si)、およびそれらの種々の組合わせ、からなる積層された薄膜に含まれる。更に、トランジスタまたはトランジスタの群は、しばしば、絶縁材料、例えば二酸化ケイ素、窒化ケイ素および/または多結晶シリコンの絶縁材料で充填されたトレンチの使用によって、互いに隔離されている。半導体製造の間に、前記の材料の種々の層を、ウエハ上の回路の種々の要素を形成するために除去しなければならず、それは典型的には化学機械研磨(CMP)によって達成される。
【0003】
基材の表面のCMPのための組成物および方法は、当技術分野でよく知られている。半導体基材(例えば、集積回路製造用)の表面のCMP用の研磨組成物(研磨スラリー、CMPスラリー、およびCMP組成物としても知られている)は、典型的には研磨剤、種々の添加化合物などを含んでいる。
【0004】
従来のCMP技術では、基材支持材または研磨ヘッドは、支持体組立体上に搭載され、そしてCMP装置内で、研摩パッドと接触して配置される。この支持体組立体は、基材を研磨パッドに押し付けて、基材に制御可能な圧力を与える。パッドと支持体は、それに取付けられた基材とともに、互いに対して動かされる。パッドと基材の相対的な動きは、基材の表面を研摩して、基材表面から材料の一部を除去し、それによって基材を研磨するように作用する。基材表面の研磨は、典型的に、研磨組成物(例えば、CMP組成物中に存在する酸化剤、酸、塩基、または他の添加剤によって)、の化学的活性および/または研磨組成物中に懸濁された研磨剤の機械的活性によって促進される。典型的な研磨材料としては、二酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、および酸化スズが挙げられる。
【0005】
一般に、CMPは、表面の、同時の化学的および機械的研摩、例えば平坦でなく、第1の層がその上に形成された、第2の層の表面を露出させるための、上に重なる第1の層の研摩、を含んでいる。そのようなプロセスの1つが、Beyerらの米国特許第4,789,648号明細書中に記載されている。簡単には、Beyerらは、研磨パッドおよびスラリーを用いて、上に重なる材料の第1の層の表面が、被覆された第2の層の上面と同一平面になるまで、第2の層よりも速い速度で第1の層を除去するCMPプロセスを開示している。化学機械研磨のより詳細な説明が、米国特許第4,671,851号、第4,910,155号、および第4,944,836号明細書中に見出される。
【0006】
例えば、Nevilleらの米国特許第5,527,423号明細書には、金属層の表面を、水性媒質中に懸濁された高純度の微細な金属酸化物粒子を含む研磨スラリーと接触させることによって、金属層を化学機械研磨する方法が記載されている。あるいは、研磨材料は、研磨パッド中に組み込まれていてもよい。Cookらの米国特許第5,489,233号明細書には、表面の肌理またはパターンを有する研磨パッドの使用を開示しており、また、Bruxvoortらの米国第5,958,794号明細書には、研磨剤が固定された研磨パッドが開示されている。
【0007】
知られているCMPスラリー組成物は、典型的には限られた目的に好適であるが、多くの慣用の組成物は、ウエハ製造において用いられる絶縁材料の除去の対して、容認出来ない研磨速度および、対応して容認できない選択性を示す。更に、多くの知られている研磨スラリーは、下にある膜に対して貧弱な膜除去特性を示し、または有害な膜腐食をもたらし、それが不十分な製造収率をもたらす。
【0008】
集積回路装置の技術が進歩するとともに、慣用の材料が、進歩した集積回路に必要とされる性能の水準を達成するために、新規な、そして異なる方法で用いられている。特に、窒化ケイ素、酸化ケイ素、および多結晶シリコンが、種々の組み合わせで、得られた新規な、そして常により複雑な装置構成に用いられている。通常は、構造の複雑性および性能特性は、異なる用途に亘って変わる。窒化ケイ素、酸化ケイ素および多結晶シリコン材料の研磨速度が、特定のIC装置についての研磨の要求事項に合致するように、CMPの間に、調整または適合されることを可能にする、方法および組成物に対する継続した要求が存在している。
【0009】
例えば、多くのIC装置用途で、速い窒化ケイ素除去速度を達成する、継続した必要性がある。従来の研磨スラリーは、例えば、浅いトレンチ絶縁(STI)におけるような、「窒化ケイ素で停止」用途に設計されている。典型的なSTIスラリーは、妥当な窒化ケイ素除去速度を得るために、高pHおよび高研磨剤濃度のシリカ研磨剤を用いている。高研磨剤粒子濃度は、研磨された装置において、高い水準の引掻き欠陥と結びついている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
窒化ケイ素の比較的に高い除去速度および多結晶シリコン、酸化ケイ素、またはその両方に優先して、窒化ケイ素の選択的な除去を与える、新規な研磨方法および組成物を開発する継続した必要性が存在する。本発明は、これらの継続した必要性に向けられている。本発明のこれらの、そして他の利点、ならびに更なる発明の特徴が、本明細書において与えられる本発明の説明から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、化学機械研磨(CMP)プロセスにおいて、基材の表面からの窒化ケイ素の除去に好適な、酸性の水性研磨組成物(例えば、2〜6のpHを有する)を提供する。本組成物は、粒子状の焼成したセリア研磨剤、少なくとも1種のカチオン性ポリマー、随意選択的にポリオキシアルキレンポリマー、および水性キャリアを含んでいる。この少なくとも1種のカチオン性ポリマーは、ポリ(ビニルピリジン)ポリマーおよび、ポリ(ビニルピリジン)ポリマーと四級アンモニウム置換ポリマー、例えば四級アンモニウム置換アクリレートもしくはメタクリレートポリマーとの混合物から選択される。
【0012】
本組成物中の研磨剤濃度は、0.01〜10質量%(wt%)、好ましくは0.05〜5質量%である。好ましくは、本組成物中の研磨剤の濃度は、本方法の使用の時点で、0.01〜2質量%、より好ましくは0.05〜0.5質量%の範囲である。本組成物中の少なくとも1種のカチオン性ポリマーの濃度は、10百万分率(ppm)〜100000ppm、好ましくは15ppm〜10000ppmの範囲である。使用の時点で、本組成物は、好ましくは10ppm〜1000ppmの少なくとも1種のカチオン性ポリマー、より好ましくは15ppm〜100ppmの存在するそれぞれのカチオン性ポリマーを含んでいる。好ましい態様では、ポリオキシアルキレンポリマーは、10〜200000ppm、より好ましくは200〜100000ppmの濃度で本組成物中に存在する。使用の時点で、本組成物は、好ましくは10ppm〜2000ppmのポリオキシアルキレンポリマー、より好ましくは200ppm〜1000ppmを含んでいる。
【0013】
幾つかの好ましい態様では、ポリオキシアルキレンポリマーは、200〜2000、より好ましくは300〜1500の範囲のモノマー単位の、エチレングリコールモノマー単位の平均数を有する、ポリ(エチレングリコール)ポリマー(すなわち、PEG)を含んでいる。他の好ましい態様では、ポリオキシアルキレンポリマーは、ポリ(エチレングリコール)−コ−ポリ(プロピレングリコール)ブロック共重合体、例えばポリ(エチレングリコール)末端のポリ(プロピレングリコール)、すなわち、PEG−PPG−PEGブロック共重合体を含んでいる。
【0014】
幾つかの好ましい態様では、少なくとも1種のカチオン性ポリマーは、ポリ(ビニルピリジン)ポリマーおよび四級アンモニウム置換アクリレートもしくはメタクリレートポリマー、すなわち使用の時点で、10〜約90ppmのポリ(ビニルピリジン)ポリマーおよび15〜100ppmの四級アンモニウム置換アクリレートもしくはメタクリレートポリマーの組合わせを含んでいる。
【0015】
他の態様では、本発明は、上記のCMP組成物での窒化ケイ素含有基材を研磨するための、化学機械研磨方法を提供する。好ましい方法は、窒化ケイ素含有基材の表面を、研磨パッドと水性研磨組成物とに接触させること、ならびに、研磨組成物の一部の、パッドと基材の間の表面との接触を、基材表面の少なくとも一部が研摩されるのに十分な時間に亘って維持しながら、研磨パッドと基材との間の相対的な動きを生じさせること、の工程を含んでいる。本研摩組成物は、使用の時点で、上記のように、0.01〜2.0質量%の粒子状の焼成されたセリア研磨剤、10〜1000ppmの少なくとも1種のカチオン性ポリマー、10〜2000ppmのポリオキシアルキレンポリマー、および水性キャリアを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1に、本発明の選択された組成物で、ブランケットウエハを研磨することによって得られた、酸化ケイ素(酸化物)、多結晶シリコン(多結晶Si)、および窒化ケイ素(窒化物)についての除去速度のグラフを与えた。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、窒化ケイ素含有表面の研磨のため組成物および方法を提供する。好ましい態様では、本発明の組成物は、0.01〜10質量%の粒子状の焼成されたセリア研磨剤、10〜100000ppmの少なくとも1種のカチオン性ポリマー、および随意選択的な、10〜200000ppmのポリオキシアルキレンポリマーを含む酸性の水性キャリアを含んでいる。
【0018】
粒子状の焼成されたセリア研磨剤は、0.01〜10質量%の範囲の濃度で、本研磨組成物中に存在することができる。好ましくは、セリアは、本CMP組成物中に、0.05〜5質量%の範囲の濃度で存在する。使用の時点で、セリア研磨剤は、好ましくは、0.01〜2質量%、より好ましくは0.05〜0.5質量%(例えば、0.1〜0.3質量%)の濃度で存在する。この研磨剤粒子は好ましくは、当技術分野でよく知られているレーザー光散乱法で測定された、30nm〜200nm、より好ましくは75nm〜125nmの範囲の平均粒子径を有している。
【0019】
粒子状研磨剤は、望ましくは本研摩組成物中に、より具体的には本研摩組成物の水性キャリア成分中に、懸濁されている。研磨剤が、本研磨組成物中に懸濁されている場合には、それは、好ましくはコロイド状に安定である。用語、「コロイド」は、液状キャリア中の研磨剤粒子の懸濁液を表す。「コロイド状に安定」とは、時間の経過における懸濁の維持を表している。本発明の文脈では、セリア懸濁液が、100mLのメスシリンダ中に容れて、そして撹拌なしに、2時間に亘って放置し、このメスシリンダの底部50mL中の粒子の濃度( g/mLで[B] )と、メスシリンダの上部50mL中の粒子の濃度(g/mLで[T])との間の差を、研磨剤組成物中の粒子の総濃度(g/mLで[C])で割り算した値が、0.5以下である(すなわち、{[B]−[T]}/[C]≦0.5)場合には、セリア懸濁液はコロイド状に安定であると考えられる。より好ましくは、([B]−[T])/[C]の値は、0.3以下であり、そしてより好ましくは0.1以下である。
【0020】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられている、用語「焼成されたセリア」は、水和された酸化セリウムまたは分解性前駆体塩もしくは塩の混合物、例えば炭酸セリウム、水酸化セリウムなどを加熱する(焼成する)ことによって形成される酸化セリウム(IV)材料を表している。水和された酸化セリウムの場合には、この材料は、酸化セリウム材料から水和の水を除去するのに十分な温度で(例えば、600℃またはそれ以上の温度で)加熱される。前駆体塩の場合には、これらの塩は、前記体の分解温度より高い温度(例えば、600℃かそれ以上)で加熱されてCeO(セリア)を形成し、そして、同時に、存在するか、または形成される可能性があるいずれかの水を一掃する、温度で加熱される。セリアは、必要であれば、当技術分野で知られているように、所定の量の安定化ドーパント材料、例えばLaおよびNdを含むことができる。典型的には、焼成されたセリア粒子は、高度に結晶性である。焼成されたセリアの調製方法は、当技術分野でよく知られている。
【0021】
本発明の組成物は、酸性であり、そして好ましくは2〜6の範囲、より好ましくは3〜6の範囲のpHを有する。本組成物の酸性度は、いずれかの無機酸または有機酸であることができる、酸性成分を含む、緩衝剤を含むことによって、達成および/または維持することができる。幾つかの好ましい態様では、酸性成分は、無機酸、カルボン酸、有機ホスホン酸、酸性ヘテロ環式化合物、それらの塩、または前記の2種もしくは3種以上の組合わせであることができる。好適な無機酸の限定するものではない例としては、塩酸、硫酸、リン酸、ホスホン酸、ピロリン酸、亜硫酸、および四ホウ酸、またはそれらのいずれかの酸性塩、が挙げられる。好適なカルボン酸の限定するものではない例としては、モノカルボン酸(例えば、酢酸、安息香酸、フェニル酢酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、グリコール酸、ギ酸、乳酸、マンデル酸など)、およびポリカルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、イタコン酸など)、またはそれらのいずれかの酸性塩、が挙げられる。好適な有機ホスホン酸の限定するものではない例としては、ホスホノ酢酸、イミノジ(メチレンホスホン酸)、およびDEQUEST(商標)2000LCブランドのアミノ−トリ(メチレンホスホン酸)、およびDEQUEST(商標)2010ブランドのヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(これらの両方は、Solutiaから入手可能である)、またはそれらのいずれかの酸性塩、が挙げられる。好適な酸性ヘテロ環式化合物の限定するものではない例としては、尿酸、アスコルビン酸など、またはそれらのいずれかの酸性塩、が挙げられる。
【0022】
幾つかの態様では、カチオン性ポリマー成分は、ポリ(ビニルピリジン)ポリマー、例えば、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ビニルピリジン共重合体など、を含んでいる。本発明の組成物および方法において有用なビニルピリジン共重合体としては、少なくとも1種のビニルピリジンモノマー(例えば、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、またはその両方)、ならびにノニオン性モノマーおよびカチオン性モノマーから選ばれた少なくとも1種のコモノマーを含む共重合体、が挙げられる。ノニオン性コモノマーの限定するものではない例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルピロリジノン、およびスチレンが挙げられる。カチオン性コモノマーの限定するものではない例としては、ジアリルアミン、ジメチルジアリルアミン、2−ビニル−N−メチルピリジニウムハライド(例えば、クロリド)、4−ビニル−N−メチルピリジニウムハライド(例えば、クロリド)、2−(ジエチルアミノエチル)スチレン、2−(N,N−ジエチルアミノエチル)アクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノエチル)メタクリレート、N−(2−(N,N−ジエチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(2−N,N−ジエチルアミノプロピル)メタクリルアミド、前記のいずれかの塩(例えば、塩酸塩)、前記のいずれかのN−四級化誘導体(例えば、N−メチル四級化誘導体)など、が挙げられる。更に、比較的に少ない割合のアニオン性モノマー(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)など)を、アニオン性モノマーのカチオン性モノマーに対する比率が、共重合体が、全体にカチオン性電荷を維持するようなものである限りにおいて、共重合体中に含むことができる。
【0023】
幾つかの他の態様では、カチオン性ポリマー成分は、ここに記載したようなポリ(ビニルピリジン)ポリマーおよび、四級化アンモニウム置換ポリマー、例えば四級化アンモニウム置換アクリレートもしくはメタクリレートポリマーの組合わせを含んでいる。このような四級化アンモニウム置換アクリレートまたはメタクリレートポリマーの限定するものではない例としては、ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムハライド)ポリマー、ポリ(アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムハライド)ポリマー、ポリ(メタクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムハライド)ポリマー、ポリ(アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムハライド)ポリマーなど、が挙げられる。好ましくは、四級アンモニウム基のハライド対イオンは、クロリドである。
【0024】
カチオン性ポリマーは、いずれかの好適な分子量を有することができる。典型的には、本研磨組成物は、5kDa以上(例えば、10kDa以上、20kDa以上、30kDa以上、40kDa以上、50kDa以上、または60kDa以上)の質量平均分子量を有するカチオン性ポリマーを含んでいる。本研磨組成物は、好ましくは、100kDa以下(例えば、80kDa以下、70kDa以下、60kDa以下、または50kDa以下)の分子量を有するカチオン性ポリマーを含んでいる。好ましくは、本研磨組成物は、5kDa〜100kDa(例えば、10kDa〜80kDa、10kDa〜70kDa、または15kDa〜70kDa)の分子量を有するカチオン性ポリマーを含んでいる。
【0025】
ポリオキシアルキレン成分は、ポリ(アルキレングリコール)としても知られているが、ホモポリマーまたは、複数のオキシアルキレンモノマー単位(すなわち、アルキレングリコールモノマー単位、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなど)を含む共重合体(例えば、ブロックまたはランダム共重合体)であることができる。例えば、ポリオキシアルキレンポリマーは、ポリ(エチレングリコール)ポリマー、ポリ(エチレングリコール)−コ−ポリ(プロピレングリコール)共重合体などであることができる。ポリオキシアルキレンポリマーは、好ましくは、平均で20〜2000個のモノマー単位(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、より好ましくは200〜2000個のモノマー単位(例えば、300〜1500個のモノマー単位)を含んでいる。そのようなポリマーは、当技術分野では、ポリマーの種類とモノマー単位の平均数によって、例えば、ポリ(エチレングリコール)−300、省略型で、PEG−300と表され、これは、平均で300個のエチレングリコール(CHCHO)単位を有し、そして、従って、300×44=13200ダルトンの数平均分子量を有する、ポリ(エチレングリコール)ポリマーを表している。
【0026】
1つの好ましい態様では、ポリオキシアルキレンポリマーは、ポリオキシエチレンポリマー、すなわち、ポリ(エチレングリコール)ポリマーである。他の好ましい態様では、ポリオキシアルキレンポリマーは、ポリ(エチレングリコール)−コ−ポリ(プロピレングリコール)共重合体ブロック共重合体、例えば、PEG−PPG−PEGブロック共重合体、例えば、BASFのPLURONIC L31を含んでおり、これは伝えられるところでは、約1100〜1200の数平均分子量を有し、そして平均で16個のプロピレングリコール単位を有するPPGコアを含み、それは、それぞれの末端を平均2個のエチレングリコールモノマー単位でキャップされている。
【0027】
本発明の組成物および方法は、有用な窒化ケイ素除去速度および、窒化ケイ素の除去の多結晶シリコンの除去に対する選択性を与える。また、本発明の組成物は、典型的には適度の酸化ケイ素除去速度を与える。幾つかの特に好ましい態様では、窒化ケイ素または多結晶シリコンブランケットウエハを、それぞれ、CMP研磨機のテーブル面上で、3ポンド/平方インチ(psi)の下向きの力で、100回転/分(rpm)のプラテン速度で、101rpmの支持体速度で、そして150ミリリットル/分(mL/分)の研磨スラリー流量で、D100研磨パッドを用いて研磨した場合に、窒化ケイ素除去速度は、700オングストローム/分(Å/分)以上および、100Å/分未満(典型的には、25Å/分未満)の多結晶シリコン除去である。酸化ケイ素の除去速度は、同じ条件下で、典型的には、400Å/分未満である。
【0028】
本発明の研磨組成物は、随意選択的に1種もしくは2種以上の酸化剤(例えば、半導体表面の成分、例えば金属成分、を酸化する)を含むことができる。本発明の研磨組成物および方法に用いるための好適な酸化剤としては、限定するものではないが、過酸化水素、過硫酸塩(例えば、モノ過硫酸アンモニウム、ジ過硫酸アンモニウム、モノ過硫酸カリウム、およびジ過硫酸カリウム)、過ヨウ素酸塩(例えば、過ヨウ素酸カリウム)、それらの塩、前記の1種もしくは2種以上の組合わせ、が挙げられる。好ましくは、酸化剤は、半導体CMP技術において良くしられているように、半導体ウエハ中に存在する1種もしくは2種以上の選択された金属または半導体材料を酸化するのに十分な量で、本組成物中に存在する。
【0029】
また、本発明の研磨組成物は、随意選択的に好適な量の1種もしくは2種以上の、研摩組成物中に通常含まれる他の添加剤、例えば、金属錯化剤、腐食防止剤、粘度調節剤、殺生物剤など、を含むことができる。
【0030】
好ましい態様では、本研磨組成物は、生物致死性の量の殺生物剤(例えば、イソチアゾリンオン組成物、例えばRohm and Haasから入手可能な、KATHON(商標)殺生物剤)を更に含むことができる。
【0031】
水性のキャリアは、いずれかの水性の溶媒、例えば、水、水メタノール、水エタノール、それらの組合わせなど、であることができる。好ましくは、水性のキャリアは、脱イオン水を主に含んでいる。
【0032】
本発明の研磨組成物は、いずれかの好適な技術によって調製することができ、それらの多くが当業者には知られている。本研磨組成物は、バッチまたは連続プロセスで調製することができる。通常は、本研磨組成物は、その成分を、いずれかの順序で混合することによって調製することができる。ここで用いられる用語「成分」は、個々の成分(例えば、セリア、酸、ポリマー、緩衝剤、酸化剤など)、ならびにこれらの成分のいずれかの組合わせを含んでいる。例えば、セリア研磨剤は、水中に分散し、ポリマー成分と混合し、そしてこれらの成分を本研磨組成物中に組み込むことができるいずれかの方法で混合することができる。典型的には、酸化剤は、用いられる場合には、本研磨組成物に、本組成物がCMPプロセスにおける使用の準備が整うまでは添加されず、例えば、酸化剤は、研磨を開始する直前に加えることができる。pHは、必要に応じて、酸または塩基の添加によって、いずれかの好適な時に、更に調整することができる。
【0033】
また、本発明の研磨組成物は、濃縮物として提供することができ、濃縮物は、使用の前に適切な量の水性の溶媒(例えば、水)で希釈されることが意図されている。そのような態様では、本研磨組成物濃縮物は、その濃縮物の、適切な量の水性溶媒での希釈によって、研磨組成物のそれぞれの成分が、研磨組成物中に、使用のための適切な範囲内の量で存在するような量で、水性溶媒中に分散または溶解されている種々の成分を含むことができる。
【0034】
また、本発明は、例えば、多結晶シリコンの除去に対して、窒化ケイ素の選択的な除去のための、窒化ケイ素基材を化学機械研磨する方法を提供する。この方法は、(i)窒化ケイ素含有基材の表面を、研磨パッドおよびここに記載した本発明の研磨組成物と接触させること、ならびに(ii)研磨組成物の少なくとも一部をパッドと表面の間に保持しながら、研磨パッドおよび基材の表面をそれぞれに対して動かして、それによって表面の少なくとも一部を研摩して、基材を研磨すること、を含んでいる。
【0035】
本発明の研磨組成物は、いずれかの好適な基材を研磨するのに用いることができ、そして窒化ケイ素を含む基材、ならびに窒化ケイ素および多結晶シリコンおよび/または酸化ケイ素を含む基材、の研磨に特に有用である。本発明の組成物は、過剰の引掻き欠陥を回避するのに十分に低い研磨剤量で、比較的に高い窒化ケイ素除去速度を与える。特には、CMP組成物の配合とpHは、窒化ケイ素の除去速度を変えるために変更することができる。更に、窒化ケイ素除去の相対的な速度は、多結晶シリコンおよび酸化ケイ素の除去速度を上回る。この選択性は、比較的に細い酸化物線幅を有する最新の半導体材料の研磨における使用のためには、更なる利点である。
【0036】
本発明の研磨組成物は、化学機械研磨装置と共に用いるのに特に好適である。典型的には、CMP装置は、プラテン(これは、使用時には、動作し、そして軌道の、直線状の、および/または円形の動きをもたらす速度を有する)、プラテンと接触していて、そして動作中にプラテンに対して動く研磨パッド、ならびに研磨パッドの表面に対して接触し、そして動くことによって研磨される基材を保持する支持体、を含んでいる。基材の研磨は、基材を研磨パッドおよび本発明の研磨組成物と接触するように配置し、そして、次いで基材の少なくとも一部を研摩して、基材を研磨するように、研磨パッドを基材に対して動かすことによって、起こる。
【0037】
基材は、いずれかの好適な研磨表面(例えば、研磨パッド)を用いて、本発明の研磨組成物で平坦化または研磨することができる。好適な研磨パッドとしては、例えば、織物の、そして不織の研磨パッド、溝付きの、または溝無しのパッド、多孔質または非多孔質のパッドなどが挙げられる。更に、好適な研磨パッドは、種々の密度、硬度、厚さ、圧縮性、圧縮に対する回復性、および圧縮弾性率のいずれかの好適なポリマーを含むことができる。好適なポリマーとしては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ナイロン、フルオロカーボン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレン、それらの共形成された(coformed)製品、およびそれらの混合物、が挙げられる。
【0038】
望ましくは、CMP装置は、現場での、研磨の終点検知システムを更に含んでおり、その多くが当技術分野で知られている。加工物の表面から反射される光または他の輻射線を解析することによって、研磨プロセスを検知し、そして監視する技術は、当技術分野において知れられている。そのような方法が、例えば、Sandhuらの米国特許第5,196,353号、Lustigらの米国特許第5,433,651号、Tangの米国特許第5,949,927号、およびBirangらの米国特許第5,964,643号明細書中に記載されている。望ましくは、研磨される加工物に対する研磨プロセスの進行の検知または監視が、研磨の終点の決定、すなわち、特定の加工物についての研磨プロセスを何時停止するかの決定、を可能にする。
【実施例】
【0039】
以下の例は、本発明の特定の態様を更に説明するが、しかしながら、勿論のこと、本発明の範囲を限定するものとは決して解釈してはならない。本明細書中で、そして以下の例および特許請求の範囲で用いられる、百万分率(ppm)で報告される濃度は、組成物の質量で割り算した、注目する活性成分の質量を基準としている(例えば、組成物のキログラム当たりの成分のミリグラム)。
【0040】
例1
この例は、窒化ケイ素、多結晶シリコン、および酸化ケイ素の除去への、カチオン性ポリマーの効果を示している。
【0041】
研磨組成物は、Applied Materials REFLEXION(商標)CMP装置で、窒化ケイ素、酸化ケイ素、および多結晶シリコンブランケットウエハを別箇に化学機械研磨するのに用いた。研摩組成物のそれぞれは、脱イオン水中に、pH4で、0.2質量%の焼成されたセリア(Advanced Nano Products Co., Ltd.、「ANP」、平均粒子径が100nm)の水性スラリーを含んでいる。CMP組成物の更なる成分が、表1中に示されており、この中で、「Quat」は、Alco Chemicalのポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド)(Alco 4773)を表しており、4−PVPは、ポリ(4−ビニルピリジン)を表しており、そして2−PVPは、ポリ(2−ビニルピリジン)を表している。
【0042】
【表1】
【0043】
それぞれの組成物を、300mm直径の、窒化ケイ素、多結晶シリコン、およびプラズマ促進テトラエチルオルソシリケートから誘導された二酸化ケイ素(PETEOS)のウエハを別箇に、D100研磨パッドを備えたREFEXION(商標)CMP装置上で、3.5psiの下向きの力(DF)で、100rpmの研磨ヘッド速度(HS)で、10rpmのプラテン速度(PS)で、そして250mL/分のスラリー流量で、研磨するのに用いた。このパッドは、現場で、3M A165調整剤で調整した。窒化ケイ素(窒化物)、多結晶シリコン(多結晶Si)、およびPETEOS(酸化物)について観察された、Å/分での除去速度(RR)を表2中に示した。2psiのDFおよび93/93rpmのHS/PSで得られた除去速度を、かっこ中に示した。
【0044】
【表2】
【0045】
表2中の結果は、ポリ(ビニルピリジン)ポリマーまたは、ポリ(ビニルピリジン)と四級アンモニウム置換ポリマーとの組み合わせは、特定の研磨条件下で、非常に良好な窒化物除去速度(>800Å/分)、低い多結晶シリコン除去速度(<20Å/分)、および中庸の酸化物除去速度(371〜391Å/分)を与えたことを示している。更に、2psiのより低いDFでの結果は、より低い下向きの力での除去速度は、例1Bおよび1Cと比較して、例1Dでは有意に減少しなかったので、ポリ(ビニルピリジン)と四級化ポリマーの間の相乗作用を示している。
【0046】
例2
例1と同様の評価をMirra研磨機で行った。驚くべきことに、Mirraでの試験で観察された多結晶シリコンの除去速度は、相当に不均一(ウエハ内で)であり、非常に高い多結晶シリコン除去領域と非常に低い多結晶シリコン除去領域を示した。ポリオキシアルキレンポリマー、例えばPEGまたはPEG−PPG−PEG共重合体、の添加は、驚くべきことに、Mirra研磨機での多結晶シリコン除去の均一性を向上させ、そして、所望の、一貫して低い、多結晶シリコン除去速度を与えた。種々のポリオキシアルキレンポリマーを含む組成物を調整し、そして以下の条件下で評価した:上記のように現場で調整したD100パッド、3psiのDF、100/101rpmのPS/HS、および150mL/分のスラリー流量。これらの組成物のそれぞれは、0.2質量%のANP焼成セリア、30ppmのポリ(4−ビニルピリジン)、および15ppmのポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド)を、pH4で、水中に含んでいた。ポリオキシアルキレン添加剤および観察された除去速度を表3中に示した(PL31は、BASFのPLURONIC(商標)L31であり、ポリ(エチレングリコール)末端ブロックを有するポリ(プロピレングリコール)ブロック共重合体、PEG−PPG−PEGである)。
【0047】
【表3】
【0048】
表3中の結果は、多結晶シリコンに対する窒化物除去の高い水準の選択性を示している。研磨されたウエハの評価は、ポリオキシアルキレンポリマー(すなわち、PEGおよびPEG−PPG−PEGポリマー)で研磨された多結晶シリコンウエハについて、ウエハ内での良好な均一性を示した。
【0049】
更に、例2Bと同様のANP焼成セリアの代わりに水和されたセリアを含む組成物(ポリオキシアルキレンポリマーなし)を評価した。この例は、驚くべきことに、窒化ケイ素に対して多結晶シリコンの除去の選択性を示したが、これは焼成されたセリアを用いた本発明の組成物で観察された選択性とは、正反対である。
【0050】
例3
0.1、0.2および0.3質量%の焼成されたセリア、0、30、60、および90ppmのポリ(4−ビニルピリジン)、0、15、および30ppmのポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド)(Alco 4773)、ならびに0、800、および1500ppmのPEG−1450を含む更なる水性組成物を、Mirra研磨機で、窒化ケイ素、多結晶シリコン、およびPETEOSのブランケットウエハを研磨することによって評価した(3psiのDF、3M A165調整剤で現場で調整したD100パッド、100/101rpmのPS/HS、150mL/分のスラリー流量)。これらの組成物の配合を表4中に示した。
【0051】
【表4】
【0052】
研磨の結果を表5中に与えた。
【0053】
【表5】
【0054】
表5中の結果は、評価された研磨剤濃度、カチオン性ポリマー濃度、およびPEG濃度の範囲に亘って、多結晶シリコンおよび酸化ケイ素に対する窒化物の除去の高い水準の選択性を示している。pHを4から3.5に低下させると、多結晶シリコンの速度の増加および選択性の低下をもたらした(3Jに対する3Bの比較)。PEG濃度を増加すると、それぞれの基材で除去速度を若干低下させた(3Bと3Cとの比較)。4−PVDの濃度を30から60そして90へと増加させると、酸化物および窒化物の除去速度のわずかな直線状の低下をもたらしたが、しかしながら多結晶シリコンの除去速度には有意な影響を与えなかった。セリアのより低い濃度は、窒化物および酸化物の速度を低下させる傾向にあったが、しかしながら多結晶シリコンの速度を増加させた(3Gに対する3Bまたは、3Hに対する3Fの比較)。更に、研磨されたウエハは、同様の、全体的に平坦な酸化物および多結晶シリコン除去プロファイルを示した。
【0055】
別の実験で、研磨時間の除去速度への効果を評価した。観察された多結晶シリコンおよび酸化物除去速度は、研磨時間を30秒間から90秒間へと変化させても比較的に影響されなかったが、一方で、窒化物除去速度は、同じ時間に亘って、400から1200超へと3倍増加した。
【0056】
また、パターン化された多結晶シリコンウエハの評価は、ブランケットウエハで観察された低い多結晶シリコン除去速度と一致して、低い水準の多結晶シリコン除去を与えた。
【0057】
例4
例3から選択した組成物(すなわち、3B、3C、3Fおよび3J)を、REFLEXION(商標)研磨機(すなわち、例1で用いたように)で、窒化ケイ素、多結晶シリコン、およびPETEOSの300mmブランケットウエハを、以下の条件下で研磨することによって評価した:2psiのDF、Seasol調整剤を備えたIC1010研磨パッド、100/85rpmのPS/HS、200mL/分のスラリー流量。研磨結果を表6中に示し、そして図1中に図示した。
【0058】
【表6】
【0059】
表6中の結果は、Mirra研磨機で観察されたのと同様の、多結晶シリコンおよび酸化ケイ素の除去に対する窒化物の除去の高い選択性が、REFLEXION(商標)研磨機でもまた与えられたことを示している。
【0060】
本発明を行うための、本発明者らに知られているベストモードを含んだ、本発明の好ましい態様が本明細書に記載されている。これらの好ましい態様の変形が、前述の説明を読めば、当業者には明らかであろう。本発明者らは、当業者は、そのような変形を適切に用いることを予期しており、そして本発明者らは、本明細書中に具体的に記載したのとは他のように、本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用可能な法律が許容するように、ここに添付した特許請求の範囲に記載した主題の全ての変更および等価物を含んでいる。更には、上記の要素の全ての可能な変形の全ての組合わせが、本明細書に特に断りのない限り、または文脈から明確に否定されない限り、本発明に包含される。
図1