【0017】
本発明について更に詳細に述べる。
本発明のリン含有エポキシ樹脂は一般式(1)で表され、nは0〜10の整数を示していて、その平均値である平均重合度は0.1〜3の範囲のオリゴマーである。
本発明のリン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量は200g/eq〜600g/eqに制御する必要がある。エポキシ当量が200g/eq未満の場合は接着性に劣り、600g/eqを越えると粘度が増大し、得られる硬化物の耐熱性が大きく損なわれる。
そのために200g/eq〜600g/eqに調整することが好ましく、より好ましくは230g/eq〜550g/eq、さらに好ましくは250g/eq〜500g/eqである。
本発明のリン含有エポキシ樹脂のリン含有率は、1重量%〜5重量%に制御する必要がある。難燃性の観点からはリン含有率が高い方が好ましいが、リン含有率が高くなるにつれてリン含有エポキシ樹脂の粘度の増大やエポキシ当量の増加が起こり、得られる硬化物の耐熱性が大きく損なわれる。そのために1重量%〜5重量%に調整することが好ましく、より好ましくは1重量%〜4重量%であり、さらに好ましくは2重量%〜3重量%である。
本発明のリン含有エポキシ樹脂の全塩素量は得られる硬化物の電気的信頼性の低下と相関があり、増加すれば硬化物の電気的信頼性は低下し、少なければ電気的信頼性は向上する。許容できる硬化物の電気的信頼性から考えて、本発明のリン含有エポキシ樹脂の全塩素量は0.2重量%以下が好ましく、より好ましくは一般的な封止材用エポキシ樹脂と等しく0.09重量%以下であり、さらに好ましくは0.05重量%以下である。
本発明のリン含有エポキシ樹脂の100℃における溶融粘度は好ましくは1,000mPa・s以下、より好ましくは600mPa・s以下、さらに好ましくは300mPa・s以下である。100℃における溶融粘度が1,000mPa・sを越えると比較的粘度の低い硬化剤を使用してもエポキシ樹脂組成物の粘度が上がり、実作業が困難になり、正常な成型物を得ることが難しい。
本発明の一般式(1)で示されるリン含有エポキシ樹脂は、一般式(5)で示される2官能エポキシ樹脂類(A)と一般式(6)で示される有機リン化合物類(B1)と必要により一般式(7)で示される有機リン化合物類(B2)とを反応させて得られる。
【実施例】
【0042】
以下、合成例、実施例及び比較例に基づき、本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は実施例のみに制限されるものではない。なお、実施例と比較例における各成分の配合部数は、特に断らない限り重量部を示すものである。
また、本発明では以下の分析方法を使用した。
エポキシ当量:JIS K−7236に記載の方法。即ち、試料をクロロホルム10mLに溶解し、無水酢酸20mL、20%の臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液10mLをそれぞれ加えて、電位差滴定装置を用いて0.1mol/L過塩素酸酢酸標準液で滴定を行い、各試薬の濃度と添加量ならびに滴定量から、エポキシ樹脂に含まれるエポキシ当量を測定した。
全塩素量:JIS K−7243−3に記載の方法。即ち、試料をジエチレングリコールモノブチルエーテル25mLに溶解し、1mol/L水酸化カリウムの1,2−プロパンジオール溶液25mLを加えて、ホットプレート上にて10分間加熱還流下で反応させる。室温まで冷却後、50mLの無水酢酸を加えて、電位差滴定装置を用いて0.01mol/L硝酸銀溶液で滴定を行い、各試薬の濃度と添加量ならびに滴定量から、エポキシ樹脂に含まれる全塩素量を測定した。
粘度:JIS K−7233に記載の方法。即ち、500mLの円筒缶に樹脂400gをはかりとって、25±0.2℃の恒温水槽で5時間放置して恒温にし、回転粘度計のローターを樹脂に浸漬して測定した。
軟化点:JIS K−7234に記載の方法。即ち、環球法で、規定の環に試料を充填し、グリセリン浴中に水平に支え、試料中央に規定の球を置き、5℃/minで昇温して測定した。
水酸基濃度:エポキシ樹脂に含まれる水酸基量に対して、当量以上のフェニルイソシアネートと、触媒としてジブチル錫マレーアートを加え、水酸基とイソシアネートを十分に反応させた後、用いたフェニルイソシアネートの当量に対してそれ以上のジブチルアミンを添加して余剰のフェニルイソシアネートを消費させ、最後に過塩素酸にて滴定を行い、各試薬の濃度と添加量ならびに滴定量から、エポキシ樹脂に含まれる水酸基濃度を測定した。
【0043】
リン含有率:試料に硫酸、塩酸、過塩素酸を加え、加熱して湿式灰化し、全てのリン原子を正リン酸とした。硫酸酸性溶液中でメタバナジン酸塩およびモリブデン酸塩を反応させ、生じたリンバナードモリブデン酸錯体の420nmにおける吸光度を測定し、予め作成した検量線により求めたリン原子含有量を重量%で表し、エポキシ樹脂に含まれるリン含有率を測定した。
溶融粘度:コーンプレート型粘度計(東亜工業株式会社製、MOEDL CV−1S)を用い、ローターは10ポアズコーン(Φ:19.5mm、θ:0.5°)を使用して、100℃の測定温度で測定した。
難燃性:UL(Underwriters Laboratories Inc.)規格、UL94垂直試験法に準じて測定を行い、同規格の判定基準である、V−0、V−1、V−2、NG(難燃性なし)の4水準で判定した(後になるほど難燃性が悪い)。
接着性:JIS C−6481 5.7に準じた方法。即ち、プリプレグ1枚と残りの3枚の間で直角方向に50mm/minの速度で剥離を行い測定した。
吸湿率:JIS C−6481 5.13に準じた方法。即ち、50mm×50mmにカットした試験片を用いて、50℃のオーブン中で24時間乾燥した後の乾燥重量を測定し、引き続き85℃/85%RHに調整した処理槽内に72時間保管した後の重量を測定し、乾燥重量からの増加分に基づいて吸湿率を測定した。
耐熱性:IPC−TM−650、2.4.24.1に準じた方法。即ち、TMA装置によるデラミネーション時間の測定であり、TMA装置で260℃の一定温度に保持し、試験片がはじけ変位が生じるまでの時間が10分以上だった場合、○とし、10分未満だった場合、×とした。なお、TMA装置はエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製TMA/SS120Uを使用した。
塩素イオン:硬化物を粉砕し、2mmパス、1mmオンの粒径に揃えた試料を、150、20時間のプレッシャークッカーテストを行った後、イオンクロマトグラフィーにて、抽出水の塩素イオンを測定し、硬化物中の濃度に換算して求めた。
【0044】
実施例1
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、及び冷却管を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、一般式(5)の2官能エポキシ樹脂(A)として、エポトートZX−1658(東都化成株式会社製、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル樹脂、エポキシ当量:140g/eq、全塩素:0.075重量%、粘度:45mPa・s、水酸基濃度:19meq/100g)632.0g、有機リン化合物としてDOPO−HQ(三光株式会社製、商品名:HCA−HQ、水酸基当量:162g/eq、リン含有率:9.5重量%)168.0gを仕込み、マントルヒーターで130℃まで撹拌しながら加熱して、130℃に達したところで1時間温度を保った後、触媒としてトリフェニルホスフィン(北興化学株式会社製、製品名:TPP)0.17gを加え、反応温度を160℃〜165℃に保ちながら4時間反応して、リン含有エポキシ樹脂(E−1)795gを得た。得られたリン含有エポキシ樹脂(E−1)の性状を表1に示す。
【0045】
実施例2
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、及び冷却管を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、一般式(5)の2官能エポキシ樹脂(A)として、エポトートTX−0929(東都化成株式会社製、パラキリレングリコールジグリシジルエーテル樹脂、エポキシ当量:144g/eq、全塩素:0.11重量%、粘度:50mPa・s、水酸基濃度:39meq/100g)547.4g、有機リン化合物としてDOPO−HQ(前述)252.6gを仕込み、マントルヒーターで130℃まで撹拌しながら加熱して、130℃に達したところで触媒としてトリフェニルホスフィン(前述)0.25gを加え、反応温度を160℃〜165℃に保ちながら4時間反応して、リン含有エポキシ樹脂(E−2)795gを得た。得られたリン含有エポキシ樹脂(E−2)の性状を表1に示す。
【0046】
実施例3
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、及び冷却管を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、一般式(5)の2官能エポキシ樹脂(A)として、エポトートTX−0929(前述)602.5g、有機リン化合物としてDOPO−NQ(9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドの1,4−ナフトキノン付加物、水酸基当量:187g/eq、リン含有量:8.1重量%)197.5gを仕込み、マントルヒーターで130℃まで撹拌しながら加熱して、130℃に達したところで触媒として2エチル4メチルイミダゾール(四国化成株式会社製、製品名:2E4MZ)0.05gを加え、反応温度を160℃〜165℃に保ちながら4時間反応して、リン含有エポキシ樹脂(E−3)795gを得た。得られたリン含有エポキシ樹脂(E−3)の性状を表1に示す。
【0047】
実施例4
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、及び冷却管を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、一般式(5)の2官能エポキシ樹脂(A)として、エポトートTX−0934(東都化成株式会社製、オキシメチレンビフェニルジグリシジルエーテル樹脂、エポキシ当量:184g/eq、全塩素:0.11重量%、粘度:200mPa・s、水酸基濃度:63meq/100g)608.7g、有機リン化合物としてDOPO−NQ(前述)116.3gとDOPO(三光株式会社製、商品名:HCA、リン含有率:14.2重量%)75.0gを仕込み、マントルヒーターで130℃まで撹拌しながら加熱して、130℃に達したところで触媒としてトリフェニルホスフィン(前述)0.19gを加え、反応温度を160℃〜165℃に保ちながら4時間反応して、リン含有エポキシ樹脂(E−4)795gを得た。得られたリン含有エポキシ樹脂(E−4)の性状を表1に示す。
【0048】
実施例5
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、有機リン化合物としてDOPO(前述)168.0gとトルエン400gを仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら加熱して完全に溶解した。その後、キノン類として1,4−ナフトキノン(川崎化成株式会社製、3%含水品)70.0gを反応熱による昇温に注意しながら分割投入した。この時の1,4−ナフトキノンとDOPOのモル比は1,4−ナフトキノン/DOPO=0.52であった。加熱反応後、一般式(5)の2官能エポキシ樹脂(A)として、エポトートTX−0917(東都化成株式会社製、一般式5のXが式8−10の化合物、エポキシ当量:173g/eq、全塩素:0.10重量%、粘度:46mPa・s、水酸基濃度:72meq/100g)563.0gを仕込み、窒素ガスを導入しながら攪拌を行い、130℃まで加熱を行ってトルエンを系外に除去した。その後触媒としてトリフェニルホスフィン(前述)を0.24g添加して、反応温度を160℃〜165℃に保ちながら4時間反応して、リン含有エポキシ樹脂(E−5)790gを得た。得られたリン含有エポキシ樹脂(E−5)の性状を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
比較例1
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、及び冷却管を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、エポキシ樹脂としてエポトートPG−207GS(東都化成株式会社製、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル樹脂、エポキシ当量:319g/eq、全塩素:0.10重量%、粘度:45mPa・s)632.0g、有機リン化合物としてDOPO−HQ(前述)168.0gを仕込み、マントルヒーターで130℃まで撹拌しながら加熱して、130℃に達したところで触媒としてトリフェニルホスフィン(前述)0.17gを加え、反応温度を160℃〜165℃に保ちながら4時間反応して、リン含有エポキシ樹脂(E−6)795gを得た。得られたリン含有エポキシ樹脂(E−6)の性状を表2に示す。
【0051】
比較例2
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、及び冷却管を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、エポキシ樹脂としてエポトートTX−0917(前述)757.9g、有機リン化合物としてDOPO−HQ(前述)42.1gを仕込み、マントルヒーターで130℃まで撹拌しながら加熱して、130℃に達したところで触媒としてトリフェニルホスフィン(前述)0.05gを加え、反応温度を160℃〜165℃に保ちながら4時間反応して、リン含有エポキシ樹脂(E−7)795gを得た。得られたリン含有エポキシ樹脂(E−7)の性状を表2に示す。
【0052】
比較例3
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、及び冷却管を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、エポキシ樹脂としてエポトートTX−0917(前述)480.0g、有機リン化合物としてDOPO(前述)220.0gとDOPO−HQ(前述)100.0gを仕込み、マントルヒーターで130℃まで撹拌しながら加熱して、130℃に達したところで触媒としてトリフェニルホスフィン(前述)0.32gを加え、反応温度を160℃〜165℃に保ちながら4時間反応して、リン含有エポキシ樹脂(E−8)795gを得た。得られたリン含有エポキシ樹脂(E−8)の性状を表2に示す。
【0053】
比較例4
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、及び冷却管を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、エポキシ樹脂としてエポトートTX−0934(前述)505.0g、有機リン化合物としてDOPO−HQ(前述)295.0gを仕込み、マントルヒーターで130℃まで撹拌しながら加熱して、130℃に達したところで触媒としてトリフェニルホスフィン(前述)0.30gを加え、反応温度を160℃〜165℃に保ちながら4時間反応して、リン含有エポキシ樹脂(E−9)795gを得た。得られたリン含有エポキシ樹脂(E−9)の性状を表2に示す。
【0054】
比較例5
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、及び冷却管を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、エポキシ樹脂として、エポトートST−3000(東都化成株式会社製、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル樹脂、エポキシ当量:230g/eq、全塩素:5.0重量%、粘度:3,200mPa・s)632.0g、有機リン化合物としてDOPO−NQ(前述)168.0gを仕込み、マントルヒーターで130℃まで撹拌しながら加熱して、130℃に達したところで触媒としてトリフェニルホスフィン(前述)0.17gを加え、反応温度を160℃〜165℃に保ちながら4時間反応して、リン含有エポキシ樹脂(E−10)795gを得た。得られたリン含有エポキシ樹脂(E−10)の性状を表2に示す。
【0055】
比較例6
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、有機リン化合物としてDOPO(前述)169.7gとトルエン400gを仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら加熱して完全に溶解した。その後、キノン類として1,4−ナフトキノン(前述)36.4gを反応熱による昇温に注意しながら分割投入した。この時の1,4−ナフトキノンとDOPOのモル比は1,4−ナフトキノン/DOPO=0.28であった。加熱反応後、エポキシ樹脂として、エポトートZX−1658Z(東都化成株式会社製、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル樹脂、エポキシ当量:145g/eq、全塩素:0.45重量%、粘度:85mPa・s、水酸基濃度:150meq/100g)595.0gを仕込み、窒素ガスを導入しながら攪拌を行い、130℃まで加熱を行ってトルエンを系外に除去した。その後触媒としてトリフェニルホスフィン(前述)を0.21g添加して、反応温度を160℃〜165℃に保ちながら4時間反応して、リン含有エポキシ樹脂(E−11)790gを得た。得られたリン含有エポキシ樹脂(E−11)の性状を表2に示す。
【0056】
比較例7
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、及び冷却管を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、エポキシ樹脂として、エポトートYDF−170(東都化成株式会社製、ビスフェノールFジグリシジルエーテル樹脂、エポキシ当量:168g/eq、全塩素:0.15重量%、粘度:3,000mPa・s)547.4g、有機リン化合物としてDOPO−HQ(前述)252.6gを仕込み、マントルヒーターで130℃まで撹拌しながら加熱して、130℃に達したところで触媒としてトリフェニルホスフィン(前述)0.25gを加え、反応温度を160℃〜165℃に保ちながら4時間反応して、軟化点96℃のリン含有エポキシ樹脂(E−12)795gを得た。得られたリン含有エポキシ樹脂(E−12)の性状を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
実施例6〜8、比較例8〜11
表3に示す配合処方によりリン含有エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤等を配合した。リン含有エポキシ樹脂をメチルエチルケトンで溶解させ、あらかじめメチルセロソルブ、ジメチルホルムアミドに溶解させておいた硬化剤としてジシアンジアミド(DICY、活性水素当量:21.0g/eq)と硬化促進剤として2エチル4メチルイミダゾール(前述)を加えて、不揮発分が50重量%になるように樹脂組成物ワニスを調製した。その後、得られた樹脂ワニスを用い、基材であるガラスクロス(日東紡績株式会社製、WEA 116E 106S 136、厚み100μm)に含浸させ、含浸させたガラスクロスを150℃の熱風循環式オーブンで8分間乾燥を行い、プリプレグを得た。次いで、得られたプリプレグ4枚を重ね、130℃×15分及び170℃×2.0MPa×70分間の条件で加熱と加圧を行い0.5mm厚の積層板を得た。得られた各々の積層板について、難燃性、接着性、吸湿率の各物性を試験した。その結果を表4に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
比較例8は脂肪族系リン含有エポキシ樹脂を使用しているため、接着性は良いが難燃性が悪いし耐吸湿性も悪い。比較例9は一般式1のリン含有エポキシ樹脂だが、リン含有率が0.5重量%と低いため難燃性が悪く、エポキシ当量も196g/eqと小さいため接着性も悪い。比較例10は一般式1のリン含有エポキシ樹脂だが、リン含有率が5.2重量%と大きすぎるためエポキシ当量が705g/eqと大きくなり難燃性は良いが、接着性が悪く、耐熱性も悪い。比較例11は一般式1のリン含有エポキシ樹脂だが、エポキシ当量が880g/eqと大きく、溶融粘度も1,300mPa・sと大きいため、接着性は良いが、耐熱性は悪い。それに対し実施例は全て、十分な難燃性を確保しながら、接着性は良く、耐吸湿性や耐熱性も良い。
実施例9〜12、比較例12〜14
【0062】
表5に示す配合処方によりリン含有エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤等を配合した。硬化剤として、ジエチルジアミノジフェニルメタン(日本化薬株式会社製、商品名:カヤハードAA、活性水素当量:63g/eq、粘度:2,500mPa・s)を、硬化促進剤として2エチル4メチルイミダゾール(前述)を用いて、50℃に加熱しながら、撹拌し均一化してエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を脱泡して金型に注型し、150℃×120分の温度条件で硬化させて2mm厚の硬化物試験片を得た。得られた硬化物試験片について、塩素イオン、難燃性、吸湿率の各物性を試験した。その結果を表6に示す。なお、比較例14では、エポキシ樹脂として、エポトートZX−1059(東都化成株式会社製、ビスフェノールFジグリシジルエーテル樹脂とビスフェノールAジグリシジルエーテル樹脂の混合物、エポキシ当量:165g/eq、全塩素:0.08重量%、粘度:2,300mPa・s)を使用し、添加型難燃剤として、1,3−フェニレンビス−ジ−2,6−キシレニルホスフェート(大八化学工業株式会社製、商品名:PX−200、リン含有量:9.0重量%)を、エポキシ樹脂組成物中のリン含有率が2.0重量%になるように添加した。
【0063】
【表5】
【0064】
【表6】
【0065】
比較例12は全塩素が3.8重量%と非常に多い脂肪族系リン含有エポキシ樹脂を使用しているため、塩素イオンが実施例より100倍程度多い。これは信頼性が非常に悪くなることを示している。さらに、一般式(1)のリン含有エポキシ樹脂ではないため、難燃性も悪く、耐吸湿性も悪い。比較例13は一般式(1)のリン含有エポキシ樹脂だが、全塩素が0.33重量%と高いため、塩素イオンが実施例より5〜7倍程度多い。これは信頼性が悪くなることを示している。比較例14は一般的に使用されている低塩素液状樹脂に難燃剤を配合したエポキシ樹脂組成物だが、リン含有率を実施例と合わせても難燃性は悪く、耐吸湿性も悪い。それに対し実施例は全て、十分な難燃性を確保しながら、塩素イオンは低いし耐吸湿性も良い。これは信頼性が良いことを示している。
【0066】
実施例13〜14、比較例15〜17
表7に示す配合処方によりリン含有エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤等を配合した。硬化剤として、トリフェニルメタン型フェノール樹脂(群栄化学工業株式会社製、商品名:TMP−100、水酸基当量:97.5g/eq、軟化点:107℃)を用い、120℃に加熱しながら、撹拌し均一化してエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を脱泡して金型に注型し、150℃×120分+180℃×60分の温度条件で硬化させて2mm厚の硬化物試験片を得た。得られた硬化物試験片について、成形性、難燃性、吸湿率の各物性を試験した。その結果を表8に示す。なお、実施例13ではリン含有エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂として、エポトートZX−1059(前述)を併用し、比較例17ではリン含有エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂として、エポトートZX−1542(東都化成株式会社製、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル樹脂、エポキシ当量:122g/eq、全塩素:0.065重量%、粘度:80mPa・s)を併用した。
【0067】
【表7】
【0068】
【表8】
【0069】
比較例15は脂肪族系リン含有エポキシ樹脂を使用しているため、難燃性が悪いし耐吸湿性も悪い。比較例16は特許文献4で開示された製法で得られたリン含有エポキシ樹脂だが、一般式1のリン含有エポキシ樹脂ではないため、エポキシ樹脂組成物の粘度が高すぎて、金型成型が困難なため、試験に必要な試験片が作成できなかった。比較例17は特許文献4で開示された製法で得られたリン含有エポキシ樹脂に、希釈剤を併用して粘度を下げたエポキシ樹脂組成物で、成形性は改良されるが、難燃性が悪化し、耐湿性も悪化する。それに対し実施例は全て、十分な難燃性を確保しながら、成形性も良く耐吸湿性も良い